JP7439643B2 - タイヤの摩耗方法及びタイヤの試験方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤの摩耗方法及びタイヤの試験方法に関する。
一般に、新品タイヤの表面には、タイヤ加硫成形時の離型剤や油分等が付着しており、タイヤ本来の性能を発揮させるためには、数十~数百キロメートル程度の慣らし走行が推奨されている。このため、タイヤの各種走行性能を評価する場合、事前に、台上摩耗試験機などを用いて、タイヤのトレッド部を摩耗させることが行われている。
下記特許文献1には、タイヤの室内摩耗試験方法が記載されている。この方法では、タイヤが接触する走行面上に、タルク(滑石)の懸濁液が散布される。タルクは、試験中にタイヤのトレッド面から分離した摩耗ゴムが、トレッド部に再付着して試験結果に悪影響を及ぼすことを防止する。
特開平7-146217号公報
発明者らは、特許文献1の方法で摩耗させたタイヤのトレッド部を注意深く観察したところ、多数のタルクが、トレッド部表面のミクロな凹凸に深く入り込んでいることが分かった。また、このようなタルクは、ブラシ等を用いた洗浄では完全に除去することが困難であることも判明した。
そして、トレッド部の表面に付着したタルクは、タイヤの走行性能、とりわけ、トレッド部のグリップ特性に関係する雪上、氷上性能等の性能評価に、大きな影響を与えるという問題があった。
本発明は、以上のような実情点に鑑み案出なされたもので、走行性能に影響を与えないように、タイヤのトレッド部を摩耗させることができるタイヤの摩耗方法を提供することを主たる課題としている。
本発明は、タイヤのトレッド部を摩耗させるための方法であって、水溶性粉末が撒かれた台上摩耗試験機上に、前記トレッド部を接地させて前記タイヤを走行させる走行工程と、前記走行工程後、前記トレッド部に付着した前記水溶性粉末を、水を用いて洗浄する洗浄工程とを含む、タイヤの摩耗方法である。
本発明の他の態様では、前記洗浄工程は、前記トレッド部をブラシで擦る工程を含むことができる。
本発明の他の態様では、前記水溶性粉末の水に対する溶解度が、水温20℃に対して30(g/100gHO)以上であっても良い。
本発明の他の態様では、前記水溶性粉末の粒径は、5~50(μm)であっても良い。
本発明の他の態様では、前記水溶性粉末は、不燃性物質であっても良い。
本発明の他の態様では、前記水溶性粉末は、潮解性の無い物質であっても良い。
本発明の他の態様では、前記水溶性粉末は、無機塩であっても良い。
本発明の他の態様では、上記のいずれかに記載されたタイヤの摩耗方法で摩耗させたタイヤを用いて、タイヤの走行性能を試験する工程を含むタイヤの試験方法であっても良い。
本発明の他の態様では、前記走行性能が、雪上性能又は氷上性能であっても良い。
本発明では、上記の工程を採用したことにより、走行工程後にトレッド部に付着した水溶性粉末を容易に除去することができる。したがって、本発明は、タイヤの本来の走行性能に影響を与えないようにタイヤのトレッド部を摩耗させることができる。
本実施形態のタイヤの摩耗方法を実施するための台上摩耗試験機の模式図である。 洗浄工程の一例を示す側面図である。 実施例及び比較例のタイヤについて、スリップ角とコーナリングフォースとの関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図面は、本発明の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれていることが理解されなければならない。また、複数の実施形態がある場合、明細書を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
[台上摩耗試験機]
図1は、本実施形態のタイヤの摩耗方法を実施するための台上摩耗試験機1の模式図である。本実施形態の台上摩耗試験機1は、ドラム式であって、タイヤ2を走行させるための回転可能な金属製のドラム3を備える。
ドラム3の外表面には、タイヤ2を走行させるための走行面4が連続して形成されている。これにより、台上摩耗試験機1は、無端路面を形成する。他の態様では、台上摩耗試験機1は、ドラム式に代えて、フラットベルト式とされても良い。
走行面4は、例えば、アスファルトを模したレプリカ路面で形成されている。このようなレプリカ路面は、例えば、樹脂と珪素との混合物で形成され得る。他の態様では、タイヤ2の摩耗を促進させるために、走行面4には、セーフティ、ウォーク(スリーエム カンパニー社の登録商標)などの摩擦係数の大きい滑り止め表面材が用いられても良い。
本実施形態の台上摩耗試験機1には、散布装置5が設けられている。散布装置5は、水溶性粉末7(詳細後述)を、走行面4に向けて散布するためのノズル6を備える。散布装置5は、例えば、高圧空気により、水溶性粉末を走行面4に向けて散布することができる。
[摩耗方法]
次に、本実施形態のタイヤ2のトレッド部2aを摩耗させるための摩耗方法が説明される。本実施形態の摩耗方法は、走行工程と洗浄工程とを含む。
[走行工程]
走行工程では、水溶性粉末7が撒かれた台上摩耗試験機1上に、タイヤ2のトレッド部2aを接地させて走行させる。
具体的には、図1に示されるように、タイヤ2のトレッド部2aは、台上摩耗試験機1の走行面4に接地するように配置される。このとき、タイヤ2は、図示しないタイヤ保持部に回転自在に支持されている。
また、タイヤ2には、所定の荷重が与えられており、したがって、トレッド部2aは、ドラム3の走行面4に押し付けられる。
しかる後、ドラム3が、方向Aで回転駆動される。これにより、ドラム3に接触しているタイヤ2は、ドラム3の上をドラム3とは反対方向に回転(走行)させられる。
また、例えば、タイヤ2が走行中、散布装置5から水溶性粉末7が走行面4に向けて散布される。本実施形態では、タイヤ2の回転方向の先着側(踏み込み側)に向けて、水溶性粉末7が散布される。このため、水溶性粉末7は、ドラム3の走行面4に付着し、その後、走行面4と接触するトレッド部2aにも付着され得る。
走行工程において、タイヤ2のトレッド部2aは、ドラム3の走行面4との接触で生じる摩耗エネルギーによって徐々に摩耗する。すなわち、トレッド部2aの表面のゴムが削れていく。一方、散布された水溶性粉末7は、トレッド部2aや走行面4に付着しており、トレッド部2aから削れたゴム粉等が、再び、トレッド部2aや走行面4に付着するのを妨げる。これより、タイヤ2のトレッド部2aは、実際のアスファルト路面を走行したときの摩耗形態に近い状態に摩耗する。
[洗浄工程]
洗浄工程では、走行工程の後、トレッド部2aに付着した水溶性粉末が、水を用いて洗浄される。洗浄工程は、種々の方法で行うことができる。最も簡単なものといて、洗浄工程は、タイヤ2のトレッド部2aの表面に水を噴射して行われても良い。これにより、トレッド部2aの表面に残存した水溶性粉末7は、接触した水に溶解し、容易にトレッド部2aから除去される。
以上のように、本実施形態のタイヤ2の摩耗方法では、洗浄工程後にタイヤ2のトレッド部2aに異物である粉末が残存するという問題を解決し、ひいては、トレッド部2aの表面状態を、実車走行時の摩耗形態及び表面状態に近づけることができる。したがって、本実施形態の摩耗方法は、タイヤ2の本来の走行性能に影響を与えないようにタイヤ2のトレッド部2aを摩耗させることができる。
好ましい態様では、洗浄工程は、トレッド部2aをブラシで擦る工程を含むことができる。このような態様では、水溶性粉末7を水に溶解させてトレッド部2aの表面から除去するのみならず、トレッド部2aの表面から十分に溶解していない水溶性粉末7を物理的に取り除くこともできる。したがって、トレッド部2aを短時間で洗浄することができる。
図2は、洗浄工程のさらに他の例を示す。図2に示されるように、走行工程を終えたタイヤ2は、例えば、洗浄装置10に置かれる。洗浄装置10は、貯水可能なフレーム11と、フレーム11に配置された複数のブラシロール12とを含む。ブラシロール12は、その下部がフレーム11に貯められた水Wに浸漬している。ブラシロール12、12で支持されたタイヤ2を回転させることにとり、トレッド部2aが水とブラシロール12に接触して洗浄される。トレッド部2aには、別途、洗浄水が吹き付けられても良い。
[水溶性粉末の溶解度]
水溶性粉末7は、水に溶けて水溶液をつくるものであれば特に限定されないが、溶解度が高いものほど望ましい。これにより少量の洗浄水でトレッド部2aの表面の水溶性粉末7を除去することが可能になる。好ましい態様では、水溶性粉末7の水に対する溶解度は、水温20℃(大気圧下)において、例えば、10(g/100gHO)以上、さらには20(g/100gHO)以上、特には30(g/100gHO)以上であるのが望ましい。
[水溶性粉末の粒径]
水溶性粉末7の粒径については、特に限定されることはないが、過度に大きくなると、通常のアスファルト舗装路での実車摩耗形態とかけ離れたものになるおそれがある。このような観点より、水溶性粉末7の粒径は、例えば、5~50μm程度が望ましい。
[水溶性粉末の不燃性]
本実施形態の摩耗方法を実施する環境下において、防爆性を確保するために、水溶性粉末7は、例えば、不燃性物質、とりわけ不燃性の無機物からなるのが望ましい。
[水溶性粉末の潮解性]
水溶性粉末7は、例えば、潮解性の無い物質であるのが望ましい。水溶性粉末7が潮解性を有する場合、摩耗方法実施中、空気中の水蒸気を吸収して溶解し、微小な粒径を保つことができないおそれがある。一方、潮解性の無い水溶性粉末7を用いた場合、摩耗方法を行う雰囲気から湿度の影響が排除できる点で望ましい。ただし、摩耗方法を実施する環境が、多湿環境ではない場合、水溶性粉末の潮解性はさほど重要ではない。
[水溶性粉末の代表例]
水溶性粉末7としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機塩が望ましい。
[摩耗方法後の性能試験]
好ましい態様では、本実施形態の摩耗方法で摩耗させたタイヤを用いて、タイヤの走行性能が試験される。本実施形態の摩耗方法で摩耗させたタイヤ2は、洗浄工程後にタイヤ2のトレッド部2aに水溶性粉末が残存することがなく、実車による慣らし走行に近い摩耗状態が得られる。したがって、本実施形態の摩耗方法で摩耗させたタイヤは、タイヤ2の本来の走行性能をより正確に試験することが可能になる。
試験されるタイヤの走行性能は、特に限定されないが、トレッド部2aのグリップ性能に大きな影響を受ける氷上性能又は雪上性能が好ましい。なぜなら、本実施形態の摩耗方法では、トレッド部2aの表面に水溶性粉末7(異物)の付着がないことから、トレッド部2aのグリップ性能をより精度良く評価することが可能だからである。
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な開示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、種々変更して実施することができる。
以下、本発明のより具体的かつ非限定的な実施例が説明される。
[実施例の摩耗試験]
実施例では、 以下の水溶性粉末を散布しながら、台上摩耗試験機を用いて走行工程が行われた。その後、洗浄工程として、作業者1名が約5分間、ブラシでトレッド部を擦りながら水洗いした。その後、氷上性能試験が行われた。詳細は、次の通りである。
<水溶性粉末>
材料:硫酸マグネシウム(赤穂化成社製)
粒径:10(μm)
引火点:不燃性
溶解度(@水温20℃):30(g/100gHO)
潮解性:なし
散布量:0.3(g/sec)
<走行工程>
タイヤサイズ:195/65R15 91Q(スタッドレスタイヤ)
内圧:230(kPa)
荷重:3.80(kN)
ドラム速度:50、60、100(km/h)
走行時間:1時間
<氷上性能試験>
路面が氷路面とされた台上コーナリングフォース試験機を用い、以下の条件でコーナリングフォースが測定された。
内圧:230(kPa)
荷重:3.80(kN)
ドラム速度:15(km/h)
タイヤ速度:15(km/h)
スリップ角:0~5(°)
[比較例]
比較例として、実施例の水溶性粉末を粉末状のタルクに置換して、同様の走行工程、洗浄工程、及び氷上性能試験が行われた。
[試験結果の評価]
氷上性能試験の結果は、図3に示されている。図3において、横軸はスリップ角を、縦軸はコーナリングフォースをそれぞれ示している。また、実線は実施例の試験結果を、仮想線は比較例の試験結果をそれぞれ示す。さらに、破線は、実車慣らし走行を行ったタイヤの氷上性能試験である(参考例)。慣らし走行は、実施例及び比較例の走行工程とほぼ同じ距離を市街地走行させたものである。
図3において、コーナリングフォースの最大値に着目すると、比較例は、参考例に比べて、約-9%の乖離がある。特に、比較例では、スリップ角が大きくなるにしたがって、コーナリングフォースの低下が大きくなっている。これは、摩耗試験後のトレッド部の表面に残存しているタルクがグリップ性能を低下させ、ひいては、タイヤの滑り領域が増大したことによると推察される。
これに対して、実施例は、コーナリングフォースの最大値に関して、参考例とほぼ同じ値を示した。また、実施例は、スリップ角に対するコーナリングフォースの変化も、参考例と同様の傾向を示していることが確認できた。
1 台上摩耗試験機
2 タイヤ
2a トレッド部
7 水溶性粉末

Claims (9)

  1. タイヤのトレッド部を摩耗させるための方法であって、
    水溶性粉末が撒かれた台上摩耗試験機上に、前記トレッド部を接地させて前記タイヤを走行させる走行工程と、
    前記走行工程後、前記トレッド部に付着した前記水溶性粉末を、水を用いて洗浄する洗浄工程とを含む、
    タイヤの摩耗方法。
  2. 前記洗浄工程は、前記トレッド部をブラシで擦る工程を含む、請求項1に記載のタイヤの摩耗方法。
  3. 前記水溶性粉末の水に対する溶解度が、水温20℃に対して30(g/100gHO)以上である、請求項1又は2に記載のタイヤの摩耗方法。
  4. 前記水溶性粉末の粒径は、5~50(μm)である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤの摩耗方法。
  5. 前記水溶性粉末は、不燃性物質である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤの摩耗方法。
  6. 前記水溶性粉末は、潮解性の無い物質である、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤの摩耗方法。
  7. 前記水溶性粉末は、無機塩である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤの摩耗方法。
  8. 請求項1ないし7のいずれか1項に記載されたタイヤの摩耗方法で摩耗させたタイヤを用いて、タイヤの走行性能を試験する工程を含むタイヤの試験方法。
  9. 前記走行性能が、雪上性能又は氷上性能である、請求項8に記載のタイヤの試験方法。
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