以下、端子挿入装置の一実施形態について説明する。図1は、一実施形態に係る端子挿入装置1を示す斜視図である。本実施形態の端子挿入装置1は、一例として、車両等に搭載されるワイヤーハーネスを製造するための装置の一つであり、端子付き電線2の端子21を、ハウジング3のキャビティ4に挿入するための装置である。本実施形態では、端子挿入装置1は、フレーム10上で所定の保持具14に保持された複数個の端子21のうち、一の端子21と他の端子21とを、独立して把持および移動させる工程に用いられる。また、端子挿入装置1は、把持および移動させた各端子21を、ハウジング3に複数設けられたキャビティ4のうち対応するキャビティ4の各々にまとめて挿入する工程に用いられる。
なお、図において、端子21の挿脱方向(挿入方向)を「前後方向X」と記し、前後方向Xの一方を「前側X1」、他方を「後側X2」と記す。また、前後方向Xに直交する方向の一つを「左右方向Y」と記し、左右方向Yの一方を「左側Y1」、他方を「右側Y2」と記す。また、端子挿入装置1の高さ方向を「上下方向Z」と記し、上下方向Zの一方を「上側Z1」、他方を「下側Z2」と記す。これらの定義はあくまでも説明の便宜のためのものであり、必ずしも端子挿入装置1の実際の使用状態における前後、左右、上下と一致するとは限らず、各方向を限定するものではない。以下、端子挿入装置1に把持される対象となる端子付き電線2と、端子付き電線2の挿入先であるハウジング3と、について説明した後、端子挿入装置1の各部位について説明を行う。
図2に示すように、端子付き電線2は、電線20と、端子21と、を備えている。なお、本実施形態の端子付き電線2には、複数の端子付き電線2を撚り合わせて形成されたツイスト線も含まれる。電線20は、芯線22と芯線22の外周を覆う被覆23とで構成されている。電線20の端末には芯線22が露出しており(図13にのみ図示)、この端末に端子21が接続されている。なお、電線20において端子21が接続される部分およびその近傍を、本実施形態では、電線20端末部とする。端子21は、例えばメス端子であり、後側X2から順に、被覆加締め部24と、芯線加締め部25と、電気接続部26と、を備えている。
被覆加締め部24は、電線20端末部を被覆23の上から加締めることで電線20に接続固定されている。芯線加締め部25は、前後方向Xに延びる導電性金属板の左右両縁部を互いに芯線22の頂部に向かって折り曲げることで、露出した芯線22の外周を覆い、その状態で芯線22に加締め圧着されている。この加締め圧着により、図12に示すように、芯線加締め部25の上面には、下側Z2に凹む凹部25aが形成されている。なお、上述した金属板の左右両縁部を互いに芯線22の下部に向かって折り曲げることで、凹部25aは芯線加締め部25の下面に形成されていてもよい。
電気接続部26は、例えば導電性の金属板を折り曲げ加工して略角筒状に形成されており、内部に相手端子としての雄端子を挿入接続可能としている。このように構成された端子付き電線2の電線20端末部と、端子21とは、後述する端子挿入ヘッド16に把持される被把持部を構成している。なお、本実施形態では、電線20端末部と端子21とを被把持部としたが、電線20端末部のみを被把持部としてもよいし、端子21のみを被把持部としてもよい。すなわち、被把持部は、電線20端末部および端子21の少なくとも一方で構成される。そして、この被把持部を構成する電線20端末部と端子21とは、保持具14に保持される。
図1に示すように、ハウジング3は、端子付き電線2の端子21を収容する箱部材であり、樹脂成形等で略矩形箱状に形成され、後述するハウジングホルダ15を介して端子挿入装置1のフレーム10に固定されている。図2に示すように、ハウジング3の前後方向Xを向く面には、前後方向Xに貫通し、同方向に開口する複数のキャビティ4が貫通形成されている。キャビティ4は、端子21を収容する端子収容室であり、本実施形態では、左右方向Yに隣接して6個形成されたキャビティ4が上下方向Zに2段並んでいる。すなわち、ハウジング3には、合計12個のキャビティ4が形成されている。なお、このキャビティ4の個数および配置はあくまでも例示であり、少なくとも左右方向Yに2個隣接して形成されれば、その個数および配置は適宜変更することができる。
次に、端子挿入装置1の各部位について説明する。図1に示すように、端子挿入装置1は、フレーム10と、保持具14と、ハウジングホルダ15と、端子挿入ヘッド16と、3軸駆動源19と、を備えている。フレーム10は、底板11と、支柱12と、天板13と、を備えている。底板11は、前後方向Xおよび左右方向Yに延在する長方形状の板材で形成されている。底板11の上面には、保持具14と、ハウジングホルダ15と、が設置されている。保持具14は、電線20および端子21をセットして保持する部分である。この保持具14は、底板11の左右方向Y中央部から上側Z1に立ち上がって形成され、左右方向Yに隣接するクリップ状の先端部のそれぞれで、セットされた端子21および電線20を、前後方向Xに延びる姿勢で保持可能としている。
本実施形態では、合計2個の端子21(電線20も)が同じ高さで左右方向Yに隣接して保持具14に保持されており、この状態を初期状態とする。なお、この初期状態にある2個の端子21および電線20のうち、右側Y2に位置する端子21および当該端子21が接続される電線20を便宜上、一の端子および一の電線とする。そして、以降、単に一の端子および他の電線、と記す場合や、端子21(一の端子)および電線20(一の電線)と記す場合がある。そして、一の端子の芯線加締め部25を第1芯線加締め部とし、以降、単に第1芯線加締め部と記す場合や、芯線加締め部25(第1芯線加締め部)と記す場合がある。また、一の端子の端子21および電線20端末部で構成される被把持部を第1被把持部と記す場合がある。一方、初期状態にある2個の端子21および電線20のうち、左側Y1に位置する端子21および当該端子21が接続される電線20を便宜上、他の端子および他の電線とする。そして、以降、単に他の端子および他の電線と記す場合や、端子21(他の端子)および電線20(他の電線)と記す場合がある。そして、他の端子の芯線加締め部25を第2芯線加締め部とし、以降、単に第2芯線加締め部と記す場合や、芯線加締め部25(第2芯線加締め部)と記す場合がある。また、他の端子の端子21および電線20端末部で構成される被把持部を第2被把持部と記す場合がある。
上記の構成により、初期状態において、一の端子と他の端子とは、前後方向X(端子の挿入方向)に延びて左右方向Yを隣接方向として隣接している。また、電線20(一の電線)と電線20(他の電線)とは、端子前後方向Xに延びて左右方向Yを隣接方向として隣接している。この一の端子および一の電線と、他の端子および他の電線については、別々の端子付き電線2の端末部に設けられたものであってもよいし、一個の端子付き電線2の両端末部にそれぞれ設けられたものであってもよい。なお、一個の端子付き電線2の両端末に設けられた一の端子および一の電線と、他の端子および他の電線と、をそれぞれ保持具14にセットする場合には以下のようにするとよい。すなわち、例えば端子付き電線2を中間部で折り曲げてU字状にし、一の端子および一の電線と、他の端子および他の電線を左右方向Yに隣接させるとよい。
なお、本実施形態では、保持具14におけるクリップ状の先端部で電線20および端子21を保持する構成とした。しかしながら、この構成は、あくまでも例示であり、端子付き電線2の電線20および端子21を左右方向Yに隣接した状態で、前後方向Xに延びる姿勢に保持できる構造であれば、どのような構造であってもよい。ハウジングホルダ15は、ハウジング3を保持する部分である。ハウジングホルダ15は、保持具14に対して左右方向Yに隣接し、上側Z1に立ち上がって形成されている。ハウジングホルダ15の上側部分には、下側Z2に凹む設置凹部15aが形成され、この設置凹部15aにハウジング3が保持されている。
支柱12は、底板11の左右両端部から上側Z1に立ち上がって一対設けられ、それぞれが底板11と天板13とを接続している。天板13は、支柱12の上端部に配置され、底板11と上下方向Zに対向している。天板13の下側Z2の面には、端子挿入ヘッド16が設置されている。端子挿入ヘッド16は、3軸駆動源19により前後方向X、左右方向Y、および上下方向Zに移動可能となっている。端子挿入ヘッド16は、保持具14に保持された端子付き電線2の被把持部(本実施形態では、端子21および電線20端末部)を把持するとともに、後述するハウジング3に向かって移動させ、ハウジング3のキャビティ4に挿入する部分である。端子挿入ヘッド16は、右側Y2に配置される右ヘッド17(第1ヘッド)と、左側Y1に配置される左ヘッド18(第2ヘッド)と、を備えている。
右ヘッド17は、後述する端子21(一の端子)の芯線加締め部25(第一芯線加締め部)を上下方向Zに挟んで把持する端子チャック5(第1端子チャック、一の端子チャック)を備えている。また、右ヘッド17は、電線20端末部(一の電線端末部)を上下方向Zに挟んで把持する電線チャック7(第1電線チャック、一の電線チャック)を備えている。図2に示すように、端子チャック5は、端子チャック取付板50と、上端子チャック51(上側本体部)と、下端子チャック52(下側本体部)と、を備えている。端子チャック取付板50は、前後方向Xに延びる直方体形状に形成されている。
端子チャック取付板50の前端部には、前側X1に開口し上下方向Zに延びる溝部50aが形成され、溝部50a内には、上端子チャック51と、下端子チャック52と、が保持されている。図3に示すように、上端子チャック51は、上取付部53と、第1上板部54と、第2上板部55と、を備え、左右方向Yに所定幅を有して形成されている。上取付部53は、端子チャック取付板50の溝部50a内上部で移動不能に固定され、当該溝部50aから前側X1に延びている。第1上板部54は、上取付部53の前面左側Y1の端縁から左側Y1に延び、左側Y1に向かうにしたがって前側X1に位置するように湾曲している。
第2上板部55は、第1上板部54の左端縁(左右方向Y一方側)から前側X1に延びている。第2上板部55の前端部分は、下側Z2に突出した爪状に形成されている。この爪状の部分の下面は、芯線加締め部25の上面(上側Z1部分)に当接する上把持面56(上把持部)を構成している。上把持面56は、芯線加締め部25の上面の外形に沿った形状(本実施形態では、この形状をワイヤクリンパタイプ形状という)に形成されている。具体的には、図4(A)に示すように、上把持面56の左右方向Y中央部には、下側Z2に突出する凸部56aが形成されており、凸部56aの左右両側は、上側Z1に湾曲した湾曲面56bとなっている。凸部56aは、端子チャック5が芯線加締め部25を把持する際に芯線加締め部25の凹部25aに嵌合する部分である。凸部56aと凹部25aとの嵌合により、芯線加締め部25が上把持面56の左右方向Y中央部に位置決めされ(センタリングされ)、かつ把持された芯線加締め部25の変位が規制されている。
図3に示すように、下端子チャック52は、下取付部57と、第1下板部58と、第2下板部59と、を備え、左右方向Yに所定幅を有して形成されている。下取付部57は、端子チャック取付板50の溝部50a内下部に保持され、所定の駆動源によって上下方向Zに移動可能となっており、当該溝部50aから前側X1に延びている。なお、所定の駆動源とは、例えば、空気圧を用いてもよく、これによって、下端子チャック52と上端子チャック51とをエアチャックとしてもよい。この構成により、下端子チャック52は、上端子チャック51に対して上下方向Zに相対変位可能となっている。なお、本実施形態では、上端子チャック51を変位不能とし、下端子チャック52を変位可能としているが、これに限定されず、上端子チャック51を変位可能としてもよい。
第1下板部58は、下取付部57の前面左側Y1の端縁から左側Y1に延び、左側Y1に向かうにしたがって前側X1に位置するように湾曲している。第2下板部59は、第1下板部58の左端縁(左右方向Y一方側)から前側X1に延びている。第2下板部59の前端部分は、上側Z1に突出した爪状に形成されている。この爪状の部分の上面は、上把持面56と上下方向Zに対向し、芯線加締め部25の下面(下側部分)に当接する下把持面60(下把持部)を構成している。図4(A)に示すように、下把持面60は、芯線加締め部25の下面の形状に沿って下側Z2に湾曲した形状(本実施形態では、この形状をアンビルタイプ形状という)に形成され、上把持面56と上下方向Zに対向している。この下把持面60は、芯線加締め部25の下面を支える受け部60aとして機能している。
なお、図4(B)に示すように、芯線加締め部25の上面および下面に当接する部分を平坦面100で構成した場合、曲面を備える芯線加締め部25と、平坦面100と、で外形が一致しなくなるとともに、その接触面積が小さくなる。この場合、芯線加締め部25が安定して把持されず、左右方向Yおよび上下方向Zに傾くことがある。したがって、本実施形態のように、ワイヤクリンパタイプ形状の面と、アンビルタイプ形状の面と、が芯線加締め部25に当接するようにすることが好適である。また、芯線加締め部25の凹部25aが芯線加締め部25の下面に形成されている場合も考えられるが、この場合は、上把持面56と下把持面60の構成を本実施形態とは上下逆にすればよい。すなわち、上把持面56をアンビルタイプ形状とし、下把持面60をワイヤクリンパタイプ形状とするとよい。
このように、上把持面56および下把持面60のうち凹部25aに対して上下方向Zに対向する部分を備える一方には、凹部25aに嵌合する凸部56aが設けられる。そして、上把持面56および下把持面60のうち凸部56aが設けられない他方には、芯線加締め部25の上面および下面のうち凹部25aが設けられない他方の外形に沿った形状の受け部60aが設けられている。このように構成された端子チャック5では、上把持面56と下把持面60とで端子21の芯線加締め部25を把持することとなるため、端子21は、端子チャック5の左側Y1(左右方向Y一方側)に偏心した位置で把持されることとなる。
図2に示すように、電線チャック7は、電線チャック取付板70と、上電線チャック71(上側本体部)と、下電線チャック72(下側本体部)と、を備えている。電線チャック取付板70は、前後方向Xに延びる直方体状に形成されている。電線チャック取付板70の前端部には、前側X1に開口し上下方向Zに延びる溝部70aが形成され、溝部70a内には、接続部材70bを介して上電線チャック71と下電線チャック72とが保持されている。図5に示すように、上電線チャック71は、上本体73と、上板部74と、を備えている。上本体73は、左右方向Yに所定幅を有し、その後面が接続部材70bを介して電線チャック取付板70の溝部70a内上部に移動不能に固定されている。上板部74は、上本体73の下面左側Y1の端部から下側Z2に延びている。上板部74の右側面下端部は、下側Z2に向かうにしたがって左側面に近づく傾斜面74aを構成し、これによって、上板部74の下端部は先端先細になっている。傾斜面74aは、後述する下電線チャック72の下ガイド斜面83を当接可能に設けられており、この当接により、下電線チャック72の上側Z1への変位を規制することから、ストッパとして機能している。
上板部74の下端部下面には、上側Z1に湾曲した上湾曲面76が形成され、この上湾曲面76は、電線20の上側Z1部分に当接する上把持部を構成している。上湾曲面76の曲率および左右方向Yの幅は、当接予定の電線20のうち、最も直径の大きな電線20の外形に合わせて形成されている。上湾曲面76の左端縁は、上板部74の左端縁(上電線チャック71の左端縁)に連続しており、この連続部分は、把持した電線20の抜けを防止する上爪76aを構成している。上板部74の傾斜面74aには、上板部74の右下に突出する接続板部75が形成されている。接続板部75は、後述する下電線チャック72の貫通孔84に挿通している。接続板部75の下面は、上ガイド斜面77を構成している。上ガイド斜面77は、電線チャック7が電線20を把持する際に、電線20の外面に摺接可能な面である。上ガイド斜面77は、上湾曲面76の右側Y2の端縁に連続し、当該右側Y2の端縁から右側Y2に向かうにしたがって下側Z2に位置するよう傾斜して設けられている。
下電線チャック72は、下本体78と、下板部79と、を備えている。下本体78は、左右方向Yに所定幅を有し、その後面が接続部材70bを介して電線チャック取付板70の溝部70a内下部に保持さされ、所定の駆動源によって上下方向Zに移動可能となっている。なお、所定の駆動源とは、例えば、空気圧を利用してもよく、これによって、下電線チャック72と上電線チャック71とをエアチャックとしてもよい。この構成により、下電線チャック72は、上電線チャック71に対して上下方向Zに相対変位可能となっている。なお、本実施形態では、上電線チャック71を変位不能とし、下電線チャック72を変位可能としているが、これに限定されず、上電線チャック71を変位可能としてもよい。下板部79は、下本体78の下面左側Y1の端部から下側Z2に延びている。
下板部79の下端部は、上述した上板部74の傾斜面74aと平行に延びる傾斜部80と、傾斜部80の左端縁から左側Y1に延びる左下端部81と、を有している。左下端部81の上面には、下側Z2に湾曲して上湾曲面76と上下方向Zに対向する下湾曲面82が形成され、この下湾曲面82は、電線20の下側Z2部分に当接する下把持部を構成している。下湾曲面82の曲率および左右方向Yの幅は、当接予定の電線20のうち、最も直径の大きな電線20の外形に合わせて形成されている。下湾曲面82の左端縁は、左下端部81の左側Y1を向く面(下電線チャック72の左端縁)に連続しており、この連続部分は、把持した電線20の抜けを防止する下爪82aを構成している。
傾斜部80の上面は、下ガイド斜面83を構成している。下ガイド斜面83は、電線チャック7が電線20を把持する際に、電線20の外面に摺接可能な面である。下ガイド斜面83は、下湾曲面82の右側Y2の端縁に連続し、当該右側Y2の端縁から右側Y2に向かうにしたがって上側Z1に位置するよう傾斜して設けられている。下ガイド斜面83の前後方向X中央部には、上下方向Zに貫通する貫通孔84が形成されており、貫通孔84には、上述した上板部74の接続板部75が挿通している。これにより、下電線チャック72が上下方向Zに移動する際には、貫通孔84の縁部が接続板部75の板面にガイドされながら移動することになり、上電線チャック71と下電線チャック72の位置ずれが防止されている。
このように構成された電線チャック7では、上湾曲面76と、下湾曲面82と、で電線20を把持することとなるため、電線20は、電線チャック7の左側Y1(左右方向Y一方側)に偏心した位置で把持されることとなる。また、この際、上電線チャック71と下電線チャック72とが上下方向Zに近づく方向に相対変位し、上ガイド斜面77と下ガイド斜面83とが互いに接近する。この接近に際し、上ガイド斜面77と下ガイド斜面83に電線20が摺接しながら左側Y1に案内される。この案内により、電線20は確実に上湾曲面76および下湾曲面82のある位置まで案内されて把持される。
図2に示すように、左ヘッド18は、右ヘッド17に対して左右方向Yを隣接方向として隣接して設けられている。なお、左ヘッド18と右ヘッド17は、各構成部品がそれぞれ左右対称となる向きで配置されており、各構成部品の向きが異なる場合がある。しかしながらその構成部品自体は同じであるため、右ヘッド17と同様の構成については、その説明を簡略または省略する。
左ヘッド18は、端子21(他の端子)の芯線加締め部25(第2芯線加締め部)を上下方向Zに挟んで把持する端子チャック5(第2端子チャック、他の端子チャック)を備えている。また、左ヘッド18は、電線20端末部(他の電線端末部)を上下方向Zに挟んで把持する電線チャック7(第2電線チャック、他の電線チャック)を備えている。左ヘッド18の端子チャック5は、図3に示す右ヘッド17の端子チャック5と左右対称となるように形成されている。すなわち、左ヘッド18の端子チャック5では、第1上板部54は、上取付部53の前面右側Y2の端縁から右側Y2に延び、右側Y2に向かうにしたがって前側X1に位置するように湾曲している。また、左ヘッド18の第2上板部55は、第1上板部54の右端縁から前側X1に延びている。
また、左ヘッド18の第1下板部58は、下取付部57の前面右側Y2の端縁から右側Y2に延び、右側Y2に向かうにしたがって前側X1に位置するように湾曲している。第2下板部59は、第1下板部58の右端縁から前側X1に延びている。このような左ヘッド18の構成により、右ヘッド17と左ヘッド18の端子チャック5は、左右方向Yを隣接方向として隣接し、上把持面56と下把持面60が隣接方向内方に位置するように左右対称となる向きで一対設けられていることとなる。そして、一対の端子チャック5のうち、右ヘッド17の端子チャック5は、複数の端子21のうち一の端子を把持し、左ヘッド18の端子チャック5は、複数の端子21のうち他の端子を把持する。
左ヘッド18の電線チャック7は、図5に示す右ヘッド17の電線チャック7と左右対称となるように形成されている。すなわち、右ヘッド17の電線チャック7では、上板部74は、上本体73の下面右側Y2の端部から下側Z2に延びている。また、上板部74の左側面下端部は、下側Z2に向かうにしたがって右側面に近づく傾斜面74aを構成している。また、上ガイド斜面77は、上湾曲面76の左側Y1の端縁に連続し、当該左側Y1の端縁から左側Y1に向かうにしたがって下側Z2に位置するよう傾斜して設けられている。そして、下電線チャック72における下板部79は、下本体78の下面右側Y2の端部から下側Z2に延びている。下板部79の下端部は、上述した上板部74の傾斜面74aと平行に延びる傾斜部80と、傾斜部80の右端縁から右側Y2に延びる右下端部81と、を有している。
そして、下ガイド斜面83は、下湾曲面82の左側Y1の端縁に連続し、当該左側Y1の端縁から左側Y1に向かうにしたがって上側Z1に位置するよう傾斜して設けられている。このような左ヘッド18の構成により、右ヘッド17と左ヘッド18の電線チャック7は、左右方向Yを隣接方向として隣接し、上湾曲面76および下湾曲面82が隣接方向内方に位置するように左右対称となる向きで一対設けられている。そして、一対の電線チャック7のうち、右ヘッド17の電線チャック7は、複数の電線20のうち一の電線を把持し、左ヘッド18の電線チャック7は、複数の電線20のうち他の電線を把持する。
端子挿入ヘッド16(右ヘッド17および左ヘッド18)の各々には、それぞれ独立した3軸駆動源19が接続されている。3軸駆動源19は、右ヘッド17および左ヘッド18の各々を、前後方向X、左右方向Y、および上下方向Zのいずれかまたは全ての任意の方向に変位可能としている。また、3軸駆動源19は、各端子チャック5および各電線チャック7にもそれぞれ接続されており、端子チャック5および電線チャック7の各々を、前後方向X、左右方向Y、および上下方向Zのいずれかまたは全ての任意の方向に変位可能としている。
この構成により、右ヘッド17と左ヘッド18は、3軸駆動源19によって、左右方向Yおよび上下方向Zに延在する仮想的な面の面内(すなわち、端子21の挿入方向に直交する仮想的な面の面内)で、任意の方向にそれぞれ独立して変位可能となっている。そして、この構成により、一対の端子チャック5および一対の電線チャック7の各々が、端子21の挿入方向に直交する仮想的な面の面内で、任意の方向にそれぞれ独立して変位可能となっている。3軸駆動源19の構成としては、例えば、サーボモータ、シリンダチューブ、ピストンロッド等を備える電動シリンダを複数個用意し、これらを任意の向きに配置するなどして構成することができる。しかしながら、3軸駆動源19の構成は、これに限定されることなく、右ヘッド17と左ヘッド18の各々を独立して、3軸方向に変位可能な構成であれば、どのような駆動源を用いてよい。
次に、端子挿入装置1を用いた端子21のキャビティ4への挿入の動作について説明する。本実施形態では、図2に示す初期状態にある2個の端子21(一の端子と他の端子)が端子挿入装置1の端子挿入ヘッド16によって把持され、ハウジング3に向かって移動させられ、複数のキャビティ4のうち、対応するキャビティ4の各々にまとめて挿入される。まず、図2に示す状態で定位置にある端子挿入ヘッド16が、把持対象となる被把持部(端子21および電線20端末部)を把持するための把持位置に移動させられる。図6は、初期状態にある端子付き電線2の把持位置に向かって右ヘッド17と左ヘッド18が移動した状態の端子挿入装置1を示している。
この状態では、右ヘッド17の端子チャック5における上端子チャック51と下端子チャック52とが、一の端子(右側Y2の端子21)と上下方向Zに間隔をあけて対向している。また、右ヘッド17の電線チャック7における上電線チャック71と下電線チャック72とが、一の電線(右側Y2の電線20)の電線20端末部と上下方向Zに間隔をあけて対向している。一方、左ヘッド18の端子チャック5における上端子チャック51と下端子チャック52とが、他の端子(左側Y1の端子21)と上下方向Zに間隔をあけて対向している。また、左ヘッド18の電線チャック7における上電線チャック71と下電線チャック72とが、他の電線(左側Y1の電線20)の電線20端末部と上下方向Zに間隔をあけて対向している。
この状態から、右ヘッド17および左ヘッド18の下端子チャック52がそれぞれ、上側Z1に変位し、図7に示すように、端子チャック5によって端子21が把持される。この端子挿入ヘッド16の把持位置への移動および端子21の把持についてより詳細に説明する。図8は、右側Y2から端子21(一の端子)の把持位置に向かって進入を開始した端子チャック5(第1端子チャック)を示す斜視図である。図9は、端子21(一の端子)の把持位置に移動完了した端子チャック5(第1端子チャック)を示す斜視図である。図10は、端子21(一の端子)の把持が完了した端子チャック5(第1端子チャック)を示す斜視図である。図8、9に示すように、端子チャック5は、上把持面56と下把持面60との間に芯線加締め部25(第1芯線加締め部)が位置する高さに配置される。そして、端子チャック5は、右側Y2から左側Y1(すなわち、一対の端子チャック5における左右方向Y外方から左右方向Y内方)に進入させられ、把持位置に位置決めされる。
次に、図10に示すように、下端子チャック52が上側Z1に変位させられ、上把持面56と下把持面60とで芯線加締め部25が上下方向Zに挟まれて把持される。そして、同様のことが、左ヘッド18と端子21(他の端子)との間でも行われる。すなわち、左ヘッド18の端子チャック5(第2端子チャック)は、左側Y1から右側Y2(すなわち、一対の端子チャック5における左右方向Y外方から左右方向Y内方)に進入し、把持位置に位置決めされる。そして、上把持面56と下把持面60とで芯線加締め部25(第2芯線加締め部)が把持される。端子チャック5により端子21の把持が完了した状態では、図11に示すように、端子21(一の端子)および電線20(一の電線)と、端子21(他の端子)および電線20(他の電線)とは、前後方向Xに延びて左右方向Yを隣接方向として隣接している。
そして、この状態では、図12(A)、(B)に示すように、芯線加締め部25の凹部25aに上把持面56の凸部56aが嵌合し、芯線加締め部25の上面に上把持面56の湾曲面56bが当接している。そして、下把持面60すなわち受け部60aによって芯線加締め部25の下面が支持されている。これは、図12(A)に示す左右方向Yおよび上下方向Zの寸法が小さい芯線加締め部25と、図12(B)に示す左右方向Yおよび上下方向Zの寸法が大きい芯線加締め部25のいずれも同様である。このように凸部56aと凹部25aを嵌合させるとともに、受け部60aで芯線加締め部25の下面を支持することで、上把持面56および下把持面60の左右方向Y中心部で把持された芯線加締め部25の特に左右方向Yおよび上下方向Zの変位が規制される。
また、図13に示すように、上把持面56および下把持面60は、前後方向Xに所定の寸法を有しているため、これら面と芯線加締め部25の接触面積を十分に確保することができ、端子チャック5で芯線加締め部25を把持した状態が安定して維持される。これにより、芯線加締め部25が水平方向に対して傾くことが防止されている。また、上述したように、左ヘッド18の端子チャック5と右ヘッド17の端子チャック5では、それぞれの上把持面56および下把持面60が隣接方向内方に偏在して位置している。このため、図14に示すように、例えば、第1上板部54や第1下板部58などの他の構成同士が干渉することが防止される。そして、このように干渉を防止した状態で、右側Y2の上把持面56および下把持面60と、左側Y1の上把持面56および下把持面60と、を最接近させて狭い離間距離(狭ピッチ)とすることができる。
ここで、例えば、右ヘッド17の端子チャック5(一の端子チャック)の左右方向Y(隣接方向)内方の端縁から左ヘッド18の端子チャック5(他の端子チャック)の左右方向Y内方の端縁までの最短距離を最短距離S1とする。そして、端子21(一の端子)の左右方向Y内方の端縁から端子21(他の端子)の左右方向Yの端縁までの最短距離を最短距離S2とする。最短距離S1は、最短距離S2よりも大きいことが好ましい。この構成によれば端子チャック5同士を干渉させることなく、端子21(一の端子)と端子21(他の端子)を最大で左右方向Yに接触するまで接近させることができる。具体的には、最短距離S1は約1.5mmとすることができ、それよりも小さい最短距離S2で端子21を隣接させることができる。なお、上述のように、端子チャック5の上把持面56と下把持面60とは上下方向Zに相対変位するので、この相対変位時に、上把持面56および下把持面60とが左右方向Yに変位することがない。したがって、端子21の把持の動作や把持の終了の動作のいずれにおいても、端子21同士を左右方向Yに接近させることができる状態を維持することができる。
端子チャック5による芯線加締め部25の把持が完了した後には、図15に示すように、電線チャック7によって電線20端末部が把持される。この電線チャック7による電線20端末部の把持についてより詳細に説明する。図16は、右側Y2から電線20(一の電線)の把持位置に向かって進入を開始した電線チャック7(第1電線チャック)を示す斜視図である。図17は、電線20(一の電線)の把持位置に移動完了した電線チャック7(第1電線チャック)を示す斜視図である。図18は、電線20(一の電線)の把持が完了した電線チャック7(第1電線チャック)を示す斜視図である。図16、17に示すように、電線チャック7は、上湾曲面76と下湾曲面82との間に一の電線の電線20端末部が位置する高さに配置される。そして、電線チャック7は、右側Y2から左側Y1(すなわち、一対の電線チャック7における左右方向Y外方から左右方向Y内方)に進入させられ、把持位置に位置決めされる。
次に、図18に示すように、下電線チャック72が上側Z1に変位させられ、上湾曲面76と下湾曲面82とで電線20端末部が上下方向Zに挟まれて把持される。そして、同様のことが、左ヘッド18と電線20(他の電線)でも行われる。すなわち、左ヘッド18の電線チャック7(第2電線チャック)は、左側Y1から右側Y2(すなわち、一対の電線チャック7における左右方向Y外方から左右方向Y内方)に進入させられ、把持位置に位置決めされる。そして、上湾曲面76と下湾曲面82とで電線20端末部(他の電線の電線20端末部)が上下方向Zに挟まれて把持される。
この把持の際、上電線チャック71と下電線チャック72が互いに近づくにしたがって、上ガイド斜面77と下ガイド斜面83とが互いに接近する。この接近の際、上ガイド斜面77および下ガイド斜面83には電線20が摺接しながら、徐々に上湾曲面76および下湾曲面82に向かって案内される。この案内により、電線20が確実に上湾曲面76および下湾曲面82のある位置まで移動し、上湾曲面76と下湾曲面82とで電線20が確実に把持される。また、把持された電線20は、左右方向Yの一方を上述した上爪76aと下爪82aとで支持され、左右方向Yの他方を上ガイド斜面77および下ガイド斜面83とで支持され、上側Z1を上湾曲面76で支持され、下側Z2を下湾曲面82で支持される。これにより、電線20の前後方向Xに交差する方向への抜けが防止され、電線20が電線チャック7に把持された状態が安定して維持される。
また、上述したように、左ヘッド18の電線チャック7と右ヘッド17の電線チャック7では、それぞれの上湾曲面76および下湾曲面82が隣接方向内方に偏在して位置している。このため、図19に示すように、例えば、電線チャック取付板70などの他の構成同士が干渉することが防止される。そして、このように干渉を防止した状態で、右側Y2の上湾曲面76および下湾曲面82と、左側Y1の上湾曲面76および下湾曲面82と、を最接近させて狭い離間距離(狭ピッチ)とすることができる。ここで、例えば、右ヘッド17の電線チャック7(一の電線チャック)の左右方向Y(隣接方向)内方の端縁から左ヘッド18の電線チャック7(他の電線チャック)の左右方向Y内方の端縁までの最短距離を最短距離S3とする。そして、電線20(一の電線)の左右方向Y内方の端縁から電線20(他の端子)の左右方向Yの端縁までの最短距離を最短距離S4とする。最短距離S3は、最短距離S4よりも大きいことが好ましい。
この構成によれば電線チャック7同士を干渉させることなく、電線20(一の電線)と電線20(他の電線)を最大で左右方向Yに接触するまで接近させることができる。具体的には、最短距離S3は約1.5mmとすることができ、それよりも小さい最短距離S4で電線20を隣接させることができる。なお、上述のように、電線チャック7の上湾曲面76と下湾曲面82とは上下方向Zに相対変位するので、この相対変位時に、上湾曲面76と下湾曲面82とが左右方向Yに変位することがない。したがって、電線20の把持の動作や把持の終了の動作のいずれにおいても、電線20同士を左右方向Yに接近させることができる状態を維持することができる。
なお、本構成のように、最短距離S3を最短距離S4よりも大きくし、かつ、上述したように、最短距離S1を最短距離S2よりも大きくすると、以下のようになる。すなわち、右ヘッド17(第1ヘッド)の左右方向Y(隣接方向)内方の端縁から左ヘッド18(第2ヘッド)の左右方向Y内方の端縁までの最短距離は、第1被把持部(一の端子および一の電線の電線20端末部)の左右方向Y(隣接方向)内方の端縁から第2被把持部(他の端子および他の電線の電線20端末部)の左右方向Y内方の端縁までの最短距離よりも大きくなる。この構成により、右ヘッド17および左ヘッド18の干渉を互いに避けながら、それぞれの被把持部を隣接方向内方に移動させることができる。
また、上述したように、上湾曲面76および下ガイド斜面83の曲率および左右方向Yの幅は、当接予定の電線20のうち、最も直径の大きな電線20の外形に合わせて形成されている。これにより、図20(A)、(B)に示すように、把持する電線20のうち、最小径の電線20から、最大径の電線20まで、電線チャック7によって把持された状態を安定して維持することができる。
次に、端子21および電線20を把持した端子挿入ヘッド16を、挿入位置に移動させる。挿入位置とは、把持されて前後方向X延びる端子21の前端が、それぞれ対応するキャビティ4と前後方向Xに対向する位置である。この挿入位置に向かって右ヘッド17に把持された端子21と、左ヘッド18に把持された端子21と、がそれぞれ移動させられる。この際、上述したように、右ヘッド17と左ヘッド18は3軸駆動源19によって、端子21の挿入方向に直交する仮想的な面の面内で、任意の方向にそれぞれ独立して変位する。このため、右ヘッド17と左ヘッド18とを、左右方向Yおよび上下方向Zに延在する仮想的な面の面内で、任意の方向にそれぞれ独立して変位させることができる。図21は、右ヘッド17と左ヘッド18が挿入位置に移動した状態の端子挿入装置1を示す斜視図である。図22は、図21に示す挿入位置とは異なる挿入位置に右ヘッド17と左ヘッド18が移動した状態の端子挿入装置1を示す斜視図である。図23は、図20および図21に示す挿入位置とは異なる挿入位置に右ヘッド17と左ヘッド18が移動した状態の端子挿入装置1を示す斜視図である。
図21に示す状態では、右ヘッド17によって移動させられた端子21および電線20(一の端子および一の電線)と左ヘッド18によって移動させられた端子21および電線20(他の端子および他の電線)が初期状態と同様に同じ高さで左右方向Yに並んでいる。そして、端子21(一の端子)と端子21(他の端子)の左右方向Y(隣接方向)の離間距離は、挿入対象となる2個のキャビティ4の左右方向Yの離間距離と同様となっている。これにより、端子21(一の端子)と端子21(他の端子)とを、対応する2個のキャビティ4、すなわち左右方向Yに隣接する2個のキャビティ4の各々にまとめて挿入することができる。
図22に示す状態では、右ヘッド17によって移動させられた端子21および電線20と左ヘッド18によって移動させられた端子21および電線20が、初期状態と異なり、それぞれ上下方向Zにずれた位置で左右方向Yに並んでいる。すなわち、一の端子と、他の端子と、が斜め方向に並んでいる。そして、一の端子と、他の端子との斜め方向(隣接方向)の離間距離は、同方向におけるキャビティ4の隣接方向と同様となっている。これにより、対応する2個のキャビティ4が斜め方向に隣接する場合にも、一の端子と他の端子とを各々のキャビティ4にまとめて挿入することができる。
図23に示す状態では、右ヘッド17によって移動させられた端子21および電線20と左ヘッド18によって移動させられた端子21および電線20が、図22に示す状態と同様に斜め方向に並んでいる。しかしながら、一の端子と、他の端子との斜め方向(隣接方向)の離間距離は、図22に示す状態よりも大きくなっている。これにより、対応する2個のキャビティ4が隣接せず、斜め方向に離れた位置に位置していても、一の端子と他の端子とを各々のキャビティ4にまとめて挿入することができる。
まとめると、左右方向Yおよび斜め方向に様々な離間距離で配置される2個のキャビティ4の各々に対して、一の端子と他の端子をまとめて挿入することができる。図24(A)~(D)は、キャビティ4に対する端子21の挿入パターンのバリエーションの一例を示す概念図である。図24(A)では、2個のキャビティ4が約1.5mmの離間距離である狭ピッチで左右方向Yに並んでおり、この2個のキャビティ4に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。図24(B)では、ハウジング3に、6個のキャビティ4が上記狭ピッチで左右方向Yに並びかつ、その6個のキャビティ4が上下方向Zに2段並んでいる。すなわち、ハウジング3に12個のキャビティ4が設けられている。この中で、左右方向Yに隣接する2個のキャビティ4(上下方向Zに対して左側Y1に傾く斜線で示す)に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。
また、12個のキャビティ4のうち、斜め方向に隣接する2個のキャビティ4(上下方向Zに対して左側Y1に傾く斜線および右側Y2に傾く斜線で示す)に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。そして、12個のキャビティ4のうち、一のキャビティ4を挟んで左側Y1と右側Y2とに離れて斜めに並ぶ2個のキャビティ4(上下方向Zに対して右側Y2に傾く斜線で示す)に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。図24(C)では、ハウジング3に、2個のキャビティ4が、上記狭ピッチよりも大きな離間距離である大ピッチで左右方向Yに並んでいる。この2個のキャビティ4に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。図24(D)では、ハウジング3に、6個のキャビティ4が上記大ピッチで左右方向Yに並びかつ、その6個のキャビティ4が上下方向Zに2段並んでいる。すなわち、ハウジング3に12個のキャビティ4が設けられている。
この12個のキャビティ4のうち、左右方向Yに隣接する2個のキャビティ4(上下方向Zに対して左側Y1に傾く斜線で示す)に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。また、12個のキャビティ4のうち、斜め方向に隣接する2個のキャビティ4(上下方向Zに対して左側Y1に傾く斜線および右側Y2に傾く斜線で示す)に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。そして、12個のキャビティ4のうち、一のキャビティ4を挟んで左側Y1と右側Y2とに離れて斜めに並ぶ2個のキャビティ4(上下方向Zに対して右側Y2に傾く斜線で示す)に対して、一の端子と他の端子とがまとめて挿入される。
次に、図25に示すように、挿入位置に移動させられた端子21が、キャビティ4に対して一次挿入される。ここでは、挿入位置にある端子21のそれぞれが、右ヘッド17および左ヘッド18によって前側X1に移動させられる。これにより、対応するキャビティ4に対して端子21が、全て挿入されない程度に挿入され、キャビティ4に対して端子21が位置決めされる。次に、図26に示すように、端子21がキャビティ4に対して二次挿入される。ここでは、まず右ヘッド17の端子チャック5と左ヘッド18の端子チャック5がそれぞれ下端子チャック52を下側Z2に変位させることで芯線加締め部25の把持が終了する。そして、3軸駆動源19によって各端子チャック5が互いに離れる方向である左右方向Y外方に退避させられる。そして、図27に示すように、3軸駆動源19により各電線チャック7が前側X1に移動させられ、この移動により、キャビティ4に対して端子21が全て挿入されて二次挿入が完了する。そして、その後、電線20端末部を把持したままの各電線チャック7が後側X2(端子21が抜ける方向)に変位させられ、各端子21の電線20端末部が後側X2に引っ張られる。
この引っ張りにより、キャビティ4への挿入が不十分な端子21はキャビティ4から抜き出される。本実施形態では、この電線チャック7による電線20端末部の引っ張り動作を引張確認という。引張確認により、一の端子および他の端子が確実にキャビティ4に挿入されたか否かの確認を独立して行うことができる。引張確認が完了すると、図28に示すように、右ヘッド17の電線チャック7と左ヘッド18の電線チャック7がそれぞれ下電線チャック72を下側Z2に変位させることで電線20の把持が終了する。そして、3軸駆動源19により各電線チャック7が互いに離れる方向である左右方向Y外方に退避させられる。そして、図29に示すように、3軸駆動源19により右ヘッド17と左ヘッド18が後側X2に移動させられ、端子21の挿入が完了する。
以上、上述した実施形態によれば、前後方向X(挿入方向)に直交する仮想的な面の面内で、右ヘッド17(第1ヘッド)により端子21および電線20端末部(一の端子および一の電線、第1被把持部)を独立して任意の方向に変位させることができる。また、左ヘッド18(第2ヘッド)により端子21および電線20端末部(他の端子および他の電線、第2被把持部)を独立して任意の方向に変位させることができる。このため、例えば端子21の挿入方向を前後方向Xとすると、第1被把持部と第2被把持部とを左右方向Yに相対変位させることや、第1被把持部と第2被把持部とを左右方向Yおよび上下方向Z、すなわち斜め方向に相対変位させることができる。これらの相対変位により、例えば左右方向Yに様々な離間距離で隣接するキャビティ4の各々に対応して一の端子と他の端子とをそれぞれまとめて挿入することができる。また、例えば斜め方向に様々な離間距離で配置されるキャビティ4の各々に対応して一の端子と他の端子とをそれぞれまとめて挿入することができる。したがって、挿入対象のキャビティ4の多様な配置に柔軟に対応し、複数の端子21をまとめて対応するキャビティ4に挿入可能な端子挿入装置1を提供することができる。
また、本実施形態では、第1被把持部を把持した右ヘッド17と第2被把持部を把持した左ヘッド18の左右方向Y内方の端縁間の最短距離が、把持された各被把持部の隣接方向内方の端縁間の最短距離よりも大きくなっていた。この最短距離の関係により、左ヘッド18と右ヘッド17とを干渉させることなく、第1被把持部と第2被把持部を最大で左右方向Yに接触するまで接近させることができる。したがって、挿入対象のキャビティ4が左右方向Yに接近している場合にも柔軟に対応し、一の端子と他の端子とを対応するキャビティ4の各々にまとめて挿入することができる。
また、本実施形態によれば、右ヘッド17の端子チャック5(第1端子チャック)により一の端子の芯線加締め部25(第1芯線加締め部)を把持することができる。そして、左ヘッド18の端子チャック5(第2端子チャック)により、他の端子の芯線加締め部25(第2芯線加締め部)を把持することができる。芯線加締め部25は端子21の中でも比較的形状が一定で、電線20と比較して変形し難い部分である。各芯線加締め部25を上下方向Zに挟んで把持することができることから、端子21および電線20端末部が把持された状態をより一層安定して維持することができる。また、上述した従来の端子挿入装置では、内側爪と外側爪とで電線20を左右方向Yに挟む構成上、2本の電線20を左右方向Yに接近させると内側爪同士が干渉することでそれ以上電線を接近させることができない。しかしながら、本構成によれば、各端子チャック5は各芯線加締め部25を上下方向Zに挟んでいる。そして、各端子チャック5の隣接方向内方の端縁間の最短距離S1は端子21(一の端子)と端子21(他の端子)の隣接方向内方の端縁間の最短距離S2よりも大きくなっている。このため、各端子チャック5同士を干渉させることなく、一の端子と他の端子を最大で左右方向Yに接触するまで接近させることができる。
また本実施形態によれば、右ヘッド17の電線チャック7(第1電線チャック)により端子21(一の端子)がキャビティ4に挿入された状態で電線20(一の電線)に対して引張確認をすることができる。また、左ヘッド18の電線チャック7(第2電線チャック)により、端子21(他の端子)がキャビティ4に挿入された状態で電線20(他の電線)に対して引張確認をすることができる。この引張確認では、キャビティ4への挿入が不十分な端子21をキャビティ4から抜き出すことができることから、一の端子および他の端子が確実にキャビティ4に挿入されたか否かの確認を独立して行うことができる。したがって、端子21の不十分な挿入の見落としを右ヘッド17および左ヘッド18のそれぞれで防止することができる。
また、本実施形態によれば、上電線チャック71(上側本体部)の左右方向Y一方側に設けられた上湾曲面76(上把持部)と、下電線チャック72(下側本体部)の左右方向Y一方側に設けられた下湾曲面82(下把持部)と、により、電線チャック7の左右方向Y一方側に偏心した位置で電線20が把持される。このため、電線20を把持する構成が電線チャック7の左右方向Y中央部に設けられる構成と比較して、把持した電線20から左右方向Y一方側に電線チャック7が突出する量を小さくすることができる。このため、把持した電線20を左右方向Y一方側に変位させる際に、電線チャック7を他の構成に干渉し難くすることができる。したがって、把持した電線20の左右方向Y一方側への変位を阻害し難い電線チャック7(チャック手段)を備えた端子挿入装置1を提供することができる。また、この構成によれば、電線チャック7は、上電線チャック71と下電線チャック72とを上下方向Zに相対変位させることで上湾曲面76と下湾曲面82との上下方向Zの距離を変更する。これにより電線チャック7は、電線20を把持した状態と電線20を把持しない状態とを変更することとなる。このため、電線20の把持および把持の終了に際し、電線チャック7の左右方向Yの位置が変化し難い。これにより、電線20の把持の動作時および把持の終了の動作時のいずれにも、把持する電線の左右方向Y一方側にある他の構成に電線チャック7が干渉し難い状態を維持することができる。
また、本実施形態によれば、上湾曲面76が上電線チャック71の左右方向Y一方側の端縁に連続し、下湾曲面82が下電線チャック72の左右方向Y一方側の端縁に連続して設けられていた。この構成によれば、電線チャック7における左右方向Y一方側の端縁付近で電線20を把持することができる。このため、把持した電線20から左右方向Y一方側に電線チャック7が突出する量をより一層小さくすることができる。
なお、本実施形態の構成と異なり、上湾曲面76を上電線チャック71の左右方向Y一方側の端縁に連続させず、かつ、下湾曲面82を下電線チャック72の左右方向Y一方側の端縁に連続させないようにすることもできる。この場合、上湾曲面76を、上電線チャック71の左右方向Y一方側に設け、下湾曲面82を下電線チャック72の左右方向Y一方側に設けるとよい。このようにすることで、電線20を把持する構成が電線チャック7の左右方向Y中央部に設けられる構成と比較して、把持した電線20から左右方向Y一方側に電線チャック7が突出する量を小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、上電線チャック71と下電線チャック72とを上下方向Zのうち互いに近づく方向に相対変位させた場合、上ガイド斜面77と下ガイド斜面83とが互いに接近する。この接近の際、両ガイド斜面77、83に電線20を摺接させ、当該電線20を左右方向Y一方側に案内することができる。この案内により、電線20を確実に上湾曲面76および下湾曲面82のある位置まで案内し、上湾曲面76と下湾曲面82とで電線20を確実に把持することができる。
また、本実施形態によれば、左右方向Yおよび上下方向Zに延在する(端子21の挿入方向に直交する)仮想的な面の面内で、一対の電線チャック7の各々を独立して任意の方向に変位させることができる。そして、この際、一対の電線チャック7は、左右方向Yを隣接方向として隣接し、上湾曲面76および下湾曲面82が隣接方向内方に位置するように左右対称となる向きで配置されている。この位置関係により、右側Y2の上湾曲面76および下湾曲面82は、右側Y2の電線チャック7において左側Y1の電線チャック7側に偏心する。そして、左側Y1の上湾曲面76および下湾曲面82は、左側Y1の電線チャック7において右側Y2の電線チャック7側に偏心することとなる。すなわち、一方の上湾曲面76および下湾曲面82と、他方の上湾曲面76および下湾曲面82は、互いに近づく方向に偏心していることとなる。このため、把持した電線20から電線チャック7が互いに近づく方向に突出する量を小さくすることができ、各電線チャック7同士の干渉を抑制して一の電線と他の電線とを左右方向Yに接近させることができる。
また、本実施形態によれば、右ヘッド17の電線チャック7と左ヘッド18の電線チャック7の隣接方向内方の端縁間の最短距離S3は、一の電線と他の電線の隣接方向内方の端縁間の最短距離S4よりも大きくなっている。このため、一の電線チャック7と他の電線チャック7を干渉させることなく、一の電線と他の電線を最大で左右方向Yに接触するまで接近させることができる。
また、本実施形態によれば、上端子チャック51(上側本体部)の左右方向Y一方側に設けられた上把持面56(上把持部)と、下端子チャック52(下側本体部)の左右方向Y一方側に設けられた下把持面60(下把持部)と、により、端子チャック5の左右方向Y一方側に偏心した位置で端子が把持される。このため、端子21を把持する構成が端子チャック5の左右方向Y中央部に設けられる構成と比較して、把持した端子21から左右方向Y一方側に端子チャック5が突出する量を小さくすることができる。このため、把持した端子21を左右方向Y一方側に変位させる際に、端子チャック5を他の構成に干渉し難くすることができる。したがって、把持した端子21の左右方向Y一方側への変位を阻害し難い端子チャック5(チャック手段)を備えた端子挿入装置1を提供することができる。また、この構成によれば、端子チャック5は、上端子チャック51と下端子チャック52とを上下方向Zに相対変位させることで上把持面56と下把持面60との上下方向Zの距離を変更し、端子21を把持した状態と端子21を把持しない状態とを変更することとなる。このため、端子21の把持および把持の終了に際し、端子チャック5の左右方向Yの位置が変化し難い。これにより、端子21の把持の動作時および把持の終了の動作時のいずれにも、把持する端子の左右方向Y一方側にある他の構成に端子チャック5が干渉し難い状態を維持することができる。
また本実施形態によれば、芯線加締め部25の延びる方向に沿って延びる第2上板部55の上把持面56が芯線加締め部25の上面に当接していた。また、同じく芯線加締め部25の延びる方向に延びる第2下板部59の下把持面60が芯線加締め部25の下面に当接していた。芯線加締め部25は、端子21の中でも比較的形状が一定で、電線20と比較して変形し難い部分である。この芯線加締め部25を、第2上板部55および第2下板部59の延びる方向の所定の長さ分の接触面積を確保して上把持面56と下把持面60とで上下方向Zに挟んで把持することができる。このため、端子チャック5が端子21を把持した状態をより一層安定して維持することができる。
また、本実施形態によれば、芯線加締め部25の上面および下面のうち、凹部25aが設けられる一方には、凸部56aが嵌合していた。また、芯線加締め部25の上面および下面のうち、凹部25aが設けられない他方には受け部60aが当接していた。この構成によれば、芯線加締め部25を凸部56aおよび受け部60aで上下方向Zに挟んで保持することができる。凸部56aの嵌合と受け部60aの当接により、芯線加締め部25が上下方向Zおよび左右方向Yに傾くことを規制し、所定の姿勢で、端子21が端子チャック5に把持された状態を安定して維持することができる。
また、本実施形態によれば、左右方向Yおよび上下方向Zに延在する(端子21の挿入方向に直交する仮想的な面の面内)で、一対の端子チャック5の各々を独立して任意の方向に変位させることができる。そして、この際、一対の端子チャック5は、左右方向Yを隣接方向として隣接し、上把持面56および下把持面60が隣接方向内方に位置するように左右対称となる向きで配置されている。この位置関係により、右側Y2の上把持面56および下把持面60は、右側Y2の端子チャック5において左側Y1の端子チャック5側に偏心することとなる。また、左側Y1の上把持面56および下把持面60は、左側Y1の端子チャック5において右側Y2の端子チャック5側に偏心することとなる。すなわち、一方の上把持面56および下把持面60と、他方の上把持面56および下把持面60は、互いに近づく方向に偏心していることとなる。このため、把持した端子21から端子チャック5が互いに近づく方向に突出する量を小さくすることができる。このため、各端子チャック5同士の干渉を抑制して一の端子と他の端子とを左右方向Yに接近させることができる。
また、本実施形態によれば、右ヘッド17の端子チャック5と左ヘッド18の端子チャック5の隣接方向内方の端縁間の最短距離S1は、一の端子と他の端子の隣接方向内方の端縁間の最短距離S2よりも大きくなっている。このため、各端子チャック5を干渉させることなく、一の端子と他の端子を最大で左右方向Yに接触するまで接近させることができる。
以上、本発明の一実施形態、および変形例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。