I. 定義
用語は、以下に他の意味であると定義されていない限り、当該技術分野で一般的に使用されるように本明細書で使用される。
本明細書で使用される場合、抗原結合ドメインなどに関する「第1」、「第2」又は「第3」という用語は、各タイプの部分が2つ以上存在する場合の区別の便宜のために使用される。これらの用語の使用は、そのように明示的に示されていない限り、部分の特定の順序又は向きを与えることを意図していない。
「抗CD3抗体」及び「CD3に結合する抗体」との用語は、抗体が、CD3を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように十分なアフィニティで、CD3に結合することが可能な抗体を指す。一態様では、無関係な非CD3タンパク質に対する抗CD3抗体の結合度は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されるように、CD3に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の態様では、CD3に結合する抗体は、≦1μM、≦500nM、≦200nM、又は≦100nMの平衡解離定数(KD)を有する。例えば、SPRにより測定して、抗体が1μM以下のKDを有する場合、抗体は、CD3に「特異的に結合する」と称する。特定の態様では、抗CD3抗体は、異なる種由来のCD3の中で保存されているCD3のエピトープに結合する。
同様に、「抗CD19抗体」及び「CD19に結合する抗体」との用語は、抗体が、CD19を標的とする際に診断及び/又は治療薬剤として有用であるように十分なアフィニティで、CD19に結合することが可能な抗体を指す。一態様では、無関係な非CD19タンパク質に対する抗CD19抗体の結合度は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定されるように、CD19に対する抗体の結合の約10%未満である。特定の態様では、CD19に結合する抗体は、≦1μM、≦500nM、≦200nM、又は≦100nMの平衡解離定数(KD)を有する。例えば、SPRにより測定して、抗体が1μM以下のKDを有する場合、抗体は、CD19に「特異的に結合する」と称する。特定の態様では、抗CD19抗体は、異なる種由来のCD19の中で保存されているCD19のエピトープに結合する。
「抗体」という用語は、本明細書では最も広い意味で使用され、限定されるものではないが、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含めた、さまざまな抗体構造を包含する。
「抗体断片」は、インタクト抗体が結合する抗原を結合するインタクト抗体の一部を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例として、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子(例えばscFv及びscFab)、単一ドメイン抗体、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説としては、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照されたい。
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似した構造を有する抗体を指すために、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、例えば、自然発生突然変異を含有するか、又はモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、起こり得る変異型抗体は例外であり、かかる変異型は一般的に少量で存在する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組み換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法、例えば、本明細書に記載のモノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例示的な方法を含むが、これらに限定されない多様な技術によって作製され得る。
「単離された」抗体は、その天然環境の構成要素から分離された抗体である。いくつかの態様では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィ(例えば、イオン交換又は逆相HPLC、アフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィ)法によって決定される場合、純度が95%又は99%より高くなるまで精製される。抗体精製の試験方法の総説としては、例えば、Flatmanら,J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。いくつかの態様では、本発明により提供される抗体は、単離抗体である。
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を指す。
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基、及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、CDRのすべて又は実質的にすべてが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRのすべて又は実質的にすべてがヒト抗体のFRに対応する。そのような可変ドメインは、本明細書では「ヒト化可変領域」と呼ばれる。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。いくつかの態様では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。ある抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
「ヒト抗体」とは、ヒト若しくはヒト細胞により産生された抗体、又はヒト抗体レパートリ等のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト由来の抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。一部の態様では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳動物、例えば、マウス、ラット、又はウサギに由来する。一部の態様では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株に由来する。ヒト抗体ライブラリから単離された抗体又は抗体断片もまた、本発明のヒト抗体又はヒト抗体断片であると考えられる。
用語「抗原結合ドメイン」は、ある抗原の一部又は全部に結合し、且つある抗原の一部又はすべてに相補的な領域を含む抗体の一部を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって与えられてもよい。好ましい態様では、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体と抗原との結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に同様の構造を有し、それぞれのドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と相補性決定領域(CDR)とを含む。例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman & Co., page 91(2007)を参照されたい。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために充分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体のVH又はVLドメインを使用し、それぞれ、相補的VL又はVHドメインのライブラリをスクリーニングして、単離してもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照のこと。可変領域配列に関連して本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」は、Kabat等、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)によって記載される番号付けシステムを指す。
本明細書で使用される場合、重鎖及び軽鎖のすべての定常領域及びドメインのアミノ酸位置は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)に記載されるKabat番号付けシステムに従って番号付けされ、本明細書では「Kabatによる番号付け」又は「Kabat番号付け」と呼ばれる。具体的には、Kabat番号付けシステム(Kabat,et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed., Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)の647-660頁参照)を、カッパ及びラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用し、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661-723頁を参照)を、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2及びCH3)に使用し、この場合には、「Kabat EUインデックスによる番号付け」又は「Kabat EUインデックス番号付け」と言及することによってさらに明確にしている。
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」又は「HVR」とは、配列内で超可変であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。一般的に、抗体は、6つのCDRを含み、VHに3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、VLに3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)含む。本明細書における例示的なCDRには、以下が含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))、
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991));並びに
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)及び93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262:732-745(1996))が挙げられる。
特に指示がない限り、CDRは、上記Kabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、又は、任意の他の、科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、HVR配列及びFR配列は、概して、VH(又はVL)中で以下の順序で現れる:FR1-HCDR1(LCDR1)-FR2-HCDR2(LCDR2)-FR3-HCDR3(LCDR3)-FR4。
別段の指示がない限り、HVR残基及び可変ドメイン内の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、上記のKabatらに従って番号付けされている。
本明細書の目的において「アクセプターヒトフレームワーク」とは、以下に定義するように、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「由来の」アクセプターヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含んでいてもよく、又はアミノ酸配列の変更を含んでいてもよい。いくつかの態様では、アミノ酸変更の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下である。いくつかの態様では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL又はVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD(1991), vols.1-3におけるようなサブグループである。
用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、約150,000ダルトンのヘテロテトラマー糖タンパク質であり、ジスルフィド結合した2つの軽鎖と2つの重鎖から構成される。N末端からC末端に向かって、それぞれの重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)と、その後に重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)と、を有する。同様に、N末端からC末端に向かって、それぞれの軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VL)と、その後に軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインと、を有する。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)又はμ(IgM)と呼ばれる5種類の1つに割り当てられてもよく、このいくつかは、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)及びα2(IgA2)などのさらなるサブタイプに分けられてもよい。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうちの1つに割り当てられてもよい。免疫グロブリンは、免疫グロブリンヒンジ領域を介して接続する、2つのFab分子とFcドメインとから実質的になる。
抗体又は免疫グロブリンの「クラス」は、抗体又は免疫グロブリンの重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域の種類を指す。抗体の5つの主要なクラスがあり、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、下位クラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
「Fab分子」とは、免疫グロブリンの重鎖(「Fab重鎖」)のVHドメイン及びCH1ドメインと、免疫グロブリンの軽鎖(「Fab軽鎖」)のVLドメイン及びCLドメインと、からなるタンパク質を指す。
「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」とも呼ばれる)とは、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメイン及び定常ドメインが交換されている(すなわち、互いに置き換わっている)Fab分子を意味し、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変ドメインVL及び重鎖定常ドメイン1 CH1(VL-CH1、N末端からC末端方向に)から構成されるペプチド鎖と、重鎖可変ドメインVH及び軽鎖定常ドメインCL(VH-CL、N末端からC末端方向に)から構成されるペプチド鎖と、を含む。明確性のために、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常ドメイン1 CH1を含むペプチド鎖は、本明細書では、(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。逆に、Fab軽鎖及びFab重鎖の定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖可変ドメインVHを含むペプチド鎖は、本明細書では、(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ばれる。
これとは対照的に、「従来の」Fab分子は、その天然のフォーマットでのFab分子を意味し、すなわち、重鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される重鎖(VH-CH1、N末端からC末端方向に)と、軽鎖可変ドメイン及び定常ドメインで構成される軽鎖(VL-CL、N末端からC末端方向に)と、を含む。
「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。該用語は、ネイティブ配列Fc領域と変異体Fc領域とを含む。一態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかし、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ又は複数、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、全長重鎖を含んでいてもよく、又は全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい。これは、重鎖の最終的な2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447、カバットEUインデックスによる番号付け)である場合であってもよい。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)が存在してもよい、又は存在していなくてもよい。Fc領域(又は本明細書に定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、別段の指示がない場合、本明細書ではC末端グリシン-リジンジペプチドを含まないもが示される。一態様では、本発明による抗体に含まれる、本明細書に明記されるFc領域(サブユニット)を含む重鎖は、さらなるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。一態様では、本発明による抗体に含まれる、本明細書に明記されるFc領域(サブユニット)を含む重鎖は、さらなるC末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。本明細書で別途明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD,1991(上も参照されたい)に記載されるような、EU番号付けシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。Fcドメインの「サブユニット」は、本明細書で使用される場合、ダイマーFcドメインを形成する2つのポリペプチドの1つ(すなわち、安定な自己会合が可能な、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチド)を指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
「融合した」が意味するのは、構成要素(例えば、Fab分子及びFcドメインサブユニット)が、ペプチド結合によって直接的に又は1つ以上のペプチドリンカーを介してのいずれかにより結合されていることである。
「多重特異性」という用語は、抗体が、少なくとも2つの別個の抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。多重特異性抗体は、例えば、二重特異性抗体でありうる。典型的には、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を含み、それぞれが異なる抗原決定基に対して特異的である。一部の態様では、多重特異性(例えば二重特異性)抗体は、2つの抗原決定基、特に、2つの別個の細胞で発現する2つの抗原決定基に同時に結合することができる。
用語「価数」とは、本明細書で使用される場合、抗原結合分子内の特定数の抗原結合部位の存在を示す。この場合、用語「抗原に対する一価の結合」とは、抗原結合分子内の抗原に特異的な1つ(及び1つを超えない)抗原結合部位の存在を示す。
「抗原結合部位」は、抗原との相互作用を与える抗原結合分子の部位、すなわち1つ以上のアミノ酸残基を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含む。ネイティブ免疫グロブリン分子は、典型的には、2つの抗原結合部位を含み、Fab分子は、典型的には、1つの抗原結合部位を有する。
本明細書で使用される場合、「抗原決定基」又は「抗原」という用語は、抗原結合ドメイン-抗原複合体を形成する、抗原結合ドメインが結合するポリペプチド高分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続伸長部又は異なる領域の非連続アミノ酸から構成される配座構成)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面上に、ウイルス感染した細胞の表面上に、他の疾患細胞の表面上に、免疫細胞の表面上に、血清中で遊離して、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)中に認めることができる。好ましい態様では、抗原はヒトタンパク質である。
「CD3」は、別途明記しない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)等の哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意のネイティブCD3を指す。この用語は、「完全長」の未処理のCD3、及び細胞内での処理によりもたらされる任意の形態のCD3も包含する。この用語は、CD3の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一態様では、CD3は、ヒトCD3、特にヒトCD3のイプシロンサブユニット(CD3ε)である。ヒトCD3εのアミノ酸配列は、配列番号45(シグナルペプチドを有しない)に示される。また、UniProt(www.uniprot.org)寄託番号P07766(バージョン209)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000724.1.1を参照されたい。別の態様では、CD3は、カニクイザル(Macaca fascicularis)CD3、特にカニクイザルCD3εである。カニクイザルCD3εのアミノ酸配列は、配列番号46(シグナルペプチドを有しない)に示される。また、NCBI GenBank番号BAB71849.1を参照されたい。一部の態様では、本発明の抗体は、異なる種由来のCD3抗原、特にヒトCD3及びカニクイザルCD3の中に保存されているCD3のエピトープに結合する。好ましい態様では、抗体は、ヒトCD3に結合する。
本明細書で使用される「標的細胞抗原」は、標的細胞、例えば、B細胞の表面に提示される抗原決定基を指す。好ましくは、標的細胞抗原は、CD3ではない、及び/又は異なる細胞上に発現されたCD3以外である。本発明によれば、標的細胞抗原はCD19、特にヒトCD19である。
「CD19」は、分化群19(Bリンパ球抗原CD19又はBリンパ球表面抗原B4としても知られる)を表し、特に明記しない限り、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)、齧歯類(例えば、マウスやラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然CD19を指す。この用語は、「完全長」の未処理のCD19、及び細胞内での処理によりもたらされる任意の形態のCD19も包含する。この用語は、CD19の天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子バリアントも包含する。一態様では、CD19は、ヒトCD19である。ヒトタンパク質については、UniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号P15391(バージョン211)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_001761.3を参照されたい。一部の態様では、本発明の抗体は、異なる種由来のCD19抗原、特にヒトCD19及びカニクイザルCD19の中に保存されているCD3のエピトープに結合する。好ましい態様では、抗体は、ヒトCD19に結合する。
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(例えば、抗原)との間の、合計の非共有性相互作用の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する特異的結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、解離定数(KD)によって表し得る。親和性は、本明細書に記載するものを含め、当技術分野で既知の十分に確立された方法によって測定することができる。親和性を測定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
「親和性成熟」抗体とは、変化を有しない親抗体と比較して、1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)において1つ又は複数の変化を有し、かかる改変によって抗原に対する抗体の親和性を改善する、抗体を指す。
「結合の低減」、例えば、Fc受容体に対する結合の低減は、例えば、SPRによって測定される場合、それぞれの相互作用についての親和性の低下を指す。明確性のために、この用語は、親和性がゼロまで低下する(又は分析方法の検出限界未満になる)こと、すなわち、相互作用が完全に失われることも含む。逆に、「結合の増加」は、個々の相互作用に対する結合親和性の増加を指す。
本明細書で使用する「T細胞活性化」は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクタ分子の放出、細胞傷害性活性、及び活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の1つ以上の細胞応答を指す。T細胞活性化を測定するために適したアッセイは、当技術分野で既知であり、本明細書に記載されている。
「Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾」は、ホモ二量体を形成するためのFcドメインサブユニットを含むポリペプチドの同一のポリペプチドとの会合を減少又は防止する、ペプチド骨格の操作又はFcドメインサブユニットの翻訳後修飾である。会合を促進する修飾は、本明細書で使用される場合、好ましくは、会合することが望ましい2つのFcドメインサブユニット(即ち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニット)の各々に対して行われる別個の改変を含み、この修飾は、2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するために互いに相補性である。例えば、会合を促進する修飾は、それぞれ立体的又は静電的に望ましい会合を行うように、Fcドメインサブユニットの片方又は両方の構造又は電荷を変えてもよい。したがって、(ヘテロ)二量体化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で起こり、サブユニットの各々に融合するさらなる構成要素(例えば抗原結合ドメイン)が同じではないという意味で、同一ではなくてもよい。いくつかの態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する改変は、Fcドメイン内のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。好ましい態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの各々における別個のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。
「エフェクタ機能」という用語は、抗体のFc領域に帰属可能な生体活性を指し、抗体アイソタイプによって変わる。抗体エフェクタ機能の例としては、以下のものが挙げられる:C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;及びB細胞の活性化が挙げられる。
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインによる係合の後に、エフェクタ機能を発揮するために受容体を含む細胞を刺激するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体としては、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)及びFcαRI(CD89)が挙げられる。
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクタ細胞による、抗体で被覆された標的細胞の溶解を引き起こす免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその誘導体が、一般的にFc領域に対してN末端であるタンパク質部分を介して、特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される用語「ADCCの減少」は、標的細胞を取り囲む培地中の抗体の所定の濃度で、上記で定義されたADCCのメカニズムによる、所定の時間内に溶解される標的細胞の数の減少、及び/又はADCCのメカニズムによって、所定の時間内に所定の数の標的細胞の溶解を達成するために必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中の抗体の濃度の増加のいずれかとして定義される。ADCCの減少は、同じ標準的な産生、精製、製剤化及び保存方法(当業者に知られている)を使用して、同じタイプの宿主細胞によって産生された同じ抗体によって媒介されるADCCと比較されるが、それは、設計されていいない。例えば、そのFcドメインを含む抗体によって媒介されるADCCの低下である、ADCCを低下させるアミノ酸置換は、Fcドメイン中にこのアミノ酸置換を含まない同じ抗体によって媒介されるADCCに対するものである。ADCCを測定するのに適したアッセイは、当該技術分野で周知である(例えば、PCT公報WO2006/082515又は同2012/130831を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、「操作する、操作される、操作すること」という用語は、天然に存在するか、又は組換えポリペプチド又はこれらの断片のペプチド骨格の任意の操作又は翻訳後修飾を含むと考えられる。操作することは、アミノ酸配列の修飾、グリコシル化パターンの修飾、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾、及びこれらのアプローチの組合せを含む。
本明細書で使用される場合、「アミノ酸突然変異」という用語は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び修飾を包含することを意味する。置換、欠失、挿入及び修飾の任意の組み合わせは、最終コンストラクトが、所望の特徴、例えば、Fc受容体に対する結合の低下、又は別のペプチドとの会合の増加を有する限り、最終コンストラクトに到達するように行うことができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端のアミノ酸の欠失及び挿入を含む。好ましいアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、Fc領域の結合特性を変更する目的のために、非保存的アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸を、構造特性及び/又は化学特性が異なる別のアミノ酸と置き換えることが特に好ましい。アミノ酸の置換には、非天然アミノ酸による置き換え、又は20種類の標準的なアミノ酸の天然アミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置き換えが含まれる。アミノ酸突然変異は、当技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用いて生じさせることができる。遺伝的方法には、特定部位の突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等が含まれ得る。遺伝子工学以外の方法によってアミノ酸の側鎖基を変える方法、例えば、化学修飾も有用な場合があることが想定される。同じアミノ酸変異を示すために、本明細書で様々な名称を使用することができる。例えば、Fcドメインの329位のプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G又はPro329Glyと示すことができる。
参照ポリペプチド配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大の配列同一性パーセントを得るように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、いかなる保存的置換も配列同一性の一部とみなさない、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性率を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術の範囲内にある種々の様式で、例えば、公的に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェア又はFASTAプログラムパッケージを用いて達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列のアラインメントのための適切なパラメータを決定することができる。あるいは、同一性率の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成することができる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.によって作成されており、ソースコードは、U.S.Copyright Office(Washington D.C.,20559)のユーザドキュメンテーションにファイルされており、U.S.Copyright Registration No.TXU510087の下に登録されており、かつ、WO2001/007611に記載されている。
別段の指定がない限り、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8cのggsearchプログラムを使用するか、又はその後にBLOSUM50比較マトリックスを用いて生成される。FASTAプログラムパッケージは、W. R. Pearson及びD. J. Lipman(“Improved Tools for Biological Sequence Analysis”,PNAS 85(1988):2444-2448)、W. R. Pearson(“Effective protein sequence comparison” Meth. Enzymol. 266(1996):227-258)、及びPearson et. al.(Genomics 46(1997)24-36)により作成され、www.fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtml又はwww.ebi.ac.uk/Tools/sss/fastaから公開されて利用可能である。これに代えて、fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiでアクセス可能な公的なサーバーを使用して、ggsearch(global protein:protein)プログラム及びデフォルトオプション(BLOSUM50;オープン:-10;ext:-2;Ktup=2)を用い、ローカルではなくグローバルのアラインメントを確実に行い、配列を比較することができる。アミノ酸同一性パーセントは、アウトプットアラインメントヘッダーで与えられる。
「ポリヌクレオチド」又は「核酸分子」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。多くは、核酸分子は、塩基配列によって記述され、ここで、当該塩基は、核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へと表される。本明細書において、核酸分子という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)、例えば、相補性DNA(cDNA)及びゲノムDNA、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線状又は環状であってもよい。これに加え、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。誘導体化された糖又はホスフェート骨格結合又は化学修飾された残基を含む、天然に存在しないヌクレオチドの例として、修飾されたヌクレオチド塩基が挙げられる。核酸分子は、例えば、宿主又は患者において、in vitro及び/又はin vivoで本発明の抗体の直接的な発現のためのベクターとして適したDNA分子及びRNA分子も包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、改変されていなくてもよく、又は改変されていてもよい。例えば、mRNAは、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を増強するために化学的に修飾することができ、その結果、mRNAを対象に注射して、in vivoで抗体を生成することができる(例えば、Stadler et al.(2017)Nature Medicine 23:815-817、又はEP 2 101 823B1を参照されたい)。
「単離された」核酸は、その天然環境の構成要素から分離された核酸分子を指す。単離された核酸分子には、通常核酸分子を含む細胞内に含まれる核酸分子が含まれるが、この核酸分子は、染色体外に存在するか、又はその本来の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
「抗体をコードする単離ポリヌクレオチド(又は核酸)」は、抗体の重鎖及び軽鎖(又はその断片)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチド分子を指し、単一のベクター又は別個のベクターにおいて、このようなポリヌクレオチド分子(複数可)が宿主細胞の1つ又は複数の位置に存在するこのようなポリヌクレオチド分子(複数可)を含む。
「ベクター」という用語は、本明細書では、連結している他の核酸を増殖することができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製する核酸構造としてのベクター、及びベクターが導入された宿主細胞のゲノム内へと組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、作動可能に連結された核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターを本明細書では、「発現ベクター」と呼ぶ。
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞インキュベート」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含む。宿主細胞には、「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換細胞及び、継代の数に関係なく、それに由来する子孫が含まれる。子孫は、親細胞と完全に同一の核酸含量でない場合があるが、突然変異を含んでもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか若しくは選択されるのと同じ機能、又は生物活性を有する突然変異型の後代が本発明に含まれる。宿主細胞は、本発明の抗体を生成するために使用可能な任意の種類の細胞系である。宿主細胞としては、インキュベート細胞、例えば、哺乳動物インキュベート細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、HEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物もしくはインキュベート植物、又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。一態様では、本発明の宿主細胞は、真核細胞、特に哺乳動物細胞である。一態様では、宿主細胞は、ヒト身体中の細胞ではない。
「薬学的組成物」又は「医薬製剤」という用語は、調製物に含まれる有効成分の生物活性が有効になるような形態をしており、かつ、薬学的組成物が投与されるであろう対象に対して容認できないほど毒性のある追加の成分を含まない、調製物を指す。
「薬学的に許容され得る担体」は、有効成分以外の薬学的組成物又は製剤中の成分であって、対象にとって非毒性である成分を指す。薬学的に許容され得る担体には、緩衝剤、ビヒクル、安定剤、又は防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「治療(treatment)」(及びその文法的な変化形、例えば、「治療(treat)する」又は「治療すること(treating)」)は、治療される個体において疾患の本来の経過を変える試行における臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の経過の間に行うことができる。治療の所望の効果としては、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の軽減、疾患の任意の直接的又は間接的な病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行速度を低下させること、病状の寛解又は緩和、及び回復又は予後の改善が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、本発明の抗体は、疾患の発症を遅延させるために、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
「個体」又は「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物としては、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられる。ある特定の態様では、個体又は対象は、ヒトである。
薬剤、例えば、薬学的組成物の「有効量」は、所望の治療結果又は予防結果を達成するために必要な投薬量及び所要期間で有効な量を指す。
用語「添付文書」とは、治療製品の商品包装に通例含まれる説明書を指すのに用いられ、そのような治療製品の適応症、用法、投与量、投与、併用療法、使用に関する禁忌及び/又は注意事項についての情報を含む。
II. 組成物及び方法
本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供する。抗体は、例えば、有効性及び安全性、薬物動態、並びに再現性に関連する治療用途に有益な他の特性と組み合わせて、優れた安定性を示す。本発明の抗体は、例えば、がんなどの疾患の治療に有用である。
A. 抗CD3/CD19抗体
一態様では、本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供する。一態様では、CD3及びCD19に結合する単離された抗体が提供される。一態様では、本発明は、CD3及びCD19に特異的に結合する抗体を提供する。ある特定の態様では、抗CD3/CD19抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定されるように、pH6、-80℃で2週間後の結合活性と比較して、pH7.4、37℃で2週間後にCD3への結合活性を約90%超維持する。
一態様では、本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供し、抗体は、(a)CD3に結合する、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2、及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、抗体はヒト化抗体である。一態様では、第1の抗原結合ドメインはヒト化抗原結合ドメイン(すなわち、ヒト化抗体の抗原結合ドメイン)である。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLはヒト化可変領域である。
一態様では、第1の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、受容体ヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一態様では、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7の重鎖可変領域配列の1つ又は複数の重鎖フレームワーク配列(すなわち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はCD3に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号7のアミノ酸配列において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。場合により、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
一態様では、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11の軽鎖可変領域配列の1つ又は複数の軽鎖フレームワーク配列(すなわち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はCD3に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号11のアミノ酸配列において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。場合により、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
一態様において、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含み、且つ、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のアミノ酸配列を含み、且つ、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。
さらなる態様では、本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVHと配列番号11のアミノ酸配列を含むVLとを含む、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
さらなる態様では、本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号7のVH配列と、配列番号11のVL配列とを含む、CD3に結合する、第1の抗原結合ドメインを含む。
さらなる態様では、本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供し、抗体は、配列番号7のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号11のVLの軽鎖CDR配列を含むVLとを含む、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
さらなる態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号7のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3アミノ酸配列と、配列番号11のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3アミノ酸配列と、を含む。
一態様において、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のVHの重鎖CDR配列と、配列番号7のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様において、第1の抗原結合ドメインの抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のVHの重鎖CDR配列と、配列番号7のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様において、第1の抗原結合ドメインのVHは、配列番号7のVHの重鎖CDR配列と、配列番号7のVHのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様において、第2の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号11のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークを含む。一態様では、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号11のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークを含む。一態様において、第1の抗原結合ドメインのVLは、配列番号11のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号11のVLのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークを含む。
一態様では、本発明は、CD3及びCD19に結合する抗体を提供し、抗体は、上に提供される態様のいずれかにおけるVH配列と、上に提供される態様のいずれかにおけるVL配列とを含む、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、抗体は、ヒト定常領域を含む。一態様では、抗体は、ヒト定常領域を含む免疫グロブリン分子、特にヒトCH1、CH2、CH3及び/又はCLドメインを含むIgGクラス免疫グロブリン分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号52及び53(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号54(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。一態様では、抗体は、配列番号52又は配列番号53のアミノ酸配列、特に配列番号52のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。一態様では、抗体は、配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域は、本明細書に記載されたようなFcドメインにおけるアミノ酸突然変異を含んでもよい。
一態様では、第1の抗原結合ドメインは、ヒト定常領域を含む。一態様では、第1の抗原結合部分は、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。一態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号52又は配列番号53のアミノ酸配列、特に配列番号52のアミノ酸配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。一態様では、第1の抗原結合ドメインは、配列番号54のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に対して少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、本明細書の「電荷修飾」の下に記載されるアミノ酸変異を含み得る。
一態様では、抗体はモノクローナル抗体である。
一態様では、抗体は、IgG、特にIgG1抗体である。一態様では、抗体は、完全長抗体である。
別の態様では、抗体は、Fv分子、scFv分子、Fab分子、及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片、特にFab分子である。別の態様では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。
一態様では、第1の抗原結合ドメインは、Fab分子である。好ましい態様では、第1の抗原結合部分は、Fab軽鎖及びFab重鎖の、可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1、特に可変ドメインVL及びVHが、互いに置き換わっているFab分子である(すなわち、第1の抗原結合ドメインは、クロスオーバーFab分子である)。
さらなる態様では、上記の態様のいずれかによる抗体は、以下のセクションII.A.1.-8.に記載されるように、特徴のいずれかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
好ましい態様において、抗体は、Fcドメイン、特にIgG Fcドメイン、より具体的にはIgG1 Fcドメインを含む。一態様では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。一態様では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。Fcドメインは、第1及び第2のサブユニットからなり、Fcドメインバリアントに関連して本明細書の以下に記載される特徴のうちのいずれかを単独で、又は組み合わせて、組み込んでもよい(セクションII.A.8.)。
本発明によれば、抗体は、CD19に結合する第2及び任意選択的に第3の抗原結合ドメインを含む(すなわち、抗体は、本明細書中以下にさらに記載されるように、多重特異性抗体である(セクションII.A.7.)。
1. 抗体断片
ある特定の態様では、本明細書に提供される抗体は、抗体断片である。
一態様では、抗体断片は、Fab分子、Fab’分子、Fab’-SH分子、又はF(ab’)2分子であり、特に本明細書に記載のFab分子である。「Fab’分子」は、抗体ヒンジ領域から1つ又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端における残基の付加だけ、Fab分子とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を保持するFab’分子である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab分子)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)2分子が得られる。
別の態様では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディである。ダイアボディは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP 404,097、WO1993/01161、Hudson et. al, Nat. Med.9:129-134(2003)、及びHollinger et l,Proc. Natl. Acad.Sci. USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディはまた、Hudson et.al, Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載されている。
さらなる態様では、抗体断片は、一本鎖Fab分子である。「単鎖Fab分子」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体重鎖定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)及びリンカーからなり、前記抗体ドメイン及び前記リンカーは、N末端からC末端方向に以下の順序のうちの1つを有する:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CL。特に、上記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32~50個のアミノ酸のポリペプチドである。一本鎖Fab分子は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合によって安定化される。さらに、これらの一本鎖Fab分子は、システイン残基の挿入(例えば、Kabatの番号付けによる、可変重鎖の44位と可変軽鎖の100位)による鎖間ジスルフィド結合の生成によって、更に安定化され得る。
別の態様では、抗体断片は一本鎖可変断片(scFv)である。「一本鎖可変断片」又は「scFv」は、リンカーにより接続された、抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変ドメインの融合タンパク質である。特に、リンカーは、10~25個のアミノ酸の短いポリペプチドであり、通常、柔軟性のためにグリシンが、かつ、溶解性のためにセリン又はスレオニンが豊富であり、VHのN末端をVLのC末端と、又はこの逆のいずれかで、接続させることができる。このタンパク質は、定常領域が取り除かれ、リンカーが導入されているにもかかわらず、元の抗体の特異性を保持することができる。scFv断片の総説としては、例えば、Plueckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照されたい。また、WO93/16185及び米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号を参照されたい。
別の態様では、抗体断片は単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。特定の態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516号B1を参照されたい)。
抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載される、インタクト抗体のタンパク質分解による消化、及び組み換え宿主細胞(例えば、大腸菌)による組み換え産生を含む種々の技術によって作製することができる。
2. ヒト化抗体
一部の実施形態では、本明細書に提供される抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するようにヒト化される一方、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する。一般に、ヒト化抗体は、CDR(又はその一部分)が非ヒト抗体に由来する1つ又は複数の可変ドメインを含み、FR(又はその一部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含み得る。いくつかの態様では、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換される。
ヒト化された抗体及びその作製方法については、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)で総説され、更に以下に記載されている:Riechmann et al., Nature 332:323-329(1988);Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトを記載する);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498(1991)(リサーフェシングを記載する);Dall’ Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載する);並びにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフルの「ガイド付き選択アプローチを記載する)。
ヒト化に用い得るヒトフレームワーク領域としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:「ベストフィット」法を用いて選択したフレームワーク領域(例えば、Sims et al., J.Immunol. 151:2296(1993)を参照されたい);重鎖又は軽鎖可変領域の特定の亜型のヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285(1992);及びPresta et al., J.Immunol.,151:2623(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro及びFransson, Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照されたい);並びにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al., J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照されたい)。
3. グリコシル化バリアント
ある特定の態様では、本明細書において提供する抗体を変えて、抗体のグリコシル化の程度を増減させる。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作り出されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
抗体がFc領域を含む場合、抗体に付着しているオリゴ糖を変更してもよい。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright等のTIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖には、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐型オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに結合したフコースが含まれ得る。いくつかの態様では、本発明の抗体中のオリゴ糖の修飾が、特定の改良された特性を有する抗体バリアントを生成するために行われてもよい。
一態様では、非フコシル化オリゴ糖、即ち、Fc領域へのフコース結合(直接又は間接)が欠落した、オリゴ糖構造を有する抗体バリアントを提供する。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分枝オリゴ糖構造の幹に第1のGlcNAcが結合したフコース残基を欠く、N結合オリゴ糖である。一態様では、天然又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した抗体バリアントを提供する。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は場合によっては約100%(即ち、フコシル化オリゴ糖が存在しない)であってもよい。非フコシル化オリゴ糖の割合は、例えば、WO2006/082515に記載のMALDI-TOF質量分析法により測定した、Asn297に結合したすべてのオリゴ糖の合計(例えば、複合体、ハイブリッド、及びハイマンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEU番号付け);しかしながら、Asn297は、抗体のマイナーな配列変化のために、297位の上流又は下流、すなわち294位と300位の間の約±3個のアミノ酸に位置していてもよい。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加したこのような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合、及び/又は改善されたエフェクタ機能、特に改善されたADCC機能を有することができる。例えば、US2003/0157108;US2004/0093621を参照のこと。
フコシル化が低下した抗体を産生可能な細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が不足しているLec13CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);US2003/0157108;及びWO2004/056312、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子のFUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87:614-622(2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107を参照されたい)、又はGDP-フコース合成若しくはトランスポータータンパク質の活性が低下若しくは消滅した細胞(例えば、US2004259150、US2005031613、US2004132140、US2004110282を参照されたい)が挙げられる。
さらなる態様では、抗体バリアントは、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている二分されたオリゴ糖と共に提供される。このような抗体バリアントは、上述のとおり、低下したフコシル化及び/又は改善されたADCC機能を有しうる。このような抗体バリアントの例は、例えばUmana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180(1999);Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93,851-861(2006);WO99/54342、WO2004/065540、WO2003/011878に記載されている。
Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有しうる。このような抗体バリアントの例は、例えば、WO1997/30087;WO1998/58964;及びWO1999/22764に記載されている。
4. システイン操作抗体バリアント
ある特定の態様では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば、THIOMABTMを生成することが望ましい場合がある。好ましい態様では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能部位に配置され、本明細書でさらに説明するように、例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分などの他の部分に抗体をコンジュゲートさせてイムノコンジュゲートを作製するために使用され得る。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、同第8,30,930号、同第7,855,275号、同第9,000,130号、又はWO2016040856に記載のように生成することができる。
5. 抗体誘導体
一部の態様では、本明細書で提供される抗体は、技術分野で既知であり、容易に入手可能な、さらなる非タンパク質性部分を含むようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に適した部位には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されるものではない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量のものであってもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に付着しているポリマーの数は様々であり得、複数のポリマーが付着している場合には、それらは同じ分子であり得るか、又は異なる分子であり得る。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又は種類は、限定されるものではないが、改善される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義される条件下で治療に使用されるかどうかなどを含む考慮事項に基づいて決定することができる。
6. 免疫抱合体
本発明はまた、細胞毒性剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体などの1つ又は複数の治療薬にコンジュゲート(化学結合)された、本明細書の抗CD3/CD19抗体を含むイムノコンジュゲートも提供する。
一態様では、イムノコンジュゲートは、抗体が、前述の治療剤の1種又は複数にコンジュゲートされている、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。抗体は典型的には、リンカーを使用して、治療剤の1種又は複数に接続される。治療薬及び薬物及びリンカーの例を含むADC技術の概要は、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に記載されている。
別の態様では、イムノコンジュゲートは、酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートした本発明の抗体を含み、これには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリのタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウのタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、並びにトリコテセンが含まれるが、これらに限定されない。
別の態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートして放射性抱合体を形成する、本発明の抗体を含む。放射性コンジュゲートの生産には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位元素が挙げられる。放射性抱合体が検出のために使用されるとき、その例には、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、Tc99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のための、I123、I131、In111、F19、C13、N15、O17、ガドリニウム、マンガン、若しくは鉄などのスピン標識が含まれうる。
抗体と細胞傷害剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル活性エステル(ジスクシニミジルスベレートなど)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されているようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのための例示的キレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸-ラビリンカ、ペプチダーゼ感受性リンカー、フォトラビリンカ、ジメチルリンカ又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
本明細書におけるイムノコンジュゲート又はADCは、限定されないが、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology, Inc., Rockford、IL., USAから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない架橋リンカー試薬を用いて調製されるコンジュゲートを明確に意図している。
7. 多重特異性抗体
本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原決定基(例えば、2つの異なるタンパク質、又は同じタンパク質上の2つの異なるエピトープ)に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の態様では、多重特異性抗体は3つ以上の結合特異性を有する。本発明によれば、結合特異性の一方はCD3に対するものであり、他方の特異性はCD19に対するものである。
多重特異性抗体は、全長抗体又は抗体断片として調製され得る。多重特異性抗体を作製するための技術には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組み換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)参照)及び「ノブ・イン・ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号及びAtwell et al., J. Mol. Biol. 270:26(1997)参照)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、また、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果の操作(例えば、WO2009/089004参照);2つ以上の抗体若しくは断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)参照);ロイシンジッパーを使用した二重特異性抗体の生成(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)及びWO2011/034605参照);軽鎖の誤対合問題を回避するための一般的な軽鎖技術の使用(例えば、WO98/50431参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)参照);及び一本鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al., J.Immunol., 152:5368(1994)参照);並びに例えばTutt et al. J. Immunol.147:60(1991)に記載されている三重特異性抗体の調製によって作製することができる。
例えば、「オクトパス(Octopus)抗体」を含む3つ以上の抗原結合部位を有する操作された抗体、又はDVD-Igも本明細書に含まれる(例えば、WO2001/77342及びWO2008/024715を参照)。3つ以上の抗原結合部位を有する多重特異性抗体の他の例は、WO2010/115589、WO2010/112193、WO2010/136172、WO2010/145792、及びWO2013/026831に見出すことができる。多重特異性抗体又はその抗原結合断片は、CD3に、同様に別の異なる抗原に、又はCD3の2つの異なるエピトープに結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」も含む(例えば、US2008/0069820及びWO2015/095539を参照されたい)。
多重特異性抗体は、同じ抗原特異性の1つ又は複数の結合アームにドメインクロスオーバーを有する非対称形態(いわゆる「クロスマブ(CrossMab)」技術)で、即ちVH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号参照)、CH1/CLドメイン(例えば、国際公開第2009/080253号参照)又は完全なFabアーム(例えば、国際公開第2009/080251号、同第2016/016299号参照、Schaefer et al, PNAS, 108(2011)1187-1191及びKlein at al., MAbs 8(2016)1010-20)も参照)を交換することによっても提供されうる。非対称Fabアームは、荷電又は非荷電アミノ酸変異をドメイン界面に導入して正しいFabペアリングを指向することによって操作することもできる。例えば、WO2016/172485を参照されたい。
多重特異性抗体の様々なさらなる分子フォーマットが当技術分野で公知であり、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al., Mol Immunol 67(2015)95-106を参照)。
多重特異性抗体の特定のタイプは、標的細胞、例えばB細胞上の表面抗原、及び標的細胞を殺すためにT細胞を再標的化するためのCD3などのT細胞受容体(TCR)複合体の活性化不変成分に同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。したがって、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、特に二重特異性抗体であり、結合特異性の一方はCD3に対するものであり、他方は標的細胞抗原としてのCD19に対するものである。
この目的のために有用でありうる二重特異性抗体フォーマットの例には、2つのscFv分子が柔軟なリンカーによって融合されている、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー(engager))分子(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261及びWO2008/119567、Nagorsen及びBaeuerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)参照)、ダイアボディ(Holliger et al., Prot Eng 9, 299-305 (1996))及びその誘導体、例えばタンデムダイアボディ(“TandAb”; Kipriyanov et al., J Mol Biol 293, 41-56 (1999))、ダイアボディフォーマットに基づくが、安定化付加のためのC末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al., J Mol Biol 399, 436-449(2010))、並びに全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子であるいわゆるトリオマブ(triomab)(Seimetz et al, Cancer Treat Rev 36, 458-467(2010)に概説)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に含まれる、具体的なT細胞二重特異性抗体形式は、WO2013/026833、WO2013/026839、WO2016/020309;Bacac et al., Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
本発明の抗体の好ましい態様を以下に記載する。
一態様では、本発明は、本明細書に記載の、CD3に結合する第1の抗原結合ドメインと、CD19に結合する第2及び場合により第3の抗原結合ドメインとを含むCD3及びCD19に結合する抗体を提供する。
本発明の好ましい態様によれば、抗体に含まれる抗原結合ドメインはFab分子である(即ち、各々が可変ドメイン及び定常ドメインを含む、重鎖及び軽鎖から構成される抗原結合ドメインである)。一態様において、第1、第2及び/又は存在する場合は第3の抗原結合ドメインは、Fab分子である。一態様において、前記Fab分子は、ヒトのものである。好ましい態様において、前記Fab分子はヒト化されている。また別の態様では、前記Fab分子は、ヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインを含む。
好ましくは、抗原結合ドメインの少なくとも1つは、クロスオーバーFab分子である。このような修飾は、異なるFab分子の重鎖と軽鎖の誤対合を低減し、それによって、組み換え生成における本発明の(多重特異性)抗体の収率及び純度を改善する。本発明の(多重特異性)抗体に有用な好ましいクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメイン(それぞれ、VL及びVH)が交換されている。しかしながら、このドメイン交換によっても、(多重特異性)抗体の調製は、誤対合重鎖及び軽鎖の間の、いわゆる、ベンス・ジョーンズ型相互作用に起因して、特定の副生成物を含むことがある(Schaefer et al., PNAS, 108(2011)11187-11191を参照されたい)。異なるFab分子からの重鎖と軽鎖の誤った対形成をさらに減らし、目的の(多重特異性)抗体の純度と収率を高めるために、本明細書でさらに説明するように、CD3に結合するFab分子、又はCD19に結合するFab分子のいずれかのCH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置に、反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することができる。電荷修飾は、(多重特異性)抗体に含まれる従来のFab分子(複数可)(例えば、図1A~図1C、図1G~図1Jに示される)、又は(多重特異性)抗体に含まれるVH/VLクロスオーバーFab分子(例えば、図1D~図1F、図1K~図1Nに示される)において行われる(但し両方ではない)。好ましい態様では、電荷修飾は、(多重特異性)抗体(好ましい態様ではCD19に結合する)に含まれる従来のFab分子で行われる。
本発明による好ましい態様において、(多重特異性)抗体は、CD3及びCD19に同時に結合することができる。一態様では、(多重特異性)抗体は、CD3及びCD19への同時結合によってT細胞及び標的細胞を架橋することができる。さらにより好ましい態様では、そのような同時結合は、標的細胞、特にB細胞などのCD19発現標的細胞の溶解をもたらす。一態様では、そのような同時結合はT細胞の活性化を生じる。別の態様では、そのような同時結合は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクタ分子の放出、細胞傷害活性及び活性化マーカーの発現の群から選択されるTリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の細胞応答を生じる。一態様では、CD19への同時結合なしのCD3への(多重特異性)抗体の結合は、T細胞の活性化をもたらさない。
一態様において、(多重特異性)抗体は、T細胞の細胞傷害活性を標的細胞に向け直すことができる。好ましい態様において、前記向け直しは、標的細胞によるMHC媒介ペプチド抗原提示及び/又はT細胞の特異性と無関係である。
好ましくは、本発明のいずれかの態様によるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+又はCD8+T細胞、特にCD8+T細胞である。
a) 第1の抗原結合ドメイン
本発明の(多重特異性)抗体は、CD3に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメイン(第1の抗原結合ドメイン)を含む。好ましい態様において、CD3はヒトCD3(配列番号45)又はカニクイザルCD3(配列番号46)、とりわけヒトCD3である。一態様において、第1の抗原結合ドメインは、ヒト及びカニクイザルCD3と交差反応性がある(すなわち、それらに特異的に結合する)。いくつかの態様では、CD3のサブユニット(CD3イプシロン)である。
好ましい態様において、(多重特異性)抗体は、CD3に結合する1つを超えない抗原結合ドメインを含む。一態様において、(多重特異性)抗体は、CD3に対する一価の結合を提供する。
一態様において、CD3に結合する抗原結合ドメインは、Fv分子、scFv分子、Fab分子及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片である。好ましい態様において、CD3に結合する抗原結合ドメインはFab分子である。
好ましい態様において、CD3に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。そのような態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインは、好ましくは従来のFab分子である。(多重特異性)抗体に含まれるCD19に結合する2つ以上の抗原結合ドメイン、特にFab分子が存在する態様では、CD3に結合する抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子であることが好ましく、CD19に結合する抗原結合ドメインは従来のFab分子であることが好ましい。
代替的な態様において、CD3に結合する抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。そのような態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載のクロスオーバーFab分子、すなわちFab分子であり、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLは、交換される/互いに置換される。(多重特異性)抗体に含まれるCD3に結合する2つ以上の抗原結合ドメイン、特にFab分子が存在する態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子であることが好ましく、CD3に結合する抗原結合ドメインは従来のFab分子であることが好ましい。
好ましい態様において、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1、特に可変ドメインVL及びVHは、互いに置き換わっているFab分子である(すなわち、そのような態様によると、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子である)。1つのそのような態様において、第2の(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。
一態様において、CD3に結合する1つを超えない抗原結合ドメインは、(多重特異性)抗体に存在する(すなわち、この抗体はCD3に対する一価の結合を提供する)。
b) 第2(及び第3)の抗原結合ドメイン
本発明の(多重特異性)抗体は、CD19に結合する少なくとも1つの抗原結合ドメイン(第2及び任意選択的に第3の抗原結合ドメイン)、特にFab分子を含む。第2の抗原結合ドメインは、(多重特異性)抗体を標的部位、例えばCD19を発現する特定のタイプの細胞に向かわせることができる。
一態様において、CD19に結合する抗原結合ドメインは、Fv分子、scFv分子、Fab分子及びF(ab’)2分子の群から選択される抗体断片である。好ましい態様において、CD19に結合する抗原結合ドメインはFab分子である。
特定の態様において、(多重特異性)抗体は、CD19に結合する2つの抗原結合ドメイン、特にFab分子を含む。好ましい態様では、これらの抗原結合ドメインのすべては同一であり、すなわち、同じ分子形式(例えば、従来又はクロスオーバーFab分子)を有し、(存在する場合)本明細書に記載されるCH1及びCLドメインに同じアミノ酸置換を含む同じアミノ酸配列を含む。一態様では、(多重特異性)抗体は、CD19に結合する2つ以下の抗原結合ドメイン、特にFab分子を含む。
好ましい態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。そのような態様において、CD3に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。
別の態様では、CD19に結合する抗原結合ドメインは、本明細書に記載のクロスオーバーFab分子、すなわちFab分子であり、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLは、交換/互いに置換される。そのような態様において、CD3に結合する抗原結合ドメインは、従来のFab分子である。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、ヒト定常領域を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、ヒト定常領域、特にヒトCH1及び/又はCLドメインを含むFab分子である。ヒト定常ドメインの例示的な配列は、配列番号52及び53(それぞれ、ヒトカッパ及びラムダCLドメイン)、並びに配列番号54(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)で与えられる。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号52又は配列番号53のアミノ酸配列、特に配列番号52のアミノ酸配列に少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。特に、軽鎖定常領域は、「電荷修飾」の状態で本明細書に記載のアミノ酸突然変異を含んでいてもよい、及び/又は、クロスオーバーFab分子での場合、1つ又は複数の(特に2つの)N末端アミノ酸の欠失又は置換を含んでいてもよい。一部の態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号54のアミノ酸配列に含まれるCH1ドメイン配列に少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域(具体的にはCH1ドメイン)は、本明細書の「電荷修飾」の下に記載されるアミノ酸変異を含み得る。
一態様において、第2(及び、存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号15の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号16のHCDR2、及び配列番号17のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号19の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号20のLCDR2及び配列番号21のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、ヒト化抗体である(に由来する)。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、ヒト化抗原結合ドメイン(すなわち、ヒト化抗体の抗原結合ドメイン)である。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、ヒト化可変領域である。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18の1つ又は複数の重鎖フレームワーク配列(すなわち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はCD19に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号18のアミノ酸配列において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、第2(及び、存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22の1つ又は複数の軽鎖フレームワーク配列(すなわち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はCD19に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号22のアミノ酸配列において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、第2(及び、存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列に少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含み、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列に少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のアミノ酸配列を含み、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のアミノ酸配列を含む。
さらなる態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号18の配列を含むVHと、配列番号22の配列を含むVLとを含む。
さらなる態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号18のVH配列と配列番号22のVL配列とを含む。
別の態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号18のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号22のVLの軽鎖CDR配列を含むVLとを含む。
さらなる態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号18のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列、並びに配列番号22のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のVHの重鎖CDR配列、及び配列番号18のVHのフレームワーク配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のあるフレームワークを含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のVHの重鎖CDR配列と、配列番号18のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号18のVHの重鎖CDR配列と、配列番号18のVHのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号22のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号22のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号22のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号22のVLのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
別の態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号28の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号29のHCDR2、及び配列番号30のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号33のLCDR2及び配列番号34のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、ヒト化抗体である(に由来する)。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、ヒト化抗原結合ドメイン(すなわち、ヒト化抗体の抗原結合ドメイン)である。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、ヒト化可変領域である。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVH及び/又はVLは、アクセプターヒトフレームワーク、例えば、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークを含む。
一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31の1つ又は複数の重鎖フレームワーク配列(すなわち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVH配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はCD19に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号31のアミノ酸配列において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、第2(及び、存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35の1つ又は複数の軽鎖フレームワーク配列(すなわち、FR1、FR2、FR3及び/又はFR4配列)を含む。一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約95%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の態様において、少なくとも約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%の同一性を有するVL配列は、基準配列と比べて、置換(例えば、保存的置換)、挿入又は欠失を含有するが、その配列を含む抗体はCD19に結合する能力を保持する。ある特定の態様では、合計で1~10個のアミノ酸が、配列番号35のアミノ酸配列において置換、挿入及び/又は欠失されている。ある特定の態様では、置換、挿入、又は欠失は、CDRの外側の領域で(即ち、FRで)生じる。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列を含む。任意選択的に、第2(及び、存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列に少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含み、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列に少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一のアミノ酸配列を含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のアミノ酸配列を含み、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のアミノ酸配列を含む。
さらなる態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号31の配列を含むVHと、配列番号35の配列を含むVLとを含む。
さらなる態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号31のVH配列と配列番号35のVL配列とを含む。
別の態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列を含むVHと、配列番号35のVLの軽鎖CDR配列を含むVLとを含む。
さらなる態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインは、配列番号31のVHのHCDR1、HCDR2及びHCDR3のアミノ酸配列、並びに配列番号35のVLのLCDR1、LCDR2及びLCDR3のアミノ酸配列を含む。
一態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列、及び配列番号31のVHのフレームワーク配列に少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のあるフレームワークを含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列と、配列番号31のVHのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVHは、配列番号31のVHの重鎖CDR配列と、配列番号31のVHのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号35のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性のフレームワークとを含む一態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号35のVLのフレームワーク配列と少なくとも95%の配列同一性のフレームワークとを含む。別の態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインのVLは、配列番号35のVLの軽鎖CDR配列と、配列番号35のVLのフレームワーク配列と少なくとも98%の配列同一性のフレームワークとを含む。
c) 電荷修飾
本発明の(多重特異性)抗体は、それに含まれるFab分子に、1つ(又は2つより多い抗原結合Fab分子を含む分子の場合には、さらに多くの)結合アーム中にVH/VL交換を有するFabベース多重特異性抗体の生成において生じうる、軽鎖と適合しない重鎖との誤対合(ベンス・ジョーンズ型副生成物)を低減するうえで特に効率的であるアミノ酸置換を含みうる(全体が本明細書に参照により組み込まれるWO2015/150447、特にその中の実施例も参照されたい)。望ましくない副生成物、特に、結合アームの1つにVH/VLドメイン交換を有する多重特異性抗体に生じるベンス・ジョーンズ型副生成物と比較した、所望の(多重特異性)抗体の比を、CH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置と反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することによって改善することができる(本明細書で「電荷修飾」と呼ぶことがある)。
したがって、(多重特異性)抗体の第1及び第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインが両方ともFab分子であり、抗原結合ドメインの1つ(特に、第1の抗原結合ドメイン)において、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっている、一部の態様では、
i)第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、あるいは
ii)第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、正に帯電したアミノ酸で置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸は、負に帯電したアミノ酸で置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
(多重特異性)抗体は、i)及びii)に記述されている修飾を両方とも含むことはない。VH/VL交換を有する抗原結合ドメインの定常ドメインCL及びCH1は、互いによって置き換えられていない(即ち、交換されていないままである)。
より具体的な態様では、
i)第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)、あるいは
ii)第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
1つのこのような態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる板東付け)、213位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
より好ましい態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸はリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸はリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸はグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸はグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらにより好ましい態様では、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸はリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸はアルギニン(R)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸はグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸はグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様において、上記の態様によるアミノ酸置換が、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1に行われる場合、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
あるいは、上記の態様によるアミノ酸置換は、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1の代わりに、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われる。好ましいこのような態様において、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLは、カッパアイソタイプである。
したがって、一態様では、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
なお別の態様では、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸はリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸はリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸はグルタミン酸(E)によって置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の態様では、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸はリジン(K)により置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸はアルギニン(R)により置換されており(Kabatによる番号付け)、第1の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸はグルタミン酸(E)により置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸はグルタミン酸(E)により置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、
(a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、この第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、かつ配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、Fab分子である、第1の抗原結合ドメインと、
(b)CD19に結合する第2及び場合により第3の抗原結合ドメインと
を含み、
第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して(好ましい態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)により独立して)置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)により独立して(好ましい態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)により独立して)置換されており(Kabatによる番号付け)、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸が、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)により独立して置換されている(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
d)多重特異性抗体フォーマット
本発明による(多重特異性)抗体は、様々な構造を有することができる。例示的な構成を図1に示す。
好ましい態様において、(多重特異性)抗体に含まれる抗原結合ドメインは、Fab分子である。このような態様において、第1、第2、第3などの抗原結合ドメインは、それぞれ本明細書において第1、第2、第3などのFab分子と呼ばれることがある。
一態様において、(多重特異性)抗体の第1及び第2の抗原結合ドメインは、任意選択的にペプチドリンカーを介して互いに融合している。好ましい態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子である。1つのそのような態様において、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。別のそのような態様において、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。(i)第1の抗原結合ドメインがFab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合しているか、又は(ii)第2の抗原結合ドメインがFab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している態様において、追加的に、第1の抗原結合ドメインのFab軽鎖及び第2の抗原結合ドメインのFab軽鎖は、任意選択的にペプチドリンカーを介して、互いに融合していてもよい。
単一の抗原結合ドメイン(Fab分子など)を有する(多重特異性)抗体は、第2の抗原、例えば、CD19などの標的細胞抗原に特異的に結合することができる(例えば、図1A、図1D、図1Gに示すように)は、特に、高親和性抗原結合ドメインの結合に続いて、第2の抗原の内在化が予想される場合に役立つ。そのような場合、第2の抗原に特異的な1つを超える抗原結合ドメインの存在は、第2の抗原の内部移行を増強し、それによって第2の抗原の利用能を低減し得る。
しかし他の場合において、第2の抗原、例えばCD19などの標的細胞抗原に特異的な2つ以上の抗原結合ドメイン(Fab分子など)(図1B、図1C、図1E、図1F、図1I、図1J、図1M又は図宇1Nに示される例を参照)を、例えば、標的部位への標的化を最適化したり、標的細胞抗原の架橋を可能にしたりするために、含む(多重特異性)抗体を有することが有利であろう。
したがって、好ましい態様では、本発明による(多重特異性)抗体は第3の抗原結合ドメインを含む。
一態様では、第3の抗原結合ドメインはCD19に結合する。一態様において、第3の抗原結合ドメインはFab分子である。
一態様において、第3の抗原結合ドメインは、第2の抗原結合ドメインと同一である。
一部の態様において、第3及び第2の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子であり、第3の抗原結合ドメインは、第2の抗原結合ドメインと同一である。故に、これらの態様において、第2及び第3の抗原結合ドメインは、同じ重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含み、同じドメイン配置(すなわち、従来又はクロスオーバー)を有する。さらに、これらの態様において、第3の抗原結合ドメインは、存在する場合、第2の抗原結合ドメインと同じアミノ酸置換を含む。例えば、本明細書において「電荷改変」と記載されるアミノ酸置換は、第2の抗原結合ドメイン及び第3の抗原結合ドメインのそれぞれの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われる。あるいは、前記アミノ酸置換は、第1の抗原結合ドメイン(好ましい態様において、これはFab分子でもある)の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われ得るが、第2の抗原結合ドメイン及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1では行われない。
第2の抗原結合ドメインと同様に、第3の抗原結合ドメインは、好ましくは従来のFab分子である。しかし、第2及び第3の抗原結合ドメインがクロスオーバーFab分子である(並びに、第1の抗原結合ドメインが従来のFab分子である)態様も考慮される。故に、好ましい態様において、第2及び第3の抗原結合ドメインは、それぞれ従来のFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。他の態様において、第2及び第3の抗原結合ドメインは、それぞれクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
第3の抗原結合ドメインが存在する場合、好ましい態様では、第1の抗原ドメインはCD3に結合し、第2及び第3の抗原結合ドメインはCD19に結合する。
好ましい態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットは、安定な会合が可能である。
本発明による(多重特異性)抗体は、異なる構造を有することができ、即ち、第1、第2(及び任意選択的に第3)の抗原結合ドメインは、互いに、異なる様式でFcドメインに融合していてもよい。構成要素は、直接的に、又は好ましくは1つ以上の適切なペプチドリンカーを介して、互いに融合していてもよい。Fab分子の融合が、FcドメインのサブユニットのN末端へのものである場合、それは典型的には免疫グロブリンヒンジ領域を介するものである。
一部の態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、それぞれFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような態様において、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端又はFcドメインの他方のサブユニットのN末端に融合していてもよい。好ましいそのような態様において、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。他のそのような態様において、第2の抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
一態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1G及び1Kに概略的に描写されている(これらの例における第1の抗原結合ドメインは、VH/VLクロスオーバーFab分子である)。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
別の態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから実質的になり、第1及び第2のFab分子は、各々がFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。そのような構造は、図1A及び図1Dに概略的に描写されている(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。第1及び第2のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。好ましい態様において、第1及び第2のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、それぞれFcドメインに融合している。具体的な態様において、特にFcドメインがIgG1 Fcドメインである場合に、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。
いくつかの態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような態様において、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端又は(上記に記載されたように)Fcドメインの他方のサブユニットのN末端に融合していてもよい。好ましいそのような態様において、前記第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。他のそのような態様において、前記第2の抗原結合ドメインはクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
一態様において、第1及び第2の抗原結合ドメインは、各々がFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1H及び1Lに概略的に描写されている(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
いくつかの態様において、第3の抗原結合ドメイン、特に第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。好ましいそのような態様において、前記第2及び第3の抗原結合ドメインは、それぞれ従来のFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。他のそのような態様において、前記第2及び第3の抗原結合ドメインは、それぞれクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
好ましいそのような態様において、第1及び第3の抗原結合ドメインは、それぞれFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しており、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーから本質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1B及び図1E(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)、並びに図1J及び1N(これらの例において、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。第1及び第3のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。好ましい態様において、第1及び第3のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、各々がFcドメインに融合している。具体的な態様において、特にFcドメインがIgG1 Fcドメインである場合に、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
別のそのような態様において、第2及び第3の抗原結合ドメインは、それぞれFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合しており、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子と、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと、任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーとから本質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような構造は、図1C及び1F(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)、並びに図1I及び1M(これらの例において、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。第2及び第3のFab分子は、Fcドメインに直接的に又はペプチドリンカーを介して融合していてもよい。好ましい態様において、第2及び第3のFab分子は、免疫グロブリンヒンジ領域を介して、それぞれFcドメインに融合している。具体的な態様において、特にFcドメインがIgG1 Fcドメインである場合に、免疫グロブリンヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジ領域である。任意に、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、追加的に互いに融合していてもよい。
Fab分子が、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの各々のN末端に融合している(多重特異性)抗体の構造において、2つのFab分子、ヒンジ領域及びFcドメインは、免疫グロブリン分子を本質的に形成する。好ましい態様において、免疫グロブリン分子は、IgGクラス免疫グロブリンである。さらにより好ましい形態において、免疫グロブリンは、IgG1サブクラス免疫グロブリンである。別の態様において、免疫グロブリンは、IgG4サブクラス免疫グロブリンである。さらに好ましい態様において、免疫グロブリンは、ヒト免疫グロブリンである。他の態様において、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。一態様において、免疫グロブリンは、ヒト定常領域、特にヒトFc領域を含む。
本発明の(多重特異性)抗体のいくつかにおいて、第1のFab分子のFab軽鎖及び第2のFab分子のFab軽鎖は、任意選択的にペプチドリンカーを介して互いに融合している。第1及び第2のFab分子の構造に応じて、第1のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端で第2のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合していてもよく、又は第2のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端で第1のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合していてもよい。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖の融合は、適合しないFab重鎖及び軽鎖の誤対合をさらに低減し、本発明の(多重特異性)抗体の一部の発現に必要なプラスミドの数も低減する。
抗原結合ドメインは、Fcドメインに又は互いに、直接的に又は1個又は複数個のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合していてもよい。ペプチドリンカーは、当技術分野で公知であり、本明細書に説明される。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n、G4(SG4)n、又は(G4S)nG5ペプチドリンカーが含まれる。「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4の整数である。一態様において、前記ペプチドリンカーは、少なくとも5個のアミノ酸長さ、一態様において5~100個、さらなる態様において10~50個のアミノ酸長さを有する。一態様では、前記ペプチドリンカーは(GxS)n又は(GxS)nGmであり、式中、G=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5又は6、及びm=0、1、2又は3)あるいは(x=4、n=1、2、3、4又は5及びm=0、1、2、3、4又は5)であり、一態様では、x=4及びn=2又は3であり、さらなる態様では、x=4及びn=2であり、さらに別の態様では、x=4、n=1、及びm=5である。一態様において、前記ペプチドリンカーは(G4S)2である。別の態様では、前記ペプチドリンカーはG4SG5である。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖を互いに融合するのに特に適したペプチドリンカーは、(G4S)2である。第1及び第2のFab断片のFab重鎖を接続するために適した例示的なペプチドリンカーは、配列(D)-(G4S)2(配列番号48及び49)を含む。別の特に適切なそのようなリンカーは、配列(D)-G4SG5(配列番号50及び51)を含む。加えて、リンカーは、免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含んでいてもよい。特に、Fab分子が、FcドメインサブユニットのN末端に融合する場合、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介し、更なるペプチドリンカーを伴い、又は伴わずに融合してもよい。
ある特定の態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VL(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチド、並びに第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
ある特定の形態において、本発明の(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VH(1)-CL(1)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチド、並びに第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
一部の態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有し、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。他の態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VH(2)-CH1(2)-VL(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。これらの態様の一部において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する第1のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。これらの態様の他において、適切であれば、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドと共有する(VH(1)-CL(1)-VL(2)-CL(2))ポリペプチド、又は第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(VL(2)-CL(2)-VH(1)-CL(1))ポリペプチドをさらに含む。これらの態様による(多重特異性)抗体は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含むことができる。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
一部の態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有し、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有する(VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))ポリペプチドを含む。他の態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニット(VH(2)-CH1(2)-VH(1)-CL(1)-CH2-CH3(-CH4))と共有するポリペプチドを含む。これらの態様の一部において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する第1のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。これらの態様の他において、適切であれば、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドと共有する(VL(1)-CH1(1)-VL(2)-CL(2))ポリペプチド、又は第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(VL(2)-CL(2)-VH(1)-CL(1))ポリペプチドをさらに含む。これらの態様による(多重特異性)抗体は、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含むことができる。一部の態様において、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合的に連結している。
一部の態様において、(多重特異性)抗体はFcドメインを含まない。好ましいそのような態様において、前記第2及び存在する場合に第3の抗原結合ドメインは、それぞれ従来のFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわち、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が交換されている/互いに置き換わっているFab分子である。他のそのような態様において、前記第2及び存在する場合に第3の抗原結合ドメインは、それぞれクロスオーバーFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子である。
1つのそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2の抗原結合ドメイン、並びに任意選択で1つ又は複数のペプチドリンカーから実質的になり、第1及び第2の抗原結合ドメインは、両方ともFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、図1O及び図1Sに概略的に描写されている(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。
別のそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1及び第2の抗原結合ドメイン、並びに任意選択で1つ又は複数のペプチドリンカーから実質的になり、第1及び第2の抗原結合ドメインは、両方ともFab分子であり、第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、図1P及び図1Tに概略的に描写されている(これらの例において、モミ抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2の抗原結合ドメインは従来のFab分子である)。
一部の態様において、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、(多重特異性)抗体は、第3の抗原結合ドメイン、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。ある特定のそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子、並びに任意選択で1つ又は複数のペプチドリンカーから実質的になり、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような構造は、図1Q及び1U(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ従来のFab分子である)、又は図1X及び1Z(これらの例において、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。
一部の態様において、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、(多重特異性)抗体は、第3の抗原結合ドメイン、特に第3のFab分子をさらに含み、前記第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第2のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。ある特定のそのような態様において、(多重特異性)抗体は、第1、第2及び第3のFab分子、並びに任意選択で1つ又は複数のペプチドリンカーから実質的になり、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第2のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。そのような構造は、図1R及び1V(これらの例において、第1の抗原結合ドメインはVH/VLクロスオーバーFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ従来のFab分子である)、又は図1W及び1Y(これらの例において、第1の抗原結合ドメインは従来のFab分子であり、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれVH/VLクロスオーバーFab分子である)に概略的に描写されている。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域に置き換えられている)(VH(2)-CH1(2)-VL(1)-CH1(1))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域に置き換えられている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有する(VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域に置き換えられている)(VH(2)-CH1(2)-VH(1)-CL(1))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域に置き換えられている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有する(VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有し、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域に置き換えられている)(VH(3)-CH1(3)-VH(2)-CH1(2)-VL(1)-CH1(1))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有し、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(すなわち、第1のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域に置き換えられている)(VH(3)-CH1(3)-VH(2)-CH1(2)-VH(1)-CL(1))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有し、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab重鎖と共有する(VL(1)-CH1(1)-VH(2)-CH1(2)-VH(3)-CH1(3))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(1)-CL(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第1のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第1のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖と共有し、第2のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab重鎖と共有する(VH(1)-CL(1)-VH(2)-CH1(2)-VH(3)-CH1(3))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第1のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(1)-CH1(1))及び第2のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CL(2))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する(すなわち、第3のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域に置き換えられている)(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2)-VL(3)-CH1(3))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽定常領域と置き換わっている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する(すなわち、第3のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域に置き換えられている)(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)-VH(3)-CL(3))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第3のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域と置き換わっている)、第3のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab軽鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖可変領域が軽鎖可変領域に置き換えられている)、第2のFab分子のFab重鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖と共有する(VL(3)-CH1(3)-VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))をさらに含む。
ある特定の態様において、本発明による(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第3のFab分子が、クロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域と置き換わっている)、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab重鎖可変領域と共有し、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有し(すなわち、第2のFab分子がクロスオーバーFab重鎖を含み、重鎖定常領域が軽鎖定常領域に置き換えられている)、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を第1のFab分子のFab重鎖と共有する(VH(3)-CL(3)-VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1))ポリペプチドを含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))をさらに含む。いくつかの態様において、(多重特異性)抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))をさらに含む。
一態様において、本発明は、
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子である第2の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含み、
(i)a)の下の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、b)の下の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合され、及びb)の下の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でc)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合されるか、又は
(ii)b)の下の第2の抗原結合ドメインは、a)の下の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のFab重鎖のN末端にFab重鎖のC末端で融合され、及びa)の下の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、c)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合される。
好ましい態様では、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインはFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1は、互いに置換され、且つ、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2、及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2及び第3の抗原結合ドメインであって、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ(従来の)Fab分子である、第2及び第3の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインと
を含み、
(i)a)の下の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、b)の下の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合され、且つ、b)の下の第2の抗原結合ドメイン及びb)の下の第3の抗原結合ドメインは、それぞれFab重鎖のC末端でc)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合されているか、又は
(ii)b)の下の第2の抗原結合ドメインは、a)の下の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のFab重鎖のN末端にFab重鎖のC末端で融合され、且つ、a)の下の第1の抗原結合ドメイン及びb)の下の第3の抗原結合ドメインは、c)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端にFab重鎖のC末端でそれぞれ融合される。
別の態様では、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVH又は定常ドメインCL及びCH1が互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子である第2の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと、
を含む二重特異性抗体を提供し、
(i)a)の第1の抗原結合ドメイン及びb)の第2の抗原結合ドメインが、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している、(多重特異性)抗体を提供する。
本発明による(多重特異性)抗体の異なる構造のすべてにおいて、本明細書に記載されるアミノ酸置換(「電荷改変」)は、存在する場合、第2及び(存在する場合)第3の抗原結合ドメイン/Fab分子のCH1及びCLドメイン、又は第1の抗原結合ドメイン/Fab分子のCH1又はCLドメインのいずれかにおけるものであってもよい。好ましくは、これらは第2及び(存在する場合)第3の抗原結合ドメイン/Fab分子のCH1ドメイン及びCLドメインにおけるものである。本発明の概念によると、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、このようなアミノ酸置換は、第1の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われない。逆に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第1の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、このようなアミノ酸置換は、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われない。アミノ酸置換は、好ましくは、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインVLとVH1が互いによって置き換えらえているFab分子を含む(多重特異性)抗体において行われる。
本発明による(多重特異性)抗体の好ましい態様において、特に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、第2(及び存在する場合に第3)のFab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。本発明による(多重特異性)抗体の他の態様において、特に、本明細書に記載されるアミノ酸置換が、第1の抗原結合ドメイン/Fab分子において行われる場合、第1の抗原結合ドメイン/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。一部の態様において、第2(及び存在する場合に第3)の抗原結合ドメイン/Fab分子の定常ドメインCL、並びに第1の抗原結合ドメイン/Fab分子の定常ドメインCLは、カッパアイソタイプのものである。
一態様では、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインはFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHは互いに置換され、且つ、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2、及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子である第2の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと
を含み、
b)の第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
(i)a)の下の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、b)の下の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合され、且つ、b)の下の第2の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端でc)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合されるか、又は
(ii)b)の下の第2の抗原結合ドメインは、a)の下の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のFab重鎖のN末端にFab重鎖のC末端で融合され、且つ、a)の下の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、c)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合される。
好ましい態様では、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインはFab分子であり、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHは互いに置換され、且つ、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2、及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2及び第3の抗原結合ドメインであって、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ(従来の)Fab分子である、第2及び第3の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと
を含み、
b)の第2の抗原結合ドメイン及びb)の第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2の抗原結合ドメイン及びb)の第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
(i)a)の下の第1の抗原結合ドメインは、Fab重鎖のC末端で、b)の下の第2の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合され、且つ、b)の下の第2の抗原結合ドメイン及びb)の下の第3の抗原結合ドメインは、それぞれ、Fab重鎖のC末端でc)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合されるか、又は
(ii)b)の下の第2の抗原結合ドメインは、a)の下の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のFab重鎖のN末端にFab重鎖のC末端で融合され、且つ、a)の下の第1の抗原結合ドメイン及びb)の下の第3の抗原結合ドメインは、c)の下のFcドメインのサブユニットの1つのN末端にFab重鎖のC末端でそれぞれ融合される。
別の態様では、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2の抗原結合ドメインであって、(従来の)Fab分子である第2の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと
を含み、
b)の第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸が、リジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
a)の第1の抗原結合ドメイン及びb)の第2の抗原結合ドメインが、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している、(多重特異性)抗体を提供する。
上記の態様のいずれかによれば、(多重特異性)抗体の構成要素(例えば、Fab分子、Fcドメイン)は、直接的に又は様々なリンカーを介して、特に本明細書に記載される又は当技術分野において知られている、1個又は複数個のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合されていてもよい。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)n又はG4(SG4)nペプチドリンカーが含まれ、「n」は通常1~10、典型的には2~4の整数である。
好ましい態様では、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2及び第3の抗原結合ドメインであって、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ(従来の)Fab分子であり、配列番号15の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号16のHCDR2及び配列番号17のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号19の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号20のLCDR2及び配列番号21のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第2及び第3の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと、を含む二重特異性抗体を提供し、
b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
及びさらに、
b)の第2の抗原結合ドメインが、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合ドメイン及びb)の第3の抗原結合ドメインが、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している、(多重特異性)抗体を提供する。
さらに好ましい態様において、本発明は、
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2及び第3の抗原結合ドメインであって、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ(従来の)Fab分子であり、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号22のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、第2及び第3の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと、を含む二重特異性抗体を提供し、
b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
そしてさらに、
b)の第2の抗原結合ドメインが、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合ドメイン及びb)の第3の抗原結合ドメインが、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している、(多重特異性)抗体を提供する。
さらに好ましい態様において、本発明は、
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号2の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号3のHCDR2及び配列番号5のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号8の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号9のLCDR2及び配列番号10のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2及び第3の抗原結合ドメインであって、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ(従来の)Fab分子であり、配列番号28の重鎖相補性決定領域(HCDR)1、配列番号29のHCDR2及び配列番号30のHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)、並びに配列番号32の軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、配列番号33のLCDR2及び配列番号34のLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、第2及び第3の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと、を含む二重特異性抗体を提供し、
b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
そしてさらに、
b)の第2の抗原結合ドメインが、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合ドメイン及びb)の第3の抗原結合ドメインが、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している、(多重特異性)抗体を提供する。
さらに好ましい態様において、本発明は、以下を含む(多重特異性)抗体を提供する。
a)CD3に結合する第1の抗原結合ドメインであって、第1の抗原結合ドメインは、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換わっているFab分子であり、配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、第1の抗原結合ドメインと、
b)CD19に結合する第2及び第3の抗原結合ドメインであって、第2及び第3の抗原結合ドメインはそれぞれ(従来の)Fab分子であり、配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号35のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、第2及び第3の抗原結合ドメインと、
c)第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインと、を含む二重特異性抗体を提供し、
b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)によって置換されており(Kabatによる番号付け)、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって(最も好ましくはアルギニン(R)によって)置換されており(Kabatによる番号付け)、b)の第2及び第3の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)によって置換されており(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
そしてさらに、
b)の第2の抗原結合ドメインが、Fab重鎖のC末端でa)の第1の抗原結合ドメインのFab重鎖のN末端に融合し、a)の第1の抗原結合ドメイン及びb)の第3の抗原結合ドメインが、それぞれFab重鎖のC末端でc)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している、(多重特異性)抗体を提供する。
本発明のこれらの態様による一態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のトレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられており(Y407V)、任意選択的に366位のトレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこれらの態様によるさらなる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられている(S354C)か又は356のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられており(E356C)(特に、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、349位のチロシン残基がシステイン残基と置により置き換えられて(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこれらの態様によるさらなる態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの各々において、234位のロイシン残基がアラニン残基(L234A)と置き換わっており、235位のロイシン残基がアラニン残基と置き換わっており(L235A)、329位のプロリン残基がグリシン残基により置き換えられている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本発明のこれらの態様によるさらなる態様では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。
好ましい具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、配列番号23又は配列番号39(特に配列番号39)の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号24の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号25の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。さらに好ましい具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、配列番号23又は配列番号39(特に配列番号39)のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号24のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
一態様において、本発明は、配列番号23又は配列番号39(特に配列番号39)の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号24の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号25の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、CD3及びCD19に結合する(多重特異性)抗体を提供する。一態様において、本発明は、配列番号23又は配列番号39(特に配列番号39)のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号24のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号25のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、CD3及びCD19に結合する(多重特異性)抗体を提供する。
好ましい具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、配列番号36又は配列番号40(特に配列番号36)の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号37の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号38の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。さらに好ましい具体的な態様において、(多重特異性)抗体は、配列番号36又は配列番号40(特に配列番号36)のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号37のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号38のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
一態様において、本発明は、配列番号36又は配列番号40(特に配列番号36)の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号37の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号38の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、CD3及びCD19に結合する(多重特異性)抗体を提供する。一態様において、本発明は配列番号36又は配列番号40(特に配列番号36)のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号37のアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号38のアミノ酸配列を含むポリペプチド(特に2つのポリペプチド)、及び配列番号27のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、CD3及びCD19に結合する(多重特異性)抗体を提供する。
8. Fcドメインバリアント
好ましい態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、第1及び第2のサブユニットから構成されるFcドメインを含む。
(多重特異性)抗体のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、ダイマーであり、それぞれのサブユニットは、CH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定な会合が可能である。一態様において、本発明の(多重特異性)抗体は1つを超えるFcドメインを含まない。
一態様において、(多重特異性)抗体のFcドメインは、IgG Fcドメインである。好ましい態様において、FcドメインはIgG1 Fcドメインである。別の態様において、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な態様において、Fcドメインは、S228位にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである(Kabat EUインデックス番号付け)。このアミノ酸置換は、in vivoでのIgG4抗体のFabアーム交換を低減する(Stubenrauch et al., Drug Metabolism and Disposition 38,84-91(2010)を参照されたい)。さらなる好ましい態様において、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。より好ましい態様において、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。ヒトIgG1 Fc領域の例示的配列は、配列番号47に示されている。
a) ヘテロ二量体化を促進するFcドメイン修飾
本発明による(多重特異性)抗体は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合し得る異なる抗原結合ドメインを含み、したがってFcドメインの2つのサブユニットは、典型的には2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組換え同時発現及びその後の二量化によって、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせが生じる。組み換え産生における(多重特異性)抗体の収率及び純度を改善するため、(多重特異性)抗体のFcドメインに、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することが有利である。
したがって、好ましい態様において、本発明による(多重特異性)抗体のFcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も長いタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一態様では、前記修飾は、FcドメインのCH3ドメインにおけるものである。
ヘテロ二量体化を強化するために、FcドメインのCH3ドメイン中の修飾にいくつかの手法が存在し、例えば、WO96/27011、WO98/050431、EP1870459、WO2007/110205、WO2007/147901、WO2009/089004、WO2010/129304、WO2011/90754、WO2011/143545、WO2012058768、WO2013157954、WO2013096291に十分に記載されている。典型的には、すべてのそのような手法において、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインとFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインは、各CH3ドメイン(又はそれを構成する重鎖)が、それ自体でホモ二量体化できなくなるが、相補的に操作された他のCH3ドメインと強制的にヘテロ二量体化されるように(第1及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量体化し、2つの第1又は2つの第2のCH3ドメイン間にホモ二量体が形成されないように)、両方とも相補的に設計される。改善された重鎖ヘテロ二量体化のためのこれらの異なる手法は、重鎖/軽鎖の誤対合及びベンス・ジョーンズ型副生成物を低減する、(多重特異性)抗体における重鎖-軽鎖修飾との組み合わせでの異なる代替例として考慮される(例えば、1つの結合アームにおけるVH及びVLの交換/置き換え、並びにCH1/CL界面における反対の電荷を有する荷電アミノ酸の置換の導入)。
具体的な態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、いわゆる「ノブ・イントゥ・ホール(knob-into-hole)」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ(knob)」修飾及びFcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール(hole)」修飾を含む。
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある突起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、突起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同じ又は同様のサイズの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。
したがって、好ましい態様では、(多重特異性)抗体のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第1のサブユニットのCH3ドメイン内に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に位置することが可能な突起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基は、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置き換えられ、それによって、第2のサブユニットのCH3ドメイン内に空洞を生成し、その中に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の突起が位置することが可能である。
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する当該アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)からなる群から選択される。
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する当該アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択される。
隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的突然変異誘発により、又はペプチド合成により変化させることによって作り出し得る。
具体的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)(のCH3ドメイン)において、366位のトレオニン残基がトリプトファン残基で置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(「ホール」サブユニット)(のCH3ドメイン)において、407位のチロシン残基がバリン残基で置き換えられている(Y407V)。一態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、366位のトレオニン残基がセリン残基で置き換えられており(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置き換えられている(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており(S354C)又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置き換えられており(E356C)(特に、354位のセリン残基がシステイン残基で置き換えられており)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に349位のチロシン残基がシステイン残基で置き換えられている(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fcドメインの2つのサブユニットの間にジスルフィド架橋の形成を生じ、二量体を更に安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。
好ましい態様において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
好ましい態様では、CD3に結合する抗原結合ドメインは、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」修飾を含む)に(任意に、CD19に結合する第2の抗原結合ドメイン及び/又はペプチドリンカーを介して)融合される。)。理論に束縛されるものではないが、CD3に結合する抗原結合ドメインの、Fcドメインのノブ含有サブユニットへの融合は、CD3に結合する2つの抗原結合ドメインを含む抗体の生成(2つのノブ含有ポリペプチドの立体的衝突(steric clash))を(さらに)最小化する。
ヘテロ二量体化を強化するCH3修飾についての他の技術が本発明の代替例として考慮され、例えば、WO96/27011、WO98/050431、EP1870459、WO2007/110205、WO2007/147901、WO2009/089004、WO2010/129304、WO2011/90754、WO2011/143545号、WO2012/058768、WO2013/157954、WO2013/096291に記載されている。
一態様では、EP1870459に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。この手法は、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置への反対の電荷を有する荷電アミノ酸の導入に基づく。本発明の(多重特異性)抗体の特定の態様は、(Fcドメインの)2つのCH3ドメインの一方におけるアミノ酸変異R409D、K370E及びFcドメインのCH3ドメインの他方におけるアミノ酸変異D399K、E357Kである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の形態では、本発明の多重特異性抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異T366S、L368A、Y407Vを含み、追加的に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異R409D、K370E及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異D399K、E357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
別の態様において、本発明の(多重特異性)抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異S354C、T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含むか、又は前記(多重特異性)抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異Y349C、T366W及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異S354C、T366S、L368A、Y407Vを含み、追加的に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異R409D、K370E及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメイン内のアミノ酸変異D399K、E357Kを含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、WO2013/157953に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、さらなるアミノ酸変異L351Kを含む。さらなる態様において、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368Eから選択されるアミノ酸変異(特に、L368E)をさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、WO2012/058768に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる態様において、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390又はK392に、例えば、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、c)S400E、S400D、S400R又はS400K、d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、e)N390R、N390K又はN390D、f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392Eから選択されるさらなるアミノ酸変異を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366V、K409Fを含む。さらなる態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。さらなる態様において、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異K392E、T411E、D399R及びS400Rをさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、WO2011/143545に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用され、例えば、368及び409からなる群から選択される位置にアミノ酸修飾を有する(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様では、上記に記載されたノブ・イントゥ・ホール技術も使用する、国際公開第2011/090762号に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含む。一態様において、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Tを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一態様において、(多重特異性)抗体又はそのFcドメインは、IgG2サブクラスのものであり、WO2010/129304に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。
代替的な態様では、Fcドメインの第1のサブユニット及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えば、PCT公報WO2009/089004に記載されるように、静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般的に、この方法は、2つのFcドメインサブユニットの接触面に、ホモ二量体生成が静電的に望ましくないが、ヘテロ二量化が静電的に望ましいように、荷電アミノ酸残基による1つ又は複数のアミノ酸残基の置き換えを含む。1つのこのような態様において、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸によるK392又はN392のアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)による、特にK392D又はN392D)を含み、第2のCH3ドメインは、正に帯電したアミノ酸によるD399、E356、D356又はE357のアミノ酸置換(例えば、リジン(K)又はアルギニン(R)による、特にD399K、E356K、D356K又はE357K、より詳細にはD399K及びE356K)を含む。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸によるK409又はR409のアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)による、特にK409D又はR409D)をさらに含む。さらなる態様において、第1のCH3ドメインは、負に帯電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))によるK439及び/又はK370のアミノ酸置換を追加的に又は代替的に含む(すべてKabat EUインデックスによる番号付け)。
さらなる態様では、WO2007/147901に記載されているヘテロ二量体化手法が代替的に使用される。一態様において、第1のCH3ドメインは、アミノ酸変異K253E、D282K及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異D239K、E240K及びK292Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
また別の態様では、WO2007/110205号に記載されているヘテロ二量体化手法を代替的に使用することができる。
一態様において、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
b) Fc受容体結合及び/又はエフェクタ機能を低下させるFcドメイン修飾
Fcドメインは、(多重特異性)抗体に、標的組織における良好な蓄積に寄与する長い血清半減期を含む好ましい薬物動態特性及び好ましい組織血液分布比を付与する。しかしながら、それは同時に、好ましい抗原担持細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞への(多重特異性)抗体の望ましくない標的化をもたらすことがある。さらに、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化はサイトカイン放出をもたらすことがあり、これはT細胞活性化特性及び(多重特異性)抗体の長い半減期と組み合わさって、全身投与するとサイトカイン受容体の過剰な活性化及び重篤な副作用を生じる。T細胞以外の(Fc受容体担持)免疫細胞の活性化は、例えば、NK細胞によるT細胞の破壊の可能性によって、(多重特異性)抗体の有効性さえも低減し得る。
したがって、好ましい態様において、本発明による(多重特異性)抗体のFcドメインは、ネイティブIgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及び/又はエフェクタ機能の低減を呈する。1つのこのような態様において、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)は、ネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)と比較して、50%未満、特に20%未満、さらに詳細には10%未満、最も詳細には5%未満の結合親和性をFc受容体に対して呈する、及び/又はネイティブIgG1 Fcドメインドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)と比較して、50%未満、特に20%未満、さらに詳細には10%未満、最も詳細には5%未満のエフェクタ機能を呈する。一態様において、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)は、Fc受容体に実質的に結合しない及び/又はエフェクタ機能を誘導しない。好ましい態様において、Fc受容体はFcγ受容体である。一態様では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的には、ヒトFcγRIIIaである。一態様において、エフェクタ機能は、CDC、ADCC、ADCP及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ又は複数である。好ましい態様において、エフェクタ機能はADCCである。一態様では、Fcドメインドメインは、ネイティブIgG1 Fcドメインドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に対して実質的に同様の結合親和性を示す。FcRnへの実質的に同様の結合は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)が、ネイティブIgG1 Fcドメイン(又はネイティブIgG1 Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)の約70%超、特に約80%超、さらに詳細には約90%超の結合親和性をFcRnに対して呈するとき、達成される。
一部の態様において、Fcドメインは、非操作Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性が低減される及び/又はエフェクタ機能が低減されるように操作される。好ましい態様において、(多重特異性)抗体のFcドメインは、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクタ機能を低減する1つ又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットそれぞれに、同じ1つ以上のアミノ酸変異が存在する。一態様では、アミノ酸変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を下げる。一態様において、アミノ酸変異は、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1又は少なくとも10分の1に低減する。Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を低減する1つを超えるアミノ酸変異が存在する態様において、これらのアミノ酸変異の組み合わせは、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を少なくとも10分の1、少なくとも20分の1又はさらには少なくとも50分の1にまで低減し得る。一態様において、操作Fcドメインを含む(多重特異性)抗体は、非操作Fcドメインを含む(多重特異性)抗体と比較して、20%未満、特に10%未満、さらに詳細には5%未満の結合親和性をFc受容体に対して呈する。好ましい態様において、Fc受容体はFcγ受容体である。一部の態様において、Fc受容体はヒトFc受容体である。いくつかの態様では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な態様では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的には、ヒトFcγRIIIa、FcγRI又はFcγRIIaであり、最も具体的には、ヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体のそれぞれへの結合が低減される。いくつかの態様では、補体成分に対する結合親和性(具体的には、C1qに対する結合親和性)も低下する。一態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は、低下しない。FcRnへの実質的に同様の結合、即ち、前記受容体へのFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む(多重特異性)抗体)が、Fcドメインの非操作形態(又は前記Fcドメインの非操作形態を含む(多重特異性)抗体)の結合親和性の約70%超をFcRn対して呈するとき、達成される。Fcドメイン又は前記Fcドメインを含む本発明の(多重特異性)抗体は、そのような親和性の約80%超、さらには約90%超を呈しうる。一部の態様において、(多重特異性)抗体のFcドメインは、非操作Fcドメインと比較して、エフェクタ機能が低減されるように操作される。エフェクタ機能の低減には、補体依存性細胞傷害(CDC)の低減、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低減、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の低減、サイトカイン分泌の低減、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低減、NK細胞への結合の低減、マクロファージへの結合の低減、単球への結合の低減、多形核細胞への結合の低減、直接的なシグナル伝達誘導性アポトーシスの低減、標的結合抗体との架橋の低減、樹状細胞成熟の低減、又はT細胞プライミングの低減の1つ又は複数が挙げられ得るが、これらに限定されない。一態様において、エフェクタ機能の低減は、CDCの低減、ADCCの低減、ADCPの低減及びサイトカイン分泌の低減の群から選択される1つ又は複数である。好ましい態様において、減少したエフェクタ機能は減少したADCCである。一態様では、減少したADCCは、操作されていないFcドメイン(又は操作されていないFcドメインを含む(多重特異性)抗体)によって誘導されるADCCの20%未満である。一態様において、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性及び/又はエフェクタ機能を低減するアミノ酸変異は、アミノ酸置換である。一態様において、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な態様において、Fcドメインは、L234、L235及びP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一部の態様において、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235Aを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。1つのこのような態様において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一態様では、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含む。より具体的な態様において、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一態様において、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含み、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な態様において、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。好ましい態様において、Fcドメインは、位置P329、L234及びL235にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より好ましい態様において、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」、「PGLALA」又は「LALAPG」)を含む。具体的には、好ましい態様において、Fcドメインのそれぞれのサブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329Gを含み(Kabat EUインデックス番号付け)、すなわち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットのそれぞれにおいて、234位のロイシン残基はアラニン残基と置き換わっており(L234A)、235位のロイシン残基はアラニン残基と置き換わっており(L235A)、329位のプロリン残基はグリシン残基と置き換わっている(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
1つのこのような態様において、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組合せは、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公報WO2012/130831に記載されているように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体(同様に、補体)結合をほとんど完全に消滅させる。WO2012/130831は、そのような突然変異Fcドメインの調製方法及びその特性、例えばFc受容体結合又はエフェクタ機能の決定方法も記載する。
IgG4抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及びエフェクタ機能の低減を示す。したがって、いくつかの態様において、本発明の(多重特異性)抗体のFcドメインは、IgG4 Fcドメイン、特にヒトIgG4 Fcドメインである。一態様において、IgG4 Fcドメインは、S228位にアミノ酸置換を含み、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。Fc受容体への結合親和性及び/又はエフェクタ機能をさらに低減させるため、一態様において、IgG4 Fcドメインは、L235位におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の態様において、IgG4 Fcドメインは、P329位におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。好ましい態様において、IgG4 Fcドメインは、位置S228、L235及びP329におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。そのようなIgG4 Fcドメイン突然変異体及びこれらのFcγ受容体結合特性は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるPCT公報WO2012/130831に記載されている。
好ましい態様において、ネイティブIgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体への結合親和性の低減及び/又はエフェクタ機能の低減を呈するFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG1 Fcドメイン、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG4 Fcドメインである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
一部の態様では、FcドメインのN-グリコシル化が排除された。1つのこのような態様において、Fcドメインは、N297位におけるアミノ酸変異、特にアスパラギンをアラニンにより置き換えるアミノ酸置換(N297A)又はアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換(N297D)を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
本明細書の上記及びPCT公報WO2012/130831に記載されているFcドメインに加え、Fc受容体結合及び/又はエフェクタ機能が低減されたFcドメインには、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有するものも挙げられる(米国特許第6,737,056号)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなFc突然変異体としては、アミノ酸位置265、269、270、297及び327のうち2つ以上での置換を有するFc突然変異体が挙げられ、残基265及び297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
変異体Fcドメインは、当技術分野で周知の遺伝的方法又は化学的方法を用いて、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は修飾によって調製し得る。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等を含んでいてもよい。正しいヌクレオチド変化は、例えば、シーケンシングによって確認し得る。
Fc受容体に対する結合は、例えば、ELISAによって、又はBIAcore装置(GE Healthcare)等の標準的な装置を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)によって、及び組換え発現によって得られ得るFc受容体などを容易に決定し得る。あるいはまた、Fc受容体に関するFcドメイン又はFcドメインを含む(多重特異性)抗体の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えば、FcγIIIa受容体を発現するヒトNK細胞を使用して評価してもよい。
Fcドメイン又はFcドメインを含む(多重特異性)抗体のエフェクタ機能は、当技術分野に既知の方法によって測定することができる。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの例は、米国特許第5,500,362号、Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA83, 7059-7063(1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82,1499-1502(1985)、米国特許第5,821,337号、Bruggemann et al., J Exp Med 166,1351-1361(1987)に記載されている。あるいはまた、非放射性アッセイを用いてもよい(例えば、ACTI(商標)フローサイトメトリ用非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA)及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクタ細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的又は追加的に、目的の分子のADCC活性は、例えば動物モデル、例えば、Clynes et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95,652-656(1998)に開示されているものにおいてin vivoで評価されてもよい。
いくつかの態様では、Fcドメインの補体成分、特にC1qへの結合が減少する。したがって、Fcドメインが低減されたエフェクタ機能を有するように操作されるいくつかの形態では、前記低減されたエフェクタ機能は、低減されたCDCを含む。C1q結合アッセイは、Fcドメイン又はFcドメインを含む(多重特異性)抗体がC1qに結合できるかどうか、したがってCDC活性を有するかどうかを決定するために行うことができる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J Immunol Methods 202、163(1996);Cragg et al., Blood 101、1045-1052(2003);及びCragg and Glennie, Blood 103,2738-2743(2004)を参照されたい)。
FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野に既知の方法を使用して実施することもできる(例えば、Petkova,S.B.et al., Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);WO2013/120929を参照されたい)。
B. ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の抗体をコードする単離ポリヌクレオチドをさらに提供する。前記単離ポリヌクレオチドは、単一のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチドであってよい。
本発明の(多重特異性)抗体をコードするポリヌクレオチドは、完全な抗体をコードする単一のポリヌクレオチドとして発現されてもよく、又は共発現される複数の(例えば、2つ以上の)ポリヌクレオチドとして発現されてもよい。共発現されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合又は他の手段を介して会合し、機能的な抗体を形成し得る。例えば、抗体の軽鎖部分は、抗体の重鎖を含む抗体の一部分に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。共発現すると、重鎖ポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと会合し、抗体を形成する。別の例では、2つのFcドメインサブユニットのうち一方と、任意選択的に1つ又は複数のFab分子(の一部)とを含む抗体の一部分は、2つのFcドメインサブユニットの他方と、任意選択的にFab分子(の一部)とを含む抗体の一部分に由来する別個のポリヌクレオチドによってコードされてもよい。共発現する場合、Fcドメインサブユニットが会合し、Fcドメインを形成する。
いくつかの態様では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように本発明による抗体分子全体をコードする。他の態様では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるように本発明による抗体に含まれるポリペプチドをコードする。
特定の態様では、ポリヌクレオチド又は核酸は、DNAである。他の態様では、本発明のポリヌクレオチドは、RNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。本発明のRNAは、一本鎖又は二本鎖であってよい。
C. 組換え方法
本発明の抗体は、例えば、固体状態ペプチド合成(例えば、メリフィールド固相合成)又は組み換え産生によって得られてもよい。組換え産生のために、例えば上記のような、抗体をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドが単離され、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/又は発現のために1つ又は複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、従来の手順を用い、容易に単離され、配列決定されてもよい。一態様では、本発明のポリヌクレオチド(とりわけ単一のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチド)を含むベクター、特に発現ベクターが提供される。当業者に周知の方法を使用し、適切な転写/翻訳制御シグナルと共に、抗体のコード配列を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、in vitro組換えDNA技術、合成技術及びin vivo組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(1989);及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y(1989)に記載される技術を参照されたい。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部であってもよく、又は核酸断片であってもよい。発現ベクターは、抗体をコードするポリヌクレオチド(即ちコード領域)が、プロモータ及び/又は他の転写又は翻訳制御要素と共に操作可能に会合してクローン化される発現カセットを含む。本明細書で使用する場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部である。「終止コドン」(TAG、TGA又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、存在する場合にはコード領域の一部と考えられるが、しかし、例えばプロモータ、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’及び3’非翻訳領域等の任意の隣接配列はコード領域の一部ではない。2つ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチドコンストラクト中に、例えば、単一のベクター上に、存在していてもよく、又は別個のポリヌクレオチドコンストラクト中に、例えば別個の(異なる)ベクター上に、存在していてもよい。さらに、任意のベクターは、単一のコード領域を含んでいてもよく、又は2つ以上のコード領域を含んでいてもよく、例えば本発明のベクターは、1つ以上のポリペプチドをコードしてもよく、翻訳後又は翻訳と同時に、タンパク質分解による開裂によって、最終的なタンパク質へと分離される。さらに、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド、又はそのバリアント若しくは誘導体に融合するか、又は融合しない、異種コード領域をコードし得る。異種コード領域としては、限定されないが、特殊な要素又はモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチド又は異種機能性ドメインが含まれる。操作可能な会合は、ある遺伝子産物(例えばポリペプチド)のコード領域が、制御配列(複数可)の影響下又は制御下で、遺伝子産物の発現を行うような様式で、1つ又は複数の制御配列と会合する。2つのDNA断片(ポリペプチドコード領域とそれに結合するプロモータなど)は、プロモータ機能の誘導が、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、及び2つのDNA断片間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を指示する発現制御配列の能力を妨げないか又は転写されるDNAテンプレートの能力を妨げない場合、「操作可能に結合している」。したがって、プロモータ領域は、プロモータが核酸の転写を行うことが可能な場合、ポリペプチドをコードする核酸と操作可能に会合し得る。プロモータは、所定の細胞内でのDNAの実質的な転写のみに指向する細胞特異的なプロモータであってもよい。プロモータ以外の他の転写制御要素、例えば、エンハンサー、オペレータ、リプレッサ、及び転写停止シグナルは、細胞特異的な転写に指向するために、ポリヌクレオチドに操作可能に会合し得る。適切なプロモータ及び他の転写制御領域は、本明細書に開示される。種々の転写制御領域が当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、脊椎動物細胞内で機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス由来のプロモータ及びエンハンサーセグメント(例えば前初期プロモータ、イントロン-Aと組み合わせる)、シミアンウイルス40(例えば初期プロモータ)及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)が含まれる。他の転写制御領域としては、脊椎動物遺伝子から誘導されるもの、例えば、アクチン、ヒートショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビン、及び真核細胞において遺伝子発現を制御することが可能な他の配列が含まれる。さらなる適切な転写制御領域としては、組織特異的なプロモータ及びエンハンサー、並びに誘導性プロモータ(例えばテトラサイクリン誘導性プロモータ)が挙げられる。同様に、種々の翻訳制御要素は、当業者に知られている。これらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び停止コドン、ウイルス系から誘導される要素(特に、内部リボソーム侵入部位、即ちIRES、CITE配列とも呼ばれる)が含まれる。発現カセットは、例えば、複製の起源及び/又は染色体組み込み要素、例えば、レトロウイルスの長い末端反復(LTR)、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)等の他の特徴も含んでいてもよい。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌又はシグナルペプチドをコードする追加のコード領域と会合してもよく、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を指向する。例えば、抗体の分泌が望ましい場合、シグナル配列をコードするDNAは、本発明の抗体又はその断片をコードする核酸の上流に置かれていてもよい。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質はシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有し、粗い小胞体を横切る成長中のタンパク質鎖の輸送が開始されると、成熟タンパク質から切断される。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドが一般に、ポリペプチドのN末端に融合したシグナルペプチドを有し、それが翻訳されたポリペプチドから切断されて分泌又は「成熟」型のポリペプチドを産生することを知っている。特定の態様では、ネイティブシグナルペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖又は軽鎖シグナルペプチドが使用されるか、又は操作可能に会合するポリペプチドの分泌を指示する能力を保持する配列の機能性誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド、又はその機能性誘導体を使用してもよい。例えば、野生型リーダー配列は、ヒト組織プラスミノーゲンアクティベーター(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列で置換されてもよい。
後の精製(例えば、ヒスチジンタグ)を容易にするため又は抗体を標識するのに役立てるために使用可能な短いタンパク質配列をコードするDNAが、ポリヌクレオチドをコードする抗体(断片)の中に、又はその末端に含まれていてもよい。
さらなる態様では、本発明のポリヌクレオチド(即ち単一のポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチド)を含む宿主細胞が提供される。特定の態様において本発明のベクターを含む宿主細胞が提供される。ポリヌクレオチド及びベクターは、それぞれポリヌクレオチド及びベクターに関連して本明細書に記載する特徴のいずれかを単独で、又は組み合わせて組み込んでもよい。そのような一態様では、宿主細胞は、本発明の抗体(の一部)をコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む1つ又は複数のベクターを含む(例えば、それらで形質転換又はトランスフェクトされている)。本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本発明の抗体又はその断片を生成するように操作することが可能な任意の種類の細胞系を指す。抗体の複製及び発現補助に適した宿主細胞は、当技術分野で周知である。そのような細胞は、適切な場合、特定の発現ベクターを用いてトランスフェクト又は形質導入することができ、大規模発酵機に接種するために大量のベクターを含む細胞を成長させ、臨床用途に十分な量の抗体を得ることができる。適切な宿主細胞としては、大腸菌などの原核微生物、又は種々の真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞等が含まれる。例えば、ポリペプチドは、特にグリコシル化が必要とされない場合には、細菌内で産生され得る。発現後、ポリペプチドは、適切なフラクション中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、更に精製されて得る。原核生物に加え、真核生物の微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドをコードするベクターに適切なクローニング又は発現の宿主であり、グリコシル化経路が「ヒト化」された真菌株及び酵母株を含み、部分的又は完全にヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドを産生する。Gerngross, Nat Biotech 22, 1409-1414(2004)及びLi et al., Nat Biotech 24,210-215(2006)を参照されたい。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞も、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が含まれる。多数のバキュロウイルス株が同定されており、昆虫細胞と併せて使用することができ、特にスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用することができる。植物細胞インキュベート物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物で抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。脊椎動物細胞も、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚腎臓株(例えばGraham et al., J Gen Virol 36, 59(1977)に、記載されるような293細胞又は293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えばMather,Biol Reprod 23、243-251(1980)に、記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト頸部がん腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えばMather et al., Annals N. Y. Acad Sci 383, 44-68(1982)に、記載されるもの)、MRC 5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株としては、dhfr-CHO細胞を含む、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al., Proc Natl Acad Sci USA 77,4216(1980))、骨髄腫細胞株、例えば、YO、NS0、P3X63及びSp2/0が含まれる。タンパク質産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説としては、例えば、Yazaki and Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248(B.K.C.Lo, ed., Humana Press, Totowa,NJ),pp. 255-268(2003)を参照されたい。宿主細胞としては、インキュベート細胞、例えば、ほんの数例を挙げると、哺乳動物インキュベート細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞及び植物細胞が挙げられるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物又はインキュベート植物又は動物組織に含まれる細胞も含まれる。一態様では、宿主細胞は、真核細胞、特にチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚腎臓(HEK)細胞又はリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)といった哺乳動物細胞である。一態様では、宿主細胞は、ヒト身体中の細胞ではない。
これらの系において外来遺伝子を発現させる標準的な技術は、当技術分野で既知である。抗体等の抗原結合ドメインの重鎖又は軽鎖を含むポリペプチドを発現する細胞を操作して他方の抗体鎖も発現させ、発現した産生物が、重鎖及び軽鎖の両方を有する抗体となるようにすることができる。
一態様では、本発明による抗体を生成する方法が提供され、この方法は、抗体の発現に適した条件下で、本明細書に提供される抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞をインキュベートすること、及び任意選択的に、宿主細胞(又は宿主細胞培地)から抗体を回収することを含む。
本発明の(多重特異性)抗体の成分は、互いに遺伝的に融合され得る。(多重特異性)抗体は、その構成要素が、互いに直接的に又はリンカー配列を通して間接的に融合されるように設計することができる。リンカーの組成及び長さは、当技術分野で周知の方法に従って決定し得、有効性について試験し得る。(多重特異性)抗体の異なる構成要素の間のリンカー配列の例が、本明細書で提供される。必要に応じて、融合の個々の構成要素を分離するための切断部位を組み込むために、追加の配列、例えばエンドペプチダーゼ認識配列を含めることもできる。
本明細書で記載するように調製される抗体は、例えば、高速液体クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、アフィニティクロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィなどの当技術分野で既知の技術によって精製することができる。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の条件は、一部には正味荷電、疎水性、親水性などの因子に依存し、当業者に明らかであろう。アフィニティクロマトグラフィ精製のために、抗体が結合する抗体、リガンド、受容体又は抗原を使用することができる。例えば、本発明の抗体のアフィニティクロマトグラフィ精製のために、プロテインA又はプロテインGを含むマトリックスを使用することができる。連続プロテインA又はGのアフィニティクロマトグラフィ及びサイズ排除クロマトグラフィを使用して、実施例に本質的に記載されるように抗体を単離することができる。抗体の純度は、ゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィを含む種々の周知の分析方法のいずれかによって決定することができる。
D. アッセイ
本明細書に提供される抗体は、それらの物理的/化学的特性及び/又は生物活性について、当技術分野で既知の様々なアッセイによって、同定、スクリーニング、又は特徴付けされ得る。
1. 結合アッセイ
Fc受容体又は標的抗原に対する抗体の結合(親和性)は例えば、BIAcore機器(GE Healthcare)などの標準的な計装、及び、例えば組み換え発現により入手可能である、受容体又は標的タンパク質を使用する表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定することができる。あるいはまた、異なる受容体又は標的抗原に対する抗体の結合が、特定の受容体又は標的抗原を発現する細胞株を使用して、例えばフローサイトメトリー(FACS)により、評価することができる。CD3に対する結合活性を測定するための特定の説明的且つ例示的な態様が、以下に記載される。
一態様では、CD3に対する結合活性は、以下のようにSPRによって決定される。
SPRは、Biacore T200機器(GE Healthcare)で行われる。抗Fab捕捉抗体(GE Healthcare,#28958325)は、標準的なアミンカップリング化学を用いて、4000~6000共鳴単位(RU)の表面密度でSeries S Sensor Chip CM5(GE Healthcare)に固定化される。実行バッファ及び希釈バッファとして、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4,0.05%界面活性剤P20)を使用するd。2μg/mlの濃度(20mM His、140mM NaCl中、pH6.0)のCD3抗体を、5μl/分の流量で約60秒間注入する。使用されるCD3抗原は、ノブ・イントゥ・ホール修飾及びC末端Avi-tagを伴うヒトFcドメインに融合された、CD3デルタ及びCD3イプシロン外部ドメインのヘテロ二量体である(配列番号41及び42を参照されたい)。CD3抗原は、10μg/mlの濃度で120秒間注入され、解離は、5μl/分の流量で約120秒間監視される。チップ表面は、10mMグリシンpH2.1のそれぞれ約60秒間の2つの連続した注入によって再生される。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、及びブランク制御フローセルから得られる応答を差し引くことによって訂正される。結合シグナルを正規化するために、CD3結合を、抗Fab応答(固定化された抗Fab抗体上でのCD3抗体の捕捉の際に得られるシグナル(RU))によって分割する。特定の処置の後の抗体のCD3に対する結合活性であって、異なる処置の後の抗体のCD3に対する結合活性に対して相対的なもの(相対活性濃度(RAC)とも呼ばれる)は、異なる処置の後の対応する抗体の試料の結合活性に対して、特定の処置の後の抗体のサンプルの結合活性を基準とすることにより計算される。
2. 活性アッセイ
本発明の(多重特異性)抗体の生物活性は、実施例に記載されるように、様々なアッセイによって測定することができる。生物活性には、例えば、T細胞の増殖の誘導、T細胞におけるシグナル伝達の誘導、T細胞における活性化マーカーの発現の誘導、T細胞によるサイトカイン分泌の誘導、B細胞などの標的細胞の溶解の誘導、及び腫瘍退縮の誘導及び/又は生存率の改善が含まれ得る。
E. 組成、調合及び投与経路
さらなる態様において、本発明は、例えば以下の治療方法のいずれかにおいて使用するための、本明細書に提供される抗体のうちのいずれかを含む薬学的組成物を提供する。さらには、in vivoでの投与に適した形態で本発明の抗体を生成する方法が提供され、この方法は、(a)本発明による抗体を得ること、及び(b)抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを調合し、それによって、抗体の調剤を、in vivoでの投与のために調合することとを含む。別の態様では、薬学的組成物は、本発明による抗体と、少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、以下に記載するものとを含む。
さらには、in vivoでの与に適した形態で本発明の抗体を生成する方法が提供され、この方法は、(a)本発明による抗体を得ること、及び(b)抗体と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを配合し、それによって、抗体の製剤を、in vivoでの投与のために配合することとを含む。
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に溶解又は分散された有効量の抗体を含む。「薬学的に許容される」という語句は、使用される投与量及び濃度で受容者に対して一般に非毒性である、すなわち、適当な場合、例えばヒトなどの動物に投与した場合、有害反応、アレルギー反応、又はその他の有害な反応を引き起こさない分子実体及び組成物を指す。抗体と、任意選択的にさらなる有効成分とを含む薬学的組成物の調製は、参照により本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed. Mack Printing Company,1990に例示される本開示の観点から、当業者に既知である。さらに、動物(例えば、ヒト)投与の場合、調剤は、FDA生物基準局又は他の国の対応する当局によって要求される滅菌性、発熱原性、一般的安全性及び純度基準を満たすべきであることが理解されるであろう。好ましい組成物は、凍結乾燥調合物又は水溶液である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、当業者には知られているように(例えば、本明細書に参照により組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329を参照されたい)、任意及びすべての溶媒、バッファ、分散媒体、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、酸化防止剤、タンパク質、薬物、薬物安定化剤、ポリマー、ゲル、バインダ、ビヒクル、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤、染料、かかる類似の材料及びこれらの組合せを含む。従来の担体が有効成分と不適合である場合を除いて、薬学的組成物におけるその使用が企図される。
本発明の抗体(及び任意の追加の治療剤)は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所的な治療が望まれる場合、病変内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期か又は長期かに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行い得る。
非経口組成物としては、注射、例えば皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内、又は腹腔内注射により投与されるように設計されているものを含む。注射のために、本発明の抗体は、水溶液、特に、ハンクス液、リンゲル液、又は生理食塩バッファなどの生理学的に適合するバッファで製剤化され得る。溶液は、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの調合剤を含んでもよい。あるいはまた、抗体は、適切なビヒクル、例えば、殺菌した発熱性物質除去水と共に使用前に構成するための粉末形態であってもよい。無機の注射可能な溶液は、必要に応じて以下に列挙する種々の他の成分と共に、本発明の抗体を必要な量で適切な溶媒に組み込むことによって調製される。無菌性は、例えば、無菌ろ過膜によるろ過によって容易に達成することができる。一般的に、分散物は、種々の殺菌した有効成分を、塩基性分散媒体及び/又は他の成分を含む殺菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌の注射可能溶液、懸濁物又は乳化物を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に無菌濾過した液体媒体から有効成分と任意の更なる所望な成分の粉末が得られる減圧乾燥又は凍結乾燥技術である。液体媒体は、必要な場合には適切に緩衝化されているべきであり、注射する前に、十分な食塩水又はグルコースで液体希釈剤をまず等張性にする。組成物は、製造条件及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の混入作用から保護されなければならない。エンドトキシン汚染を安全なレベルに最小限に、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満に維持すべきであることが認識されるだろう。適切な薬学的に許容され得る担体としては、限定されないが、バッファ、例えば、ホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む酸化防止剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルパラベン又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン;単糖類、二糖類及び他の炭水化物(グルコース、マンノース又はデキストリンを含む);キレート化剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、ショ糖、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩を形成する対イオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる化合物を含んでもよい。任意選択的に、懸濁物は、適切な安定化剤、又は高度に濃縮した溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を高める薬剤も含んでいてもよい。さらに、活性化合物の懸濁物は、適切な油注射懸濁物として調製することができる。適切な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪族油(例えば、ゴマ油)、又は合成脂肪酸エステル(例えば、エチルクリート(ethyl cleat)又はトリグリセリド)又はリポソームが挙げられる。
活性成分は、例えば、コアセルベーション技術若しくは界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)内に、又はマクロエマルジョン内に、それぞれ封入してもよい。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th Ed. Mack Printing Company, 1990)に開示されている。徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適切な例としては、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、例えば、フィルム又はマイクロカプセル等の成型物品の形態である。特定の態様では、注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン、又はこれらの組み合わせの組成物での使用によってもたらすことができる。
前述の組成物に加え、抗体は、デポ剤として調合することもできる。そのような長く作用する製剤は、埋め込みによって(例えば、皮下又は筋肉内)、又は筋肉内注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、抗体は、適切なポリマー若しくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性の誘導体として、例えば難溶性の塩として調合することができる。
本発明の抗体を含む薬学的組成物は、従来の混合、溶解、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥プロセスによって製造されてもよい。薬学的組成物は、薬学的に使用できる製剤へのタンパク質のプロセッシングを促進する、1つ又は複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、ビヒクル又は助剤を使用して、従来の方法で調合することができる。適切な調合物は、選択する投与経路によって変わる。
抗体は、遊離酸若しくは遊離塩基、中性又は塩形態で組成物に調合されてもよい。薬学的に許容され得る塩は、遊離酸又は遊離塩基の生体活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えば、タンパク質組成物の遊離アミノ基と形成されるもの、又は例えば塩酸もしくはリン酸等の無機酸と形成されるか、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸等の有機酸と形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムの水酸化物又は水酸化第二鉄等の無機塩基から誘導されてもよく、又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン又はプロカイン等の有機塩基から誘導されてもよい。医薬塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性及び他のプロトン性溶媒に溶けやすい傾向がある。
F. 治療方法及び組成物
本明細書で提供される抗体のいずれも、治療方法に使用することができる。本発明の抗体は、例えばがん又は自己免疫疾患の治療において、免疫療法剤として使用することができる。
治療方法における使用のために、本発明の抗体は、医学行動規範と一致した様式で調合され、用量決定され、投与される。これに関連して考慮すべき要因としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床的症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医療従事者に既知である他の要因が挙げられる。
一態様では、医薬としての使用のための本発明の抗体が提供される。さらなる態様では、疾患の治療における使用のための本発明の抗体が提供される。特定の態様では、治療方法における使用のための本発明の抗体が提供される。一態様では、本発明は、疾患の治療を必要とする個体の疾患の治療における使用のための本発明の抗体を提供する。特定の態様において、本発明は、個体に有効量の抗体を投与することを含む、疾患を有する個体を治療する方法において使用するための抗体を提供する。特定の態様では、疾患は増殖性疾患である。特定の態様では、疾患はがん、特にCD19発現がんである。具体的な態様では、がんはB細胞がんである。一態様におけるB細胞がんは、B細胞リンパ腫又はB細胞白血病である。一態様では、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ球性白血病である。他の態様では、疾患は、自己免疫疾患である。特定の態様において、疾患はループス、特に、全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎(LN)である。
特定の態様では、方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、治療される疾患ががんである場合の抗がん剤又は治療される疾患が自己免疫疾患である場合、免疫抑制剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる態様において、本発明は、標的細胞、特に、B細胞の溶解を誘発する際に使用するための本発明の抗体を提供する。特定の態様では、本発明は、標的細胞の溶解を誘発するのに有効な量の抗体を個体に投与することを含む、個体において標的細胞、特にB細胞の溶解を誘発する方法において使用するための本発明の抗体を提供する。上記のいずれかの態様に係る「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトである。
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造又は調製における本発明の抗体の使用を提供する。一態様では、医薬は、疾患の治療を必要とする個体における、疾患の治療のためのものである。さらなる態様では、医薬は、疾患を有する個体に対し、有効量の医薬を投与することを含む、疾患を治療する方法における使用のためのものである。特定の態様では、疾患は増殖性疾患である。特定の態様では、疾患はがん、特にCD19発現がんである。具体的な態様では、がんはB細胞がんである。一態様におけるB細胞がんは、B細胞リンパ腫又はB細胞白血病である。一態様では、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ球性白血病である。他の態様では、疾患は、自己免疫疾患である。特定の態様において、疾患はループス、特に、全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎(LN)である。一態様では、方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療薬、例えば、治療される疾患ががんである場合は抗がん剤、又は治療される疾患が自己免疫疾患である場合、免疫抑制剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる態様では、医薬は、標的細胞、特に、B細胞の溶解を誘発するためのものである。またさらなる態様では、医薬は、標的細胞の溶解を誘発するために個体に対して有効量の医薬を投与することを含む、個体において、標的細胞、特にB細胞の溶解を誘発する方法における使用のためのものである。上記のいずれかの態様による「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってよい。
更なる態様において、本発明は、疾患を治療するための方法を提供する。一態様では、この方法は、そのような疾患を有する個体に有効量の本発明の抗体を投与することを含む。一態様では、組成物は、上記個体に投与され、本発明の抗体を医薬的に許容される形態で含んでいる。特定の態様では、疾患は増殖性疾患である。特定の態様では、疾患はがん、特にCD19発現がんである。具体的な態様では、がんはB細胞がんである。一態様におけるB細胞がんは、B細胞リンパ腫又はB細胞白血病である。一態様では、B細胞がんは、非ホジキンリンパ腫又は急性リンパ芽球性白血病又は慢性リンパ球性白血病である。他の態様では、疾患は、自己免疫疾患である。特定の態様において、疾患はループス、特に、全身性エリテマトーデス(SLE)又はループス腎炎(LN)である。特定の態様では、方法は、有効量の少なくとも1つの追加の治療剤、例えば、治療される疾患ががんである場合の抗がん剤又は治療される疾患が自己免疫疾患である場合、免疫抑制剤を個体に投与することをさらに含む。上記のいずれかの態様による「個体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってよい。
さらなる態様において、本発明は、標的細胞、特にB細胞などのCD19発現細胞の溶解を誘導する方法を提供する。一態様では、この方法は、T細胞、特に細胞傷害性T細胞の存在下において、標的細胞を本発明の抗体と接触させることを含む。さらなる態様において、個体における標的細胞、特にB細胞などのCD19発現細胞の溶解を誘導するための方法が提供される。1つのこのような態様では、方法は、個体に対し、標的細胞の溶解を誘導するために、有効量の本発明の抗体を投与することを含む。一態様では、「個体」は、ヒトである。
当業者であれば、多くの場合に、抗体は治癒を提供せずに部分的な恩恵のみを提供する場合があることを容易に認識する。いくつかの態様では、いくらかの効果を有する生理学的変化もまた、治療上有益であるとみなされる。したがって、いくつかの態様では、生理学的変化を与える抗体の量は、「有効量」と考えられる。治療が必要な対象、患者又は個体は、典型的には、哺乳動物であり、より特定的には、ヒトである。
いくつかの態様では、有効量の本発明の抗体が、疾患を治療するために個体に投与される。
疾患の予防又は治療のために、本発明の抗体の適切な投薬量(単独で又は1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、投与経路、患者の体重、抗体の種類、疾患の重篤度及び経過、抗体が予防目的で投与されるか又は治療目的で投与されるか、以前又は現在の治療介入、患者の病歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の裁量に依存するであろう。投与に責任を持つ施術者はいずれにせよ、組成物中の有効成分の濃度、及び個々の対象での適切な用量を決定する。単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス輸注を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
本発明の抗体は、好適には、患者に一度に又は一連の治療にわたって投与される。疾患の種類及び重篤度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の抗体を、例えば、1回又は複数回の別個の投与によるか、又は連続的な注入によるかにかかわらず、患者に投与するための初期の候補投薬量とすることができる。典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して、約1μg/kg~100mg/kgの範囲であってもよい。数日間又はそれ以上にわたる反復投与において、症状に応じ、治療は通常、疾患症候の所望の抑制が生じるまで続けられる。抗体の1つの例示的な投与量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。他の非限定的な例では、投薬量はまた、約1μg/kg/体重、約5μg/kg/体重、約10μg/kg/体重、約50μg/kg/体重、約100μg/kg/体重、約200μg/kg/体重、約350μg/kg/体重、約500μg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、約10mg/kg/体重、約50mg/kg/体重、約100mg/kg/体重、約200mg/kg/体重、約350mg/kg/体重、約500mg/kg/体重から、約1000mg/kg/体重までを含んでいてもよく、又は投与あたり更に多くてもよく、これらから誘導される任意の範囲であってもよい。本明細書に列挙される数から誘導可能な範囲の非限定的な例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重等が、上述の数に基づいて投与されてもよい。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kgもしくは10mg/kg(又はこれらの任意の組合せ)の1つ又は複数の用量を患者に投与してもよい。そのような用量は、断続的に、例えば毎週又は3週間毎(例えば、患者が約2~約20回、又は例えば約6回の用量の抗体を受容するように)投与されてもよい。最初の多めの投与量、それに続く1回以上の量の少ない用量を投与してよい。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であってもよい。この療法の進行は、従来の技術及びアッセイによって容易にモニターされる。
本発明の抗体は、通常、意図した目的を達成するために有効な量で使用される。疾患状態を治療又は予防するための使用のために、本発明の抗体、又はその薬学的組成物が、有効量で投与又は塗布される。
全身投与の場合、有効な用量は、in vitroアッセイ、例えば細胞インキュベートアッセイから最初に概算することができる。次いで、細胞インキュベート物で決定されるようなIC50を含む血中濃度範囲を達成するために、用量を動物モデルにおいて製剤化してもよい。このような情報を使用し、ヒトにおける有用な用量をさらに正確に決定し得る。
初期投与量もまた、in vivoデータから、例えば、動物モデルから、当該技術分野で周知の技術を用いて概算し得る。
治療効果を維持するために十分な抗体の血漿濃度を与えるように、投薬量及び投薬間隔は個々に調節することができる。注射による投与に有用な通常の患者用量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.1~1mg/kg/日の範囲である。治療に有効な血漿レベルは、各日に複数回用量を投与することによって達成されてもよい。血漿中のレベルは、例えば、HPLCによって測定されてもよい。
本発明の抗体の有効用量は、一般に、実質的な毒性を引き起こすことなく、治療上の利益を提供する。抗体の毒性及び治療有効性は、細胞インキュベート物又は実験動物における標準的な医薬手順によって決定することができる。細胞インキュベートアッセイ及び動物実験を使用し、LD50(集団の50%が致死に至る用量)及びED50(集団の50%が治療的に有効である用量)を決定し得る。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表し得る。大きい治療指数を呈する抗体が好ましい。一態様では、本発明による抗体は、高い治療指数を呈する。細胞インキュベートアッセイ及び動物実験から得られるデータを、ヒトでの使用に適した投薬範囲を配合する際に使用し得る。投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、全くない状態で、ED50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、様々な要素、例えば、使用される剤形、利用される投与経路、対象の病状等に応じて、この範囲内で変動し得る。実際の製剤、投与経路及び投薬量は、患者の症状という観点で個々の医師によって選択されてもよい(例えば、その全体が本明細書に参考として組み込まれる、Fingl et al., 1975のThe Pharmacological Basis of Therapeutics, Ch.1, p. 1を参照されたい)。
本発明の抗体で治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全などに起因して、どのように、いつ、投与を中止、中断、又は調整するかを知っているであろう。逆に、主治医は、臨床応答が十分でなかった場合には、治療レベルを上げるように調整する(毒性は予め排除)ことも知っているであろう。対象となる障害の管理における投与量の大きさは、治療される病状の重症度、投与経路などによって変わる。症状の重症度は、例えば、部分的には、標準的な予後評価方法によって評価されてもよい。さらに、用量及びおそらくは投薬頻度も、個々の患者の年齢、体重及び応答に応じて変化するであろう。
本発明の抗体は、治療において、1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。例えば、本発明の抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤と共投与されてもよい。「治療剤」という用語は、かかる治療が必要な個体において、症状又は疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。このような追加の治療剤は、治療される特定の疾患に適した任意の有効成分、好ましくは、互いに有害な影響を与えない相補的な活性を有するものを含むことができる。一部の態様では、追加の治療剤は、免疫制御剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着の阻害剤、細胞傷害性薬剤、細胞アポトーシスの活性化剤、又はアポトーシス誘導因子に対する細胞の感受性を高める薬剤である。特定の態様では、追加の治療薬は、抗がん剤、例えば微小管破壊剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシスの活性化剤、又は抗血管新生剤である。他の態様では、追加の治療剤は免疫抑制剤である。特定の態様では、追加の治療薬は、コルチコステロイド、ヒドロキシクロロキン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド、カルシニューリン阻害剤、ベリムマブ、リツキシマブとオビヌツズマブの群から選択される1つ又は複数である。
このような他の薬剤は、適切には、意図する目的にとって有効な量で組み合わせた状態で存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用される抗体の量、障害又は治療の種類、及び上述の他の因子に依存する。抗体は、通常、同じ投薬量で、本明細書に記載の投与経路で使用されるか、又は約1~99%の本明細書に記載の投薬量で、又は経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投薬量及び任意の経路で使用される。
上述のかかる併用療法は、組み合わせた投与(2つ以上の治療剤が、同じ又は別個の組成物に含まれる)、及び別個の投与を包含し、この場合、本発明の抗体の投与は、追加の治療剤及び/又はアジュバントの投与前、投与と同時及び/又は投与後に行われてもよい。また、本発明の抗体を、放射線療法と組み合わせて使用してもよい。
G. 製造品
本発明の別の態様では、上述の障害の治療、予防及び/又は診断に有用な材料を含む製造物品が提供される。製造品は、容器と、容器に貼られているか又は付随しているラベル又は添付文書とを備える。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、症状を治療、予防、及び/又は診断するのに有効な別の組成物と単独で又は組み合わせて使用される組成物を保持し、無菌アクセスポートを有していてもよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって穿孔可能なストッパを有するバイアルであってもよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択される症状を治療するために使用されることを示す。更に、製造物品は、(a)組成物を含む第1の容器を含み、この組成物は本発明の抗体を含み、(b)組成物を含む第2の容器を含み、この組成物は細胞疾患性又は他の治療剤をさらに含む。本発明のこの態様における製造物品は、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示すパッケージ添付文書をさらに含んでいてもよい。これに代えて、又はこれに加えて、製造物品は、薬学的に許容され得るバッファ、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液及びデキストロース溶液を含む第2の(又は第3の)容器を更に備えていてもよい。これは、他のバッファ、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを含め、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料をさらに備えてもよい。
H. 診断及び検出のための方法及び組成物
特定の態様において、本明細書で提供される抗体のいずれも、生物学的サンプル中のその標的(例えば、CD3又はCD19)の存在を検出するのに有用である。本明細書で使用される「検出する」という用語は、定量的又は定性的な検出を包含する。一部の態様において、生体試料は、細胞又は組織、例えば前立腺組織を含む。
一態様において、診断又は検出の方法における使用のための、本発明による抗体が提供される。さらなる態様において、生体試料中のCD3又はCD19の存在を検出する方法が提供される。特定の態様では、この方法は、CD3又はCD19への抗体の結合を許容する条件下で生体試料を本発明の抗体と接触させること、及び抗体とCD3又はCD19との間で複合体が形成されるかどうかを検出することを含む。このような方法は、in vitro法又はin vivo法であってもよい。一態様では、本発明の抗体を使用して、例えば、CD3及び/又はCD19が患者選択のためのバイオマーカーである場合、CD3及び/又はCD19に結合する抗体による治療に適格な対象を選択する。
本発明の抗体を使用して診断され得る例示的な障害には、がん、特にB細胞がんが含まれる。
一部の態様において、標識された、本発明による抗体が提供される。標識としては、限定されないが、直接的に検出される標識又は部分(例えば、蛍光、色素体、電子密度の高い、化学発光、及び放射性標識)、及び例えば酵素反応又は分子相互作用によって、間接的に検出される部分(例えば、酵素又はリガンド)が挙げられる。例示的な標識には、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土類キレート又はフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4737456号)などのルシフェラーゼ類、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン類、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼなどの糖オキシダーゼ、過酸化水素を使用して、例えばHRP、ラクトペルオキシダーゼ、又はマイクロペルオキシダーゼなどの色素前駆体を酸化するために過酸化水素を利用する酵素と結合した、例えばウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどが含まれるが、これらに限定されない。
IV. 実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上に提供された一般的な説明を考慮すると、種々の他の態様が実施されてもよいことが理解される。
実施例1-最適化CD3バインダの生成
既に記載した(例えば、本明細書に参照により組み込まれる、WO2014/131712を参照されたい)、本明細書で「CD3orig」と呼ばれ、かつそれぞれ配列番号6及び11のVH及びVL配列を含むCD3バインダから開始して、本発明者等は、重鎖CDR3のKabatの97位及び100位における2つのアスパラギン脱アミド配列モチーフを除去することによって、このバインダの特性を最適化することを目指した。
この目標に対して、本発明者らは、ファージディスプレイに適した、Kabatの97位と100位の両方のアスパラギンが除去された重鎖の抗体ライブラリを生成し、更にAsn97及びAsn100を置き換えることによって引き起こされる親和性の喪失を親和性成熟プロセスを通して補償するためにランダム化されたCDR H1、H2及びH3を生成した。
このライブラリは、マイナーコートタンパク質p3への融合を介して線状ファージに置かれ(Marks et al.(1991)J Mol Biol 222, 581-597)、組み換えCD3εへの結合のために選択された。
初期のスクリーニングにおいて10の候補クローンが特定され、SPRによってFab断片(大腸菌内で産生された)として測定された、組み換え抗原上の許容可能な結合を示した。
しかしながら、これらクローンのうち1つだけが、IgGフォーマットへの変換後、フローサイトメトリによって測定された、CD3を発現する細胞への許容可能な結合活性を示した。
本明細書で「CD3opt」と呼ばれ、且つそれぞれ配列番号7及び11のVH及びVL配列を含む選択されたクローンは、以下で説明されるように、さらに評価され、二重特異性フォーマットに変換された。
実施例2-最適化CD3バインダのCD3への結合
組み換えCD3への結合
両方ともFc領域内のP329G L234A L235A(「PGLALA」、EU番号付け)変異のヒトIgG1フォーマットである、最適化CD3バインダ「CD3opt」と元々のCD3バインダ「CD3orig」とについて(配列番号12及び14(CD3orig)並びに配列番号13及び14(CD3opt))、組み換えCD3への結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定された。
脱アミド部位除去の効果と抗体の安定性へのその効果とを評価するために、元々の最適化CD3バインダの組み換えCD3への結合を、37℃又は40℃の14日間の温度ストレス後に試験した。-80℃で保存した試料を参照として使用した。基準試料及び40℃でストレスを加えられた試料は、20mM His、140mM NaCl中、pH6.0であり、37℃でストレスを加えられた試料は、PBS中、pH7.4であり、すべて濃度1.2~1.3mg/mlであった。ストレス期間(14日間)後、更なる分析のために、PBS中の試料を透析して20mM His、140mM NaCl、pH6.0に戻した。
試料の相対活性濃度(RAC)を、以下の通りSPRにより決定した。
SPRは、Biacore T200機器(GE Healthcare)で行われた。抗Fab捕捉抗体(GE Healthcare,#28958325)は、標準的なアミンカップリングケミストリーを用いて、結果として4000~6000共鳴単位(RU)の表面密度で、Series S Sensor Chip CM5(GE Healthcare)に固定化された。実行バッファ及び希釈バッファとして、HBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH 7.4、0.05%界面活性剤P20)を使用した。2μg/mlの濃度のCD3抗体を、5μl/分の流量で60秒間注入した。CD3抗原(以下を参照されたい)は、10μg/mlの濃度で120秒間注入され、解離は、5μl/分の流量で120秒間監視された。チップ表面は、10mMグリシンpH2.1のそれぞれ60秒間の2つの連続した注入によって再生された。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、及びブランク制御フローセルから得られる応答を差し引くことによって訂正された。評価のために、結合反応は、注入終了から5秒後に取られた。結合シグナルを正規化するために、CD3結合は、抗Fab応答(固定化された抗Fab抗体上でのCD3抗体の捕捉の際に得られるシグナル(RU))によって分けられた。相対活性濃度は、各温度ストレスを加えられた試料を、対応するストレスを加えられていない試料に対して参照することにより計算した。
使用された抗原は、ノブ・イントゥ・ホール修飾及びC末端Avi-tagを伴うヒトFcドメインに融合された、CD3デルタ及びCD3イプシロン外部ドメインのヘテロ二量体であった(配列番号41及び42を参照されたい)。
この実験の結果を図2に示す。見ることができるように、最適化CD3バインダであるCD3optは、元々のCD3バインダであるCD3origと比較して、温度ストレス(37℃、pH7.4で2週間)後、CD3への強く改善された結合を示した。この結果は、in vivo半減期とともに中性pHでの抗体の製剤に関連して、脱アミド部位除去が成功であったことと、脱アミド部位除去によって優れた安定性特性を有する抗体が得られたことを示している。
Jurkat細胞上のCD3への結合
両方ともFc領域内のP329G L234A L235A(「PGLALA」、EU番号付け)変異のヒトIgG1フォーマットである、最適化CD3バインダ「CD3opt」と元々のCD3バインダ「CD3orig」とについて(配列番号12及び14(CD3orig)並びに配列番号13及び14(CD3opt))、ヒトレポーターT細胞株Jurkat NFAT上のCD3への結合は、FACSによって決定された。
Jurkat-NFATレポーター細胞(GloResponse Jurkat NFAT-RE-luc2P;Promega #CS176501)は、NFATプロモータを伴うヒト急性リンパ性白血病レポーター細胞株であり、ヒトCD3を発現する。細胞を、RPMI1640、2g/lグルコース、2g/l NaHCO3、10% FCS、25mM HEPES、2mM L-グルタミン、1× NEAA、1× ピルビン酸ナトリウム中、1mlあたり0.1~0.5mio細胞でインキュベートした。最終濃度であるハイグロマイシンB 1ml当たり200μgを、細胞を継代するときにはいつでも添加した。
結合アッセイのために、Jurkat NFAT細胞を採取し、PBSで洗浄し、FACSバッファ中で再懸濁した。抗体染色を、96ウェル丸底プレート内で行った。したがって、1ウェルあたり100,000~200,000細胞が、播種された。プレートを4分間400×gで遠心分離し、上清を取り除いた。試験抗体をFACSバッファで希釈し、20μlの抗体溶液を4℃で30分間細胞に添加した。未結合抗体を除去するため、細胞をFACSバッファで2回洗浄した後、希釈二次抗体(PE抱合化AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗ヒトIgG Fcg Fragment Specific;Jackson ImmunoResearch#109-116-170)を添加した。4℃で30分のインキュベーションの後、未結合の二次抗体を洗い流した。測定の前に、細胞を200μl FACSバッファ中で再懸濁し、次いでBD Canto II装置を使用してフローサイトメトリによって分析した。
図3に示すように、最適化CD3バインダ「CD3opt」と元々のCD3バインダ「CD3orig」とは、Jurkat細胞上のCD3に比較的良く結合した。
実施例3-最適化されたCD3バインダの機能活性
最適化CD3バインダ「CD3opt」の機能活性を、Jurkatレポーター細胞アッセイで試験し、元々のCD3バインダ「CD3orig」の活性と比較した。IgGの機能活性を試験するために、CD3optヒトIgG1 PGLALA又はCD3origヒトIgG1 PGLALAの濃度を増加させながら、抗PGLALA発現CHO細胞をJurkat NFATレポーター細胞と共インキュベートした。T細胞架橋のJurkat NFATレポーター細胞上のCD3の活性化は、ルシフェラーゼの産生を誘発するのであり、活性化マーカーとして発光を測定することができる。CD3origヒトIgG1 wtが、抗PGLALA発現CHO細胞に結合できず、したがってJurkat NFAT細胞に架橋されることができない、陰性対照として含まれていた。アッセイの概略図を図4に示す。
抗PGLALA発現CHO細胞は、ヒトIgG1 Fc(PGLALA)に特異的に結合する抗体を、その表面上に発現するように操作されているCHO-K1細胞である(本明細書に参照により組み込まれる、WO2017/072210を参照されたい)。これらの細胞は、5%FCS+1%GluMaxを含有するDMEM/F12培地でインキュベートされた。Jurkat NFATレポーター細胞は、実施例2で説明されている通りである。
CD3 huIgG1 PGLALAが、CHO上に発現された抗PGLALA及びJurkat NFATレポーター細胞上に発現されたCD3に同時に結合する際、NFATプロモータが、活性化されて、活性ホタルルシフェラーゼの発現を引き起こす。(ルシフェラーゼ基質の付加時に得られる)発光シグナルの強度は、CD3活性化及びシグナル伝達の強度に比例する。Jurkat-NFATレポーター細胞は、懸濁物中で成長するのであり、RPMI1640、2g/lグルコース、2g/l NaHCO3、10%FCS、25mM HEPES、2mM L-glutamin、1x NEAA、1x ピルビン酸ナトリウム中、1mlあたり0.1~0.5mio細胞、ハイグロマイシン1mlあたり200μgでインキュベートされた。アッセイのために、CHO細胞を採取し、ViCellを使用して生存度を決定した。平底、白壁の96ウェルプレート(Greiner bio-one#655098)内で、100μl培地に30000標的細胞/ウェルをプレートし、50μl/ウェルの希釈された抗体又は培地(対照のため)を、CHO細胞に添加した。続いて、Jurkat-NFATレポーター細胞を回収し、ViCellを使用して生存度を評価した。細胞を、1.2mio細胞/mlで細胞培地内でハイグロマイシンBなしで再懸濁し、60000細胞/ウェル(50μl/ウェル)でCHO細胞に添加し、最終エフェクタ対標的(E:T)比2:1、及び1ウェルあたり最終体積200μlを得た。次いで、4μlのGloSensor(Promega #E1291)を、各ウェルに添加した(最終体積の2%)。細胞を、加湿したインキュベータ内において37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション時間の終わりに、TECAN Spark 10Mを使用して発光を検出した。
図5に示すように、最適化CD3バインダであるCD3optは、Jurkat NFAT細胞上で、CD3origとしての架橋の際に類似の活性を有していた。
実施例4-最適化CD3バインダを含むT細胞二重特異性抗体の生成
実施例1で同定された最適化されたCD3バインダ(「CD3opt」、配列番号7(VH)及び11(VL))を使用して、CD3及びCD19を標的とする、CD19結合部分として抗CD19抗体2B11又は018を使用する(それぞれ、配列番号15~22又は28~35)T細胞二重特異性抗体(TCB)(「CD19-TCB」)を生成した。
TCB分子の模式図を図6Aに示し、それらの全配列を配列番号39、24、25及び27(2B11)、並びに配列番号36、37、38及び27(018)に示す。
標的細胞抗原結合部分として上記の抗CD19抗体のいずれか、及びCD3バインダとしてCD3origを含む対応する分子も調製した(配列番号39、24、25及び26(2B11)、並びに配列番号40、37、38及び26(018))。
図6B~図6Eに示すように、重鎖及び軽鎖DNA配列の可変領域を、それぞれのレシピエント哺乳動物発現ベクターに予め挿入された定常重鎖又は定常軽鎖のいずれかとインフレームでサブクローニングした。
軽鎖と対応する重鎖との正しい対合を改善するために、CD19結合Fab分子のヒトCL(E123R、Q124K)及びヒトCH1(K147E、K213E)に変異を導入した。
重鎖の正しい対合(ヘテロ二量体分子の形成)のために、ノブ・イントゥ・ホール変異を抗体重鎖の定常領域に導入した(それぞれT366W/S354C及びT366S/L368A/Y407V/Y349C)。
さらに、Fcγ受容体への結合を消失させるために、P329G、L234A及びL235A変異を抗体重鎖の定常領域に導入した。
従来の(非PCRベースの)クローニング技術を伴う、専有のベクターシステムを使用し、(元は、ATCCより受託し、Evitriaにて懸濁インキュベート液中での無血清増殖に適合した)懸濁適応性CHO K1細胞を用い、Evitria(スイス国)により、TCBを調製した。産生のために、Evitriaは、専有の動物構成成分非含有・無血清培地(eviGrow及びeviMake2)、並びに、専有のトランスフェクション試薬(eviFect)を用いた。細胞を1:1:2:1(「ベクターノブ重鎖」:「ベクターホール重鎖」:「ベクターCD3軽鎖」:「ベクターCD19軽鎖」)で対応する発現ベクターでトランスフェクトした。遠心分離及びその後のろ過(0.2μmフィルタ)によって上清を回収した。
Evitriaでの調製に代わるものとして、TCB分子は、HEK293 EBNA細胞の一過性トランスフェクションによって社内で調製した。細胞を遠心分離し、予め温めたCD CHO培地(Thermo Fisher, #10743029)により培地を置き換えた。CD CHO培地中で発現ベクターを混合し、ポリエチレンイミン(PEI;Polysciences Inc,#23966-1)を加え、溶液をボルテックスして室温で10分間インキュベートした。その後、細胞(2mio/mL)をベクター/PEI溶液と混合して、フラスコに移し、5%CO2雰囲気の振盪インキュベータ内で、3時間37℃でインキュベートした。インキュベート後、補充物(全体積の80%)を含むExcell培地を添加した(W. Zhou and A. Kantardjieff, Mammalian Cell Cultures for Biologics Manufacturing, DOI:10.1007/978-3-642-54050-9;2014)。トランスフェクションの1日後に、補充液(Feed、全体積の12%)を添加した。7日後、遠心分離及びその後の濾過(0.2μmフィルタ)によって細胞上清を採取した。
標準的な方法により、回収した上清からタンパク質を精製した。手短に言えば、Fc含有タンパク質は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィによってろ過された細胞インキュベート上清から精製した(平衡バッファ:20mMクエン酸ナトリウム、20mMリン酸ナトリウム、pH7.5;溶出バッファ:20mMクエン酸ナトリウム、pH3.0)。溶出はpH3.0で達成され、続いて試料をすぐにpH中和した。遠心分離(Millipore Amicon(登録商標)ULTRA-15、#UFC903096)によりタンパク質を濃縮し、凝集したタンパク質を、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.0のサイズ排除クロマトグラフィにより、単量体タンパク質から分離した。
Pace,et al., Protein Science, 1995, 4, 2411-1423に従ったアミノ酸配列に基づき計算した質量減衰係数を用いて、280nmにおける吸収を測定することにより、精製したタンパク質の濃度を測定した。LabChipGXII(Perkin Elmer)を使用して、還元剤の存在下及び非存在下にて、CE-SDSにより、タンパク質の純度及び分子量を分析した。ランニングバッファ(それぞれ、25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM Lアルギニンモノヒドロクロリド、pH6.7、又は200mM KH2PO4、250mM KCl、pH6.2)中で平衡化した、分析用サイズ排除カラム(TSKgel G3000 SW XL又はUP-SW3000)を使用して、HPLCクロマトグラフィにより25℃にて、凝集内容物の測定を実施した。
調製したTCB分子の生化学的及び生物物理学的分析の結果を表1に示す。
4つのTCB分子はすべて、高品質で生成できた。
実施例5-表面プラズモン共鳴(SPR)による最適化された抗CD3(多重特異性)抗体の機能特性評価
SPR実験は、実施例4で調製したCD19-TCB分子を使用して、Biacore T200装置で、25℃で、HBS-EP+をランニングバッファとして用いて行った(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、0.005%界面活性剤P20(GE Healthcare)、#BR-1006-69))。Anti-Fc(P329G)IgG(ヒトIgG1 Fc(P329G)に特異的に結合する抗体、「抗PG抗体」-本明細書に参照により援用されるWO2017/072210を参照)は、C1チップ(GE Healthcare)上でアミンカップリングによって直接固定化された。異なるTCB分子は25nMで捕捉された。CD19抗原(ヒトCD19細胞外ドメイン(ECD)-Fc融合;配列番号43及び44を参照)又はCD3抗原(CD3ε/δ-Fc融合;実施例2参照、配列番号41及び42)を30μl/分で240秒間リガンド上に通過させて会合相を記録した。解離相は、1500秒(CD19抗原)又は800秒(CD3抗原)についてモニターし、試料溶液からHBS-EP+に切り替えることによってトリガーされた。チップ表面は、10mMグリシンpH2.1を60秒間2回注入することにより、サイクルごとに再生された。バルク屈折率の差は、基準フローセル(捕捉されたTCBなし)で得られた応答を差し引くことによって補正された。親和性定数を、Biaevalソフトウェア(GE Healthcare)を使用して、1:1ラングミュア結合へのフィッティングにより、動態速度定数から導出した。測定は、3つの独立した希釈系列で実行された。
1:1ラングミュア結合の動力学的定数は、組換えヒトCD19(表2)及び組換えヒトCD3(表3)に対する4つの試験済みTCBについて決定された。
異なるバインダは、異なるTCBで同様の親和性を示す。CD19バインダ2B11のKDは、それぞれのTCBで約0.4nMである。CD19バインダ018は、それぞれのTCBで約1.1nMのKDとわずかに低い親和性がある。CD3バインダCD3orig又はCD3optを有するTCBは、CD3に匹敵する親和性を有し、KDは約3.4nMである。CD19抗原とCD3抗原との相互作用のKDは似ているが、反応速度は異なる。CD19はCD3よりも解離が遅くなるが、CD3はCD19よりも速く結合するため、同様のKD値が得られる。
実施例6-最適化された抗CD3抗体によるCD19-TCB分子のヒトCD19及びヒトCD3発現細胞への結合
実施例4で調製したCD19-TCB分子のヒトCD19及びCD3発現標的細胞への結合を試験した。CD19発現レベルが異なる2つのCD19発現細胞株を使用した。Nalm-6、CD19発現が高い急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞株、及び平均発現レベルのZ-138(マントル細胞リンパ腫)。不死化Tリンパ球株(Jurkat細胞株)を用いてCD3結合を評価した。簡単に説明すると、細胞を回収し、計数し、生存率をチェックし、FACSバッファ(PBS+2%FCS+5mM EDTA+0.25%アジ化ナトリウム)に1x106細胞/mlで再懸濁した。100μlの細胞懸濁液(0.1x106細胞を含む)を丸底96ウェルプレートで4℃で30分間インキュベートし、CD19-TCB分子(Jurkat細胞では200nM-0.05nM;200nM-Z-128及びNalm-6細胞で0.0002nM)の濃度を増加させ、冷FACSバッファで2回洗浄し、PE結合AffiniPure F(ab’)2 Fragmentヤギ抗ヒトIgG Fcγ断片特異的二次抗体(Jackson Immuno Research Lab PE #109-116-170)と共に4℃でさらに30分間再インキュベートし、冷FACSバッファで2回洗浄し、すぐにFACS CantoII(ソフトウェアFlowJo 10.5.3)を使用してFACSで分析した。結合曲線と結合に関連するEC50値は、GraphPad Prism 7を使用して計算された。
結果を、図7及び表4と及び表5に示す。CD3バインダとしてCD3optを含むCD19-TCB分子は、CD3バインダCD3origを含む分子に匹敵する(又はわずかに優れた)CD3結合を示す(図7A及び表4)。
CD19-TCB分子(CD19バインダとして2B11又は018のいずれかを含む)は、CD19発現細胞に匹敵する結合を示す(図7B、図7C、及び表5)。Z-138細胞の場合、結合曲線が飽和に達しなかったため、EC50値を計算できなかった。
実施例7-最適化された抗CD3抗体を含むCD19-TCB分子によって誘発される腫瘍細胞の溶解とT細胞の活性化
実施例4で調製したCD19-TCB分子によって媒介されるCD19発現腫瘍細胞の溶解及びその後のT細胞活性化を、Nalm-6細胞(ALL)とZ-138細胞(マントル細胞リンパ腫)で評価した。ヒトPBMCをエフェクタとして使用し、様々なTCB分子との20時間のインキュベートで腫瘍溶解を検出した。
末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なヒトドナーから得られた濃縮リンパ球調製物(バフィーコート)の組織不透過性密度遠心分離によって調製した。新鮮血を、不稔PBSで希釈し、Histopaque勾配(Sigma,#H8889)に積層した。遠心分離(450×g、30分間、中断無し、室温)後、PBMC含有界面相より上方の血漿を廃棄し、PBMCを新しいfalconチューブに移し、続いてPBS 50mlで満たした。混合物を遠心分離し(350×g、10分、室温)、上清を捨て、PBMCペレットを赤血球溶解溶液中、37℃で5分間インキュベートした後、不稔PBS(遠心分離300×g、10分)で洗浄した。得られたPBMC集団をPBSに再懸濁し、自動的にカウントした(ViCell)。サイロバイアル当たり50mioのPBMCを、10%FCS及び10%DMSO(Sigma、#D2650)を含む1%GlutaMAX(Gibco)を含むRPMI1640培地(Gibco、#21870076)で凍結した。PBMCをアッセイの日に解凍し、自動的に再度カウントした(ViCell)。必要な量を不稔PBSで1回洗浄した。製造元の指示に従って、CD20マイクロビーズ(Miltenyi、#130-091-104)を使用してB細胞の枯渇を実行した。B細胞枯渇PBMCを計数し(ViCell)、10%FCS及び1%GlutaMAXを含むRPMI1640培地に5×106細胞/mlで再懸濁した。
殺傷アッセイのために、0.25mioのB細胞枯渇PBMCをU底96ウェルプレートに添加した。簡単に言えば、標的細胞を回収し、洗浄し、50,000細胞/ウェルの密度で播種し、最終的なエフェクタ対標的(E:T)比を5:1とした。TCB分子は、示された濃度(0.02pM~1000pMの範囲、3倍)で添加された。CD107a(LAMP-1)は、すでにアッセイで直接染色されている(PE抗ヒトCD107a;Biolegend、#328608)。
腫瘍細胞溶解を、37℃、5%CO2での20時間のインキュベート後に、アポトーシス/ネクローシス細胞によって細胞上清内に放出されたLDHの定量化により評価した(LDH検出キット、Roche Applied Science、#11 644 793 001)。標的細胞の最大溶解(=100%)は、1%Triton X-100での標的細胞のインキュベーションによって達成された。最小溶解(=0%)は、二重特異性コンストラクトを有しないエフェクタ細胞と共インキュベートした標的細胞を基準とする。
腫瘍細胞の溶解時に発生するT細胞の活性化を評価するために、PBMCを400xgで4分間遠心分離し、FACSバッファで2回洗浄した。簡単に説明すると、細胞をPBSで2回洗浄した後、生死染色を行った(Zombie Aqua Fixable Viability kit;Biolegend、#423102、室温で20分)。最初にPBSで、続いてFACSバッファで繰り返し洗浄した後、CD3(PE-Cy5抗ヒトCD3;BD Pharmigen、#555341)、CD4(BV605抗ヒトCD4;Biolegend、#317438)、CD8(BV711抗ヒトCD8;Biolegend、#301044)、CD25(PE-Cy7抗ヒトCD25;Biolegend、#302612)及びCD69(BV421抗ヒトCD69;Biolegend、#310930)の表面染色を、製造元の指示に従って行った。細胞を150μl/ウェルのFACSバッファで2回洗浄し、120μl/ウェルの1×溶解液(BD Biosciences #349202)で固定した。試料は、BD FACS Fortessa(Software FlowJo 10.5.3)で分析した。
図8は、CD19-TCB分子がCD19+標的細胞の標的特異的な死滅を誘発したことを示している。4つの異なるCD19-TCB分子は、CD19発現腫瘍細胞の溶解の誘導において全体的に同等であった。図9と図10は、CD3origバインダを含む分子と比較した、CD3optバインダを含むCD19-TCBは、腫瘍死滅後のT細胞活性化のわずかに優れた誘誘発を示している(Nalm-6又はZ-138標的細胞の死滅時のCD8及びCD4T細胞でのCD25、CD69、及びCD107発現)。CD19バインダ2B11及び018のT細胞活性化に対する効果は観察されなかった。
実施例8-最適化された抗CD3抗体によるCD19-TCB分子の熱安定性の測定
最適化された抗CD3抗体CD3opt(及びCD19バインダ2B11、実施例4参照)を含むCD19-TCB分子の熱安定性は、Uncleシステム(Unchained Labs, US)を使用して温度ランプを適用して静的光散乱(SLS)によって監視された。
タンパク質濃度1mg/mlのろ過済みタンパク質試料9μlをUncleデバイスに適用した。温度を0.1℃/分で30から90℃まで上昇させ、266nmでの散乱強度を収集した。
結果を図9に示す。
実施例9-ストレス後の表面プラズモン共鳴(SPR)による最適化された抗CD3抗体によるCD19-TCB分子の特徴付け
脱アミド部位除去の効果と抗体の安定性への影響を確認するために、最適化された抗CD3抗体CD3opt(及びCD19バインダ2B11、実施例4参照)を含むCD19-TCB分子を、37℃、pH7.4及び40℃、pH6で14日間インキュベートし、ヒトCD3ε/δへの結合能力についてSPRによってさらに分析した。-80℃、pH6で保存した試料を参照として使用した。基準試料及び40℃でストレスを加えられた試料は、20mM His、140mM NaCl中、pH6.0であり、37℃でストレスを加えられた試料は、PBS中、pH7.4であり、すべて濃度1.0mg/mlであった。ストレス期間(14日間)後、更なる分析のために、PBS中の試料を透析して20mM His、140mM NaCl、pH6.0に戻した。
すべてのSPR実験は、Biacore T200機器(GE Healthcare)を用いて25℃で、ランニングバッファ及び希釈バッファとしてHBS-P+(10mM HEPES、150mM NaCl pH7.4、0.05%界面活性剤P20)を用いて行った。ビオチン化ヒトCD3ε/δ(実施例2、配列番号41及び42を参照のされたい)、並びにビオチン化抗huIgG(Capture Select、Thermo Scientific、#7103262100)を、Series S Sensor Chip SA(GE Healthcare、#29104992)に固定化し、少なくとも1000共鳴単位(RU)の表面密度を得た。濃度2μg/mlのTCBを流速5μl/分で30秒間注入し、解離を120秒間監視した。表面は、10mMグリシン、pH1.5を60秒間注入することによって再生された。バルク屈折率の差は、ブランク注入を差し引くことによって、及びブランクコントロールフローセルから得られた応答を差し引くことによって補正された。評価のために、注入終了5秒後の結合応答を取得した。結合シグナルを正規化するために、CD3結合は、抗huIgG応答(固定化された抗huIgG抗体上でのTCBの捕捉の際に得られるシグナル(RU))によって分けられた。相対的結合活性は、各温度ストレス負荷サンプルを対応する非ストレス負荷サンプルと参照することによって計算した。
表10に示すように、最適化された抗CD3バインダCD3optを含むCD19-TCBのCD3ε/δへの結合は、本質的にストレスの影響を受けず、CD3バインダ自体の結果と一致している(実施例2)。
実施例10-最適化された抗CD3抗体を用いたCD19-TCB分子によって誘導されるin vivoB細胞枯渇及びサイトカイン放出
最適化された抗CD3抗体CD3optと2B11CD19バインダを含むCD19-TCB分子の有効性と安全性プロファイルを理解するために、ヒト化NSGマウスにおける末梢B細胞の枯渇とサイトカイン放出を評価するin vivo作用機序研究を実施した。
実験開始時に4~5週齢の雌NSGマウス(Jackson Laboratory)を、特定の病原体のいない条件に維持し、1日のサイクルは、関連するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明状態/12時間暗状態であった。この実験研究プロトコルは、地方政府によってまとめられ、承認された(ZH223-17)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。連続的な健康モニタリングを、定期的に行った。
雌NSGマウスに、15mg/kgのブスルファンを腹腔内注射し、1日後、臍帯血から単離した1x105個のヒト造血幹細胞を静脈注射した。幹細胞注入から14~16週後、マウスを舌下で出血させ、ヒト化を成功させるために、血液をフローサイトメトリによって分析した。効率的に移植されたマウスは、そのヒトT細胞の頻度に従って、異なる治療群に無作為に分けられた。無作為化の後、過剰なサイトカインの放出を防ぐ手段として、3つのグループのマウスをオビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))(30mg/kg)で1回前処理した。
この前処置の7日後の0日目に、すべてのグループに異なる用量のCD19-TCB、CD20-TCB(CD20を標的とし、CD3バインダCD3origを含むTCB)、又はビヒクルを投与した。3つの異なる用量(0.5、0.15、及び0.05mg/kg)のCD19-TCBを注射した。Gazyva(登録商標)前処理ありとなしのCD20-TCB(0.15mg/kg)を比較剤として使用した。すべてのマウスに、200μlの適切な溶液を静脈内注射した。グループごとに3匹のマウスから、治療後4時間、24時間、及び72時間で採血した(0日目)。
研究設計を図11に示し、研究グループを表11にまとめる。
終了時(3日目)に、マウスを屠殺し、脾臓、リンパ節(LN)、及び骨髄(BM)を採取し、重量を測定し、その後のFACS分析のためにリベラーゼ及びDNAseによる酵素消化によって単細胞懸濁液を調製した。脾臓の単一細胞とすべての血液試料をヒトCD45、CD19、CD20で染色し、BD Fortessaフローサイトメーターで分析した。さらに、3つの出血時点からの血清を、マルチプレックス分析によってサイトカイン含有量について分析した。
図12は、治療グループの体重変化(%)を示している。CD19-TCB分子は、CD20-TCB治療と比較して、より少ない体重減少を誘発した。この体重減少は、使用した用量とは無関係であった。さらに、治療を受けた動物の血清中のサイトカイン分析により、CD20-TCB分子による治療の4時間後にサイトカインレベルの上昇のピークが明らかになった(これは、Gazyva(登録商標)(GPT)による前処理によって減少する可能性がある)一方で、CD19-TCB分子では低レベルのサイトカインしか検出されなかった(図13)。
血液中のB細胞枯渇の動態に関するImmuno-PDデータ(図14)は、CD19-TCBによる経時的なCD19+CD20+B細胞の強力な枯渇(CD19+又はCD20+細胞/μl血液の平均数+/-SEM)を明らかにし、用量依存性を示唆した。このB細胞枯渇効果は、CD20-TCBと同程度に強力なCD19-TCBで処理して72時間後に分析したすべてのリンパ器官でも見られた(データは示していない。)。
実施例11-最適化された抗CD3抗体を用いたCD19-TCB分子によるマウス異種移植実験における腫瘍増殖制御
最適化された抗CD3抗体CD3optと2B11CD19バインダを含むCD19-TCB分子の抗腫瘍効果をin vivoで評価するために、ヒト化NSGマウスに、R-CHOP治療を再発した患者由来のCD19+リンパ腫患者由来異種移植片(PDX)細胞を移植した。腫瘍体積が200mm3に達した時点で、マウスを腫瘍サイズに基づいて8匹のグループに無作為化した。次に、図15に示すように、0.5mg/kgのCD19-TCB又はビヒクルを毎週注射した(静脈内)。腫瘍増殖に対するCD19-TCBの効果を評価するために、腫瘍体積を、週に2回又は3回のキャリパー測定から計算した。
その結果、毎週の治療CD19-TCBは、ビヒクルによる治療と比較して、有意な腫瘍増殖制御を発揮した(図16)。このデータは、0.5mg/kgのCD19-TCBによる週1回の投与がリンパ腫PDX保有huNSGマウスで有効であることを示しており、R-CHOP治療を再発したリンパ腫患者がCD19-TCB治療の恩恵を受ける可能性があることを示唆している。
上述の発明を、理解を明確にする目的で、説明及び実施例によって、ある程度詳細に説明してきたが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。本明細書に引用されるすべての特許及び科学文献の開示は、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。