JPH0663128B2 - ゴム構造物補強用ポリエステル繊維及びその製造方法 - Google Patents

ゴム構造物補強用ポリエステル繊維及びその製造方法

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JPH0663128B2
JPH0663128B2 JP58195169A JP19516983A JPH0663128B2 JP H0663128 B2 JPH0663128 B2 JP H0663128B2 JP 58195169 A JP58195169 A JP 58195169A JP 19516983 A JP19516983 A JP 19516983A JP H0663128 B2 JPH0663128 B2 JP H0663128B2
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stress
birefringence
stretching
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文雄 姫松
広見 長嶋
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旭化成工業株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ゴム構造物補強用ポリエステル繊維及びその
製造方法に関し、更に詳しくは、高強力・高弾性率でか
つ寸法安定性、耐疲労性、耐化学安定性が著しく改善さ
れたゴム構造物補強用ポリエステル繊維及びその製造方
法に関する。
〔従来の技術〕
ポリエステル繊維、時にポリエチレンテレフタレート繊
維は、強度、初期弾性率が高く寸法安定性・耐久性等の
諸特性にもすぐれることから、V−ベルト、コンベア−
ベルト、タイヤ等のゴム構造物補強用繊維として広く使
用されている。特に自動車用タイヤの場合、ポリエステ
ル繊維のこのような特性が乗用車のラジアルタイヤカー
カス材としての要求性能と合致することから近年その使
用量が増加してきている。
しかしながら、ポリエステル繊維はポリアミド繊維にく
らべて、タイヤコードとして使用した場合タイヤ中での
耐疲労性および耐化学安定性(所謂耐久性)が若干劣
り、乗用車以外の例えば軽トラック或いはトラック、バ
ス等のタイヤコードとしては多くは用いられていないの
が実情である。従って最近では、ポリアミド繊維に近い
耐久性を有し且つ寸法安定性、弾性率が改善された高強
力ポリエステル繊維の要求が強く、この改善によりポリ
エステルタイヤコードとしての使用量が飛躍的に増加す
ることが予想されている。
当然このような要求に対しては、種々の改善策が提案さ
れている。高強力で且つ高弾性率のポリエステル繊維を
得る方法としては、比較的高重合度の原料ポリマーを徐
冷紡糸し低配向度を有する未延伸糸となし、これを高倍
率で多段延伸することが知られている。
また、寸法安定性の改善に関しては、比較的低重合度の
ポリエステル繊維を採用する方法(特開昭53−31852号
公報、同55−122024号公報など)や、高速紡糸または高
張力下紡糸によって得た比較的高配向度のポリエステル
未延伸糸を延伸する方法(特開昭53−58032号公報、同5
8−23914号公報など)が提案されている。
さらに耐化学安定性の改善に関しては、ポリエステル中
のカルボキシル末端基量を減少させる方法(特開昭46−
5389号公報、同54−132697号公報など)が知られてい
る。また耐疲労性の改善に関しては高速紡糸または高張
力下紡糸によって得た高配向度のポリエステル未延伸糸
を延伸する方法(前述)の提案がなされている。
しかしながら、これらの諸提案は、個々の特性の改善に
関しては各々効果を発揮していると考えられるが、前記
したゴム構造物補強用としてのポリエステル繊維の総合
的改善の要求に対しては十分な満足を与えているとは言
えない。
すなわち、高重合度・低配向度を有するポリエステル未
延伸糸を高倍率で多段延伸して得られた高強力ポリエス
テル繊維は熱収縮率が増加して、従って、従来提案され
た方法では十分な寸法安定性を持った繊維は得られな
い。
また、低重合度のポリエステル繊維を使用して寸法安定
性を改善する方法では、該繊維をゴム構造物補強用に、
例えばタイヤコードに加工した場合強力の低下は避けら
れず総合性能として満足のゆく結果を得ることはできな
い。
さらに、高速紡糸または高張力下紡糸によって得たポリ
エステル未延伸糸を従来方法によって延伸し寸法安定性
および耐疲労性を改善する方法では、該未延伸糸が高配
向度の未延伸糸であるがために工業的な延伸段階での延
伸倍率を大きくすることが困難で、従って得られたポリ
エステル繊維の強力が低くなり、ゴム構造物補強用繊維
例えばタイヤコードとした場合のタフネスも、従来の高
強力ポリエステル繊維に比較して低い値となる。
また、上記従来方法によって得たポリエステル繊維は微
細構造的にみた場合、繊維平均の配向性が低く、更に詳
しくは非晶部分の配向が低く、繊維全体としてリラック
スした構造が特徴的であるがために該繊維をゴム構造物
補強用として加工した場合、ゴム中での水あるいはアミ
ン類による劣化が著しく所謂耐化学安定性が悪化する傾
向を示す。
さらに、耐化学安定性の改善を目的にポリエステル中の
カルボキシル末端基を減少させる方法も、その他の特性
改善、即ち強力、弾性率および寸法安定性、耐疲労性な
どの改善には何ら寄与を示すものではない。
〔発明が解決しようとする課題〕
上述のような従来技術の状態に鑑み、本発明の目的は、
高強力・高弾性率でかつ寸法安定性、耐疲労性、耐化学
安定性を同時に改善したゴム構造物補強用に適したポリ
エステル繊維及びその製造方法を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明に従えば、主としてポリエチレンテレフタレート
単位からなるポリエステル繊維であって、 (i)固有粘度〔η〕が0.65〜1.20 (ii)末端カルボキシル濃度COOH〕が30当量/10
以下、 (iii)複屈折率Δnが189×10 以上、 (iv)表層部の複屈折率Δn(s)と中心部の複屈折率
Δn(c)との差が6×10 〜13×10 、 (v)初期モジュラスが120〜140g/d、 (vi)応力−ひずみ曲線において(a)4.5g/d応力時
のひずみ率が3.3〜3.8%で(b)2次降伏点でのひずみ
率が7.1〜7.8%であるゴム構造物補強用ポリエステル繊
維が提供される。
本発明に従えば、また、 (イ)主としてポリエチレンテレフタレート単位からな
るポリエステルを引取速度2000m/分以上で紡糸し、次
いで (ロ)得られた未延伸ポリエステル繊維を100m/分以下
の速度で円しかつ延伸直後から捲取機に至るまでのリラ
ックス率を4%以下として、 (i)固有粘度〔η〕が0.65〜1.20 (ii)末端カルボキシル濃度COOH〕が30当量/10
以下、 (iii)複屈折率Δnが189×10 以上、 (iv)表層部の複屈折率Δn(s)と中心部の複屈折率
Δn(c)との差が6×10 〜13×10 、 (v)初期モジュラスが120〜140g/d、 (vi)応力−ひずみ曲線において(a)4.5g/d応力時
のひずみ率が3.3〜3.8%で(b)2次降伏点でのひずみ
率が7.1〜7.8%であるゴム構造物補強用ポリエステル繊
維を製造する方法が提供される。
先ず、本発明のポリエステル繊維の特徴を添付図面によ
って説明する。第1図はポリエステル繊維の応力−ひず
み曲線を示し、図中の曲線aおよびa′は本発明に係る
実施例2及び4のポリエステル繊維の応力−ひずみ曲線
である。
また、曲線bは高重合度の原料ポリマーを徐冷紡糸して
得た低配向度未延伸糸を高倍率で多段延伸した比較例5
のポリエステル繊維の応力−ひずみ曲線であり、曲線c
は高重合度の原料ポリマーを高速・高張力下に紡糸した
のち比較的高速度で延伸した比較例4のポリエステル繊
維の応力−ひずみ曲線であり、曲線dは高速・高張力下
の紡糸によって得た比較的高配向度のポリエステル未延
伸糸を低速度で延伸するに際しリラックス率を比較的大
きくして得た比較例2のポリエステル繊維の応力−ひず
み曲線である。
このように曲線a,a′とb,c,dの比較から明らかなよう
に、本発明のポリエステル繊維は応力−ひずみ曲線にお
いて、前記(vi)(a)及び(b)の特性に加えて、 (c)切断時のひずみ率が少なくとも8.5%、好ましく
は8.5〜15% (d)2次降伏点での応力が少なくとも0.6g/d、好ま
しくは6〜9g/d (e)2次降伏点より高いひずみ領域のひずみ率が少な
くとも1.0%、好ましくは1〜8% の特性を同時に備えており、初期弾性率が高く特に2次
降伏点までの応力に対するひずみ率が非常に小さいとい
う極めて特徴的な形を示している。
これに対してb,c,dの応力−ひずみ曲線はいずれも上記
特性を同時に備えるものではなく、また2次降伏点まで
の応力に対するひずみ率も大きい。
ここで、2次降伏点とは第2図の応力−ひずみ曲線にお
いて(A)の点で表される特性であって、該降伏点前・
後の曲線上の接線の交点から該曲線にθ゜の角度で示さ
れる直線を引き、この直線と応力−ひずみ曲線との交点
で決定される。また、切断時のひずみ率とは第2図の応
力−ひずみ曲線において(B)の点であり、4.5g/d応
力時のひずみ率(これを中間伸度と定義する)とは
(C)の点であり、2次降伏点より高いひずみ領域のひ
ずみ率とは(B)−(A)=(D)で示されるひずみ率
の範囲である。
さらに、本発明の未延伸ポリエステル繊維の固有粘度
〔η〕は0.65〜1.20、好ましく0.8〜1.0の範囲にある。
〔η〕が0.65未満であるとポリエステル繊維の強度が低
く、ゴム構造物補強用繊維として適当でない。また、
〔η〕が1.20より大きいとゴム補強用繊維としての寸法
安定性に劣る。
本発明のポリエステル繊維の末端カルボキシル基濃度
COOH〕は、耐化学安定性の改善目的を達成するために30
当量/10g以下、好ましくは10〜25当量/10gとす
る。COOH〕が30当量/10gより大きいと、たとえ他
の特性が、満足されても、水およびアミン類に対する化
学安定性が十分でないので好ましくない。
本発明のポリエステル繊維の複屈折率Δnは189×10
以上、好ましくは189×10 〜205×10 の範囲で
ある。Δnが189×10 未満では繊維平均としての配
向が十分でないため微細構造的にリラックスした部分が
多く残ることになり、 たとえ、末端カルボキシル基濃度COOH〕を30当量/10
g以下に抑制したとしても水およびアミン類に対する
耐化学安定性が劣る。また、比較的配向の高い未延伸糸
を延伸してΔnを大きくするのは困難である。従って、
好ましくはΔnの上限は約205×10 とする。
本発明のポリエステル繊維の表層部の複屈折率Δn
(s)と中心部の複屈折率Δn(c)との差は6×10
〜13×10 である。この複屈折率の差が13×10
を超えることは、ポリエステル繊維の均一性が悪
く、ゴム構造物補強用繊維とした場合の均一性が劣るこ
とを意味する。
また、本発明のポリエステル繊維の初期モジュラスは、
所望の高弾性率を有する繊維とするために120〜140g/
dでなければならない。
前記した本発明の必須のポリエステル繊維の特性に加え
て、本発明のポリエステル繊維の3%伸長時における伸
長弾性回復率および仕事弾性回復率がそれぞれ85%以上
および60%以上であるのが好ましい。これらの回復率が
低いとタイヤコードとした場合の均一性が不良になるお
それがある。
上記のような特性を満足する本発明に係るポリエステル
繊維は、これを通常の方法で下撚りし更に上撚りし、次
いで通常の処理方法で接着剤を付与してゴム構造物補強
用繊維とした場合、従来のポリエステル繊維にない種々
のすぐれた性能を発揮する。即ち、該ポリエステル繊維
をゴム構造物補強用繊維、例えば自動車用タイヤコード
とした場合、次のような効果を認めることができる。
(1)加工処理段階での原糸に対する強力保持率が高
く、従ってタイヤコードの強力が高くなる。
(2)タイヤコードとしての弾性率が高く、且つ切断伸
度も適正に保たれるため、該コードのタフネスが高くな
る。
(3)寸法安定性の改善が著しく、タイヤとしての均一
性が向上する。
(4)耐疲労性および耐化学安定性、即ち耐久性が改善
される。
次に、本発明に係るポリエステル繊維の製造方法および
製造条件と得られたポリエステル繊維の性能との関連に
ついての詳細を述べる。
本発明に係る高強力ポリエステル繊維は、主としてポリ
エチレンテレフタレート単位からなる原料ポリエステル
を溶融して紡糸口金より吐出せしめ、2,000m/分以上の
引取速度で一旦捲取った未延伸系を100m/分以下の速度
で延伸することによって製造される。
ここで用いるポリエステルは、その反復単位の85モル%
以上がエチレンテレフタレート単位よりなるものであっ
て、特にテレフタル酸またはその機能的誘導体とエチレ
ングリコールとから製造されるポリエチレンテレフタレ
ートを主たる対象とする。しかしながら、ポリエチレン
テレフタレートを構成する酸成分であるテレフタル酸ま
たはその機能的誘導体の一部を15モル%未満の例えばイ
ソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、
ナフタール酸、p−オキシ安息香酸、2,5−ジメチルテ
レフタル酸のような2官能性酸、またはそれ等の機能的
誘導体のうち少なくとも一種で置き換えるか、もしく
は、グリコール成分であるエチレングリコールの一部を
15モル%未満の例えばジエチレングリコール、1,4−ブ
タンジオール等の2価アルコールのうち少なくとも一種
で置き換えた共重合体であってもよい。また、これ等の
ポリエステルに酸化防止剤、難燃剤、接着性向上剤、艶
消剤、着色剤等を含有させてもさしつかえない。
また、本発明のポリエステル繊維を得るための溶融紡糸
においては、紡糸引取り速度が2,000m/分以上であるこ
とが望ましい。該引取り速度が2,000m/分未満では、高
強度のポリエステル糸は得られるものの、ゴム構造物補
強用繊維、例えばタイヤコードとした際の寸法安定性、
耐疲労性の改善が不十分となる。
さらに、本発明における延伸前のポリエステル未延伸糸
の複屈折率は15×10 以上、沸水収縮率は100%以
下、切断伸度は250%以下であることが好ましい。該未
延伸糸の複屈折率が15×10 未満、沸水収縮率が100
%より大、および切断伸度が250%より大では、ポリエ
ステルの重合度を大きく或いは小さくしてみても、寸法
安定性および耐疲労性の改善が十分とは言えなくなる。
本発明に係るポリエステル繊維の製造時の延伸方法に関
しては、その延伸速度を100m/分以下、好ましくは50m
/分以下にし、かつ延伸直後から捲取機に至るまでのリ
ラックス率を4%以下にする必要があることを除けは、
常法に従った延伸を実施すればよく特に制限を加える必
要はない。即ち、本発明のポリエステル繊維を得るため
の延伸は、一段で一挙に延伸しても二段以上の多段延伸
によってもよい。また延伸に当っての加熱手段も、フィ
ードローラおよび延伸ローラは非加熱とし該ローラ間に
ホットプレートまたはスチームジェット等を採用しても
よいし、または加熱ローラ方式を採用してもよい。
また、このときの加熱体の温度は通常のポリエステル繊
維の延伸温度範囲の90〜250℃でよいが、未延伸糸の延
伸性および得られるポリエステル繊維にタフネス、寸法
安定性を付与することを考慮すれば、ポリエステル繊維
の融点以下70℃ないし10℃の温度とすることが望まし
い。
さらに、この延伸は実際上紡糸捲取工程と分離した工程
で実施されるが、その方式は延伸工程単独としてもよい
し、撚糸工程を後に連結した所謂直接延伸撚糸方式とす
ることも工業的に有効な手段のひとつとなる。
ここで延伸速度が100m/分を超えると、高倍率延伸が困
難となり得られるポリエステル繊維の強力が低くなる。
また延伸配向が十分に行われないため、繊維平均として
の配向性(複屈折率)が低くなり微細構造的にリラック
スした部分が多く残ることから、ゴム構造物補強用とし
た場合の水やアミン類に対する安定性が悪化する。さら
に、100m/分を超える延伸速度の場合は、得られる繊維
の内部と表層部の複屈折率差、即ち繊維の内部ひずみが
大きくなってくる。
また、延伸直後から捲取機に至るまでのリラックス率が
大きくなった場合、得られるポリエステル繊維の弾性率
が低くなりかつ複屈折率も小さくなることから、該リラ
ックス率は4%以下に抑えることが必要である。
なお、本発明に係るポリエステル繊維の応力−ひずみ曲
線における前記特性について補足すると、上記2次降伏
点での応力が6.0g/dより低いポリエステル繊維では、
これを下撚りし更に上撚りし、次いで接着剤を付与して
ゴム構造物補強用繊維とした場合の強度が十分でなく目
的とする補強用には適さない。特に6〜9g/dの2次降
伏点を有するものが好ましい。
また上記の切断時のひずみ率が8.5%より低く、及び上
記2次降伏点より高いひずみ領域のひずみ率が1.0%よ
り低いポリエステル繊維ではゴム構造物補強用繊維とし
た場合のタフネス、即ち、繊維の強力と伸度の平方根と
の積が低くなり補強用繊維として充分な総合性能を発揮
し得なくなる。
更に、上記の4.5g/d応力時のひずみ率が3.8%より大
きく、且つ上記2次降伏点までのひずみ率が7.8%を超
えるポリエステル繊維では、結果的に延伸配向が十分に
行われていないため、繊維平均としての配向性、即ち平
均複屈折率及び非晶部配向度などの特性が低くなり、特
にゴム構造物中での水あるいはアミン類に対する耐化学
安定性が悪化する。又、該繊維の繰返し引張りに対する
弾性回復率、即ちゴム構造物補強用繊維としての一般的
な使用伸度範囲0〜9%、特に0〜4%域での伸張弾性
回復率及び仕事弾性回復率が低くなり、例えばタイヤコ
ードとした場合の均一性が悪くなる。
以上述べたように、本発明に係る高強力ポリエステル繊
維は、2,000m/分以上での紡糸捲取りと100m/分以下、
好ましくは50m/分以下での延伸との巧みな組合せによ
り製造されるものであって、この方法によって本発明に
係る高配向度ポリエステル未延伸糸の高倍率延伸、即ち
該未延伸糸切断伸度の85%以上、好ましくは90%以上の
延伸が、羽毛、糸切れなどの延伸時トラブルの発生を伴
うことなくスムーズに実施される。そしてこの結果とし
て得られる本発明のポリエステル繊維は、比較的低速で
かつ高倍率でスムーズに延伸されたがために、微細構造
的に整然とした高配向延伸が進み、繊維の内部と表層部
の配向度差(即ち複屈折率差)も小さく、従って高強力
・高弾性率でかつ寸法安定性、耐疲労性、耐化学安定性
にもすぐれた繊維となる。
(ヘ)実施例 以下に実施例をあげて本発明を説明する。なお、上記説
明および実施例に記載した特性の定義ならびに測定方法
を以下に示す。
(1)応力−ひずみ曲線 島津オートグラフDSS−100型を使用してJISL 1017−19
78(5.4)に準じて測定を行った。なお、この荷重−伸
長曲線により得られる強度、中間伸度、初期モジュラス
等の、伸張に伴うデニール減少の補正は通例に従って行
っていない。
(2)固有粘度〔η〕 オスワルド粘度計を用いて、オルソクロルフェノール10
0mlに対して1gの試料を溶解した溶液の還元粘度ηsp/
cを35℃の恒温水槽中で測定し、次の実験式により
〔η〕を算出した。
ηsp/c=〔η〕+K/〔η〕・C 但し、K:Huggins定数(0.277) C:試料濃度1(g/100ml) (3)末端カルボキシル基濃度COOH〕 POHLの方法:Anal.Chem.,26,1616(1957)に準拠した。
(4)沸水収縮率 検尺機(1周:1.125m)にて採取した試料を沸騰水中で3
0分間処理し、原糸長に対する縮み長さの割合(百分
率)を示した。
(5)乾熱収縮率 JISL−1017・1978(5.12)に準拠した。
(6)複屈折率 Δn 偏光顕微鏡を用い、Na−D線を光源とし、α−ブロムナ
フタリン/オリーブ油を浸漬液としてベレックコンペン
セーターを用いたリターデーション法により測定した。
(7)初期モジュラス JISL−1017・1978(5.7)に準じて測定を行った。
(8)3%伸長時における伸張弾性回復率および仕事弾
性回復率 試料に引張り荷重を加えて3%の伸長を行い、次に除重
するという操作を5サイクル行って、1回目の全伸びに
対する5回目の回復した伸び(弾性伸び)の割合を百分
率で表したものを、伸張弾性回復率とした。また、この
ときの1回目の伸び仕事に対する5回目の弾性仕事の割
合を百分率で表したものを仕事弾性回復率とした。なお
この測定は20℃、65%(関係温度)のもとに行った。
詳細な説明は東京電機大学出版「新訂版繊維」を参照さ
れたい。
(9)Δnの表層部・内部差 干渉顕微鏡を用いて、白色光550μmを光源とし、ヨウ
化メチレンおよびα−ブロムナフタリン/オリーブ油を
浸漬液として、試料単繊維の表層部のΔn(s)と内部
(中心部)のΔn(c)とを測定し、この差(Δn
(s)−Δn(c))を算出した。
(10)強力保持率 次により算出した。
処理コード強力保持率(%) =〔処理コード強力/(原糸強力×2)〕×100 (11)タフネス 次により算出した。
(12)中間伸度 延伸糸の場合は4.5g/d応力時の伸度で、また処理コー
ドの場合は4.5kg応力時の伸度で示した。
(13)寸法安定性 中間伸度と160℃乾収縮率と寸法安定性のパラメーター
とした。
(14)チューブ寿命 JISL 1017・1978(13Z1A法)に準拠し、チューブ破断
までの時間を示した。
(15)耐熱強力保持率 処理コードをゴム中に埋め込んだ状態で180℃、1時間
の熱処理を加えたのち、このコードをゴムより取り出し
熱処理前後の強力比を測定し、水およびアミン類などに
対する耐化学安定性パラメーターとした。
耐熱強力保持率(%) =(熱処理後の処理コード強力/処理コード強力)×10
0 実施例1〜9 固有粘度〔η〕=0.97、末端カルボキシル基濃度COO
H〕=18(当量/10g)のポリエチレンテレフタレー
トチップをスクリュー押出機にて溶融し紡糸した。この
ときのポリマー温度は297℃とし、紡糸口金は孔径0.35m
mで孔数は250ホールを有するものを使用した。
該紡糸口金より吐出された紡出糸を、長さ40cm、内部表
面温度200℃の加熱筒を通過させたあと、20℃の温度、8
0%の関係湿度を有する冷却風の吹きつけによって冷却
・固化し、次いでオイリングローラで油剤を付与し、25
00〜4000m/分の回転周速度を有する引き取りロールを
介したのち捲取った。
次いで得られた未延伸糸を、引き取りローラ、フィード
ローラ、ホットプレート、延伸ローラ、リラックスロー
ラ、および捲取機からなる横型の延伸機によって10〜10
0m/分の捲取速度で延伸、制限収縮(リラックス)し、
1000(D)/250(f)の各種の延伸糸とした。
以上の本発明による実施条件および未延伸糸の物性を第
1表の実施例No.1〜9に、また延伸糸の物性を第2表の
実施例No.1〜9に示した。なお、実施例No.2および4で
得た延伸糸の応力−ひずみ曲線を第1図の曲線aおよび
a′で各々示した。
ここで、第1表の延伸条件における延伸速度とは上記し
た延伸ローラの回転周速度を示し、延伸倍率とは上記し
た引き取りローラと延伸ローラとの回転周速度を示し、
リラックス率とは延伸ローラに対する捲取機の減速比率
を百分率で示したものである。また、延伸温度とは上記
したホットプレートの表面温度を示し、本実施例の場合
は上記ローラ類の加熱は行っていない。さらに延伸状態
とは、延伸時の羽毛発生・糸切れ状況および延伸糸の羽
毛観察より客観的に判断した結果を示したものである。
比較例1及び2 上記実施例2〜4または7〜9に使用した未延伸糸と全
く同一の未延伸糸、及び延伸装置を使い、延伸速度18m
/分、延伸倍率2.237、リラックス率6%および8%の
条件で各々延伸を行った。なお延伸温度については、ホ
ットプレートを220℃、延伸ローラを210℃としてリラッ
クスが支障なく行なえる条件とした。(延伸ローラの加
熱によって4%以上のリラックス操作が可能となる。) 以上の比較実施条件および未延伸糸物性を第1表の比較
例1および2に、また延伸糸の物性を第1表の比較例1
および2に示した。
比較例3 上記実施例2〜4または7〜9に使用した未延伸糸と全
く同条件の未延伸糸を使って、延伸速度1,500m/分での
延伸を行った。このときの延伸装置は、引き取りロー
ラ、フィードローラ、延伸ローラ、リラックスローラ、
および捲取機からなるたて型の延伸装置を使用し、フィ
ードローラ温度130℃、延伸ローラ温度230℃、延伸倍率
2.152、リラックス率2%で行った。
延伸倍率は上記の2.152が限界となり、リラックス率も
2%以下では採取不可能となった。
比較例4 上記実施例2〜4または7〜9に使用したと全く同一の
未延伸糸、及び延伸装置を使い、延伸速度150m/分、延
伸温度220℃、リラックス率2%の条件下で延伸を行っ
た。
延伸倍率は上記の2.152が限界となり、これ以上では羽
毛の発生および糸切れが多発した。
以上の比較例3,4の実施条件および未延伸糸物性を第1
表の比較例3,4に、またこれによって得た延伸糸の物性
を第2表の比較例3,4に示した。
比較例5 上記実施例1〜9に使用したと全く同一のチップを用い
てスクリュー押出機に溶融・紡糸を行った。このときの
ポリマー温度は293℃とし、紡糸口金は孔径0.35mmで孔
数192ホールを有するものを使用した。
この紡糸口金より吐出された紡出糸を、長さが40cm、内
部表面温度が300℃の加熱筒を通過させたあと、20℃の
温度と80%の関係湿度を有する冷却風の吹きつけによっ
て冷却・固化させ、次いでオイリングローラで油剤を付
与し引き取りローラに導き、捲き取らずに直ちに延伸を
行った。
このときの延伸条件は、引き取りローラ475m/分、フィ
ードローラ480m/分、第1延伸ローラ1983m/分、第2
延伸ローラ2887m/分、リラックスローラ2800m/分のロ
ーラ速度とし、ローラ温度はフィードローラ100℃、第
1延伸ローラ130℃、第2延伸ローラ230℃、リラックス
ローラ180℃とした。
この後延伸された糸を直ちに捲き取り1000(D)/192
(f)の延伸糸とした。
以上の比較実施条件および未延伸糸物性を第1表の比較
例5に、またこの延伸糸物性を第2表の比較例5に示し
た。
比較例6 〔η〕=0.67、COOH〕=19(当量/10g)のポリエ
チレンテレフタレートチップをスクリュー押出機にて溶
融し紡糸した。このときのポリマー温度は291℃とし、
紡糸口金は0.35mmで孔数は384ホールを有するものを使
用した。
該紡糸口金より吐出された紡出糸を、長さ15cm、内部表
面温度110℃の保温筒を通過させたのち、温度20℃、関
係湿度80%の冷却風の吹きつけによって冷却・固化し、
次いでオイリングローラで油剤を付与して引き取りロー
ラに導き、捲き取らずに直ちに延伸を行った。
このときの延伸条件は、引き取りローラ620m/分、フィ
ードローラ626m/分(110℃)、第1延伸ローラ2400m/
分(130℃)、第2延伸ローラ3600m/分(240℃)、リ
ラックスローラ3500m/分(230℃)とした。こののち、
延伸された糸を直ちに捲き取り1000(D)/384(f)
の延伸糸とした。
以上の比較実旋条件および未延伸糸物性を第1表の比較
例6に、またこの延伸糸物性を第2表の比較例6に示し
た。
なお、比較例5,4、および2で得た延伸糸の応力−ひず
み曲線を第1図に曲線b,c,およびdで各々示した。
以上の実施例1〜9と比較例1〜6とから明らかなよう
に本発明の延伸糸は、4.5g/d応力時の伸度(中間伸
度)および2次降伏点での伸度が低く、高配向度未延伸
糸の延伸糸にも拘わらず初期モジュラス、複屈折率Δ
n、伸張弾性回復率、仕事弾性回復率の値が高く、かつ
複屈折率の表層部と内部との差が比較的小さいという極
めて特徴的な特性を示している。
実施例1′〜9′及び比較例1′〜6′ 前記実施例および比較例によって得た延引糸を撚糸機で
下撚りをZ方向に490T/m、上撚りをS方向に490T/m
にかけ生コードとし、次いでこの生コードにレゾルシン
/ホルマリン/ゴムラテックスを主成分とする接着剤を
付与したのち、160℃乾熱、定長下で90秒間、240℃乾
熱、緊張下で120秒間、240℃乾熱、リラックス状態で40
秒間の熱処理を行い処理コードとした。なお、緊張率お
よびリラックス率は延伸糸の物性に応じて処理コードの
4.5kg応力時の伸度が4.5%となるように設定した。
本発明による延伸糸からなる処理コードは強力利用率が
高く、高強度、高弾性率、高タフネスで、かつ、寸法安
定性、耐疲労性、耐化学安定性の改善が著しく総合的な
面からも極めてすぐれた性能を有していることがわか
る。
【図面の簡単な説明】
第1図はポリエチレンテレフタレート延伸糸の応力−ひ
ずみ曲線であり、曲線a(実施例2)およびa′(実施
例4)は本発明に係るポリエステル繊維の応力−ひずみ
曲線であり、曲線b(比較例5),c(比較例4),d(比
較例2)は従来技術によるポリエステル繊維の応力−ひ
ずみ曲線である。更に、第1図において、(イ)は本発
明における初期モジュラスを1%の伸度に変換したとき
の範囲を示し、(ロ)は本発明における4.5g/d応力時
のひずみ率範囲を示し、(ハ)は本発明における2次降
伏点でのひずみ率範囲を示す。 第2図は応力−ひずみ曲線の各部位の定義を示す。 (A):2次降伏点、 (B):切断時のひずみ率(伸度)、 (C):4.5g/d応力時のひずみ率(中間伸度)、 (D):2次降伏点より高ひずみ領域のひずみ率。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−91009(JP,A) 特開 昭55−107511(JP,A) 特公 昭47−45424(JP,B1)

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】主としてポリエチレンテレフタレート単位
    からなるポリエステル繊維であって、 (i)固有粘度〔η〕が0.65〜1.20 (ii)末端カルボキシル濃度COOH〕が30当量/10
    以下、 (iii)複屈折率Δnが189×10 以上、 (iv)表層部の複屈折率Δn(s)と中心部の複屈折率
    Δn(c)との差が6×10 〜13×10 、 (v)初期モジュラスが120〜140g/d、 (vi)応力−ひずみ曲線において(a)4.5g/d応力時
    のひずみ率が3.3〜3.8%で(b)2次降伏点でのひずみ
    率が7.1〜7.8%であることを特徴とするゴム構造物補強
    用ポリエステル繊維。
  2. 【請求項2】(イ)主としてポリエチレンテレフタレー
    ト単位からなるポリエステルを引取速度2000m/分以上
    で紡糸し、次いで (ロ)得られた未延伸ポリエステル繊維を100m/分以下
    の速度で延伸しかつ延伸直後から捲取機に至るまでのリ
    ラックス率を4%以下として、 (i)固有粘度〔η〕が0.65〜1.20 (ii)末端カルボキシル濃度COOH〕が30当量/10
    以下、 (iii)複屈折率Δnが189×10 以上、 (iv)表層部の複屈折率Δn(s)と中心部の複屈折率
    Δn(c)との差が6×10 〜13×10 、 (v)初期モジュラスが120〜140g/d、 (vi)応力−ひずみ曲線において(a)4.5g/d応力時
    のひずみ率が3.3〜3.8%で(b)2次降伏点でのひずみ
    率が7.1〜7.8%であるポリエステル繊維を製造すること
    を特徴とするゴム構造物補強用ポリエステル繊維の製造
    方法。
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