JP7177629B2 - 冷凍菓子用油脂組成物 - Google Patents
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Description
他方、近年は高級感のある冷凍菓子が流行しており、風味に優れたアイスクリームなどの冷凍菓子が好まれる傾向がある。このような特性に着目した冷凍菓子用油脂組成物としては、キレやコク等に優れた冷凍菓子用の油脂組成物として、特許文献1には、パームミッドフラクション(パーム中融点部)等のSUS型トリグリセリドに富む油脂とラウリン系油脂とを主成分とし、非ラウリン系油脂由来のSSS型トリグリセリドを1~4重量%含む油脂組成物が開示されている(SUS中のS=炭素数16~22の飽和脂肪酸、U=炭素数16~22の不飽和脂肪酸であり、SSS中のS=炭素数14~22の飽和脂肪酸)。
また、口溶けがよく乳風味豊かな冷凍菓子用ミックスとして、特許文献2には、バター脂と、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油とを含む冷凍菓子用ミックスが開示されている(特許文献2)。
また、特許文献2の冷凍菓子用ミックスは、バター脂の配合を高めることによって乳風味を向上させるものであり、植物油脂は、バター脂の配合を高めたことによって生じるヒートショックや保形性の問題を低減するために加えられているに過ぎない。また、特許文献2の冷凍菓子用ミックスを用いて製造した冷凍菓子は、特許文献1と同様に、食したときに十分な濃厚感が得られないという問題がある(本明細書の比較例3)。
また、本発明は、食したときの濃厚感に優れ、更には夏場の高温でも溶け出しにくい冷凍菓子を得るのに好適な冷凍菓子用油脂組成物を提供することを他の目的とする。
20℃のSFCが30以上であり、且つ
30℃のSFCが8以上である、冷凍菓子用油脂組成物。
〔2〕 35℃のSFCが10以下である、〔1〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔3〕 構成脂肪酸としてステアリン酸を12~30質量%含む、〔1〕又は〔2〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔4〕 構成脂肪酸として含まれるオレイン酸の量が0~25質量%である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔5〕 ラウリン系油脂の極度硬化油を50質量%以上含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔6〕 パーム核極度硬化油のエステル交換油を20質量%以上含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔7〕 パーム系油脂を更に含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔8〕 非ラウリン系油脂由来のSSS型トリグリセリド(ここで、Sは炭素数14~22の飽和脂肪酸を表す)の含有量が1質量%未満である、〔1〕~〔7〕に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
〔9〕 〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子。
〔10〕 前記冷凍菓子がアイスクリーム類又は氷菓である、〔9〕に記載の冷凍菓子。
また、本発明の冷凍菓子用油脂組成物を用いることにより、食したときの濃厚感に優れ、更には夏場の高温でも溶け出しにくい冷凍菓子を得ることができる。
<<冷凍菓子用油脂組成物>>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、構成脂肪酸としてラウリン酸を20~60質量%含み、20℃のSFCが30以上であり、30℃のSFCが8以上であることを特徴とする。
冷凍菓子は、アイスクリーム類及び氷菓(アイスキャンディなど)に代表される、凍結状態又はチルド状態で食用に供される菓子である。
本明細書及び特許請求の範囲において、アイスクリーム類とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであって、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く)をいい、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスを包含する概念である。
本明細書及び特許請求の範囲において、冷凍菓子のうち、アイスクリームは、乳固形分が15.0%以上であり且つ乳脂肪分が8.0%以上のものをいう。アイスミルクは、乳固形分が10.0%以上であり且つ乳脂肪分が3.0%以上のものをいう。ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上のものをいう。氷菓は、乳固形分が3.0%未満のものをいう。
なお、本発明の冷凍菓子用油脂組成物から冷凍菓子を作製する際には、後述するように油相部に乳脂肪を添加することができるが、本明細書及び特許請求の範囲において「油脂組成物」という場合には、特に断らない限り、植物性油脂(すなわち、乳脂肪を除く油脂)からなる油脂組成物を意味する。
本明細書及び特許請求の範囲において、濃厚感とは、冷凍菓子を食したときに感じられる冷凍菓子の風味、味わいが、食した後も余韻として口の中に残っている感覚をいう。濃厚感が高いほど、冷凍菓子食した後もその風味、味わいが口の中に強く感じられる。逆に、濃厚感がない冷凍菓子は、冷凍菓子を食した後すぐにその風味、味わいが口の中で感じられなくなる。濃厚感がない冷凍菓子は、あっさりしていると言うこともできる。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、20℃におけるSFCが30以上(単位:%)である。20℃におけるSFCは35~90であることが好ましく、35~85であることがより好ましく、35~80であることがさらにより好ましく、40~75であることがさらにより好ましい。また、20℃におけるSFCが65~75であることも好ましい。
20℃におけるSFCが上記範囲内であると、濃厚感に優れた冷凍菓子を得ることができる。また、夏場の高温でも溶け出しにくい冷凍菓子が得られやすい。
また、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、30℃におけるSFCが8以上である。30℃におけるSFCは、8~50であることが好ましく、8~40であることがより好ましく、8~32であることがさらにより好ましく、10~32であることがさらにより好ましく、12~32であることが更に好ましい。また、30℃におけるSFCが15~32であることも好ましい。
30℃におけるSFCが上記範囲内であると、濃厚感に優れた冷凍菓子を得ることができる。また、夏場の高温でも溶け出しにくい冷凍菓子が得られやすい。
また、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、35℃におけるSFCが10以下であることが好ましい。35℃におけるSFCは、0.1~10であることがより好ましく、0.5~9であることがさらにより好ましく、1~8であることがさらにより好ましい。
20℃、30℃のSFCが上記範囲内であることに加えて35℃におけるSFCが上記範囲内であると、濃厚感に優れるだけでなく、夏場の高温でも溶け出しにくい冷凍菓子を得ることができる。
SFC(単位:%)は、基準油脂分析法(2.2.9-2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定することができる。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、0℃で30分保持して固化させる。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃に30分保持する。その後、各SFCの測定温度で30分保持した後、SFCを測定する。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上昇融点が30~45℃であることが好ましく、32~38℃であることがより好ましく、33~38℃であることがさらにより好ましい。
上昇融点は、基準油脂分析法(2.2.4.2-1996)、融点(上昇融点))により測定することができる。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるラウリン酸の割合が20~60質量%である。ラウリン酸の割合は、25~55質量%であることが好ましく、30~55質量%であることがより好ましく、35~55質量%であることがさらにより好ましく、40~50質量%であることがさらにより好ましい。
ラウリン酸の割合が上記範囲内であると、濃厚感に優れかつ夏場の高温でも溶け出しにくい(保形性が良好である)冷凍菓子が得られやすい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるステアリン酸の割合が12~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるパルミチン酸の割合が30質量%以下であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることがさらにより好ましく、4~15質量%であることがさらにより好ましく、5~10質量%であることがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占めるオレイン酸(cisC18-1)の割合が0~25質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましく、0~15質量%であることがさらにより好ましく、0~10質量%であることがさらにより好ましく、0~5質量%であることがさらにより好ましく、0~2質量%であることがさらにより好ましく、0~1質量%であることがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、当該冷凍菓子用油脂組成物中に含まれる全油脂の構成脂肪酸中に占める不飽和脂肪酸の割合が0~30質量%であることが好ましく、0~25質量%であることがより好ましく、0~20質量%であることがさらにより好ましく、0~15質量%であることがさらにより好ましく、0~10質量%であることがさらにより好ましく、0~5質量%であることがさらにより好ましく、0~2質量%であることがさらにより好ましく、0~1質量%であることがさらにより好ましい。
本明細書及び特許請求の範囲において、ラウリン系油脂とは、構成脂肪酸としてラウリン酸を35質量%以上含む油脂の総称である。
本明細書及び特許請求の範囲において、極度硬化油とは、水素添加によって原料油脂の不飽和脂肪酸をほぼ完全(好ましくは不飽和脂肪酸が5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらにより好ましくは1質量%以下、さらにより好ましくは0.8質量%以下)に又は完全に飽和させた油脂を意味する。水素添加は、慣用の方法、例えば「食用油製造の実際」(宮川高明著、幸書房、昭和63年7月5日、初版第1刷発行)に記載の方法に従って行うことができる。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂の極度硬化油を含むことが好ましい。ラウリン系油脂の極度硬化油を含むことにより、食したときに濃厚感が得られる冷凍菓子が得られやすい。
ラウリン系油脂の極度硬化油は、冷凍菓子用油脂組成物中に50質量%以上含まれることが好ましく、50~100質量%含まれることがより好ましく、55~100質量%含まれることがさらにより好ましく、60~100質量%含まれることがさらにより好ましく、70~100質量%含まれることがさらにより好ましく、80~100質量%含まれることがさらにより好ましく、90~100質量%含まれることがさらにより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
すなわち、本発明の油脂組成物は、ラウリン系油脂の極度硬化油を主成分(油脂組成物中に50質量%以上)とすることが好ましい。
ラウリン系油脂の極度硬化油としては、パーム核油の極度硬化油、ヤシ油の極度硬化油、及びこれらの1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂が挙げられる。これらの中でも、ラウリン系油脂の極度硬化油は、パーム核油の極度硬化油及び/又はパーム核油の極度硬化油のエステル交換油を含むことが好ましく、パーム核油の極度硬化油のエステル交換油を含むことがより好ましい。また、ラウリン系油脂の極度硬化油は、パーム核油の極度硬化油及び/又はパーム核油の極度硬化油のエステル交換油であることが好ましく、パーム核油の極度硬化油のエステル交換油であることがより好ましい。
エステル交換は、当該技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。例えば、非選択的エステル交換反応方法、選択型(指向型)エステル交換反応方法が挙げられる。これらの中でも、非選択型が好ましい。
ラウリン系油脂の極度硬化油は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のラウリン系油脂の極度硬化油を組み合わせて用いてもよい。
本明細書及び特許請求の範囲において、パーム系油脂とは、パームの果実由来の油脂の総称であり、パーム油、パーム油を分別した油脂、これらの油脂の1種又は2種類以上をエステル交換または硬化した油脂を意味する。なお、パームの核由来の油脂であるパーム核油、その分別油及びそのエステル交換油は、パーム系油脂には含まれない。
パーム系油脂は、構成脂肪酸としてパルミチン酸(C16-0)を30質量%以上含むことが好ましく、30~80質量%含むことがより好ましく、30~60質量%含むことがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、パーム系油脂を含んでいてもよい。冷凍菓子用油脂組成物中のパーム系油脂の量は、50質量%以下であることが好ましく、0~40質量%であることがより好ましく、0~30質量%であることがさらにより好ましく、0~20質量%であることがさらにより好ましく、0~10質量%であることがさらにより好ましく、0質量%であることがさらにより好ましい。また、パーム系油脂の含有量の下限値は、0質量%であってもよく、0.1質量%であってもよく、1質量%であってもよく、10質量%であってもよく、20質量%であってもよく、30質量%であってもよい。パーム系油脂の量が上記範囲内であれば、本発明の効果を損なうことなく、冷凍菓子を製造することができる。
パーム系油脂としては、パーム油、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームステアリン、パームミッドフラクション、及びこれらのエステル交換油等が挙げられる。これらの中でも、パーム系油脂としては、パームミッドフラクション、パームダブルオレイン並びにこれらのエステル交換油からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、パームミッドフラクション、パームダブルオレインがより好ましく、パームミッドフラクションがさらにより好ましい。なお、エステル交換油は、上記油脂の1種の間でエステル交換したものであってもよく、2種以上の間でエステル交換したものであってもよい。
パームオレインは、パーム油を分別して得られる低融点画分の油脂である。パームステアリンとは、パーム油を分別して得られる高融点画分の油脂である。パームダブルオレインやパームスーパーオレインはパームオレインを分別して得られる低融点画分の油脂である。パームミッドフラクションは、パームオレインを更に分別して得られる高融点画分の油脂である。
パーム系油脂は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上のパーム系油脂を組み合わせて用いてもよい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、その他の油脂を含んでいてもよい。具体例としては、液状油脂、液状油脂の極度硬化油脂、MCT(中鎖脂肪酸油)、ラウリン系油脂の極度硬化油以外のラウリン系油脂などが挙げられる。なお、液状油脂は、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を60質量%以上含み、常温(好ましくは20℃)で液体の油脂をいう。液状油脂の具体例としては、大豆油、ハイオレイック菜種油、菜種油、ハイオレイックヒマワリ油、ヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、コーン油、綿実油、紅花油、オリーブ油、亜麻仁油、ごま油、えごま油、グレープシードオイル、チアシードオイル、米油、パンプキンシードオイル、アボカドオイル、マカダミアナッツ油、ヘンプ油、アルガンオイル、アーモンド油、くるみ油や、それらのエステル交換油が挙げられる。ラウリン系油脂の極度硬化油以外のラウリン系油脂としては、パーム核油、ヤシ油、それらの分別油、これらの1種又は2種以上の間でエステル交換した油脂が挙げられる。
その他の油脂を含む場合、その他の油脂は冷凍菓子用油脂組成物の全質量に対して10質量%以下の割合であることが好ましく、5質量%の割合であることがより好ましく、2質量%の割合であることがさらにより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、ヨウ素価が25未満であることが好ましく、22以下であることがより好ましく、20以下であることがさらにより好ましく、15以下であることがさらにより好ましく、10以下であることがさらにより好ましく、5以下であることがさらにより好ましく、2以下であることがさらにより好ましく、1以下であることがさらにより好ましい。
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、上記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤などを含んでいてもよい。酸化防止剤としては、ビタミンE、ビタミンC、ローズマリー抽出物、茶抽出物、コケモモ抽出物等が挙げられる。
また、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、ラウリン系油脂の極度硬化油とその他の油脂との質量比が、50:50~100:0であることが好ましく、55:45~100:0であることがより好ましく、60:40~100:0であることがさらにより好ましく、65:35~100:0であることがさらにより好ましく、70:30~100:0であることがさらにより好ましく、80:20~100:0であることがさらにより好ましく、90:10~100:0であることがさらにより好ましく、100:0であることも好ましい。
<用途>
本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、冷凍菓子の製造に用いることができる。冷凍菓子の中でも、本発明の冷凍菓子用油脂組成物は、アイスクリーム類及び/又は氷菓の製造に好ましく用いることができ、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓の製造により好ましく用いることができ、アイスミルク、ラクトアイスの製造にさらにより好ましく用いることができる。
また、本発明の油脂組成物であって、且つ35℃におけるSFCが10%以下である油脂組成物から製造される冷凍菓子は、濃厚感に優れるだけでなく、夏場の高温でも溶け出しにくい。アイスクリーム類や氷菓は夏場の高温時に食されることが多く、食す前に或いは食している間に溶け出してしまうため、冷凍菓子本来の形状や食感を長時間維持しにくい。特に、アイスクリーム類や氷菓をコンビニエンスストア等で購入する場合には、家に帰るまでの間に溶けてしまいやすい。また、溶け出した液状のアイスクリーム類や氷菓が手に垂れてしまい、消費者に不快感を与えることもある。本発明の油脂組成物から製造される冷凍菓子は、夏場の高温でも溶け出しにくいため(すなわち、保形性に優れるため)、上記のような問題が生じにくい。
なお、本発明の油脂組成物は、乳脂肪と混合して油脂-乳脂含有組成物としてもよい。
上述した油脂組成物から下記のように水中油型乳化油脂組成物であるアイスミックスを製造することができる。アイスミックスとは、冷却・撹拌によって冷凍菓子に固形化する前の水中油型乳化油脂組成物をいう。このアイスミックスを冷却しながら撹拌することにより、冷凍菓子を製造することができる。
〔油相部〕
本発明のアイスミックスは水相部と油相部からなり、油相部に上記本発明の冷凍菓子用油脂組成物を含有することを特徴とする。
本発明において、油相部は、本発明の冷凍菓子用油脂組成物に加えて、油脂として乳脂肪を更に含んでいてもよい。乳脂肪としてバターオイル、バター、生クリーム、牛乳等を由来とする乳脂肪が挙げられる。
本発明において、アイスミックス全質量に対する油相部の質量割合は、1~35質量%であることが好ましく、3~30質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることがさらにより好ましい。また、本発明において、アイスミックス全質量に対する本発明の油脂組成物の質量割合は、1~30質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましく、5~20質量%であることがさらにより好ましい。
本発明のアイスミックスの水相部には、水に加えて、安定剤、乳化剤(蔗糖脂肪酸エステルなど)、カゼインナトリウム、脱脂粉乳、糖類などを添加してもよい。また、必要に応じて、クエン酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、第二りん酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム、カラギナン等の増粘多糖類、香料などを添加してもよい。糖類としては、例えば、水飴、粉飴、ショ糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、トレハロース等が挙げられ、これは必要に応じ適宜組み合わせて配合される。
また、水相部に脱脂粉乳が含まれる場合、脱脂粉乳(固形分)の量は、アイスミックスの全質量に対して、1~20質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、3~12質量%であることがさらにより好ましい。
その後、油相部と水相部を60℃~90℃に加温し、混合して予備乳化を行う。予備乳化後、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、ホモゲナイザーにて均質化し、0~10℃程度、好ましくは5℃程度に冷却してエージングすることで、本発明のアイスミックス(水中油型乳化油脂組成物)を製造することができる。
得られたアイスミックスを撹拌しながら-10~0℃程度、好ましくは-5℃程度に冷却することにより、本発明の冷凍菓子を製造することができる。
表1~2に示す油脂及び配合割合(質量%)で混合した後、結晶を完全に溶解させた。その後、脱色、脱臭し、実施例1~7及び比較例1~4の各油脂組成物を得た。実施例1~7及び比較例1~4において使用した各油脂の構成脂肪酸の割合を、表3に示す。また、実施例1~7及び比較例1~4の油脂組成物の構成脂肪酸組成を表4~5に示す。なお、表3~5中、%は質量%を意味する。
比較例3で使用したヤシ油とパーム油とのエステル交換油は、ヤシ油とパーム油を40:60の質量比で混合した後、エステル交換することにより得た油脂である。
実施例1~7及び比較例1~4で用いた油脂及び油脂組成物の脂肪酸組成、SFC、上昇融点、非ラウリン系油脂由来のSSS型トリグリセリド(Sは炭素数14~22の飽和脂肪酸)の量、ヨウ素価を、それぞれ下記の方法により測定した。
<脂肪酸組成>
基準油脂分析法 2.4.4.3-2013脂肪酸組成(キャピラリーガスクロマトグラフ法、内部標準不使用))に準じて測定した。
ガスクロマトグラフィー装置は、島津製作所(株)製、GC-2010型。カラムは、SUPELCO社製、SP-2560。
実施例1~7及び比較例1~4の各油脂組成物の固体脂含量(SFC、単位は%)は、基準油脂分析法(2.2.9-2013、固体脂含量(NMR法))を基にして、次のようにして測定した。即ち、油脂組成物を60℃で30分保持し、油脂組成物を完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させた。その後、25℃で30分保持し、テンパリングを行った後、0℃で30分保持した。その後、各SFCの測定温度で30分保持した後、SFCを測定した。その結果を表1~2に示す。
基準油脂分析法(2.2.4.2-1996)、融点(上昇融点)に準じて測定した。
SSS型トリグリセリド含有量は高速液体クロマトグラフにて測定した。
ヨウ素価の測定方法は、基準油脂分析法2.3.4.1-2013ヨウ素価(ウィス-シクロヘキサン法)により測定した。
実施例1~7及び比較例1~4の油脂組成物を用いて、下記の方法でラクトアイスを製造した。
表6に記載の油相部、水相部a、水相部bをそれぞれ混合した後、水相部bに水相部aを加え、十分に撹拌して混合した。混合後の水相部を加熱し、80℃で油相部を加え、85℃で15分間予備乳化と殺菌を行った。その後、ホモゲナイザーにて均質化を行い(80kg/cm2)、アイスミックスを得た。
なお、表6中、%は質量%を意味する。
上記で得られたアイスミックスをフリーザーに入れ、220rpmで撹拌しながら-5℃になるまで冷却し、ラクトアイスを得た。
得られたラクトアイスを用いて、下記の方法でオーバーランを評価した。
<オーバーラン(OR)(%)>
オーバーランとは、フリージング前のアイスミックスの体積に対するフリージング後のラクトアイスの体積増加率(%)をいう。アイスミックスを撹拌しながら冷却(フリージング)すると、空気が取り込まれながら固形化しラクトアイスとなる。このときの空気の抱き込みによる体積の増加率がオーバーランである。下記式に従って、オーバーランを求めた。その結果を表1~2に示す。
オーバーラン(%)=(一定体積のフリージング前のアイスミックスの質量-同体積のフリージング後のラクトアイスの質量)/(同体積のフリージング後のラクトアイスの質量)×100
次に、上記製造方法で得られたラクトアイスを容器に入れ、フタをして-20℃で一晩以上硬化させた後、下記の評価を行った。
<<評価試験>>
上記製造方法で得られたラクトアイスを-20℃で一晩以上硬化させ、濃厚感の評価試験を行った。評価試験は、6名のパネリストにより、20℃の部屋で各ラクトアイスを試食し、一般的なラクトアイスの組成である比較例1のラクトアイスの濃厚感を1とし、最も濃厚感が感じられた実施例7のラクトアイスの濃厚感を5としたときの、各実施例及び比較例のラクトアイスの濃厚感を1~5の5段階で評価した。数値が大きいほど濃厚感に優れることを意味する。6名のパネリストによる濃厚感の評価の平均値を評価値とした。
評価値が3.5以上をA+、3.0以上~3.5未満をA、2.5以上~3.0未満をB、2.5未満をCとし、B以上の評価(すなわち、A+、A又はBの評価)が得られたものを合格とした。A+~Cの評価のうち、評価がA+であるラクトアイスが最も濃厚感に優れている。
その結果を表1~2に示す。
<溶出率(%)>
300mLビーカーに茶こしをセットし、85gほどのラクトアイスを茶こしの上にのせ、5分後、10分後に茶こしの下に溶けだしたラクトアイスの質量を測定し、下記の式にて溶出率を算出した。
溶出率(%)=溶出量(g)/のせた1カップ分のアイス量(g)×100
なお、試験時の周囲温度は35℃で行った。その結果を表1~2に示す。
表1~2に示す結果から明らかなように、比較例1~4の油脂組成物から製造されたラクトアイスは、油脂組成物の20℃或いは30℃のSFCが小さく、食した際の濃厚感が悪かった(C評価)。
一方、実施例1~7の油脂組成物から製造されたラクトアイスは、油脂組成物の全構成脂肪酸に占めるラウリン酸の割合が20~60質量%であり、且つ20℃及び30℃のSFCも十分高かった。その結果、濃厚感に優れていた(A+又はA評価)。
また、実施例1~6の油脂組成物から製造されたラクトアイスは、濃厚感だけではなく、35℃で10分放置しても溶出率が小さく、夏場の高温でも溶け出しにくいことが分かった。
さらに、実施例1~7の油脂組成物から製造されたラクトアイスは、いずれも良好なオーバーラン(OR)を示していた。
次に、実施例1及び比較例3の油脂組成物と乳脂肪分を用いて、下記の方法でアイスミルクを製造した。また、実施例1の油脂組成物を全て乳脂肪分に代えたアイスミルク(アイスクリーム)を製造し(参考例1)、実施例1、比較例3の油脂組成物から製造されたアイスミルクとの比較に用いた。
表7に記載のa成分を混合した後、油分47%生クリーム、20%加糖卵黄を加え、加熱し、実施例1、比較例3のアイスミルクの場合は40℃でそれぞれの油脂組成物を加え、65℃で10分間予備乳化した後85℃まで過熱し殺菌を行った。その後、得られた混合物100質量部に対してバニラフレーバーを0.15質量部加え、2段均質式のホモゲナイザーにて均質化を行い(1段目120kg/cm2、2段目40kg/cm2)、アイスミックスを得た。なお、実施例1、比較例3のアイスミックス中の乳脂肪及び植物油脂の割合の合計と、参考例1のアイスミックス中の乳脂肪の割合が同じになるよう、添加する原料の量を調整した。
なお、表7中、%は質量%を意味する。
上記で得られたアイスミックスをフリーザーに入れ、180rpmで撹拌しながら-5℃になるまで冷却し、アイスミルクを得た。上記製造方法で得られたアイスミルクのORを測定した。その後、容器に入れ、フタをして-20℃で一晩以上硬化させた後、下記の評価を行った。
上記製造方法で得られたアイスミルクを-20℃で一晩以上硬化させ、濃厚感の評価試験を行った。評価試験は、6名のパネリストにより、20℃の部屋で各アイスミルクを試食し、試験1で製造した一般的なラクトアイスの組成である比較例1のラクトアイスの濃厚感を1とし、最も濃厚感が感じられた実施例7のラクトアイスの濃厚感を5としたときの、各アイスミルクの濃厚感を1~5の5段階で評価した。数値が大きいほど濃厚感に優れることを意味する。6名のパネリストによる濃厚感の評価の平均値を評価値とした。
評価値が3.5以上をA+、3.0以上~3.5未満をA、2.5以上~3.0未満をB、2.5未満をCとし、B以上の評価(すなわち、A+、A又はBの評価)が得られたものを合格とした。A+~Cの評価のうち、評価がA+であるアイスミルクが最も濃厚感に優れている。
その結果を表8に示す。
300mLビーカーに茶こしをセットし、85gほどのアイスミルクを茶こしの上にのせ、5分後、10分後に茶こしの下に溶けだしたアイスミルクの質量を測定し、下記の式にて溶出率を算出した。その結果を表8に示す。
溶出率(%)=溶出量(g)/のせた1カップ分のアイス量(g)×100
なお、試験時の周囲温度は35℃で行った。
上記製造方法で得られたアイスミルクを-20℃で一晩以上硬化させ、乳風味評価を行った。官能評価は、6名のパネリストにより、20℃の部屋で各アイスミルクを試食し、参考例1のアイスミルク(アイスクリーム)の乳風味を5とし、比較例1のラクトアイスの乳風味を1としたときの、各アイスミルクの乳風味を1~5の5段階で評価した。数値が大きいほど乳風味が強いことを意味する。6名のパネリストの乳風味評価の平均値を評価値とした。その結果を表8に示す。
5:乳風味が強い
4:乳風味がやや強い
3:乳風味が強くはないが十分な乳風味
2:乳風味がやや弱い
1:乳風味が弱い
表8に示す結果から明らかなように、比較例3の油脂組成物から製造されたアイスミルクは、食した際の濃厚感が悪かった(C評価)。
一方、実施例1の油脂組成物から製造されたアイスミルクは、油脂組成物の全構成脂肪酸に占めるラウリン酸の割合が20~60質量%であり、且つ20℃及び30℃のSFCも十分高かった。その結果、濃厚感に優れていた(A評価)。
また、実施例1の油脂組成物から製造されたアイスミルクは、濃厚感だけではなく、35℃で10分放置しても溶出率が小さく、夏場の高温でも溶け出しにくいことが分かった。
以上の結果から、本発明の油脂組成物は、ラクトアイスだけでなく、アイスミルクの製造のために用いた場合にも、優れた効果を発揮することが分かった。従って、本発明の油脂組成物は、冷凍菓子の製造に好適に用いることができる。
Claims (10)
- パーム核極度硬化非エステル交換油とパーム核極度硬化エステル交換油とを、合計質量で60質量%~100質量%含み、ただしパーム核極度硬化エステル交換油は50質量%以下であり、
構成脂肪酸としてラウリン酸を20~60質量%含み、
20℃のSFCが30以上であり、
30℃のSFCが8以上であり、且つ
35℃のSFCが10以下である、冷凍菓子用油脂組成物。 - 構成脂肪酸としてステアリン酸を12~30質量%含む、請求項1に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
- 構成脂肪酸として含まれるオレイン酸の量が0~25質量%である、請求項1又は2に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
- パーム核極度硬化油のエステル交換油を20質量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
- 構成脂肪酸としてラウリン酸を20~60質量%含み、
20℃のSFCが30以上であり、
30℃のSFCが8以上であり、且つ
35℃のSFCが10以下であり、
パーム系油脂を更に含む、冷凍菓子用油脂組成物。 - 構成脂肪酸としてステアリン酸を12~30質量%含む、請求項5に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
- 構成脂肪酸として含まれるオレイン酸の量が0~25質量%である、請求項5又は6に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
- 非ラウリン系油脂由来のSSS型トリグリセリド(ここで、Sは炭素数14~22の飽和脂肪酸を表す)の含有量が1質量%未満である、請求項1~7に記載の冷凍菓子用油脂組成物。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の油脂組成物を含む、冷凍菓子。
- 前記冷凍菓子がアイスクリーム類又は氷菓である、請求項9に記載の冷凍菓子。
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