JPH05210247A - 有機電子写真感光体 - Google Patents

有機電子写真感光体

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JPH05210247A
JPH05210247A JP15461491A JP15461491A JPH05210247A JP H05210247 A JPH05210247 A JP H05210247A JP 15461491 A JP15461491 A JP 15461491A JP 15461491 A JP15461491 A JP 15461491A JP H05210247 A JPH05210247 A JP H05210247A
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photoconductive
carrier
carrier generation
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JP15461491A
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Kazue Yamamoto
和重 山本
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Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 キャリア生成層としての電気的性質を光導電
材料とドーピング材料とのエネルギー準位から規定する
ことにより、高感度な光応答性可能な有機電子写真感光
体を提供する。 【構成】 電極層と、キャリア生成層およびキャリア輸
送層を成す有機光導電積層構造とを有する負帯電型有機
電子写真感光体において、光導電層の真空準位から価電
子帯の上端までのエネルギー差を EV 、光導電層にアク
セプターをドープしたときにおける真空準位から光導電
層のバンドギャップ内につくりだすアクセプター準位ま
でのエネルギー差 EA としたとき、 EA が次の条件式 E
A < EV −4kT/qを満足するようにキャリア生成層とし
ての電気的性質を規定する(ただし前記式においてkは
ボルツマン定数、Tは絶対温度、qは素電荷)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、キャリア生成層として
の電気的性質を光導電材料とドーピング材料とのエネル
ギー準位から規定することにより、高感度な光応答性を
付与した有機電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、複写装置、ファクシミリ装置ある
いはレーザービームプリンターなどに応用される有機電
子写真感光体の研究開発が、活発に行われている。
【0003】初期の有機電子写真感光体は、1970年代前
半のJ.W.Weigl らの報告(CurrentProblem in Electrop
hotography )にあるように、高分子中に光導電材料と
してたとえばフタロシアニンなどの有機光導電性顔料を
分散させ、これを図14に断面的に示すごとく、電極1面
上に膜厚10〜20μm に成膜して成る単層構造であった。
図14において2は高分子3中に分散された光導電性材料
を示す。この単層構造における動作機構は、光照射によ
って感光体4表面の光導電性材料2中で電荷発生が行わ
れ、発生した自由電子・自由正孔のうち表面電荷と同符
号のキャリアが、電界の向きに従って光導電性材料2間
を伝導し、基板(電極)1電荷と再結合するというもの
であった。この構成はプロセス面で非常に単純である
が、キャリア輸送効率が極端に低く、感度ではシリコン
系やカルコゲン系などの無機系と比較してかなりに劣っ
ていた。
【0004】これに対して、1976〜78年にかけて、図15
に断面的に示すごとく、Al電極1面上にキャリア生成層
(膜厚約 1μm )5およびキャリア(正孔)輸送層(膜
厚10〜20μm )6を設けて成る積層構造の負帯電型有機
電子写真感光体が提案され、実用的な性能が得られたこ
とが報告されている(たとえば、P.L.Nelz et al.,Phot
ogr.Sci.Eng.21,73(1977)) 。この積層構造における動
作機構は、光照射によってキャリア生成層5が電荷発生
を行い、発生した自由電子・自由正孔のうち正孔が、選
択的にキャリア輸送層6に注入・輸送され、表面電荷と
再結合するというものである。この構成においては、各
層5,6でキャリア生成・キャリア輸送とそれぞれの役
割が分担されており、先の単層の感光体4で問題となっ
た低いキャリア輸送効率は大幅に改善される。
【0005】このことによって、キャリア生成層5に用
いる光導電材料のキャリア生成効率で、感光体の光感度
が決定されることが明らかとなってきたが、高いキャリ
ア生成効率を有する有機材料の設計指針は現在のところ
全くなく、網羅的な分子合成とそのスクリーニングによ
って、ごく僅かのキャリア生成材料が得られているに過
ぎない。また、キャリア生成層5とキャリア輸送層6の
界面におけるキャリア注入の損失が、光感度に影響を及
ぼすことも指摘されているが現在のところ決定的な解決
策はなく、光導電材料に対してイオン化ポテンシャルの
小さいキャリア(正孔)輸送剤を選択し、キャリア注入
効率の向上を図っているのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】有機電子写真感光体
は、長年の開発により低速機用としての性能をほぼ満足
しつつあるが、電子写真装置の小型化、高速化により、
さらに高感度な光応答性を有する感光体が求められてい
る。このような要求を実現するには、電極から光導電層
への熱キャリア注入を抑えることによる感光体の帯電特
性の向上と、感光体の心臓部ともいえるキャリア生成層
中でのキャリア生成効率、ならびにキャリア生成層から
キャリア輸送層へのキャリア注入効率の向上が必要とな
る。しかし、アモルファスシリコンなどの無機材料に比
較して、有機材料の場合これらの性能が劣っており、し
かも、キャリア生成・キャリア注入を向上するための指
針もほとんどなく、未解決な課題として残されている。
【0007】一般に、有機電子写真感光体材料のキャリ
ア生成効率は、高くとも20〜30% 、通常1%以下であるこ
とが知られている。この様子を図1(a) を参照して半導
体のバンドモデルを用いて説明する。先ず、バンドギャ
ップ以上のエネルギーを持った光子が固体に入射すると
その吸収が起こる。すなわち、価電子帯にあった電子が
伝導帯に励起される。ここで、励起電子7が電場などの
外場によって自由キャリアとなる速度をKG 、価電子帯
の正孔8と再結合(失活)する速度をKR とすると、自
由キャリアとなる確率(量子効率)は、Φ=KG /KG
+KR で表される。一般の有機電子写真感光体材料で
は、前記KG の値がKR の値と比較してかなり小さいの
で、キャリア生成効率は小さい値を示す。これに対して
シリコンなどの無機材料ではKG の値が大きく、効率は
1に近い値を示す。したがって、感光体のキャリア生成
材料としては、KG が大きくKR が小さい値を示す材料
を選択・設定することが必要となってくる。換言すると
前記要求される特性に対しては、使用する有機電子写真
感光体材料の電気的性質の最適化が必要となる。
【0008】本発明は、上記事情に対処してなされたも
ので、キャリア生成層の電気的性質を光導電材料および
ドーピング材料のエネルギー準位から規定することによ
り、高感度な光応答性を可能とした有機電子写真感光体
の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、有機電子写真
感光体層にバンドモデルを適用し、キャリア生成層の電
気的性質を、光導電材料の伝導帯、フェルミ準位そして
価電子帯などのエネルギー準位と、ドーピング材料のア
クセプター準位もしくはドナー準位の関係から規定し
て、高感度な光応答性の実現を骨子とする。
【0010】すなわち、本発明は電極面上に、キャリア
生成層およびキャリア輸送層の有機層を積層して設けて
成る有機電子写真感光体において、前記キャリア生成層
が光導電材料およびアクセプター性材料を含有し、光導
電材料の真空準位から価電子帯の上端までのエネルギー
差(価電子帯レベル)をEV とし、この光導電材料にア
クセプター性材料をドーピングして真空準位から光導電
材料のバンドギャップ内につくりだすアクセプター準位
までのエネルギー差(Aレベル)をEA としたとき、E
A が条件式、EA <EV −4kT/q(qは素電荷、k
はボルツマン定数、Tは絶対温度)を満足することを特
徴とし、あるいは、前記キャリア生成層が光導電材料お
よびアクセプター性材料を含有し、光導電材料の真空準
位から伝導帯の下端までのエネルギー差(伝導帯レベ
ル)をEC とし、この光導電材料にドナー性材料をドー
ピングして真空準位から光導電材料のバンドギャップ内
につくりだすドナー準位までのエネルギー差(Dレベ
ル)を ED としたとき、ED が条件式、ED >EC
4kT/q(qは素電荷、kはボルツマン定数、Tは絶
対温度)を満足することを特徴としている。
【0011】
【作用】本発明に係る有機電子写真感光体では、光導電
層に電気的中性なアクセプター性材料あるいはドナー性
材料がドーピングされ、かつキャリア生成層の電気的な
性質をエネルギー準位から規定している。しかして、暗
時の帯電性はドーピングを行わない場合と比較してほと
んど変化なく、またAレベル(Dレベル)が有効な電子
捕獲準位(正孔捕獲準位)として作用するため、光照射
により励起電子(励起正孔)は速やかにAレベル(Dレ
ベル)に捕獲され、自由正孔(自由電子)の生成効率は
大きく増加する。したがって、高感度な光応答性を容易
に呈し、有機電子写真感光体としての機能向上が達成さ
れる。
【0012】
【実施例】以下本発明の実施例を説明する。
【0013】上記構成の本発明に係る有機電子写真感光
体は、次のような原理によっている。先ず、図1(b) に
模式的に示すように、光導電材料の真空準位からフェル
ミ準位までのエネルギー差(以下、フェルミレベルと省
略)をEF 、真空準位から伝導帯の下端までのエネルギ
ー差(以下、伝導帯レベルと省略)をEC 、そして、真
空準位から価電子帯の上端までのエネルギー差(以下、
価電子帯レベルと省略)をEV とする。そして、アクセ
プター性材料が光導電材料中にドーピングされた状態で
の真空準位からアクセプター準位までのエネルギー差
(以下、Aレベルと省略)をEA とし、またドナー性材
料が光導電材料中にドーピングされた状態での真空準位
からドナー準位までのエネルギー差(以下、Dレベルと
省略)をED とする。
【0014】ここで、光導電層にアクセプター性材料も
しくはドナー性材料がドーピングされた場合を考える
と、光導電材料の単分子状態での電気陰性度xHOSTと、
ドーピング材料の単分子状態での電気陰性度xGESTの大
小関係が、固体状態における電気的性質に大きな影響を
与える。電気陰性度は、真空中に置かれた単分子状態に
おける電子親和力とイオン化ポテンシャルの和を2で除
したもので、固体状態におけるフェルミレベルEF に相
当する。そして、図2(a) に模式的に示すように、ドナ
ー性材料ではxHOST>xGESTとなり、光導電材料がドー
ピング材料と比較して電子を引き付ける性質を示す。し
たがって、固体状態においては、Dレベルは正孔捕獲準
位として作用する。これに対して、図2(b) に模式的に
示すように、アクセプター性材料ではxHOST<xGEST
なり、ドーピンング性材料は光導電材料と比較して電子
を引き付ける性質を示す。したがって、固体状態におい
ては、Aレベルは電子捕獲準位として作用する。なお、
図2(a),(b) においてIP はイオン化ポテンシャル、E
a は電子親和力である。
【0015】一方、暗時、室温、熱平衡状態におけるド
ナー性材料をドーピングした光導電層を考えると、光導
電層のバンドギャップ内に形成されるDレベルは、熱エ
ネルギーkT/q(kはボルツマン定数、Tは絶対温
度、qは素電荷)に対するDレベルと伝導帯レベルとの
エネルギー差△E(=ED −EC )の大きさに依存し、
自身が正に帯電する割合が変化する。つまり、図3(a)
に模式的に示すように、正に帯電したDレベルの密度を
[D+ ]とし、電気的中性なDレベルの密度を[D0
とし、このときのDレベルの帯電の割合、[D+ ]/
[D0 ]がボルツマン分布に従うと仮定すると、△E=
kT/qでは[D+ ]/[D0 ]〜0.5、△E=4kT
/qではD+ /D0 〜0.02、そして△E=10kT/qで
は[D+]/[D0 ]〜0.00001 となり、△Eが熱エネ
ルギーと比較して大きくなるほど急速に[D0 ]の割合
が増加する。また、△Eが熱エネルギーと比較して小さ
くなるほどDレベルから伝導帯への電子の熱励起は容易
となる。このため、光導電層内部の自由キャリア(この
場合、伝導帯中の自由電子)は,△Eが大きくなるほど
減少する。また、Dレベルが荷電子帯の自由正孔を捕獲
する確率は△Eが大きくなるほど増加する。
【0016】さらに、光導電層にバンドギャップ以上の
エネルギーを持った光を照射する場合を考えると、ドナ
ー性材料の分子密度を光導電性材料の分子密度に対して
1%以下とすると、光学吸収のほとんどが光導電性材料で
行われる。そして、価電子帯に発生した正孔の挙動は、
図4(a) に模式的に示すごとく、以下の3過程に分けら
れる。(1) 電子と解離して自由電子、自由正孔となる過
程(キャリア生成速度KG )。(2) 価電子帯に落ち込ん
だ電子と再結合する過程(再結合速度KR )。 (3) Dレベルに捕獲される過程(正孔捕獲速度KHT)。
【0017】ここで、(3) の過程は、励起正孔を捕獲す
ることによって伝導帯に自由電子を生成する過程とな
る。そして、Dレベルが関与したときの自由キャリアと
なる確率は、Φ=(KG +KHT)/(KG +KR
HT)で表され、KHTが大きくなりKR に近づくほど再
結合の割合は大きく減少する。このため、キャリア効率
Φは(3) の過程がない場合と比較して大きく増加し、特
に自由電子が自由正孔と比較して多数生成される。
【0018】次に、暗時、室温、熱平衡状態におけるア
クセプター性材料をドーピングした光導電層を考える
と、光導電層のバンドキャップ内に形成されるAレベル
は、熱エネルギーkT/q(kはボルツマン定数、Tは
絶対温度、qは素電荷)に対するAレベルと価電子帯レ
ベルとのエネルギー差△E(=EV −EA )の大きさに
依存し、自身が負に帯電する割合が変化する。つまり、
図3(b) に模式的に示すごとく、負に帯電したAレベル
の密度を[A- ]レベルとし、電気的中性なAレベルを
[A0 ]レベルとする。この時のAレベルの帯電の割合
がボルツマン分布に従うと仮定すると、△E=kT/q
では[A- ]/[A0 ]〜0.6 、△E=4kT/qでは
[A- ]/[A0 ]〜0.02、そして△E=10kT/qで
は[A- ]/[A0 ]〜0.00005 となり、△Eが熱エネ
ルギーと比較して大きくなるほど急速に[A0 ]の割合
が増加する。そして、△Eが熱エネルギーと比較して小
さくなるほどAレベルから価電子帯への正孔の熱励起は
容易となるので、光導電層内部の自由キャリア(この場
合、価電子帯中の自由正孔)は、△Eが大きくなるほど
減少する。また、Aレベルが伝導帯の自由電子を捕獲す
る確率は、△Eが大きくなるほど増加する。
【0019】ここでまた、光導電層にバンドギャップ以
上のエネルギーを持った光を照射する場合を考える。こ
のとき、アクセプター性材料の分子密度は光導電性材料
の分子密度に対して1%以下とすると、光学吸収のほとん
どが光導電性材料で行われ、伝導帯へ叩き上げられた電
子の挙動は、図4(b) に模式的に示すごとく、以下の3
過程に分けられる。
【0020】(4) 正孔と解離して自由電子、自由正孔と
なる過程(キャリア生成速度KG )。 (5) 価電子帯に落ち込んで正孔と再結合する過程(再結
合速度KR )。
【0021】(6) Aレベルに捕獲される過程(電子捕獲
速度KET)。
【0022】ここで、(6) の過程は、励起電子を捕獲す
ることによって価電子帯に自由正孔を生成する過程とな
る。そして、Aレベルが関与したときの自由キャリアと
なる確率はΦ=(KG +KET)/(KG +KR +KET
で表され、KETが大きくなりKR に近づくほど再結合の
割合は大きく減少する。このため、キャリア効率Φは、
前記(6) の過程がない場合に比較して大きく増加し、特
に自由正孔が自由電子と比較して多数生成される。
【0023】ところで、負帯電型有機電子写真感光体の
キャリア生成層に求められる電気的性質としては、 (7) 暗時に自由正孔の密度が小さい(帯電性の向上)。
【0024】(8) 光照射時に自由正孔の密度が大きい
(光感度の向上)。
【0025】を満足することが要求される。このため、
キャリア生成層としてアクセプター性材料をドーピング
し、そのときのAレベルのエネルギー位置が、 EA <EV −4kT/q (1) を満足する場合、Aレベルはそのほとんどが電気的中性
なレベルとなる。したがって、電気的中性な[A0
は、励起電子の捕獲準位として働き、[A0 ]が
[A- ]と比較して小さい場合、あるいはドナー性材料
がドーピングされた場合、もしくはドーピングを行わな
い場合と比較して、自由正孔の生成効率が大きく向上す
ることが期待される。また、前記のようにAレベルはそ
のほとんどが中性となるため、暗時の自由正孔の密度を
非常に小さく抑えることが可能となり、感光体の帯電性
の向上が期待される。
【0026】なお、光導電材料、アクセプター性材料、
ドナー性材料ごとに、EC 、EV 、EA 、ED は異なる
ため、上記条件式(1)を満足する材料を決定するに
は、光導電材料単独の薄膜からそのエネルギーレベル
(EC 、EV )を決定する方法と、光導電材料にドーピ
ングを行った薄膜からそのエネルギーレベル(EA 、E
D )を決定する方法が必要となる。そして、実際にドー
ピング効果を確認するため、薄膜のキャリア生成効率を
決定する方法が必要となる。これは以下に説明するよう
な方法に従って求めることができる。
【0027】先ず、光導電材料のEC 、EV を決定する
ため、図5(a) に示すような金属電極10a 、光導電層
(光導電材料膜)11、シリコン酸化膜12、シリコン13お
よび金属電極(裏面電極)10b の各層が順次積層された
素子を形成する。次いで、この素子に三角波電圧を印加
して、そのとき素子に流れる変位電流を測定する。ここ
で素子の電気容量をCとすると、変位電流Iは、 I=C・dV/dt (2) となる。
【0028】ここで、前記光導電層(有機層)11がない
場合、素子は通常よく知られたMOS素子となり、図5
(b) に示すように電流値Iは、シリコン酸化膜12の容量
Si O によって決まる。一方、有機層11がある場合、電
極10a の仕事関数ΦM と光導電層(有機層)11のフェル
ミレベルEF の大小関係に依存して、次のような変位電
流が観測される。
【0029】(a) ΦM <EF この場合、電極10a と光導電層(有機層)11とが成す界
面の電気特性は、電子注入に対してオーミック接合、ま
た正孔に対してブロッキング接合となる。したがって、
素子に三角波電圧を印加すると、電極10a 側が負のとき
に電極10a から光導電層11に電子が注入され、この電子
が光導電層11とシリコン酸化膜12の界面に蓄積する。こ
のとき、素子を流れる電流値Iは酸化膜12の容量CSiO
で決まる値となり、MOS素子の電流レベルと等しくな
る。一方、電極10a 側が正となるときは、光導電層11中
の電子は金属電極10a に流れ去り、正孔も注入されない
ため、光導電層11の絶縁体化が起こる。このため、電流
値Iは酸化膜12の容量CSi O と光導電層11の容量COrg
の直列容量で決まる値となり、MOS素子の電流レベル
に比較して、小さい値まで減少する。図6(a) はこの状
態を模式的に示したものである。
【0030】次に、光導電層11のEC を決定するため、
変位電流が増加し始める立ち上がり電圧VInj に注目す
る。電極10a の仕事関数と光導電層11の伝導帯レベルの
エネルギー障壁をEBH=ΦM −EC とすると、EBH≦0
ではエネルギー障壁が存在しないため、変位電流は 0ボ
ルトから増加し始め、VInj =0 となる。これに対し
て、EBH>0 では電子注入に対しエネルギー障壁が存在
するため、立ち上がり電圧はVInj =−EBHとなり、エ
ネルギー障壁が大きいほど、変位電流が増加し始める電
圧VInj は、負の高電圧側にシフトする。図6(b) はこ
の状態を模式的に示したものである。このような挙動に
より、EBH>0 となる電極10a を選択し、そのVInj
求めることで、EC =ΦM −VInj から光導電層11の伝
導帯レベルを決定することができる。
【0031】(b) ΦM >EF この場合、電極10a と光導電層(有機層)11とが成す界
面の電気特性は、正孔注入に対してオーミック接合、ま
た電子に対してブロッキング接合となる。したがって、
素子に三角波電圧を印加すると、電極10a 側が正のとき
に電極10a から光導電層11に正孔が注入され、この正孔
が光導電層11とシリコン酸化膜12との界面に蓄積する。
このとき、素子を流れる電流値Iは酸化膜12の容量C
SiO で決まる値となり、MOS素子の電流レベルと等し
くなる。一方、電極10a 側が負になるときは、光導電層
11中の正孔は金属電極10a に流れ去り、電子も注入され
ないため、光導電層11の絶縁体化が起こる。このため、
電流値Iは酸化膜12の容量CSiO と光導電層の容量C
Org の直列容量で決まる値となり、MOS素子の電流レ
ベルに比較して、小さい値まで減少する。図7(a) はこ
の状態を模式的に示したものである。
【0032】次に、光導電層のEV を決定するため、変
位電流が増加し始める立ち上がり電圧VInj に注目す
る。電極10a の仕事関数および光導電層11の価電子帯レ
ベルのエネルギー障壁をEBH=EV −ΦM とすると、E
BH≦0 ではエネルギー障壁が存在しないため、変位電流
は 0ボルトから増加し始め、VInj =0 となる。これに
対して、EBH>0 では正孔注入に対しエネルギー障壁が
存在するので、立ち上がり電圧はVInj =EBHとなり、
エネルギー障壁が大きいほど、変位電流の増加し始める
電圧VInj は、正の高電圧側にシフトする。図7(b) は
この状態を模式的に示したものである。したがって、E
BH>0 となる電極10a を選択して、そのVInj を求める
ことで、EC =ΦM +VInj から光導電層の価電子帯レ
ベルを決定することができる。
【0033】ドーピング材料のドナー性、アクセプター
性の決定は、次のように行い得る。すなわち、前記図5
(a) に図示した場合と同様の構成を成す素子を形成し
(ただし光導電層11にはドーピング材料含有)、前記と
同様な変位電流測定を行う。ドーピング材料のEC 、E
V を決定し、フェルミレベルEF をEF =(EC
V)/2 から求める。このとき、EF (光導電材料)
>EF (ドーピング材料)であれば、ドーピング材料は
ドナーとして働く。また、EF (光導電材料)<E
F(ドーピング材料)であれば、ドーピング材料はアク
セプターとして働く。
【0034】次に、ドーピング材料のED 、EA を決定
するため、前記ドーピング材料のドナー性、アクセプタ
ー性の決定用に形成した素子を用い、同様に変位電流測
定を行う。ここで、光導電層のバンドギャップよりもエ
ネルギーの小さい近赤外光あるいは赤外光を照射しなが
ら測定を行うと、ドーピング材料のエネルギー位置に依
存して次のような変位電流が観測される。
【0035】(c) D+ レベル Dレベルが伝導帯に近い場合、すなわち△E=ED −E
C が小さい場合、Dレベルは正に帯電している。ここに
近赤外光が入射するとhc/λ=EV −ED(hはプラ
ンク定数、cは光速、λは光の波長)に対応した波長の
光が選択的に吸収され、価電子帯からDレベルへ電子励
起(D+ +e→D0 )が起こり、自由正孔を生成する。
電極金属として光導電層に電子・正孔いずれも注入が起
こらない金属を選択し、赤外光の波長を変えながら変位
電流の電流値を観測すると、上記の電子励起に対応した
波長のとき、変位電流は大きく増加する。図8(a) はこ
の状態を模式的に示したものである。このような現象か
ら、その波長λと光導電材料のEV とからDレベルのE
D を決定することができる。
【0036】(d) D0 レベル Dレベルが伝導帯から遠い場合、すなわち△E=ED
C が大きい場合、Dレベルは電気的に中性である。こ
の状態で、近赤外光あるいは赤外光が入射するとhc/
λ=ED −EC (hはプランク定数、cは光速、λは光
の波長)に対応した波長の光が選択的に吸収され、Dレ
ベルから伝導帯へ電子励起(D0 −e→D+ )が起こ
り、自由電子が生成する。電極金属として光導電層に電
子・正孔いずれも注入が起こらない金属を選択し、赤外
光の波長を変えながら変位電流の電流値を観測すると、
上記の電子励起に対応した波長のとき、変位電流は大き
く増加する。図8(b) はこの状態を模式的に示したもの
である。このような現象から、その波長λと光導電材料
のEC とからDレベルのED を決定することができる。
(e) A- レベル Aレベルが価電子帯に近い場合、すなわち△E=EV
A が小さい場合、Aレベルは負に帯電している。この
状態で近赤外光が入射すると、hc/λ=EA−E
C (hはプランク定数、cは光速、λは光の波長)に対
応した波長の光が選択的に吸収され、Aレベルから伝導
帯へ電子励起(A- −e→A0 )が起こり、自由電子が
生成する。電極金属として光導電層に電子・正孔いずれ
も注入が起こらない金属を選択し、赤外光の波長を変え
ながら変位電流の電流値を観測すると、上記の電子励起
に対応した波長のとき、変位電流は大きく増加する。図
9(a)はこの状態を模式的に示したものである。このよ
うな現象から、その波長λと光導電材料のEC とからA
レベルのEA を決定することができる。
【0037】(F) A0 レベル Aレベルが価電子帯に遠い場合、すなわち△E=EV
A が大きい場合、Aレベルは電気的中性である。この
状態で近赤外光が入射すると、hc/λ=EV−E
A (hはプランク定数、cは光速、λは光の波長)に対
応した波長の光が選択的に吸収され、価電子帯からAレ
ベルへ電子励起(A0 +e→A- )が起こり、自由正孔
が生成する。電極金属として光導電層に電子・正孔いず
れも注入が起こらない金属を選択し、赤外光の波長を変
えながら変位電流の電流値を観測すると、上記の電子励
起に対応した波長の時、変位電流は大きく増加する。図
9(b)はこの状態を模式的に示したものである。このよ
うな現象から、その波長λと光導電材料のEV とからA
レベルのEA を決定することができる。
【0038】次に、各エネルギーレベル(EC 、EV
D 、EA )が決定された光導電層の光キャリア生成効
率Φを求める方法について説明する。
【0039】上記と同様な、金属電極10a /光導電層
(光導電材料+ドーピング材料)11/シリコン酸化膜12
/シリコン13/金属電極10b で構成される素子(図5
(a) 参照)を形成し、このときの電極金属は電極から光
導電層11へキャリア注入が起こらない材料を選択する。
ここで、素子中の光導電性材料の吸収帯に対応する波長
の光を照射すると、光導電層11内部で自由キャリアが生
成され、図10に模式的に示すごとく、変位電流は増加す
る。暗時、φボルトにおいて光導電層11中に単位ボルト
当たり生成する自由キャリア密度をnd 、 0〜φボルト
までに誘起される全キャリア密度をNd 、光照射時のキ
ャリア密度を同様にn、Nと仮定する。これより光照射
により余剰に生成されたキャリア密度nph、Nphは、 nph=n−nd (3a) Nph=N−Nd (3b) と表せる。暗時および光照射時の変位電流をId 、Iph
とすると、 nph=(e・dV/dt)1 (Iph−Id ) (4a)
【0040】
【数1】
【0041】となり、nphは光照射時と暗時の変位電流
の差から、Nphは変位電流の積分値の差から簡単に得ら
れ、それぞれ吸収光子数Pで割ると、光キャリア生成効
率が求まる。ここではNphを求め、これより導かれる効
率Φを生成効率として採用する 。 Φ=Nph/P (5) 以上の測定に基づいて、光導電材料と各種アクセプター
性材料を組み合わせ、そのAレベルエネルギーEA を変
化させた光導電層の光キャリア生成効率Φを求めた結
果、Aレベルが電気的中性となる場合、すなわち前記条
件式(1)を満足する場合、条件式(1)を満足しない
アクセプター性材料を用いた場合、ドナー性材料を用い
た場合、あるいはドーピングを行わない場合と比較し
て、自由正孔に対する生成効率の向上が認められた。こ
うした事実から、負帯電型有機電子写真感光体のキャリ
ア生成層に対する、電気的に中性なアクセプター性材料
のドーピングも、上述と同様な効果が得らるれることに
なる。
【0042】また、感光体が正帯電型の素子構造、たと
えば電極/キャリア生成層/キャリア輸送層からなる有
機積層構造において、キャリア生成層中にドナー性材料
をドーピングする場合も同様である。すなわち、光導電
材料にドナー材料をドーピングし、真空準位から光導電
材料のバンドキャップ内につくりだすドナー準位までの
エネルギーED が次の条件式 ED >EC +4kT/q (6) を満足するような電気的中性な[D0 ]は、[D0 ]が
[D+ ]と比較して小さい場合、あるいはアクセプター
性材料をドーピングした場合、あるいはドーピングを行
わない場合と比較して、自由電子に対する生成効率の向
上と、暗時の帯電特性の向上が期待される。
【0043】そして、上記の測定に基づいて光導電材料
と各種ドナー性材料を組み合わせ、そのDレベルエネル
ギーED を変化させた光導電層の光キャリア生成効率Φ
を求めた結果、Dレベルが電気的中性となる場合、すな
わち条件式(6)を満足する場合、条件式(6)を満足
しないドナー性材料を用いた場合、アクセプター性材料
を用いた場合、あるいはドーピングを行わない場合と比
較して、自由電子に対する生成効率の向上が認められ
た。つまり、実際の正帯電型有機電子写真感光体のキャ
リア生成層への電気的中性なドナー性材料のドーピング
も、前記アクセプターをドーピンクした場合と同様な作
用・効果が得られることになる。
【0044】次に本発明の具体例を説明する。
【0045】図11は本発明に係る負帯電型有機電子写真
感光体を断面的に示したもので、感光体は電極1、第1
の有機層(キャリア生成層)5、そして第2の有機層
(キャリア輸送層)6から構成されている。光はキャリ
ア輸送層6側から照射され、またキャリア生成層5はキ
ャリア輸送層6と比較して1/100 〜1/3 程度の膜厚を有
する構造を成している。
【0046】図12(a) は前記構成の負帯電型有機電子写
真感光体を構成する各層の接合以前の独立な状態下での
バンド状態を模式的に示したもので、電極1の仕事関数
をΦN 、第1有機層のキャリア生成層5のフェルミレベ
ルをEF1、伝導帯レベルをEC1、そして価電子帯レベル
をEV1とし、アクセプター性材料がキャリア生成層5の
バンドギャップ内に形成するAレベルをEA とする。ま
た第2の有機層を成すキャリア輸送層6のフェルミレベ
ルをEF2、伝導帯レベルをEC2、そして価電子帯レベル
をEV2とすると、図12(a) より、EC1>EC2、EV1〜E
V2、EG1=EV1−EC1(キャリア生成層5のバンドギャ
ップ)<EG1=EV2−EC2(キャリア輸送層6のバンド
ギャップ)とし、キャリア生成層/キャリア輸送層界面
の正孔注入が行い易い材料を選択している。
【0047】図12(b) は各層の接合後の熱平衡状態下で
のバンド状態を模式的に示したもので、熱平衡状態では
各層のフェルミレベルは一致しており、また、電極1と
キャリア生成層5界面のごく近傍でAレベルは負に帯電
し、その他の領域では電気的中性を保っている。さら
に、キャリア生成層5とキャリア輸送層6との界面では
正孔が注入されやすい接合が形成されている。
【0048】ここで、感光体の電極1に正、キャリア輸
送層6表面に負の電圧を印加しても、Aレベルは価電子
帯からエネルギー的に離れているため、感光体の帯電に
より新たに負に帯電して熱的に自由正孔を生成するAレ
ベルの密度は極めて少ない。そしてキャリア輸送層6表
面は、感光体中への電子注入を防ぐ働きをするため、感
光体は長時間安定に帯電状態を保つ。つづいて感光体に
光照射を行うと、キャリア生成層5に励起された電子
は、速やかにAレベルに捕獲され、価電子帯中に自由正
孔が生成される。この自由正孔は電界の向きに従ってキ
ャリア輸送層6へ速やかに掃き出され、キャリア生成層
5中に[A- ]レベルが多数存在する場合、あるいはド
ーピングを行わない場合と比較して、自由正孔の生成効
率の増加が可能となる。
【0049】実施例1 図12(a) に図示した構造の負帯電型有機電子写真感光体
において、電極1をアルミニウムで、キャリア生成層5
を次式で示すアルミクロルフタロシアニン(光導電材
料)およびビスアンスアンスロン(アクセプター性材
料)で、
【0050】
【化1】
【0051】
【化2】
【0052】さらに、キャリア(正孔)輸送層6を次式
で示すテトラフェニルベンジジンにて、
【0053】
【化3】
【0054】構成した。この構成系が、前記図12(a),
(b) の条件を満足することは、先に説明した各種変位電
流法により確認した。
【0055】次いで、感光体の作成プロセスを述べる。
ここででは電極としてのAl基板1上に真空昇華法(〜10
-6torr)によってアルミクロルフタロシアニンとビスア
ンスアンスロンを重量比で100:1 に共蒸着し膜厚約100n
m (1000オングストローム)のキャリア生成層5を形成
した。なお、実際の製造プロセスにおけるキャリア生成
層5の形成方法は、真空蒸着法、真空昇華法などによっ
て製膜されたものでも、あるいはキャリア生成層5に用
いられるアクセプター性材料をドーピングした光導電材
料を結着材である高分子に分散することで製膜されたも
のでもよい。また、前者の場合、その膜厚は50〜500nm
(500 〜5000オングストローム)程度とし、後者の場合
0.1〜 3μm 程度に電極1上に製膜する。そして最後
に、テトラフェニルベンジジンをポリカーボネイト中に
分散し膜厚約20μm の膜を形成し感光体とした。実際の
製造プロセスにおけるキャリア輸送層6の形成方法は、
キャリア(正孔)輸送剤を結着材である高分子に分散す
ることでキャリア生成層5上に10〜30μm 程度の膜厚に
製膜する。また、キャリア生成層5およびキャリア輸送
層6に用いる高分子の種類は特に限定されない。(以下
余白) そして比較のため、アクセプター性材料として次式で示
されるテトラシアノキノジメタンをドーピングしたキャ
リア生成層(比較例1)と、ドーピングを行わないアル
ミクロルフタロシアニン単独のキャリア生成層(比較例
2)を用いた構成の有機電子写真感光体を用意した。な
お、テトラシアノキノジメタンが形成するAレベルが、
価電子帯のごく近傍にあることは先の変位電流で確認し
た。
【0056】
【化4】
【0057】なお、比較例1の場合は、アルミクロルフ
タロシアニンとテトラシアノキノジメタンとを重量比で
100:1 に共蒸着し、膜厚約100nm (1000オングストロー
ム)のキャリア生成層を形成した。また、比較例2の場
合は、アルミクロルフタロシアニン単独で真空蒸着し、
膜厚約100nm (1000オングストローム)のキャリア生成
層を形成した。
【0058】上記構成の本発明に係る感光体に約-6kVの
コロナ帯電を行ったところ、-1580Vの帯電電位を示し、
1 分後も電位はほとんど減衰が認められなかった。そし
て、光照射により 3.6erg/cm2 の光感度を示した。一
方、比較例1の場合、-80Vしか帯電せず、 1分後には電
位は約1/2 に減少した。そしてほとんど光感度を示さな
かった。また、比較例2の場合は、-1810Vと良好な帯電
電位を示したが、光照射により10.3erg/cm2 の光感度し
か示さなかった。
【0059】実施例2 上記実施例1の場合において、キャリア生成層5を次式
で示すチタニルフタロシアニンおよびビスアンスアンス
タロン(アクセプター性材料)で、さらにキャリア輸送
層6をテトラフェニルベンジジンにてそれぞれ構成し
た。
【0060】
【化5】
【0061】この構成系が、前記図12(a),(b) で図示し
た条件を満足することを、先に説明した各種変位電流法
により確認した。
【0062】また比較のため、チタニルフタロシアニン
にテトラシアノキノジメタン(アクセプター性材料)を
ドーピングしたキャリア生成層(比較例3)と、ドーピ
ングを行わないチタニルフタロシアニン単独のキャリア
生成層(比較例4)を用いた構成の有機電子写真感光体
を用意した。
【0063】なお、比較例3および4の場合は、いずれ
も比較例1および比較例2の場合と同様にの条件でキャ
リア生成層を形成した。
【0064】上記構成の実施例2の感光体に約-6kVのコ
ロナ帯電を行ったところ、-1750Vの帯電電位を示し、1
分後も電位はほとんど減衰が認められなかった。そし
て、光照射により 5.4erg/cm2 の光感度を示した。一
方、比較例3の場合、-100V しか帯電せず、 1分後には
電位は2/3 に減少した。そしてほとんど光感度を示さな
かった。また、比較例4の場合は、-1850Vと良好な帯電
電位を示したが、光照射により11.6erg/cm2 の光感度し
か示さなかった。
【0065】実施例3 次に、正帯電型有機電子写真感光体の場合について説明
する。
【0066】感光体は、前記図11に図示した場合と基本
的に同様な構成を成し、電極1、第1の有機層(キャリ
ア生成層)5、そして第2の有機層(キャリア輸送層)
6から構成されている。光はキャリア輸送層側6から照
射され、キャリア生成層5はキャリア輸送層6と比較し
て1/100 〜1/3 程度の膜厚を有している。
【0067】図13(a) は、感光体を構成する各層の接合
以前の独立な状態下でのバンドを模式的に示したもの
で、電極1の仕事関数をΦM 、第1の有機層を成すキャ
リア生成層5のフェルミレベルをEF1、伝導帯レベルを
C1、そして価電子帯レベルをEV1とし、ドナー性材料
がキャリア生成層5のバンドギャップ内に形成するDレ
ベルをED とする。また、第2の有機層のキャリア輸送
層6のフェルミレベルをEF2、伝導帯レベルをEC2、そ
して価電子帯レベルをEV2とする。図13(a) より、EC1
〜EC2、EV1<EV2、EC1=EV1−EC1(キャリア生成
層のバンドギャップ)<EC2=EV2−EC2(キャリア輸
送層のバンドギャップ)とし、キャリア生成層5および
キャリア輸送層6界面の電子注入が行い易い材料を選択
している。
【0068】図13(b) は、各層の接合後の熱平衡状態下
でのバンドを模式的に示したもので、熱平衡状態で各層
のフェルミレベルは一致している。そして、電極1とキ
ャリア生成層5との界面のごく近傍で、Dレベルは正に
帯電し、その他の領域では電気的中性を保っている。ま
た、キャリア生成層5とキャリア輸送層6との界面で
は、電子が注入されやすい接合が形成されている。
【0069】ここで、感光体の電極1に負、キャリア輸
送層6の表面に正の電圧を印加しても、Dレベルは伝導
帯からエネルギー的に離れているため、感光体の帯電に
より新たに正に帯電して、熱的に自由電子を生成するD
レベルの密度は極めて少ない。そしてキャリア輸送層6
の表面は、感光体中への正孔注入を防ぐ働きをするた
め、感光体は長時間安定に帯電状態を保つ。しかして、
感光体に光照射を行うと、価電子帯に励起された正孔は
速やかにDレベルに捕獲され、伝導帯中に自由電子が生
成される。この自由電子は電界の向きに従ってキャリア
輸送層6へ速やかに掃き出され、キャリア生成層5中に
+ レベルが多数存在する場合、あるいはドーピングを
行わない場合と比較して、自由電子の生成効率の増加が
可能となる。
【0070】前記正帯電型有機電子写真感光体におい
て、電極1をアルミニウムで、キャリア生成層5を上記
アルミクロルフタロシアニン(光導電材料)および次式
で示されるアルミフタロシアニンダイマー(ドナー性材
料)で、
【0071】
【化6】
【0072】さらに、キャリア輸送層6を次式で示され
るテトラプロピルジフェノキノン
【0073】
【化7】
【0074】にて構成した。この構成系が、前記図13
(a),(b) で図示した条件を満足することを、先に説明し
た各種変位電流法により確認した。
【0075】前記構成の感光体は次のようなプロセスで
作成した。すなわち、電極としてのAl基板1上に真空昇
華法(〜10-6torr)によって、アルミクロルフタロシア
ニンおよびアルミフタロシアンダイマーを重量比で100:
1 に共蒸着し、膜厚約100nm(1000オングストローム)
のキャリア生成層5を形成した。なお、実際の製造プロ
セスでのキャリア生成層5の形成は、真空蒸着法、真空
昇華法などによって製膜されたものでも、あるいはキャ
リア生成層5に用いられるドナー性材料をドーピングし
た光導電材料を結着材である高分子に分散することで製
膜されたものでもよい。また、前者の場合その膜厚は50
〜500nm ( 500〜5000オングストローム)程度とし、後
者の場合 0.1〜 3μm 程度に電極上に製膜する。そして
最後に、テトラプロピルジフェノキノンをポリカーボネ
イト中に分散し膜厚約20μm の膜を形成し感光体とし
た。なお、実際の製造プロセスでのキャリア輸送層6の
形成は、キャリア(電子)輸送剤を結着材である高分子
に分散することでキャリア生成層5上に10〜30μm 程度
の膜厚に製膜する。また、キャリア生成層5およびキャ
リア輸送層6に用いる高分子の種類は特に限定されな
い。
【0076】また、比較のため、ドナー性材料として次
式で示すテトラチアフルバレン
【0077】
【化8】
【0078】をドーピングした光導電層(比較例5)
と、ドーピングを行わないアルミクロルフタロシアニン
単独の光導電層(比較例6)を用いた他は前記の場合と
同様な構成の感光体を用意した。なお、テトラチアフル
バレンが形成するDレベルが伝導帯のごく近傍にあるこ
とは先の変位電流で確認した。さらに、比較例5の場合
は、アルミクロルフタロシアニンとテトラチアフルバレ
ンとを重量比で100:1 に共蒸着し、膜厚約100nm(1000オ
ングストローム) のキャリア生成層5を形成し、比較例
6の場合はアルミクロルフタロシアニン単独で真空蒸着
し、膜厚約100nm(1000オングストローム)のキャリア生
成層5を形成した。
【0079】前記実施例3の感光体に約6kV のコロナ帯
電を行ったところ、1380V の帯電電位を示し、1 分後も
電位はほとんど減衰が認められなかった。そして、光照
射により 3.8erg/cm2 の光感度を示した。一方、比較例
5の場合、100Vしか帯電せず、 1分後には電位は約1/3
に減少した。そしてほとんど光感度を示さなかった。ま
た、比較例6の場合は1440V と良好な帯電電位を示した
が、光照射により12.6erg/cm2 の光感度しか示さなかっ
た。
【0080】実施例4 上記実施例3の場合において、キャリア生成層5をチタ
ニルフタロシアニン(光導電材料)および次式で示すビ
スキナクリドン(ドナー性材料)で、さらにキャリア輸
送層6をテトラプロピルジフェノキノンにてそれぞれ構
成した。
【0081】
【化9】
【0082】この構成系が、前記図13(a),(b) で図示し
た条件を満足することを、先に説明した各種変位電流法
により確認した。
【0083】また比較のため、チタニルフタロシアニン
にテトラチアフルバレン(ドナー性材料)をドーピング
したキャリア生成層(比較例7)と、ドーピングを行わ
ないチタニルフタロシアニン単独のキャリア生成層(比
較例8)を用いた構成の有機電子写真感光体を用意し
た。
【0084】なお、比較例7および8の場合は、いずれ
も前記比較例5および比較例6の場合と同様にの条件で
キャリア生成層を形成した。
【0085】上記構成の実施例4の感光体に約 6kVのコ
ロナ帯電を行ったところ、1420V の帯電電位を示し、1
分後も電位はほとんど減衰が認められなかった。そし
て、光照射により 5.1erg/cm2 の光感度を示した。一
方、比較例7の場合、80V しか帯電せず、 1分後には電
位は1/2 に減少した。そしてほとんど光感度を示さなか
った。また、比較例8の場合は、1470V と良好な帯電電
位を示したが、光照射により14.7erg/cm2 の光感度しか
示さなかった。
【0086】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、光導
電層に電気的中性なアクセプター性材料あるいはドナー
性材料がドーピングされた場合、暗時の帯電性はドーピ
ングを行わない場合と比較してほとんど変化はない。ま
た、Aレベル(Dレベル)は有効な電子捕獲準位(正孔
捕獲準位)として作用するため、光照射により励起電子
(励起正孔)は速やかにAレベル(Dレベル)に捕獲さ
れ自由正孔(自由電子)の生成効率は大きく増加し、感
光体特性の向上に寄与していることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におい
て光キャリア生成過程を説明するための定性的なバンド
図、(b) は同じく光導電層の各エネルギーレベルを示す
バンド図。
【図2】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におい
て光導電層へのドーピング材料のドナー性を説明する定
性的なエネルギー図、(b) は同じくドーピング材料のア
クセプター性を説明する定性的なエネルギー図。
【図3】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におい
て光導電層にドーピングするドナー性材料によるDレベ
ルがエネルギー位置に依存して帯電する割合の変化を説
明する定性的なバンド図、(b) は同じくドーピングする
アクセプター性材料によるAレベルがエネルギー位置に
依存して帯電する割合の変化を説明する定性的なバンド
図。
【図4】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におい
て光導電層にドーピングするドナー性材料による励起正
孔の挙動を定性的に説明するバンド図、(b) は同じくド
ーピングするアクセプター性材料による励起電子の挙動
を定性的に説明するバンド図。
【図5】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におけ
る光導電層の伝導帯レベル、価電子帯レベルを求めるた
めの変位電流測定法の説明図、(b) は同じく光導電層が
ない場合の変位電流−電圧特性図。
【図6】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におい
て光導電層に電子注入が起きる場合の変位電流素子の定
性的な電流−電圧特性図、(b) は同じくエネルギー障壁
を考慮した場合の定性的な電流−電圧特性図。
【図7】(a) は本発明に係る有機電子写真感光体におい
て光導電層に正孔注入が起きる場合の変位電流素子の定
性的な電流−電圧特性図、(b) は同じくエネルギー障壁
を考慮した場合の定性的な電流−電圧特性図。
【図8】(a) および(b) は本発明に係る有機電子写真感
光体において近赤外光あるいは赤外光の励起波長および
+ レベル、D0 レベルがある時の電流−電圧特性との
関係を示すための定性的な説明図、
【図9】(a) および(b) は本発明に係る有機電子写真感
光体において近赤外光あるいは赤外光の励起波長と、A
- レベル、A0 レベルがある時の電流−電圧特性との関
係を示すための定性的な説明図。
【図10】本発明に係る有機電子写真感光体において光
導電層の光キャリア生成効率を求めるための光照射変位
電流法についての説明図。
【図11】本発明に係る有機電子写真感光体の要部構成
例を示す断面図。
【図12】(a) は本発明に係る負帯電型有機電子写真感
光体において接合前の各層のエネルギーレベルを示すバ
ンド図、(b) は同じく接合後の熱平衡状態のバンド図。
【図13】(a) は本発明に係る正帯電型有機電子写真感
光体において接合前の各層のエネルギーレベルを示すバ
ンド図、(b) は同じく接合後の熱平衡状態のバンド図。
【図14】従来の有機電子写真感光体において光導電材
料を高分子に分散した単層感光体の構成を示す断面図。
【図15】従来のAl電極/キャリア生成層/キャリア輸
送層からなる負帯電型有機積層感光体の構成を示す断面
図。
【符号の説明】
1…Al(電極) 2…光導電材料 3…高分子
4…感光体 5…キャリア生成層 6…キャリア輸
送層 7…電子 8…正孔 10a 、10b …電極
(表裏面) 11…光導電層 12… SiO2 13…Si
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年1月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極面上に、キャリア生成層およびキャ
    リア輸送層の有機層を積層して設けて成る有機電子写真
    感光体において、 前記キャリア生成層が光導電材料およびアクセプター性
    材料を含有し、光導電材料の真空準位から価電子帯の上
    端までのエネルギー差(価電子帯レベル)をEV とし、
    この光導電材料にアクセプター性材料をドーピングした
    とき、真空準位から光導電材料のバンドギャップ内につ
    くりだすアクセプター準位までのエネルギー差(Aレベ
    ル)をEA としたとき、 EA が条件式、EA <EV −4kT/q(qは素電荷、
    kはボルツマン定数、Tは絶対温度)を満足することを
    特徴とする負帯電型有機電子写真感光体。
  2. 【請求項2】 電極面上に、キャリア生成層およびキャ
    リア輸送層の有機層を積層して設けて成る有機電子写真
    感光体において、 前記キャリア生成層が光導電材料およびアクセプター性
    材料を含有し、光導電材料の真空準位から伝導帯の下端
    までのエネルギー差(伝導帯レベル)をEC とし、この
    光導電材料にドナー性材料をドーピングしたとき、真空
    準位から光導電材料のバンドギャップ内につくりだすド
    ナー準位までのエネルギー差(Dレベル)をED とした
    とき、 ED が条件式、ED >EC +4kT/q(qは素電荷、
    kはボルツマン定数、Tは絶対温度)を満足することを
    特徴とする正帯電型有機電子写真感光体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013246364A (ja) * 2012-05-28 2013-12-09 Mitsubishi Chemicals Corp 電子写真感光体、電子写真カートリッジ、及び画像形成装置
CN116261336A (zh) * 2021-12-08 2023-06-13 宁德时代新能源科技股份有限公司 钙钛矿太阳能电池和光伏组件

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