JP7745239B2 - 塗膜の付着強さの測定方法 - Google Patents

塗膜の付着強さの測定方法

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Description

この発明は塗膜の付着強さの測定方法に関し、より詳細には、上乾き層の下に流動層が形成される塗膜の付着強さの測定方法に関する。
化粧に使用するファンデーションには、ケーキタイプ、クリームタイプ、リキッドタイプなど様々なタイプのものが存在するが、いずれのタイプのものも油分などの基剤に顔料などの着色成分を加えたものであり、塗布することによってシミ、そばかす、毛穴などを覆い隠し、肌表面の見た目を整える効果がある。
このようなファンデーションは、肌に塗布すると、表面が乾き被膜化して上乾き層を形成するとともに、その下に油性の基剤からなる流動層が形成される。上乾き層と流動層とが形成されるファンデーションが肌にしっかりと付着する(換言すれば、ファンデーションが浮かない)かどうかはファンデーションの性能上きわめて重要であるところ、これまでのところ、ファンデーションの付着強さを直接測定する方法は提案されておらず、ファンデーションに含まれる材料の粘弾性や基剤の配合比率など、ファンデーションの付着強さに影響を与える事項の数値を用いて付着強さを推量するしかなかった(たとえば、特許文献1参照)。
特開2020-132527号公報
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ファンデーションのように、上乾き層の下に流動層が形成される塗膜の付着強さを直接かつ正確に測定できる塗膜の付着強さの測定方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために試行錯誤した結果、塗膜の付着強さを示す切削刃に作用する水平力の測定にあたり、切削刃を基材との界面に到達させるための第1工程と、界面に到達した切削刃を界面に沿って水平移動させる第2工程とに分けて水平力を測定することによって、塗膜の付着強さを直接かつ正確に測定できることを見出し、本発明を完成させるにいたった。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る塗膜の付着強さの測定方法は、上乾き層の下に流動層が形成される塗膜の付着強さの測定方法であって、平らな表面を有する基材の表面に上記塗膜を形成させる前工程と、切削刃が相対的に水平方向と垂直方向の2軸運動が可能な構造を有し、上記切削刃に作用させる垂直方向の力を任意に設定でき、かつ、上記切削刃に作用する水平力を測定する水平力測定手段を備えた測定装置を用い、上記塗膜に上記切削刃を切り込ませながら上記水平力を測定する測定工程とからなり、上記測定工程は、第1の荷重で上記切削刃に垂直方向の力を加えつつ、上記切削刃の先端が上記基材の表面に到達するまで上記切削刃に2軸運動を行わせる第1工程と、この第1工程に続いて、上記切削刃の先端と上記基材の表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の第2の荷重で上記切削刃に垂直方向の力を加えつつ、上記切削刃を水平移動させる第2工程とを有してなり、上記第1工程において、上記水平力測定手段の測定結果が、上記切削刃の切込み開始によって水平力が増加する第1段階、水平力の増加が止まってほぼ横ばいとなる第2段階、横ばい状態にあった水平力が再び増加に転ずる第3段階の順で遷移した後に上記第2工程に切り替えることを特徴とする。
そして、本発明に係る被検体の状態測定装置は、その好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記第2工程への切り替えは、上記第3段階に遷移後一定時間経過後に実行することを特徴とする。
(2)上記第1の荷重は、少なくとも、2軸運動を行う上記切削刃が上記塗膜の上乾き層を切削して流動層に切り込むことができる重量の錘によって付与されることを特徴とする。
)上記第2の荷重は、上記切削刃の先端と上記基材の表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の錘によって付与されることを特徴とする。
(4)上記測定装置は、上記切削刃の垂直変位を測定する垂直変位測定手段を備えていることを特徴とする。
(5)上記前工程からの経過時間を変えて上記測定工程を実施することにより、上記塗膜の上乾き層の経時変化を測定することを特徴とする。
(6)上記塗膜がファンデーションであることを特徴とする。
本発明によれば、上乾き層の下に流動層が形成される塗膜の付着強さの測定にあたり、基材の表面に形成された塗膜に対して、まず、第1の錘を用いて切削刃に垂直方向の力を加えつつ、切削刃の先端が塗膜と基材との界面に到達するまで切削刃に2軸運動を行わせる第1工程と、切削刃の先端と基材の表面との接触状態を維持可能な重量の第2の錘を用いて切削刃に垂直方向の力を加えつつ、切削刃を水平移動させ1軸運動を行う第2工程とを有することから、第1工程によって基材の表面に到達した切削刃は、基材の表面(界面)から浮き上がることなく第2工程で水平移動する。そのため、第2工程で測定される水平力が、塗膜の基材表面への付着の強さを示すことになり、塗膜の付着強さを直接に測定することができる。
特に、この第2工程において、切削刃に垂直方向の力を加える第2の錘として、切削刃の先端と基材の表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の錘(臨界垂直荷重)を使用することで、切削刃と基材とが接触することによって生じる摩擦の影響を極小化することができ、塗膜の付着強さを正確に測定することができる。
本発明に係る塗膜の付着強さの測定に使用する測定装置の一例を示す正面図である。 基材に被検体であるファンデーションを塗布した状態の一例を示す斜視図である。 同被検体に対する切削刃の切込み深さと水平力の関係の一例を示すグラフである。 同被検体に対する切削刃の切込み深さと水平力の関係の他の一例を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
図1は本発明に係る塗膜の付着強さの測定に使用する測定装置1の概略構成を示している。測定装置1は、切削刃100が相対的に水平方向と垂直方向の2軸運動が可能な構造を有し、切削刃100に作用させる垂直方向の力が錘12の重量によって設定され、かつ、切削刃100に作用する水平力を測定する水平力測定手段4を備えている。
より詳細には、この測定装置1は、ベース2と、ベース2に設けられる支柱部3と、切削刃100に作用する水平方向の荷重を測定する水平力測定手段4と、支柱部3揺動可能に支持されたアーム部5と、切削刃100を着脱自在に保持する工具保持部6と、切削刃100に垂直方向の荷重を加える錘12を載置する載置台7と、被検体Wを保持するチャック部8と、被検体Wと切削刃100の先端(刃先)との接触状態を調節するための接触角度調節部9と、被検体Wを切削刃100に対して水平方向に移動させる水平駆動機構部10と、制御部11とを主要部として構成される。
ベース2は、水平な盤面を有する装置の基台であって、この盤面上に支柱部3、水平駆動機構部10などが装置される。本実施形態では、このベース2は、装置支持台13の上に固定されている。
支柱部3は、ベース2の盤面上に垂直に設けられた柱状の部材である。支柱部3の上端部には、アーム部5に備えられた支点ブレード14と係合することによってアーム部5を揺動可能に支持するブレード受部15が設けられており、このブレード受部15がアーム部5の揺動支点を構成するようになっている。具体的には、ブレード受部15の上端面には支点ブレード14の刃先部分と篏合するブレード支持溝16が形成されており、このブレード支持溝16内に支点ブレード14の刃先部分が収容される構造となっている。
また、支柱部3には、ブレード受部15の高さ位置を調節する昇降ステージ17が備えられている。昇降ステージ17はブレード受部15の高さ位置を上下(垂直方向)に調節可能な構造を備えており、この昇降ステージ17の高さ位置を調節することによって、後述する水平力測定手段4の高さ位置、さらには、切削刃100の先端の高さ位置を調節設できるようになっている。
水平力測定手段4は、切削刃100に作用する水平方向の力(水平力)を電気信号に変換する測定装置(たとえば、ロードセル)で構成されており、支柱部3に上下方向に移動可能に連結されいる。本実施形態では、水平力測定手段4の一端(背面側の下部)がスライダ18を介して支柱部3と連結されており、このスライダ18によって測定部4が上下(垂直方向)に自由移動できるように構成されている。なお、水平力測定手段4は制御部11と電気的に接続されており、水平力測定手段4による測定結果は制御部11に入力されるようになっている。
アーム部5は、上記ブレード受部15(支点ブレード14)を揺動支点とする天秤機構において、水平力測定手段4を吊り下げるための天秤棒となる部材であって、一端にバランス調整用の調整錘19が備えられるとともに、他端に水平力測定手段4を吊り下げるための吊り下げ部20が備えられている。
アーム部5には、アーム部5を水平に調整するアーム部水平調整機構30が備えられている。アーム部水平調整機構30は、水平状態を保つように配置された水平調整バー29を上下方向に移動させるマイクロメータ28と、支点ブレード14を挟んだ左右等距離の位置(図示例では2カ所)に上方からアーム部5に当接されるアーム部水平調整バー29とを主要部として備えており、マイクロメータ28を操作してアーム部水平調整バー29をアーム部5に軽く押し付けることによって、アーム部5を強制的に水平状態にすることができるようになっている。なお、後述する変位センサ25のゼロ点合わせ、すなわち、変位センサ25の上下位置の調整は、このアーム部水平調整機構30によってアーム部5を強制的に水平状態に保った状態で行われる。
調整錘19は、吊り下げ部20に水平力測定手段4を吊り下げた状態でアーム部5のバランスをとるための錘であって、本実施形態では、スライド機構50によって左右(水平)にスライドできるように調整錘19がアーム部5の一端に装着されており、支点ブレード14から調整錘19までの距離を変更可能とすることで、アーム部5のバランスをとるように構成されている。
吊り下げ部20は、アーム部5の他端に水平力測定手段4を着脱自在に取り付けるための部品であって、本実施形態では、この吊り下げ部20として金属製のリングを鎖状に連結したものが用いられており、その一端がアーム部5の他端に連結されるとともに、他端が水平力測定手段4の上端に連結され、これにより、水平力測定手段4がアーム部5に吊り下げられる構造となっている。
そして、アーム部5のほぼ中央には、アーム部5を天秤棒として機能させる揺動支点を構成する支点ブレード14が備えられており、この支点ブレード14の刃先部分がブレード受部15のブレード支持溝16によって支持されている。
工具保持部6は、切削刃100を着脱自在に保持するためのクランプ装置であって、図1に示すように、水平力測定手段4の支柱部3と対面する面とは反対側の面に、切削刃100を下向きに保持するように設けられている。ここで、工具保持部6が設けられる水平力測定手段4は、上述したように、アーム部5の吊り下げ部20に吊り下げられ、かつ、スライダ18によって上下移動できるように支柱部3に連結されていることから、工具保持部6の高さ位置は、水平力測定手段4の上下位置を調節することによって調節できるようになっている。
なお、これに関連して、本実施形態の測定装置1では、切削刃100の垂直方向の変位(垂直変位)を測定する垂直変位測定手段25(たとえば、静電容量変位計やレーザ変位計などナノオーダーで変位量測定が可能な測定装置)が備えられており、垂直変位測定手段の測定結果も制御部11に入力されるようになっている。26は、変位センサ25の上下位置を調節するための変位センサ位置調整機構を示しており、本実施形態では、この変位センサ位置調整機構26は支柱部3に取り付けられ、センサ位置調整機構26を調節することによって、変位センサ25の上下位置を調整できるようになっている。
切削刃100は、切刃稜が超硬材料、たとえば、超硬合金や超硬ダイヤモンドなどで形成されたものが好適に使用される。後述するように、本実施形態では、ファンデーションを被検体Wとした水平力の測定を行うので、先端Rが500nm~7μmの切削刃100が好適に用いられる。なお、後述する図3、図4に示した水平力の測定では、先端Rが約5μmのCBN(Cubic Boron Nitride)製の切削刃を用いた。
載置台7は、切削刃100に加える垂直方向の力を調節する錘12を載置するためのスペースであって、工具保持部6の上部に設けられており、この載置台7に載置された錘12の重量が垂直方向の荷重として切削刃100に作用するようになっている。したがって、切削刃100に加える垂直方向の力は、載置台7に載置する錘12の重量を調節することによって自由(任意)に設定できるようになっている。
チャック部8は、被検体Wを着脱可能に保持するチャック装置であって、工具保持部6の下方位置に配置される。そのため、工具保持部6の高さ位置を調節することで、切削刃100の先端を被検体Wに作用させることができるようになっている。なお、本実施形態では、このチャック部8として被検体Wを吸着保持するバキュームベースを採用しているが、被検体Wを着脱可能に保持できる構造であればバキュームベース以外のチャック機構(たとえば、メカニカル式のチャック装置や静電チャックなど)を採用してもよい。
接触角度調節部9は、チャック部8に保持された被検体Wと切削刃100の刃先との接触状態を調節するために、チャック部8の角度を微調節する機構であって、本実施形態ではチャック部8の下部に配置されたゴニオステージで構成されている。このゴニオステージを備えることにより、本実施形態に示す測定装置1では、被検体Wの表面を切削刃100の切刃稜と平行に配置して被検体Wと切削刃100とを隙間なく密接させたり、あるいは切削刃100に対して被検体Wを所定の傾きをもって当接させたりすることができるようになっている。
なお、本実施形態に示す測定装置1では、接触角度調節部9による切削刃と被検体Wの位置合わせにあたり、切削刃の背面側からバックライト24を切刃稜(切削刃の先端)に照射し、隙間光を前方に配置したカメラ31で観察することによって、切削刃と被検体Wの位置合わせができるようになっている。
水平駆動機構部10は、チャック部8に保持された被検体Wを切削刃100に対して相対的に水平方向に移動させるための機構であって、本実施形態では、支柱部3に向かって前進後退移動可能な水平移動ステージ21と、ボールねじなどの駆動連結機構23を介して水平移動ステージ21と駆動連結された駆動モータ22とを主要部として構成されている。なお、後述する図3、図4に示した水平力の測定では、水平移動ステージ21を0.5μm/sで水平移動させながら水平力の測定を行った。ちなみに、この水平方向の移動速度を0.01μm/s程度まで遅くすると、切削刃100としてCBNより鋭利なダイヤモンド刃を用いても基材Bに切り込むことなく水平力の測定が行えるようになる。
具体的には、水平移動ステージ21はベース2の盤面上に配置されており、この水平移動ステージ21の上に接触角度調節部9およびチャック部8が配置される構造となっている。駆動モータ22は、たとえばステッピングモータで構成され、後述する制御部11と電気的に接続されて、制御部11の制御によって水平移動ステージ21が支柱部3に向かって前進後退移動可能になっている。
制御部11は、上述した駆動モータ22の制御や、水平力測定手段4および垂直変位測定手段の測定結果のデータ処理などを行う装置であって、たとえば、パーソナルコンピュータで構成される。そのため、このパーソナルコンピュータには、少なくとも駆動モータ22の制御用ソフトウェアと測定結果のデータ処理用のソフトウェアとが備えられている。
このように構成された測定装置1では、切削刃100に加える垂直方向の力に応じた重量の錘12を載置台7に載せるとともに水平駆動機構部10を駆動して被検体Wを水平移動させることにより、切削刃100による被検体Wへの切込みが開始される。そして、切込み時に切削刃100に加えらえる水平方向の力(水平力)が水平力測定手段4で測定される一方、切削刃100の切込みの深さが垂直変位測定手段によって測定されるようになっている。
次に、測定装置1を用いたファンデーションの付着強さの測定について説明する。
ファンデーションは、肌に塗布すると、表面が乾き被膜化して上乾き層を形成するとともに、その下に油分等の基剤などで構成される流動層が形成される。
このように上乾き層と流動層からなる塗膜に対して、当初出願人は、一般的な塗膜に対する付着強さの測定、つまり、切削刃100による切り込みを行いつつ切削刃100に作用する水平力を測定したところ、切削刃100に作用する水平力は、切込み開始によって水平力が増加する第1段階と、水平力の増加が止まって水平力が増加せずほぼ横ばいとなる第2段階と、横ばい状態にあった水平力が再び増加に転ずる第3段階の順で遷移することを見出した。
そこでこの水平力の遷移を切削刃100の切込み深さなどを加味して詳しく検証したところ、上記第1段階は切削刃100が上乾き層に切り込んでいる途中の段階、第2段階は切削刃100の先端が上乾き層を通過して流動層に到達した段階、第3段階は切削刃100の先端が基材Bの表面に到達して基材表面との間で摩擦が生じている段階に相当することが判明した。
この第3段階にあるときに切削刃100に作用する水平力の数値は、塗膜の付着力と基材Bとの摩擦力の2つが合わさった数値であることから、切削刃100にかかる垂直荷重(垂直方向の力)を最小限の重量の錘(臨界垂直荷重)に下げ、切削刃100の先端と基材Bの表面との間で生じる摩擦を最小限にすることによって、ファンデーションの基材Bへの付着強さが測定できると出願人は考え、以下のような実験を行った。
まず、被検体Wとなるファンデーションとして2種類のリキッドタイプのファンデーションを用意した。各ファンデーションは、図2に示すように、表面が平らかな平面を呈するアクリル製の基材Bに塗布した。より詳細には、図3に示した実験では、一方のファンデーションを基材B上に6μmの厚さで塗布したものを使用し、図4に示した実験では他方のファンデーションを基材B上に4μmの厚さで塗布したものを使用し、各実験につきそれぞれ複数回(いずれも(a)と(b)の2回ずつ)の水平力の測定を行った。
ここで、水平力の測定にあたり、切削刃100でファンデーションを切削するときには、ファンデーションの表面と切削刃100の先端(切刃稜)を平行な状態にして切削をしなければならないところ、ファンデーションの表面には凹凸があるため、ファンデーションの表面で切削刃100の刃先合わせができない。そのため、本実施形態では、切削に先立って、アクリル製の基材Bのファンデーションが塗布されていない部分で刃先合わせを行ってから、被検体Wを水平移動させてファンデーション上に切削刃100を配置させるとともに、切削刃100を表面に触れる程度にまで近づけ、その後に切削を行うようにした。このように、基材Bの平らな表面で刃先合わせをしておくことで、刃先と基材Bが平行な状態で切削が行えることになり、結果的にファンデーションを綺麗に掻き取ることができるようになる。
A:図3の実験例:
はじめに載置台7に第1の錘(荷重)として7gの錘12を載置し(切削刃100に7gのに垂直方向の力を加え)、この状態で切削刃100の先端がファンデーションの流動層を通過し、基材Bの表面に到達するまで切削刃100に2軸運動を行わせる(以下、「第1工程」と称することがある)。
ここで、第1の錘の重量は、少なくとも、2軸運動を行う切削刃100がファンデーションの上乾き層を切削して流動層に切り込むことができる重量(換言すれば、切削刃100の2軸運動を継続することにより、上述した第1段階から第3段階まで遷移できる重量)が選択される。
具体的には、第1の錘の重量は、被検体Wとなるファンデーションの成分やファンデーションに含まれる顔料の大きさなどに応じて選択される。この重量が軽すぎると、切削刃100が基材Bの表面まで到達せず、その結果、基材Bの表面にファンデーションが残り、基材Bと切削刃100の摩擦による水平力の上昇(第3段階)は起きない。反対に、重すぎると、切削刃100が基材Bに切り込んでしまう。そのため、第1の錘は軽すぎたり重すぎたりしないように、被検体Wの態様に応じて適切な重量を選択する必要がある。
なお、第1工程を実施するにあたり、ファンデーションの表面に上乾き層が形成されていない、または、上乾き層の乾燥が不十分で上乾き層が柔らかい場合には、第1工程によって切削刃100が基材Bの表面に到達してしまう。そのため、切削刃100に作用する水平力を監視したり、カメラ31により切削刃100の様子を監視することにより、上乾き層が形成されているか否かも容易に確認することができる。
図3に示す2回の実験では、いずれも第1工程によって切削刃100に作用する水平力が第1段階として25~30mN程度まで上昇した後、第2段階として一旦水平力が横ばい状態を維持し、その後第3段階として切削刃100と基材Bの表面の摩擦により再び増加に転じた。
そして、第3段階として水平力が上昇している状態をしばらく継続、つまり、切削刃100の先端が基材Bの表面を水平移動しながらファンデーションを掻きとる状態をしばらく継続させる。この時に切削刃100に作用する水平力は摩擦力と付着力とが合わさった数値であるため、次の段階として、摩擦力を省くために、切削刃100の相対的な水平移動を一旦停止させ、停止状態で載置台7に載置する錘を第1の錘から第2の錘(荷重)である1gの錘12に載せ替えて、再び切削刃100を水平移動させ、このときに切削刃100に作用する水平力を測定する(以下、「第2工程」と称することがある)。
ここで、切削刃100による切込みが第3段階に遷移したか否か(さらには、第1工程から第2工程に切り替えるタイミング)は、切削刃100に作用する水平力の変化または切削刃100の垂直変位量を観察することにより検知することができる(つまり、切削刃100に作用する水平力が横ばい状態から上昇に転ずることで第3段階に遷移したと判断できる)。また、この第3段階をしばらく継続するようにしているのは、切削刃100の先端がファンデーションの流動層を通過し、基材Bの表面に確実に到達し、切削刃100の先端(切刃稜)と基材Bの表面とを密着させるためである。
そして、この第2工程で使用する第2の錘の重量は、第1の錘によって界面に密着している切削刃100の先端と基材Bの表面との接触状態を維持できる最小限の重量、つまり、切削刃100を水平移動させても切削刃100が浮き上がらない範囲で可及的に軽い重量を選択する。
なお、この第2の錘の重量は、ファンデーションの成分や含まれる顔料の種類など被検体Wの内容に応じて適宜設定される。すなわち、この第2の錘は、切削刃100と基材Bとの摩擦による影響を最小限にするためにできる限り軽い(低荷重)であることが必要であるが、軽すぎると水平移動時に切削刃100が浮き上がってしまう一方、重すぎると摩擦力による影響が大きくなる、あるいは、基材Bに切り込んでしまうので、この第2の錘の重量も適切な重量を選択する必要がある。
このように、錘12の重量を調節することで、切削刃100の先端と基材Bの表面との間にはほとんど摩擦(摩擦抵抗)が生じないようになるので、このときに切削刃100に作用する水平力は、切削刃100と基材Bとの摩擦分を最小限にしたファンデーションの付着に伴う水平力、つまり、ファンデーションの付着強さということになる。このことは、図3に示す2回の実験を通じてほぼ同じ測定結果(図示例では20mN程度)が得られたことからもわかる。
なお、この第2工程での水平力の測定が正しく行われたか否か、換言すれば、切削刃100がファンデーションを正しく掻きとった(ファンデーションが基材Bの表面に残らず、かつ。基材Bに切り込んでいない)か否かは、第2工程後に基材Bの表面を顕微鏡などを用いて確認することができるので、切削刃100に作用する水平力を正確に測定することができる。
B:図4の実験:
図4に示す実験では、まず載置台7に第1の錘として5gの錘12を載置し、この状態で切削刃100の先端が基材Bの表面に到達するまで切削刃100に2軸運動を行わせた(第1工程)。なお、このときの第1の錘の重量も図3の実験と同様に、2軸運動を行う切削刃100がファンデーションの上乾き層を切削して流動層に切り込むことができる重量とされ、この実験では5gの錘12を用いた。
そして、この実験では、この第1工程によって切削刃100に作用する水平力が第1段階として10~15mN程度まで上昇した後、第2段階として一旦水平力が横ばい状態を維持し、その後第3段階として再び上昇に転じた。
図4の実験でも上記同様に第3段階として水平力が上昇している状態をしばらく継続させた後、載置台7に載置する錘を第1の錘から第2の錘(切削刃100の先端と基材Bの表面との接触状態を維持できる最小限の重量の錘)に載せ替えて、切削刃100を水平移動させ、このときに切削刃100に作用する水平力を測定した(第2工程)。この図4の実験では、図3の実験とは被検体Wが相違するため、第2の錘として1.5gの錘12を用いた。
図4の実験でも第2工程の測定結果は、図4(a)および(b)に示す通り、2回の実験を通じてほぼ同じ測定結果(図示例では10~15mN程度)が得られ、この場合もファンデーションの付着強さを測定することができた。
このように、本発明によれば、上乾き層の下に流動層が形成される塗膜の付着強さの測定にあたり、基材Bの表面に形成された塗膜に対して、まず、第1の錘を用いて切削刃100に垂直方向の力を加えつつ、切削刃100の先端が基材Bの表面に到達するまで切削刃100に2軸運動を行わせる第1工程と、切削刃100の先端と基材Bの表面との接触状態を維持可能な重量の第2の錘を用いて切削刃100に垂直方向の力を加えつつ、切削刃100を水平移動させ1軸運動を行う第2工程とを有することから、第1工程によって基材Bの表面に到達した切削刃100は、基材Bの表面(界面)から浮き上がることなく第2工程で水平移動するので、この第2工程で測定される水平力を、塗膜の基材Bへの付着の強さとみることができ、塗膜の付着強さを直接的に測定することができるようになる。
特に、この第2工程において、切削刃100に垂直方向の力を加える第2の錘として、切削刃100の先端と基材Bの表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の錘を使用することで、切削刃100と基材Bとの間に生じる摩擦の影響を極小化することができ、塗膜の付着強さを正確に測定することができる。
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
たとえば、上述した実施形態では、切削刃100による被検体Wへの切込みにあたり、被検体W側を水平移動させる場合を示したが、切削刃100は相対的に水平方向と垂直方向の2軸運動が可能な構造であればよく、たとえば、切削刃100側を水平移動させる構造を採用してもよい。さらに付言すれば、本発明に係る塗膜の付着強さの測定方法において使用する測定装置1は、切削刃100が相対的に水平方向と垂直方向の2軸運動が可能な構造を有し、切削刃100に作用させる垂直方向の力が錘の重量によって設定され、かつ、切削刃100に作用する水平力を測定する水平力測定手段4を備えたものであれば、測定装置1の詳細な構造は適宜変更可能である。
また、上述した実施形態では、測定装置1が切削刃100の切込み深さを測定する垂直変位測定手段を備える場合を示したが、垂直変位測定手段を省略することも可能である。本実施形態に示すように測定装置1が垂直変位測定手段を備える場合、たとえば、この垂直変位測定手段の測定結果を用いて切削刃100による切込みが上記第3段階に遷移したか否かを判定することも可能になる。
さらに、上述した実施形態では、被検体Wとしてファンデーションを用いた場合を示したが、本発明に係る塗膜の付着強さの測定方法は、上乾き層の下に流動層が形成される塗膜であればファンデーション以外の塗膜(たとえば、塗料や糊、接着剤など)の付着強さの測定にも適用可能である。
なお、本発明に係る塗膜の付着強さの測定方法は、たとえば、被検体Wとなる塗膜を基材Bに形成させてからの経過時間を変えながら第1工程と第2工程を複数回実施することにより、塗膜の付着力の経時的な変化を測定することができる。
また、上述した実施形態では、測定工程のうちの第2工程で、錘12を第1の錘から第2の錘に載せ替える場合を示したが、第1の錘から第2の錘への重量変更にあたり、載置台7に載置された錘12の重量を徐々に下げていくことも可能である。たとえば、錘12の重量を第1の錘である7gから第2の錘である1gに変更するにあたり、7g、5g、3g、2g、1gのように少しずつ下げていくことも可能である。なお、このように錘12の重量を少しずつ下げていく場合には、荷重を下げてから水平力が同じ数値程度を維持するまで少しそのまま水平移動スステージ21を移動させ、水平力の数値が維持しているようであれば、次の低い荷重に変更する。そして、この作業を繰り返しながら、切削刃100の先端と基材Bの表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の錘(臨界垂直荷重)まで下げることにより、第1の錘から第2の錘への重量変更を行うことができる。
また、上述した実施形態では、切削刃100に作用する垂直荷重を錘12の重量によって付与する場合を示したが、垂直荷重の設定は錘12以外の方法(たとえば、圧電素子などで垂直荷重の設定変更を可能にするなど)を採用してもよい。なお、垂直荷重を圧電素子などで自由に変更できるように構成した場合、錘12を使った垂直荷重を設定するときのように水平移動を一旦停止させることなく垂直荷重を変更することができ、水平移動の再開時に発生する静止摩擦を考慮せずに塗膜の付着強さを測定することができる。
1 状態測定装置
2 ベース
3 支柱部
4 水平力測定手段
5 アーム部
6 工具保持部
7 載置台
8 チャック部
9 接触角度調節部
10 水平駆動機構部
11 制御部
12 錘
14 支点ブレード
15 ブレード受部
17 昇降ステージ
18 スライダ
19 調整錘
20 吊り下げ部
21 水平移動ステージ
22 駆動モータ
100 切削刃
B 基材
W 被検体

Claims (7)

  1. 上乾き層の下に流動層が形成される塗膜の付着強さの測定方法であって、
    平らな表面を有する基材の表面に前記塗膜を形成させる前工程と、
    切削刃が相対的に水平方向と垂直方向の2軸運動が可能な構造を有し、前記切削刃に作用させる垂直方向の力を任意に設定でき、かつ、前記切削刃に作用する水平力を測定する水平力測定手段を備えた測定装置を用い、前記塗膜に前記切削刃を切り込ませながら前記水平力を測定する測定工程とからなり、
    前記測定工程は、
    第1の荷重で前記切削刃に垂直方向の力を加えつつ、前記切削刃の先端が前記基材の表面に到達するまで前記切削刃に2軸運動を行わせる第1工程と、
    この第1工程に続いて、前記切削刃の先端と前記基材の表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の第2の荷重で前記切削刃に垂直方向の力を加えつつ、前記切削刃を水平移動させる第2工程とを有してなり、
    前記第1工程において、前記水平力測定手段の測定結果が、前記切削刃の切込み開始によって水平力が増加する第1段階、水平力の増加が止まってほぼ横ばいとなる第2段階、横ばい状態にあった水平力が再び増加に転ずる第3段階の順で遷移した後に前記第2工程に切り替える
    ことを特徴とする塗膜の付着強さの測定方法。
  2. 前記第2工程への切り替えは、前記第3段階に遷移後において水平力が上昇している状態がしばらく継続した後に実行することを特徴とする請求項1に記載の塗膜の付着強さの測定方法。
  3. 前記第1の荷重は、少なくとも、2軸運動を行う前記切削刃が前記塗膜の上乾き層を切削して流動層に切り込むことができる重量の錘によって付与されることを特徴とする請求項1または2に記載の塗膜の付着強さの測定方法。
  4. 前記第2の荷重は、前記切削刃の先端と前記基材の表面との接触状態を維持可能な最小限の重量の錘によって付与されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の塗膜の付着強さの測定方法。
  5. 前記測定装置は、前記切削刃の垂直変位を測定する垂直変位測定手段を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の塗膜の付着強さの測定方法。
  6. 前記前工程からの経過時間を変えて前記測定工程を実施することにより、前記塗膜の上乾き層の経時変化を測定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の塗膜の付着強さの測定方法。
  7. 前記塗膜がファンデーションであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の塗膜の付着強さの測定方法。
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