JPH069472B2 - アレルゲンを低減させた穀類及びその製造方法 - Google Patents

アレルゲンを低減させた穀類及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はアレルゲンを低減させた穀類及びその製造方法
に関し、穀類を原因物質とする食物アレルギー患者に有
用な食物療法用材料を提供するものである。
[従来の技術] 近年、幼児等を中心に特定の食物を食したとき、異常な
過敏反応を生じる食物アレルギーが話題となっており、
特にアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎に代表される
湿疹、蕁麻疹、或いはストロフルス、反復性腹痛、習慣
性下痢、片頭痛、起立性タンパク尿等の各種アレルギー
症状が問題となっている。
これらのアレルギー症状の発生原因物質であるアレルゲ
ンは多岐にわたるが、一般には卵、牛乳、大豆等にアレ
ルゲンが含まれていると考えられていた。その治療法に
関しても各種模索されているが、薬物による対症療法の
ほかは、アレルギーの原因となる食物を見つけ出し、再
発の恐れがなくなるまで、その原因食物を患者の食餌か
らできるだけ取り除き体質の改善を図る、いわゆる除去
食物療法が採られている。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、最近の調査によれば、調査対象を幅広い
年齢層においた場合、米や小麦などの穀類によるアレル
ギー性皮膚炎の発症が意外に多いことが明らかとなっ
た。
主食である米、小麦等に代表される穀類によって食物ア
レルギー症状が出る場合、現在の食生活を考慮すれば、
前記除去食物療法を採用することは極めて困難という問
題がある。
本発明は前記従来技術の課題に鑑みなされたものであ
り、その目的は食物性アレルギー症状の発生原因物質で
あるアレルゲンを低減させた穀類を提供することにあ
る。
[課題を解決するための手段] 前記課題を解決するために本発明者らが鋭意検討を進め
た結果、穀類アレルゲン成分の主体は2M食塩溶液可溶
性の蛋白質画分にあること、本アレルゲンは蛋白分解酵
素により特定条件の加水分解を行なうことにより効果的
に除去できることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
すなわち、本出願の請求項1記載の穀類は、澱粉を主成
分とする穀類材料に蛋白質分解酵素を作用させ、該穀類
中の塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率が80%以
上となるまで、該穀類中のタンパク質を加水分解し、可
溶性成分を除去することによってアレルゲンを低減させ
たことを特徴とする。
又、請求項2記載の穀類は、澱粉を主成分とする穀類材
料が米であることを特徴とする。
請求項3記載の製造方法は、澱粉を主成分とする穀類材
料に蛋白質分解酵素を作用させ、該穀類中の塩溶性蛋白
質の10三塩化酢酸可溶率が80%以上となるまで加水
分解した後、可溶性成分を除去することを特徴とする。
請求項4記載の製造方法は、穀類が米であることを特徴
とする。
請求項5記載の製造方法は、脱気または加圧下におい
て、穀類材料に蛋白質分解酵素を作用させることを特徴
とする。
請求項6記載の製造方法は、穀類材料に蛋白質分解酵素
を作用させる際に、界面活性剤を添加することを特徴と
する。
請求項7記載の製造方法は、穀類材料が、未粉砕の穀類
であることを特徴とする。
請求項8記載の製造方法は、蛋白質分解酵素が、微生物
及び/又は植物由来の酵素であることを特徴とする。
以下に本発明の構成を具体的に説明する。
本発明でアレルゲンを除去する対象となる材料は、澱粉
を主成分とする穀類材料であり、その具体例としては、
米、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、裸麦、トリチケール、
とうもろこし等を挙げることができる。穀類材料は、一
般に精白したものをそのまま、あるいは30メッシュ以
下程度に粉砕して用いることができる。
蛋白分解酵素としては、エンド型のアスパルティックプ
ロテイナーゼ、セリンプロテイナーゼ、システインプロ
テイナーゼ、又はエクソ型のロイシンアミノペプチター
ゼ、カルボキシペプチターゼ等を単独で又は併用して使
用することができ、一般には微生物ないしは植物起源の
市販酵素剤をそのまま使用することが可能である。
その具体的な例としては糸状菌の一種であるアスペルギ
ルス サイトイ(Aspelgillus saitoi)の産生するタンパ
ク分解酵素(モルシン:盛進製薬(株)製)、放線菌の
一種であるストレプトミセス グリセウス(Streptomyce
s griseus)の産生するタンパク分解酵素(アクチナー
ゼ:科研化学(株)製)、パパイン、ブロメライン、フ
ィシン等を挙げることができる。これらのうち、特にア
クチナーゼがアレルゲンの除去効果が大であり、他方、
パパイン、ブロメライン等はアクチナーゼに比べて加水
分解率がやや低く、アレルゲンの完全な除去は困難な場
合がある。なお、ペプシン、トリプシン、キモトリプシ
ン、パンクレアチン等といった、動物の消化管から分泌
される蛋白分解酵素は、アレルゲンの除去効果が僅かで
あり、単独では実用的ではない。
本発明においては、上記の各種蛋白質分解酵素を使用す
るに当って、その種類と組み合わせを適宜選択するとと
もに反応時間を適宜選定することによって抗原性をほぼ
完全に除去した穀類から、軽度の抗原性を残した穀類ま
で、所要のものを得ることが可能である。
本発明にかかる製造方法では、例えば穀類材料100重
量部に対し、水20〜1000重量部、蛋白分解酵素
0.1〜5重量部、さらに必要に応じ、界面活性剤等を
加えて均一に混合し、必要に応じて振とう・攪拌しなが
らアレルゲン蛋白質の加水分解を行なう。この反応は、
10〜60℃で数時間ないし数十時間保持し、好ましく
は穀類材料中の塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率
が80%以上、より好ましくは90%以上となるまで行
なう。ここで、本願でいう塩溶性蛋白質の10%三塩化
酢酸可溶率とは、試料の2M塩化ナトリウム溶液に可溶
性の窒素に対する10%三塩化酢酸に可溶性の窒素の比
率を百分率で表わしたものであり、その各々はケルダー
ル法により測定される。
穀類を粉砕することなく酵素処理する場合には、穀粒内
部への酵素の浸透を促進するため、以下の(a)又は
(b)の方法を採用するか、あるいはその併用が効果的
である。すなわち、 (a)反応に先立ち、穀粒を水又は酵素溶液に浸漬し、
これに10〜50mmHg程度の減圧、あるいは2〜10kg
/cm2の加圧処理を施すか、又は反応系全体を同程度の減
圧、あるいは加圧下におくことによって穀粒内部の気相
部への水又は酵素水溶液の浸透を助長する。
(b)界面活性剤を添加して反応系の界面張力を低下さ
せ、酵素の穀粒内部への浸透を助ける。
かかる界面活性剤としては、モノグリセリド、蔗糖脂肪
酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルその他の食用界
面活性剤の中から、1種又は2種以上選択して用いるこ
とができ、その使用量は通常反応系の臨界ミセル濃度程
度、ないしはそれ以下で十分である。
このようにして酵素処理を行なった穀類材料は、そのま
ま、あるいは遠心分離などの適宜の手段によって母液を
除き、必要に応じてさらに水洗、透析等の精製手段を施
した後、風乾、凍結乾燥、真空乾燥等、適宜に方法によ
り乾燥する。なお、酵素処理によりアミノ酸、ペプチド
などの呈味性成分が生ずることがあるが、これらは上記
の精製手段によって除去することができる。
特に米は、丸粒のまま炊いた米飯としての給与が望まれ
るが、このように穀類材料として穀粒を丸粒のまま酵素
処理する場合には、酵素処理後の乾燥工程で破砕が起き
易いため、この懸念の少ない新穀、さらには収穫時の水
分をそのまま保持した、いわゆる調湿穀粒の使用が特に
好ましい。また、乾燥時の穀粒の破砕を防ぐには、乾燥
工程での穀粒の表層部と内部の水分差を極力抑えつつ行
なうことが必要であり、特に風乾が望ましい。また、乾
燥に代えて、酵素処理後の穀粒を軽く蒸煮し、いわゆる
パーボイル状態としてから乾燥することもできる。
なお、本発明者らはかかる酵素処理が米アレルゲンのみ
ならず、小麦等の他の広範な穀物のアレルゲンの除去に
有効であることを見出した。
[実施例] 以下、本発明の好適な実施例を説明する。なお、本発明
はこれらの実施例に限定されるものではない。
蛋白質の加水分解 本発明では、穀類材料の蛋白質分解酵素による加水分解
の程度を、穀類材料中の塩溶性蛋白質の10%三塩化酢
酸可溶率が80%以上で好適であると規定したが、この
根拠は以下の実施例から明らかである。
全量が32メッシュ篩を通過するように粉砕した米(標
準価格米)10gに水500mlを加え、液のpHを各酵
素の至適pHに調製した後、酵素剤100mgを添加し、
37℃で所定時間(表1に記載)振とうしつつ反応させ
た。反応後の試料は3000×gで遠心分離して母液を
除去した。得られた沈殿に水1リットルを加えて攪拌
し、さらに上記と同条件で遠心分離を行なった。次いで
得られた沈殿をセロファンチューブに入れて流水中で一
晩透析し、凍結乾燥した。
得られた酵素処理米を試料として、米アレルギー患者の
血液を用いてIgE−RAST値を測定した。対照には
無処理の米粉を用いた。なお、IgE−RAST値とは
ラジオイムノアッセイ法の一法により測定した抗原に対
する血清中の特異抗体の量を表わす指標であり、アレル
ギー患者の同一血清を用いた場合には、IgE−RAS
T値は抗原性の強さを表わす指標となる。数字は対数関
係にあることから、その1の低下は抗原性が1/10,
2の低下は抗原性が1/100に低下したことを、それ
ぞれ意味している。
使用した酵素、至適pH、反応時間、蛋白質の10%三
塩化酢酸(10%TCAと略記)可溶率及びIgE−R
AST値をまとめて表1に示す。
表1に示されるように、米粉を蛋白分解酵素で処理する
ことにより、米アレルギー抗原性の強さを表わすIgE
−RAST値は、いずれも低下する傾向が見られるが、
その程度は処理物中の塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸
可溶率に大きく依存することが明かとなった。
特に塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率が80%を
超えるものでは、IgE−RAST値が無処理品に比べ
て4以上、すなわち抗原性が1/10000以下に低下
し、さらに同可溶率が90%を超えるものでは抗原性が
陰性となる等、顕著な効果がみられた。
塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率は使用する酵素
の種類により大きく異なり、微生物ないし植物性の蛋白
質分解酵素であるアクチナーゼ及びパパインを用いたも
のでは短時間の反応でも良好な効果が得られたが、トリ
プシン、キモトリプシン等の動物の消化管から分泌され
る蛋白質分解酵素では反応時間を延長しても十分な分解
率を達成し得ず、従って抗原性の低下作用も低いもので
あった。
以下に具体的実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明
する。
実施例1 コーヒーミルで32メッシュ以下に粉砕した米粉5kgに
0.2M炭酸緩衝液(pH9)10リットルを加え、ア
クチナーゼAS(科研化学(株)製、食品用)50gを
加えて、37℃で24時間振とうした。該酵素処理物の
塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率は92%であっ
た。このものを3000×gで10分間遠心分離して沈
殿を採り、10リットルの水を加えて攪拌し、同条件の
遠心分離を行なうことによって洗浄した。洗浄操作はさ
らに2回繰り返した後、沈殿をセロファンチューブにつ
めて流水に対して一晩透析し、次いで凍結乾燥法によ
り、乾燥試料を得た。
このものを米アレルギー患者に1日3回、主食として給
与した。被験者は、米を絶った食餌をすると1カ月でア
トピー性皮膚炎が明らかに軽快し3カ月除去で症状の著
名な改善が認められ、この状態で米食を4日間連続する
と皮疹の増悪を認める14才の女子患者である。食品の
形態としては、患者の好みに応じ、団子、餅、グラタ
ン、お好み焼き等の様々な料理を行なった。3カ月間米
を絶った後、該試料を10日間給与したが、期間中、患
者には皮疹は認められなかった。
実施例2 米5kgに水10リットル、オレイン酸モノグリセリド5
g及びアクチナーゼAS(食品用)50gを加え、脱気
してから、37℃で24時間静置した。得られた酵素処
理物の塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率は82%
であった。これを和紙の袋に入れ、流水に対して一晩透
析した後、風乾し、乾燥全粒試料を得た。
本全粒試料を炊飯し、6名の米アレルギー患者(14才
女、4才男、5才男、16才女、19才男及び34才
女)に主食として10日間給与した。この間、アトピー
皮膚炎の皮疹はまったく見られなかった。
実施例3 米5Kgに水10リットル及びブロメライン50gを加
え、20mmHgの減圧下に20分間保持した後、オレイン
酸モノグリセリド5gを添加し、ときどき攪拌しながら
37℃で24時間静置した。得られた酵素処理物の塩溶
性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率は84%であった。
該酵素処理物及び無処理米を、米アレルギー患者の血清
を用いてIgE−RAST値を測定した。各値は0.6
及び5.1であり、酵素処理を行なうことにより抗原性
は1/10000以下に減少した。
実施例4 実施例1における米粉を薄力小麦粉に変えた以外は実施
例1と同様に操作して、酵素処理小麦粉を作った。この
ものの塩溶性蛋白質の10%三塩化酢酸可溶率は86%
であった。
該酵素処理物及び無処理小麦粉を、小麦アレルギー患者
の血清を用いてIgE−RAST値を測定した。各値は
0.5及び4.8であり、酵素処理を行なうことにより
抗原性は1/10000以下に減少した。
以上説明したように、前記各実施例により穀類材料に蛋
白分解酵素を作用させて塩溶性蛋白質の10%三塩化酢
酸可溶率を80%以上となるように加水分解を行なった
酵素処理物は、無処理品のに比べ、抗原性が1/100
00程度以下にまで減少する。特に同可溶率の値が90
%以上にまで加水分解した処理物は鋭敏な穀物アレルギ
ー患者に給与してもアレルギー症状を発症させることは
ない。さらに、表1から明らかなように蛋白質分解酵素
の種類と反応時間を適当に選択することにより、抗原性
を完全に除去した除去食物療法用の材料から、軽度の抗
原性を残した減感作用の材料まで、穀物アレルギーの治
療に必要な広範な穀物材料を調製することができ、穀類
を原因物質とする食物アレルギー患者に大いなる福音を
もたらすものである。
[発明の効果] 以上説明したように本発明は穀類起源の食物性アレルギ
ーの誘発を抑えることができるので、穀類を原因物質と
する食物アレルギー患者に大きな福音をもたらすもので
ある。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】澱粉を主成分とする穀類材料に蛋白質分解
    酵素を作用させ、該穀類中の塩溶性蛋白質の10%三塩
    化酢酸可溶率が80%以上となるまで該穀類中の蛋白質
    を加水分解し、可溶性成分を除去することによってアレ
    ルゲンを低減させた穀類。
  2. 【請求項2】澱粉を主成分とする穀類材料が米であるこ
    とを特徴とする請求項1記載のアレルゲンを低減させた
    穀類。
  3. 【請求項3】澱粉を主成分とする穀類材料に蛋白質分解
    酵素を作用させ、該穀類中の塩溶性蛋白質の10%三塩
    化酢酸可溶率が80%以上となるまで加水分解した後、
    可溶性成分を除去することを特徴とするアレルゲンを低
    減させた穀類の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項3記載の方法において、穀類が米で
    あることを特徴とするアレルゲンを低減させた穀類の製
    造方法。
  5. 【請求項5】請求項3または4記載の方法において、脱
    気または加圧下において、穀類材料に蛋白質分解酵素を
    作用させることを特徴とするアレルゲンを低減させた穀
    類の製造方法。
  6. 【請求項6】請求項3〜5記載の方法において、穀類材
    料に蛋白質分解酵素を作用させる際に、界面活性剤を添
    加することを特徴とするアレルゲンを低減させた穀類の
    製造方法。
  7. 【請求項7】請求項5または6記載の方法において、穀
    類材料が、未粉砕の穀類であることを特徴とするアレル
    ゲンを低減させた穀類の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項3〜7記載の方法において、蛋白質
    分解酵素が、微生物及び/又は植物由来の酵素であるこ
    とを特徴とするアレルゲンを低減させた穀類の製造方
    法。
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