JPH0761263B2 - 新規なエステラ−ゼ及びその製造法 - Google Patents

新規なエステラ−ゼ及びその製造法

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JPH0761263B2
JPH0761263B2 JP14745286A JP14745286A JPH0761263B2 JP H0761263 B2 JPH0761263 B2 JP H0761263B2 JP 14745286 A JP14745286 A JP 14745286A JP 14745286 A JP14745286 A JP 14745286A JP H0761263 B2 JPH0761263 B2 JP H0761263B2
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千晶 杉木
完治 西沢
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、微生物由来の新規なエステラーゼ及びその製
造法に関する。更に詳しくは、本発明はバシラス(Baci
llus)属に属する微生物を培養して得られる新規なエス
テラーゼ及びその製法に関する。
一般にエステラーゼとは、エステル結合を有する基質を
加水分解する酵素の総称であり、その基質特異性により
カルボン酸エステルに作用するもの、チオールエステル
に作用するもの、リン酸エステルに作用するもの、硫酸
エステルに作用するものに分類される。狭義にはカルボ
ン酸エステルに作用するもののうち、低級脂肪酸のエス
テルを加水分解するものをエステラーゼと呼びグリセロ
ールエステルを加水分解するものをリパーゼと呼んでい
る。リパーゼの粗標品には、リパーゼ作用の他にエステ
ラーゼ作用があり、両作用は実用上、耐熱性、トリプシ
ン及びアルカリ感受性や、基質であるエステルの脂肪酸
の鎖長の差などで区別されている。
しかし両作用の相違はむしろ基質の物理的存在状態の相
違に起因するといわれている。即ちエステラーゼ反応
は、水溶液中の基質に対して酵素が作用するとされてい
るが、リパーゼ反応は水に不溶性の基質と水との界面で
進行すると言われている。(例えばSardaら,Biochem.Bi
ophys.Acta.30 513(1958)参照)。本発明にいうエス
テラーゼは上記の狭義のエステラーゼを意味する。
近年、酵素を有機合成に応用する試みがさかんに行われ
ており、各種のエステル化合物を酵素エステラーゼを用
いて加水分解し、光学活性化合物を取得する事、或いは
プロキラルな化合物からキラルな化合物を創製する事等
の試みが数多く報告されている。それらの報告の多くの
ものは豚肝エステラーゼ(Pig liver esterase又はPorc
ine liver esterase)を用いたものであるが(例えばLa
umenらTetrahedron Lett.26 407〜410(1985)及びWang
らJ.Am.Chem.Soc.106 3695(1984)参照)豚肝エステラ
ーゼは高価であるうえに量的な供給に制限があり工業的
使用には不利であるため、豚肝エステラーゼの代わり
に、微生物起源のエステラーゼを用いる方法も試みられ
ている。その際エステラーゼ産生微生物菌体を用いてい
るのが一般的であり、酵素エステラーゼを精製しその性
質を明らかにしている例はほとんどない。(例えばKota
niら,Agric.Biol.Chem.47 1363〜1365(1983);Fujimot
oら,J.Chem.Soc.Chem.Commun.1333〜1334(1985);及
びBrannonら,J.Antibiot29 121〜124(1976)参照)。
一方、微生物起源のエステラーゼとしては Bacillus subtilis ATCC 6633(Biochem.Biophys.Act
a.485367−378(1977))、Bacillussubtilis SR22
(Biochem.Biophys.Acta.429 191−197(1976))、B
acillus subtilis NRRL−B−558(Appl.Microbiol.30
413−419(1975))、Bacillus stearothemophilus
(Archiv.Biochem.Biophys.160 504−513(1974))、
Pseudomonas aeruginosa(J.Biochem.86 643−656(1
979)、Pseudomonas cepacia(J.Bacteriol.118 880
−889(1974))、Pseudomonas fluorescens(J.Bioc
hem.95 1047−1054(1984)及び特開昭60−30681)、
Escherichia coli K−12(J.Bacteriol.149 6−14(198
2))、Aspergillus niger NRRL337(Agric.Biol.Che
m.47 1865−1868(1983)及びMycobacterium smegmat
is ATCC14468(J.Bacteriol.155 1249−1259(1983))
起源のエステラーゼ等が報告されているが、B.subtilis
NRRL−B−558起源のエステラーゼをセファロスポリン
誘導体の合成に応用した例を除いて、いずれの場合にも
有機合成反応への応用については全く触れられていな
い。
本発明者らは、この様な状況のもとで豚肝エステラーゼ
と同様に有機合成反応への応用範囲の広い、微生物起源
のエステラーゼを取得すべく研究を重ねた結果、本発明
者らによって土壌より新たに分離されたバシラス(Baci
llus)属に属する新規微生物バシラスエスピーDC−1
(Bacillus sp.DC−1)(微工研菌寄第8719号;特願昭
61−92595)の産生する新規なエステラーゼがかかる優
れた性質を有する事を見出し本発明を完成するに至っ
た。
即ち、本発明は、かかる優れた性質を有する微生物由来
の新規エステラーゼを供給する事によって有機合成化学
の分野で該エステラーゼを用い、光学活性化合物の製造
及びプロキラルな化合物からキラル化合物の創製等を工
業的に実施する事を可能にするものである。
本発明は第1に以下に示す理化学的性質を有する新規な
エステラーゼに関する。
1)作用: 有機カルボン酸エステルのエステル結合を加水分解す
る。
2)基質特異性: 主として有機カルボン酸のアルコールエステルに作用
し、水溶性の短鎖脂肪酸エステルに高い活性を有する。
短鎖のモノ及びトリアシルグリセライドには作用する
が、長鎖のモノ、ジ、及びトリアシルグリセライドには
作用しない。パルミトイルCoAには作用するが、アセチ
ルCoA,コリンエステル,及びコレステロールエステルに
は作用しない。
3)至適pH及びpH安定性: ジクロロビニル菊酸(以下、DCP−Iと記す。)のP−
ニトロフェニルエステルを基質とした時の加水分解の至
適pHは、8.5〜9.0である。10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.
0〜9.0)及び10mMリン酸緩衝液(pH5.0〜7.0)を用いた
場合、4℃、48時間後の残存活性はpH7.0〜9.0では約10
0%、pH6.0では約45%、pH5.0では約20%である。
4)至適温度及び熱安定性: DCPIのP−ニトロフェニルエステルを基質とした時の加
水分解の至適温度は100mMトリス塩酸緩衝液pH9.0中で50
〜55℃である。
同緩衝液中、各温度で10分間処理後の残存活性は、35℃
100%、40℃で約80%、50℃で約15%である。
5)分子量: 54,000±2,000(ゲル濾過及びSDS−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動法による) 6)等電点: 4.8±0.1 7)失活条件: a)100μMフェニルメチルスルフォニルフルオライド
(PMSF)又は80μMジイソプロピルフルオロリン酸(DI
FP)存在下に37℃10分間処理すると完全に失活する。
b)1mMデオキシコール酸ナトリウム及び5mMラウリル硫
酸ナトリウムを含む100mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で
37℃10分間処理すると各々約25%及び約70%活性が低下
する。
本発明のエステラーゼはサブユニット構造を持たない1
本鎖ペプチドでその分子量が54,000±2,000である点
で、Bacillus subtilis ATCC6633(150,000),Bacillus
subtilis NRRL−B−558(190,000),Bacillus subtil
is SR−22(160,000),Bacillus stearothemophilus(4
2,000〜47,000),Pseudomonas cepacia(34,500),Pseu
dmonas fluorescens(48,000),Aspergillus niger NRR
L337(23,000、27,800、29,500、127,000)及びMycobac
terium smegmatis ATCC 14468(36,000〜41,000)由来
のエステラーゼとは明らかに異なっている。又Pseudomo
nas aeruginosa起源のエステラーゼはジイソプロピルフ
ルオロリン酸及びラウリル硫酸ナトリウムにより失活し
ないのに対して、本発明のエステラーゼは、5mMラウリ
ル硫酸ナトリウムで約70%,80μMジイソプロピルフル
オロリン酸で完全に失活する点で異なる。更にEscheric
hia coli K−12起源のエステラーゼは膜に存在するカル
ボキシルペプチダーゼと言うべきもので、これも本発明
のエステラーゼとは細胞内局在性の点で相違は明らかで
ある。よって本発明のエステラーゼは従来知られていな
い新規なエステラーゼである。
第2に本発明は、バシラス(Bacills)属に属し、上記
の性質を有する新規なエステラーゼの産生能を有する微
生物を培養し、培養菌体中に該酵素を蓄積せしめ、これ
を分離、採取する事を特徴とするエステラーゼの製造法
に関する。
本発明の新規なエステラーゼは微生物を用いて生産さ
れ、その産生菌としてはバシラス(Bacillus)属に属
し、上記性質を有する酵素を産生する能力を有する株で
あればよく例えばバシラス エスピーDC−1(Bacillus
sp.DC−1)が挙げられる。本菌株は微工研菌寄第8719
号として寄託されており、その菌学的性質は以下のとお
りである。
(a)形態 1)細胞の形態および大きさ: 桿状で(0.5〜0.6)μm×(1.2〜1.7)μm。単独また
は2〜3個の連鎖をなす。
2)多形性:なし 3)運動性:あり 周鞭毛を有する。
4)胞子の形成:あり 球状あるいはやや卵形で、直径0.4〜0.6μm。栄養細胞
の末端に形成されふくらみを有する。
5)グラム染色:陰性 6)抗酸性:なし (b)各種培地における生育状態 1)肉汁寒天平板培地(35℃、24時間) 形状:円形 周縁:なし 隆起:凸状 光沢:あり 表面:平滑 色調:半透明で黄白色 2)肉汁寒天斜面培養(35℃、24時間) 生育度:普通 拡布状またはじゅず状に生育 表面:平滑 色調:半透明で黄白色 光沢:あり 3)肉汁液体培養(35℃、24時間) 生育度:普通 着色・脱色:なし 表面生育:菌環は形成しない 沈渣:生じる 4)肉汁ゼラチン穿刺培養(35℃、14日間) ゼラチンを液化しない。
5)リトマスミルク培地(35℃、14日間) わずかにアルカリ化し、凝固およびペプトン化しない。
(c)生理学的性質 35℃、1〜5日間培養。陰性のものは14日間まで観察。
1)硝酸塩の還元:陽性 硝酸を還元し、亜硝酸を生成する。
2)脱窒反応:陰性 3)MRテスト:陰性 4)VPテスト:陰性 5)インドールの生成:陰性 6)硫化水素の生成:陰性 7)デンプンの加水分解:陰性 8)クエン酸の利用 Koserの培地:陰性 Christensenの培地:陽性 9)無機・窒素源の利用 山里らによるStanierらの培地の変法: (Yamazato et al.J.Gen.Appl.Microbiol.(1982)28:1
95−213)を用い、コハク酸ナトリウムを炭素源として
使用した。
硝酸塩:利用しない アンモニウム塩:利用する。
10)色素の生成:生成しない 11)ウレアーゼ Christensenの尿素培地:陽性 12)オキシターゼ:陽性 13)カタラーゼ:陽性 14)生育の範囲 生育温度:10〜45℃(最適30〜35℃) 生育pH:6.0〜9.5(最適8.5〜9.0) 15)酸素に対する態度:好気的にのみ生育する 16)OFテスト:陰性 17)糖類からの酸・ガスの生成 酸 ガス L−アラビノース − − D−キシロース − − D−グルコース − − D−マンノース − − D−フラクトース − − D−ガラクトース − − 麦芽糖 − − ショ糖 − − 乳糖 − − トレハロース − − D−ソルビトール − − D−マンニット − − イノシット − − グリセリン − − デンプン − − 以上の菌学的性質を有する菌について、バージェイズ・
マニュアル・オブ・デターミィネィティブ・バクテリオ
ロジー(Bergey′s Manual of Determinative Bacterio
logy)第8版(1974年)に基づき検索した結果、好気的
条件下に生育する有胞子桿菌であることから、バシラス
(Bacillus)属に属する菌株と同定した。また、本菌株
を同属中の菌種と比較すると、バシラス・スファエリカ
ス(Bacillus sphaericus)およびバシラス・パステウ
リー(Bacillus pasteurii)に近似しているが、第1表
に示す点で、これらの菌種とは異なっている。
以上のことから、本菌株をバシラス(Bacillus)属に属
する新菌種と認め、バシラス エスピーDC−1(Bacill
us sp.DC−1)と命名した。
本発明に用いる微生物としては本菌株とその変種、変異
株に限定されるものではなく、上記性質の酵素を有する
ものであれば良い。
本発明の新規なエステラーゼの産生菌は醗酵学の分野で
公知の常法に従って培養する事ができる。使用する培地
としては炭素源、窒素源、無機物及びその他栄養素を適
当量含有する培地ならば合成培地又は天然培地のいずれ
も使用可能であり、液体培地又は固体培地を用いて培養
することができる。具体的には炭素源としては、グルコ
ース、フラクトース、マルトース、ガラクトース、リボ
ース、サッカロース、澱粉、澱粉加水分解物、糖蜜、廃
糖蜜などの糖類、麦、米などの天然炭水化物、グリセロ
ール、マンニトール、メタノール、エタノールなどのア
ルコール類、グルコン酸、ピルビン酸、酢酸、クエン酸
などの脂肪酸類、ノルマルパラフィン、ケロシンなどの
炭化水素類、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、ア
ラニン、アスパラギンなどのアミノ酸類など一般的な炭
素源より使用する微生物の資化性を考慮して、一種また
は二種以上適宜選択して使用すれば良い。窒素源として
は、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、大豆
加水分解物、大豆粉、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各
種アミノ酸、コーンスティープリカー、フィッシュミー
ルないし、その加水分解物、その他の動物、植物、微生
物の加水分解物などの有機窒素化合物、アンモニア、硝
酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウ
ム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどのアン
モニウム塩、硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、尿素など無
機窒素化合物より使用微生物の資化性を考慮し、一種ま
たは二種以上を適宜選択して使用する。
さらに、無機塩として微量のマグネシウム、マンガン、
鉄、亜鉛、銅、ナトリウム、カルシウム、カリウムなど
のリン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酢酸塩などの一
種または二種以上適宜添加し、必要に応じて植物油、界
面活性剤などの消泡剤を添加しても良い。
培養は、前記培地成分を含有する液体培地中で振盪培
養、通気攪拌培養、静置培養、連続培養などの通常の培
養法を用いて行うことができる。
培養条件は、培地の種類、培養法により適宜選択すれば
良く、本菌株が増殖し、エステラーゼを産生できる条件
であれば特に制限はない。通常は、培養開始のpHを8〜
9に調整し、30〜35℃の温度条件下で培養することが好
ましい。培養日数は通常1〜2日が適当である。
以上のようにして培養中に産生蓄積されたエステラーゼ
は次の様な方法で採取、分離する事ができる。
本エステラーゼは、菌体内に蓄積されるので、培養終了
後、菌体を濾過、遠心分離等の方法で集め、水又は緩衝
液で洗浄した後、例えば凍結融解処理、超音波処理、加
圧処理、浸透圧差処理、,磨砕処理及びアセトン風乾処
理等の物理的手段、もしくは例えばリゾチーム、セルラ
ーゼ等の細胞壁溶解酵素処理の様な生化学的処理もしく
は界面活性剤との接触処理などの化学的処理を単独もし
くは組み合わせて施す事により、菌体を破砕し、エステ
ラーゼを抽出する事ができる。
その一例を挙げれば次の通りである。
即ち、遠心分離により集めた菌体を100mMリン酸カリウ
ム緩衝液(pH9.0)で数回洗浄した後、同緩衝液に懸濁
し、加圧型破砕装置フレンチ・プレスにより菌体を加圧
破砕してエステラーゼを抽出する。こうして菌体抽出物
より得られる粗エステラーゼは塩析、有機溶媒による分
別沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、疎
水性クロマトグラフィー、水素結合クロマトグラフィ
ー、アフィニティクロマトグラフィー等のカラムクロマ
トグラフィーや高速液体クロマトグラフィー及び電気泳
動などの生化学分野で公知の手段を単独にもしくは組み
合わせて用いて精製する事ができる。
その一例を挙げれば次の通りである。
即ち、フレンチ・プレス処理により破砕した菌体処理物
を10,000g、10分間遠心分離し、続いて上清を100,000
g、60分間超遠心分離してえられた上清を粗抽出液とす
る。
該抽出液を硫安40〜70%で塩析し、本エステラーゼを沈
澱せしめ、該沈澱を20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0)で
溶解した後、同緩衝液で平衡化したDEAE−セファロース
CL−6Bに通過させ、エステラーゼを吸着させる。その後
0〜0.5M Nacl直線濃度勾配法にてエステラーゼを溶出
する。0.25M付近に溶出されるエステラーゼ活性を有す
る画分を濃縮後、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対
して透析する。該濃縮液を同緩衝液で平衡化したセファ
クリルS−200スーパーファインに通液し、溶出したエ
ステラーゼ画分を濃縮後、続いて同緩衝液で平衡化した
セファデックスG−150スーパーファインカラムに通液
し、エステラーゼを溶出する。得られたエステラーゼ画
分を濃縮後、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対して
透析し、同緩衝液で平衡化したQAE−セファデックスに
通過せしめ、エステラーゼを吸着させた後、0〜0.5MNa
cl直線濃度勾配によりエステラーゼを溶出する。
この溶出液を濃縮後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動に供したところ本エステラーゼは電気泳動的に単
一のバンドに精製され、その分子量は54,000又、サブユ
ニット構造を持たない一本鎖ペプチドである事がわかっ
た。
この精製の過程の一例を示したものが第2表である。
次に本発明に於いて用いたエステラーゼの活性測定法を
示す。
pH9.0の100mMトリス塩酸緩衝液中にエステラーゼ溶液を
添加し、40℃で1分間プレインキュベーションを行う。
次いで、アセトンに溶解した下記の一般式(I)で示さ
れるDCPIのP−ニトロフェニルエステルを最終濃度1mM
になる様に添加、撹拌後P−ニトロフェノールの遊離に
伴う405nmにおける吸光度の増加を分光光度計で測定す
る。1分間に1nmoleのP−ニトロフェノールを遊離する
酵素量を1単位(1unit)とする。
次に実施例により本発明を説明するが、これらにより本
発明の範囲が何ら制限されるものでない事は言うまでも
ない。
実施例1 バシラスエスピーDC−1(Bacillus sp.DC−1)(微工
研菌寄第8719号)を可溶性デンプン1%、ポリペプトン
0.5%、酵母エキス0.5%、K2HPO4 0.1%、MgSO4・7H2O
0.02%、及び微量金属としてCuSO4・5H2O 5mg/l,MnCl2
・4H2O 5mg/l,ZnSO4・7H2O 1mg/l及びFeSO4・7H2O 2mg/
lを含むpH9.0の培地50mlに一白金耳接種し、30℃、24時
間振とう培養した。この前培養で得られた種培養液を、
さらに、上記組成の培地5lに接種し、35℃、24時間、通
気量5l/min、撹拌速度600rpmで培養した。培養終了後、
9,000g、10分間の遠心分離により得た菌体を100mMリン
酸カリウム緩衝液pH9.0で2回洗浄し、培養液100ml相当
の菌体を4mlの同緩衝液に懸濁して、フレンチ・プレッ
シャー・セル・プレス(アミンコ製)にて4℃、38.000
psiの圧で菌体を破砕した。
得られた菌体処理物を遠心分離(10,000g、10分間)
し、その上清を続いて超遠心分離(100,000g、60分間)
して、エステラーゼ粗抽出液を得た。その結果、比活性
4.86units/mgの粗酵素が6560mg得られた。
実施例2 実施例1に準じて得られた粗エステラーゼ抽出液を100m
Mリン酸カリウム緩衝液(pH9.0)で蛋白濃度10〜20mg/m
lになる様に調整後、硫安40%飽和とし、生じた沈澱を
遠心分離により除去した(10,000×g、10分間)、続い
て上清を硫安70%飽和にし、沈澱を分取し(10,000×g1
0分間)、20mMトリス塩酸緩衝液pH7.0 40mlに溶解後、
同緩衝液に対して透析した。その結果、総活性量17848u
nits、比活性6.80units/mgの粗酵素溶液が得られた。
このエステラーゼ溶液43.5mlのうち10.2ml(4199unit
s、615mg prot.)を同緩衝液で平衡化したベッド体積14
0mlのDEAE−セファロースCL−6B(2.6×26cm)に通液
し、エステラーゼをDEAE−セファロースCL−6Bに吸着さ
せた後、同緩衝液でカラムを洗浄し、0〜0.5MのNaCl直
線濃度勾配によって、エステラーゼを0.25M NaCl付近に
溶出した。その結果、活性はピーク部分に3734units回
収され(89%)、全溶出液では4115units(98%)回収
され、比活性は8.2倍上昇した。
エステラーゼ活性画分を限外濾過膜で濃縮後、該濃縮液
を50mMトリス塩酸緩衝液pH8.0に対して透析し、同緩衝
液で平衡化したセファクリルS−200スーパーファイン
(2.6×100cm)に通液し、ゲル濾過を行った。溶出した
エステラーゼ画分を濃縮後50mMトリス塩酸緩衝液pH8.0
で平衡化したセファデックスG−150スーパーファイン
カラム(2.6×100cm)に通液し、同緩衝液でエステラー
ゼを溶出した。得られたエステラーゼ画分を濃縮後、20
mMトリス塩酸緩衝液pH8.0で平衡化したベッド体積70ml
のQAE−セファデックス(1.6×35cm)に通液し、エステ
ラーゼを吸着させた後、同緩衝液で洗浄した。次いで0
〜0.5M NaClの直線濃度勾配溶出法でエステラーゼを溶
出したところ、NaCl0.25〜0.3Mの部分に745unitの活性
が回収され、比活性は、413.8units/mg又、粗抽出液か
らの活性回収率は9.9%であった。
このエステラーゼ溶液を約5倍に濃縮後、10%のSDS−
ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、エス
テラーゼは分子量54,000の単一バンドとして認められ
た。これはセファクリルS−200スーパーファイン及び
セファデックスG−150スーパーファインによるゲル濾
過の結果(52,000〜58,000)とよく一致しており、エス
テラーゼがサブユニット構造を持たない1本鎖ペプチド
である事が示唆された。但し、ホスホリラーゼB(分子
量92,500)、牛血清アルブミン(66,200)、卵白アルブ
ミン(45,000)、炭酸脱水酵素(31.000)、大豆トリプ
シンインヒビター(21,500)及びリゾチーム(14,400)
をSDS−PAGEによるエステラーゼ分子量決定の標準物質
とし、ブルーデキストラン(200,000)、牛血清アルブ
ミン(66,200)、卵白アルブミン(45,000)、キモトリ
プシノーゲンA(25,000)、リボヌクレアーゼA(13,7
00)をゲル濾過によるエステラーゼ分子量決定の標準物
質とした。
実施例3 実施例2に準じて得られた精製エステラーゼについてLK
B製ポリアクリルアミドゲル(濃度5%、架橋度3%、
アンフオライン濃度2.2%)を用い、pH4.0〜6.5の範囲
で等電点電気泳動(電力一定:15W)を、10℃で90分間行
った。泳動後、コマジーブリリアントブルーR−250で
染色し、蛋白質のバンドを検出した。その結果、本エス
テラーゼの等電点は4.8±0.1であった。尚、電気泳動の
際の標準物質として、バイオラッド社のPIマーカー(PI
4.65,5.10,6.00,6.50)及びオリエンタル酵母社のPIマ
ーカー(PI4.10,4.90,6.40)を用いた。
実施例4 実施例2に準じて得られた精製エステラーゼを下記各試
薬を共に37℃で10分間インキュベーションした後、前述
の活性測定法に従って、残存酵素活性を測定した。第3
表にその結果を示す。
尚、第3表中、残存活性は、未処理の酵素活性を100と
した時の相対値(%)で表した。又、第3表中1)はフ
ェニルメチルサルフォニルフルオライドを示し、2)ジ
イソプロピルフルオロリン酸を示す。
実施例5 実施例2に準じて得られた精製エステラーゼを、100mM
トリス塩酸緩衝液pH9.0中で2〜20mMの各基質に作用さ
せ、その加水分解活性をpHスタット(ラジオメーター
社)で測定した。又コリンエステル、コレステロールエ
ステル、チオールエステルの加水分解活性を測定した。
その結果を第4表及び第5表に示す。
第4表中、加水分解活性は、本エステラーゼの酪酸エチ
ル分解活性を100とする相対活性(%)で表した。尚、
各基質は、0.2%ポリビニルアルコールで乳化して用い
た。第5表中、コリンエステル及びコレステロールエス
テル加水分解活性に関しては、各々コリンエステラーゼ
B−テスト(和光)及びフリーコレステロールB−テス
ト(和光)を用いて測定し、チオールエステル分解活性
は、グルタチオンを標準物質とし、5,5′−ジチオビス
(2−ニトロ安息香酸)(DTNB)を用いて、分光光度計
で412nmの吸光の増加を測定した。活性は、1分間に遊
離してくるコリン、コレステロール及びCoAのモル数で
表した。
実施例6 実施例2に準じて得られた精製エステラーゼを用いて、
DCPIのP−ニトロフェニルエステルを基質とした時の酵
素の至適pH及びpH安定範囲を測定した。その結果を第1
図及び第2図に示す。第1図に於いて、活性測定は40℃
で行い、pH5〜7には100mMリン酸カリウム緩衝液を、pH
7〜9には100mMトリス塩酸緩衝液を、pH9〜13には100mM
のリン酸二カリウム・水酸化カリウム緩衝液を用いた。
また活性は、pH9.0に於ける活性値を100とした時の相対
活性(%)で表した。
第2図に於いて酵素液は、pH5〜7の場合は、20mMのリ
ン酸カリウム緩衝液、pH7〜9於いては、20mMのトリス
塩酸緩衝液中に、4℃で保存し、各時間における残存活
性を40℃、100mMトリス塩酸pH9.0中で測定した。活性
は、0時間における活性値を100とした時の活性残存率
(%)で表した。
実施例7 実施例2に準じて得られた精製エステラーゼの、DCPIの
p−ニトロフェニルエステル水解至適温度と熱安定性を
測定した。その結果を第3図及び第4図に示す。第3図
に於いて横軸は絶対温度の逆数、縦軸は初速度の対数を
表す。又活性測定は、100mMトリス塩酸緩衝液pH9.0を用
いて行った。
第4図に於いて、横軸に示された各温度で酵素液を15分
間前処理した後、40℃の100mMトリス塩酸緩衝液pH9.0中
で活性を測定した。活性は、未処理のエステラーゼ活性
を100とした時の活性残存率(%)で表した。
参考例1 実施例1及び2に記載した硫安塩析法に準じて得られた
エステラーゼ粗酵素溶液(硫安40〜70%画分、比活性6.
80units/mg)を用いて、ジクロロビニル菊酸エチル(以
下本明細書中ではDCPEと略称する。)の加水分解反応を
行った。
即ち、該粗酵素液1.0ml(410.0units,60.3mg)を、2%
ポリビニルアルコール1.0mlを含むpH9.0の100mMトリス
塩酸緩衝液8.0mlに添加し、(±)−シス,トランスDCP
E(シス/トランス 比=45/55)を最終2mMになる様に
加えて35℃で96時間撹拌下に反応した。96時間後この反
応液に35%HCl 0.1mlを加え反応を停止させた後ジエチ
ルエーテルで生成したDCPIと未反応のDCPEを酸析、抽出
した。
抽出液をガスクロマトグラフィー(カラム:30%Thermon
3000,1.1m 140℃)で分析し、DCPIとDCPEのピーク面積
比より、収率(%)を算出した。
次に上記抽出液にIN NaOH 2.0mlを添加してDCPIのみを
ナトリウム塩として水層に抽出した後、水層を35%HCl
でpH2以下とし、遊離してくるDCPIをメチルイソブチル
ケトンで抽出後、濃縮した。得られたDCPIをトルエン0.
5mlに溶解し、DCPIと等モルの塩化チオニル、ピリジ
ン、3,5−ジクロロアニリンを加えて80℃で反応させア
ニリドとした後、高速液体クロマトグラフィー(カラ
ム:SUMIPAX OA−2100,移動相 n−ヘキサン:ジクロロ
エタン(10:3V/V),流速1.0ml/min)で異性体分析を行
った。その結果を第6表に示す。
1)収率は、原料中の(+)−トランスDCPEに対する得
られた(+)−トランスDCPIのモル収率を表す。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明のエステラーゼの至適pHを示すもので
ある。 第2図は、本発明のエステラーゼのpH安定性を示すもの
である。 第3図は、本発明のエステラーゼの至適温度を示すもの
である。 第4図は、本発明のエステラーゼの熱安定性を示すもの
である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の理化学的性質を有する新規エステラ
    ーゼ 1)作用: 有機カルボン酸エステルのエステル結合を加水分解す
    る。 2)基質特異性: 主として有機カルボン酸のアルコールエステルに作用
    し、水溶性の短鎖脂肪酸エステルに高い活性を有する。
    短鎖のモノ及びトリアシルグリセライドには作用する
    が、長鎖のモノ、ジ、及びトリアシルグリセライドには
    作用しない。パルミトイルCoAには作用するが、アセチ
    ルCoA、コリンエステル、及びコレステロールエステル
    には作用しない。 3)至適pH及びpH安定性: ジクロロビニル菊酸(DCPI)のp−ニトロフェニルエス
    テルを基質としたときの、加水分解の至適pHは、8.5〜
    9.0である。 10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0〜9.0)及び10mMリン酸緩
    衝液(pH5.0〜7.0)を用いた場合、4℃、48時間後の残
    存活性は、pH7.0〜9.0では約100%、pH6.0では約45%、
    pH5.0では約20%である。 4)至適温度及び熱安定性: ジクロロビニル菊酸(DCPI)のp−ニトロフェニルエス
    テルを基質としたときの加水分解の至適温度は100mMト
    リス塩酸緩衝液pH9.0中で50〜55℃である。 同緩衝液中、各温度で10分間処理後の残存活性は、35℃
    で100%、40℃で約80%、50℃で約15%である。 5)分子量: 54,000±2,000(ゲルろ過及びSDS−ポリアクリルアミド
    ゲル電気泳動法による) 6)等電点:4.8±0.1 7)失活条件: a)100μMフェニルメチルスルフォニルフルオライド
    (PMSF)又は80μMジイソプロピルフルオロリン酸(DI
    FP)存在下に37℃、10分間処理すると完全に失活する。 b)1mMデオキシコール酸ナトリウム及び5mMラウリル硫
    酸ナトリウムを含む100mMトリス塩酸緩衝液(pH9.0)で
    37℃、10分間処理すると、各々約25%及び約70%活性が
    低下する。
  2. 【請求項2】バシラス(Bacillus)属に属する新規エス
    テラーゼ産生菌を培養し、該培養物から新規エステラー
    ゼを分離、回収する事を特徴とする新規エステラーゼの
    製造法。
  3. 【請求項3】バシラス(Bacillus)属に属する新規エス
    テラーゼ産生菌がバシラスエスピーDC−1(Bacillus s
    p.DC−1)(微工研菌寄第8719号)である特許請求の範
    囲第2項記載の製造法。
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