この発明の一例としての第一実施形態に係るキャビネット(以下、「このキャビネット」という。)を添付図面の図1~9に基づいて説明する。
図1~図3に示すこのキャビネットは、扉100と、筐体110と、扉100と筐体110とを連結するヒンジと、を備える。
筐体110は、前面に入口を有する箱体であり、例えば、電気電子機器を収納するために使用される。扉100は、筐体110の入口を前方から覆う所定の閉扉位置と、その閉扉位置から所定角度まで開けるように筐体110に対して支持された開閉体である。扉100は、筐体110の上下方向に延びる中心軸周りに開閉可能になっている。なお、図2、図3では、前面に入口を有する筐体110のうち、その入口を形成する前面枠部111における左右一方側の端部と、これに連続する側板部112とを部分的に抜粋して示し、また、その入口を前方から覆う扉100のうち、扉100の前面部101における左右一方側の端部と、これに連続する小口部102とを部分的に抜粋して示している。扉100を筐体110に対して所定の閉扉位置に保つための機構、例えばラッチ機構等の図示は省略する。
このヒンジは、扉100を筐体110に対して開閉自在に支持するものである。このヒンジは、扉100に取り付けられる扉側羽根10と、筐体110に取り付けられる枠側羽根20と、扉側羽根10と枠側羽根20の相対的な回動の中心軸となる軸部31を有するピン30と、ピン30の軸部31を軸方向に付勢する弾性部材40と、を備える。ここで、軸方向は、前述の中心軸に沿った方向のことをいい、図示例において扉100及び筐体110を基準とした前述の上下方向に一致している。
扉側羽根10は、図1、図4に示すように、扉側取付板部11と、扉側取付板部11の左右一方側に連続する軸筒部12とを繋ぎ目なく一体に有する。扉側取付板部11は、平面状に形成された取付面11aを有する。また、取付面11aに交差する複数の穴部11bが扉側取付板部11に形成されている。図2に示すように、扉側羽根10の取付面11aと扉100の前面部101とを複数のねじ部材51で締結することにより、扉側羽根10が扉100に取り付けられる。
扉側羽根10の軸筒部12は、図1、図4に示すように、ピン30の軸部31の一端部を軸方向に挿入可能なピン穴を形成しており、その内周において軸部31の一端部を軸方向に対して直角な方向(以下、軸径方向という。)に支持する。扉側羽根10の軸筒部12の軸方向長さは、扉側取付板部11の軸方向長さよりも短く設けられている。
枠側羽根20は、枠側取付板部21と、枠側取付板部21の左右一方側から前方に延びる側板部22と、側板部22の前方側に連続する軸筒部23とを繋ぎ目なく一体に有する。枠側取付板部21と側板部22は、互いに90°に交差するアングル板状に設けられている。枠側取付板部21は、平面状に形成された取付面21aを有する。また、取付面21aに交差する複数の穴部21bが枠側取付板部21に形成されている。図2に示すように、枠側羽根20の取付面21aと筐体110の前面枠部111とを複数のねじ部材52で締結することにより、枠側羽根20が筐体110に取り付けられる。
側板部22は、扉100の小口部102に対して左右一方側に位置する。枠側羽根20の軸筒部23は、ピン30の軸部31の他端部を軸方向に挿入可能な穴を形成しており、その内周において軸部31の他端部を軸径方向に支持する。枠側羽根20の軸筒部23の軸方向長さは、側板部22の軸方向長さよりも短く設けられている。
ピン30は、図4、図5に示すように、枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12に対して軸方向に所定ストロークだけ往復移動可能に配置されている。弾性部材40は、ピン30の軸部31が枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12間に亘った接続状態(以下、単に「接続状態」という。)を維持する方向へピン30を付勢する。
ピン30の軸部31は、図2に示すように、扉100の前面部101よりも前方に配置されている。扉100が所定の閉扉位置にあるとき、枠側取付板部21と扉側取付板部11が平行かつ左右他方側に向く。扉100を所定の閉扉位置から180°まで開くことが可能になっている。扉100を180°開いたとき、図3に示すように、枠側取付板部21と扉側取付板部11が平行かつ枠側取付板部21が左右他方側に向き、扉側取付板部11が左右一方側に向く。
枠側羽根20は、筐体110の側板部112に対して左右一方側に位置する部位をもたないため、筐体110の側板部112に他の筐体(図示省略)が隙間なく隣接させることができる。このように密に筐体110が並列配置される場合でも、扉100を隣接する筐体や扉と干渉しないように180°開くことができる。
なお、枠側羽根20の軸筒部23と扉側羽根10の軸筒部12との間には、円環状のスラセ部材(図示省略)が配置されている。スラセ部材は、扉側羽根10の軸筒部12の端部に嵌合されており、その嵌合部において軸筒部12に対して回動不可な状態に規制されている。スラセ部材は、軸筒部23の対向端部を中心軸周りに円滑に摺動させるために設けられている。
また、扉100を180°を超えて開こうとしたときに扉側取付板部11の左右一方側の端部が枠側羽根20を傷つけるのを防止するため、枠側羽根20の側板部22に緩衝部材を取り付けてもよい。
弾性部材40は、図1、図4に示すように、枠側羽根20とピン30との間に配置されたコイルばねからなる。枠側羽根20の軸筒部23は、弾性部材40の軸方向の一端を受ける有底筒状になっている。弾性部材40の軸方向の他端は、段付き軸からなる軸部31の他端部に受けられている。弾性部材40は、ピン30の軸部31を枠側羽根20の軸筒部23内から扉側羽根10の軸筒部12内に向けて付勢する。
ピン30は、軸方向に対して直角な方向に軸部31から突き出た操作レバー部32を有する。軸部31は、丸棒体からなり、その軸方向長さの中間部において軸径方向に延びるピン穴部を有する。操作レバー部32は、軸部31のピン穴部に圧入されたスプリングピンからなる。
枠側羽根20の軸筒部23には、中心軸周り方向に延びかつ中心軸周り方向の一端で閉塞している係止窓部24と、係止窓部24と軸方向に対向する位置で中心軸周り方向に延びかつ中心軸周り方向の一端で閉塞している並行窓部25と、係止窓部24と並行窓部25間に亘る交差窓部26とが形成されている。これら係止窓部24、並行窓部25及び交差窓部26が一連のスリット状になっており、枠側羽根20の軸筒部23の内外周間を中心軸と直角な方向に貫通する空間を形成している。これら係止窓部24、並行窓部25及び交差窓部26は、操作レバー部32を所定経路で移動、停止させるのに必要な空間の形成及び案内を行うための部位である。
係止窓部24は、図4に示すように、接続状態にあるとき、ピン30の操作レバー部32の軸方向進退動(同図における上方向動及び下方向動)を規制し、かつ操作レバー部32の中心軸周り方向の周方向一端側への回転(図4(a)における時計回り)を規制可能な切欠き状部からなる。
係止窓部24のうち、操作レバー部32の軸方向退避動を規制する係合縁部24aは、中心軸周り方向に交差窓部26に向かって軸方向退避動側へ傾斜している螺旋状部からなる。ピン30を軸方向退避動側へ押す大きなピン荷重が負荷されると、操作レバー部32が係合縁部24aに強く押し付けられ、係合縁部24aの傾斜によって操作レバー部32を交差窓部26に接近する方へ旋回させる分力が生成される。したがって、その操作レバー部32の旋回が規制されない限り、そのピン荷重により、操作レバー部32が係合縁部24aに沿って交差窓部26まで退避させられる。
並行窓部25は、図5(a)に示すように、ピン30が扉側羽根10の軸筒部12から完全に脱出したピン退避位置にあるとき、操作レバー部32の軸方向進退動を規制し、かつ操作レバー部32の中心軸周り方向の周方向一端側への回転を規制可能な切欠き状部からなる。
交差窓部26は、図4、図5に示すように、係止窓部24と並行窓部25間に亘る操作レバー部32の軸方向移動空間を形成する。交差窓部26は、係止窓部24と並行窓部25間で移動する操作レバー部32を軸方向に導く直動案内を行い、当該直動案内のストロークの上死点と下死点を定めるスリット部からなる。
ピン30が枠側羽根20の軸筒部23に対して軸方向に進退動可能なストロークは、前述の直動案内のストロークに一致する。操作レバー部32が弾性部材40の付勢に抗して交差窓部26の軸方向進出動側のスリット端部に突き当たっている状態又は係止窓部24に入っている状態(図4参照)にあるとき、ピン30の軸部31が枠側羽根20の軸筒部23から軸方向に突出し、扉側羽根10の軸筒部12に突入した接続状態に対応の軸方向位置にある。操作レバー部32が交差窓部26の軸方向退避動側のスリット端部に突き当たっている状態又は並行窓部25に入っている状態にあるとき、ピン30の軸部31が扉側羽根10の軸筒部12から完全に脱出したピン退避位置(枠側羽根20の軸筒部23内に没入し切った位置、図5(a)参照)にある。
このように、このキャビネットに備わるヒンジは、扉100に取り付けられる扉側羽根10と、筐体110に取り付けられる枠側羽根20と、枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12に対して軸方向に移動可能に配置されたピン30と、ピン30が枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12間に亘った接続状態を維持する方向へピン30を付勢する弾性部材40とを有し、枠側羽根20と扉側羽根10の相対的な回動の中心軸となるピン30の軸部31が、扉100のうちの扉側羽根10と締結される前面部101よりも前方に配置されており、ピン30の操作レバー部32を弾性部材40の付勢に抗して軸方向に移動させるピン移動操作によって扉側羽根10と枠側羽根20とを軸方向に対して直角な方向に分解可能なピン退避位置とし、当該ピン30を当該ピン退避位置に維持する係止状態に移行させることができるものである。
なお、扉側羽根10と枠側羽根20の素材は、特に限定されないが、枠側羽根20の形状が複雑なため、枠側羽根20を樹脂で形成することが好ましい。図示例では、扉側羽根10及び枠側羽根20が、それぞれ一体成型されている。
扉100は、図1、図6、図7に示すように、吊り元側の小口部102と前面部101との間に空間を形成する窓部103を有する。窓部103は、小口部102と前面部101を繋ぐ角部を軸方向に部分的に切欠くことで設けられている。窓部103のうち、操作レバー部32と軸径方向及び中心軸周り方向に対向する部位(図示例では前面部101を切欠いた縁部)は、操作レバー部32のピン退避位置への移動を規制するためのレバー受け部104になっている。レバー受け部104は、扉100の開閉時、枠側羽根20の軸筒部23の近傍で旋回する。
レバー受け部104は、接続状態のときの閉扉回転時に操作レバー部32を前述のピン退避位置に移動できないように規制するロック位置まで旋回する(図7参照)。係止窓部24に操作レバー部32が入っている状態でレバー受け部104がロック位置にあるとき、操作レバー部32が係止窓部24から外れて、交差窓部26に入ることはできない。一方、扉100を開くと、レバー受け部104が操作レバー部32から遠ざかるため(図1参照)、操作レバー部32を係止窓部24と並行窓部25間で移動させる手動操作を行うのに十分な開放空間が形成される。
図3に示すように扉100を開いた状態で扉100を取り外す場合、図4に示す接続状態のピン30の操作レバー部32を係止窓部24から外れるまで交差窓部26側へ旋回させてから、弾性部材40の付勢に抗して交差窓部26を軸方向退避側に移動させるピン押し操作を行うことにより、ピン30を図5(a)に示すピン退避位置にすることができる。このピン押し操作を操作レバー部32が並行窓部25と中心軸周り方向に対向する位置まで行い、操作レバー部32を並行窓部25に入れるように旋回させる操作を行えば、ピン30をピン退避位置に維持する係止状態に移行させることができる。この係止状態にある限り、操作レバー部32の軸方向進退動を並行窓部25で規制することが可能である。ここで、ピン押し操作で蓄勢した弾性部材40の付勢を利用して並行窓部25と操作レバー部32の引っ掛かりをしっかりと維持することが可能なため、操作レバー部32から指を離しても係止状態を維持することができる。したがって、図3に示す開扉状態の扉100を軸方向に対して直角な方向に取り外す作業は両手を使って行うことができる。
前述の係止状態で図5(a)に示す操作レバー部32を交差窓部26側へ旋回させる操作を行い、並行窓部25と操作レバー部32の引っ掛かりを解消して、操作レバー部32から指を離すと、弾性部材40の付勢によりピン30がピン退避位置から軸方向進出側に移動させられ、交差窓部26の軸方向進出側のスリット端部に突き合って停止させられる。したがって、扉100を筐体110に対して取り付ける場合、図3に示す扉100の向きで枠側羽根20の軸筒部23と扉側羽根10の軸筒部12が軸方向に同軸上に対向する位置で扉側羽根10の軸筒部12を枠側羽根20の軸筒部23上に載せた状態とし、この状態で係止状態にある操作レバー部32を並行窓部25から外すだけで、ピン30が扉側羽根10の軸筒部12に所定の軸方向長さに突入した接続状態になる。この後、接続状態で交差窓部26に位置するピン30の操作レバー部32を係止窓部24に入れる方へ旋回させるピン回し操作を行えば(図5(b)参照)、操作レバー部32の軸方向進退動を係止窓部24で規制することが可能である。
図1、図7に示すようにレバー受け部104は、接続状態のときの閉扉回転時に扉100の一部として中心軸周りに旋回する。図6に示すように前述のピン回し操作が適切に行われて操作レバー部32が係止窓部24に完全に入っている状態とされている場合、図1に示すレバー受け部104が閉扉回転時に操作レバー部32を押すことは起こらないが、当該操作レバー部32の交差窓部26への移動を許さないロック位置(図7において一点鎖線で描いた位置)まで旋回する。したがって、レバー受け部104は、接続状態で係止窓部24に位置する操作レバー部32を前述のピン退避位置に移動できないように規制することができる。
一方、前述のピン回し操作を忘れた場合、操作レバー部32が交差窓部26の軸方向進出動側のスリット端部に突き合っている状態(図7において実線で描いた操作レバー部32参照)に放置されたまま、図3に示す扉100が開閉されることになる。この放置状態で一度、扉100を図2に示すように閉じれば、交差窓部26に位置する操作レバー部32は、閉扉回転方向に旋回するレバー受け部104によって係止窓部24に押し入れられる(図7において一点鎖線で描いた操作レバー部32参照)。したがって、この場合も、レバー受け部104は、接続状態で係止窓部24に位置する操作レバー部32を前述のピン退避位置に移動できないように規制することができる。なお、図2、図3に示すように扉100を開閉する際、筐体110側であるピン30の操作レバー部32が扉100と共に大きく旋回することはなく、図7に示すようにレバー受け部104で操作レバー部32を係止窓部24に入れる際に操作レバー部32が少し旋回するだけであるから、この旋回時に筐体110内の配線等を操作レバー部32で傷つける虞は非常に小さい。
図1、図7に示すレバー受け部104は、扉100を閉じる都度、前述のロック位置になる。したがって、図3に示す筐体110にサーバ機器等を収め、図2に示すように扉100を閉じた使用状態では、レバー受け部104が常にロック位置にあるため、地震等の外部振動でピン30が枠側羽根20の軸筒部23に対して軸方向に振動した際、図4、図7に示す係合縁部24aとの接触で操作レバー部32が交差窓部26側へ導かれようとしても、交差窓部26に入ってピン退避位置に至ることはない。
前述のように枠側羽根20の軸筒部23と扉側羽根10の軸筒部12が軸方向に同軸上に対向する状態でピンの操作を行わず、筐体110に取り付けられた枠側羽根20の係止窓部24に操作レバー部32を入れ、軸部31を枠側羽根20の軸筒部23から突出させた状態(図5(b)も参照)で図3に示す扉100の吊り込み作業を行う場合があり得る。この場合、扉100に取り付けられた扉側羽根10の軸筒部12を軸部31に嵌めようとする際、誤って扉100で軸部31を打ってしまい、衝撃的にピン30が軸方向退避側へ押される可能性がある。扉100で軸部31が打たれた際、係止窓部24の係合縁部24aの傾斜により操作レバー部32が係止窓部24から外れるように導かれ、交差窓部26に入って軸方向退避側へ移動することが可能になるので、ピン30の変形が防止される。
なお、所定の閉扉位置にある扉100が筐体110に対してピン30の軸方向進出側へ不正に移動させられることを自由に許すと、ピン30が扉側羽根10の軸筒部12から脱出してしまい、扉100が落下してサーバ機器等を傷つけてしまう懸念がある。このような懸念を無くすため、枠側羽根20の側板部22には、図2、図8に示すように、所定の閉扉位置にある扉100を軸方向に係止することができるように突出部22aが設けられている。扉100を閉じると、突出部22aは、窓部103が形成する空間に突入し、窓部103の小口部102上の部分と軸方向に対向する状態になる。前述の不正移動の際、突出部22aが窓部103の小口部102上の部分を軸方向に係止して扉100の落下を防止することができる。
このキャビネットは、上述のようなものであって(図1~図7を適宜参照)、扉100と、筐体110と、扉100と筐体110とを連結するヒンジとを備え、このヒンジが、扉100に取り付けられた扉側羽根10と、筐体110に取り付けられた枠側羽根20と、枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12に対して軸方向に移動可能に配置されたピン30と、ピン30が枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12間に亘った接続状態を維持する方向へ当該ピン30を付勢する弾性部材40とを備え、枠側羽根20と扉側羽根10の相対的な回動の中心軸となるピン30の軸部31が、扉100の前面部101よりも前方に配置されており、扉100を開いた状態でピン30の操作レバー部32を弾性部材40の付勢に抗して軸方向に移動させるピン移動操作によって扉100を軸方向に対して直角な方向に取り外し可能なピン退避位置に移動させることができるものである。したがって、このキャビネットは、筐体110よりも前方の位置で扉100を180°以上開くことができながら、扉100を開いた状態でピン操作を行って扉100を筐体110から取り外し可能な状態にすることができる。
このキャビネットは、弾性部材40が枠側羽根20とピン30との間に配置されていることにより、ピン30及び弾性部材40が枠側羽根20に集約されているので、扉100の前面部101に対する扉側羽根10の前方側への突出量を抑えて扉側羽根10の意匠性を良くすることができる。
さらに、このキャビネットは、接続状態のときに操作レバー部32をピン退避位置に移動できないように規制するロック位置まで閉扉回転時に旋回するレバー受け部104が扉側(扉100)に設けられていることにより、扉側のレバー受け部104で操作レバー部32がピン退避位置へ移動できないように規制されるので、扉100の吊り込み作業時、ピン30を枠側羽根20の軸筒部23及び扉側羽根10の軸筒部12間に亘った接続状態にした後に操作レバー部32を用いたピン回しを要することなく地震等の外部振動で扉100が筐体110側から外れることを防止することができる。
なお、電気電子機器用のキャビネットは、収容された電子機器のパフォーマンスを低下させないために、放熱用として多数のパンチング加工が施された扉や筐体を使用することが多い。このようなキャビネットにおいては、閉扉回転後に扉が施錠されていても、ピアノ線などを加工した異物がパンチング穴に挿入され、これによってキャビネット内の操作レバー部が操作される可能性がある。仮に異物がパンチング穴から操作レバー部32に届いたとしても、施錠された扉側のレバー受け部104がロック位置にあるので、異物によってピン30がピン退避位置まで移動させられない。このため、扉及び筐体の少なくとも一方に複数のパンチング穴が形成されたキャビネットに構成する場合には、パンチング穴から挿入された異物で施錠状態の扉100が不正に外されるのを防止することも可能になる。
さらに、このキャビネットは、枠側羽根20の軸筒部23が接続状態のときに操作レバー部32の軸方向進退動を規制する係止窓部24を有し、操作レバー部32が接続状態で係止窓部24から外れた位置に停止している場合、ロック位置へ旋回するレバー受け部104によって操作レバー部32が係止窓部24へ押し入れられるように構成されていることにより、扉100の吊り込み作業で接続状態にした後に前述のピン回し操作を忘れた場合でも、一度、扉100を閉じれば、操作レバー部32を係止窓部24に入った状態に移行させることができる。したがって、何らかの外力で操作レバー部32が不意にピン退避位置へ移動することがない。また、操作レバー部32の軸方向進退動を筐体側の係止窓部24の形状だけで規制可能となり、扉側のレバー受け部104の軸方向位置精度の影響を受けないので、扉側部材の製造組立を容易にできる。
さらに、このキャビネットは、係止窓部24のうち、操作レバー部32の軸方向退避動を規制する係合縁部24aが中心軸周り方向に係止窓部24から外れる方に向かって軸方向退避動側へ傾斜していることにより、筐体110に取り付けられた枠側羽根20の係止窓部24にピン30の操作レバー部32を入れ、ピン30の軸部31を枠側羽根20の軸筒部23から突出させた状態で扉100の吊り込み作業を行う場合に誤って扉100でピン30の軸部31が打たれた際、係止窓部24の係合縁部24aの傾斜によりピン30の操作レバー部32が係止窓部24から外れるように導かれるので、ピン30の変形を防止することができる。
なお、このキャビネットでは、筐体同士が左右方向に隙間なく隣接する使用状況の場合にも対応できるようにするため、扉100の所定の閉扉位置から許容する扉100の開き角度を180°に設定した例を示したが、扉の開き角度を180°よりも大きく設定することも可能である。
また、このキャビネットでは、扉側羽根10の取付面11aを扉100の最前面部に位置する前面部101に締結する場合を例示したが、開き角度を大きくする必要がない場合は、扉側羽根を扉の最前面部に締結する必要はなく、例えば、図9に示すように、扉側羽根10と締結される前面部101を最前面部105から後退した位置に形成してもよく、これにより、扉側羽根10の最前面部105に対する前方突出をより抑制することができる。
また、このキャビネットでは扉100にレバー受け部104を設けた例を示したが、レバー受け部は、扉側つまりヒンジの中心軸周りに扉側羽根と一体で旋回する部位に設ければよく、扉側羽根に設けてもよいし、扉側羽根以外の部材(扉に固定される物)に設けてもよい。このような変更例としての第二実施形態に係るキャビネット及びヒンジの要部を図10に示す。なお、ここでは、第一実施形態からの変更点を述べるに留め、共通の構成要素に同一符号を用いる。
図10に示すキャビネットに備わるヒンジの扉側羽根10は、軸径方向に枠側羽根20の軸筒部23と対向する側端面13と、側端面13と取付面11aとの角部に形成されたレバー受け部14とを有する。扉側取付板部11と枠側羽根20の軸筒部23間の軸径方向の距離は、側端面13と軸筒部23の外周間で定められている。側端面13は、軸方向に沿った平面状になっている。レバー受け部14は、平面状の側端面13及び取付面11aの各仮想延長面と交差しない面取り状になっている。
前述の角部を成すレバー受け部14は、枠側羽根20の軸筒部23の近傍に位置するので、操作レバー部32の規制に利用することが可能である。すなわち、扉100は、閉扉回転時にレバー受け部14よりも先に操作レバー部32に当接する部位をもたない形状に変更されている。レバー受け部14は、接続状態に対応の軸方向位置にある操作レバー部32と軸径方向及び中心軸周り方向に対向する位置にあり、接続状態のときに操作レバー部32をピン退避位置に移動できないように規制するロック位置まで閉扉回転時に旋回することができる。
このように、図10に示すキャビネットは、特に、扉側羽根10が扉100の前面部101に締結される取付面11aと、軸方向に対して直角な方向に枠側羽根20の軸筒部23に対向する側端面13とを有し、レバー受け部14が取付面11aと側端面13との角部に形成されていることにより、扉100にレバー受け部を設けずに済み、また、その扉側羽根10の側端面13、取付面11aからのレバー受け部14の突出が避けられるので、扉側羽根10の形状がレバー受け部14によって複雑にならない。
また、図10に示すヒンジは、特に、扉側羽根10が接続状態のときに操作レバー部32をピン退避位置に移動できないように規制するロック位置まで閉扉回転時に旋回するレバー受け部14を有することにより、これを用いて扉100と筐体110とを連結すれば、扉100にレバー受け部を設けることなく、第一実施形態と同様の180°以上の扉開き角度、ピン操作による扉100の取り外し性、扉側羽根10の意匠性、及びピン回し操作を忘れた場合の扉外れ防止性を有するキャビネットを構築することができる。
勿論、図10に示すヒンジを用いて扉100と筐体110とを連結すれば、ピン回し操作を忘れた場合でもレバー受け部14で操作レバー部32を係止窓部24に入った状態に移行可能であって、扉側羽根10の形状がレバー受け部14によって複雑にならず、さらに扉100でピン30の軸部31が打たれた際のピン30の変形を防止可能なキャビネットを構築することができる。
なお、前述のピン回し操作を忘れた場合にレバー受け部を操作レバー部に対して軸方向退避側に位置させることで操作レバー部のピン退避位置への移動を規制することも可能だが、この場合、ロック位置でレバー受け部を操作レバー部と軸方向に対向させなければならず、その分、扉側羽根のレバー受け部を扉側取付板部から軸径方向に突出させることを要する。
上述の各実施形態では、枠側羽根20に係止窓部24を形成した例を示したが、係止窓部24を省略することも可能である。その一例としての第三実施形態を図11~図12に示す。なお、ここでは、第一実施形態からの変更点を述べるに留め、共通の構成要素に同一符号を用いる。
第三実施形態に係る枠側羽根20の軸筒部23には、第一実施形態の係止窓部24(図1も参照のこと。)が形成されておらず、中心軸周り方向に延びかつ中心軸周り方向の一端で閉塞している横窓部27と、横窓部27の中心軸周り方向の一端とは反対側の他端に交差する縦窓部28とが形成されている。横窓部27の閉塞端である一端は、扉100の開扉方向側の端に変更されている。横窓部27は、ピン30がピン退避位置にあるときに操作レバー部32の軸方向進退動と中心軸周り方向の一端側への回転を規制可能な切欠き状部からなる。縦窓部28は、操作レバー部32を軸方向に導く直動案内を行い、当該直動案内のストロークの上死点と下死点を定めるスリット部からなる。ピン30が枠側羽根20の軸筒部23に対して軸方向に進退動可能なストロークは、第一実施形態と同じく前述の直動案内のストロークに一致する。すなわち、扉100の吊り込み作業時、横窓部27から操作レバー部32を縦窓部28へ旋回させ、操作レバー部32から指を離すと、弾性部材40の付勢によりピン30がピン退避位置から縦窓部28の軸方向進出側のスリット端部に突き合って停止させられ、接続状態となる。その停止位置において操作レバー部32を旋回させるピン回しを行うことなく、吊り込み作業が完了する。
レバー受け部106は、扉100の窓部103のうち、図12に示すように操作レバー部32と軸方向に対向するロック位置まで閉扉回転時に旋回する部位(図示例では、窓部103の軸方向退避側の縁部)からなる。図11に示す接続状態のとき、扉100を開閉しても、窓部103を含む扉100等の扉側は、弾性部材40の付勢で縦窓部28のスリット端部に突き合っている操作レバー部32と接触することがない。したがって、扉100のレバー受け部106は、閉扉回転時に操作レバー部32を閉扉回転方向に押さないが、扉100の閉扉の都度、操作レバー部32の軸方向退避側と対向するようにロック位置まで旋回する。このため、扉100が所定の閉扉位置にある閉扉状態のときは勿論、操作レバー部32とレバー受け部106間でロック位置が成立する開き角度にある中途閉扉状態のときは、扉100のレバー受け部106の規制により、地震等でピン30が勝手にピン退避位置へ逃げることはできない。
このように、第三実施形態に係るキャビネットは、操作レバー部32と軸方向に対向するロック位置まで閉扉回転時に旋回するレバー受け部106が扉側(扉100)に設けられているので、枠側羽根20の軸筒部23に第一実施形態のような係止窓部を形成せずに済み、ピン回し操作を無くすことができる。なお、第三実施形態では、レバー受け部106を扉100に形成した例を示したが、これを枠側羽根に形成することも可能である。その一例としての第四実施形態を図13~図16に示す。なお、ここでは、第三実施形態からの変更点を述べるに留め、共通の構成要素に同一符号を用いる。
第四実施形態に係る扉側羽根10は、扉100の窓部103が形成する空間と軸径方向に重なる位置にレバー受け部15を有する。レバー受け部15は、扉側羽根10の取付面11aと側端面13との角部に形成された切欠き状部の軸方向退避側の端面からなる。レバー受け部15は、窓部103の軸方向退避側の縁部(下端縁部)よりも軸方向進出側に高い位置で軸径方向に延びる平坦面状になっている。窓部103と重なる位置にレバー受け部15を配置するために扉側羽根10の取付面11aと側端面13がそれぞれ延長されている。取付面11aは、枠側羽根20の軸筒部23に接近する側へ延長され、側端面13は、枠側羽根20の軸筒部23と干渉しないように軸筒部23に沿って湾曲状に延長されている。
図13に示す接続状態のとき、扉100を開閉しても、レバー受け部15を含む扉側羽根10等の扉側は、弾性部材40の付勢で縦窓部28のスリット端部に突き合っている操作レバー部32と接触することがない。したがって、扉側羽根10のレバー受け部15は、閉扉回転時に操作レバー部32を閉扉回転方向に押さないが、扉100の閉扉の都度、窓部103の軸方向退避側の縁部(下端縁部)よりも軸方向進出側に高い位置で操作レバー部32の軸方向退避側と対向するようにロック位置まで旋回する。このため、扉100が前述の閉扉状態にあるとき、及び操作レバー部32とレバー受け部15間でロック位置が成立する開き角度にある中途閉扉状態にあるときは、扉側羽根10のレバー受け部15の規制により、地震等でピン30が勝手にピン退避位置へ逃げることはできない。
このように、第四実施形態に係るキャビネットは、操作レバー部32と軸方向に対向するロック位置まで閉扉回転時に旋回するレバー受け部15が扉側羽根10に設けられているので、枠側羽根20の軸筒部23に第一実施形態のような係止窓部を形成せずに済み、ピン回し操作を無くすことができ、また、レバー受け部15が取付面11aと側端面13との角部に形成されているので、扉100にレバー受け部を設けずに済み、その扉側羽根10の側端面13、取付面11aからのレバー受け部15の突出を避けることができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
今回開示した実施形態において、扉の小口部と前面部を繋ぐ角部を軸方向に部分的に切欠くことで窓部を設けた例を示したが、この発明では特許文献1と異なり、扉の一方の側から他方の側に操作レバー部を貫通突出させることを必要としないから、例えば、第四実施形態において、扉の小口部102と前面部101を繋ぐ角部を切り欠いて窓部103を設けることに替え、当該角部を凹ませて変形させ、扉100の開閉時に操作レバー部32や突出部22aに干渉しない形態としてもよい。他の実施形態も同様である。