以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る型枠設置方法において用いられる型枠装置100について説明する。型枠装置100は、型枠を所定の高さずつ段階的に上昇させ、コンクリートを順次打設することによって、コンクリート構造物を上方に向かって構築するために用いられる装置である。以下では、図1に示すように、型枠装置100により構築されるコンクリート構造物がダム等の堤体である場合について説明する。なお、コンクリート構造物は、堤体に限定されず、例えば、橋脚であってもよいし、石炭等を貯留する筒状構造体であってもよい。
図1は、型枠装置100の概略構成を示す図であり、図2は、型枠装置100を図1の矢印Aの方向から型枠装置100を見た図である。なお、以下では、図1及び図2に示すように、上下・前後・左右の各方向を定義して説明する。
型枠装置100は、図1に示すように、上下方向に積層して打設された既設コンクリート1(2a,2b,2c)上に、新設コンクリート2dをさらに打設するために、後述の型枠部材30を設置する装置であって、既設コンクリート1の側面1aに沿って自ら上昇可能な構成(セルフクライミング機構)を備えている。
図1に示す例では、型枠装置100は、既設コンクリート1において上方側に打設された3つの層2a,2b,2cにそれぞれ埋設された後述の第1アンカー部材4を介して既設コンクリート1により支持されている。なお、型枠装置100を支持する既設コンクリート1の層数は3つに限定されず、2つ以上であればよく、4つ以上であってもよい。
既設コンクリート1の各層2a,2b,2cには、第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5がそれぞれ埋設されている。第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5は、内ネジアンカーであり、雌ネジ穴が既設コンクリート1の側面1aにおいて露出するように埋設されている。
図1に示すように、各層2a,2b,2cにおいて、第2アンカー部材5は、第1アンカー部材4よりも上方に配置されている。また、図2に示すように、第1アンカー部材4は、後述のレール部材70に沿って、これと対向する位置に配置されている。一方、第2アンカー部材5は、後述の型枠部材30の縦端太33に対向して、左右方向において略等間隔で配置されている。なお、図2では、第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5の配置をわかりやすくするために、第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5の配置に関連する部材以外については図示を省略している。
第1アンカー部材4は、図1に示すように、レール部材70を支持する支持部材6を既設コンクリート1に取り付けるために用いられ、第2アンカー部材5は、既設コンクリート1に対して型枠部材30を連結させるために設けられる連結部材36を既設コンクリート1に取り付けるために用いられる。なお、支持部材6は、レール部材70が設けられていない領域においては、第1アンカー部材4から取り外される。また、連結部材36は、既設コンクリート1に対して型枠部材30が固定される間だけ、既設コンクリート1の最上部に埋設された第2アンカー部材5に取り付けられる。
型枠装置100は、既設コンクリート1によって支持される基部10と、基部10上を既設コンクリート1に対して近づく方向及び離れる方向に移動可能な移動部20と、移動部20に回動自在に支持される型枠部材30と、移動部20に対する型枠部材30の角度を変更可能な角度変更部40と、支持部材6を介して第1アンカー部材4により支持されるレール部材70と、既設コンクリート1に対して基部10を上方へと移動可能なジャッキ80と、移動部20、角度変更部40及びジャッキ80の作動を制御する制御部50と、を備える。
レール部材70は、図2に示すように、断面がH形状の長尺部材であり、図1に示すように、各層2a,2b,2cに埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6によって支持された状態で既設コンクリート1の側面1aに沿って配置される。このように、レール部材70は、複数の支持部材6によって既設コンクリート1の側面1aに沿って移動可能にガイドされた状態で支持される。なお、レール部材70には、支持部材6に係止可能な図示しない係止部が設けられており、レール部材70が下方へ滑り落ちることは、この係止部が支持部材6に係止することによって防止される。
基部10は、前後方向に延び移動部20を支持する第1梁部材11と、第1梁部材11の下方に配置され前後方向に延びる第2梁部材12と、第2梁部材12の下方に配置され前後方向に延びる第3梁部材13と、これら梁部材11,12,13を連結する複数の斜材及び束材と、で構成された枠体であり、各梁部材11,12,13には、図示しない作業用足場が設けられる。
第1梁部材11の前端部、すなわち、既設コンクリート1側の端部には、第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6に係止可能な係止部14が設けられる。係止部14は、支持部材6に対して係止可能な構成だけではなく、レール部材70に対して係止可能な構成を併せ持っている。
このため、基部10は、第1梁部材11に設けられた係止部14が支持部材6及びレール部材70に係止した状態となることで、第1アンカー部材4を介して既設コンクリート1により支持された状態となる。
また、基部10には、既設コンクリート1の側面1aと基部10との間の間隔を、第2梁部材12の周辺において調整する間隔調整部材15が設けられる。なお、既設コンクリート1の側面1aと基部10との間の間隔を調整する部材は、複数箇所に設けられていてもよく、例えば、第3梁部材13の周辺にも設けられていてもよい。
また、第1梁部材11に設けられた係止部14は、レール部材70を左右方向から挟み込むような形状を有しており、後述のように、第1梁部材11を含む基部10を、既設コンクリート1の側面1aに沿って上方へと移動させる際に、基部10がレール部材70に沿って移動するように案内するガイド部材としても機能する。
ジャッキ80は、既設コンクリート1の側面1aに沿って伸縮自在に配置された油圧ジャッキであり、シリンダ部81とロッド部82とを有する。シリンダ部81は、第1梁部材11の係止部14に固定されており、シリンダ部81から突出したロッド部82の先端は、係止部83を介してレール部材70に対して係止可能となっている。具体的なジャッキ80の作動については、後述の型枠設置方法において説明する。なお、ジャッキ80は、油圧ジャッキに限定されず、伸縮自在な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動スクリュージャッキや電動ラックジャッキであってもよい。
型枠部材30は、移動部20及び角度変更部40とともに、基部10の第1梁部材11上に設けられる。
型枠部材30は、新設コンクリート2dが打設される領域に平滑な表面31aが臨むパネル部材31(型枠)と、パネル部材31の背面31bに設けられる補強部材32と、を有する。
補強部材32は、上下方向に延びる複数の縦端太33と、左右方向に延びる複数の横端太34と、を有する。縦端太33は、図2に示すように、左右方向において所定の間隔を空けて平行に並んで配置され、図1の矢印Aで示される方向で見たとき、所定の縦端太33間には、レール部材70が位置している。
また、補強部材32は、パネル部材31の下端部より下方に延長された延長部分32aを有し、この延長部分32aは、既設コンクリート1の最上部に埋設された第2アンカー部材5に取り付けられた連結部材36(例えばシーボルト)を介して既設コンクリート1に着脱可能に連結される。
また、縦端太33は、補強部材32の延長部分32aよりもさらに下方に延長された延出部33aを有し、この延出部33aには、既設コンクリート1の側面1aと縦端太33との間の間隔の大きさを所定の大きさに保持するために、高剛性材料で形成された間隔保持部材37が設けられる。なお、延出部33a及び間隔保持部材37は、すべての縦端太33に設けられてもよいし、左右方向において、2~3本おきに設けられてもよい。
ここで、新設コンクリート2dが打設される際に、パネル部材31を後方に押す圧力が作用すると、連結部材36により連結された部分が支点となって、縦端太33の延出部33aと既設コンクリート1の側面1aとの間の間隔が小さくなり、結果として、パネル部材31の位置が不安定となったり、所定の位置からずれたりすることで、新設コンクリート2dの側面が既設コンクリート1の側面1aに対してずれてしまうおそれがある。
これに対して、本実施形態では、図1に示すように、連結部材36よりも下方に間隔保持部材37が配置されている。換言すれば、連結部材36を挟んでパネル部材31とは反対側に間隔保持部材37が配置されている。
このため、パネル部材31を後方に押す圧力が作用したとしても、縦端太33の延出部33aと既設コンクリート1の側面1aとの間の間隔が小さくなることは、間隔保持部材37によって抑制される。
したがって、打設時にパネル部材31がふらついたり、所定の位置からずれたりすることが抑制され、結果として、新設コンクリート2dの側面を既設コンクリート1の側面1aの延長線上に位置させることが可能となる。
移動部20は、基部10の第1梁部材11上に設けられた図示しないレールに沿って前後方向に往復移動可能な本体部21と、本体部21によって回動自在に支持され型枠部材30の後側に連結される型枠部材支持部22と、を有し、上記構成の型枠部材30を既設コンクリート1に対して近づけたり離したりすることが可能である。
本体部21は、移動機構として、例えば、第1梁部材11に沿って伸縮自在に配置された図示しない油圧ジャッキを有し、油圧ジャッキのシリンダ部を本体部21に固定し、シリンダ部から突出したロッド部を第1梁部材11に連結することにより、前後方向に往復移動可能となっている。なお、移動機構は、油圧ジャッキに限定されず、第1梁部材11に対して移動部20を前後方向に移動させることが可能な構成を有していればどのような機構であってもよい。
型枠部材支持部22は、本体部21の前端部、すなわち、既設コンクリート1側の端部において、その下端部が回動自在に支持されている。本体部21に対する型枠部材支持部22の傾きは、角度変更部40によって変更される。
角度変更部40は、シリンダ部41とロッド部42とを有する油圧ジャッキであり、シリンダ部41が移動部20の本体部21に連結され、ロッド部42が移動部20の型枠部材支持部22に連結されている。このように設置された油圧ジャッキを伸縮させることにより、本体部21に対する型枠部材支持部22の傾きが変更される。つまり、パネル部材31(型枠)の傾きは、角度変更部40によって変更可能である。なお、角度変更部40は、油圧ジャッキに限定されず、本体部21に対する型枠部材支持部22の傾きを変更可能な構成を有していればどのような機構であってもよく、例えば、電動スクリュージャッキや電動ラックジャッキであってもよい。
このように型枠部材30の傾きを変更したり、型枠部材30を前後方向、すなわち、型枠部材30を既設コンクリート1に近付ける方向及び既設コンクリート1から遠ざける方向に移動させたりするために設けられる移動部20及び角度変更部40は、左右方向において複数配置される。
制御部50は、オペレータの操作に応じて、上記構成の移動部20、角度変更部40及びジャッキ80の作動を制御する。制御部50が行う具体的な制御については、後述の型枠設置方法において説明する。なお、制御部50は、型枠装置100に設けられるすべての移動部20の作動を制御してもよいし、一部の移動部20の作動のみを制御し、他の移動部20の作動については、これに追従させるようにしてもよい。角度変更部40及びジャッキ80の作動の制御についても同様である。
制御部50は、具体的には、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは制御部50に接続された装置や検出器との情報の入出力に使用される。制御部50は、複数のマイクロコンピュータで構成されていてもよい。なお、動作回路としては、CPUに代えてまたはCPUとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
続いて、新設コンクリート2d,2eを打設するために型枠部材30を設置する工程(型枠設置方法)について、図1に加えて図3A~図3Jを参照して説明する。図3A~図3Jには、型枠装置100の状態が工程順に示されている。
まず、既設コンクリート1上に新設コンクリート2dを打設するために、図3Aに示すように、新設コンクリート2dが打設される領域にパネル部材31の表面31aが臨むように、型枠部材30が設置される。型枠部材30の設置は、移動部20の前後方向への移動量及び角度変更部40の伸縮量を調整することによって行われる。
型枠部材30の設置が完了した後、パネル部材31の表面31aに、新設コンクリート2dに埋設されることになる第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5が仮固定される。なお、第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5は、型枠部材30の設置が完了する前に、パネル部材31の表面31aに予め仮固定されていてもよい。
また、図3Aに示す状態では、パネル部材31(型枠)の下方の一部である下端部が、既設コンクリート1の最上層(2c)に当接した状態となっており、補強部材32の延長部分32aが、既設コンクリート1の最上層(2c)に埋設された第2アンカー部材5に取り付けられた連結部材36を介して、既設コンクリート1に連結されており、補強部材32の縦端太33の延出部33aが、間隔保持部材37を介して既設コンクリート1に当接した状態となっている。
なお、図3Aに示す状態では、レール部材70は、既設コンクリート1(2a,2b,2c)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6に係止固定されており、基部10は、第1梁部材11に設けられた係止部14を介して、レール部材70に係止固定されるとともに、既設コンクリート1の最上層(2c)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6に係止固定されている。
次に、図3Bに示すように、型枠部材30のパネル部材31で仕切られた領域に新設コンクリート2dが打設され、パネル部材31の表面31aに仮固定されていた第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5が新設コンクリート2dに埋設される。
新設コンクリート2dが打設される際、パネル部材31を後方に押圧する荷重が生じるが、上述のように、縦端太33の延出部33aに間隔保持部材37を設けておくことにより、連結部材36により連結された部分が支点となって、型枠部材30全体が傾動してしまうことは抑制される。このため、打設時にパネル部材31がふらついたり、所定の位置からずれたりすることが抑制され、結果として、新設コンクリート2dの側面を既設コンクリート1の側面1aの延長線上に位置させることができる。
打設された新設コンクリート2dが硬化した後、パネル部材31に対する第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5の仮固定が解除されるとともに、補強部材32の延長部分32aに対する連結部材36の固定が解除される。
そして、図3Cに示すように、角度変更部40を収縮させるとともに、移動部20を後方へと移動させることによって、型枠部材30が新設コンクリート2dから取り外される。
このように型枠部材30を既設コンクリート1及び新設コンクリート2dから遠ざけた状態において、既設コンクリート1の最上層(2c)に埋設された第2アンカー部材5に取り付けられていた連結部材36が取り外されるとともに、新設コンクリート2dに埋設された第1アンカー部材4に対して支持部材6が取り付けられる。なお、新設コンクリート2dに埋設された第1アンカー部材4への支持部材6の取り付けは、新設コンクリート2dから型枠部材30を遠ざける前に行われもよく、例えば、第1アンカー部材4の設置箇所に対応して型枠部材30に設けられた図示しない開閉部を開放することによって行われてもよい。
続いて、図3D~図3Fを参照し、レール部材70の移設工程について説明する。なお、以下では、硬化した新設コンクリート2dは既設コンクリート1の一部になったものとして扱う。
まず、図3Dに示すように、第1梁部材11に設けられた係止部14が支持部材6に係止固定された状態を維持することによりジャッキ80のシリンダ部81が支持部材6に対して固定された状態とする。そして、ロッド部82の先端に設けられた係止部83とレール部材70との係止を一旦解除し、ジャッキ80を1ストローク分伸長させる。このようにジャッキ80を伸長させた後(図3Dに示す状態)、再びロッド部82の先端に設けられた係止部83をレール部材70に係止固定する。
そして、支持部材6に対するレール部材70の係止固定を解除した後、図3Eに示すように、ジャッキ80を収縮させる。ジャッキ80が収縮することにより、ロッド部82の先端に設けられた係止部83に係止固定されたレール部材70は、ジャッキ80によって上方へと引き上げられる。なお、支持部材6に対するレール部材70の係止は、レール部材70が下方へ滑り落ちることを防止するものであって、上方へのレール部材70移動は許容される構造となっている。
このようにジャッキ80の伸縮を繰り返すことによって、やがてレール部材70の上端は、図3Fに示すように、既設コンクリート1の最上層(2d)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6に到達する。
そして、既設コンクリート1の最上層(2d)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6にレール部材70の上端が係止固定されることにより、レール部材70の移設工程が完了する。なお、レール部材70が上方に移設されると、既設コンクリート1の下層(2a)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6は、レール部材70を支持する必要がなくなるため、第1アンカー部材4から取り外される。
次に、図3F~図3Iを参照し、レール部材70の移設工程に続いて行われる基部10の移設工程について説明する。
図3Fに示すように、レール部材70の移設工程が完了すると、支持部材6及びレール部材70に対する第1梁部材11の係止部14の係止が解除され、ジャッキ80のシリンダ部81が支持部材6に対して固定されていない状態とされる。一方で、ロッド部82の先端に設けられた係止部83は、レール部材70に係止固定された状態とされる。
この状態でジャッキ80を1ストローク分伸長させると、図3Gに示すように、基部10全体がジャッキ80のシリンダ部81とともに既設コンクリート1及びレール部材70に対して相対的に上方へと移動する。
このようにジャッキ80を伸長させた後、再び、レール部材70に対して第1梁部材11の係止部14を係止固定させる一方で、ロッド部82の先端に設けられた係止部83とレール部材70との係止を一旦解除し、ジャッキ80を収縮させる。
ロッド部82の先端に設けられた係止部83とレール部材70との係止を解除した状態でジャッキ80を収縮させると、図3Hに示すように、既設コンクリート1及びレール部材70に対する基部10の位置が維持されたまま、ロッド部82の先端に設けられた係止部83のみが、シリンダ部81に引き寄せられる。
そして、再び、レール部材70に対する第1梁部材11の係止部14の係止を解除する一方で、ロッド部82の先端に設けられた係止部83をレール部材70に係止固定し、ジャッキ80を伸長させることによって、基部10全体を既設コンクリート1及びレール部材70に対して相対的に上方へと移動させる。
このようにジャッキ80の伸縮を繰り返すことによって、やがて第1梁部材11の係止部14は、図3Iに示すように、既設コンクリート1の最上層(2d)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6に到達する。
そして、既設コンクリート1の最上層(2d)に埋設された第1アンカー部材4に取り付けられた支持部材6及びレール部材70に対して第1梁部材11の係止部14が係止固定されることにより、基部10の移設工程が完了する。
続いて、既設コンクリート1上に新設コンクリート2eを打設するために、図3Jに示すように、新設コンクリート2eが打設される領域にパネル部材31の表面31aが臨むように、図3Iに示す状態から型枠部材30を移動する型枠移動工程が行われる。
型枠移動工程は、移動部20の前後方向への移動量及び角度変更部40の伸縮量を調整することによって行われる。具体的には、パネル部材31の表面31aの傾斜が既設コンクリート1の側面1aの傾斜とほぼ一致するように角度変更部40を伸長させるとともに、パネル部材31(型枠)の下方の一部である下端部が、既設コンクリート1の最上層(2d)に当接するように移動部20を前方へと移動させる。
型枠部材30の設置が完了した後、パネル部材31の表面31aに、新設コンクリート2eに埋設されることになる第1アンカー部材4及び第2アンカー部材5が仮固定される。
このようにして図3Aに示される状態と同じように型枠部材30の設置が完了すると、型枠部材30のパネル部材31で仕切られた領域に新設コンクリート2eを打設する打設工程が行われる。
以上のような工程を経て、既設コンクリート1に対して型枠装置100が上方へと順次移動し、既設コンクリート1上に新設コンクリートが順次打設される。
ここで、既設コンクリート1上に新設コンクリートを打設するために、上述の型枠移動工程において、型枠部材30は、パネル部材31の表面31aが既設コンクリート1の側面1aのほぼ延長線上に位置するように設置されるが、既設コンクリート1の側面1aが予め計画された設計面上から僅かにずれて形成されていると、新設コンクリートの側面も設計面上からずれてしまうことになる。このようなずれが累積されていくと、設計形状と実際の形状との差が次第に大きくなり、結果として、コンクリート構造物を設計通りに構築することができなくなるおそれがある。
このようなずれが生じないようにパネル部材31の傾きを作業員が確認しながら移動部20の前後方向への移動量及び角度変更部40の伸縮量を作業員が調整することも考えられるが、このように人によって行われる調整には時間と労力がかかってしまい、結果として、コンクリート構造物の施工コストの増大や施工期間の長期化を招くこととなる。
そこで本実施形態では、予め計画されたコンクリート構造物の設計面に対して、パネル部材31(型枠)がどの程度ずれているかを自動的に検出するとともに、検出されたずれが解消されるようにパネル部材31の姿勢を自動的に調整している。
本実施形態では、予め計画された設計面に対するパネル部材31のずれを検出するために、図1に示すように、パネル部材31の表面31aを撮像可能な位置にカメラ60(型枠情報取得器)が設置される。カメラ60によって撮像された画像は、図4に示されるように、型枠装置100の各部の作動を制御する制御部50へと無線または有線により送信される。また、カメラ60から制御部50へは、画像だけではなく、カメラ60の位置情報(緯度、経度、高度)、カメラ60の撮像方位及びカメラ60の傾きといったカメラ情報も送信される。図4は、型枠装置100の作動を制御する制御システムの構成を示したブロック図である。
制御部50は、図4に示すように、コンクリート構造物の設計データである3Dモデルのデータが予め記憶されたモデル記憶部50aと、モデル記憶部50aに記憶された3Dモデルのデータとカメラ60により撮像された画像のデータとに基づいて、予め計画された設計面に対応するパネル部材31の計画位置とパネル部材31の現在位置との差分を検出する差分検出部50bと、差分検出部50bで検出された差分に応じて角度変更部40の伸縮量を制御する機器制御部50cと、を有する。
なお、モデル記憶部50a、差分検出部50b及び機器制御部50cは、制御部50の各機能を、仮想的なユニットとして示したものであり、物理的に存在することを意味するものではない。また、制御部50には、カメラ60により撮像された画像とモデル記憶部50aに記憶された3Dモデルとが重畳表示される表示装置52が接続されている。
続いて、制御部50で行われる差分の検出とそれに伴う角度変更部40の制御について説明する。
制御部50の差分検出部50bでは、カメラ60によって撮像されたパネル部材31の表面31aの所定の位置における画像が現在位置情報として取得されるとともに、取得された画像におけるパネル部材31の表面31aの所定の位置が、計画上はどのような位置であったのかが、モデル記憶部50aに記憶された3Dモデル(図5中の符号M)から計画位置情報として取得される。そして、このように取得された現在位置情報と計画位置情報とに基づいて、パネル部材31を移動すべき移動量(差分)が検出される。
具体的には、例えば図5に示すように、撮像された画像のデータからパネル部材31の表面31aの任意の点P1を抽出し、抽出された点P1とモデル記憶部50aに記憶された3DモデルMの設計面MPとの最短距離L1を、パネル部材31を移動すべき移動量(差分)として検出する。なお、図5は、パネル部材31の計画位置とパネル部材31の現在位置との差分を検出する方法の一例について説明するために、図1の矢印Bで示された部分を拡大して示した図であって、表示装置52の画面に表示される内容とは異なる。
図5に示す例では、3DモデルMの設計面MPがパネル部材31の計画上の位置を示す計画位置表示面に相当し、パネル部材31の表面31aの上端の点P1(抽出された点P1)がパネル部材31の現在位置を示す現在位置表示点に相当する。そして、計画位置表示面と現在位置表示点との最短距離L1が差分として検出されている。
なお、現在位置表示点(点P1)としては、例えば、角度変更部40が伸長したときの作動軸線と収縮したときの作動軸線とを含む角度変更部40の作動平面と、パネル部材31の表面31aと、が交わることで生じる交線上の点が抽出されてもよく、この場合、交線に相当する3Dモデル上の直線と、抽出された点と、の最短距離が移動量(差分)として検出される。パネル部材31の表面31a上には、現在位置表示点の抽出を容易とするために、上述の交線に相当する線が予め表示されていてもよい。
また、現在位置表示点(点P1)は、図5に示されるパネル部材31の表面31aの上端の点や上述の交線上の点に限定されず、パネル部材31の表面31a上において予め設定された点であれば、どのような点であってもよい。
差分検出部50bで検出された移動量は、機器制御部50cに送られ、機器制御部50cにおいて角度変更部40の伸縮量に換算される。そして、機器制御部50cは、角度変更部40が設定された伸縮量だけ伸縮するように、例えば、角度変更部40に対して供給される作動油の量や角度変更部40から排出される作動油の量を制御する。
また、検出された差分は、抽出された点P1やカメラ60により撮像された画像、3Dモデルの設計面MPとともに、いわゆる拡張現実(AR:Augmented Reality)により表示装置52にリアルタイムで表示される。このため、作業員は、表示装置52を見ることによって、パネル部材31(型枠)が設計面からどの程度ずれているかを把握することができるとともに、差分に応じて角度変更部40が伸縮することによって、カメラ60によって撮影されるパネル部材31と、拡張現実として表示される3Dモデルの設計面と、の間隔が徐々に小さくなっていく状況を確認することができる。
このように制御部50において行われる上述の制御は、上述の型枠設置方法の型枠移動工程に引き続いて実施される。
次に、図6のフロー図を参照して、制御部50で行われる上述の制御の流れについて説明する。
まず、ステップS11では、上述の型枠設置方法において行われる型枠移動工程が完了したか否か、つまり、移動部20を既設コンクリート1に対して近づけることによって、パネル部材31(型枠)の下端部が既設コンクリート1に当接した状態となったか否かが判定される。パネル部材31の下端部が既設コンクリート1に当接しているか否かは、例えば、近接センサや圧力スイッチによって検知される。
型枠移動工程が完了したと判定されると、ステップS12に進み、カメラ60によりパネル部材31の表面31aが撮像される。
続くステップS13では、モデル記憶部50aに予め記憶された3Dモデルのデータと、ステップS12においてカメラ60により撮像された画像のデータと、に基づいて、予め計画されたパネル部材31の計画位置とパネル部材31の現在の位置との差分が検出される(差分検出工程)。
具体的には、上述のように、撮像された画像のデータから抽出されたパネル部材31の表面31a上の任意の点P1と、モデル記憶部50aに記憶された3DモデルMの設計面MPと、の最短距離L1が差分として検出される。
ステップS13において差分が検出されると、ステップS14において、差分が予め設定された閾値よりも大きいか否か、つまり、計画面に対するパネル部材31の表面31aのずれが、パネル部材31の位置を修正しなければならないほど大きいか否かが判定される。
ステップS14において、差分が閾値よりも大きいと判定されると、パネル部材31の位置を修正する必要があるとしてステップS15に進み、差分が閾値以下であると判定されると、パネル部材31の位置を修正する必要がないとして角度変更部40の制御を終了する。
ステップS15では、検出された差分に応じて角度変更部40を作動させることによって、パネル部材31の位置を予め計画されたパネル部材31の計画位置、すなわち、モデル記憶部50aに記憶された3DモデルMの設計面MPへと近付ける(型枠位置調整工程)。具体的には、ステップS13において検出された差分が小さくなる方向に、差分から換算された伸縮量だけ角度変更部40を伸縮させる。
ステップS15において角度変更部40の伸縮が完了し、パネル部材31の位置が変更されると、ステップS16に進み、再びカメラ60によりパネル部材31の表面31aが撮像される。なお、カメラ60による撮像は、ステップS12から開始され、上述のステップS13~S15が行われる間にわたって継続して行われてもよい。
続くステップS17では、ステップS13と同様にして、予め計画されたパネル部材31の計画位置とパネル部材31の現在の位置との差分が、パネル部材31の位置調整が行われた後の調整後の差分として検出される。
そして、ステップS17において調整後の差分が検出されると、ステップS18において、ステップS15で角度変更部40を伸縮させたことによって、ずれが十分に解消されたか否かが検証される(調整後差分確認工程)。具体的には、ステップS14と同様にして、差分が予め設定された閾値よりも大きいか否かが判定される。
ステップS18において、差分が閾値よりも大きいと判定されると、パネル部材31の位置を再度修正する必要があるとしてステップS15に戻り、再びパネル部材31の位置を予め計画されたパネル部材31の計画位置へと近付ける工程(型枠位置再調整工程)が行われる。一方、差分が閾値以下であると判定されると、パネル部材31の位置の修正が完了したとして角度変更部40の制御を終了する。
なお、ステップS18において、複数回にわたって差分が閾値よりも大きいと判定され、ステップS15~ステップS18の工程が何度も繰り返される場合、角度変更部40や差分の検出に異常があるおそれがあることから、このような場合には何らかの異常が生じたとして角度変更部40の制御を終了するようにしてもよい。
このように、これら一連のステップにより、予め計画された設計面に対して、パネル部材31(型枠)がどの程度ずれているのかが自動的に検出されるとともに、ずれが解消されるように角度変更部40が適宜伸縮制御されることによって、パネル部材31が予め計画された設計面に沿って位置するように自動的に調整される。
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
本実施形態では、パネル部材31(型枠)が、型枠移動工程と差分検出工程と型枠位置調整工程とを経て、予め計画されたパネル部材31の計画位置、すなわち、モデル記憶部50aに記憶された3DモデルMの設計面MPへと近付けられる。このように、新たなコンクリートを打設するために設置されるパネル部材31の位置は、既設コンクリート1が計画に対して僅かにずれて形成された場合であっても、予め計画された計画位置へと自動的に調整される。これにより、ずれが累積されることが抑制され、結果として、パネル部材31を用いて構築されるコンクリート構造物の構築精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、予め計画されたコンクリート構造物の設計面MPに対して、パネル部材31(型枠)がどの程度ずれているかが自動的に検出されるとともに、ずれが解消されるようにパネル部材31の傾きが自動的に調整される。このように、パネル部材31の傾きの調整が自動的に行われるようにすることによって、パネル部材31の傾きを作業員が確認しながら移動部20及び角度変更部40の作動を作業員が調整する場合と比較し、調整作業を効率的に行うことが可能となり、結果として、コンクリート構造物の施工コストを低減させることができるとともに、施工期間を短縮化することができる。
また、本実施形態では、撮像された画像のデータからパネル部材31の表面31aの任意の点P1が抽出され、抽出された点P1とモデル記憶部50aに記憶された3DモデルMの設計面MPとの最短距離L1が、パネル部材31を移動すべき移動量(差分)として検出される。
ここで、抽出された点P1の位置を修正する方法としては、抽出された点P1が計画上はどのような位置にあるべきであったのかを3DモデルMから座標で求め、求められた座標と抽出された点P1の座標と比較することも考えられる。
しかしながら、前後や上下、左右に座標がずれていたとしても、パネル部材31を前後や上下、左右それぞれの方向に沿って僅かに移動させてずれを解消するには、複雑な機構が必要になるとともに、多大な労力と時間を要することから、現実的ではない。
これに対して、本実施形態では、上述のように、面に対する点の最短距離からパネル部材31を移動すべき移動量が求められる。したがって、比較的簡素な機構によって容易にパネル部材31の位置を予め計画された計画位置へと調整することが可能である。
次に、本実施形態の変形例について説明する。なお、以下のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
上記実施形態では、型枠情報取得器として、パネル部材31の表面31aを撮像可能なカメラ60が用いられている。型枠情報取得器としては、カメラ60に限定されず、レーザ光等の光波を用いてパネル部材31の表面31aに設けられた視標の位置情報を取得可能なトータルステーションが用いられてもよい。
この場合、パネル部材31の表面31aの所定の位置には、トータルステーションから照射された光波を反射可能な視標が設けられる。視標は、例えば、角度変更部40が伸長したときの作動軸線と収縮したときの作動軸線とを含む角度変更部40の作動平面と、パネル部材31の表面31aと、が交わることで生じる交線上に複数配置される。
そして、制御部50では、トータルステーションによって測定された視標の位置と、視標が設計上位置すべき設計線と、の最短距離が差分として検出される。なお、視標が設計上位置すべき設計線は、上述の3DモデルMの設計面MP上の線であって、直線式として制御部50に予め記憶される。
このように差分が検出されると、上記実施形態と同様にして、差分が小さくなるように、角度変更部40が適宜伸縮制御されることによって、パネル部材31が予め計画された設計面に沿って位置するように自動的に調整される。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。