JPH0774309B2 - キラルなフタロシアニン誘導体の希土類錯体およびその製造方法 - Google Patents

キラルなフタロシアニン誘導体の希土類錯体およびその製造方法

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JPH0774309B2
JPH0774309B2 JP4320647A JP32064792A JPH0774309B2 JP H0774309 B2 JPH0774309 B2 JP H0774309B2 JP 4320647 A JP4320647 A JP 4320647A JP 32064792 A JP32064792 A JP 32064792A JP H0774309 B2 JPH0774309 B2 JP H0774309B2
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昌弘 籏野
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、非線形光学素子、光
記録材料などに利用可能な、分子不斉を有するビス(置
換フタロシアニン)希土類錯体、およびその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】フタロシアニン金属錯体は化学的に最も
安定な有機化合物として知られ、多くの分野で広く用い
られている。例えば、フタロシアニン金属錯体(図1の
1)は、従来、顔料などの色素工業材料、脱臭用材料と
して利用されている。また、近年、フタロシアニナト・
オキシチタン(IV)が光電導性を有することが明らかと
なり、複写機の感光体として広く用いられている。さら
に、上記フタロシアニナト・オキシチタンおよびフタロ
シアニナト・オキシバナジウムは三次の非線形光学感受
性が極めて大きく、非線形光学素子用材料としての応用
が期待されており、その他、センサ−材料、燃料電池材
料などの研究・開発にも用いられている。これら以外に
も、フタロシアニン金属錯体はクロロフィルやヘムのモ
デル化合物として利用可能であり、生体内におけるクロ
ロフィルやヘムに結合したタンパク質の化学的挙動の解
明にも役立っている。
【0003】しかしながら、フタロシアニン金属錯体は
大きなπ電子系を有しており、分子間相互作用が大きい
ため高度に会合しやすく、一般に有機溶媒に不溶もしく
は難溶である。この高い会合性のために、固体のフタロ
シアニン金属錯体には結晶多形があり、応用研究や基礎
研究の妨げとなっている。
【0004】長鎖アルキル基を導入したフタロシアニン
金属錯体分子を用いた場合には、いわゆるラングミュア
・ブロジェット膜形成法により、フタロシアニン環を水
面上に保持し、長鎖アルキル基を空気中に配向させるこ
とは可能である。しかしながら、このような配向状態は
安定性に乏しく、固定化することができない。また、こ
のように形成された単分子層を多数累積させることは事
実上不可能である。
【0005】このような理由から、上記各種材料への応
用、あるいはそれ自体の化学的研究においては、フタロ
シアニン金属錯体の会合性に着目して研究が進められて
いる。
【0006】本発明者らは、フタロシアニン金属錯体の
特定の位置に側鎖を導入することにより有機溶媒に対す
る溶解度が向上し(ケミストリ−・レタ−ズ、1988年、
1359頁〜1362頁)、金属イオンまわりの実効対称性を低
下させる(ケミストリ−・レタ−ズ、1992年、 763頁〜
766頁)ことによりフタロシアニン金属錯体分子の配向
制御が可能となることを明らかにし、既に特許出願済で
ある(特公平 2-55769号公報および特公平 4-106159 号
公報)。ここで「実効対称性」とは、円偏光二色性スペ
クトルに反映される時間依存の波動関数において、摂動
論で記述できる程度の歪みを無視することにより成立す
る対称性を意味する。
【0007】ケミストリ−・レタ−ズ、1992年、 763頁
〜 766頁および特公平 4-106159 号公報に記載の方法に
より合成したジベンゾ(b,t)フタロシアニナト・亜
鉛(II)を用いることにより、有機分子線蒸着(Organi
c Molecular Beam Deposition :OMBD)法でサファ
イア基板上によく配向した薄膜を形成させることができ
る(特願平4-121060号)。一般のフタロシアニン金属錯
体の金属イオンまわりの実効対称性がD4h、D4dである
のに対して、このジベンゾ(b,t)フタロシアニナト
・亜鉛(II)は図3に示すように2回対称軸を有し、金
属イオンまわりの実効対称性はD2hと一般のフタロシア
ニン金属錯体よりも低い。OMBD法の適用に加えて、
この対称性の低下が良好に配向した薄膜の形成に寄与し
ているものと考えられている。なお、上記D 4h 、D 4d
よびD 2h はシェーンフリースの記号と呼ばれ、いずれも
点群を表わすものであり、D 4h は四角の平面を含む対称
面(σ h )に垂直な軸を仮定し、これを対称軸として回
転させたとき、 360度回転させて4回同じ構造を見るこ
とができる分子の点群を示し、D 4d は特定の対称軸を含
む面(σ v )で実体と映像との関係が得られる場合、対
称軸の周りに 360度回転させて4回同じ構造を見ること
ができる分子の点群を示す。
【0008】非線形光学素子用材料としての適性を示す
特性として非線形光学感受性があるが、上記配向薄膜は
大きな三次の非線形光学感受率を示し、有機非線形光学
素子用材料として好適に利用することができる。
【0009】一方、二次の非線形光学感受率について
は、二次の超分極率を有する物質が有利である。二次の
超分極率は、励起状態と基底状態との両者の双極子能率
の大きさの差が大きく、かつ両者のエネルギ−差が小さ
い場合に最も大きくなる(ジャ−ナル・オブ・アメリカ
ン・ケミカル・ソサエティ−、 113巻、7227頁〜7232頁
(1991年))。この条件は、例えば、π型電子供与体お
よびπ型電子受容体の両者が一つの分子中に存在し、か
つチャ−ジ・レゾナンス型の強い相互作用が存在する場
合に満たされる。
【0010】本発明者らは、フタロシアニンのサンドイ
ッチ型希土類錯体についても研究を行ない、ビス(フタ
ロシアニン)希土類 (III)錯体が、2個のフタロシアニ
ン環が 2.7オングストロ−ム程度の距離を保って互いに
45度ねじれた位置に配置されていることを見出した(ケ
ミカル・フィジクス・レタ−ズ、 160巻、 163〜 167頁
(1989年);ケミカル・フィジクス・レタ−ズ、 165
巻、 397頁〜 400頁(1990年);ケミカル・フィジクス
・レタ−ズ、 166巻、 605頁〜 608頁(1990年))。す
なわち、この型の錯体は上記条件を満たし、大きな二次
の非線形光学感受性を持つ可能性がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、フタロ
シアニン金属錯体は種々の分野で有用な物質であり、特
に光学素子用材料としての期待が大きい。光学素子に適
用する場合に必要不可欠な配向薄膜の形成は、本発明者
らの研究により、ジベンゾ(b,t)フタロシアニナト
・亜鉛(II)を用いることにより可能となった。この例
からは、金属イオンまわりの実効対称性を低下させるこ
とによりフタロシアニン金属錯体の配向性の向上が可能
であることが示唆される。しかしながら、ジベンゾ
(b,t)フタロシアニナト・亜鉛(II)の金属イオン
まわりの実効対称性はD2hであり、これを下回る実効対
称性を有するフタロシアニン金属錯体は知られていな
い。
【0012】また、実効対称性がD4hより低いフタロシ
アニン誘導体は、合成後種々のフタロシアニン誘導体の
混合物の中から分離・精製しなければならないが、所望
の誘導体を効率的に分離するには、まず目的とするフタ
ロシアニン誘導体を金属錯体の形でクロマトグラフィ−
法により分離し、次いで中心金属イオンを脱離させてフ
タロシアニネ−ト・イオンとする必要がある。フタロシ
アニネ−ト・イオンのままでは、それらの溶解度、安定
性、クロマトグラフィ−固定相との適当なアフィニティ
−等を保持することができない。しかしながら、フタロ
シアニン金属錯体の中心金属イオンとして一般的な亜鉛
(II)、銅(II)、鉄(II)等のイオンは通常の酸処理
では脱離させることができず、従来、フタロシアニン誘
導体を効率的に分離することはできなかった。
【0013】したがって、この発明は、金属イオンまわ
りの実効対称性がさらに低い、分子不斉を有する(すな
わち、キラルな)フタロシアニン誘導体の希土類錯体を
提供することを目的とする。
【0014】また、この発明は、前記分子不斉を有する
フタロシアニン誘導体の希土類錯体を効率的に製造し得
る方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段および作用】本発明者ら
は、上記事情に鑑み鋭意研究の結果、通常のフタロシア
ニンが有する4回実効対称性(D4h)を2回実効対称性
(D2h)以下に低下させた置換フタロシアニンを用い、
これを希土類(III) イオンを挟む形で配位させたサンド
イッチ型錯体では、対称性が消失して分子不斉が生じる
ことを見出し、この発明を完成するに至った。
【0016】すなわち、この発明の錯体は、2回実効対
称性を有する、2つの置換フタロシアニネ−ト・イオン
が希土類(III) イオンを挟む形で配位した錯体であるこ
とを特徴とする。
【0017】また、この発明による錯体の製造方法は、
合成された置換フタロシアニンのマグネシウム(II)錯
体を形成した後、所望の置換フタロシアニン・マグネシ
ウム(II)錯体を分離・精製し、この分離・精製した錯
体からマグネシウム(II)イオンを脱離させて置換フタ
ロシアニネ−ト・イオンを得、得られた置換フタロシア
ニネ−ト・イオンをジリチウム塩とした後希土類(III)
イオンと反応させることを特徴とする。
【0018】以下、この発明を詳細に説明する。
【0019】この発明の錯体を構成する2回実効対称性
以下の対称性を有する置換フタロシアニネ−ト・イオン
としては、例えば、図1に2〜8で示すイオンを挙げる
ことができる。なお、図1において、Mは金属イオンを
表わす。
【0020】希土類(III) イオンはさまざまなイオン半
径を有する一群の3価陽イオンである。この発明におい
て用いられる希土類(III) イオンは特に限定されるもの
ではないが、イオン半径が大きいものはπ−π型の2個
のフタロシアニネート・イオン間相互作用が小さく、好
ましくない。ルテチウム(III) イオンは、イオン半径が
最も小さいことから特に好ましく用いることができる。
この他、この発明の錯体において好適に用いることがで
きる希土類(III) イオンとしては、イッテルビウム(II
I) イオン、サマリウム(III) イオンを挙げることがで
きる。
【0021】置換フタロシアニネ−ト・イオンとしてジ
ベンゾ(b,t)フタロシアニネ−ト・イオンを用いた
この発明による錯体の構造式を、フタロシアニネ−ト・
イオンに挟まれた希土類(III) イオンを省略して図2に
示す。
【0022】前述の、2つのフタロシアニネ−ト・イオ
ンが希土類(III) イオンを挟む形で配位した錯体(図1
の1)は、フタロシアニネ−ト・イオンがD4hの対称性
を有するためにキラルではなかった。しかしながら、図
2に示すように、ジベンゾ(b,t)フタロシアニネ−
ト・イオンのような置換フタロシアニネ−ト・イオンが
希土類(III) イオンを挟む形で配位した錯体は、ジベン
ゾ(b,t)フタロシアニネ−ト・イオンの対称性がD
2hであり、1対の光学的対掌体(鏡像体)に分割可能
な、いわゆるキラルである。図2に示す錯体では、2つ
のジベンゾ(b,t)フタロシアニネ−ト・イオンの遷
移双極子モ−メントは時計回りと反時計回りとに互いに
45°捩れた配置をとる。加えて、希土類(III) イオンを
挟む2つの置換フタロシアニネ−ト・イオンの間の距離
は一般に小さく、特に希土類(III) イオンがルテチウム
(III) イオンである場合にはその距離は 2.7オングスト
ロ−ムと非常に小さい。したがって、この発明の錯体
は、チャ−ジ・レゾナンス型の強い相互作用を有し、前
述の二次の非線形光学感受率を高める条件を満たしてい
る。
【0023】この発明の錯体の製造方法における、置換
フタロシアニンの合成法としては、前述の特開平 4-106
159 号公報、ケミストリ−・レタ−ズ、1992年、 763頁
〜 766頁等に記載の方法を好適に用いることができる。
【0024】しかしながら、これらの方法により合成さ
れた置換フタロシアニン錯体の中心金属イオンである亜
鉛(II)、銅(II)、鉄(II)などは濃硫酸等の酸処理
によっても脱離させることができず不都合である。そこ
で、この発明の製造方法においては、これらの中心金属
イオンをマグネシウム(II)イオンに置き換え、同様の
方法により置換フタロシアニンのマグネシウム(II)錯
体を形成させる。
【0025】形成されたマグネシウム(II)錯体は、ク
ロマトグラフィ−法等の通常用いられる分離法に適して
おり、所望の置換フタロシアニンのマグネシウム(II)
錯体を分離・精製することができる。
【0026】分離・精製された所望の置換フタロシアニ
ンのマグネシウム(II)錯体は、次いで、有機溶媒中で
ジリチウム塩等の塩に変換した後、酸処理により置換フ
タロシアニネ−ト・イオンとする。
【0027】最後に、得られた置換フタロシアニネ−ト
・イオンまたはそのジリチウム塩を希土類(III) イオン
と反応させることにより、キラルな置換フタロシアニン
の希土類(III) 錯体を得ることができる。
【0028】例えば、マグネシウム(II)錯体(MgP
c)からルテチウム(III) 錯体(Pc2 Lu(III) )を
調製する場合には、まず、マグネシウム(II)錯体から
メタル・フリー・フタロシアニン、あるいはフタロシア
ニンのジリチウム塩(PcLi2 )を調製する。メタル
・フリー・フタロシアニンは、MgPcを希硫酸と混合
し、室温で 2〜 3分間放置することにより、マグネシウ
ムを容易に脱離させて調製することができる。PcLi
2 は、キノリン、PHF等の有機溶媒(脱水したもの)
に 4〜 6当量程度のn-ブチルリチウムを加え、さらにM
gPcを加えて約 250℃で30分程度加温することにより
ほぼ 100%の収率で得ることができる。ここでは、Pc
Li2 を調製することがより望ましい。
【0029】次に、キノリン等の有機溶媒中で、メタル
・フリー・フタロシアニンもしくはPcLi2 にLu
(OAC)3 (Lu(III) の酢酸塩)を加え、約 260℃
で30分程度加温することによりPc2 Lu(III) を得る
ことができる。
【0030】生成したキラルな置換フタロシアニンの希
土類(III) 錯体は、さらに、光学活性なクロマトグラフ
ィ−材料を固定相として用いるクロマトグラフィ−法で
処理することにより、一対の光学的対掌体として配置
または配置の錯体をそれぞれ分離することができる。
例えば、固定相として Ceramospher Chical RV-1(資生
堂社製)、Chira Spher (E.Merck 社製)等を用い、溶
離液としてメタノ−ル溶液を用いることにより分離でき
る。この際、 1%程度のNH2 NH2 2 Oを添加する
ことが特に好ましい。
【0031】
【実施例】実施例1 a)ジベンゾ(b,t)フタロシアニナト・マグネシウ
ム(II)の合成 2,3-ジシアノナフタレン1.00g(0.0056モル)、オルト
フタロジニトリル0.90g(0.0070モル)、酢酸マグネシ
ウム(II)・四水和物0.75g(0.0035モル)およびハイ
ドロキノン0.35g(0.0032モル)をメノウ乳鉢で充分に
すり合わせ、試験管に入れて 270℃に設定したメタルバ
ス中に数分間浸漬して反応させた。反応後、生成物を粉
砕してテトラヒドロフランで可能な限り溶解させ、不溶
部分はろ別した。次に、このろ液を塩基性アルミナを充
填したカラムに通して不純物を除去し、流出した溶液を
濃縮した後放置して結晶を得た。
【0032】得られた結晶をろ別し、まずテトラヒドロ
フラン・アセトン系溶媒、次いでテトラヒドロフラン・
トルエン系溶媒、さらにテトラヒドロフランから再結晶
することにより、ジベンゾ(b,t)フタロシアニナト
・マグネシウム(II)49mgを得た。得られたジベンゾ
(b,t)フタロシアニナト・マグネシウム(II)の電
子吸収スペクトルを図4に、また核磁気共鳴スペクトル
を図5にそれぞれ示す。
【0033】なお、分取用液体クロマトグラフィ−法に
より、副生するフタロシアニン誘導体の錯体をそれぞれ
分取することにより、収量を飛躍的に向上させることも
可能である。
【0034】元素分析値:炭素 75.10%、水素 3.85
%、窒素 17.42%(理論値:炭素 75.05%、水素 3.90
%、窒素 17.36%) b)ジベンゾ(b,t)フタロシアニンの合成 上記a)において得られたジベンゾ(b,t)フタロシ
アニナト・マグネシウム(II) 151mg( 2.4×10-4
ル)をキノリン13ml中に懸濁し、この懸濁液にn−ブ
チル・リチウム47mg( 7.3×10-4モル)を添加して 2
60℃のメタルバス中で加熱しながら 2時間30分撹拌し
た。
【0035】放冷後、反応液にメチルアルコ−ル50ml
を添加して溶解し、さらに 3N硫酸10mlを加え、不溶
の結晶をろ別した。ろ別した結晶を水で洗浄し、メタノ
−ルで数回、次いでテトラヒドロフラン1000mlで洗浄
した後、さらに不溶の結晶を少量のテトラヒドロフラン
で洗浄して乾燥させ、ジベンゾ(b,t)フタロシアニ
ンを得た。収量は86mgであった。
【0036】c)ビス[ジベンゾ(b,t)フタロシア
ニナト]希土類(III) 錯体の合成 上記b)において得られたジベンゾ(b,t)フタロシ
アニン86mg( 1.4×10-4モル)をキノリン10ml中に
懸濁し、さらにn−ブチル・リチウム26mg( 4.4×10
-4モル)を添加して 250℃のメタルバス中で 1時間撹拌
した。その後、キノリン 3ml中に酢酸ルテチウム(II
I) 27mg( 7.7×10-5モル)を懸濁した懸濁液を、そ
の 2時間後にキノリン 1.5ml中に酢酸ルテチウム(II
I) 10mg( 2.8×10-5モル)を懸濁させた懸濁液を、
さらにその 2時間後にキノリン 1.5ml中に酢酸ルテチ
ウム(III) 8mg( 2.3×10-5モル)を懸濁させた懸濁
液を添加し、温度を 250℃に保ったまま 1時間放置して
反応を進行させた。放冷後、反応液にn−ヘキサン 100
mlを添加して析出した結晶をろ別し、得られた結晶に
テトラヒドロフランを加えて溶解した。その後、この溶
液をろ過し、ろ液を濃縮することにより結晶63mgを得
た。
【0037】得られた結晶を少量のテトラヒドロフラン
に溶解して塩基性アルミナを充填したカラムに通し、微
量の不純物を除去した。その後、カラムの流出液を濃縮
し、ヒドラジン水和物0.05mlを添加して、ラジカル塩
の形態で微量に存在するビス[ジベンゾ(b,t)フタ
ロシアニナト]ルテチウム(III) ・カチオンラジカルを
中性の錯体として回収した。収量は54mgであった。
【0038】得られた中性の錯体を、光学活性カラムで
−配置並びに−配置の錯体に分割した。
【0039】得られたビス[ジベンゾ(b,t)フタロ
シアニナト]ルテチウム(III) の電子吸収スペクトルを
図6に示す。
【0040】実施例2 実施例1の工程c)において用いられる酢酸ルテチウム
(III) の代わりに酢酸イッテルビウム(III) および塩化
サマリウム(III) をそれぞれ用い、他は実施例1と同様
にして錯体の製造を行なった。その結果、ビス[ジベン
ゾ(b,t)フタロシアニナト]イッテルビウム(III)
およびビス[ジベンゾ(b,t)フタロシアニナト]サ
マリウム(III) がそれぞれ得られ、いずれもキラルであ
った。
【0041】
【発明の効果】以上のように、この発明の錯体は分子不
斉を有するキラルな錯体であり、良く配向制御された薄
膜をより容易に形成することが可能である。また、この
発明の錯体はチャ−ジ・レゾナンス型の強い相互作用を
有しており、三次の非線形光学感受率に加えて二次の非
線形光学感受率も高い。したがって、非線形光学素子用
材料として好適に用いることができる。
【0042】また、この発明の錯体は、レ−ザ−照射に
より容易にラジカル型に変換し、塩基性物質によって中
性の非ラジカル型に戻る特性を有しており、光記録媒体
としても有用である。
【0043】さらに、この発明の錯体の製造方法による
と、合成された種々の置換フタロシアニンの混合物から
所望の置換フタロシアニンを効率よく分離・精製するこ
とが可能となり、最終生成物であるキラルな置換フタロ
シアニンの希土類(III) 錯体を簡便に、かつ高い収率で
得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々のフタロシアニナト金属錯体の構造を示す
図。
【図2】この発明の錯体の一具体例である、配置およ
配置のビス[ジベンゾ(b,t)フタロシアニナ
ト]ルテチウム(III) 錯体の構造式を一対にして示す
図。
【図3】従来得られている、D2hの対称性を有するジベ
ンゾ(b,t)フタロシアニナト・亜鉛(II)の構造式
を示す図。
【図4】この発明の実施例のおいて合成されたジベンゾ
(b,t)フタロシアニナト・マグネシウム(III) の電
子吸収スペクトルを示す図。
【図5】この発明の実施例のおいて合成されたジベンゾ
(b,t)フタロシアニナト・マグネシウム(III) の核
磁気共鳴スペクトルを示す図。
【図6】この発明の実施例において製造されたビス[ジ
ベンゾ(b,t)フタロシアニナト]ルテチウム(III)
錯体の電子吸収スペクトルを示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−106159(JP,A) 特開 平2−55769(JP,A) 特開 平3−206091(JP,A) 特開 平5−297427(JP,A) CHEMICAL PHYSICS L ETTERS,160(2),1989,163− 167

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2回実効対称性以下の対称性が低い2つ
    の置換フタロシアニネ−ト・イオンが、希土類(III) イ
    オンを挟む形で配位した分子不斉を有する錯体。
  2. 【請求項2】 ビス(ジベンゾフタロシアニナト)希土
    類(III) 錯体である請求項1記載の錯体。
  3. 【請求項3】 前記希土類(III) イオンが、ルテチウム
    (III) イオン、イッテルビウム(III) イオン、またはサ
    マリウム(III) イオンである請求項2記載の錯体。
  4. 【請求項4】 合成された置換フタロシアニンのマグネ
    シウム(II)錯体を形成した後、所望の置換フタロシア
    ニン・マグネシウム(II)錯体を分離・精製し、当該分
    離・精製した錯体からマグネシウム(II)イオンを脱離
    させて置換フタロシアニネ−ト・イオンを得、当該置換
    フタロシアニネ−ト・イオンをジリチウム塩とした後希
    土類(III) イオンと反応させる請求項1記載の錯体の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 希土類(III) イオンと反応させた後、さ
    らに光学異性体に分割する請求項4記載の製造方法。
JP4320647A 1992-11-30 1992-11-30 キラルなフタロシアニン誘導体の希土類錯体およびその製造方法 Expired - Lifetime JPH0774309B2 (ja)

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