JP7714910B2 - 複合繊維 - Google Patents

複合繊維

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本発明は、2種類以上の成分により構成される複合繊維に関するものである。
ポリエステルやポリアミドなどからなる合成繊維は優れた力学特性や寸法安定性を有しているため、衣料用途から非衣料用途まで幅広く利用されている。しかしながら、人々の生活が高度化した昨今では、衣料をはじめとする様々な用途で、従来の合成繊維にはない高度な感性や機能を有する繊維が求められている。繊維の織り成す感性や機能には多種多様なものが存在し、合成繊維の研究・技術開発の方向性として、天然繊維に見られるような形態の多様性を持ちながらもある一定の規則性を持った暖かみのある風合いを備えた繊維素材を追求するものがあり、この研究の過程で、様々な繊維素材や繊維に関わる要素技術が創出されてきた。
従来、合成繊維のフィラメントからなる織編物等の繊維製品は、主には品質管理等の観点から、均質性を求めるものであり、おのずと、綿、麻、羊毛等の天然繊維と比較して、色調、光沢、凹凸感等が単調になりやすく、天然調テキスタイルを追い求めるためには、糸加工や織編の組織などを複雑にし、工夫する必要があり、原料であるポリマーの改質をはじめ、製糸および高次加工工程において様々な技術が提案されている。
天然調繊維を狙う製糸技術としては、マルチフィラメントを構成する単糸の横断面構造を不揃いにすることが挙げられ、例えば、予め複数の成分により単糸を構成しておき、高次加工工程でひとつの成分を溶出させることにより、天然繊維のような自然な斑や柔らかな手触りを発現させることを目的とした技術の提案がある。
特許文献1では、横断面が複数の成分により積層された複合繊維によって構成されたマルチフィラメントが提案されている。このマルチフィラメントを構成する単糸間では、横断面における複合比率と複合形状が異なっており、ひとつの成分を溶出することで、不揃いな断面の単糸からなるマルチフィラメントが得られ、これにより、色調、光沢、凹凸等の変化に富む、風合いに優れた繊維製品が得られるとの記載がある。この技術は、静止型混合素子で複合ポリマー流を層状に分割して各吐出孔へ異なった状態で偶発的に分配するものであり、このことから、単糸の横断面において各成分がいびつな形状で積層されながらも、その複合比率と複合形状が単糸間で異なるマルチフィラメントが得られるものである。
特許文献2においても、横断面が複数の成分により積層された複合繊維であり、その複合比率と複合構造が単糸間で異なるマルチフィラメントが提案されている。特許文献1と同様、静止型混合素子を用いた技術であり、その混合素子数を増やすことでより積層数の多い複合ポリマー流を形成し、これを各吐出孔へ分配することで、単糸の横断面で各成分がいびつな形状で積層されており、その複合比率と複合形状が単糸間で異なるマルチフィラメントが得られるものである。
特許文献3では、静止型混合素子で層状に分割した複合ポリマー流を各吐出孔へ分配する際の分配路に工夫を施すことで、単糸横断面が幹部とそこから放射状に伸びる枝部とからなる多枝型複合形状を有す複合繊維を含むマルチフィラメントが提案されている。この技術は、マルチフィラメントを構成する一部の単糸が多枝型複合繊維となるもので、その他の単糸は特許文献1および特許文献2で例示したような積層型複合繊維となっており、ひとつの成分を溶出することで、より不揃いな断面の単糸からなるマルチフィラメントが得られ、天然繊維のような風合いに優れた繊維製品が得られるとされている。
特開昭59-100717号公報(第5-7頁) 特開2002-309449号公報(特許請求の範囲) 特開平10-237715号公報(第2-5頁)
特許文献1および特許文献2では、静止型混合素子が分割と転換作用の繰り返しにより複合ポリマー流を混合するという原理上、複合ポリマー流は自ずと層状に積層されることとなり、このため得られる単糸の横断面構造としても、各成分の形状と方向が揃った状態で積層されたものとなる。
一方、この静止型混合素子を応用し、分配路を工夫することで横断面の複雑性を高めることを狙った特許文献3では、特許文献1や特許文献2では見られない、横断面が多枝型複合形状となった複合繊維になるものの、結局は各成分が多少方向を変えながら積層されたものであり、形状が揃った状態で積層された複合繊維の域を大きく超えるものではなかった。
このように、従来の静止型混合素子により不完全混合される現象を利用した複合繊維では、静止型混合素子の原理上、紡糸パックに工夫を施しても、複合断面を構成する成分の形状と積層形態は比較的揃った状態になるものであり、天然繊維が織りなす複雑な外観や風合いを実現するのは困難なことであり、これらの繊維を活用した加工糸では高次加工において複雑な加工を施す必要があったり、他素材との後混繊が必要になるなど、高次加工の制約が伴う場合があった。
このため、天然繊維の織りなす複雑な外観や風合いを実現するのに適した繊維の要望が高く、例えば、単糸の横断面において、各成分の形態が多様性を持ちながらも、一定の規則性を持った複合繊維が望まれていた。
上記課題は、以下の手段により達成される。すなわち、
(1)2種類以上の成分が横断面を構成する複合繊維において、各成分の形態が多様性を持ったマーブル模様状の複合形態を有しており、該複合形態が繊維軸方向に連続であり、該繊維を構成する少なくとも1種類の成分の横断面が、平均円形度0.20以上、0.80以下であり、円形度の最小値と最大値の差が0.30以上あり、U%が1.0%以下であることを特徴とする複合繊維。
(2)該横断面の円形度0.10以下のセグメントがセグメント総数に対して1~20%存在することを特徴とする(1)に記載の複合繊維。
(3)成する成分がいずれもポリエステルであることを特徴とする(1)または(2)に記載の複合繊維。
)(1)から()のいずれかに記載の複合繊維が少なくとも一部に含まれる繊維製品。
本発明は、2種類以上の成分が、所謂マーブル模様状に練り込まれた横断面を有する複合繊維に関するものであり、天然調加工糸を得るのに適した複合繊維を提供するものである。本発明の複合繊維を活用すれば、天然繊維のような自然な斑と柔らかな手触りを有したテキスタイルを得ることができ、さらに、その特徴的な横断面形態により、繰り返し糸ガイド等での擦過や、加熱下での圧縮変形が施される高次加工において、複合繊維の毛羽立ち等が抑制され、高次加工通過性にも極めて優れるため、品位高く天然調テキスタイルを加工することが可能となる。
本発明のマーブル模様状繊維の横断面構造の一例の概略図である。 本発明のマーブル模様状繊維で各成分を低度に混合した横断面構造の概略図である。 本発明のマーブル模様状繊維で各成分を強度に混合した横断面構造の概略図である。 従来の不均一混合積層型複合繊維の横断面構造の概略図である。 本発明のマーブル模様状繊維の製造方法を説明するための横断面図である。
以下、本発明について望ましい実施形態と共に詳述する。
本発明の複合繊維とは、2種類以上の成分により繊維の横断面を構成しているものであり、該横断面において、各成分の形態が多様性を持ちながらも、規則性を持ったマーブル模様状の複合形態を有するものである。
該横断面におけるマーブル模様状の複合形態とは、図1に例示するような各成分が練り込まれた形態を意味し、形状および方向が不揃いな成分が点在するものである。
例えば、円形状の成分(図1のC)や筋形状の成分(図1のD)、三角形状の成分(図1のE)、さらには、これらが複数接合したような複雑な形状の成分(図1のF)等が点在する複合形状を有する。
該横断面の複雑な複合形態は点在する成分の円形度により規定することができ、本発明では、該繊維を構成する少なくとも1種類の成分が、平均円形度0.20以上、0.80以下であり、円形度の最小値と最大値の差が0.30以上あることを要件としている。
ここで言う円形度とは、横断面において点在する成分の形状の複雑さを表す指標であり、繊維の横断面を2次元的に撮影した画像において、
(成分の円形度)={4π×成分の面積/(成分の周囲長)
として求めることができ、本発明においては、以下のようにして求めるものである。
すなわち、繊維の横断面を構成する成分の界面が観察できる倍率で、繊維の横断面を実体顕微鏡等で2次元的に撮影する。この際、繊維を構成する成分のうち、特定成分のみに染色を施せば、成分界面のコントラストが明瞭になり後述する画像処理を効率的に行えるため、好適である。
撮影した繊維断面の画像を画像解析ソフト等にてグレースケール画像に変換し、閾値を調整して2値化処理を行う。2値化処理された画像からある特定成分のセグメントの断面パラメーターを読み取り、すべてのセグメントの円形度を求める。ここで言うセグメントとは、2値化処理された画像において、異なる成分により周囲を囲まれて分離された成分のことを意味する。求めた各セグメントの円形度の算術平均が本発明で言う平均円形度である。
本発明の複合繊維は、天然繊維のような自然な斑と柔らかな手触りを醸し出すことを目的としており、上記したマーブル模様状の横断面構造が単糸毎にその糸特性や、色調、光沢等に変化を与え、天然調の風合いや外観を醸し出すことになる。例えば、本発明の複合繊維を構成する成分にポリエステルとカチオン可染性ポリエステルを用い、テキスタイルとした後にカチオン染色した場合には、濃淡の異なる各成分が多様な状態で表面に露出することとなり、表面に微細な濃淡差が生まれ、色調や光沢変化に富むものとなる。また、本発明の複合繊維を構成するうちの1種類の成分を予め易溶出成分としておき、本発明の複合繊維とした後に、該成分を溶出させると、不揃いな断面の極細繊維が発生する。この断面形状が不揃いな極細繊維は色調、光沢、凹凸感等に変化を与えることに加えて、さらに極細繊維間の各所に微細で不揃いな独特の空隙を形成することになり、自然な斑と柔らかな手触りが発現する。この極細繊維による織編物等のテキスタイル活用を想定した場合、複合繊維の横断面は、1種類の成分が特定の形状に揃うことなく、多様な形態を形成していることが好適であり、言い換えると、形状の複雑さを表す円形度が偏りなく広範に分布して不揃いとなることがポイントになる。
円形度が最小値の0から最大値の1まで広範に分布する結果として、平均円形度は最小値と最大値の中間である0.50に近づき、円形度の最小値と最大値の差は大きくなる傾向となる。
本発明の効果を得るための第1および第2の要件として、該繊維を構成する少なくとも1種類の成分の横断面において、平均円形度が0.20以上、0.80以下である必要があり、なおかつ、円形度の最小値と最大値の差が0.30以上である必要がある。
係る範囲であれば、複合繊維の横断面において、該1種類の成分が特定の形状に揃うことなく、円形度が0に近い枝分かれしたような複雑な形状から円形度が1に近い単純な円形状まで存在することとなり、他方の成分を溶出させることで、不揃いな断面の繊維を発生させることができる。さらに、この円形度で規定される各成分が不規則に練り込まれた複合形状によって、該複合繊維は優れた高次加工通過性も発揮する。これは、円形度が広範に分布する結果として、該複合繊維の横断面では、複雑な形状の成分(図1のF)が存在することになり、成分間の接触面積が増加するとともに、複雑な形状の成分が有する他成分への入り込み部でアンカー効果が作用するため、複合繊維の成分間の界面剥離が生じづらくなるからである。ここで言うアンカー効果とは、ある成分が対象物に入り込んだ構造をとることで、機械的に剥離することが困難となり、剥離強度が増加する現象のことである。
該複合繊維から得られる自然な斑と高次加工通過性を高度化するには、複雑な形状の成分が有する凹凸を強調することが好適であり、そのためには複雑な形状の成分を単純な円形状の成分よりも若干多くすることが好適であり、平均円形度は0.20以上、0.50以下とすることが好ましい。さらに自然な斑を強調したい場合には、円形度はより広範に分布する方が好適であり、円形度の最小値と最大値の差は0.50以上あることが好ましい。
また、横断面を構成する少なくとも1種の成分が特定の形状に揃わないことを特徴とする該複合繊維においては、横断面を構成する成分のセグメント数が多い方が、より多くの形状が不揃いな成分を得られることになり、他方の成分を溶出させることで、より不揃いな断面の繊維を発生させることができる。つまり、該繊維の横断面を構成する少なくとも1種類の成分のセグメント数が多い方が好適である。ここで言うセグメント数とは、前述した2値化処理された画像において、1本の単糸横断面を構成するセグメントの数を意味する。この場合、2値化処理された横断面におけるセグメント数が10以上あることが好ましい。
以上のように本発明の複合繊維は、その横断面を構成する各成分の形態が多様性を持ちながらも、規則性を持ったマーブル模様状の複合形態を有すものである。その特徴的な横断面形態は、天然繊維のような自然な斑と柔らかな手触りを醸し出す天然調テキスタイルを得るのに適したものであるが、更に高次加工通過性という観点も好適な効果を奏でるものである。
すなわち、上述したように該複合繊維の横断面を構成する1種類の成分が特定の形状に揃うことなく、多様な形態を形成していることがポイントになり、木の根のように複雑に入り込んだ形状のセグメント(図1のG)がセグメント総数に対する存在比率が、アンカー効果を作用させ、界面剥離抑制効果を顕著化するという観点から注目すべき要件となる。ちなみに、この木の根のように複雑に入り込んだ形状のセグメントは、その形状の複雑さから本発明で言う円形度が0.10以下になるものであり、本発明で得られる複合繊維において、円形度が0.10以下のセグメントは界面剥離抑制に有効に作用するものである。
このため、本発明では高次加工通過性を良好にし、テキスタイルとした際の品位を良好なものとするためには、該円形度0.10以下のセグメントがセグメント総数に対して1~20%存在することが好ましい。
円形度0.10以下のセグメントがセグメント総数に対して1%以上であれば、仮撚加工の加撚工程等、加熱下で圧縮変形が施された場合でも、界面剥離が抑制され、複合繊維の毛羽立ちや、テキスタイルとした場合の品位が良好に保たれるだけでなく、高次加工工程での糸切れなどを誘発しにくく、良好な操業性が保たれる。また、該横断面において、円形度0.10以下のセグメントがセグメント総数に対して20%以下であれば、特定の成分が、過剰に他方の成分を取り囲む部分が少なくなり、例えば、テキスタイルとした後に1種類の成分を溶出させる場合にも、本発明の特徴である不揃いな断面の極細繊維が効率的に発生し、処理が短時間で完了するといった効果を奏でる。
また、本発明の複合繊維は、複合断面を形成する各成分が横断面での形状は不揃いながらも、繊維軸方向には連続しており、一般のブレンド紡糸等で見られるような口金直下における細化の不安定現象は見られない。このため、安定した吐出となるため、得られた複合繊維は、繊維軸方向の太さ均一性にも優れ、品位高く天然調テキスタイルを加工するのに適するものである。
一般に、2種類以上の成分が混在する複合繊維では、各成分の伸長変形挙動が異なるため、製糸工程や延伸工程における伸長変形が不安定になりやすく、特に、複合繊維を構成する成分が繊維軸方向に非連続である場合には、この不安定性が助長され、繊維軸方向の太さ斑が大きくなる傾向がある。複合繊維を構成する少なくとも1種類の成分が繊維軸方向に連続している場合には、製糸工程や延伸工程における伸長変形が安定なものとなり、繊維軸方向の過度な太さ斑の発生が抑制され、その結果、テキスタイルに加工したときの粗大な色調斑や凹凸斑を回避することができ、品位高く天然調テキスタイルを得ることができる。このことから、本発明において品位高く天然調テキスタイルを加工するためには、該複合繊維を構成する少なくとも1種類の成分が繊維軸方向に連続していることが好ましい。
なお、ここで言う繊維軸方向の太さ斑とは、繊度斑の指標であるウスター(繊度斑)U%の値で表すことができ、品位高く天然調テキスタイルを加工するには、U%は1.0%以下であることが好ましい。U%が1.0%以下であれば、テキスタイルとしたときに発現する色調斑や凹凸斑の程度がより自然なものとなり、品位高い天然調テキスタイルが得られる。特に、天然調テキスタイルを目的とする場合には、繊度斑によりテキスタイルとした場合には、染め斑等が顕著になりやすくスジなどの高次加工における欠陥を誘発する場合があり、この繊度斑が制御出来ていることが好適となる。また、本発明の特徴である複合繊維を構成する少なくとも1種類の成分が繊維軸方向に連続している場合には、製糸工程や延伸工程での伸長変形が安定化することで、糸切れの発生が抑制され、操業性が安定化するという効果も得られるのである。
本発明の複合繊維を溶融紡糸にて製造する場合には、構成する成分が熱可塑性ポリマー同士であると加工性に優れるため、例えば、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリメタクリル酸メチル系、ポリフェニレンサルファイド系などのポリマー群から選ぶとよい。
また、界面剥離抑制と複合断面を良好とする観点では、該繊維を構成する成分間の溶解度パラメーター差は小さい方が良く、界面を形成する2種類の成分の溶解度パラメーター差が3.0以下となるようポリマーを選択するとよい。なお、ここで言う溶解度パラメーター(SP値)差とは、(蒸発エネルギー/モル容積)1/2で定義される物質の凝集力を反映するパラメーターを意味し、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載の値を用いることができる。特に、本発明の複合繊維をテキスタイルとした後に、1種類の成分を溶出させ、不揃いな断面の極細繊維を発生させる場合には、該繊維を構成する成分をアルカリ易溶解性ポリマーとアルカリ難溶解性ポリマーとし、アルカリ減量処理を行うとよい。例えば、該繊維を構成する成分をアルカリ易溶解性ポリエステルとアルカリ難溶解性ポリエステル、あるいは、アルカリ易溶解性ポリエステルとポリアミド(アルカリ難溶解性)とすれば、アルカリ減量処理により、アルカリ難溶解性ポリマーからなる不揃いな断面の極細繊維が発生することとなり、断面形状に由来した自然な斑が得られるため好適である。
本発明の複合繊維を活用することで、天然繊維のような自然な斑と柔らかな手触りを有するテキスタイルが得られることから、本発明は、インナーやアウターなどの一般衣料用途からカーテン・クロスなどのインテリア用途など衣料・アパレル用途として幅広く用いることができる。
以下に本発明の複合繊維の製造方法の一例を詳述する。
本発明の複合繊維、すなわち2種以上の成分からなる横断面において各成分が不定形であり、マーブル模様状の形態を有する複合繊維を、複合口金を用いて製糸することにより製造可能である。ここで該複合繊維を製糸する方法としては、生産性を高めるという観点から溶融紡糸が好適である。
本発明の複合繊維に用いる複合口金としては、特開2018-154934号公報に記載される口金を複合口金仕様にして用いることが好ましい。図5に示した複合口金は、上から計量プレートH、合流プレートIおよび吐出プレートJの、3種類の部材が積層された状態で紡糸パック内に組み込まれ、紡糸に供される。ちなみに図5は、A成分およびB成分といった2種類の成分を用いた例であり、必要であれば、3種類以上の成分を用いて製糸してもよい。
図5に例示した複合口金では、計量プレートHにより、合流プレートIの各孔当たりの成分(ポリマー)量を計量し、合流プレートIによって、計量された異なるポリマーを任意の回数に合流させて混合することで、ポリマー流の横断面において、各ポリマーがマーブル模様状に複合され、吐出プレートJによって、合流プレートIで混合されたポリマー流を圧縮して、吐出するという役割を担っている。
合流プレートについては、特開2018-154934号公報に記載されているため、詳細は割愛するが、異なるポリマーが流れる流路を複数回合流させるもので、それぞれの流路孔から流れてきたポリマーが合流を繰り返すことで異なるポリマーが混合される。つまり、合流プレートには図5に例示するような多段合流微細流路Kが、吐出プレートJの各吐出孔に対して存在しており、この多段合流微細流路Kの各段において、異なるポリマー流の合流位置や角度といった合流形態が異なることから、合流を繰り返した場合にポリマー流の横断面において、各成分が多様な形態を有するマーブル模様状の形態を形成するのである。また、合流プレートIの多段合流微細流路Kの合流段数を変更することで、複合断面を容易に変化させることができ、例を示すと、合流段数が少ない場合には図2に例示するような粗大なマーブル模様状の構造であり、合流段数を増やすことで図1、さらに増やすことで図3のように繊細なマーブル模様状の構造にすることができる。なお、この複合断面は繊維軸方向に連続して形成することができ、特開昭59-100717号公報にあるような静止型混合素子で不均一混合したポリマー流を各吐出孔に偶発的に分配する方式(この方式による断面構造は図4のようになる。)に比べて、各単糸の複合比率や複合断面が経時で変化することがないため、糸切れなく安定的に製糸することができる。
複合口金の説明が錯綜するのを避けるために、図示されていないが、計量プレートHよりも上に積層する部材に関しては、紡糸機および紡糸パックに合わせて、流路を形成する部材を用いればよい。計量プレートHを、既存の流路部材に合わせて設計することで、既存の紡糸パックおよびその部材をそのまま活用することができる。このため、特に該口金のために紡糸機を専有化する必要はない。また、実際には、流路-計量プレートH間あるいは計量プレートH-合流プレートI間に複数枚の流路プレートを積層するとよい。これは、口金断面方向および単糸の断面方向に効率よく、ポリマーが移送される流路を設け、合流プレートIに導入される構成とすることが目的である。吐出プレートJより吐出された複合ポリマー流は、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られて、複合繊維となる。
以上のような複合口金を用いて、本発明の複合繊維を製造することができる。ちなみに、該複合口金を使用すれば、溶液紡糸のような溶媒を使用する紡糸方法でも、本発明の複合繊維を製造することが可能であることは言うまでもない。
溶融紡糸を選択する場合、本発明の複合繊維を構成する成分としては前述のとおりである。例えば、ポリエチレンテレフタレートあるいはその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリ乳酸、熱可塑性ポリウレタンなどの溶融成形可能なポリマーが挙げられる。特にポリエステルやポリアミドに代表される重縮合系ポリマーは融点が高く、より好ましい。また、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。また、界面剥離の抑制と複合断面を良好とする観点から考えると、該繊維を構成する成分間の溶解度パラメーター差が3.0以下であることが好ましく、特に、本発明の複合繊維をテキスタイルとした後、1種類の成分を溶出させて、本発明の特徴である不揃いな断面の極細繊維を発生させたい場合には、アルカリ易溶解性ポリマーとアルカリ難溶解性ポリマーを含むことが好適であり、例えば、アルカリ易溶解性ポリエステルとアルカリ難溶解性ポリエステル、あるいは、アルカリ易溶解性ポリエステルとポリアミド(アルカリ難溶解性)を用いることが挙げられる。特に、易溶解性ポリエステルとしては、ポリエチレングリコール、ナトリウムスルホイソフタル酸が単独あるいは組み合わされて共重合したポリエステルを用いることが紡糸性および低濃度の水系溶剤に簡単に溶解するという観点から好ましい。本発明の複合繊維から不揃いな断面の極細繊維を発生させるのに好適なポリマーの組合せの例として、融点の関係から易溶解成分に5-ナトリウムスルホイソフタル酸が5mol%~15mol%共重合されたポリエチレンテレフタレートおよびに前述した5-ナトリウムスルホイソフタル酸に加えて重量平均分子量500~3000のポリエチレングリコールが5wt%~15wt%共重合されたポリエチレンテレフタレート、難溶解成分にポリエチレンテレフタレート、あるいは、ポリアミド-6を用いることが挙げられる。
本発明の複合繊維を紡糸する際の紡糸温度は、2種類以上の成分のうち、主に高融点や高粘度ポリマーが流動性を示す温度とする。この流動性を示す温度としては、分子量によっても異なるが、そのポリマーの融点から融点+60℃以下で設定するよい。これ以下であれば、紡糸ヘッドあるいは紡糸パック内でポリマーが熱分解等することなく、分子量低下が抑制されるため好ましい。
本発明の複合繊維を紡糸する際の吐出量としては、0.1g/min・hole~20.0g/min・holeとすることで安定して製造することができる。特に延伸後の単糸繊度が4dtex未満となるような単孔吐出量とすると、その細さから布帛とした際に柔軟な風合いが得られるため、好ましい。本発明の複合繊維を紡糸する際のA成分とB成分の比率は、吐出量を基準にA成分/B成分比率で5/95~95/5の範囲で選択することができる。A成分として難溶解成分、B成分として易溶解成分を用いて、本発明の複合繊維から不揃いな断面の極細繊維を発生させる場合、難溶解成分比率が高いほど極細繊維の生産性という点では好ましく、A成分/B成分比率が、30/70~20/80であれば、該繊維の横断面で難溶解成分が易溶解成分を過剰に取り囲むこともなく、短時間で溶解処理を完了することができる。
このように吐出されたポリマー流は、冷却固化されて、油剤を付与されて周速が規定されたローラーによって引き取られて複合繊維となる。ここで、この引取速度は、吐出量および目的とする繊維径から決定すればよいが、本発明に用いる複合繊維を安定に製造するには、100~7000m/minの範囲とすることが好ましい。この複合繊維は、高配向とし力学特性を向上させるという観点から、延伸を行うとよい。この延伸は、紡糸工程にて一旦巻き取られた後で行うことも良いし、一旦、巻き取ることなく、引き続き延伸を行うこともよい。
この延伸条件としては、例えば、一対以上のローラーからなる延伸機において、一般に溶融紡糸可能な熱可塑性を示すポリマーからなる繊維であれば、ガラス転移温度以上融点以下温度に設定された第1ローラーと結晶化温度相当とした第2ローラーの周速比によって、繊維軸方向に無理なく引き伸ばされ、且つ熱セットされて巻き取られ、図1のような複合断面を有する複合繊維を得ることができる。第1ローラーの温度の上限としては、予熱過程で繊維の糸道乱れが発生しない温度とすることが好ましく、例えば、ガラス転移温度が70℃付近に存在するポリエチレンテレフタレートの場合には、通常この予熱温度は80~95℃程度で設定される。
吐出プレート3より吐出された複合ポリマー流は、上述の製造方法に従い、冷却固化後、油剤を付与され、規定の周速になったローラーで引き取られた後、加熱ローラーで延伸され、所望の複合繊維となる。
このようにして得られた本発明の複合繊維は、マーブル模様状の断面構造が単糸毎にその糸特性や、色調、光沢等に変化を与えることから、天然調の風合いや外観を醸し出すものとなる。また、本発明の複合繊維から不揃いな断面の極細繊維を得るには、易溶解成分が溶解可能な溶剤などに複合繊維を浸漬して易溶解成分を除去することで、難溶解成分からなる不揃いな断面の極細繊維を得ることができる。易溶解成分が、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などが共重合された共重合ポリエチレンテレフタレートの場合には、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いることができる。本発明の複合繊維をアルカリ水溶液にて処理する方法としては、例えば、複合繊維あるいはそれからなるテキスタイルとした後で、アルカリ水溶液に浸漬させればよい。この時、アルカリ水溶液は50℃以上に加熱すると、加水分解の進行を早めることができるため好ましい。なお、本発明の複合繊維から不揃いな断面の極細繊維を発生させる方法としては、上述の溶解処理に限定されるものではなく、延伸、もみ加工、起毛等の物理的方法、熱処理、沸水処理、膨潤処理等の化学的方法、あるいはこれらの組合せによっても実施可能である。
以上のように、本発明の複合繊維の製造方法を一般の溶融紡糸法に基づいて説明したが、メルトブロー法およびスパンボンド法でも製造可能であることは言うまでもなく、さらには、湿式および乾湿式などの溶液紡糸法などによって製造することも可能である。
以下実施例を挙げて、本発明の複合繊維について具体的に説明する。
実施例および比較例については、下記の評価を行った。
A.ポリマーの溶融粘度
なお、測定温度は紡糸温度と同様にし、実施例あるいは比較例には、1216s-1の溶融粘度を記載している。なお、加熱炉にサンプルを投入してから測定開始までを5分とし、窒素雰囲気下で測定を行った。
B.ポリマーの融点
チップ状のポリマーを真空乾燥機によって、水分率200ppm以下とし、約5mgを秤量し、TAインスツルメント製示差走査熱量計(DSC)Q2000型を用いて、0℃から300℃まで昇温速度16℃/分で昇温後、300℃で5分間保持してDSC測定を行った。昇温過程中に観測された融解ピークより融点を算出した。測定は1試料につき3回行い、その平均値を融点とした。なお、融解ピークが複数観測された場合には、最も高温側の融解ピークトップを融点とした。
C.溶解度パラメーター差
溶解度パラメーター(SP値)は、(蒸発エネルギー/モル容積)の平方根で定義される物質の凝集力を反映するパラメーターであり、種々の溶剤にポリマーを浸漬させ、膨潤の圧が極大となる溶剤の(蒸発エネルギー/モル容積)の値を該ポリマーの(蒸発エネルギー/モル容積)とすることにより求めることができる。このようにして求められたSP値は、例えば「プラスチック・データブック」旭化成アミダス株式会社/プラスチック編集部共編、189ページ等に記載されており、この値を用いることができる。また、組み合わせるポリマーの溶解度パラメーター差は、(A成分のSP値-B成分のSP値)の絶対値として算出する。
D.繊度
複合繊維の100mの重量を測定し、その値を100倍した値を算出した。この測定を10回繰り返し、その平均値を繊度(dtex)とした。また上記の繊度をフィラメント数で割った値を単糸繊度(dtex)とした。
E.ウスターU%
繊度斑測定装置Zellweger製(UT-4)を用いて、供糸速度100m/分、ツイスター回転数6000rpm、測定長100mの条件で、複合繊維のウスターU%(H)を測定した。
F.平均円形度および円形度の最大値と最小値の差
吐出直後の複合繊維を繊維軸方向の任意の位置で繊維軸方向とほぼ垂直に切断し、その切断面をOLYMPUS製 光学顕微鏡にて単糸の横断面を構成する成分の界面が観察できる倍率で撮影した。画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、1本の単糸横断面を抽出した後、グレースケール画像に変換し、閾値を調整して2値化処理を行った。2値化処理された画像からある特定成分を表すセグメントの断面パラメーターを読み取り、その抽出されたすべてのセグメントの円形度を測定した。同様の処理を5本の単糸横断面について繰り返し行い、求められた各セグメントの円形度を算術平均し、小数点第3位以下を四捨五入して平均円形度とした。なお、各セグメントの円形度は画像処理ソフトにより以下の式で算出した。
(セグメントの円形度)={4π×セグメントの面積/(セグメントの周囲長)
抽出されたすべてのセグメントのうち、円形度が最大のものと最小のセグメントの円形度の差を求めた。
G.円形度0.10以下のセグメントのセグメント総数に対する割合
上述した2値化処理された画像で抽出されたすべてのセグメントのうち、円形度が0.10以下のセグメント数のセグメント総数に対する割合を算出した。
H.外観(染色布帛)
複合繊維を織密度が180本/2.54cmとなるように繊維の本数を調整し、平織地を作製した。得られた平織地を80℃で20分間精練し、次の染色条件で染色した。
染料:NICHILON BLUE(日成化成製) 3.0%owf
助剤:ウルトラN-2(ミテジマ化学製) 0.5g/L
分散剤:RAP-250(明成化学製) 0.5g/L
染色条件:50℃×20分 → 100℃×30分。
上記で染色した平織地の外観を検査者(5人)により、次の基準に基づき3段階判定した。
A:明瞭な濃淡がある。
B:やや不明瞭だが濃淡がある。
C:単調。
I.外観(アルカリ処理布帛)
複合繊維を織密度が180本/2.54cmとなるように繊維の本数を調整し、平織地を作製した。得られた平織地を90℃に加熱した濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した後に水洗いして、60℃に設定した熱風乾燥機で30分間乾燥させた。アルカリ処理した平織地の外観を検査者(5人)により次の基準に基づき4段階判定した。
S:自然で艶やかな光沢がある。
A:自然な光沢がある。
B:細かいちらつきがある。
C:ぎらつきがある。
J.手触り(アルカリ処理布帛)
外観評価で使用したアルカリ処理した平織地について、手触りを検査者(5人)の触感により次の基準に基づき4段階判定した。
S:柔らかみがあり、手触りが優れている。
A:手触りが良好。
B:衣料用途として使用可能なレベル。
C:手触りが悪い。
K.耐剥離性
複合繊維を織密度が180本/2.54cmとなるように繊維の本数を調整し、平織地を作製した。得られた平織地について、フロスティング処理を強条件(湿潤状態、荷重:7.36N)または弱条件(乾状態、荷重:4.12N)で行った後、平織地を繊維軸方向と垂直に切断し、その繊維断面をHITACHI製 走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮影して、得られた繊維断面写真の切断面に界面剥離が存在するかを観察した。この時、耐剥離性を次の基準に基づき3段階判定した。
A:強条件のフロスティング後でも界面剥離なし。
B:強条件のフロスティング後では界面剥離が存在するが、弱条件では界面剥離なし
C:弱条件のフロスティング後でも界面剥離が存在する。
L.高次加工通過性(仮撚加工における糸切れ回数)
複合繊維の高次加工通過性は3kg巻きパーンを仮撚加工したときの糸切れ回数により3段階評価した。仮撚加工条件は、加工速度500m/min、延伸倍率1.05倍、仮撚加工温度130℃(熱板長2.0m)、仮撚数3000T/Mとし、仮撚加工した際の単糸切れを含めた糸切れ回数から高次加工性を評価した。仮撚加工の操業への支障を最小限に抑えられる範囲として、加工時の糸切れ回数が4回以下となることを好適な範囲とした。さらにこの糸切れ回数が1回以下であれば、仮撚加工の操業への支障がないと言えるので、優れた高次加工通過性を有すると判定した。
A:糸切れ回数0~1回
B:糸切れ回数2~4回
C:糸切れ回数5回以上。
[実施例1]
A成分として、ポリエチレンテレフタレート(PET、溶融粘度:120Pa・s、融点:254℃、SP値:21.4MPa1/2)と、B成分として、5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:95Pa・s、融点:233℃、SP値:22.9MPa1/2)を準備した。なお、組み合わせたポリマーの溶解度パラメーター差は1.5MPaであった。
これらの成分を290℃で別々に溶融後、A/B成分の複合比率を50/50として、図5に例示した複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させ、吐出孔から複合ポリマー流を吐出した。なお、合流プレートには合流段数2段の多段合流微細流路Aを用い、図1に示すようなマーブル模様状の複合断面形状となるように吐出した。吐出された複合ポリマー流を冷却固化させた後、油剤付与し、紡糸速度1000m/minで巻取り、200dtex-8フィラメント(総吐出量20g/min)の未延伸糸を採取した。巻き取った未延伸繊維を90℃と130℃に加熱したローラー間で3.5倍延伸を行い、56dtex-8フィラメントの延伸繊維を得た。繊度斑の指標であるU%は0.6%であり、繊維軸方向の太さ均一性に優れたものであった。なお、この複合繊維を100kg製糸するにあたり、糸切れは発生せず、製糸性は良好であった。
得られた複合繊維の横断面を観察したところ、各成分がマーブル模様状に練り込まれた構造を有しており、A成分に注目すると、特定の形状に偏ることなく、枝分かれがあるような複雑な形状から円のような単純な形状まで広範に分布しており、平均円形度は0.37であり、円形度の最大値と最小値の差は0.71であった。また、木の根のように入り込んだ形状のセグメントも観察され、円形度0.1以下のセグメントの割合は6%であった。また、1本の単糸横断面におけるセグメント数は18であった。なお、横断面におけるマーブル模様状の複合形態は繊維軸方向に連続していた。
得られた複合繊維の3kg巻きパーンを仮撚加工したところ、各成分がマーブル模様状に入り込んだ横断面形態をしていることから、糸切れはなく、高次加工通過性は良好であった。また、得られた複合繊維を製織した織物で耐剥離性を評価した結果、強条件のフロスティング後でも界面剥離は観察されなかった。
得られた複合繊維を製織した織物を80℃で20分間精練し、カチオン染色して染色織物を得た。染色した織物は、単糸を構成する染色性を異にする成分が多様な状態で表面に露出することから、自然な濃淡を有しており、色調変化に富むものであった。
得られた複合繊維を製織した織物を90℃に加熱した濃度1%の水酸化ナトリウム水溶液(浴比1:50)に30分間浸漬することで、B成分のSSIA-PEG共重合PETを99%以上除去し、不揃いな断面の極細繊維を発生させ、これにより構成される織物を得た。この極細繊維で構成される織物を評価したところ、不揃いな断面を有すことから、織物表面には自然で艶やかな光沢があり、さらに不揃いな断面の単糸間で独特な空隙を形成することから手触りも優れており、天然繊維のような暖かみのある風合いを有していた。結果を表1に示す。
[実施例2、3、4、5]
実施例1に記載の方法において、合流プレートの合流段数を1段(実施例2)、3段(実施例3)、6段(実施例4)、7段(実施例5)と変更する以外はすべて実施例1と同じに実施した。これらの複合繊維の評価結果は、表1に示すとおりであるが、合流段数に関わらず複合繊維の横断面で各成分はマーブル模様状に練り込まれた構造を形成していた。なお、横断面のマーブル模様状の複合形態は繊維軸方向に連続していた。実施例2と実施例4~5では、円形度0.1以下のセグメントが存在しないことから、強条件のフロスティングで界面剥離が観察され、耐剥離性は若干低下したが、高次加工通過性は良好であった。また、実施例4~6では、合流段数の増加にともない、より微細なマーブル模様状の構造となることから、溶解処理後に得られる不揃いな断面の極細繊維がナノファイバーオーダーの直径となり、特にソフトでしなやかな風合いを有していた。なお、実施例2から実施例5のすべてにおいて、複合繊維を100kg製糸したときに糸切れ回数は発生せず、製糸性は良好であった。
[実施例6、7]
実施例1に記載の方法において、A/B成分の複合比率を30/70(実施例5)、70/30(実施例6)と変更する以外はすべて実施例1と同じに実施した。これらの複合繊維の評価の結果は、表1に示す通りであるが、実施例1に類似したマーブル模様状の複合断面を有しており、耐剥離性および高次加工通過性は良好であった。実施例6では、横断面において、難溶解成分のPETが易溶解成分のSSIA-PEG共重合PETの周りを取り囲む構造が一部で観察され、実施例1から実施例5で用いた溶解処理条件では、SSIA-PEG共重合PETが30%残存する結果となった。このため、問題ないレベルではあるが、若干外観および手触りに劣るものとなった。また、実施例5および実施例6において、複合繊維を100kg製糸したときに糸切れは起こらず、製糸性は良好であった。
[実施例8]
実施例1に記載の方法において、A成分をポリアミド-6(N6、溶融粘度:100Pa・s、融点:225℃、SP値:23.7MPa1/2)、B成分を5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:95Pa・s、融点:233℃、SP値:22.9MPa1/2)として280℃で紡糸した以外はすべて実施例1と同様に実施した。なお、組み合わせたポリマーの溶解度パラメーター差は0.8MPaとなる。これらの複合繊維の評価結果は、表1に示すとおりであるが、複合化するポリマーを変更した場合であっても、繊維横断面で各成分は図1のようなマーブル模様状に練り込まれた構造を形成していた。円形度0.1以下のセグメントが存在することから、強条件のフロスティングでも界面剥離が観察されず、耐剥離性は良好であった。溶解処理により不揃いな断面の極細繊維を発生させた織物を評価したところ、不揃いな断面形状により、織物表面は自然で艶やかな光沢を呈しており、さらに不揃いな断面の単糸間で独特な空隙を形成することから手触りの点でも優れるものであった。なお、複合繊維を100kg製糸したときに糸切れ回数は発生せず、製糸性は良好であった。
[実施例9]
実施例1に記載の方法において、A成分をポリプロピレン(PP、溶融粘度:70Pa・s、融点:165℃、SP値:16.8MPa1/2)、B成分を5-ナトリウムスルホイソフタル酸8.0モル%、ポリエチレングリコールを9wt%共重合したポリエチレンテレフタレート(SSIA-PEG共重合PET、溶融粘度:95Pa・s、融点:233℃、SP値:22.9MPa1/2)として280℃で紡糸した以外はすべて実施例1と同様に実施した。なお、組み合わせたポリマーの溶解度パラメーター差は6.1MPa1/2となる。これらの複合繊維の評価結果は、表1に示すとおりであるが、繊維横断面で各成分はマーブル模様状に練り込まれた構造を形成していたものの、組み合わせるポリマーの溶解度パラメーター差が大きいため、円形度が大きな単純な円形状のセグメントが形成され、平均円形度は0.69となった。円形度0.1以下のセグメントが存在しないことから、強条件のフロスティングで界面剥離が観察され、耐剥離性は低下した。なお、複合繊維を100kg製糸したときに糸切れ回数は発生せず、製糸性は良好であった。
[実施例10、11、12、13]
実施例1に記載の方法において、多段合流微細流路Aとはポリマー流の合流位置と合流角度が異なる多段合流微細流路Bで構成された合流プレートを用い、その合流段数を2段(実施例10)、1段(実施例11)、3段(実施例12)、6段(実施例13)と変更する以外はすべて実施例1と同じに実施した。これらの複合繊維の評価結果は、表2に示すとおりであるが、合流段数に関わらず複合繊維の横断面で各成分はマーブル模様状に練り込まれた構造を形成しており、かつ、その構造は繊維軸方向に連続していた。実施例10~13では、実施例1~5と比較して円形度の最小値と最大値の差が小さく、比較的似通った形状のセグメントで構成されているものの、アルカリ処理した織物の表面は自然な光沢を有していた。実施例10と実施例12では、円形度0.1以下のセグメントが存在することから、強条件のフロスティングでも界面剥離が観察されず、耐剥離性は良好であった。なお、実施例10から実施例13のすべてにおいて、複合繊維を100kg製糸したときに糸切れ回数は発生せず、製糸性は良好であった。
[比較例1]
実施例1に記載の方法において、複合口金として特開平10-237715号公報および特開昭59-100717号公報に記載される静止型混合素子(混合素子数:2)を備えた複合口金を使用したこと以外はすべて実施例1と同じに実施した。比較例1で得られた複合繊維の結果は表1に示すとおりであるが、各成分がいびつな形状で4層から5層積層した横断面構造を有しており、横断面構造は繊維軸方向に沿って変化するものであった。U%は1.2%であり、繊維軸方向の太さ斑が大きかった。円形度の最小値と最大値の差は0.14と小さく、形状分布に乏しいことに加えて、セグメント数が2と非常に少ないことから、溶解処理後の織物の外観は単調で冷たく、手触りもごわつきのある硬いものであった。また、横断面がいびつではあるものの単調な積層構造であることから、弱条件のフロスティングでも界面剥離が生じ、仮撚加工においても糸切れが頻発し、高次加工通過性に問題があった。また、不均一混合した複合ポリマー流を各吐出孔へ偶発的に分配する方式であり、単糸間の複合比率に差があり、経時で複合比率にも変化が生じることから、この複合繊維を100kg製糸する際に8回糸切れが発生した。
[比較例2]
比較例1において、静止型混合素子の混合素子数を4に増やしたこと以外はすべて同じに実施した。比較例1に比べて、各成分がより多層に、かつ、いびつに積層された横断面構造を有す複合繊維が得られた。なお、横断面構造は繊維軸方向に沿って変化するものであった。円形度の最小値と最大値の差は0.09と非常に小さく、複雑な形状のセグメントだけが存在した形状分布に乏しい断面となり、溶解処理後の織物の外観はわずかに変化があるものの単調で冷たいものであった。また、弱条件のフロスティングでは界面剥離は観察されなかったものの、単糸間で複合比率に差があり、経時でも複合比率が変化することから、複合繊維を100kg製糸する際に6回糸切れが発生し、仮撚工程でも糸切れが頻発した。
A:A成分
B:B成分
C:円形状の成分(A成分)の例
D:筋形状の成分(A成分)の例
E:三角形状の成分(A成分)の例
F:多様な形状が結合した複雑な形状の成分(A成分)の例
G:木の根のように入り込んだ形状の成分(A成分)の例
H:計量プレート
I:合流プレート
J:吐出プレート
K:多段合流微細流路

Claims (4)

  1. 2種類以上の成分が横断面を構成する複合繊維において、各成分の形態が多様性を持ったマーブル模様状の複合形態を有しており、該複合形態が繊維軸方向に連続であり、該繊維を構成する少なくとも1種類の成分のセグメントの平均円形度が0.20以上、0.80以下であり、円形度の最小値と最大値の差が0.30以上あり、U%が1.0%以下であることを特徴とする複合繊維。
  2. 円形度0.10以下のセグメントがセグメント総数に対して1~20%存在することを特徴とする請求項1に記載の複合繊維。
  3. 構成する成分がいずれもポリエステルであることを特徴とする請求項1または2記載の複合繊維。
  4. 請求項1~請求項のいずれかに記載の複合繊維が少なくとも一部に含まれる繊維製品。
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