JPH0461047B2 - - Google Patents
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- JPH0461047B2 JPH0461047B2 JP57068184A JP6818482A JPH0461047B2 JP H0461047 B2 JPH0461047 B2 JP H0461047B2 JP 57068184 A JP57068184 A JP 57068184A JP 6818482 A JP6818482 A JP 6818482A JP H0461047 B2 JPH0461047 B2 JP H0461047B2
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Description
(産業上の利用分野)
本発明は、球状黒鉛鋳鉄よりなる部品の製造方
法に関するものである。 (従来の技術) 一般に、特開昭55−94459号公報に示されてい
るように、球状黒鉛鋳鉄材料を固溶体形成温度
(830〜1000℃)に一定時間加熱保持してオーステ
ナイト化したのち、例えば220〜420℃の温度に所
定時間恒温保持するいわゆるオーステンパー処理
すると、その靭性が大幅に向上することは周知で
あり、この強靭性を利用してステアリングナツク
ルやコンロツド等の自動車用強度部品として使用
することが行われている。 (発明が解決しようとする課題) ところで、肉厚の大きな球状黒鉛鋳鉄部品に上
記したオーステンパー処理を施した場合、この球
状黒鉛鋳鉄部品の中心部は表面部に比べて極度に
冷却速度が遅いため、中心部にはパーライト組織
が析出して、要求されるベイナイト組織が生成さ
れず、目的の強靭性が得られないという問題があ
る。 そこで、上記肉厚の大きな球状黒鉛鋳鉄部品を
オーステナイト化後、通常の恒温処理温度(220
〜420℃)より低い温度、例えば170℃の低温ソル
ト炉等で急冷すれば球状黒鉛鋳鉄部品の中心部に
ベイナイト組織を得ることができる。 しかし、球状黒鉛鋳鉄部品の表面部は、低温ソ
ルト炉の温度と同等の170℃まで冷却されるため、
この表面部はMs点(マルテンサイト変態が始ま
る温度で通常210℃)以下の温度にまで降下して
しまい、マルテンサイト組織が生成されて、目的
の強靭性が得られないという問題がある。 このため、本発明は、上記の球状黒鉛鋳鉄の組
成を通常のものの組成とは変えて、そのMs点を
実質的に降下させるようにすることにより、肉厚
の大きな球状黒鉛鋳鉄部品においても、表面にマ
ルテンサイト組織を生成させることなく均一なベ
イナイト組織を生成して、強靭性の球状黒鉛鋳鉄
部品を得ることを目的とする。 (課題を解決するための手段) この目的の達成のため、本発明では、球状黒鉛
鋳鉄部品の製造方法として、3.0〜4.0重量%のC
と、2.0〜4.0重量%のSiと、0.02〜0.1重量%の
Mgと、0.5〜2.0重量%のMnと、0.5〜3.0重量%
のNiまたは0.3〜2.0重量%のCuの少なくとも一方
とを有し、かつ残部が実質的にFeとされた組成
の球状黒鉛鋳鉄を830〜1000℃の温度に5時間以
内加熱保持したのち170〜210℃の温度に急冷し、
しかる後220〜420℃の温度に5分間以上加熱保持
するオーステンパー処理を行うものである。 (作用) 上記の構成により、本発明では、球状黒鉛鋳鉄
を830〜1000℃の温度で5時間以内加熱保持する
オーステナイト化後に170〜210℃の温度に急冷す
るので、肉厚が大きい厚肉部品でも、その中心部
は短時間でもつて冷却されてパーライト組織へ変
態する虜れがなく、安価にかつ容易にオーステン
パー処理することができるとともに、その組織を
全体に亘つて均一なベイナイト組織にすることが
でき、強靭性をもつ球状黒鉛鋳鉄部品を効率的に
製造できる。 また、そのとき、鋳造材料には合金元素として
MnおよびNi(またはCu)が所定の組成比だけ含
有され、このMnおよびNi(Cu)の配合によつて
Ms点が通常の球状黒鉛鋳鉄のものよりも下降し
て170℃より低い温度値となつている。このため、
上記オーステナイト化後に鋳造材料を170〜210℃
の温度に急冷しても、基地がマルテンサイト組織
に変態する危険性はごく僅かであり、機械的性質
(靭性)を損うことはない。 (実施例) 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。 本発明の実施例により製造する球状黒鉛鋳鉄部
品は、Cが3.0〜4.0重量%と、Siが2.0〜4.0重量%
と、Mgが0.02〜0.1重量%と、Mnが0.5〜2.0重量
%と、Niが0.5〜3.0重量%またはCuが0.3〜2.0重
量%の少なくとも一方とを有し、かつ残部が実質
的にFeとされた組成のもので、その基地組織は
ベイナイト組織に形成されており、例えばステア
リングナツクルやコンロツド等の自動車用部品等
の強度部品として用いられる。 ここで、上記各合金元素の配合比率の限定理由
について説明するに、Cの配合比率は、3.0重量
%未満では、他の合金元素としてMnを含有して
いるためにFe3C生成によるセメンタイト組織が
形成されてチル化し易く、加工が困難となるとと
もに、ひけ巣等の鋳造欠陥が発生し易い。一方、
4重量%を越えると、カーボンフローテーシヨン
やドロス等の欠陥が発生するので、よつて3.0〜
4.0重量%の範囲に設定されている。 また、Siの配合比率は、2.0重量%未満である
と、上記Cの場合と同様にチル化し易く、また鋳
造性も悪化する一方、4重量%を越えると、ドロ
ス等の鋳造欠陥が発生し易いとともに、オーステ
ナイト化温度が高くなつて不経済であるので、よ
つて2.0〜4.0重量%の範囲に設定されている。 さらに、Mgは球状黒鉛の生成を促すために必
要な元素であり、その配合比率は他の通常の球状
黒鉛鋳鉄材料の場合と同様に0.02〜0.1重量%の
範囲に設定されている。 Mnの配合比率については、鋳放しで使用する
通常の球状黒鉛鋳鉄では炭化物の形成傾向を抑え
て延性を増大させるために0.3重量%以下にし、
Mn/S比を10〜30程度にするのが良いとされて
いる。しかし、本発明のものにおいては、Mnは
Ms点を降下させるための必須の元素であり、そ
の効果を良好に得るのに0.5重量%以上は必要で
ある。一方、2.0重量%を越えると、鋳放しでチ
ルが生成してその加工が困難になるとともに、オ
ーステンパー処理後に白く局部的に硬いいわゆる
ブライトエリアを生じて機械的性質が損なわれ
る。よつて0.5〜2.0重量%の範囲に設定されてい
る。 さらに、Niの配合は、通常ベイナイト変態を
遅延させ、パーライト変態の生成を抑制する効果
があるが、本発明においては、ベイナイト変態の
遅延化を意図せずにMs点を下げることに主たる
効果を期待しているものである。そして、この
Niの配合比率は、0.5重量%未満では上記の効果
が薄く、また3.0重量%を越えると、オーステナ
イト組織が多量に残留し、常温での強度が弱くな
つて機械的性質が損なわれるばかりでなく、製品
コストの上昇を招いて好ましくない。よつて0.5
〜3.0重量%の範囲に設定される。 一方、Cuは上記Niの場合と同様にMs点を降下
させる効果を有するが、その効果はほぼNiの半
分程度である。しかし、Niが高価であるのに対
してCuは安価であり、しかもCuは上記Mnによ
るチル化傾向を大きく抑制する効果をも併せ持
つ。その場合のCuの配合比率は、0.3重量%未満
では上記の効果がなく、一方2.0重量%を越える
と効果が飽和するとともに黒鉛の球状化を阻害す
るので、0.3〜2.0重量%の範囲が好適である。 尚、上記C,Si,Mg,MnおよびNi(または
Cu)は本発明に係る球状黒鉛鋳鉄部品に必須の
元素で、この必須成分があれば本発明の効果が有
効に得られる。しかし、この他、残部のFe中に
CrおよびBが補助的に添加されていても差し支
えなく、その配合比率を適正に限定することで
Ms点の降下にある程度寄与することができる。
その場合、Crの配合比率にあつては、0.1重量%
未満ではMs点を下げる効果が期待できず、一方、
0.5重量%を越えると鋳造時に板状セメンタイト
組織が晶出していわゆる自銑化し、機械加工が困
難になるので、0.1〜0.5重量%の範囲に設定する
のが好ましい。 また、Bの配合比率にあつては、0.01重量%未
満では上記Crの場合と同様にMs点降下の効果が
なく、一方、0.05重量%を越えると自銑化するの
で、0.01〜0.05重量%の範囲に設定するのが好ま
しい。 このような球状黒鉛鋳鉄部品の製造方法の実施
例について説明する。先ず、通常の鋳造プロセス
によつて鋳造され、その後、加工された上記の如
き組成を有する球状黒鉛鋳鉄材料を、830〜1000
℃の温度に5時間以内の範囲で加熱保持して、そ
の基地組織をオーステナイト化する。 この場合、加熱温度を830〜1000℃の範囲に限
定するのは、830℃が基地組織をオーステナイト
化するために最低必要な温度であり、1000℃を越
えると結晶粒が粗大化するとともに加熱設備費が
高価となる理由による。 また、加熱保持時間は、部品の肉厚によつても
異なるが、概ね5時間を越えると結晶粒が粗大化
するとともに脱炭現象が生じるので、5時間以内
とし、好ましくは基地組織の十分なオーステナイ
ト化をも考慮して5分間〜5時間の範囲とするの
がよい。 このようなオーステナイト化後、上記鋳造材料
を液体窒素等の冷媒あるいは低温ソルト炉に投入
して170〜210℃の温度に急冷する。 その際、上記鋳造材料には合金元素としてMn
およびNi(またはCu)が含有されており、この
MnおよびNi(Cu)の配合によつてMs点が通常の
球状黒鉛鋳鉄のものよりも実質的に降下して170
℃より低い温度値となつている。それ故、上記オ
ーステナイト化後の急冷温度を170〜210℃として
も基地がマルテンサイト組織に変態する危険性は
ごく僅かであり、よつて機械的性質(靭性)を損
うことはない。 しかる後、上記急冷された鋳鉄材料を電気炉や
流動床炉等で220〜420℃の一定温度に5分間以上
加熱保持するいわゆるオーステンパー処理を行つ
たのち空冷し、以上によつて熱処理が完了して本
発明の球状黒鉛鋳鉄部品が得られる。 その場合、上記オーステンパー処理の加熱温度
は、220℃未満ではオーステンパー処理の効果が
不足し、一方、420℃を越えるとパーライト組織
が生成するので、220〜420℃の範囲が好ましい。 また、加熱保持時間は、5分間未満では基地組
織がベイナイト組織に変態するのに不足するので
5分間以上に設定するものである。 したがつて、このようにして得られた球状黒鉛
鋳鉄部品は、低温冷媒を利用して急冷するため、
第1図に示すように、肉厚が大きい厚肉部品で
も、その中心部が図で破線で示す従来の場合と較
べ短時間でもつて冷却されてパーライト組織へ変
態する虜れがなく、また、通常行われているよう
に等温変態曲線のパーライト変態開始時間を長時
間側にずらす効果を有するMo元素を添加する必
要もなく、よつて厚肉部品に対しても安価にかつ
容易にオーステンパー処理することができる。 また、オーステナイト化後に急冷するため、そ
の組織を全体に亘つて均一なベイナイト組織にす
ることができ、強靭性をもつ球状黒鉛鋳鉄部品を
効率的に製造できる。 さらに、球状黒鉛鋳鉄のMs点の降下により冷
却温度を下げることができるので、クエンチ用冷
媒として一般に採用されているソルト炉(設備費
およびランニングコストが高い)の替りに安価な
オイル、液体窒素等の使用が可能となり、さら
に、急冷後に恒温処理(昇温オーステンパー処
理)は通常の安価な電気炉等の使用が可能とな
り、よつて熱処理での設備費およびランニングコ
ストを低減することができ、強度部品としての球
状黒鉛鋳鉄部品を安価に得ることができる。 次に、具体例について説明すると、共試材とし
て下記表1に示す組成を有する本発明材と従来材
(JIS規格のFCD45)とをそれぞれ150Kgずつ高周
波炉にて溶解してY型ブロツクに鋳造し、この2
種類のY型ブロツクからそれぞれ引張試験片を複
数形成した。
法に関するものである。 (従来の技術) 一般に、特開昭55−94459号公報に示されてい
るように、球状黒鉛鋳鉄材料を固溶体形成温度
(830〜1000℃)に一定時間加熱保持してオーステ
ナイト化したのち、例えば220〜420℃の温度に所
定時間恒温保持するいわゆるオーステンパー処理
すると、その靭性が大幅に向上することは周知で
あり、この強靭性を利用してステアリングナツク
ルやコンロツド等の自動車用強度部品として使用
することが行われている。 (発明が解決しようとする課題) ところで、肉厚の大きな球状黒鉛鋳鉄部品に上
記したオーステンパー処理を施した場合、この球
状黒鉛鋳鉄部品の中心部は表面部に比べて極度に
冷却速度が遅いため、中心部にはパーライト組織
が析出して、要求されるベイナイト組織が生成さ
れず、目的の強靭性が得られないという問題があ
る。 そこで、上記肉厚の大きな球状黒鉛鋳鉄部品を
オーステナイト化後、通常の恒温処理温度(220
〜420℃)より低い温度、例えば170℃の低温ソル
ト炉等で急冷すれば球状黒鉛鋳鉄部品の中心部に
ベイナイト組織を得ることができる。 しかし、球状黒鉛鋳鉄部品の表面部は、低温ソ
ルト炉の温度と同等の170℃まで冷却されるため、
この表面部はMs点(マルテンサイト変態が始ま
る温度で通常210℃)以下の温度にまで降下して
しまい、マルテンサイト組織が生成されて、目的
の強靭性が得られないという問題がある。 このため、本発明は、上記の球状黒鉛鋳鉄の組
成を通常のものの組成とは変えて、そのMs点を
実質的に降下させるようにすることにより、肉厚
の大きな球状黒鉛鋳鉄部品においても、表面にマ
ルテンサイト組織を生成させることなく均一なベ
イナイト組織を生成して、強靭性の球状黒鉛鋳鉄
部品を得ることを目的とする。 (課題を解決するための手段) この目的の達成のため、本発明では、球状黒鉛
鋳鉄部品の製造方法として、3.0〜4.0重量%のC
と、2.0〜4.0重量%のSiと、0.02〜0.1重量%の
Mgと、0.5〜2.0重量%のMnと、0.5〜3.0重量%
のNiまたは0.3〜2.0重量%のCuの少なくとも一方
とを有し、かつ残部が実質的にFeとされた組成
の球状黒鉛鋳鉄を830〜1000℃の温度に5時間以
内加熱保持したのち170〜210℃の温度に急冷し、
しかる後220〜420℃の温度に5分間以上加熱保持
するオーステンパー処理を行うものである。 (作用) 上記の構成により、本発明では、球状黒鉛鋳鉄
を830〜1000℃の温度で5時間以内加熱保持する
オーステナイト化後に170〜210℃の温度に急冷す
るので、肉厚が大きい厚肉部品でも、その中心部
は短時間でもつて冷却されてパーライト組織へ変
態する虜れがなく、安価にかつ容易にオーステン
パー処理することができるとともに、その組織を
全体に亘つて均一なベイナイト組織にすることが
でき、強靭性をもつ球状黒鉛鋳鉄部品を効率的に
製造できる。 また、そのとき、鋳造材料には合金元素として
MnおよびNi(またはCu)が所定の組成比だけ含
有され、このMnおよびNi(Cu)の配合によつて
Ms点が通常の球状黒鉛鋳鉄のものよりも下降し
て170℃より低い温度値となつている。このため、
上記オーステナイト化後に鋳造材料を170〜210℃
の温度に急冷しても、基地がマルテンサイト組織
に変態する危険性はごく僅かであり、機械的性質
(靭性)を損うことはない。 (実施例) 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。 本発明の実施例により製造する球状黒鉛鋳鉄部
品は、Cが3.0〜4.0重量%と、Siが2.0〜4.0重量%
と、Mgが0.02〜0.1重量%と、Mnが0.5〜2.0重量
%と、Niが0.5〜3.0重量%またはCuが0.3〜2.0重
量%の少なくとも一方とを有し、かつ残部が実質
的にFeとされた組成のもので、その基地組織は
ベイナイト組織に形成されており、例えばステア
リングナツクルやコンロツド等の自動車用部品等
の強度部品として用いられる。 ここで、上記各合金元素の配合比率の限定理由
について説明するに、Cの配合比率は、3.0重量
%未満では、他の合金元素としてMnを含有して
いるためにFe3C生成によるセメンタイト組織が
形成されてチル化し易く、加工が困難となるとと
もに、ひけ巣等の鋳造欠陥が発生し易い。一方、
4重量%を越えると、カーボンフローテーシヨン
やドロス等の欠陥が発生するので、よつて3.0〜
4.0重量%の範囲に設定されている。 また、Siの配合比率は、2.0重量%未満である
と、上記Cの場合と同様にチル化し易く、また鋳
造性も悪化する一方、4重量%を越えると、ドロ
ス等の鋳造欠陥が発生し易いとともに、オーステ
ナイト化温度が高くなつて不経済であるので、よ
つて2.0〜4.0重量%の範囲に設定されている。 さらに、Mgは球状黒鉛の生成を促すために必
要な元素であり、その配合比率は他の通常の球状
黒鉛鋳鉄材料の場合と同様に0.02〜0.1重量%の
範囲に設定されている。 Mnの配合比率については、鋳放しで使用する
通常の球状黒鉛鋳鉄では炭化物の形成傾向を抑え
て延性を増大させるために0.3重量%以下にし、
Mn/S比を10〜30程度にするのが良いとされて
いる。しかし、本発明のものにおいては、Mnは
Ms点を降下させるための必須の元素であり、そ
の効果を良好に得るのに0.5重量%以上は必要で
ある。一方、2.0重量%を越えると、鋳放しでチ
ルが生成してその加工が困難になるとともに、オ
ーステンパー処理後に白く局部的に硬いいわゆる
ブライトエリアを生じて機械的性質が損なわれ
る。よつて0.5〜2.0重量%の範囲に設定されてい
る。 さらに、Niの配合は、通常ベイナイト変態を
遅延させ、パーライト変態の生成を抑制する効果
があるが、本発明においては、ベイナイト変態の
遅延化を意図せずにMs点を下げることに主たる
効果を期待しているものである。そして、この
Niの配合比率は、0.5重量%未満では上記の効果
が薄く、また3.0重量%を越えると、オーステナ
イト組織が多量に残留し、常温での強度が弱くな
つて機械的性質が損なわれるばかりでなく、製品
コストの上昇を招いて好ましくない。よつて0.5
〜3.0重量%の範囲に設定される。 一方、Cuは上記Niの場合と同様にMs点を降下
させる効果を有するが、その効果はほぼNiの半
分程度である。しかし、Niが高価であるのに対
してCuは安価であり、しかもCuは上記Mnによ
るチル化傾向を大きく抑制する効果をも併せ持
つ。その場合のCuの配合比率は、0.3重量%未満
では上記の効果がなく、一方2.0重量%を越える
と効果が飽和するとともに黒鉛の球状化を阻害す
るので、0.3〜2.0重量%の範囲が好適である。 尚、上記C,Si,Mg,MnおよびNi(または
Cu)は本発明に係る球状黒鉛鋳鉄部品に必須の
元素で、この必須成分があれば本発明の効果が有
効に得られる。しかし、この他、残部のFe中に
CrおよびBが補助的に添加されていても差し支
えなく、その配合比率を適正に限定することで
Ms点の降下にある程度寄与することができる。
その場合、Crの配合比率にあつては、0.1重量%
未満ではMs点を下げる効果が期待できず、一方、
0.5重量%を越えると鋳造時に板状セメンタイト
組織が晶出していわゆる自銑化し、機械加工が困
難になるので、0.1〜0.5重量%の範囲に設定する
のが好ましい。 また、Bの配合比率にあつては、0.01重量%未
満では上記Crの場合と同様にMs点降下の効果が
なく、一方、0.05重量%を越えると自銑化するの
で、0.01〜0.05重量%の範囲に設定するのが好ま
しい。 このような球状黒鉛鋳鉄部品の製造方法の実施
例について説明する。先ず、通常の鋳造プロセス
によつて鋳造され、その後、加工された上記の如
き組成を有する球状黒鉛鋳鉄材料を、830〜1000
℃の温度に5時間以内の範囲で加熱保持して、そ
の基地組織をオーステナイト化する。 この場合、加熱温度を830〜1000℃の範囲に限
定するのは、830℃が基地組織をオーステナイト
化するために最低必要な温度であり、1000℃を越
えると結晶粒が粗大化するとともに加熱設備費が
高価となる理由による。 また、加熱保持時間は、部品の肉厚によつても
異なるが、概ね5時間を越えると結晶粒が粗大化
するとともに脱炭現象が生じるので、5時間以内
とし、好ましくは基地組織の十分なオーステナイ
ト化をも考慮して5分間〜5時間の範囲とするの
がよい。 このようなオーステナイト化後、上記鋳造材料
を液体窒素等の冷媒あるいは低温ソルト炉に投入
して170〜210℃の温度に急冷する。 その際、上記鋳造材料には合金元素としてMn
およびNi(またはCu)が含有されており、この
MnおよびNi(Cu)の配合によつてMs点が通常の
球状黒鉛鋳鉄のものよりも実質的に降下して170
℃より低い温度値となつている。それ故、上記オ
ーステナイト化後の急冷温度を170〜210℃として
も基地がマルテンサイト組織に変態する危険性は
ごく僅かであり、よつて機械的性質(靭性)を損
うことはない。 しかる後、上記急冷された鋳鉄材料を電気炉や
流動床炉等で220〜420℃の一定温度に5分間以上
加熱保持するいわゆるオーステンパー処理を行つ
たのち空冷し、以上によつて熱処理が完了して本
発明の球状黒鉛鋳鉄部品が得られる。 その場合、上記オーステンパー処理の加熱温度
は、220℃未満ではオーステンパー処理の効果が
不足し、一方、420℃を越えるとパーライト組織
が生成するので、220〜420℃の範囲が好ましい。 また、加熱保持時間は、5分間未満では基地組
織がベイナイト組織に変態するのに不足するので
5分間以上に設定するものである。 したがつて、このようにして得られた球状黒鉛
鋳鉄部品は、低温冷媒を利用して急冷するため、
第1図に示すように、肉厚が大きい厚肉部品で
も、その中心部が図で破線で示す従来の場合と較
べ短時間でもつて冷却されてパーライト組織へ変
態する虜れがなく、また、通常行われているよう
に等温変態曲線のパーライト変態開始時間を長時
間側にずらす効果を有するMo元素を添加する必
要もなく、よつて厚肉部品に対しても安価にかつ
容易にオーステンパー処理することができる。 また、オーステナイト化後に急冷するため、そ
の組織を全体に亘つて均一なベイナイト組織にす
ることができ、強靭性をもつ球状黒鉛鋳鉄部品を
効率的に製造できる。 さらに、球状黒鉛鋳鉄のMs点の降下により冷
却温度を下げることができるので、クエンチ用冷
媒として一般に採用されているソルト炉(設備費
およびランニングコストが高い)の替りに安価な
オイル、液体窒素等の使用が可能となり、さら
に、急冷後に恒温処理(昇温オーステンパー処
理)は通常の安価な電気炉等の使用が可能とな
り、よつて熱処理での設備費およびランニングコ
ストを低減することができ、強度部品としての球
状黒鉛鋳鉄部品を安価に得ることができる。 次に、具体例について説明すると、共試材とし
て下記表1に示す組成を有する本発明材と従来材
(JIS規格のFCD45)とをそれぞれ150Kgずつ高周
波炉にて溶解してY型ブロツクに鋳造し、この2
種類のY型ブロツクからそれぞれ引張試験片を複
数形成した。
【表】
次いで、これらの試験片を加熱炉にて脱炭防止
しながら900℃の温度に2時間保持してオーステ
ナイト化したのち、低温ソルト炉に投入して150
〜190℃の範囲内の4種類の温度で2分間保持し
て急冷し(その際、1分間未満で完全に冷却され
た)、しかる後、高温ソルト炉にて350℃の温度に
2時間保持してオーステンパー処理した後、空冷
するという昇温オーステンパー処理を行つた。ま
た、このような昇温オーステンパー処理とは別
に、上記オーステナイト化後の試験片を直接高温
ソルト炉に投入して上記昇温オーステンパー処理
の場合と同条件でオーステンパー処理するという
ダイレクトオーステンパー処理(従来の熱処理方
法)を行つた。これらの試験片を引張試験し、そ
の試験結果を下記表2に示す。また、その試験結
果の中から伸びと冷却温度(低温ソルト炉の温
度)との関係を第2図に示す。さらに、上記引張
試験片のうち190℃の温度で急冷したものの顕微
鏡写真を第3図に示す。
しながら900℃の温度に2時間保持してオーステ
ナイト化したのち、低温ソルト炉に投入して150
〜190℃の範囲内の4種類の温度で2分間保持し
て急冷し(その際、1分間未満で完全に冷却され
た)、しかる後、高温ソルト炉にて350℃の温度に
2時間保持してオーステンパー処理した後、空冷
するという昇温オーステンパー処理を行つた。ま
た、このような昇温オーステンパー処理とは別
に、上記オーステナイト化後の試験片を直接高温
ソルト炉に投入して上記昇温オーステンパー処理
の場合と同条件でオーステンパー処理するという
ダイレクトオーステンパー処理(従来の熱処理方
法)を行つた。これらの試験片を引張試験し、そ
の試験結果を下記表2に示す。また、その試験結
果の中から伸びと冷却温度(低温ソルト炉の温
度)との関係を第2図に示す。さらに、上記引張
試験片のうち190℃の温度で急冷したものの顕微
鏡写真を第3図に示す。
【表】
第3図に示す顕微鏡写真から、従来例の球状黒
鉛鋳鉄材料(第3図b)は全体的にイプシロン炭
化物と推測される焼戻しマルテンサイト組織の生
成が見られるのに対し、本発明の球状黒鉛鋳鉄材
料(第3図a)は均一な針状のベイナイト組織に
形成されているのが判る。また、上記表2および
第2図から、本発明材の伸びはダイレクトオース
テンパー処理する高コストの熱処理方法と同等の
伸びを有する一方、従来材よりも高く、特に冷却
温度が170〜210℃のときに良好な一定値となるこ
とが判る。したがつて、これらの試験結果から、
本発明例は従来例に比較して靭性が高く、かつ安
価に製造できることが判る。 (発明の効果) 以上説明したように、本発明の球状黒鉛鋳鉄部
品の製造方法によれば、組成一成分としてMnと
NiまたはCuの少なくとも一方とが含有された組
成の球状黒鉛鋳鉄をオーステナイト化後、オース
テンパー処理温度よりも低い温度に急冷し、その
後、昇温オーステンパー処理を行うので、Ms点
を従来のものに比較して降下させ、大型部品でも
パーライト組織を析出することなく均一なベイナ
イト組織を持つ強靭性に優れた球状黒鉛鋳鉄部品
を容易に得ることができ、よつて自動車強度部品
等各種の強度部品に最適な球状黒鉛鋳鉄部品を効
率よくかつ低コストでもつて製造することができ
る。
鉛鋳鉄材料(第3図b)は全体的にイプシロン炭
化物と推測される焼戻しマルテンサイト組織の生
成が見られるのに対し、本発明の球状黒鉛鋳鉄材
料(第3図a)は均一な針状のベイナイト組織に
形成されているのが判る。また、上記表2および
第2図から、本発明材の伸びはダイレクトオース
テンパー処理する高コストの熱処理方法と同等の
伸びを有する一方、従来材よりも高く、特に冷却
温度が170〜210℃のときに良好な一定値となるこ
とが判る。したがつて、これらの試験結果から、
本発明例は従来例に比較して靭性が高く、かつ安
価に製造できることが判る。 (発明の効果) 以上説明したように、本発明の球状黒鉛鋳鉄部
品の製造方法によれば、組成一成分としてMnと
NiまたはCuの少なくとも一方とが含有された組
成の球状黒鉛鋳鉄をオーステナイト化後、オース
テンパー処理温度よりも低い温度に急冷し、その
後、昇温オーステンパー処理を行うので、Ms点
を従来のものに比較して降下させ、大型部品でも
パーライト組織を析出することなく均一なベイナ
イト組織を持つ強靭性に優れた球状黒鉛鋳鉄部品
を容易に得ることができ、よつて自動車強度部品
等各種の強度部品に最適な球状黒鉛鋳鉄部品を効
率よくかつ低コストでもつて製造することができ
る。
図面は本発明の実施例を示し、第1図は熱処理
による冷却曲線を示すグラフ、第2図は熱処理後
の冷却温度と伸びとの関係を示すグラフ、第3図
aおよびbはそれぞれ本発明例および従来例の球
状黒鉛鋳鉄材料の結晶構造を示す顕微鏡写真であ
る。
による冷却曲線を示すグラフ、第2図は熱処理後
の冷却温度と伸びとの関係を示すグラフ、第3図
aおよびbはそれぞれ本発明例および従来例の球
状黒鉛鋳鉄材料の結晶構造を示す顕微鏡写真であ
る。
Claims (1)
- 1 C:3.0〜4.0重量%と、Si:2.0〜4.0重量%
と、Mg:0.02〜0.1重量%と、Mn:0.5〜2.0重量
%と、Ni:0.5〜3.0重量%またはCu:0.3〜2.0重
量%の少なくとも一方とを有し、かつ残部が実質
的にFeとされた組成の球状黒鉛鋳鉄を、830〜
1000℃に5時間以内加熱保持したのち170〜210℃
に急冷し、しかる後220〜420℃に5分間以上加熱
保持するオーステンパー処理を行うことを特徴と
する強靭性を有する球状黒鉛鋳鉄部品の製造方
法。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP6818482A JPS58185745A (ja) | 1982-04-22 | 1982-04-22 | 強靱性を有する球状黒鉛鋳鉄部品の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP6818482A JPS58185745A (ja) | 1982-04-22 | 1982-04-22 | 強靱性を有する球状黒鉛鋳鉄部品の製造方法 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPS58185745A JPS58185745A (ja) | 1983-10-29 |
| JPH0461047B2 true JPH0461047B2 (ja) | 1992-09-29 |
Family
ID=13366438
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP6818482A Granted JPS58185745A (ja) | 1982-04-22 | 1982-04-22 | 強靱性を有する球状黒鉛鋳鉄部品の製造方法 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPS58185745A (ja) |
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| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPS58207354A (ja) * | 1982-05-26 | 1983-12-02 | Sugiyama Chuzo Kk | 球状黒鉛鋳鉄製揚重機部品の製造方法 |
| JPS59157221A (ja) * | 1983-02-25 | 1984-09-06 | Hitachi Metals Ltd | 球状黒鉛鋳鉄の製造法 |
| JPS6024318A (ja) * | 1983-02-25 | 1985-02-07 | Hitachi Metals Ltd | 球状黒鉛鋳鉄の製造法 |
| JPS60121253A (ja) * | 1983-12-05 | 1985-06-28 | Nissan Motor Co Ltd | 球状黒鉛鋳鉄 |
| JP2775049B2 (ja) * | 1984-03-09 | 1998-07-09 | 日立金属株式会社 | 球状黒鉛鋳鉄の製造法 |
| JPS6176612A (ja) * | 1984-09-21 | 1986-04-19 | Toyota Motor Corp | 高強度球状黒鉛鋳鉄の製造方法 |
| JPS6187816A (ja) * | 1984-10-03 | 1986-05-06 | Mazda Motor Corp | 鋳鉄の恒温処理法 |
| JPS6247424A (ja) * | 1985-08-23 | 1987-03-02 | Mazda Motor Corp | 鋳物の熱処理装置 |
| JPS63105920A (ja) * | 1986-10-23 | 1988-05-11 | Toyota Autom Loom Works Ltd | 鋳鉄品の熱処理方法 |
| JP2736772B2 (ja) * | 1987-04-14 | 1998-04-02 | 株式会社 小松製作所 | 熱解析によるオーステンパ熱処理方法及び装置 |
| JPS63290218A (ja) * | 1987-05-22 | 1988-11-28 | Komatsu Ltd | 球状黒鉛鋳鉄の製造方法 |
| JPH01136932A (ja) * | 1987-11-20 | 1989-05-30 | Kurimoto Ltd | ベイナイトダクタイル鋳鉄管の製造方法 |
| FR2866351B1 (fr) * | 2004-02-12 | 2006-04-28 | Technologica Sarl | Procede de fabrication de pieces en fonte a graphite spheroidal de grande precision geometrique et dimensionnelle et a caracteristiques mecaniques ameliorees |
| CN103205544B (zh) * | 2013-04-17 | 2014-10-29 | 辽宁北方曲轴有限公司 | 一种盐浴自升温的球墨铸铁双级等温淬火方法及应用该方法制备的等温淬火球铁 |
| CN106756464A (zh) * | 2016-12-27 | 2017-05-31 | 宁国市华丰耐磨材料有限公司 | 一种大尺径奥铁体球墨铸铁磨球的制备方法 |
| CN109852886B (zh) * | 2019-03-25 | 2024-05-14 | 山东速达新能源科技有限公司 | 一种高强度高韧性的球墨铸铁、曲轴及其制备方法 |
Family Cites Families (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPS55158249A (en) * | 1979-05-30 | 1980-12-09 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | As-cast pearlite nodular graphite cast iron casting |
| JPS569354A (en) * | 1979-07-06 | 1981-01-30 | Riken Corp | Tough spherical graphitic cast iron for abrasion resistant part |
-
1982
- 1982-04-22 JP JP6818482A patent/JPS58185745A/ja active Granted
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPS58185745A (ja) | 1983-10-29 |
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