JPH07173542A - 磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法

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JPH07173542A
JPH07173542A JP6249401A JP24940194A JPH07173542A JP H07173542 A JPH07173542 A JP H07173542A JP 6249401 A JP6249401 A JP 6249401A JP 24940194 A JP24940194 A JP 24940194A JP H07173542 A JPH07173542 A JP H07173542A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】一回のタイトコイル焼鈍または積層焼鈍による
磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法を提供する。 【構成】C:1%以下、Si: 0.2〜6.5 %、Mn:0.05〜
5%を含む冷間圧延珪素鋼板に、焼鈍分離材として脱炭
を促進する物質、または脱炭を促進する物質と脱Mnを促
進する物質とを用いて、タイトコイル焼鈍または積層焼
鈍を施すことを特徴とする磁気特性の優れた珪素鋼板の
製造方法。 【効果】一回の焼鈍により{100}面集合度の高い磁
気特性の優れた珪素鋼板を効率的に製造することができ
る。焼鈍をタイトコイルまたは積層で施すので、鋼板の
座屈もなくなり、長尺材の製造も可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、板面平行方向の{10
0}面を有する磁気特性の優れた珪素鋼板の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、電動機、発電機あるいは変圧
器などの磁心材料には珪素鋼板が用いられている。この
珪素鋼板には、交流磁界中で磁気的なエネルギー損失が
少ないこと、磁界中で磁束密度が高いことの二つの特性
が要求される。これらの特性を実現するには、電気抵抗
を高め、かつ磁化容易方向であるbcc格子の<100
>軸を使用磁界方向に集積させることが有効であるとさ
れている。
【0003】使用磁界方向が一方向に限られている場合
(例えば、変圧器など)に最も有効な磁気特性を示すも
のには、3%程度のSiを含む一方向性珪素鋼板がある。
【0004】図2は、珪素鋼板の圧延方向ならびにbc
c格子の<100>軸、<110>軸および{100}
面、{110}面の集積方位差を模式的に示す図であ
る。図2(イ) に示す鋼板は、図示するように{110}
面が板面に平行し、<100>軸が圧延方向に集積して
いる一方向性珪素鋼板である。珪素鋼の容易磁化方向は
<100>軸方向であるため、この鋼板は圧延方向に磁
界をかけて使用する場合の磁気特性が著しく優れる。し
かし、この一方向性珪素鋼板は、圧延方向以外の方向に
磁化しがたい。したがって、電動機または発電機などの
回転機のように磁界が板面の種々の方向に作用する場合
には、望ましい効果は得られない。
【0005】現在、磁界が板面の複数方向に作用する機
器に使用されるているのは、ほとんど集合組織をもたな
い無方向性珪素鋼板である。ところが、このような珪素
鋼板では、ほとんどの<100>軸が板面と平行ではな
いので、良好な磁気特性を得ることができない。
【0006】これらの用途において良好な磁気特性を示
すのは、図2(ロ) 〜図2(ニ) に示すように、 {100}
面が板面に平行し、<100>軸が板面垂直方向に集積
したものである。このような集合組織をもつと、互いに
直行する三つの<100>軸のうち、二つまでが板面に
平行する方向に集積したものとなる。以下、本発明で
は、これらの三種類を総称して{100}面集合組織を
有する珪素鋼板という。
【0007】この種の無方向性珪素鋼板では、板面に平
行する二つの<100>軸の集積具合にしたがってその
用途を変える。
【0008】例えば、板面内に互いに直行する方向に磁
界が加わるEI型鉄心の場合は、図2(ロ) 、図2(ハ) に
示す{100}<100>集合組織もしくは、{10
0}<110>集合組織のものが望ましい。板面内のあ
らゆる方向に磁界が加わる鉄心の場合は、図2(ニ) に示
す{100}面が板面内に無方向の集合組織のものか、
または図2(ロ) 、図2(ハ) に示す{100}面が板面内
に一方向の集合組織のものを、板面内で角度を変えて打
ち抜き、これらを重ねて使用する。
【0009】本発明者らは特開平1−108345号公報にお
いて、このような{100}面集合組織を工業的規模で
実現するのに適した、二段階の脱炭焼鈍を用いる珪素鋼
板の製造方法を示した。
【0010】この製造方法は、C:0.02〜1%、Si:
0.2〜6.5 %を含み、さらに必要に応じてMn:5%以下
を少なくとも脱炭した後 850℃以下の温度で実質的にα
−フェライト単相となるように含む板厚0.05〜5mmの冷
間圧延珪素鋼板を、脱炭後実質的にα−フェライト単相
となる温度でC:0.01%以下まで脱炭し、板面垂直方向
に表面から内部に向かって成長した柱状結晶粒からな
り、板面垂直方向に<100>軸が高密度に集積した珪
素鋼板を製造するものである。「実質的にα−フェライ
ト単相となる」とは、MnS、AlNなどの微量第二相が存
在してもよいことを意味する。
【0011】この方法では、本質的に表面から5〜50μ
m の深さまでの領域に、板面垂直方向に<100>軸を
持つα−フェライト粒を生成させるための真空または弱
脱炭性雰囲気中での第一次脱炭焼鈍(例えば、均熱保持
温度:950 ℃、均熱保持時間:5時間)と、その後この
α−フェライト粒を板の中心部に向かって成長させるた
めの強脱炭性雰囲気中での第二次脱炭焼鈍(例えば、均
熱保持温度: 850℃、均熱保持時間:2時間)を施す。
【0012】板面垂直方向に<100>軸を持つα−フ
ェライト粒を板の表面部に高密度で生成させる要因は、
次の、であるとされている。すなわち、弱脱炭性
雰囲気中でのゆるやかな脱炭とMnが添加されている場合
は脱Mnとによって、板の表面部でγ→α変態を生じせし
め、そこにα−フェライト粒だけからなる領域を生成さ
せること。さらに、そのα−フェライト粒のうち板面
垂直方向に<100>軸を持つものを、{100}面が
最も安定となる表面エネルギーによって選択的に成長さ
せること。
【0013】図4は、{100}集合組織の発達を模式
的に示した図である。上記の過程は、α−フェライト
単相となった表面層の{100}方位α−フェライト結
晶粒の表面エネルギーが他の方位のものに比べ小さいた
め、選択的に成長することによって生じる。
【0014】この表面エネルギーによる選択的成長の駆
動力は、周囲の粒との間の表面エネルギーの差ΔEと表
面層の厚さdとの比(ΔE/d)に比例する。したがっ
て、この駆動力はα−フェライト単相となった表面層の
厚さが薄いときに大きく、焼鈍の初期のα−フェライト
単相となった表層組織が薄い時期に{100}集合組織
が発達する。つまり、{100}集合組織を発達させる
には焼鈍初期にすばやくこのα−フェライト単相となっ
た表面層を形成し、かつ十分な時間この表層の厚さがあ
まり厚くならないように脱炭や脱Mnを制御する必要があ
る。またこのα−フェライト単相となった表面層と内部
との境界も明瞭でなければ、表層内の{100}結晶粒
は効率よく成長しない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記の特開平1−1083
45号公報で示した方法は、第一次脱炭焼鈍としてオープ
ンコイル法、第二次脱炭焼鈍としてオープンコイル法も
しくは連続焼鈍法を用いる。オープンコイル法では、焼
鈍中に鋼板が座屈するという品質上の問題も発生する。
特に、第一次焼鈍は多くの場合 900℃以上の高温で行う
ので、長尺のものでは座屈が激しい。連続焼鈍法では、
比較的長時間の焼鈍であるために、焼鈍炉が長くなり、
設備コストが嵩むという問題がある。このように、上記
の方法は、生産性、製造コストおよび品質の各面から効
率的ではない。
【0016】上記の焼鈍過程を一回だけの焼鈍で行うた
めの問題点は、第一次焼鈍雰囲気は非常に弱い脱炭効果
しかもたず、第二次焼鈍雰囲気として用いることができ
ないこと、また、第二次焼鈍の強脱炭性雰囲気は、鋼板
中のSiやMnを強く酸化させて表面酸化層を形成させるた
めに、これを第一次焼鈍雰囲気として用いると、{10
0}面集合組織が発達しないことにある。このように、
それぞれの焼鈍過程の目的と雰囲気が異なるため、二段
階の焼鈍方法しか採用できなかった。
【0017】本発明の目的は、{100}面集合組織を
有する珪素鋼板を一回の焼鈍で製造することができる方
法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、脱炭を促
進する物質、または脱炭を促進する物質と脱Mnを促進す
る物質とを焼鈍分離材としてコイル層間または板間に挟
み焼鈍を施すと、一回の焼鈍で、γ→α変態を生じせし
めるとともに板面に平行な{100}面を形成させ、さ
らにα−フェライト粒を板の中心部に向かって成長させ
る板面垂直方向に<100>軸を形成させることがで
き、しかも長尺の鋼板であっても座屈させずに製造する
ことができることを見出し、本発明を完成した。
【0019】本発明の要旨は次のおよびに示す珪素
鋼板の製造方法にある。
【0020】重量%で、C:1%以下、Si:0.2 〜6.
5 %、Mn:0.05〜5.0 %を含む冷間圧延珪素鋼板に、焼
鈍分離材として脱炭を促進する物質を用いて、タイトコ
イル焼鈍または積層焼鈍を施す磁気特性の優れた珪素鋼
板の製造方法。
【0021】上記の焼鈍分離材として脱炭を促進する
物質と脱マンガンを促進する物質とを用いる上記に記
載する珪素鋼板の製造方法。
【0022】
【作用】
I.焼鈍分離材料として脱炭を促進する物質を使用する
ことについて:脱炭を促進する物質を焼鈍分離材として
鋼板間に交互に挟み積層し、タイトコイル焼鈍または積
層焼鈍すると、鋼板の表面の酸化を防止しながら脱炭を
生じさせ、この過程で発生するγ→α変態によって表層
部に強い{100}面集合組織を発達させる。この脱炭
反応は実用上十分に速く、そのまま焼鈍を続けることに
よって、実用的な焼鈍時間の範囲内で{100}面集合
組織をもつ結晶を板の内部へ成長させ、板全体を{10
0}面集合組織からなるものにすることができる。
【0023】この脱炭を促進させる物質として、例え
ば、Siの酸化物(SiO2)が挙げられる。
【0024】SiO2を焼鈍分離材として用いる場合の脱炭
促進作用は、次の機構によると考えられる。
【0025】Siの酸化物は、室温では安定であるが、温
度が1000℃程度になると不安定になり、下記式により
分解反応が起こり、酸素を発生する。
【0026】 SiO2→SiO +O ・・・・・・・・・・・・・ この酸素が下記式により鋼板中の炭素と反応し、一酸
化炭素となる結果、脱炭が生じる。
【0027】 O +C(鋼板中)→CO(ガス) ・・・・・・ 本発明者らの実験によれば、式の脱炭反応は、酸化物
と鋼板の接触点において強く起こっているようである。
そして、式により生成された酸素は、酸素ガス( O2 )
に変わった後に鋼板中の炭素と反応するのではなく、
式に示すように酸素( O ) の状態のままで、直接接触し
た鋼板表面の炭素と反応しているようである。すなわ
ち、上記、の反応は、固体反応の性格が強い。
【0028】上記のような作用を有する物質には、他に
Cr2O3、FeO 、Na2CO3などの高温の適切な雰囲気下で比
較的不安定な酸化物がある。すなわち、焼鈍温度で分解
して酸素を発生し、脱炭を促進させる物質またはこれら
を含む物質である。これらは二種以上を混合して用いる
こともできる。一種もしくは二種以上を混合し、さらに
高温で安定な無機物、例えばAl2O3 などの安定な酸化
物、BNやSiCなどの安定な窒化物または炭化物を混合
してもよい。
【0029】しかし、Na2CO3はSiO2に比べて不安定であ
り、高温で分解速度が速いため、多量の酸素を発生し、
鋼板中のSi、Mnを酸化させ、鋼板の表面酸化を引き起こ
す。
【0030】したがって、Na2CO3は単独使用をさける
か、または混合量を制限しなければならない。
【0031】最も望ましいのは、SiO2を含むものであ
る。SiO2はその分解温度や酸素発生量の面から、鋼板の
表面酸化を発生させることなく脱炭を促進させるので、
{100}面集合組織の発達を促進する最適な物質であ
る。
【0032】脱炭促進材から発生する酸素( O ) は、鋼
板中のMnを酸化させ表面性状を劣化させる。従って、Mn
を含有する鋼板の場合には脱Mnを促進する材料を脱炭促
進材と併用すると、γ安定化元素であるMnが鋼板表層部
から減少するのでγ→α変態を促進させるとともに、Mn
の酸化も抑制する。また、酸化されないMnは鋼板の表面
を活性化させ、上記式による脱炭反応を促進させる。
さらに、脱Mnを施して表面でのγ→α変態を促進させる
こともできる。
【0033】脱炭を促進する物質を含む焼鈍分離材の形
態は特に問わない。この形態は、板または粉末であって
もよいし、それらの繊維状のものまたは繊維からなるシ
ート状のもの、もしくはそのシート中に粉末を混入させ
たものとしてもよい。最も望ましいのは、繊維状のもの
または繊維からなるシート状のものである。この理由
は、粉末のようにコイル層間からの脱落や表面の多量の
吸着酸素がなく、しかも繊維間に存在する空隙のため
に、前記の反応によって生じた一酸化炭素がコイル外に
排出されやすくなること、およびその空隙中にMnが昇華
して表面でのγ→α変態が促進されることである。これ
らは、コイル層間や板間に挟むことも容易である。
【0034】II.焼鈍分離材料として脱炭を促進する物
質と脱Mnを促進する物質とを併用することについて:鋼
板中にMnが含まれると、焼鈍中にMnが板表面から昇華
し、これが表層でのγ→α変態を促進し、{100}集
合組織の発達を促すことについて述べた。さらにMnの昇
華(脱Mn)に着目した研究を行い、焼鈍分離材として脱
Mnを促進する物質と脱炭を促進する物質とを併用するこ
とで{100}集合組織をより容易に形成し、かつ集積
度の大きなものとすることができることを見出した。こ
こでは、単純な試験結果について説明する。
【0035】図3は、焼鈍試験中の積層体の構成を示す
図である。1は積層体、2は試板、3は脱Mn促進材、4
は脱炭促進材である。積層体1は試板2(Mn含有珪素鋼
板)と脱Mn促進用鋼板3(Mn含有なし、即ち脱Mnを促進
する物質)とを脱炭促進材4を焼鈍分離材として交互に
積層し、構成した。これを真空焼鈍すると (例えば、10
00℃、12h) 試板から昇華したMnが矢印しのごとく脱炭
促進材を通過して脱Mn促進用鋼板で吸収される。このよ
うな反応は、焼鈍後の脱Mn促進用鋼板に多量のMnが存在
すること、または脱Mn促進用鋼板を用いず脱炭促進材の
みを用いて焼鈍した場合よりも試板の脱Mn量が多いこと
から確かめられている。
【0036】このように脱Mnを促進することは、前述し
た{100}集合組織を形成する第1段階(表層でγ→
α変態を生じさせ、表層内で表面エネルギーによる{1
00}結晶粒の選択的成長によって、{100}集合組
織を横方向に発達させる)の効果を助長するものであ
る。
【0037】脱Mnを促進する物質はMnを含まない鉄基合
金、もしくは珪素鋼板のMn含有量よりも少ないMn(好ま
しくは珪素鋼板のMn含有量の 1/2以下)を含む鉄基合金
やMnを吸収する酸化物(たとえば、Mnと複合化合物を形
成する酸化物、TiO2)等である。何れにしても、焼鈍中
に鋼板から昇華するMnを吸収する物質であり、脱炭反応
や鋼板の表面エネルギー状態に悪影響を及ぼさないもの
であればよい。形状は、粉末状、繊維状、板状等のもの
でよく、特に問わない。鉄基合金の組成成分は、Mn含有
量を珪素鋼板のMn含有量の1/2 以下とし、その他の成分
を等しくするのが好ましい。
【0038】脱Mnを促進する酸化物のTiO2は鋼板から昇
華するMnと複合酸化物(TiMnO2)を形成し、Mnを吸収す
る。この脱Mnを促進する酸化物は、脱炭促進用の焼鈍分
離材に混ぜて用いることができ、鉄基合金板よりも効果
的な脱炭焼鈍が可能となる。脱炭促進材と脱Mn促進材と
を併用して焼鈍した場合の{100}集合組織生成機構
について説明する。
【0039】図5は、鋼板を焼鈍したとき拡散によるC
とMnとの濃度分布を示す模式図であり、Cは脱炭のみを
行った場合、Mnは脱Mnを行った場合の濃度分布を示して
いる。1000℃近傍で焼鈍を行い脱炭だけが進行すると、
このような炭素濃度分布が形成されるが、炭素の拡散速
度は非常に大きいため、表面と内部との炭素濃度の差が
少なくα−フェライト単相となった表面組織は形成され
ない、もしくは形成されても表層組織(α−フェライト
単相となった組織)と内部の組織(α+γ組織もしくは
γ組織)との境界は不明瞭となり、表層組織の厚さも厚
くなり{100}集合組織を十分に発達させることがで
きない。
【0040】一方、Mnの拡散速度は図5に示すように炭
素のそれよりもはるかに小さく、脱Mnによって表面近傍
に大きな濃度勾配を持った(低Mnの表面層と高Mnの内部
の境界が明確な)低Mn領域を形成し得る。
【0041】脱Mn促進材を使用した焼鈍によるMn含有量
の低下は、その領域の炭素の化学ポテンシャルを増加さ
せ、結果として、その領域(低Mnの表面層)の炭素を高
Mnの領域 (板内部) へと拡散させ、その領域でγ→α変
態を生じさせ、その領域をα−フェライト単相化する。
脱Mnによって形成される表面層は、Mnの拡散速度が小さ
いため長時間の焼鈍によってもあまり厚くならない (10
00℃、12hの焼鈍でも100μm程度) 。したがって、脱
炭促進材と脱Mn促進材とを併用して焼鈍 (1000℃、12
h)すると、初期に脱Mnによって極表層部 (20μmから
70μm程度) にα−フェライト単相の表面層が形成さ
れ、後に脱炭が十分進むとこの表層部が内部へと成長す
る。明確なα−フェライト単相の表面組織を薄い状態に
保持することにより、{100}結晶粒の表面エネルギ
ーによる成長が生じ、{100}集合組織が強く発達す
るのである。
【0042】珪素鋼板と焼鈍分離材とを重ねて焼鈍した
場合、珪素鋼板の中央部と端部とで脱Mn量の差が発生
し、磁気特性を不安定にすることがあったが、脱Mn促進
材を使用することによって軽減できる。
【0043】図6および図7は、実施例で得られたMnの
異なる材料を脱炭促進材と脱Mn促進材とを併用して焼鈍
した場合の顕微鏡組織の模写図である。
【0044】図6の(a) から(e) は、Mnを0.92%含有す
る珪素鋼板(鋼種F)の焼鈍時間による顕微鏡組織の変
化を示すものである。脱Mnの効果によって焼鈍時間が1
時間以内((a) および(b) )では鋼板の表面近傍に明瞭
なα−フェライト単相の領域が存在する。そして焼鈍時
間が長くなる(3時間、(c))と表面層の結晶粒が内部へと
柱状粒の形で急速に成長し、両表面から成長した柱状粒
が板厚の中央部で衝突したような組織となる。さらに焼
鈍時間が長くなる(6時間乃至12時間、(d) 、(e))と粒成
長が進展することがわかる。
【0045】図7の(a) から(e) は、Mnを含有しない珪
素鋼板(鋼種O-M )の焼鈍時間による顕微鏡組織の変化
を示すものである。Mnを含有しない鋼では脱Mnの効果が
ないため、明瞭な表面層は形成されず、板厚全体にわた
って脱炭が均一に進行し、粒成長も板表面近傍と内部で
ほぼ同様に生じている。
【0046】III.焼鈍について:焼鈍分離材として脱炭
や脱Mnを促進する物質を適応する冷延鋼板は、コイル状
に巻かれたもの、または切断された板状のもののいずれ
でもよい。前者の場合がタイトコイル焼鈍、後者の場合
が積層焼鈍に、それぞれ相当する。
【0047】冷間圧延鋼板がコイル状であって実操業で
シート状の焼鈍分離材を用いる場合は、冷延鋼板に重ね
てコイル状に巻く方法がよい。また、冷延鋼板に酸化物
粉末を塗布する場合は、巻取り装置で巻き取る前に塗布
することができる。このような形態の焼鈍分離剤を用い
るタイトコイル焼鈍によって、座屈のない長尺鋼板を製
造することができる。
【0048】焼鈍雰囲気は、水素、不活性ガスまたは両
者の混合ガスを主体とする雰囲気または真空中がよい。
好ましいのは 100Torr 以下、より好ましいのは1Tor
r 以下の真空中である。雰囲気圧力が 100Torr を超え
ると、所望の酸素分離反応、脱炭反応および集積度の高
い{100}面集合組織が生じにくい。
【0049】保持温度は1300℃以下が望ましい。1300℃
を超える焼鈍温度は工業的に実現するのが困難である。
好ましいのは、集積度の高い{100}面集合組織を得
るために、850 ℃以上のα+γ二相共存温度域またはγ
相温度域である。
【0050】焼鈍のための均熱保持時間は、30分〜100
時間の範囲がよい。30分未満では脱炭または脱Mnが不十
分となる。一方、100 時間を超えると生産性が悪化す
る。
【0051】IV.本発明方法の素材となる冷間圧延珪素
鋼板の化学組成を、前記のように定めた理由を説明す
る。
【0052】C:脱炭焼鈍において、脱炭所要時間を抑
制し、さらに脱炭にともなうγ→α変態を利用した集合
組織制御を行うためには、C含有量は脱炭焼鈍前の素材
鋼板で1%以下とする必要がある。このCの含有量は少
ない程よく、C含有量の好ましい上限は 0.5%、より好
ましいのは 0.2%である。また、脱炭の効果を奏するた
めには0.01%以上とするのが好ましい。このようにし
て、焼鈍後の段階でのC含有量は、磁気特性を劣化させ
ないために0.01%未満、好ましくは 0.005%以下、より
好ましくは 0.003%以下とするのがよい。残存するC
は、α−フェライト中にセメンタイトとして析出し、磁
気特性を劣化させるからである。
【0053】Si:磁気特性および機械的性質を確保する
ために、 0.2%以上のSi含有量が必要である。好ましい
のは1%以上である。一方、Si含有量の上限は、脆化お
よび磁束密度の低下を抑えるために 6.5%とした。好ま
しいのは5%以下、より好ましいのは4%以下である。
【0054】Mn:電気抵抗を増大させて渦電流損失を低
下させる効果、γ相温度域を拡大してγ→α変態を利用
する集合組織の制御を容易にする効果、{100}集合
組織を発達させる効果および焼鈍時に鋼板表面を活性化
させて脱炭を促進する効果を有する元素であるので、0.
05%以上添加する必要がある。好ましくは 0.3%以上、
より好ましくは 0.5%以上である。いずれにしても、脱
炭完了後 850℃以下の温度で実質的にα−フェライト単
相となる量を最大限として含有させるのが望ましい。こ
れは、Mnを多量に含有させると脱炭完了後実質的にα−
フェライト単相となる温度が低下し、焼鈍温度を極端に
低くしなければならなくなるためである。ここで、「実
質的にα−フェライト単相となる」とは、前記と同様に
MnS、AlNなどの微量第二相が存在してもよいことを意
味する。
【0055】なお、Si含有量が高い場合はMnも高くでき
るが、磁束密度を低下させるためにMn含有量は5%を超
えないようにするのがよい。
【0056】上記以外の元素で本発明の効果を損なわず
に含有させうるものは、例えば次のとおりである。
【0057】Al: 0.5%以下、W、V、Cr、Co、Ni、M
o:おのおの1%以下、Cu: 0.5%以下、Nb: 0.5%以
下、N: 0.05 %以下、S: 0.5%以下、Sb、Se、As:
おのおの0.05%以下、B: 0.005%以下、P: 0.5%以
下このような素材鋼板組成を脱炭促進材、脱炭促進材と
脱Mn促進材とからなる焼鈍分離材をコイルの層間または
板間に挟み、タイト状態で脱炭焼鈍を施すと、次の (a)
〜(c) の作用効果を得ることができる。
【0058】(a) 供給される酸素は、焼鈍分離材を兼ね
た酸素発生物質のみであるから、過剰な酸素が供給され
ないように、焼鈍分離材の密度を選択することができ
る。ここで焼鈍分離材の密度とは、単位面積当たりの質
量で示し、シート状の場合には厚さに比例する。また、
酸素発生量は焼鈍温度によって変化するので、この温度
によっても制御することができる。このような制御され
た焼鈍分離材の充填と酸素供給により、鋼板表面の酸化
を十分防止することができる。
【0059】特に、脱炭促進材がSiO2等の酸化物である
場合には、酸素量が増加するとSiO2の分解は起こらな
い。すなわち、前記式の酸素分解反応は停止または逆
方向に進行し、酸素量の増加が停止または逆に減少する
ことになる。この反応によって鋼板中のSiが酸化されな
いように自動制御される。Mnについても、Mnの酸化ポテ
ンシャルがSiのそれと非常に近いので、Mnも酸化されな
い効果がある。
【0060】このような酸化の限界域における酸素量が
制御されることによって、SiやMnの酸化が起こらない酸
素供給条件での十分な脱炭が進行する。
【0061】(b) 前述のように、脱炭反応が固体反応の
性格を有しているために、オープンコイル焼鈍の場合の
ようなガスと鋼板中の炭素との反応と異なり、低酸素供
給条件下においても、速い脱炭速度が維持される。
【0062】(c) 上記(a) 、(b) によって、脱炭反応は
実用上問題ない程度に速く進み、二段階焼鈍の必要性が
なくなる。
【0063】珪素鋼板の製造は、通常は連続鋳造−熱間
加工−冷間圧延の工程による。
【0064】連続鋳造による方法以外には、例えば50mm
以下の板厚に直接凝固させた薄スラブもしくは溶湯超急
冷法による極薄板を直接または熱間加工後に冷間圧延す
る方法でもよい。
【0065】冷間圧延については、圧下率10%以上の冷
間圧延を施すものであれば圧延方法は問わない。好まし
い圧下率は30%以上、より好ましい圧下率は50%以上で
ある。この場合、熱間加工以降の加工間に1回または複
数回の焼鈍をはさむことを阻げない。なお、ここで冷間
圧延とは再結晶の生じない500 ℃以下での圧延をいう。
【0066】冷間圧延後の板厚は5mm以下とするのがよ
い。板厚が5mmを超えると内部まで脱炭するのに長時間
を要し、また渦電流損失が増大する。好ましいのは1mm
以下、より好ましいのは0.5mm 以下である。一方、板厚
の下限は特に限定されず、冷間圧延で製造可能な厚さで
あればよい。
【0067】
【実施例】
〔実施例1〕真空鋳造して得た表1に示す9種類の化学
組成のインゴットを熱間鍛造して10mm厚さの鋼板とし、
さらに各鋼板を3mm厚さまで熱間圧延した後、1mm厚さ
まで冷間圧延した。これらの冷間圧延鋼板から250mm 角
の試板を各々5枚切り出して、タイトコイル焼鈍をシミ
ュレートするための供試材とした。
【0068】集合組織制御のため、各5枚の試板の間に
焼鈍分離材として48重量%Al2O3 −51重量%SiO2系の繊
維状の脱炭促進材を、0.02g/cm2 の密度で挟み積層し、
10-2Torr の真空中で表2に示す 925〜1100℃、3〜72
時間の条件で脱炭焼鈍を実施した。
【0069】(集合組織の測定)脱炭焼鈍を終えた各試
板の表面から板厚の2/5の位置において、X線積分強
度測定を行い、{200}面反射の積分強度から板面垂
直方向の<100>軸密度を、配向性のない試料に対す
る倍数で求めた。また、後述の表5のO-M 鋼と脱Mn促進
材とを脱炭促進材を介して交互に積層し、同様の測定を
行った。この結果は表2中に( )内に示した。比較の
ため、市販の0.5mm 厚さの高級無方向性珪素鋼板(JIS S
-9) に対しても同じ測定を行った。
【0070】(脱炭焼鈍後のCおよびMn含有量の分析)
脱炭焼鈍後の各試板中の炭素含有量およびMn含有量を分
析した。
【0071】それらの結果を表2に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】表2から、本発明の製造方法による鋼板で
は、一回の脱炭焼鈍を用いるにもかかわらず、強い{1
00}面集合組織が形成されていることがわかる。
【0075】〔実施例2〕表1に示すI鋼の3mm厚さの
熱延鋼板を冷間圧延して0.35mm厚さの鋼板とし、得られ
た鋼板から200mm 角の試板を切り出した。各5枚の試板
の間に焼鈍分離材として表3に示すような脱炭促進材を
挟み積層し、積層体に0.1kg/cm2 の面圧を加え1Torr
の真空中で、1050℃×24時間の脱炭焼鈍を実施した。
【0076】(磁気特性の測定)脱炭焼鈍を終えた各試
板から内径33mm、外径45mmのリング状試験片を10枚打ち
抜き、窒素ガス中の 800℃で30分間保持し、打ち抜き歪
みを除去した。この10枚のリング状試験片を積層し、こ
れに一次コイル、二次コイルを100 ターンづつ巻いて磁
気特性を測定した。5000A/mの外部磁界を(一次コイル
に)印加したときの磁束密度 (B50) と、50Hz の交番
磁界中で 1.5T(テスラ)の磁束密度まで磁化した場合
の鉄損 (W15/50)とを求めた。比較のため、市販の0.35
mm厚さの高級無方向性珪素鋼板(JIS S-9) に対しても同
じ測定を行った。これらの結果を表3に併記して示す。
【0077】
【表3】
【0078】表3から明らかなように、脱炭促進作用を
有しないAl2O3 のみを焼鈍分離材として用いた場合以外
では、一回の焼鈍により炭素量が低下し、優れた磁気特
性が得られている。
【0079】〔実施例3〕表1に示すG鋼の4mm厚さの
熱延鋼板を冷間圧延して2mm厚さとし、次いで900 ℃で
3分間の中間焼鈍を施した後、冷間圧延して0.35mm厚さ
の鋼板とし、得られた鋼板から200mm 角の試板を切り出
した。
【0080】各5枚の試板の間に、焼鈍分離材として70
重量%Al2O3 −29重量%SiO2系の繊維状の脱炭促進材を
5mg/cm2の密度で挟み積層し、積層体には0.1kg/cm2
面圧を加え、表4に示す種々の真空雰囲気下で 925〜11
00℃、6〜72時間の脱炭焼鈍を実施した。
【0081】脱炭焼鈍を終えた試板について、実施例2
と同じ評価試験を実施した。これらの結果を表4に併記
して示す。
【0082】
【表4】
【0083】表4から明らかなように、本発明の方法で
は、一回の焼鈍により炭素量が低下し、優れた磁気特性
が得られていることがわかる。
【0084】〔実施例4〕表1に示すB鋼を0.35mm厚さ
まで冷間圧延した鋼板から、実施例2と同じ200mm 角の
試板を切り出した。各5枚の試板の間に焼鈍分離材とし
て、50重量%Al2O3 −50重量%SiO2系の繊維状の脱炭促
進材を25mg/cm2の密度で挟み、実施例2と同様の方法で
975℃、約20時間の条件で脱炭焼鈍を施した。この脱炭
焼鈍中の試板について、炭素およびMnの分析を行った図
1は、炭素およびMnの含有量に及ぼす焼鈍時間の影響を
示す図である。図示するように、本発明の方法では、脱
炭および脱Mnが効率よく行われていることがわかる。
【0085】〔実施例5〕真空鋳造して得た表5に示す
18種類の化学組成のインゴットを熱間鍛造して50mm厚さ
の鋼板とし、さらに各鋼板を3mm厚さまで熱間圧延した
後、0.35mm厚さまで冷間圧延した。鋼種記号のあとにH
を付した鋼は炭素を含有しない鋼であり、、Hを付さな
い鋼と炭素含有量以外はほぼ同じ組成とし、また鋼O-M
はMnを含有しない鋼であり、脱Mn促進用鋼板として用い
た。
【0086】
【表5】
【0087】これらの冷間圧延鋼板から400 mm角の試板
を各々5枚切り出して、タイトコイル焼鈍をシミュレー
トするための供試材とした。
【0088】集合組織制御のため、各5枚の試板の間に
焼鈍分離材として48重量%Al2O3 −51重量%SiO2系の繊
維状の脱炭促進材を0.02g/cm2 の密度で挟み積層し、10
-3Torr の真空中で 950〜1150℃、 0.5〜72時間の条件
で脱炭焼鈍を実施した。
【0089】この繊維状の脱炭促進材の組成は、ムライ
トと呼ばれる酸化物の組成に近く、X線回析から大部分
が非晶質、もしくはムライトの結晶構造を持っているこ
とがわかっている。焼鈍分離材として使用した後は、ほ
とんどの場合、ムライトと少量のクリストバライトが混
在したものになった。
【0090】脱Mnの効果を知るため、各試板と脱炭促進
材の積層体(脱Mn材なし)、および図3に示すような各
試板、脱炭促進材および脱Mn促進用鋼板(O-M) の積層体
の2種の積層体に対し、焼鈍を行った。
【0091】脱炭焼鈍を終えた400mm 角試料の中心部の
100mm角の部分から切り出した各試板について、表面か
ら板厚の2/5 の位置においてX線積分強度測定を行い、
{200}面積分強度から<100>軸密度を配向性の
ない試料に対する倍数で求めた。また、実施例1および
実施例2と同様な方法で炭素含有量、Mn含有量および磁
気特性を求めた。比較のため、市販の0.35mm厚の高級無
方向性珪素鋼板(JIS S-9、S-20))に対しても同じ評価を
行った。
【0092】これらの結果を表6に示す。表6中( )
内には脱Mn促進用鋼板を使用しない場合の値を示す。
【0093】表6で発明例と示したJからTまでの鋼
は、同表に示す条件で脱炭焼鈍した場合、Mnを含有しな
い O-M鋼、炭素を含有しない J-H鋼からS-H 鋼に比べ
{200}積分強度の倍率とB50が高く、W15/50 が低
くなっており、{100}集合組織が強く発達し、優れ
た磁気特性が得られることがわかる。
【0094】
【表6】
【0095】脱Mn促進材を併用した場合は、それを併用
しない場合に比べ各試板のMn含有量が低下しており、脱
Mn促進材とした鋼板(O-M) に吸収されていることがわか
る。
【0096】これによっても{200}積分強度の倍率
とB50が高く、W15/50 が低くなっており、{100}
集合組織が強く発達し、優れた磁気特性が得られること
がわかる。
【0097】また、参考例で示した高Si含有鋼と同等も
しくはそれ以上の磁気特性が得られていることがわか
る。
【0098】表6から、本発明の製造方法による鋼板で
は、一回の脱炭焼鈍を用いるにもかかわらず、強い{1
00}面集合組織が形成されていることがわかる。
【0099】〔実施例6〕表5の鋼種Oで示す組成の3
mm厚さの熱間圧延鋼板を、種々の板厚さ( 0.15〜0.5 m
m) に冷間圧延して得られた鋼板から 400mm角の板を切
り出し、脱Mn促進材としてTiO2粉末を使用する試験を行
った。これらの試板を、70重量%Al2O3 −30重量%SiO2
系の繊維状の脱炭促進材に粒径10〜50μmのTiO2粉末を
種々の量添加したものを 0.01g/cm2の密度で挟み積層
し、積層体には 0.2kg/cm2の面圧をかけ、10-1Torr の
真空中で、1050℃で6時間均熱する焼鈍を行った。な
お、昇温速度は1℃/minであった。実施例5と同様な方
法で<100>軸密度、炭素およびMnの含有量を分析し
た。その結果を表7に示す。
【0100】
【表7】
【0101】表7から明らかなように、TiO2粉末の使用
によっても脱Mnが促進され、{100}面集合組織も強
く発達することがわかる。
【0102】〔実施例7〕表7にNo.3で示す焼鈍後の試
料について、集合組織と板面内での磁気異方性を調べ
た。
【0103】図8は、強い{100}<052>集合組
織の形成を示す{110}極点図であり、表7にNo.3で
示す焼鈍後の試料の集合組織をCo−Kα線によるα−Fe
の 110反射を用いて測定したものである。<110>軸
密度は板面垂直方向から45°傾斜した8方向で非常に大
きく、この材料は強い{100}集合組織をもっている
こと、さらに{100}集合組織は{100}<052
>型の面内異方性を持っていることがわかる。
【0104】図9は、材料の圧延方向と磁束密度および
鉄損値との関係を示す図である。
【0105】表7に3で示す焼鈍後の材料から幅3cm、
長さ10cmの短冊状試料を、長手方向が種々の圧延方向と
なるように切り出した。その試料について1000A/mの磁
化力における磁束密度(B10)と鉄損値(W15/50 )を
単板磁化測定装置により測定した。図9から{100}
<052>型の集合組織面内異方性を反映し、圧延方向
から45°傾いた方向の磁束密度が最も大きく、同じ方向
で鉄損値も小さいことがわかる。しかし、この面内磁気
異方性の絶対値は市販の無方向性珪素鋼板とほぼ同程度
のものであり、電動機等の鉄心材料に好適なものであ
る。一回冷間圧延法ではこの型({100}<052>
型)の面内異方性が発生しやすく、中間焼鈍を挟んだ二
回もしくは複数回の冷延後焼鈍すると{100}<00
1>型の面内異方性が発現しやすい。
【0106】〔実施例8〕表5の鋼種Nで示す組成の真
空溶製インゴットを熱間鍛造により30mm厚さの板とし、
各板を3mm厚まで熱間圧延した後に、窒素ガス中で 900
℃において3分間焼鈍した後、 0.5mmの板厚まで冷間圧
延した。タイトコイル焼鈍をシュミレートするために、
冷間圧延板から 400mm角の試板を切り出し、焼鈍分離材
として20重量%Al2O3 −80重量%SiO2系の繊維状の脱炭
促進材を 0.005g/cm2 の密度で充填し、さらに5μmか
ら 100μmの直径のSiO2と同TiO2粉末をそれぞれ3mg/c
m2の密度で試板の間に挟み積層し、積層体には 0.2kg/c
m2の面圧をかけた。
【0107】焼鈍は10-2Torr の真空中で、1000℃にお
いて10時間均熱し、昇温速度は1℃/minとした。焼鈍を
終えた各試板の表面から板厚の 2/5の位置においてX線
積分強度測定を行い、{200}面積分強度を配向性の
ない試料に対する倍数で求め、<100>軸密度を判定
した。また、焼鈍後の各試板中の炭素およびMnの含有量
を分析するとともに、各試板から内径33mm、外径45mmの
リング状試験片を10枚打ち抜き、窒素ガス中の 800℃で
30分間保持し、打ち抜き歪みを除去した。
【0108】10枚のリング状試験片を積層し、これに一
次コイル、二次コイルを 100ターンづつ巻き、1000A/m
および5000A/mの外部磁界を印加したときの磁束密度
(B10およびB50) と、50Hz の交番磁界中で1T(テ
スラ)および1.5 Tの磁束密度まで磁化した場合の鉄損
(W10/50 およびW15/50 )とを測定した。試料の磁化
曲線を比較材(市販無方向性電磁鋼板S-9)のそれととも
に図10に、他の磁気特性と前述の諸分析の結果を表8に
示す。
【0109】
【表8】
【0110】本発明の方法によって、優れた磁気特性が
得られることがわかる。
【0111】
【発明の効果】本発明の方法によれば、一回のタイトコ
イル焼鈍または積層焼鈍により、磁気特性の優れた{1
00}面集積度の高い珪素鋼板を効率的に製造すること
ができる。焼鈍を焼鈍分離材を用いるタイトコイル焼鈍
または積層焼鈍で施すので、鋼板の座屈もなくなり、長
尺材の製造も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法による鋼板の焼鈍後の炭素および
Mnの含有量に及ぼす焼鈍時間の影響を示す図である。
【図2】方向性および無方向性珪素鋼板の結晶方位の差
を模式的に示す図である。
【図3】脱炭促進材、脱Mn促進材を挟みタイト焼鈍を再
現した積層体を示す図である。
【図4】脱炭促進材、脱Mn促進材を使用して焼鈍した場
合の{100}集合組織の生成を説明する図である。
【図5】焼鈍によるCとMnの拡散状態を示す図である。
【図6】焼鈍中の結晶粒の成長を比較して示す図であ
る。
【図7】焼鈍中の結晶粒の成長を比較して示す図であ
る。
【図8】先鋭な{100}<052>集合組織の形成を
示す{100}極点図である。
【図9】磁束密度と鉄損の面内異方性を示す図である。
【図10】磁化力と磁束密度との関係を示す図である。
【符号の説明】
1.積層体 2.試板(珪素鋼板)
3.脱Mn促進材 4.脱炭促進材

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:1%以下、Si: 0.2〜6.5
    %、Mn:0.05〜5.0 %を含む冷間圧延珪素鋼板に、焼鈍
    分離材として脱炭を促進する物質を用いて、タイトコイ
    ル焼鈍または積層焼鈍を施すことを特徴とする磁気特性
    の優れた珪素鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%で、C:1%以下、Si: 0.2〜6.5
    %、Mn:0.05〜5.0 %を含む冷間圧延珪素鋼板に、焼鈍
    分離材として脱炭を促進する物質と脱マンガンを促進す
    る物質とを用いて、タイトコイル焼鈍または積層焼鈍を
    施すことを特徴とする磁気特性の優れた珪素鋼板の製造
    方法。
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