JPH075970B2 - 高炭素薄鋼板の製造方法 - Google Patents

高炭素薄鋼板の製造方法

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JPH075970B2
JPH075970B2 JP1328699A JP32869989A JPH075970B2 JP H075970 B2 JPH075970 B2 JP H075970B2 JP 1328699 A JP1328699 A JP 1328699A JP 32869989 A JP32869989 A JP 32869989A JP H075970 B2 JPH075970 B2 JP H075970B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、高炭素薄鋼板の製造方法、特に熱処理後の旧
オーステナイト組織が非常に微細化され、耐衝撃性、耐
摩耗性、さらには使用中の水素侵入による割れの発生抑
制効果が優れ、しかも製造性や加工性が良好であって、
チェーン部品、ギヤ部品、クラッチ部品、ホースクリッ
プ、シートベルトバックル、座金用として好適な高靱性
高炭素薄鋼板の製造方法に関するものである。
(従来の技術) 一般に、チェーン部品、ギヤ部品、ホースクリップ、ク
ラッチ部品、シートベルトバックル、座金部品等は、JI
S G 3311に規定されているS30CM、S70CM或いはSK7M、SK
4Mの高炭素鋼板や、SCM435或いはSCM445等の低合金高炭
素鋼を熱間圧延した後酸洗により脱スケールして得た鋼
板や、板厚寸法精度の向上や、客先での打ち抜き、曲
げ、プレス成形等の成形加工性向上を目的として前述の
鋼板に対しさらに適当な圧下率の冷間圧延とAc1温度に
近い温度で長時間加熱する球状化焼鈍を適用して得た鋼
板を一般に素材としている。そしてかかる鋼板を成形加
工した後、焼入れ・焼戻しあるいはオーステンパ等の熱
処理により硬化することで前述の各種耐摩耗、耐衝撃性
製品が製造されるのが普通である。
したがって、これらの鋼板には成形加工後に施される熱
処理によって初めて所望の強度が得られ、かつ製品とし
て使用時に十分な耐衝撃性と耐摩耗性を発揮することが
要求されることから、その材質も前述の如き炭素含有量
の高いものが選ばれる。この場合、製品の耐衝撃性およ
び耐摩耗性は、特に焼戻しの温度が影響することから、
使用の形態や状況によって焼入れ・焼戻し材では「焼入
れまま」ないしは「650℃まで」(通常180〜450℃)の
各焼戻し処理温度が、またオーステンパでも「500℃ま
で」(通常200〜450℃)の温度条件が注意深く選択され
る。
しかし、JISに規定されている前記高炭素薄鋼板、特に
炭素量の高い薄鋼板では、熱処理後には鋼中の歪が高い
ことや炭化物が大量に析出するため、注意深い熱処理条
件の選択にもかかわらず耐衝撃性や耐水素割れ性が不十
分である。
例えば自動車エンジンの燃料管あるいはガス管等の接続
部を固定するホースクリップには高いバネ性が要求され
るためTS:180K以上の高強度鋼が使用されており、この
強度を確保するため従来C含有量が0.70〜0.85%の高炭
素鋼(S70C、SK5M、SK7M等)をオーステンパ処理して用
いられてきた。
(発明が解決しようとする課題) しかし、このような鋼を適用した場合、使用中に応力集
中を受ける分より割れが発生する問題が生じており、こ
れらの割れの破面は粒界破壊の様相を呈していることか
ら使用中に破断部に侵入した水素が原因であることを本
発明者らは見い出した。
このような水素割れを防止するには、高いC量による歪
の増大を抑制するためC量を低減したCrMo系のSCM435、
SCM445等の低合金鋼を用い、またオーステナイト粒径が
微細化され、割れの伝播が抑制されるようAl、N等の化
学成分を適当に調整する必要がある。そのような手段の
うちオーステナイト粒径の微細化には、スラブ加熱ある
いは焼入れ、オーステンパ等の熱処理時の均熱工程にお
いて析出するAlN等の微細粒子を利用する方法が一般的
である。
しかし、さらに微細なオーステナイト結晶粒を得るため
には、AlN等の析出物以外に多くの析出物が必要とな
る。本発明者らは、さらに結晶粒を微細化するために
は、Ti、Nbを必要に応じて添加することによって得られ
るTiN、TiC、Ti(CN)、NbC、Nb(CN)あるいはTiNb(C
N)による効率的な細粒化が必要となるという認識に至
った。
また製造プロセスに関して、ユーザーからの要求傾向
は、焼入れ・焼戻し鋼よりもオーステンパ処理鋼によっ
て耐衝撃性、耐水素割れ性を向上させるという考えに変
わってきているのが現状である。さらに、近年の自動車
用部品の使用量の増大により焼入れ・焼戻し或いはオー
ステンパ処理時間の短縮への要求も高まっている。
しかし、前記のような低合金鋼ではオーステンパに際し
てオーステナイト化温度域での均熱時間が短縮された場
合には、前組織のフェライト−パーライト組織から均一
なオーステナイトへの変化が不十分となり、鋼中の炭素
濃度の不均一が生じてオーステンパ処理後にマルテンサ
イトとベイナイトの混合組織が形成される。これによっ
て耐衝撃性、耐水素割れ性ともに低いものとなっている
ことを本発明者らは見い出し、この混合組織の形成を防
止し、均一なベイナイト組織を形成させることが耐衝撃
性、耐水素割れ性向上に不可欠であるとの認識に至っ
た。
ここに、本発明の目的は、結晶粒が微細化され、耐衝撃
性、耐摩耗性に優れるとともに耐水素割れ性にも優れた
高炭素薄鋼板の製造方法を提供することである。
また、本発明の別の目的は、上述の高炭素薄鋼板の安価
なかつ実用的な製造方法を提供することである。
(課題を解決するための手段) そこで、本発明者らは、上述のような観点から、これら
高強度鋼板の素材として十分満足できる硬度、引張り強
度を備え、しかも加工性が良好で圧延過程や最終製品へ
の成形工程でも割れなど不都合を生じることのない薄鋼
板を提供すべく研究を行ったところ、次に示すような知
見を得た。
(a)従来、材料強度の高い鋼種において生じ易い水素
脆化や疲労脆化は完全に防止することはできないと考え
られているが、このような鋼種に対し、成分として厳密
に調整された特定量のNb(0.005〜0.100%)を添加する
と、オーステナイト粒が効果的に微細化されて水素脆性
による割れは著しく抑制されること。
(b)その場合、さらに0.005〜0.10%のTiを添加する
とスラブ加熱時あるいは焼入れにおける均熱時にTi(C
N)、TiNb(CN)が形成されオーステナイト粒成長を効
果的に抑制すること。
(c)また、鋼中のPを0.030%以下に低減すると、オ
ーステナイト粒界に偏析したP量が減って脆性破壊の要
因となる粒界脆化が抑えられ、材料の一層の靱性改善が
もたらされること。
(d)Pの粒界偏析については、適量のBを添加する
と、BがPに対し優先的に粒界へ偏析しPの粒界偏析を
抑制することが知られており、これまでにもかかるBの
特性を利用したPの粒界偏析防止法が提唱されている
が、このようなB添加は水素割れ防止のための粒界強化
にも効果を示すこと。
(e)Mn含有量の低減もSの0.020%以下への低減と相
まってMnS生成制御を通じて靱性改善に大きく寄与す
る。また高Mnの場合、Pとの相互作用によりPの粒界偏
析を促進する場合があるが、このMn低減によってPの粒
界偏析は抑制される。またMn低減により予想される焼入
れ性低下も製品が薄鋼板であるために高い焼入れ性は特
に必要とはせず、またCr、Moの添加効果で強度も十分に
保証できること。
(f)一般に、高炭素鋼板の高靱性化を図ると、焼入
れ、焼戻し前の成形性や打ち抜き性の低下が避けられな
かったが、鋼成分として特定量のMoを添加すると、上記
成形性や打ち抜き性の低下をともなうことなく焼入れ・
焼戻し後の靱性、特に「低温焼戻し靱性」と呼ばれる靱
性劣化が効果的に防止されるようになること。
(g)プロセスとしては仕上げ温度条件を800℃以上と
すると熱間圧延後のフェライト−パーライト組織の微細
化に効果があり、熱処理後の製品の組織均一化による耐
衝撃性、耐水素割れ性向上に効果があること。
(h)熱間圧延完了後の冷却速度を10〜40℃/secとする
と亜共析組成域における初析フェライトが効果的に微細
化されるため、その後焼入れ・焼戻しあるいはオーステ
ンパを行う場合、オーステナイト温度域での均熱時間短
縮に効果があること。
(i)または熱間圧延後、550〜650℃の温度範囲にて巻
取りを行うと上記初析フェライトの微細化が一層効果的
に行われる結果、その後焼入れ・焼戻しあるいはオース
テンパを行う場合、オーステナイト温度域での均熱時間
短縮に効果があること。
これら(a)〜(i)に示した知見事項により低温焼戻
し後の靱性、並びに耐水素脆性に優れた鋼種が製造可能
となった。
ここに、本発明者らは先きに特願昭63−311136号および
同63−301815号として、Nb、Cu、Ti、B添加鋼について
特許出願したが、この鋼種は靱性は優れているがCuの添
加が必須の場合コストアップが問題となっていた。また
Cuを添加しない場合に、板表面の耐水素脆性は低水準の
ものであった。
さらに上述の鋼種に類似するものが、特開昭58−61219
号(公告:平1−35066号)に開示されているが、この
発明においてはN含有量を0.0020%以下にするととも
に、P0.010%以下に制限することによって結晶粒界の清
浄化を図っており、この組成の場合、焼入れ・焼戻しあ
るいはオーステンパ処理後の粒径が粗大になるため、耐
衝撃性あるいは耐水素割れ性に問題がある。またこの発
明はあくまでも条鋼を対象としたものであり鋼板から打
ち抜いた板バネにおけるこのような熱処理上の問題を考
慮したものではない。
ここに、本発明者らは、Cu添加を不要とすることによ
り、製造コストの低減をはかり、さらに、N添加量を0.
0020%超〜0.015%以下の範囲に限定するとともに粒径
制御のためのTi、Al、Nb系の炭窒化物を十分に成形し得
る組成とし、一方熱間圧延条件についても微細なフェラ
イト−パーライト組織を形成すべく設定することにより
耐衝撃性あるいは耐水素割れ性がより優れたものとなる
ことを確認し、本発明を完成した。
よって、本発明の要旨とするところは、重量割合にて、 C :0.30〜0.70%、 Si:0.10〜0.70%、 Mn:0.05〜1.00%、 P :0.030%以下、 S :0.020%以下、 Cr:0.50〜2.00%、 Mo:0.10〜0.50%、 Ti:0.005〜0.10%、 Nb:0.005〜0.100%、B :0.0005〜0.0020%、 sol.Al:0.10%以下、 N :0.002%超〜0.015%以下で、 残部実質的にFe から成る組成を有する熱延板を800℃以上の温度にて圧
延を完了し、直ちに10〜40℃/secの速度で550〜650℃の
温度範囲まで冷却して該温度範囲で巻取りを行い、さら
に必要により、そのようにして得られた鋼板を、20〜80
%の圧下率での冷間圧延と、Ac1−50℃〜Ac1+30℃の範
囲にて1hr以上均熱する箱焼鈍とを1回もしくは1回以
上実施することを特徴とし、特にオーステンパ処理等の
熱処理によって短時間で均一なベイナイト組織を形成
し、高強度で優れた耐衝撃性、耐水素割れ性を備えた高
炭素薄鋼板の製造方法である。
(作用) ここで、本発明にかかる方法において処理の対象とする
薄鋼板の成分組成を上記のごとくに数値限定した理由を
説明する。
(a)C 鋼板に所望の硬度、強度、焼入れ性および耐摩耗性を得
るためには0.30%以上のCの添加が必要である。たまC
含有量が0.70%超の場合熱処理前の加工性が劣化するば
かりか、熱処理後の脆性も増大するためC添加量を0.30
〜0.70%と定めた。
(b)Si 積極的添加は特に必要ないが、0.70%を超えて含有させ
ると鋼板が硬質となって脆化する傾向を見せることか
ら、Si含有量は0.70%以下と定めた。また焼入れ性を確
保するために0.10%以上の添加は必要である。
(c)Mn Cr、Moを添加した本発明が対象としている高炭素鋼板の
用途はギヤ、チェーン等であり、一般の耐摩耗鋼板と異
なり靱性向上のためMnを低減する必要がある。特に本発
明の場合、1.0%を超えて含有されると熱処理の硬度が
大きくなり過ぎて靱性低下を招く。一方、Mn含有量が0.
05%未満であると、固溶Sが多くなって熱間加工時の脆
化が生じ鋼板の製造性を害するようになることから、Mn
含有量は0.05〜1.00%と定め、望ましくは0.80%以下の
添加に制限するのがよい。
(d)P Pは旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界破壊等の脆性
の増大に対し大きな影響を持つものである。このためP
含有量は低いほど靱性上好ましいことは言うまでもな
い。そこでP含有量は0.030%以下と定めたが、本発明
の鋼板のようにSi、Mnを一定量含有する場合さらに添加
量を低減するのが望ましい。このためには、0.015%以
下に制限した場合に効果が増大する。しかし製鋼上のコ
ストアップが問題となるため添加量の下限は0.010%ま
でとするのが望ましい。
また、これらPの添加による粒界へのP偏析は、Bの添
加により緩和される。これはBがPよりも先にオーステ
ナイト粒界に偏析するためで、これによりオーステナイ
トの粒界は、Pを低減した場合と同様に強化される。
(e)S S含有量は低いほどMnSの析出を抑制し、靱性上好まし
いことは言うまでもない。このためS含有量は0.020%
以下と定めたが望ましくは0.010%以下に制限するのが
よい。
(f)Nb Nbは、オーステナイト粒を微細化して鋼の靱性を向上さ
せる作用を有しており、この作用は水素脆化による破壊
の防止にも非常に有効である。したがって、これらの割
れ発生防止を目的としてNbの添加がなされるが、その含
有量が0.005%未満では前記作用による所望の効果が確
保できず、一方、0.100%を超えて含有させてもこれら
の効果は飽和状態に達することから、Nb含有量は0.005
〜0.100%と定めた。また望ましくはTiNb系複合析出物
を形成するために、Ti/Nbの範囲は0.3〜0.7程度がよ
い。
(g)Cr Crは、主として焼入れ性向上を目的として添加される成
分であるが、その含有量が2.0%を超えて含有されると
鋼の硬質化を招いて脆化することから、Cr含有量は0.50
〜2.00%と定めた。
(h)Mo Moは重要な成分であり、Moの添加によって、鋼板の熱処
理前(焼入れ・焼戻し前)の加工性を劣化させることな
く熱処理後の高靱性を維持する効果がある。一般に、鋼
は焼入れ後300℃前後の温度で焼き戻しをするといわゆ
る「低温焼き戻し脆化」を生じて著しく脆くなる。とこ
ろが所望の硬度を得たいときなどどうしても上記温度で
の焼き戻しが必要な場合がある。実際、前記「低温焼き
戻し脆化」は特に厚い試料の場合に顕著であって薄板で
は軽減される傾向があるため、時にこの温度での焼き戻
しが採用されることがある。しかし、その場合、使用状
況によりやはり靱性の低下が問題となる。このような脆
化に対しても、0.10%以上のMoの添加は非常に有効であ
る。しかし、0.50%超のMoの添加はコスト上昇を招くこ
とから上限を0.50%と定めた。
(i)Ti Tiは、鋼の焼入れ性を向上させるとともに、TiNあるい
はTiCを形成して微細分散させることにより鋼の硬度お
よび引張強度を増大させる作用を有している。その上、
Nbとの複合析出物としてTiNb(CN)を形成し、オーステ
ナイト結晶粒の微細化を促進する作用をも発揮する。ま
た、Bの添加に際してはBNの析出を抑制しBの粒界への
偏析を促進することでPの粒界偏析による耐衝撃性、耐
水素割れ性の低下を抑制するものである。しかし、Ti含
有量が0.005%未満では前記作用による所望の効果が得
られず、一方、0.10%を超えて過剰に含有されるとコス
トアップになるだけでなく、鋼の硬化につながって利点
がなくなることから、Ti含有量は0.005〜0.10%と定め
た。またTiNb系の複合析出物を形成するにはNb添加量を
超えないようにすることが望ましい。
(j)sol.Al Alは鋼の脱酸材として必要に応じて添加される成分であ
るが、sol.Alの含有量が0.10%を超えるとコストアップ
になるばかりか、鋼板の硬化をもたらすのでなんら利点
はない。またAlNによるオーステナイト粒径制御につい
ても過剰のAlNの形成は不要である。このように、sol.A
lの0.10%以下の含有は許容されるとの理由から、その
含有量を0.10%以下と定めた。
(k)B Bは極めて重要な元素であり、鋼の焼き入れ性を向上さ
せるとともに、粒界に固溶Bとして析出させることによ
り粒界を強化する作用を発揮し、これは0.0005%以上の
添加で脆性破壊の発生を著しく抑制する効果が確保され
る。しかし、余り多量に添加しても上述の効果は飽和し
てしまい、むしろコストアップを招くことから0.0020%
以下に制限する。
(l)N Nの含有は鋼の硬度や引張強度の向上に効果ある他、Al
N、TiN等を形成してオーステナイトの粗粒化を防止し、
靱性向上に役立つ。この効果を確保するためN添加量は
0.0020%を超えるものと定めた。また、その含有量が0.
015%超の場合には硬度上昇により焼入れ前の加工性を
阻害することから、その含有量を0.015%以下に制限し
た。
(l)仕上げ温度条件 仕上げ温度については、仕上げ前に初析フェライトの析
出を防止する必要があることから、800℃以上と限定す
る。また、熱延板での硬度増大による酸洗、冷延工程で
の割れ防止のため望ましくは仕上げ温度の上限を880℃
とするのがよい。
(m)熱延板の冷却速度条件 上記のようなフェライト−パーライト組織の微細化につ
いては、仕上げ温度の他に冷却速度の範囲を限定する必
要がある。
一般に初析フェライトは冷却速度が小さい場合は、析出
粒数が減少し粗大化する。このフェライトの粗大化は、
前述のごときオーステナイトの微細化に悪影響を及ぼす
ほか、オーステナイト温度域での炭素およびMn、Cr、Mo
等の合金元素の拡散に時間を要するため熱処理時間が増
大するといった弊害が生じる。この防止対策として冷却
速度を増大する必要があるが、仕上げ完了後の冷却速度
が10℃/sec未満ではこの微細化効果はほとんど見られ
ず、また40℃/sec超では熱延板の硬度が増大し、酸洗、
冷延工程での割れが生じやすくなることから条件として
は不適切である。
以上の結果から、仕上げ圧延後の熱延板の冷却条件を10
〜40℃/secとした。しかし、この冷却温度範囲の中で
も、冷却速度が25℃/sec以上となれば熱延板での脆性が
生じるため酸洗工程等における割れの発生が危惧される
ことから、望ましくは10〜20℃/secの範囲にて適用する
ものとする。
(n)巻取り温度条件 上記の熱延板は550〜650℃の範囲で巻き取るものとし
た。これは、巻取り温度が650℃超の場合、前項の
(m)で記載した冷却条件で冷却しても初析フェライト
が粗大化し客先での熱処理に時間を要するためである。
また、550℃未満で巻き取る場合には熱延板の硬度が増
大し酸洗、冷延工程での割れが生じやすくなることから
条件としては不適切である。このことから、巻取り温度
条件としては550〜650℃の範囲で巻き取ることとした。
(o)冷間圧延条件 本発明の好適態様によれば、上述のようにして得られた
熱延鋼板は、さらに必要により冷間圧延およびそれに続
く箱焼鈍処理を受ける。その場合の冷間圧延における圧
下率は、要求される板厚精度を確保するために20%以上
の圧下率で冷間圧延を行うものとする。また冷間圧延率
の上限として80%を設定したがこれ以上の圧下率での冷
延は、鋼板に割れを生じるために適当ではない。以上の
理由により冷間圧延における圧下率の範囲を20〜80%と
限定した。
(p)焼鈍条件 冷間圧延した鋼板を軟質化するため本発明では冷延後に
球状化焼鈍を実施するものとする。この時の温度条件と
しては、添加元素によりは異なるが、Ac1−50℃〜Ac1+
30℃と設定した。この時Ac1−50℃未満ではセメンタイ
トの球状化に非常に長い時間を要し、プロセスとしては
非効率的である。またAc1+30℃超の温度域ではフェラ
イト−パーライト組織が再度粗大化し本発明の特色であ
る熱処理時間の短縮に悪影響を与えるほか、材料強度も
増大し客先での加工性を劣化させるものである。また焼
鈍時間としては、球状化のための時間条件としては1時
間以上の均熱が必要で、この条件を満足させるため箱焼
鈍を用いるものとする。
以上の理由により、冷間圧延後の焼鈍としては箱焼鈍を
用い、Ac1−50℃〜Ac1+30℃の温度域で1hr以上均熱す
るものとする。またこのとき、プロセスの合理化より均
熱時間は24hr以内とするのが望ましい。
以上のごとくに製造された薄鋼板は、通常、ユーザーに
て加工され、次いで熱処理されて所望の硬さ・性能とさ
れる。
次に、本発明の効果を実施例により比較例と対比しなが
ら具体的に説明する。
実施例1 第1表に示した鋼A〜Hに対して、第2表の熱間圧延条
件プロセスの内No.1のプロセス条件を用いて熱間圧延を
行った。得られた鋼板から板厚1mm、中心にV形ノッチ
を設けた耐水素割れ性の試験片を作成した。
この試験片には予め第3表に記載したオーステンパ処理
を施し、TS:120kgf/mm2以上の強度をそれぞれ付与し
た。次いで、この試験片に対して50℃の温水中にて60kg
f/mm2の定荷重を付加し、破断まの耐久時間を比較し
た。
結果を第1図にグラフにまとめて示す。
これからも分かるように、150k以上の強度における割れ
耐久性は鋼A〜Eでは概ね鋼F〜Hよりも優れたものと
なっている。ここで、TS>155kgf/mm2、耐久時間>55h
の条件を設定すると、この条件を満足するものは本発明
例の鋼A〜Eであり比較例の鋼F〜Hはこれら条件を満
足することはできない。
実施例2 実施例1においてTS>155kgf/mm2、耐久時間>55hを満
足する本発明例の鋼A〜Eの内、Mn、Cr量が同水準で炭
素量の異なる鋼A、B、Eに対して、第2表の本発明の
範囲の熱間圧延条件No.1〜4とその範囲外である熱間圧
延条件No.5〜8を適用して、熱間圧延を行った。
実施例1と同様にして水素割れ試験を行い、その結果を
第2図〜第4図にグラフにまとめて示す。各グラフ内の
数字はそれぞれ熱間圧延条件No.を示す。
本発明の熱延条件の水素割れ耐久性に関する優位性を第
2図〜第4図にグラフで示した。
第2図には、鋼A(0.35wt%C)を熱間圧延条件No.1〜
8でそれぞれ圧延した場合のTS、耐久時間特性を示し
た。このらの結果、TS>155kgf/mm2、耐久時間>55hを
満足するオーステンパ条件は、No.1〜4の各熱間圧延条
件において1条件存在するのに対し、No.5〜8の熱間圧
延条件ではいずれのオーステンパ条件においてもTS、耐
久時間特性を満足することはできなかった。
第3図には、鋼B(0.51wt%C)を熱間圧延条件No.1〜
7のTS、耐久時間特性を示した。その結果、TS>155kgf
/mm2、耐久時間>55hを満足するオーステンパ条件は、N
o.1〜4の各熱間圧延条件において2〜3条件存在する
のに対し、No.5〜8の熱間圧延条件ではいずれのオース
テンパ条件においてもTS、耐久時間特性を満足すること
はできなかった。
さらに第4図には鋼E(0.68wt%C)を熱間圧延条件N
o.1〜8のTS、耐久時間特性を示した。その結果、TS>1
55kgf/mm2、耐久時間>55hを満足するオーステンパ条件
は、No.1〜4の各熱間圧延条件において3条件存在する
のに対し、No.5〜8の熱間圧延条件ではいずれのオース
テンパ条件においてもTS、耐久時間特性を満足すること
はできなかった。
以上の結果より、本発明にかかる熱間圧延条件によれ
ば、オーステンパ後、TS、水素割れ耐久時間特性につい
て非常に優れた結果が得られることが分かる。
実施例3 次に、第1表の鋼A〜Hを実施例2において優れた耐水
素割れ性が認められた第2表のNo.1〜4の熱間圧延条件
で熱間圧延した後、第4表の冷間圧延・焼鈍条件での冷
間圧延および箱焼鈍を実施し、そのときの冷間圧延時の
エッジ部の割れ発生の有無、焼鈍後の硬度について評価
を行った。それらの結果を第5表〜第8表にまとめて示
す。
この結果、第4表に示す冷延・焼鈍条件の内本発明の範
囲にあるa〜dの焼鈍条件では冷間圧延時のエッジ部の
割れはほとんど発生せず、また焼鈍完了後の硬度レベル
もすべてHRB<85を満足した。
これに対して、本発明の範囲外の焼鈍条件e、fでは焼
鈍温度が低いか、あるいは焼鈍時間が短いために硬度が
HRB>85となり、また焼鈍条件gでは冷間圧延時の圧下
率が高すぎるためにいずれの鋼種、熱間圧延条件におい
てもエッジ部に割れが発生する。また焼鈍条件hでは冷
間圧延時の圧下率が低すぎるため、焼鈍後もセメンタイ
ト組織が十分球状化せず、硬度がHRB<85を満足できな
い。
以上の結果、本発明の好適態様における冷間圧延、焼鈍
条件は、本発明の範囲内の鋼を所定の熱間圧延条件で圧
延してから冷間圧延を行えば、エッジ部の割れを生じる
ことなく効果的に軟質化し得る方法であることが立証さ
れた。
実施例4 本例は実施例3と同様に本発明の好適態様例を示すもの
である。
第9表に示すそれぞれの鋼種について実施例3における
と同様にして熱間圧延および冷間圧延さらに箱焼鈍を行
い、得られた各薄鋼板にオーステンパ処理を施してか
ら、実施例1におけると同様にしてTSおよび水素割れ耐
久時間を決定した。
結果は、同じく第9表にまとめて示す。表中「*」は本
発明の範囲外であることを、「**」は上述の好適態様
の範囲外であるとを示す。
(発明の効果) 本発明によれば、Nを積極的に添加するとともに、Ti、
Nbなどの炭窒化物形成元素を適量配合し、さらにPとB
との相互作用を積極的に利用することにより、ならびに
これらと後続の熱間圧延条件を特定することにより、十
分な結晶粒強化および微細化が実現され、Cu添加を必要
とせずに耐水素割れ性を改善することができるのであっ
て、その実用上の利益および意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第4図は、実施例の結果をまとめて示すグ
ラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量割合にて C :0.30〜0.70%、 Si:0.10〜0.70%、 Mn:0.05〜1.00%、 P :0.030%以下、 S :0.020%以下、 Cr:0.50〜2.00%、 Mo:0.10〜0.50%、 Ti:0.005〜0.10%、 Nb:0.005〜0.100%、B :0.0005〜0.0020%、 sol.Al:0.10%以下、 N :0.002%超〜0.015%以下、 残部実質的にFe から成る組成を有する熱延板を800℃以上の温度にて圧
    延を完了し、直ちに10〜40℃/secの速度で550〜650℃の
    温度範囲まで冷却して該温度範囲で巻取りを行うことを
    特徴とする、熱処理後に高強度が得られ耐水素割れ性に
    も優れた高炭素薄鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】重量割合にて C :0.30〜0.70%、 Si:0.10〜0.70%、 Mn:0.05〜1.00%、 P :0.030%以下、 S :0.020%以下、 Cr:0.50〜2.00%、 Mo:0.10〜0.50%、 Ti:0.005〜0.10%、 Nb:0.005〜0.100%、B :0.0005〜0.0020%、 sol.Al:0.10%以下、 N :0.002%超〜0.015%以下、 残部実質的にFe から成る組成を有する熱延板を800℃以上の温度にて圧
    延を完了し、直ちに10〜40℃/secの速度で550〜650℃の
    温度範囲まで冷却して該温度範囲で巻取りを行い、さら
    に続いて20〜80%の圧下率での冷間圧延とAc1−50℃〜A
    c1+30℃の範囲にて1hr以上均熱する箱焼鈍とを1回も
    しくは1回以上実施することを特徴とする、熱処理後に
    高強度が得られ耐水素割れ性にも優れた高炭素薄鋼板の
    製造方法。
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