JPH06207262A - 遠赤外線放射部材およびその製造方法 - Google Patents

遠赤外線放射部材およびその製造方法

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JPH06207262A
JPH06207262A JP1672593A JP1672593A JPH06207262A JP H06207262 A JPH06207262 A JP H06207262A JP 1672593 A JP1672593 A JP 1672593A JP 1672593 A JP1672593 A JP 1672593A JP H06207262 A JPH06207262 A JP H06207262A
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hot
far
infrared radiation
alloy
heating
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Application number
JP1672593A
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English (en)
Inventor
Mamoru Matsuo
守 松尾
Seiju Maejima
正受 前嶋
Koichi Saruwatari
光一 猿渡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujikura Ltd
Sky Aluminium Co Ltd
Original Assignee
Fujikura Ltd
Sky Aluminium Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電子誘導加熱もしくは通電加熱により発熱さ
せて遠赤外線を放射させる部材として、遠赤外線放射特
性が優れ、かつ耐ヒートクラック性、耐食性、成形性、
コスト等を満足し得る遠赤外線放射部材を提供する。 【構成】 請求項1:電磁誘導加熱もしくは通電加熱可
能な鉄系材料からなる基材表面に、Si1〜15%を含
有するAl−Si系合金からなる溶融メッキ層が形成さ
れ、その溶融メッキ層の表面に陽極酸化皮膜が形成され
ている遠赤外線放射部材。 請求項2:溶融メッキ層の
合金として、Si1〜15%のほか、Fe,Mg,C
u,Mn,Ni,Cr,V,Ti,Zr,P,Na,S
b,Srのうちの1種以上を含有するAl−Si系合金
を用いる。 請求項3:製造方法として、鉄系材料基材
にAl−Si系合金の溶融メッキした後に200〜55
0℃×0.5〜24時間の析出処理を行ない、その後陽
極酸化処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、暖房、調理、乾燥、
材料の加熱等の輻射加熱、そのほか遠赤外線を利用する
際に、遠赤外線放射のために用いられる遠赤外線放射部
材に関するものであり、特に電磁誘導加熱もしくは通電
加熱により発熱させて遠赤外線を放射する部材に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】一般に遠赤外線放射を行なうにあたって
は、遠赤外線を放射可能な材料を100℃〜数百℃に加
熱する必要がある。一方、電気的な加熱手段として代表
的なものとしては、材料に交番磁界を加えて誘導電流を
生ぜしめ、その誘導電流によりジュール発熱させるいわ
ゆる電磁誘導加熱や、材料に直接通電してその通電電流
によりジュール発熱させるいわゆる通電加熱がある。そ
こでこのような電磁誘導加熱もしくは通電加熱によって
材料を発熱させて、その材料自体から遠赤外線を放射さ
せることが考えられるが、従来の一般的な電磁誘導加熱
もしくは通電加熱可能な材料は、そのままでは遠赤外線
放射が不可能かまたは可能であっても遠赤外線放射性能
が低く、実用に供することは困難であった。
【0003】すなわち、電磁誘導加熱、通電加熱のいず
れの場合も材料が導電体であってしかもある程度の電気
抵抗を有することが必要であるが、特に電磁誘導加熱の
場合は、強磁性体材料であることが望まれ、また量産規
模で適用するためには材料コストが低いことも要求され
る。そこで一般にはこれらの電磁誘導加熱、通電加熱に
おける発熱材料としては、鋼板や鉄板、あるいはステン
レス鋼(但しオーステナイト系ステンレス鋼を除く)な
どの主として鉄系材料を用いることが多いが、これらの
鉄系材料は、そのままでは遠赤外線を放射することがで
きない。
【0004】そこで電磁誘導加熱もしくは通電加熱によ
り発熱させて遠赤外線を放射させる部材としては、前述
のような鉄系材料の表面に、遠赤外線放射可能なセラミ
ックを溶射したものが考えられている。しかしながらこ
の場合には高コスト化を招くとともに、耐食性も劣り、
さらには大きな寸法の部材を得ることが困難であり、さ
らにはセラミック溶射後の成形加工が困難となってその
形状も限られてしまう等の問題がある。
【0005】一方、遠赤外線放射性能の点からは、各種
セラミック材料のうちでもアルミナが優れていることが
知られており、そこで最近では、高純度のアルミニウム
の表面に陽極酸化処理を施してアルミナからなるアルマ
イト層(陽極酸化皮膜)を形成した遠赤外線放射部材
が、熱伝導性と遠赤外線放射性能に優れた放射部材とし
て注目されるようになっている。但し、アルミニウム材
料の場合、強磁性を有していないに加え、電気抵抗も小
さいところから、電磁誘導加熱や通電加熱には不適当で
あった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、従来
は、電磁誘導加熱もしくは通電加熱によって発熱させて
遠赤外線を放射させる部材としては、コストや耐食性、
あるいは成形性や大寸法のものを得る点、そのほか優れ
た遠赤外線放射特性を有することなど、全ての点におい
て充分に満足し得るものは存在しなかったのが実情であ
る。
【0007】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、電磁誘導加熱もしくは通電加熱によって遠赤
外線を放射する部材として、遠赤外線放射特性が優れる
ばかりでなく、耐食性や成形性が良好でかつ低コストで
しかも大寸法のものも容易に得られるようにした遠赤外
線放射部材を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前述のよ
うな課題を解決するべく、鋭意実験・検討を重ねた結
果、基本的には、電磁誘導加熱もしくは通電加熱可能な
鉄系材料を基材とし、一方陽極酸化皮膜の形成によって
遠赤外線放射可能なアルミニウム合金、特に遠赤外線放
射特性の優れたAl−Si系のアルミニウム合金からな
る溶融メッキ層を基材表面に形成することによって、前
述の課題を同時に解決し得ることを見出し、この発明を
なすに至ったのである。
【0009】すなわち、請求項1の発明の電磁誘導加熱
もしくは通電加熱可能な遠赤外線放射部材は、電磁誘導
加熱もしくは通電加熱可能な鉄系材料からなる基材の片
面もしくは両面に、Si1〜15wt%を含有するAl−
Si系合金からなる溶融メッキ層が形成され、さらにそ
の溶融メッキ層表面に陽極酸化皮膜が形成されたことを
特徴とするものである。
【0010】また請求項2の発明の電磁誘導加熱もしく
は通電加熱可能な遠赤外線放射部材は、請求項1に記載
の遠赤外線放射部材において、前記溶融メッキ層のAl
−Si系合金が、Si1〜15wt%を含有し、かつF
0.05〜2.0wt%、Mg0.05〜2.0wt%、C
u0.05〜6.0wt%、Mn0.05〜2.0wt%、
Ni0.05〜3.0wt%、Cr0.05〜0.5wt
%、V0.05〜0.5wt%、Ti0.005〜0.2
wt%、Zr0.05〜0.5wt%、P0.005〜0.
1wt%、Na0.005〜0.1wt%、Sb0.005
〜0.3wt%、Sr0.005〜0.1wt%のうちの1
種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可避的
不純物よりなることを特徴とするものである。
【0011】さらに請求項3の発明の電磁誘導加熱もし
くは通電加熱可能な遠赤外線放射部材の製造方法は、電
磁誘導加熱もしくは通電加熱可能な鉄系材料からなる基
材の片面もしくは両面に、Si1〜15wt%を含有する
Al−Si系合金を溶融メッキした後、その溶融メッキ
層を200〜550℃で0.5〜24時間加熱し、その
後溶融メッキ層表面に陽極酸化処理を施すことを特徴と
するものである。
【0012】
【作用】この発明の遠赤外線放射部材においては、基材
の鉄系材料が電磁誘導加熱もしくは通電加熱によって発
熱して、その熱がAl−Si系合金からなる溶融メッキ
層の非陽極酸化部分によって陽極酸化皮膜に伝えられ、
その陽極酸化皮膜から遠赤外線が放射される。
【0013】ここで、基材の鉄系材料としては、要は電
磁誘導加熱もしくは通電加熱が可能なものであれば良
く、炭素鋼板、鉄板、ステンレス鋼板、合金鋼板などを
用いることができる。但しステンレス鋼のうちでもオー
ステナイト系ステンレス鋼は強磁性を有していないから
電磁誘導加熱には不適当である。
【0014】溶融メッキ層には純Alも使用できないこ
とはないが、純Alに陽極酸化皮膜を形成した場合、全
般的に遠赤外線放射特性が低いばかりでなく、特に3〜
7μmの波長域での遠赤外線放射特性が急激に低くなる
欠点があるほか、200℃以上の高温での使用に際し
て、熱衝撃によりクラックが生じて、耐久性を損なうと
ともに、遠赤外線放射性能も不安定となる。そこでこの
発明では、溶融メッキ層として、これらの問題を解決し
たAl−Si系合金を用いることとした。以下にこの溶
融メッキ層のAl−Si系合金について説明する。
【0015】Al−Si系合金においては、Si含有量
に応じて、また必要に応じて施される熱処理条件に応じ
て、初晶Si、共晶Si、あるいは析出Siとして、金
属Si粒子が組織中に分散し、一部は固溶Siとしてマ
トリックスに存在する。初晶Si、共晶Si、析出Si
は、そのAl−Si系合金の表面を陽極酸化処理させた
後も、金属Si粒子として陽極酸化皮膜中に残り、した
がってこの金属Si粒子の分散状態が適切であれば、そ
の金属Si粒子が、遠赤外線放射特性に寄与するととも
に、耐ヒートクラック性の向上に寄与する。すなわち、
金属Si粒子がが分散しているアルミニウム合金メッキ
層の表面に陽極酸化処理を施せば、陽極酸化皮膜中にそ
の金属Si粒子が残存する。このような陽極酸化皮膜中
の分散粒子によって入射光が散乱吸収されて、遠赤外線
の放射特性が向上する。さらに、陽極酸化処理時におい
て陽極酸化皮膜(多孔質層)が成長する過程で、ポアは
枝分かれした構造となり、このような枝分かれポア構造
によって入射光に対する陽極酸化皮膜内での散乱吸収が
助長され、遠赤外線放射特性が一層向上する。
【0016】さらに、陽極酸化皮膜中に分散して存在す
る金属Si粒子は応力の緩和点としても機能し、また前
述のようなポアの枝分かれ構造は歪の吸収能力が高く、
そのためクラックが生じにくいとともに、仮にクラック
が発生してもその伝播が阻止され、耐ヒートクラック性
が良好となる。
【0017】このような溶融メッキ層のAl−Si系合
金における成分組成の限定理由を以下に説明する。
【0018】Si:Siは、溶融メッキ時における凝固
時に、その添加量に応じて初晶Si、共晶Siとして晶
出し、一部は固溶Siとして存在する。また必要に応じ
て熱処理が行なわれた場合、Alマトリックス中の固溶
Siも金属Siとして析出する。これらの初晶Si、共
晶Si、析出Siは、前述のように陽極酸化処理時に金
属Si粒子として陽極酸化皮膜中に取込まれ、入射光に
対する散乱、吸収を通じて遠赤外線放射特性の向上に寄
与するとともに、クラックの発生防止に寄与する。さら
に金属Si粒子は、前述のように皮膜内のポアを枝分か
れ構造とすることに寄与し、これによっても遠赤外線放
射特性の向上とクラック発生防止に寄与する。アルミニ
ウム合金のSi量が1wt%未満では、金属Si粒子の数
が少なく、遠赤外線の放射が不充分となる。一方Si量
が15wt%を越えれれば、陽極酸化皮膜中の金属Si粒
子の体積率が大き過ぎて陽極酸化皮膜の強度、耐食性が
低下してしまう。したがってSi量は1〜15wt%の範
囲内とした。
【0019】溶融メッキ層に使用されるAl−Si系合
金は、上記のSiのほかは、基本的にはAlおよび不可
避的不純物とすれば良いが、必要に応じて、Fe 0.
05〜2.0wt%、Mg 0.05〜2.0wt%、Cu
0.05〜6.0wt%、Mn 0.05〜2.0wt
%、Ni 0.05〜3.0wt%、Cr 0.05〜
0.5wt%、Zr 0.05〜0.5wt%、V 0.
05〜0.5wt%、Ti 0.005〜0.2wt%、P
0.005〜0.1wt%、Na 0.005〜0.
1wt%、Sb 0.005〜0.3wt%、Sr 0.0
05〜0.1wt%のうちの1種または2種以上を添加し
ても良い。これらの元素の添加理由は次の通りである。
【0020】Fe:Feは強度向上および結晶粒微細化
のために有効である。Fe量が0.05wt%未満ではそ
の効果が得られず、2.0wt%を越えれば陽極酸化皮膜
の強度と耐食性が低下する。またFe量が2.0wt%を
越えれば、SiがFeと化合してAl−Fe−Si系の
金属間化合物の量が増加し、遠赤外線放射特性が低下す
る。したがってFeを添加する場合のFe量は0.05
〜2.0wt%の範囲とする。
【0021】Mg:Mgも強度向上に寄与する。Mg量
が0.05wt%未満ではその効果が得られず、一方2.
0wt%を越えればMgとSiとが結合してMg2 Siの
生成量が増加し、遠赤外線放射特性が低下する。またM
g量が2.0wt%を越えれば溶融メッキ層の付着性も低
下する。したがってMgを添加する場合のMg量は0.
05〜2.0wt%の範囲内とする。
【0022】Cu:Cuの添加も強度向上に寄与する。
Cu量が0.05wt%未満ではその効果が得られず、一
方6.0wt%を越えれば溶融メッキ層の付着性が低下す
る。したがってCuを添加する場合のCu量は0.05
〜6.0wt%の範囲内とした。
【0023】Mn:Mnは強度向上に寄与するととも
に、結晶粒微細化、耐熱性向上に寄与する。Mn量が
0.05wt%未満ではこれらの効果が得られず、一方
2.0wt%を越えればMnがSiと結合してAl−Mn
−Si系の金属間化合物の生成量が増加し、遠赤外線放
射特性が低下する。またMn量が2.0wt%を越えれば
溶融メッキ層の付着性が低下する。したがってMnを添
加する場合のMn量は0.05〜2.0wt%の範囲内と
した。
【0024】Ni:Niも強度向上に寄与するととも
に、耐熱性向上に寄与する。Ni量が0.05wt%未満
ではこれらの効果が得られず、一方2.0wt%を越えれ
ば溶融メッキ層の付着性が低下する。したがってNiを
添加する場合のNi量は0.05〜2.0wt%の範囲内
とした。
【0025】Cr,Zr,V:これらの元素は、強度向
上に寄与するとともに、結晶粒微細化に寄与する。いず
れも0.05wt%未満ではその効果が得られず、一方
0.5wt%を越えれば粗大な金属間化合物が生成され
て。溶融メッキ層の付着性が低下する。したがってC
r,Zr,Vの1種または2種以上を添加する場合の添
加量は、いずれも単独量で0.05〜0.5wt%の範囲
内とする。
【0026】Ti:Tiは鋳塊結晶粒の微細化を通じて
組織の微細化に寄与する。Ti量が0.005wt%未満
ではその効果が得られず、一方0.2wt%を越えれば粗
大な金属間化合物が生成されて好ましくない。したがっ
てTiを添加する場合のTi量は0.005〜0.2wt
%の範囲内とした。なお鋳塊結晶粒微細化のためには、
TiとともにBを共存させることが効果的である。この
場合B量が1ppm 未満ではその効果が得られず、一方1
00ppm を越えればその効果が飽和するから、Tiと併
せてBを添加する場合のB量は1〜100ppm の範囲内
とすることが好ましい。
【0027】P:Pは初晶Siの微細化に寄与する。し
たがってPの添加は初晶Siが晶出するような約10wt
%以上のSiを含有する合金の場合に効果的である。P
量が0.005wt%未満では初晶Siの微細化の効果が
得られず、一方P量が0.1wt%を越えればその効果が
飽和する。したがってPを添加する場合のP量は0.0
05〜0.1wt%の範囲内とした。
【0028】Na,Sb,Sr:これらの元素は共晶S
iの微細化に寄与する。いずれも0.005wt%未満で
はその効果が得られず、一方Na,Srは0.1wt%を
越えればその効果が飽和し、またSbは0.3wt%を越
えればその効果が飽和する。したがってNaを添加する
場合のNa量は0.005〜0.1wt%、Sbを添加す
る場合のSb量は0.005〜0.3wt%、Srを添加
する場合のSr量は0.005〜0.1wt%の範囲内と
した。なおNb,Sb,SrがPと共存した場合には、
Pによる初晶Siの微細化効果が失われてしまうから、
Pとは共存させないことが望ましい。
【0029】以上の各元素のほか、通常のアルミニウム
合金においては、溶解原料としてスクラップを使用した
場合には、Znが必然的に混入する。Znを特に積極的
に添加することは少ないが、1.0wt%程度までは不可
避的不純物として混入しても特に遠赤外線放射特性等に
悪影響を及ぼすことはない。但し場合によっては強度向
上のためにZnを1.0wt%を越え7.0wt%まで添加
しても良い。Znの添加量が7.0wt%を越えれば溶融
メッキ層の付着性が悪化する。
【0030】そのほかの元素も、1.0wt%以下であれ
ば特に遠赤外線放射特性等に悪影響を及ぼすことはな
い。
【0031】以上のような成分組成のAl−Si系合金
からなる溶融メッキ層が陽極酸化処理後に優れた遠赤外
線放射特性を発揮しかつ良好な耐ヒートクラック性を示
すためには、組織状態、特に金属Si粒子の分散状態が
重要である。すなわち、既に述べたように、Al−Si
系のアルミニウム合金では、凝固時にその添加量に応じ
て初晶Si、共晶Siとして晶出し、一部は固溶Siと
してマトリックス中に存在する。そして凝固後に熱処理
された場合には、Alマトリックス中から金属Siが析
出する。これらの晶出Si(初晶Si、共晶Si)や析
出Siは、陽極酸化処理後においてもそのまま金属Si
粒子として皮膜中に残存し、この陽極酸化皮膜中の金属
Si粒子は、赤外線放射特性や陽極酸化皮膜の耐ヒート
クラック性に大きな影響を与えるが、良好な遠赤外線の
放射特性を得るために有効な金属Si粒子は、0.05
μm以上のサイズ(粒径)のものである。すなわち、金
属Si粒子の径が0.05μm未満の場合には、遠赤外
線の散乱吸収が不充分であって、良好な放射特性が得ら
ない。そしてこのような0.05μm以上のサイズの金
属Si粒子が均一かつ緻密に分散していることが重要で
ある。
【0032】前述のような成分組成のAl−Si系合金
を溶融メッキすれば、溶融Al−Si系合金は鉄系材料
からなる基材上で凝固することになり、この場合凝固時
には、一般に初晶Si、共晶Siが初晶のAl−αデン
ドライトとともに晶出する。ここのデンドライトの幹や
枝の部分は、凝固のままでは固溶体(α相)となってお
り、この部分には金属Siは生じていない。基板上での
溶融メッキ層の凝固速度が速い場合にはデンドライトの
幹や枝の部分が狭くなり、またSi含有量が多い場合に
は、初晶Si、共晶Siの晶出量が多くなるため、この
ように凝固速度が速くかつSi量が多い場合(3wt%程
度以上)の場合には、凝固のままでも全体として比較的
均一かつ緻密に0.05μm以上の金属Si粒子が分散
した組織が得られるが、凝固のままでは金属Si粒子が
不足する場合には、凝固後に改めて析出処理を行なっ
て、固溶体の部分から金属Siを析出させることが望ま
しい。
【0033】析出処理の条件は、溶融メッキ層のAl−
Si系合金の成分組成によっても異なるが、通常は20
0〜550℃にて0.5〜24時間の加熱を施すことが
望ましい。温度が200℃未満では析出Si粒子のサイ
ズが小さく、0.05μm未満となり易い。一方550
℃を越えれば局部溶融が生じたり、析出量が少なくなっ
たりする。また加熱時間が0.5時間未満ではSiを析
出させる効果が得られず、24時間以上の加熱は経済的
に無駄となるだけである。
【0034】ここで、溶融メッキ層の厚みは特に限定し
ないが、通常は10〜500μmの範囲内とすることが
望ましい。溶融メッキ層の厚みが10μm未満では、陽
極酸化処理時にピンホールが生じ、健全な陽極酸化皮膜
を形成することが困難となるおそれがあり、一方500
μmを越える厚みの溶融メッキ層では、均一なメッキ層
を形成することが困難となる。
【0035】さらにこの発明の遠赤外線放射部材におい
ては、Al−Si系合金からなる溶融メッキ層の表面に
陽極酸化皮膜が形成される。このようにAl−Si系合
金からなる溶融メッキ層の表面に形成した陽極酸化皮膜
は、優れた遠赤外線放射特性を示すとともに、良好な耐
ヒートクラック性を示す。すなわち、陽極酸化処理時に
は、溶融メッキ層の表面の金属Si粒子が皮膜中にその
まま残存した状態で陽極酸化皮膜が成長し、そのため、
皮膜中のポアの成長が金属Si粒子により妨げられ、枝
分かれした微細なポアを有する多孔質の皮膜が生成され
る。さらに、陽極酸化皮膜中にそのまま残存して分散し
ている金属Si粒子と前述の枝分かれした微細なポアが
入射光を散乱吸収し、その結果遠赤外線の放射特性が良
好となる。そしてまた前述の枝分かれした微細なポア構
造と皮膜中に分散した金属Si粒子が熱応力の緩和点と
して機能し、そのため皮膜にクラックが生じにくくな
り、500℃程度の高温に至るまでクラックが生じるこ
となく使用可能となる。
【0036】なお陽極酸化処理の条件は特に限定される
ものではなく、硫酸、シュウ酸などの無機酸、あるいは
有機酸、さらにはこれらの混合酸などの電解浴を用い、
直流、交流、あるいは交直併用、交直重畳波形など、任
意の波形を用いて陽極酸化処理を行なえば良い。但し、
経済性や作業効率の観点からは、硫酸浴で直流電流を用
いることが好ましい。また陽極酸化処理の前には脱脂、
苛性エッチング等の前処理を行なうのが一般的であり、
苛性エッチングを行なった場合には引続いて硝酸等の酸
でデスマット処理を施すのが一般的である。そのほか必
要に応じて、切削加工、酸洗浄、化学研磨処理、ヘアラ
イン加工、シヨットブラスト等の機械的前処理などを実
施しても良いことはもちろんである。
【0037】ここで、陽極酸化皮膜は、3μm以上の厚
みで形成することが望ましい。皮膜厚が3μm未満では
充分な遠赤外線放射特性が得られないおそれがある。な
お陽極酸化皮膜の目視の色調は、膜厚が10μm程度以
上で充分な濃色の黒色となり、遠赤外線放射特性が極め
て良好となる。一方10μm未満では灰色の色調とな
り、遠赤外線放射特性も若干低くなるが、用途によって
は灰色の色調が好まれる場合もあり、このような場合に
は陽極酸化皮膜厚は3〜10μm程度とすれば良く、そ
の場合でも実用上支障ない程度の遠赤外線放射特性は得
られる。
【0038】
【実施例】板厚0.7μmの炭素鋼板を基材とし、その
基材表面に表1の合金番号1,2に示すAl−Si系合
金をメッキ厚200μmで溶融メッキした。
【0039】合金番号1の溶融メッキ層の凝固時の表面
組織を調べたところ、共晶Siが比較的均一に分散して
いた。すなわち、晶出Siのサイズが3〜20μmで、
分布密度が5000〜50000個/m2 であった。そ
こで合金番号1の溶融メッキ層については特に析出処理
を行なわないこととした。
【0040】また合金番号2の溶融メッキ層の凝固後の
表面を調べたところ、晶出Siの分布密度が500個/
2 と低いことが判明した。そこで凝固のままの材料と
は別に、溶融メッキ後に改めて300℃×5時間の析出
処理を施した材料も用意した。析出処理後の表面を調べ
たところ、0.05〜2μmの金属Siが50000個
/m2 以上の分布密度で分散していることが確認され
た。
【0041】上述のように溶融メッキのままの合金番号
1、合金番号2の溶融メッキ層および析出処理後の合金
番号2の溶融メッキ層について、10%NaOH水溶液
にて60℃×1分間エッチングし、水洗後、30%硝酸
によりデスマット処理を施してから、次の条件で陽極酸
化処理を施した。 処理浴:15%硫酸 電解温度:20℃ 電流密度:1.5A/dm2 なお陽極酸化皮膜厚は目標15μmとした。
【0042】各材料について、陽極酸化処理後の表面
(陽極酸化皮膜の表面)の分光放射率を調べたので、そ
の結果を金属組織の調査結果とともに表2に示す。なお
分光放射率に関しては、従来の一般的な純Al系のアル
ミニウム陽極酸化皮膜においては3〜7μmの波長域で
の分光放射率が低いことが問題とされており、そこでこ
こではその波長域内の代表的な6μmの波長での分光放
射率を300℃において調べた。一般には、この分光放
射率が0.6以上の場合に良好な遠赤外線放射特性を有
していると言うことができる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】表2から明らかなように、金属Siのサイ
ズ、分散状態が適切な場合には、優れた遠赤外線放射特
性を得ることができた。またこれらの場合、陽極酸化処
理後に500℃に加熱してもヒートクラックの発生は認
められなかった。
【0046】
【発明の効果】この発明の遠赤外線放射部材は、電磁誘
導加熱もしくは通電加熱可能な鉄系材料からなる基材表
面に、Al−Si系合金からなる溶融メッキ層が形成さ
れ、かつその溶融メッキ層表面に陽極酸化皮膜が形成さ
れたものであって、溶融メッキ層のAl−Si系合金は
陽極酸化皮膜を形成した状態での遠赤外線放射特性およ
び耐ヒートクラック性が優れており、したがって基板部
分を電磁誘導加熱もしくは通電加熱によって直接的に加
熱することによって、溶融メッキ層表面の陽極酸化皮膜
から高い放射効率で遠赤外線を放射させることができる
とともに、高温でも陽極酸化皮膜にヒートクラックが生
じるおそれが少ないため、耐久性が高いとともに、遠赤
外線放射特性も安定している。また鉄系材料からなる基
材にAl−Si系アルミニウム合金を溶融メッキしたも
のであるため、耐食性が高く、また成形性も良好であっ
て、複雑な形状の放射部材や大寸法の放射部材にも容易
に適用することができ、さらにはコスト的にもさほど高
コストとはならない等、各種の長所を有する。
フロントページの続き (72)発明者 猿渡 光一 東京都江東区木場1丁目5番1号 株式会 社フジクラ内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電磁誘導加熱もしくは通電加熱可能な鉄
    系材料からなる基材の片面もしくは両面に、Si1〜1
    5wt%を含有するAl−Si系合金からなる溶融メッキ
    層が形成され、さらにその溶融メッキ層表面に陽極酸化
    皮膜が形成されたことを特徴とする、電磁誘導加熱もし
    くは通電加熱可能な遠赤外線放射部材。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の遠赤外線放射部材にお
    いて、前記溶融メッキ層のAl−Si系合金が、Si1
    〜15wt%を含有し、かつF0.05〜2.0wt%、M
    g0.05〜2.0wt%、Cu0.05〜6.0wt%、
    Mn0.05〜2.0wt%、Ni0.05〜3.0wt
    %、Cr0.05〜0.5wt%、V0.05〜0.5wt
    %、Ti0.005〜0.2wt%、Zr0.05〜0.
    5wt%、P0.005〜0.1wt%、Na0.005〜
    0.1wt%、Sb0.005〜0.3wt%、Sr0.0
    05〜0.1wt%のうちの1種または2種以上を含有
    し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなることを特
    徴とする、電磁誘導加熱もしくは通電加熱可能な遠赤外
    線放射部材。
  3. 【請求項3】 電磁誘導加熱もしくは通電加熱可能な鉄
    系材料からなる基材の片面もしくは両面に、Si1〜1
    5wt%を含有するAl−Si系合金を溶融メッキした
    後、その溶融メッキ層を200〜550℃で0.5〜2
    4時間加熱し、その後溶融メッキ層表面に陽極酸化処理
    を施すことを特徴とする、電磁誘導加熱もしくは通電加
    熱可能な遠赤外線放射部材の製造方法。
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