JPH0790573A - スパッタリング方法と装置および薄膜の製造方法 - Google Patents

スパッタリング方法と装置および薄膜の製造方法

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JPH0790573A
JPH0790573A JP17567494A JP17567494A JPH0790573A JP H0790573 A JPH0790573 A JP H0790573A JP 17567494 A JP17567494 A JP 17567494A JP 17567494 A JP17567494 A JP 17567494A JP H0790573 A JPH0790573 A JP H0790573A
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潤一 清水
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Abstract

(57)【要約】 【構成】負の電圧が一定の周期で間欠的に印加されるス
パッタリング方法において、負の電圧が印加されない時
間の少なくとも一部の時間は、電圧が0ボルトに制御さ
れる時間24であって、かつ、1回のアーク放電の発生
から消失するまでに要する時間と同等かそれよりも長い
時間であるスパッタリング方法。 【効果】アーキングの発生を防ぎ、通常の直流スパッタ
より長時間にわたって安定に放電を維持できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パルス状の直流電圧を
印加するスパッタリング方法と該スパッタリングによる
製膜方法と該スパッタリングを実現する装置および電力
加工部に関する。
【0002】
【従来の技術】直流スパッタリング用のカソードは異常
放電の問題を解決しなければ、高速で高品質の成膜を行
うことができない。
【0003】カソード周辺で起きる異常放電はいろいろ
な原因による。ターゲット材表面に堆積あるいは発生し
た微小な面積の絶縁物に電荷が蓄積され、それが周辺の
被成膜基板、アノード電極、真空室内壁、あるいはター
ゲット表面など電圧的に対極した部位に向かって一時的
にアーク放電を引き起こす種類の異常放電(以下、アー
キングという)によるものが多い。
【0004】このアーキングは、特に反応性スパッタリ
ングにより導電性のターゲット材から絶縁体の生成物が
生ずる場合などに多発する。アーキングが発生すると、
ターゲット表面上に放電エネルギーが局部的に集中し、
それが反応性ガス雰囲気中においてはさらに絶縁物を形
成するので連鎖的にアーキングを多数引き起こす。
【0005】このため、スパッタリングに有効なグロー
放電を安定に持続できなくなり、成膜速度がきわめて不
安定になり、均一な品質の成膜を行えなくなり、場合に
よってはアーク放電によって膜が形成される基板に損傷
を与えたり、ターゲット材やカソードを構成する機構部
品を溶かしたりする等の弊害を及ぼす。
【0006】従来これを回避する手法としては、13.
56MHzの高周波電力を使用する方法がよく行われて
いる。
【0007】最近では、特開平5−148644号、特
開平5−331634号で提案された波形、あるいは、
その波形を実現し市販されている製品として、米国Ad
vanced Energy社のSPARC−LEとい
う製品があり、5μ秒〜10μ秒程度のパルス状の正の
電圧を周期的にカソードに印加して、ターゲット材表面
に堆積または発生した微小な面積の絶縁物に蓄積した正
電荷を、プラズマ中の電子を引き寄せることにより中和
して、13.56MHzの放電で得られるような効果を
数kHzの周波数の波形で実現する手法が開発されてい
る。
【0008】また、米国特許第5082546号に見ら
れるような、近接して配置した2本のカソードに数十k
Hzの中周波交流を印加して、2本のカソード間に交互
に放電を起こし、カソード電圧が負になったときにスパ
ッタリングを行い、正になったときにターゲット材表面
に堆積または発生した微小な面積の絶縁物に蓄積した正
電荷を、プラズマ中の電子を引き寄せることにより、タ
ーゲット表面の電圧差を中和する手法も開発されてい
る。
【0009】13.56MHzの高周波電源を用いたス
パッタリング方法は、絶縁物でもスパッタリングできる
ので根本的にアーキングを抑止できるとされている。
【0010】しかし、13.56MHzの高周波電源を
用いたスパッタリング装置は、出力10kW以上の電源
が大がかりになり高価になること、高圧、大電流のイン
ピーダンスマッチング回路が必要になること等の理由か
ら、経済的にも、装置構成上からも実現が困難であっ
た。
【0011】間欠的に正の電圧を印加する直流電力を使
用したり、間欠的に0ボルトにしたりするスパッタリン
グ方法は、ターゲット表面の電位差を中和し、効果的に
初期のアーキングの発生を抑止できるため有用な手法で
ある。これにより通常の直流スパッタリングよりも大幅
にアーキングを抑止することが可能になった。
【0012】しかし、13.56MHzのスパッタリン
グ法のように絶縁物をスパッタリングする能力はなく、
長時間の連続放電を行うとアーキングは発生する。
【0013】アーキングが発生すると、ターゲット表面
上に放電エネルギーが局部的に集中し、それが反応性ガ
ス雰囲気中においてはさらに絶縁物を形成するので連鎖
的にアーキングを多数引き起こしてしまう。
【0014】つまり、間欠的に正の電圧を印加したり、
あるいは間欠的に0ボルトにしたりしてターゲット表面
の電位差を中和しても、その印加する正の電圧や0ボル
トにする時間が短いと、それに見合った電荷を蓄積した
小さな絶縁物しか電位差の中和は完全には行われない。
長時間のスパッタリングにより多くの電荷を蓄積した絶
縁物や、アーキングによって新たに作られた大きな電荷
を貯えた絶縁物の電位差の完全な中和は、単純な間欠的
直流電力の使用によっては不可能であった。
【0015】近接して配置した2本のターゲットに交流
を印加するスパッタリング方法は、数十kHzの交流を
使用するので、前述の間欠的な直流電力によりスパッタ
リングする方法と比較して、ターゲットの表面の電位差
を中和するという原理に関しては同じであるといえる。
そのうえ、同一の電極が交互にカソードとアノードにな
る。したがって、カソードとなったときには表面がスパ
ッタされクリーニングされるため、アノードとなるとき
には常に表面が清浄に保たれているので長時間の連続放
電が安定して行えるという利点がある。
【0016】しかし、近接した2本のカソードが必要な
こと、数十kHzの交流電源が必要なことから、現存す
る直流スパッタリング装置で簡便に異常放電を抑止し放
電を安定化できるものではない。
【0017】アーキング発生の別の原因として、ターゲ
ット材がスパッタリングにより侵食されてくると、材料
によってはターゲット材表面に微小な突起形状が出現
し、その部分への電界集中が生じ局部的なアーク放電を
引き起こすものも多い。
【0018】このアーキングが起きると微小な面積に局
部的に放電エネルギーが集中してターゲット材の組成が
変化し、スパッタリング率の異なる部位が現れることが
あり、ターゲット表面が均一にスパッタリングできない
という問題を引き起こす。
【0019】このアーキングは、特にスパッタリング法
でインジウムと錫の酸化物(ITO)膜を製造する場
合、ターゲットとして、ITOターゲット、あるいはイ
ンジウムと錫の合金(IT)ターゲットのいずれを用い
ても、連続スパッタリング中に、低級酸化物と思われる
酸化インジウム、あるいはインジウムに対して著しくス
パッタリング率の小さい黒色の微小突起物(以下ノジュ
ールという)がターゲット表面に多数現れてきて、IT
O膜の成膜速度が徐々に低下する。
【0020】同時に、アーキングが多く発生するように
なって、そのアーキングによって飛散したターゲット物
質が基板上に付着しITO膜の欠陥になるなどの問題を
起こしていた。
【0021】ターゲット侵食に伴って発生する突起物を
除去する最も一般的な手法は、Arガス等の不活性ガス
雰囲気中で放電しスパッタリングエッチングにより物理
的に除去する方法がある。また、ITOターゲットの場
合では、特開平4−293767号で示されているよう
にN2 ガス雰囲気で放電させてクリーニングを行いノジ
ュールを除去する方法も提案されている。
【0022】しかし、これらの方法はノジュールが発生
した後に真空を保ったまま効率良く除去する手法であっ
て、根本的に発生を抑止し、長時間の連続放電を実現す
る手法ではなかった。
【0023】その他の手法としては、ITOターゲット
であればターゲット材の焼結時の密度を上げてターゲッ
ト侵食時の突起形状を改善する方法があるが、ターゲッ
ト材のコストアップの原因になるし、効果もあまりなく
完全な対策とはいえない。
【0024】もう一つの方法として、ITO膜に限られ
ないが、スパッタリング時の電力密度を上げて侵食のさ
れ方を変えてしまう手法も考えられるが、電力密度を単
に上げることはアーキングの発生の頻度が増加したり、
アーキングの放電エネルギーを増大したりして、アーキ
ングの弊害を助長し逆効果になってしまう。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アーキング
を効果的に抑止し、より大きな電力を投入してより高速
に高品質の成膜を長時間にわたって行うためのスパッタ
リング方法と該スパッタリングによる製膜方法と該スパ
ッタリングを実現する装置および電力加工部の提供を目
的とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明は、真空室内に配
置したカソードに、負の電圧が一定の周期で間欠的に印
加されるスパッタリング方法において、負の電圧が印加
されない時間の少なくとも一部の時間は、電圧が0ボル
トに制御される時間であって、10μ秒〜10m秒の範
囲であり、かつ、1回のアーク放電の発生から消失する
までに要する時間と同等かそれよりも長い時間であるこ
とを特徴とするスパッタリング方法と該スパッタリング
による製膜方法と該スパッタリングを実現する装置およ
び電力加工部を提供する。
【0027】従来の通常の直流電源でも、初期のアーキ
ングを検出して出力を高速にシャットオフし、アーキン
グの消失時間経過後、再度出力をオンにする機能を付加
することによりアーキングの弊害と発生頻度を低減させ
ることは原理的にはできる。しかし、実際にアーキング
の検出回路を電源に設置する場合、電源が正極から負極
に出力している電流、または電圧の多寡の異常を出力ケ
ーブルを経由して検出することになる。
【0028】このような検出方法においては、ターゲッ
ト材であるカソード電極とターゲット材周辺に配置する
アノード電極との間で起きているアーキングを検出でき
るだけであって、カソード材表面上で発生し始める初期
の微少なアーキングは、ケーブルのインピーダンスや電
源回路の回路定数によりフィルタリングされることにな
り検出することはできない。つまり、初期の微少なアー
キングによって連鎖的に引き起こされた比較的大きなア
ーキングが検出できるだけである。
【0029】このカソードとアノード間に発生する比較
的大きなアーキングの消失時間はm秒オーダーであるた
め、電源の動作としては数m秒間以上出力をシャットオ
フしなければならない。また、この種のアーキングが発
生した時点ではターゲット材表面に形成された絶縁物の
大きさはすでに大きくなっているので、同様のアーキン
グは頻発する。したがって、通常の直流電源で出力の異
常を検出した場合、数m秒以上のシャットオフを繰り返
すことになり正常なスパッタリングを続けることは著し
く困難な状況になる。
【0030】以上の理由により、通常の直流電源で装置
を構成した場合は、微少なアーキングに対しては検出で
きず、その結果引き起こされた大きなアーキングに対し
て数m秒以上のシャットオフを繰り返してしまうので問
題である。
【0031】本発明者らは、アーキングの波形を詳細に
観測することによって、アーキングが連鎖的に発生し始
める前の初期のアーキング(以下、初期アーキングとい
う)の波高値(電流波形における波の最大値)と消失す
る時間が、同じ装置構成であればほぼ一定となることを
見出した。
【0032】そこで、真空室内に配置したカソードに、
負の電圧が一定の周期で間欠的に印加されるスパッタリ
ング方法において、負の電圧が印加されない時間の少な
くとも一部の時間は、電圧が0ボルトに制御される時間
であって、10μ秒〜10m秒の範囲であり、かつ、1
回のアーク放電の発生から消失するまでに要する時間と
同等かそれよりも長い時間である電圧の波形を使用する
ことにより、アーキングが1度おきてもそのアーキング
のエネルギーが最小限に抑えられ、連鎖的にアーキング
が増大して行くことを防止できることを新規に見出し
た。この微小なアーキングはオシロスコープなどの波形
観測装置により発見できる。
【0033】さらに本発明者らは、アーキングの波形を
詳細に観測することによって、負の電圧を印加した時点
から初期アーキングの発生し始めるまでの時間が、同じ
装置構成であればほぼ一定となることを見出した。
【0034】そこで、負の電圧が間欠的に印加される時
間が、10μ秒〜10m秒の範囲であり、かつ、該負の
電圧が印加されてからアーク放電が発生するまでの時間
と同等かそれよりも短い時間である電圧波形を使用する
ことにより、ターゲット表面上の微少な面積の絶縁物へ
の電荷の蓄積を最小限に抑え、アーキングを起こすより
も早くに波形を0ボルトに制御して、ターゲット近傍に
あるプラズマによって帯電を中和することにより初期の
アーキングの発生頻度を低く抑えられることを新規に見
出した。
【0035】以上述べたように、0ボルトに制御する時
間を特定化することによって、長時間にわたってスパッ
タリングを続けることができ、さらに、間欠的に印加さ
れる負の電圧の印加時間を特定化することによってその
効果が増大する。
【0036】この方式の波形を図1に示す。図1におい
て、上段は、電圧の波形、下段は電流の波形を示し、1
は間欠的に印加される負の電圧の印加時間(以下、オン
時間という)、2は0ボルトに制御される時間(以下、
オフ時間という)、3はアーキング発生時の波形を示し
ている。
【0037】この方式は、オン時間に比べて、オフ時間
が長くなった場合は、電力効率は悪くなるものの、オン
/オフするだけの単純な波形なので、電源部の容量に余
裕があれば装置構成上有利である。
【0038】一方、本発明者らは、オフ時間の一部に、
1μ秒〜20μ秒の範囲で正の電圧が印加される時間を
有する電圧波形を用いることにより、絶縁物への帯電の
中和をより効率良く、より短時間で行えることを見出し
た。
【0039】この波形と前記の特定のオン時間とを組み
合わせることにより電力効率の良い波形を得ることがで
きることを見出した。
【0040】さらに、アーク放電が消失する時間と同等
かそれよりも長い時間の電圧を0ボルトにする制御を、
アーク放電の直後だけに設定することで、より電力効率
が良く、そして長時間にわたってアーキングの発生を抑
止できることを見出した。
【0041】このときの波形を図2に示す。図2におい
て、上段は、電圧の波形、下段は電流の波形を示し、2
1はオン時間で、10μ秒〜10m秒の範囲であり、か
つ、電圧がオンになってから初期アーキングのアーク放
電が発生するまでの時間と同等かそれよりも短い時間で
ある。
【0042】22はオフ時間であり、この時間は、正の
電圧を印加している時間23と、その後0ボルトにする
時間26(オフ時間26)により決定される。なお、正
の電圧を印加している時間23の直前のオフ時間は短時
間であることが好ましいが、スイッチング素子の保護の
ために1μ秒〜2μ秒の一定の時間が設定される。
【0043】正の電圧を印加する時間23は、長時間で
ある必要はなく、実際に大型のターゲットに印加するた
めに充分な時間であればよく、約5μ秒〜20μ秒程度
であることが好ましい。また、正の電圧の値は、実際の
ターゲットに印加されるのに充分な電圧であればよく、
最大で200ボルト程度でよい。
【0044】オフ時間22は、オフ時間26を調整する
ことによって可変でき、プロセスの状況によって調節で
きることが望ましい。これは、もし検出回路に設定した
検出基準値よりも小さなごく微小なアーキングが発生し
たときでも、オフ時間26を調整し、そのごく微小なア
ーキングの消失時間と同等かそれよりも長い時間のオフ
時間22とすることで好ましい結果が得られるからであ
る。
【0045】25はアーキング発生時の波形を示してお
り、アーキング発生直後のオフ時間24はアーキングの
消失時間と同等かそれ以上の長さとなっている。
【0046】以上述べた各種条件は、スパッタリングす
る材料やカソード電極の構造により最適値が異なるので
可変できることが好ましい。
【0047】本発明の作用は次のとおりである。すなわ
ち、本発明においては、オン時間とオフ時間とが繰り返
される波形を用いることによって、ターゲット表面の電
位差をなくすことができアーキングの発生を防ぐため、
通常の直流スパッタリングよりも安定に放電を維持でき
る。
【0048】また、もしアーキングが発生しても充分に
長いオフ時間によって、アーキングを完全に消失させて
から負の電圧が印加されるため、アーキングの規模を小
さく維持できる。
【0049】さらに、初期のアーキングは、負の電圧が
印加された後ある程度の時間経過後に現れるので、負の
電圧が印加される時間が、10μ秒〜10m秒の範囲で
あり、かつ、負の電圧が印加されてから初期のアーク放
電が発生するまでの時間と同等かそれよりも短い時間で
ある波形を用いることにより、ターゲット表面の電位差
を中和し、アーキングの発生頻度と規模を小さくでき
る。
【0050】以上の作用により、初期のアーキングの発
生頻度と規模を小さく保つことができ、大きな電力でも
より長時間にわたり安定にスパッタリングを続けられ
る。
【0051】また、0ボルトにした直後、正の電圧を短
時間だけ印加しその後再度0ボルトにする図2の上段に
示されるような波形を使用することで、より効率よくタ
ーゲット表面の電圧差をなくすことができアーキングの
発生を防ぐため、通常の直流スパッタリングよりも安定
に放電を長時間にわたり維持できる。
【0052】さらに、アーキング25を検出して、その
直後だけ、オフ時間24をアーキングが消失する時間以
上とすることにより、初期のアーキングの発生頻度と規
模を小さく保つことができ、大きな電力でもより長時間
にわたって安定にスパッタリングを続けられる。
【0053】また、もし検出回路に予め設定した検出基
準値よりも小さなごく微小なアーキングが発生したとき
でも、オフ時間26を調整し、オフ時間22をこのごく
微小なアーキングの消失時間以上とすることによって、
より安定にスパッタリングを続けられる。
【0054】上記のスパッタリング方法を実現するため
の電源装置はいろいろな構成が考えられ、その一つの構
成を図3に示す。本発明における電源装置は、スパッタ
リング電力発生部と電力加工部とにわかれている構成が
最も好ましい。図3において、31はスパッタリング電
力発生部、32は電力加工部、33は真空室、34はカ
ソード電極、35はアノード電極、36は基板である。
【0055】本発明によれば、電力加工部32がスパッ
タリング電力発生部31よりもカソード電極34の近傍
に配置できるように構成でき、電力加工部32の出力端
とカソード電極34との間の電源ケーブルの長さを最短
にできる。これにより電源ケーブルの持つインダクタン
スを最少にでき、本発明における間欠的な直流電圧の波
形を歪みなくカソード電極34に印加できる。
【0056】次に、本発明の電力加工部32の構成を図
4に示す。主回路である第1のスイッチング回路41
と、正の電圧を印加するための第2のスイッチング回路
42と、それらを制御するスイッチング素子の駆動制御
回路(図示せず)と、スパッタリングの電流、電圧およ
び電力計測回路(図示せず)とで構成されている。
【0057】第1のスイッチング回路41は、スパッタ
リング電力発生部31の負極とカソード電極34間に直
列に挿入される。第1のスイッチング回路41は、半導
体スイッチング素子とそれを保護するコイルにより構成
され、スパッタリング電力を間欠的な電力とするように
作動する。オン/オフの入り切りの動作速度は、最高で
10μ秒(100kHz)である。
【0058】第2のスイッチング回路42は、半導体ス
イッチング素子とそれを保護するコイルにより構成さ
れ、スパッタリング電力発生部とは別にカソード電極3
4に任意の正の電圧を供給する直流電源43の電力をカ
ソード電極34に印加するように作動する。
【0059】第2のスイッチング回路42は、主回路で
ある第1のスイッチング回路41がオフになっていると
きのみオンする。オンになって正の電圧を印加する時間
は最大で約20μ秒程度でよい。
【0060】正の電圧を印加する電源43は、最大20
0ボルト程度で充分で任意に設定できることが好まし
い。
【0061】第1のスイッチング回路41の半導体スイ
ッチング素子がオフになった直後に、第2のスイッチン
グ回路42の半導体スイッチング素子が、最大で約20
μ秒オンになることによって、カソード電極34へ最大
で約200ボルト程度の正の電圧を印加できるため、ア
ーキングを抑止し電力効率の良い図2に示したような波
形を生成できる。
【0062】半導体スイッチング素子の駆動制御回路
は、第1のスイッチング回路をオンにする時間を5μ秒
以上、オフにする時間を5μ秒以上で制御可能であると
ともに、第1のスイッチング回路をオフに制御したとき
に、第2のスイッチング回路を第1のスイッチング回路
をオフにする時間以下で、かつ、1μ秒〜20μ秒の範
囲でオンに制御できる機能を有する。
【0063】なお、第1のスイッチング回路をオンにす
る時間を常時とし、オフにする時間をゼロに制御するこ
ともでき、該制御により、従来の直流スパッタリングの
実施も可能である。
【0064】スパッタリングの電流、電圧または電力を
計測する回路は、スパッタリングに有効な電流値、電圧
値または電力値を計測する機能と、計測された前記各値
と予め設定された各基準値との多寡を判定しアーク放電
を検出する機能とを有する。この場合、電流値、あるい
は、電流値と電圧値の多寡を判定することが特に有効で
ある。
【0065】スパッタリング電流値や電圧値の多寡(あ
るいは放電時のインピーダンス)を判定し、アーキング
が検出された時はスイッチング回路41の半導体スイッ
チング素子が、アーキング直後のみ、アーキングが消失
する時間以上の時間、オフに作動することによってアー
キングの規模を最小限に抑えてより安定に長時間にわた
ってスパッタリングを続けられる。
【0066】また、半導体スイッチング素子の駆動制御
回路は、アーキング発生直後のオフ時間24の時間を制
御する機能を有し、100μ秒〜10m秒の範囲で任意
に設定できる。
【0067】また、電力加工部の入力端子側に平滑回路
44を設けることも好ましい。これにより、電力発生部
31の出力端の電圧と電流の波形を実質的に直流とする
ことができる。
【0068】電力発生部には、通常、出力端の電圧、電
流または電力をフィードバックして一定に保つ機能があ
り、該機能により、制御上のハンチング等を生じ得る。
しかし、前記平滑回路44により、ハンチング等を防止
できるので通常の直流電源を使用できる。したがって、
スパッタリング電力発生部31としては、通常のスパッ
タ用直流電源であってもよく、このような構成であれば
現存するスパッタリング装置でも電力加工部32を追加
することで本発明を実施できる。
【0069】本発明のスパッタリング方法では、数1で
定義されるような一周期内の電力の時間平均値(以下、
電力の実効値という)を計測し表示することが好まし
い。
【0070】これによりどのようなタイプの波形でスパ
ッタリングを行っても成膜速度を通常の直流スパッタリ
ング時の電力と同様に管理できる。
【0071】また、電力の実効値をスパッタリング電力
発生部31にフィードバックして定電圧、定電流、ある
いは定電力制御を行うのも好ましい。
【0072】同一真空室内に複数のカソード電極を設置
し同時にスパッタリングを行う装置の場合、間欠的な電
力波形を各々のカソードに供給すると、うなり等の干渉
を生じることがあるため、電力加工部は互いに連携して
位相をずらして作動する機能が付加されることも好まし
い。
【0073】図8に本発明による装置の一例を示す。こ
の例では、同一真空室内に2つのカソード電極82a、
82bとアノード電極83a、83bを設置し、基板8
5へ同時にスパッタリングを行う。電力発生手段である
81aと81bは間欠的な電力を供給できるものであ
り、位相を任意にずらした波形の電圧の印加により、う
なり等のプラズマの干渉を防ぎ、安定なプラズマ84を
発生させうる。
【0074】さらに、図4に示したような本発明の電力
加工部と組み合わることにより、図1あるいは図2のよ
うな波形を発生させることができ、プロセスの条件にあ
わせて最適な波形を供給することもできる。
【0075】本発明のスパッタリング装置では、反応性
スパッタリングを行うような場合でもアーキング発生頻
度を低減でき、より多くの電力を安定してカソードに投
入でき、種々のスパッタリングプロセスにあわせて最適
な間欠的な電力を選択、供給できる。したがって、本発
明のスパッタリング装置は高い成膜能力を有する。
【0076】本発明のスパッタリング方法で形成された
酸化ケイ素を主成分とする薄膜は、従来の直流スパッタ
リングで得られる薄膜よりも高品質のものが得られる。
【0077】本発明のスパッタリング方法や装置により
形成された酸化ケイ素を主成分とする薄膜は、成膜中の
アーキングが発生しないため、パーティクルの付着等が
少なく高品質となる。
【0078】また、アーキング発生時の成膜条件のゆら
ぎがないため、均一で、ミクロな欠陥も少ない膜となる
ものと考えられる。
【0079】また、スパッタリングは一周期毎に間欠的
に行われているので、各周期毎に非常に薄い薄膜が間欠
的に基板上に形成される。すなわち、周期毎に基板上で
の酸化反応が完結しながら成膜されるため、欠陥の少な
い優れた膜質が得られるものと考えられる。
【0080】このようにして、マクロ的にもミクロ的に
も低欠陥の優れた酸化ケイ素を主成分とする薄膜が得ら
れるために、低温基板上に形成された場合でも高いアル
カリバリア性能を発現するものと考えられる。
【0081】本発明のスパッタリング方法や装置により
形成された窒化ケイ素を主成分とする薄膜は、従来の直
流スパッタリングで得られる薄膜よりも高品質のものが
得られる。
【0082】本発明のスパッタリング方法により形成さ
れた窒化ケイ素を主成分とする薄膜は、特に基体を加熱
することもなく、成膜中のアーキングが発生しないた
め、パーティクルの付着等が少なく高品質となる。
【0083】また、アーキング発生時の成膜条件のゆら
ぎがないため、均一で、ミクロな欠陥も少ない膜になる
ものと考えられる。
【0084】また、スパッタリングは一周期毎に間欠的
に行われているので、各周期毎に非常に薄い薄膜が間欠
的に基板上に形成される。すなわち、周期毎に基板上で
の窒化反応が完結しながら成膜されるため、欠陥の少な
い優れた膜質が得られるものと考えられる。
【0085】このようにして、マクロ的にもミクロ的に
も低欠陥の優れた窒化ケイ素を主成分とする薄膜が得ら
れるために、低温基板上に形成された場合でも高いアル
カリバリア性能を発現するものと考えられる。
【0086】また、窒化ケイ素膜中の窒素のケイ素に対
する原子数比(N/Si比)が、1.25〜1.36と
なるように、スパッタリングガスの窒素濃度の調整およ
び/またはケイ素ターゲットへの投入電力の調整を行う
ことにより、さらにアルカリバリア性の優れた窒化ケイ
素を製造できる。
【0087】本発明のスパッタリング方法による透明電
導薄膜の製膜方法は、負の電圧を間欠的に印加し、大電
力密度の電力を瞬間的に供給することによって、透明電
導膜を形成すると同時に、スパッタリング速度低下など
の原因となるターゲット表面での低級酸化物ノジュール
の発生、およびスパッタリング中の異常放電を抑制す
る、という生産性に優れた成膜方法である。
【0088】スパッタリングターゲットとしては、金属
アンチモンまたはアンチモンの化合物を含有する、錫ま
たは酸化錫を主成分とするスパッタリングターゲット
や、金属錫または錫の化合物を含有する、インジウムま
たは酸化インジウムを主成分とするスパッタリングター
ゲットや、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ
素およびケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種
の金属の単体または化合物を含有する、亜鉛または酸化
亜鉛を主成分とするスパッタリングターゲットなどが挙
げられる。
【0089】本発明の製造方法および装置に用いられる
スパッタリング電力の電圧波形としては、図1に示すよ
うな、負の電圧の印加時間が10μ秒〜10m秒の範囲
にあり、かつ無印加時間が10μ秒〜100m秒の範囲
にある電圧波形、あるいは図2に示すような、負の電圧
の印加時間が10μ秒〜10m秒の範囲にあり、かつ正
の電圧の印加時間と無印加時間との和が10μ秒〜10
0m秒の範囲にある電圧波形などが好ましい。
【0090】また、負の印加電圧の値(図9における−
N )の設定は、本発明の目的であるノジュール発生抑
制のために重要である。数5に示されるように、間欠的
に供給される電力の平均値WA が電力の実効値Wの2〜
10倍になるように負の印加電圧(−VN )を調整する
ことによって、アーキングを抑止するとともに、ターゲ
ット表面に発生する低級酸化物ノジュールの発生を効率
的に抑止できる。
【0091】なお、電力の実効値Wは数1のようにな
る。Tは周期を表す。これを図2のような波形の場合に
あてはめると、数2のようになる。一方、実際スパッタ
リングが起こっている(負の電圧が印加されている)時
間(図9においてはa1 )内での電力の平均値WA は、
数3のようになる。図2においては、時間a1 内での電
圧V(t)=(−VN )であるのでこれを代入すると数
4のようになる。
【0092】ノジュールを有効に除去するためには、数
5に示されるように、電力の平均値WA が電力の実効値
Wの2〜10倍になるようにすることが好ましく、これ
を図2のような波形の場合にあてはめると、数6のよう
になるので、数6を満足するように(−VN )、a1
(10μ秒≦a1 ≦10m秒)、b1 (10μ秒≦b1
≦100m秒)を調整すればよい。
【0093】特に、数7に示される間欠的な電力の電力
密度の平均値ωA が、2.5W/cm2 〜30W/cm
2 の範囲において良好な結果が得られる。
【0094】この場合、図9に示されるように正確な矩
形波である必要はなく、ターゲットの大きさ、状態、あ
るいは個々の装置によって、(−VN )、a1 、b1
最適化すればよい。
【0095】なお、図10および図11のような正電圧
の印加がある場合には、正の電圧の印加はスパッタリン
グには有効に働かないために、数1〜7の計算において
は、VP =0として考える。
【0096】該透明電導膜の成膜速度は、間欠的に供給
されるスパッタリング電力の実効値Wにより、容易に制
御できる。たとえば、従来の直流スパッタリング法で得
られる所望の成膜速度を本発明の方法で得ようとする場
合には、間欠的に供給される電力の実効値Wを直流電力
値と同じに合わせれば、所望の成膜速度が得られる。す
なわち、従来の直流スパッタリング法による成膜速度/
直流電力=本発明による成膜速度/電力の実効値Wとな
る等式がほぼ成り立つ。
【0097】このように、オフ時間により実効電力を通
常の直流スパッタの電力と揃えることにより成膜速度を
調整して基板に形成される膜質を同様に保ったまま長時
間にわたって安定にスパッタリングを行える。
【0098】
【数1】
【0099】
【数2】
【0100】
【数3】
【0101】
【数4】
【0102】
【数5】
【0103】
【数6】
【0104】
【数7】
【0105】
【実施例】
(実施例1)図5に本発明の装置の実施例を示す。51
は間欠的な負の直流電圧を発生する直流電源、52はタ
ーゲット材を装着したカソード電極、53はアノード電
極、54は被成膜処理をする基板、55はスパッタリン
グに有効なグロー放電を模式的に示したもの、56はタ
ーゲット表面上に発生する微少なアーキングを模式的に
示したもの、57はカソード電極とアノード電極間に発
生するアーキングを模式的に示したもの、である。
【0106】本発明において、間欠的な直流電圧を発生
する直流電源の出力は必ずしも矩形波でなくてもよく、
台形状でも三角状でも、正弦波状でも効果に差はない。
また、電源回路構成上、電源自体が発振して波形を形成
するのでもよいし、直流電源の出力を半導体スイッチン
グ素子で間欠的な波形に加工するのでも発明の効果は変
わらない。
【0107】図5の構成の装置において、寸法が10×
80cmのプレーナーマグネトロンカソードで、ターゲ
ット材としてホウ素をドープしたシリコンを用い、導入
ガスとしてArとO2 を1:1の比で混合したガスを用
い、放電中の圧力を3.0×10-3Torrとし、電力
実効値2kWでスパッタリングし、基板にホウ素をドー
プしたSiO2 の成膜を行った。従来の直流で放電した
ときは、約2分30秒後に急にアーキングが多発しスパ
ッタリングが続けられなくなった。
【0108】次に、間欠的な直流として、図1の上段に
示されるような波形において、負の電圧が印加されるオ
ン時間を100μ秒、オフ時間を40μ秒とした波形と
した以外は前記同様にスパッタリングしたところ、次第
にアーキングが発生し始めて、約30分後にアーキング
発生頻度が約60回/分となった。
【0109】次に、放電中の電流波形を観測し初期のア
ーキングの消失時間を計測したところ、160〜180
μ秒であった。
【0110】そこで、間欠的な直流として、オン時間を
100μ秒、オフ時間を200μ秒とした波形とした以
外は前記同様にスパッタリングしたところ、約60分後
にアーキング発生頻度が約60回/分となった。
【0111】このとき、初期のアーキングは負の電圧が
印加されてから90〜100μ秒後に発生することが多
かったので、間欠的な直流として、オン時間を80μ
秒、オフ時間を200μ秒とした波形とした以外は前記
と同様にスパッタリングしたところ、約60分後にアー
キング発生頻度が約30回/分となった。
【0112】以上4種類の実験におけるアーキングの発
生頻度を図6に示す。このときのアーキングの計測方法
においては、通常の電流波形の最大値よりも10%以上
大きい電流値をオシロスコープの検出レベルとし、検出
した回数を記録した。
【0113】(実施例2)図5の構成の装置において、
寸法が40×300cmのカソードでターゲット材とし
てアルミニウムをドープしたシリコンを用い、導入ガス
としてArとO2を2:10の比で混合したガスを用
い、放電中の圧力を2.0×10-3Torrとし、電力
実効値13kWでスパッタリングし、基板にアルミニウ
ムをドープしたSiO2 の成膜を行った。
【0114】従来の直流で放電したところ約35分後に
急にアーキングが多発しスパッタリングが続けられなく
なった。放電時の波形を観測したところ、初期アーキン
グの消失時間は、約400μ秒であった。
【0115】そこで、図1上段に示すような波形におい
て、オフ時間を500μ秒、オン時間を500μ秒の波
形とした以外は前記と同様にスパッタリングしたとこ
ろ、初期アーキングの発生までの時間はオンになってか
ら約220μ秒であった。
【0116】そこで、オン時間を220μ秒、オフ時間
を500μ秒の波形とした以外は前記同様にスパッタリ
ングしたところ、4時間経過後もアーキングの発生頻度
は20回/分以下であった。
【0117】従来の直流放電をした場合、および、オン
時間を220μ秒、オフ時間を500μ秒の波形を用い
た場合についてのアーキングの発生頻度を図7に示す。
アーキングの検出方法は実施例1と同様である。
【0118】(実施例3)真空室内に比抵抗1.2Ω・
cmのN型ケイ素(リンドープ単結晶)をターゲットと
してカソード上に設置し、ターゲットの対面にソーダラ
イムガラスを基板として配置した。真空室を1×10-5
Torrまで排気した後、放電ガスとしてArとO2
混合ガスを導入し、圧力が2×10-3Torrになるよ
うコンダクタンスを調整した。
【0119】次いでカソードに図2上段に示すような電
圧を印加した。ここで、オン時間21は初期のアーキン
グが発生しはじめる時間と同等の50μ秒とし、オフ時
間22は初期のアーキングの消失時間と同等の50μ秒
とし、そのうち正の電圧を印加する時間23は約12μ
秒とした。このとき、負の電圧は、これを印加している
状態の印加電力が500Wになるように定め、また、正
の電圧は100ボルトに保った。
【0120】基板温度は室温、スパッタリングガスのO
2 濃度を60%として放電を開始し、5分のプレ放電の
後シャッタを開き、膜厚が250Åとなるように成膜時
間を調整して、ソーダライムガラス基板上に酸化ケイ素
を主成分とする薄膜を形成した。
【0121】放電開始後120分を経過した時点で別の
ソーダライムガラス基板上に成膜したが、アーキングは
ほとんど観測されなかった。
【0122】(比較例1)図1上段に示すような波形の
間欠的な直流電圧をカソードに印加して成膜を行った以
外は、実施例3同様にスパッタリングを行った。ここ
で、オン時間は50μ秒、オフ時間は25μ秒とした。
【0123】成膜開始直後はアーキングがほとんど観察
されなかったが、時間経過とともにアーキングの発生が
見られ、成膜終了時にはターゲット表面で間断無く赤熱
したパーティクルの放出が観察された。
【0124】放電開始後120分の時点で別のソーダラ
イムガラス基板へ成膜した。このときアーキングは非常
に頻繁に起きていた。
【0125】(比較例2)13.56MHzの高周波電
圧をカソードに印加した以外は実施例3同様にスパッタ
リングを行った。
【0126】放電開始120分後に別のソーダライムガ
ラス基板上に成膜を行った。このときアーキングは全く
発生しなかった。
【0127】実施例3および比較例1〜2より得られた
コートガラスのコート面を、90℃の純水に24時間接
触させた後、この純水中に溶出したナトリウム原子の量
(μg/cm2 )を原子吸光法により測定した。結果を
表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】以上の実施例と比較例から明らかなよう
に、本発明によれば基板を加熱することなくアルカリバ
リア性の高い酸化ケイ素薄膜を長時間にわたり安定的に
成膜することが可能となる。また、直流スパッタリング
により成膜することから、大面積化や、高速化が容易と
なり、液晶用の透明導電性基板等への適用が工業生産規
模で可能となるなど、その効果は絶大である。
【0130】(実施例4)160mm×40mmの面積
を持った比抵抗1.2Ω・cmのN型ケイ素(リンドー
プ単結晶)をターゲットとして用い、これに図2上段に
示す波形の電圧を印加した。ここで、負の電圧は、これ
を印加している状態の印加電力が200Wになるように
定め、また、正の電圧は100ボルトに保った。その他
の条件は実施例3と同じである。
【0131】まず、ArとN2 との混合ガスからなるス
パッタリングガスのN2 濃度を40%とし放電を開始し
た。5分後にシャッタを開き室温の平面ソーダライムガ
ラス上に、窒化ケイ素を200Åの膜厚で成膜した。
【0132】次に放電開始後120分の時点で再びシャ
ッタを開き別のソーダライムガラス基板上に200Åの
窒化ケイ素膜を形成した。この間はアーキングは全く観
測されなかった。
【0133】(比較例3)直流電力を200Wになるよ
うに印加した以外は実施例4同様にスパッタリングを行
った。放電開始5分後の成膜時はアーキングは観測され
なかった。
【0134】放電開始後120分の時点で別のソーダラ
イムガラス基板上に成膜したとき、アーキングはかなり
頻繁に発生しておりターゲット表面から赤熱したパーテ
ィクルの放出が確認された。
【0135】(比較例4)直径6インチの比抵抗1.5
Ω・cmのN型ケイ素(リンドープ単結晶)をターゲッ
トとして用い、スパッタリングガスのN2 濃度を100
%とし、これに、13.56MHzの高周波を電力が3
00Wになるように印加した以外は、実施例4と同様に
スパッタリングを行った。
【0136】放電開始後120分の時点で別のソーダラ
イムガラス基板上に成膜したが、アーキングは全く観測
されなかった。
【0137】(比較例5)原料ガスのアンモニアガス/
シランガスの比が3、5、10、15のそれぞれの場合
について、CVD法により、温度を約600℃に保った
平面ソーダライムガラス上に、窒化ケイ素を200Åの
膜厚で成膜した。
【0138】実施例4および比較例3〜5により得られ
たコートガラスのコート面を90℃の純水に24時間接
触させた後、この純粋中に窒化ケイ素膜を通してソーダ
ライムガラスより拡散、溶出したナトリウム原子の量を
原子吸光法により求めた。また、この窒化ケイ素膜の窒
素のケイ素に対する原子数比(N/Si)をX線光電子
分光法により測定した。実施例4、比較例3、比較例4
についての結果を表2に、比較例5についての結果を表
3に示す。
【0139】
【表2】
【0140】
【表3】
【0141】以上の実施例と比較例の比較より、本発明
により成膜した窒化ケイ素は、これを通し拡散、溶出す
るナトリウム原子の量が低いことがわかる。また、高い
アルカリバリア性をもつ窒化ケイ素膜を、長時間にわた
り安定して成膜できることがわかる。また、基体を加熱
することなくアルカリバリア性の高い窒化ケイ素を成膜
でき、耐熱性の低い基体上へもアルカリバリア被覆を行
えることがわかる。
【0142】(実施例5)図5に示すような通常のマグ
ネトロンスパッタリング装置を用いて、錫を10重量%
含んだ酸化インジウムのターゲット52に、図1上段に
示す波形で、オン時間を100μ秒、オフ時間を400
μ秒とした波形の電圧を印加した。成膜基体54として
は、あらかじめ200℃に加熱したノンアルカリガラス
(旭硝子製ANガラス)を使用した。
【0143】まず、成膜室内を1×10-5Torr以下
に排気した後、O2 ガスを1体積%含んだArガスをガ
ス圧が3×10-3Torrになるように導入し、スパッ
タリング電力は、実効値で1.1kWになるように設定
した。
【0144】(実施例6)図2に示すような波形で、オ
ン時間21が100μ秒、負の印加電力値に対し10%
程度の振幅値を持つ正の電圧の印加時間23が10μ
秒、オフ時間26が390μ秒とした波形の電圧を印加
した以外は実施例5と同様にスパッタリングを行った。
【0145】(比較例6)通常のマグネトロンスパッタ
リング装置を用いて、通常の直流スパッタリング電源を
用いた以外は実施例5と同様にスパッタリングを行っ
た。
【0146】実施例5、実施例6、比較例6について、
23時間連続スパッタリング後のノジュールの発生状
況、異常放電の発生頻度とITO膜の特性を調査した。
【0147】
【表4】
【0148】表4からわかるように、23時間連続スパ
ッタリング後(6mm厚のターゲットの掘りきり)にお
いても、ノジュールの発生もごく微少で、スパッタリン
グ速度の低下もほとんど見られない。さらに異常放電の
発生頻度も比較例6に示される通常のスパッタリング法
に比較し、5分の1〜3分の1程度に低減する。ITO
膜の比抵抗は、通常のスパッタリングサンプルと同程度
のものが得られる。
【0149】比較例6においては、スパッタリング速度
の低下は約40%と著しく、比抵抗もスパッタリング初
期では、1.9×10-4Ω・cmであったものがスパッ
タリング速度の低下のために4×10-4Ω・cmまで悪
化する。またノジュールは、非常に強固で機械的な研磨
クリーニングが必要であった。
【0150】上述したように、本発明の透明電導膜の成
膜方法、および成膜装置を用いることによって、生産性
低下の要因となる成膜工程を停止させることなく、透明
電導膜を形成すると同時にスパッタリング速度低下など
の原因となるターゲット表面上でのノジュールの発生を
抑制できる。同時に、透明電導膜の欠陥の原因となる異
常放電を抑制できる。また、この異常放電抑制効果によ
り、従来の直流スパッタリング法に比べ、大電力が投入
可能となり、高い成膜速度が得られる。
【0151】さらに、本発明の電力加工部を用いれば、
直流スパッタリング用電源に使用されている異常放電防
止回路を付加しなくても異常放電が抑制できる。また、
間欠的な投入電力の実効値を制御することにより、従来
の直流スパッタリング法と同様に成膜条件を管理でき、
従来と同等の特性を有する透明電導膜が得られる。
【0152】
【発明の効果】本発明により、ターゲット表面の電位差
をなくすことができアーキングの発生を防ぐため、通常
の直流スパッタリングよりも安定に放電を維持できる。
【0153】さらに、初期のアーキングの発生頻度と規
模を小さく保つことができ、大きな電力でもより長時間
にわたって安定にスパッタリングを続けることができ、
電力効率も良い。
【0154】本発明によるスパッタリング装置は、反応
性スパッタを行うような場合でもアーキング発生頻度を
低減でき、より多くの電力を安定してカソードに投入で
きるので、高い成膜能力を有する。
【0155】本発明の電力加工部は、簡易な構成である
ため現存するスパッタリング装置に簡単に適用でき、パ
ルス状の間欠的な直流電力によるスパッタリングを実現
できる。
【0156】本発明の電力加工部は、間欠的な電圧波形
を、装置の大きさ、材料、投入電力、初期アーキングの
規模に応じて容易に最適化できるものである。
【0157】本発明の酸化ケイ素を主成分とする薄膜の
製膜方法では、成膜中のアーキングが発生しないため、
パーティクルの付着等が少なく高品質なものが得られ
る。
【0158】本発明の窒化ケイ素を主成分とする薄膜の
製膜方法では、成膜中のアーキングが発生しないため、
パーティクルの付着等が少なく高品質なものが得られ
る。
【0159】本発明のITO膜の製膜方法によれば、通
常の直流スパッタリングで得られる膜質と成膜速度と同
等でありながら、アーキングを抑止し、ターゲット表面
に発生するノジュールの発生を抑止できるので、長時間
にわたって安定に生産を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る間欠的な電圧と電流の波形図。
【図2】本発明に係る間欠的な電圧と電流の波形図。
【図3】本発明に係る装置の概略図。
【図4】本発明に係る電力加工部の回路構成図。
【図5】本発明に係る装置の概略図。
【図6】本発明の実施例1におけるアーキング発生頻度
の経時変化を示すグラフ。
【図7】本発明の実施例2におけるアーキング発生頻度
の経時変化を示すグラフ。
【図8】本発明に係る装置の概略図。
【図9】本発明に係る間欠的な電圧の波形図。
【図10】本発明に係る間欠的な電圧の波形図。
【図11】本発明に係る間欠的な電圧の波形図。
【符号の説明】
1、21:間欠的に印加される負の電圧の印加時間 2、22、24、26:0ボルトに制御される時間 3:アーキング発生時の波形 23:正の電圧を印加する時間 31:スパッタリング電力発生部 32:電力加工部 33:真空室 34:カソード電極 35:アノード電極 36:基板 41:第1のスイッチング回路 42:第2のスイッチング回路 43:スパッタリング電力発生部31とは別の直流電源 51:間欠的な負の直流電圧を発生する直流電源 52:ターゲット材を装着したカソード電極 53:アノード電極 54:被成膜処理をする基板 55:スパッタリングに有効なグロー放電 56:ターゲット表面上に発生する微少なアーキング 57:カソード電極とアノード電極間に発生するアーキ
ング 81a、81b:電力発生手段 82a、82b:カソード電極 83a、83b:アノード電極 84:プラズマ 85:基板

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】真空室内に配置したカソードに、負の電圧
    が一定の周期で間欠的に印加されるスパッタリング方法
    において、負の電圧が印加されない時間の少なくとも一
    部の時間は、電圧が0ボルトに制御される時間であっ
    て、10μ秒〜10m秒の範囲であり、かつ、1回のア
    ーク放電の発生から消失するまでに要する時間と同等か
    それよりも長い時間であることを特徴とするスパッタリ
    ング方法。
  2. 【請求項2】前記負の電圧が間欠的に印加される時間
    は、10μ秒〜10m秒の範囲であり、かつ、該負の電
    圧が印加されてからアーク放電が発生するまでの時間と
    同等かそれよりも短い時間であることを特徴とする請求
    項1のスパッタリング方法。
  3. 【請求項3】前記電圧が0ボルトに制御される時間の一
    部には、1μ秒〜20μ秒の範囲で正の電圧が印加され
    る時間を有することを特徴とする請求項1または2のス
    パッタリング方法。
  4. 【請求項4】前記電圧が0ボルトに制御される時間は、
    アーク放電の直後に設けられることを特徴とする請求項
    1〜3いずれか1項のスパッタリング方法。
  5. 【請求項5】真空室内に配置したカソードと、スパッタ
    リング電力発生部と、電力加工部とを有し、該カソード
    に、負の電圧が間欠的に印加されるスパッタリング装置
    において、該電力加工部は、負の電圧が印加されない時
    間の少なくとも一部の時間が、電圧が0ボルトに制御さ
    れる時間であって、10μ秒〜10m秒の範囲であり、
    かつ、1回のアーク放電の発生から消失するまでに要す
    る時間と同等かそれよりも長い時間である電圧波形とす
    る電力加工部であることを特徴とするスパッタリング装
    置。
  6. 【請求項6】前記電力加工部は、前記スパッタリング電
    力発生部よりもカソード近傍へ配置されることを特徴と
    する請求項5のスパッタリング装置。
  7. 【請求項7】前記カソード、スパッタリング電力発生部
    および電力加工部はそれぞれ複数であり、該複数の電力
    加工部は各々同期して、互いに位相がずれた波形を与え
    るものであることを特徴とする請求項5または6のスパ
    ッタリング装置。
  8. 【請求項8】カソードに負の電圧が間欠的に印加される
    スパッタリング装置で用いられる電力加工部において、 電力加工部は、第1のスイッチング回路と、第2のスイ
    ッチング回路と、スイッチング素子の駆動制御回路と、
    スパッタリングの電流、電圧または電力を計測する回路
    とを有し、 第1および第2のスイッチング回路はそれぞれ半導体ス
    イッチング素子および該素子の保護回路とからなり、 第1のスイッチング回路は、スパッタリング電力発生部
    の負極とカソード電極との間に直列に挿入され、 第2のスイッチング回路は、スパッタリング電力発生部
    とは別にカソード電極に正の電圧を供給する直流電源と
    カソード電極との間に直列に挿入され、 半導体スイッチング素子の駆動制御回路は、第1のスイ
    ッチング回路をオンにする時間を5μ秒以上で、オフに
    する時間を5μ秒以上で制御可能であるとともに、第1
    のスイッチング回路をオフに制御したときに、第2のス
    イッチング回路を第1のスイッチング回路をオフにする
    時間以下で、かつ、1μ秒〜20μ秒の範囲でオンに制
    御できる機能を有し、 スパッタリングの電流、電圧または電力を計測する回路
    は、スパッタリングに有効な電流値、電圧値または電力
    値を計測する機能と、計測された前記各値と予め設定さ
    れた各基準値との多寡を判定しアーク放電を検出する機
    能とを有することを特徴とする電力加工部。
  9. 【請求項9】前記電力加工部は、スパッタリング電力発
    生部の出力端子での電圧波形を実質的に直流電圧とする
    平滑回路が設けられていることを特徴とする請求項8の
    電力加工部。
  10. 【請求項10】真空室内に配置したケイ素を主成分とす
    るターゲットに、負の電圧を一定の周期で間欠的に印加
    し、酸素および/または不活性ガスをスパッタリングガ
    スとして用いてスパッタリングする酸化ケイ素を主成分
    とする薄膜の製膜方法において、負の電圧が印加されな
    い時間の少なくとも一部の時間は、電圧が0ボルトに制
    御される時間であって、10μ秒〜10m秒の範囲であ
    り、かつ、1回のアーク放電の発生から消失するまでに
    要する時間と同等かそれよりも長い時間であることを特
    徴とする製膜方法。
  11. 【請求項11】真空室内に配置したケイ素を主成分とす
    るターゲットに、負の電圧を一定の周期で間欠的に印加
    し、窒素および/または不活性ガスをスパッタリングガ
    スとして用いてスパッタリングする窒化ケイ素を主成分
    とする薄膜の製膜方法において、電圧が0ボルトに制御
    される時間は、10μ秒〜10m秒の範囲であり、か
    つ、1回のアーク放電の発生から消失するまでに要する
    時間と同等かそれよりも長い時間であることを特徴とす
    る製膜方法。
  12. 【請求項12】前記窒化ケイ素膜中の窒素のケイ素に対
    する原子数比が、1.25〜1.36であることを特徴
    とする請求項11の製膜方法。
  13. 【請求項13】真空室内に配置した透明電導膜を形成し
    得るスパッタリングターゲットを用いて、負の電圧を一
    定の周期で間欠的に印加し、酸素および/または不活性
    ガスをスパッタリングガスとして用いてスパッタリング
    する酸化物を主成分とする透明電導薄膜の製膜方法にお
    いて、電圧が0ボルトに制御される時間は、10μ秒〜
    10m秒の範囲であり、かつ、1回のアーク放電の発生
    から消失するまでに要する時間と同等かそれよりも長い
    時間であることを特徴とする製膜方法。
  14. 【請求項14】前記スパッタリングターゲットが、錫ま
    たは酸化錫を主成分とするスパッタリングターゲットで
    あることを特徴とする請求項13の製造方法。
  15. 【請求項15】前記スパッタリングターゲットが、金属
    アンチモンまたはアンチモンの化合物を含有することを
    特徴とする請求項14の製造方法。
  16. 【請求項16】前記スパッタリングターゲットが、イン
    ジウムまたは酸化インジウムを主成分とするスパッタリ
    ングターゲットであることを特徴とする請求項13の製
    造方法。
  17. 【請求項17】前記スパッタリングターゲットが、金属
    錫または錫の化合物を含有することを特徴とする請求項
    16の製造方法。
  18. 【請求項18】前記スパッタリングターゲットが、亜鉛
    または酸化亜鉛を主成分とするスパッタリングターゲッ
    トであることを特徴とする請求項13の製造方法。
  19. 【請求項19】前記スパッタリングターゲットが、アル
    ミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素およびケイ素
    からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の単体ま
    たは化合物を含有することを特徴とする請求項18の製
    造方法。
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