【発明の詳細な説明】差動機構
本発明は差動機構に関し、特に自動車に使用するためのものではあるが、これ
に限定される訳ではない。
車両に一般的に用いられている差動機構は、太陽−遊星歯車形式のものである
が、その周知の欠点は、車輪の一つが泥や氷のようなスリップしやすい路面上に
あり、別の車輪が駆動をもたらしうる堅固な路面上にある場合に、最初の方の車
輪が差動機構に伝達される利用可能な動力の全てを受けて、スピンするだけにな
ってしまうということである。
この問題を克服するために、片方の車輪が他方に対して相対的にスピンするこ
とのできる範囲を限定する、リミテッドスリップ差動機構か提案されているが、
こうした差動機構はより複雑であり、従って生産するのに非常にコストがかかる
。
本出願人の欧州特許出願EP-A-0326289においては、相互に傾斜した表面の対か
らなる起伏のある形状の単一の円錐台形のカム表面を各々に有する、軸の周囲で
回転可能な二つの出力カム部材であって、これらのカム部材の一つが有する傾斜
表面対の数が他方のカム部材とは異なるものと、出力カム部材のカム表面に係合
する端面を有する複数のカム従動子とからなる代替的な差動機構が提案されてお
り、この構成では、出力カム部材相互の逆方向への回転がカム従動子の軸方向へ
の摺動を生ずるようになっており、また従動子を摺動可能
に支持する入力部材が設けられて、従動子を出力カム部材に対して周方向へと動
かすようになっている。
上記の差動機構に伴う一つの問題は、二つのカム部材上の傾斜表面の数が異な
ることから、一方へとコーナリングを行う場合に他方へとコーナリングを行う場
合に比して差動機構のトルク比が異なってしまうことである。
本発明によれば、相互に傾斜した表面の対からなる起伏のある波形の単一の環
状のカム表面を各々に有する、軸の周囲で回転可能な二つの出力カム部材であっ
て、傾斜表面の対の数が同じであるものと、出力カム部材のカム表面に係合する
端面を有する複数のカム従動子とからなり、出力カム部材相互の逆方向への回転
がカム従動子の軸方向への摺動を生ずるように構成され、また従動子を摺動可能
に支持する入力部材が設けられて、従動子を出力カム部材に対して周方向へと動
かすようになっているものにおいて、カム部材が同じ数の傾斜表面対を有し、少
なくとも二つの異なる形式のカム従動子が設けられ、カム従動子の数が傾斜表面
対の数の倍数であり、この倍数が1よりも大きい整数であることを特徴とする差
動機構が提供される。
好ましくは整数は2であり、カム従動子の数は4の倍数であり、4つのカム従
動子又は各々のカム従動子のグループはカム従動子の二つの異なる対からなり、
各々の対をなす二つのカム従動子は相互に隣接している。
二つよりも多い異なる形式のカム従動子がある場合には、同じ形
式の従動子がそれぞれのカム表面の異なる相対位置に接触するように、各々の対
の従動子は他の形式の従動子を間に介在させることができる。これは、従動子の
各対の部材の間に偶数個の他の従動子を配置することによって達成される。例え
ば三つ又は五つの形式の従動子については、これらを対にではなしに、順次にア
センブルすることかできる。この場合、従動子の数の合計は、異なる形式の従動
子の数の二倍の倍数になる。
好ましくは、異なる形式の従動子が二つある場合、表面対の各々を構成する相
互に傾斜した表面は対称的に配置され、カム従動子のある一対をなすカム従動子
は、カム従動子を平面で見て、カム従動子の他の対と鏡像をなす。
或いはまた、表面対の各々を構成する相互に傾斜した表面は非対称に配置され
、カム従動子のある一対をなすカム従動子は平面で見て、カム従動子の他の対を
反転したものとなる。
好ましくは、カム従動子は実質的に連続した環状列を形成し、隣接するカム従
動子は密に近接される。
好ましくは、カム従動子は相互に接触せず、間には作動クリアランスが存在す
る。
さて本発明による差動機構について、添付図面を参照して例示的に説明する。
添付図面において、
図1は本発明による差動機構の、出力カム部材に沿って取った断面図であり、
図2は図1の差動機構を部分的に破断して示す端面図であり、
図3a−dは対称的なカム表面を、それらの間にありカム表面に沿って異なる
相対変位位置にあるカム従動子と共に示す展開図であり、
図4は従動子の概略的な端面図であり、
図5は図1のV−V線に沿う断面図であり、
図6は図1の差動機構の展開斜視図であり、
図7は非対称なカム表面を、それらの間で図示の位置にあるカム従動子と共に
示す展開図であり、
図8は図7の部分拡大図であり、
図9a−dはグループ当たり3対のカム従動子を有する対称的なカム表面の展
開図であり、
図10は図1の差動機構のポンプスクープの端壁を示す図であり、
図11及び12は図1の差動機構に使用可能なオイルポンプ構成の詳細を示し、
図13及び14は図1の差動機構に使用可能な差動ロック構成の詳細を示し、
図15は図13及び図14のロック構成に関連して使用可能な差動ロックアクチュエ
ータの詳細を示し、
図16は代替的な差動ロック構成を示し、及び
図17及び18は、特に4輪駆動車のインターアクスル差動機構に適した、本発明
による差動機構の代替形態の詳細を示す。
図1から3において、差動機構10は部分的に油が封入された周囲のケーシング
(図示せず)に、軸受け(やはり図示せず)によって
設けられている。この差動機構10は、外側表面上にギア12を有するハウジング11
からなり、このギアは既知のようにして、ピニオン(図示せず)から駆動力を受
け取る。ギア12は端壁13、14に対して駆動力を伝達可能なように結合されており
、これらの端壁はハウジング11と一体に形成されてもよく、或いは別体に形成さ
れて、ハウジング11へのネジ込み後にその位置で係止することや、ピーニング、
溶接、周方向に間隔を置いたボルトなど、何らかの適当な手段によってハウジン
グ11に保持させることもできる。ここに開示された構造においては、ハウジング
11の領域11aが端壁13及び14の切除部分13a及び14aへと変形されており、ハウ
ジング11と端壁とを一緒にロックするようになっている。
二つの出力カム部材16、17は、その中心にスプライン15を有し、端壁13、14の
ボア18を通って延びる出力シャフト(図示せず)を駆動する。ボア18の各々は、
その内側表面上に螺旋状の給油溝19を有し、使用時に差動機構に潤滑剤を給送し
又は受け取るようになっている。差動機構に給油し潤滑を行う他の手段について
は後述する。
出力カム部材16、17は、軸受け(図示せず)内で端壁13及び14の内部において
、軸Xの周りで回転可能なように支持することができる。代替的には、図示の如
くそのような軸受けを使用しなくとも済むが、これは、そうした設計でも部材16
、17に対して相当の半径方向のミスアライメント力を及ぼすことがないからであ
る。出力カム部材16、17の各々は、起伏のあるカム表面22、23をそれぞれ表面に
有し、これらは起伏のある円錐台形表面からなる。カム表面22は、
数対の相互に傾斜した螺旋表面24、25から構成される、図3に詳細を示す環状の
ジクザク表面からなる。カム表面23もまた、図3から明らかなように、表面22で
用いられたのと同じ数の対の相互に傾斜した螺旋表面26、27を有する環状のジグ
ザグ表面からなる。
図1に示されているように、起伏のあるカム表面22及び23は軸X-Xに対して角
度Pで傾斜しており、これによって、各々のカム表面は相手方に向かって半径方
向内方へと収束する。
カム従動子28が、カム表面22、23の間に配置されている。各々のカム従動子は
支柱状の細長い形状を有し、相互に傾斜した二組の端面29、30、32及び32からな
り、これらは側面34、35で終端している(図3参照)。端面29、30の間の傾斜角
度Q(図3c参照)は、相互に傾斜した表面24、25の間の傾斜角度に対応してい
る。端面32、33の間の傾斜角度は、相互に傾斜した表面26、27の間の傾斜角度に
対応しており、また角度Qに等しい。図1から明らかなように、端面29、30、32
及び33はまた角度Pで傾斜している。端の方から見ると、各々のカム従動子は弧
状であり、これによって従動子を全体として図2に見られるように環状列でアセ
ンブルすることが可能となる。各々のカム従動子は実質的に360/nf度の弧状範
囲を有し、ここでnfはカム従動子の数である。好ましくは、この弧状範囲をより
小さくして、従動子の間にクリアランス間隙28'(図4参照)を残し、かくして
隣接する従動子間の当接による駆動を防止することができる。
各々のカム従動子は、相互に傾斜した側面37、38を有する細長い
駆動ドッグ36を含む(図4)。この駆動ドッグ36は、入力ハウジング11上に形成
された円筒形の駆動入力要素40の内周に形成された、相補形状の溝39の中に、僅
かなクリアランス36aでもって配置されている。このクリアランス36aはちょう
ど、各々のカム従動子28の弧状の外側周縁(28aで示す)が、駆動入力要素40の
内側周面(40a)に当接することを確実にするのに十分なものである。溝39は、
少なくとも従動子28の軸方向端部に隣接して、そして好ましくは図示のように実
質的にそれらの全長にわたって、従動子28に対する支持をもたらす。
図2及び4から明らかなように、カム従動子28のアセンブリは好ましくは、隣
接する従動子の側面34、35を、それらが相互に係合するか或いは密に隣接して置
かれるようにして配置する。このようにして、カム従動子が利用可能な周方向空
間の最大限の利用が図られ、従動子は全体として、図2に見られるように、実質
的に連続したコンパクトな環状列を形成する。
図3において最も良く看取されるように、カム表面22、23は同一であり、対称
的な傾斜表面の対24、25及び26、27をそれぞれに有し、これらは両方とも相互に
角度Qで傾斜している。駆動表面24、26は周方向に長さL1を有し、これはオーバ
ーラン表面25、27の周方向長さL2に等しい。出力カム部材16及び17は、それらの
等しく傾斜した表面24、25及び26、27と共に、順方向又は逆方向駆動方向の両者
において、何れの方向にコーナリングするについても、等しいバイアス又はトル
ク比をもたらす。
カム従動子28が、起伏のあるカム表面22、23上の向かい合っている山と谷の間
のギャップを通って、駆動力をもたらすことなしに往復動することができないよ
うにするためには、異なるカム従動子を提供することが必要である。
これらの異なる形式のカム従動子は、従動子の数が単一波長の倍数となるよう
に配置される。例えばこの場合には、波長当たり二つのカム従動子がある(一波
長は相互に傾斜した表面24、25及び26、27の各対による差し渡し距離である)。
好ましくは、カム従動子28は4つの従動子28A、28B、28C、28Dのグループ
で設けられる。これらの従動子28は基準線、この場合には各々の従動子の中央線
からずれた頂点を有する。
従動子28A及び28Dは同一であり、また従動子28B及び28Cも同一であり、従
動子28Bは隣接する従動子28Aの鏡像であり(平面図においてのみ)、従動子28
Cは隣接する従動子28Dの鏡像である。従動子28A'及び28B'は次のグループにあ
る。従ってここにおいては二つの形式の従動子があり、異なる形式の認識を助け
るために、一つの形式の従動子は駆動ドッグ36に36aで示すように溝が設けられ
ている(図5及び6参照)。
図3aにおいて、従動子28A及び28Cは駆動力をもたらし、他方従動子28B及
び28Dは逆方向の負荷を取る。
駆動入力が駆動入力ハウジング11を介して加えられた場合、この差動機構を有
している車両が直線走行していると仮定すれば、カム従動子はカム表面22、23に
対して負荷を加え、出力カム部材16、17
を等速度で回転させる。図3から明らかなように、駆動負荷がY方向に加えられ
ていると、最も左側にあるカム従動子28Aの端面29、32が表面24、26と駆動係合
することになり、従動子は一つおきに、同様にしてカム表面22、23と駆動係合す
る。しかしながら、間にあるカム従動子の表面は、上述のようにカム表面と非駆
動係合状態にある。
従動子28によって傾斜表面24、26に対して加えられる駆動力は、図4に示され
ているように反力Fを生ずる。カム従動子の端面が角度Pで傾斜していることに
より力の作用が生ずるが、これは角度Pを有するカム表面22についてだけ示して
ある。力Fの印加は、外側方向への力Gを生成し、それによって好ましくは駆動
ドッグ36と隣接する従動子28の外側周縁部との間の角C1を通って、又はこれに隣
接して、エッジEの半径方向外方へと通る合力Rを生ずる。こうして、カム従動
子に対する負荷の印加は、駆動入力要素40の角C2に対してその従動子をしっかり
と楔状に押し付けるようになり、かくして従動子がそのエッジEの周りで傾動す
ることが回避される。
本発明の差動機構の動作は、カム表面22に対するカム表面23のY方向における
漸進的な移動を示した図3a−3dを参照することによって理解することができ
る。
カム表面22、23の相対的な動きは、カム従動子28の軸方向の移動を生じ、図3
cにおいて見られるように、従動子28B及び28Cはカム表面23及び22のそれぞれ
のカム頂点上に位置し、駆動力をもたらしていない。従動子28Aは駆動力をもた
らし、これに対して従動子
28Dはオーバーラン又は逆進負荷を取るために利用可能である。
図3dにおけるように山と谷とが相互に向かい合っている場合、ずれをもって
設計された従動子であることから、従動子が通り抜けてしまうことは不可能であ
る。各々の対にある従動子28A、28Bが駆動をもたらし、他方従動子28C及び28
Dは逆進負荷を取ることができる。図3a−3dは、半波長分の漸進的な相対移
動を示している。この動きの他の半分も同様のものである。
あらゆる状況において、カム従動子は駆動負荷を取るが、負荷担持のために利
用可能な面積は一定ではなく、最小限の利用可能な負荷担持面積は、カム従動子
の先端の中央線からのずれに依存している。
従動子の駆動表面29及び32(傾斜表面24及び26のそれぞれに係合する)の長さ
(従って面積)は、傾斜カム表面25及び27のそれぞれに係合する従動子のオーバ
ーラン表面30及び33の長さに関して比a/b及びc/dにある。典型的には、a
/bの比は約2:1であり、比c/dは約1:2であり、ここでa=d及びb=
cである。
ここでは2カム波長について4つのカム従動子が設けられており、半径方向に
平衡のとれた設計については、各々の出力カム部材上に少なくとも4カム波長が
設けられる。
8又は12のカム従動子を用いた設計が好ましい。
従動子28とカムとの間にはかなりの量の摩擦があるから、一方のカムがスリッ
プしやすい路面上でスピンしているホイールを駆動するよう結合されている場合
であってさえも、トルクは他方のカムに
対して伝達される。これは従来の差動装置に比べて非常に有利である。一方のホ
イールが他方よりも速く動くことは、入力トルクが加えられ軸方向に移動するカ
ム従動子により印加される負荷に基づき、組み合わせられているカムを介してそ
のホイールへと加えられる全トルクの低減につながる。この場合には、他方のカ
ムに印加される全トルクが増大し、これら全トルクの間の比率は、角度Qの部分
QFの値に依存している(即ち駆動に際してのトルクバイアス比は駆動表面24、26
の傾斜(角度QF)に依存し、オーバーランに際してのトルクバイアス比はオーバ
ーラン表面25、27の傾斜(角度Q−QF)に依存している。角度QFが大きくなれば
、従動子によりカム表面へと加えられる軸方向負荷に基づき、駆動に際してのカ
ム表面における摩擦はより大きくなる。角度QFは通常、カム表面22、23がカム従
動子を軸方向に駆動することができ、カム従動子の軸方向の移動でも対面するカ
ムを依然として駆動可能なように選択される。
出力カム部材16及び17と端壁13及び14の間にはニードル軸受け51及び53が配置
されており、必要であればカム23の所要の軸方向位置を設定するためにシム52に
よって支持されている。
従動子28によりカム16、17へと印加される軸方向のスラストは、軸受け51及び
53を通じて端壁13及び14へと伝達される。各々のシム52に対して作用するように
皿座金54が配置され、従動子28をカム表面22、23としっかりと係合するように付
勢している。従動子をカム表面に対して付勢させることはまた、傾斜角度Pの結
果として従動子28に対して半径方向外側への力Zを生じさせ、これがさらにバッ
クラッシを低減させるのに役立つ。
上述したニードル軸受け51及び53は、平坦な軸受けによって置き換えることが
できる。何れかの方向へとコーナリングを行う際に等しいトルクバイアスが必要
な場合、軸受け51及び53は同じ形式のものとなる。
図7及び図8は、カム122及び123が非対称である代替的なカム設計を示してい
る。カム122、123は、非対称な傾斜表面対124、125、126、127をそれぞれ有して
いる。非対称なカムは、より多くの駆動面積及び/又は異なる駆動及びオーバー
ラン特性をもたらすために使用されうる。
図7において、従動子128A、128B、128C、128D、128A'、128B'が平面図で
示されており、従動子128A、128D及び128A'は同一であり、また従動子128B、
128C及び128B'も同一である。従動子128A、128D及び128A'は平面図において
のみ、従動子128B、128C及び128B'を反転したものとなっている。
この特定の例において、カム122及び123の非対称性は、駆動表面124、126がオ
ーバーラン表面125、127に対して4:3の比となるように選ばれている。非対称
性の比の度合いが選ばれたならば、従動子の設計が図8に示すようにして決定さ
れる。
一対の隣接するカム従動子128B、128Cについて、仮想基準線R1、R2が、基準
線R1、R2の各々がそれぞれの従動子の先端から距離xとなるように引かれ、ここ
でxはカム駆動表面の長さ2xの半分に関する。(これはカム従動子128が実質
的に連続的な環状列を形成する
場合にのみ成り立つ)。
代替的に、従動子が間を隔ててはいるがそれらの間のピッチが半波長分である
場合には、基準線の位置は式x/x+yによって与えられ、ここで2xは上記と
同じくカムの駆動表面の周方向長さであり、2yはカムのオーバーラン表面の周
方向長さである。
従って、基準線R1及びR2は従動子の先端からの距離xであり、従動子の後
端からの距離yである。長さx:yは図示の例では4:3の比にある。
この場合、従動子の頂点は距離「w」だけずれているが、この距離は二つのカ
ムの相対回転に際して駆動及び逆進における接触領域の摩耗を最小限とするよう
に選ばれる。図示の例では、wは典型的には従動子の周方向長さ(x+y)の約
20%である。
図9は6つの従動子228A−F及び228A'−F'のグループでもって配置されたカ
ム従動子を有する対称的な一対のカム222、223を示しており、従動子のグループ
の各々は三対の従動子を含み、各々の対をなす部材は周方向に隣接している。こ
れらの従動子は図3を参照して説明した従動子と同様のものであるが、二対の対
称的な従動子228E、228F及び228E'、228F'が、ずれの程度の異なる従動子228
A−228D及び228A'−228D'の間に介在されている点が異なっている。
さらに別の代替構成においては、図9のカム従動子は次のような周方向に隣接
した順序、即ち228A、228C、228E、228B、228D、228F、228A'、228C'、22
8E'、228B'、228D'、228F'でもって配列することができる。この順列においては
、各々の対をなす部材は周方
向に隣接してはいない。
上述した差動機構の設計は、差動機構の内部を潤滑するための手段を取り入れ
ている。一組の油通路64が、カム表面22及び23を、各々の出力カム部材の背後の
ギャラリー65と接続している。図6から看取されうるように、これらの通路は相
互に傾斜したカム表面対24、25及び26、27の間に形成された谷間へと開口してい
る。
端壁14にはその外側表面上に、一体型スクープの形態の油ポンプ手段70が設け
られており、これらのスクープは開口72(図1参照)を介してギャラリー65へと
つながる角度のついた通路71(図10参照)を介して、ギャラリー65へと接続され
ている。
端壁14が回転すると、スクープ70は周囲のケーシング内から通路71を下って、
出力部材14の背後にあるギャラリー65内へと油を送り込む。次いで油は出力カム
部材17にある通路64を通って流れ、カム表面22、23の間に現れ、そこから半径方
向外方へと流れて出力部材16及び17の外側領域に至り、また部材16の通路64を通
って出力カム部材16の背後のギャラリー65内に至る。油はまた、軸受け51及び53
を介して半径方向外方へと流れる。これは差動機構の全ての自由空間を充填し、
差動機構から漏出する全ての油、例えばカム表面22と23の間を半径方向内方へと
流れ、次いで螺旋溝19を介して軸方向外方へと流れる油は、スクープ70により差
動機構内部へと送り込まれるさらなる油によって補充される。
図11及び12は、別の代替潤滑構成を示しており、そこにおいては外部のスクー
プ70が、端壁を取り囲み且つ端壁から駆動されるポン
プ80によって置き換えられている。
ポンプ80は、内側部分81と外側部分82を有する回転不能なハウジングと、端壁
14を囲む中央の円筒状バンド83とこのバンドから半径方向外方へと周方向に間隔
を空けた位置から延伸するベーン84とを有するインペラからなる。このインペラ
はゴム又はプラスチック材料から成形されており、ベーン84は可撓性である。
図12から看取され得るように、周囲のケーシング内部から油を受け取るピック
アップ管85がポンプ80に対する吸い込みを提供し、またそれか差動機構のケーシ
ングの非回転部分と接続されていることにより、ポンプハウジングが回転しよう
とする動きに対して抵抗する。
ポンプハウジングからの吐き出しポート86は、環状の収集リザーバ89と接続さ
れており、このリザーバからは通路88が延びていてギャラリー65に開口し、前述
の構造におけるようにして通路64その他に給送を行う。吸い込み管85と吐き出し
ポート86との間において、ポンプの断面積は87で示すように低減されており、容
積変化をもたらしてポンプ作用を行わせている。ポンプの断面積低減部分87を通
過する場合に、ポンプのベーンは84aで示すように撓曲する。
インペラの円筒状バンド部分83は端壁14上に摩擦接合されていてもよく、或い
はバンドと端壁上に設けられた相互係合構成やバンドと端壁の間の他の固着手段
によって積極的に駆動されることもできる。
ポンプ80は、差動機構を油で満たし、ハウジング11の回転に際し
て差動機構を通じて油の定常的な流れを維持し、それと共に差動機構からの如何
なる油の喪失をもポンプによって補充するように設計されている。
上述した差動機構の設計には、図13から15及び16に示すようなロック能力を備
えさせることもできる。
ロックのための一つの方法が図13及び14に示されており、そこにおいてはピン
100が端壁14に設けられ、そこで軸方向に摺動可能とされている。このピンはヘ
ッド101を有し、これはハウジング11の外側に枢着されたスネールカム102と係合
可能である。スネールカム102はスライドカラー103によって作動され、ピン100
をカム従動子28に向けて押しやり、従動子の行程を制限し、かくして作動機構を
ロツクするようになっている。このスネールカムの表面は十分に浅く、カム従動
子端部の負荷がピンを押し戻すことがないようにされる。或いは代替的に、スネ
ールカム表面を中央を越えて通すことができる。
カラー103は、多数の同様なスネールカム装置を通じて、一つ以上のピンを作
動することができる。
ピンの行程は好ましくは、従動子28の全軸方向行程の25%から75%であり、従
動子の行程の中間位置付近において、従動子のカム表面上に適切な接触領域を与
えるようにされる。一つよりも多いピンが用いられる場合には、ピンの行程は50
%未満に減少されて、影響を受ける全ての従動子が一斉に同じ位置に達し得るこ
とを確実なものとしなければならない。
図15を参照すると、カラー103は、作動機構のケーシング107上に枢支ピン106
により設けられたフォーク/レバー装置105によって、軸方向に動かされる。こ
のフォークは油圧アクチュエータ108によって作動され、アクチュエータ108の作
動が途切れると、レバーか戻りバネ109により元の位置へと戻る。警告装置110か
フォークによって作動されて、ロックが係合していることを示す。
図16は、出力カム16又は17からの出力シャフト112上にカラー111がスプライン
結合されていることからなる、代替的なロック手段が示されている。カラー111
は噛み台い歯113を表面に有し、これらの歯はハウジング11の端壁にあるボア18
を取り巻く外側の歯114と係合することができる。
動作は図15に関して上述したのと同様である。
この場合、一方の出力部材と入力部材との相対回転は、カラーの歯がハウジン
グ端壁上の歯と係合することによって直接的に防止される。
上述した全ての差動機構構成において、ハウジング11は差動機構の入力要素と
して動作し、出力は同軸の出力カム部材16及び17から取り出される。
ある種の用途においては、例えば本発明の差動機構が4輪駆動車の前車軸及び
後車軸を結合しているインターアクスル差動機構として用いられる場合には、図
17に示されているように、差動機構に対する入力が、スプライン161を介して入
カシャフト162に接続されている入力ハブ160を介して行われることが望ましい。
出力ピニオン170が、スプライン171を介して出力シャフト172に接続されてい
る。シャフト162及び172は端壁130及び140のボア180を貫通する。
端壁130の軸方向内側の表面とピニオン170は、両方ともカム表面220及び230を
有し、これらのカム表面は前述した構成中で記述した表面24、25及び26、27に類
似した、相互に傾斜した螺旋表面の対からなる円錐台形の起伏表面からなる。
カム220、230の間には8つのカム従動子280が配置されている。各々の従動子
は駆動ドッグ360を有し、これは入力ハブ160に設けられた相補的な形状の溝390
に対してクリアランス380をもって係合すると共に、共働するカム表面に係合す
る二組の相互に傾斜した端部表面(前述の構成において説明した表面29、30及び
32、33に類似のもの)を有する。
典型的な4輪駆動車の用途においては、入力シャフト162は車のエンジンから
駆動され、出力シャフト172は車の後輪を駆動し、そして端壁130に取着されたク
ラウンホイール120が車の前輪を駆動する。
カム表面220及び230はシャフト162及び172の回転軸に対して角度P2でもって等
しく傾斜しており、かくしてこれらの表面は相互に、半径方向外方へと収束する
。表面220及び230のこの等しい傾斜は、前後の駆動輪の間における等しいトルク
分割をもたらす。
カム表面220及び230と従動子280は全て、差動機構のための駆動入力かユニッ
トの中央からもたらされハブ160から外方へと従動子280を介してカム表面220及
び230へ、かくして出力要素120及び172へと
伝達されることを除き、前述したカム表面22、23及び従動子28と同じ原理に基づ
いて構成されており、また動作する。
従動子280により傾斜したカム表面220及び230へと加えられる駆動力は、図18
に示されているように、各々の従動子に反力F2を生成する。カム従動子の端部表
面が角度P2で傾斜していることは、この反力F2に内向きの力G2を生成させ、これ
は組み合わせられた駆動ドッグ360の角C1の右側において駆動ドッグの湾曲した
エッジE2を通過する合力R2を生ずる。このことは、従動子280に対する負荷の印
加が関連する駆動ハブの溝390の丸みのついた角C2に対してその従動子をしっか
りと楔状に押し付けることを確実なものとし、かくして従動子かその角C1の周り
で傾動することを回避する。
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(72)発明者 スプーナー,ジョン
イギリス国ウォーウィックシャー・シーヴ
ィー8・2キューゼット,ケニルワース,
コートハウス・クローフト・22
(72)発明者 チッペンデイル,ジョン,フィリップ
イギリス国ソリハル・ビー93・9エイチゼ
ット,ノウル,コプト・ヒース,ウォーウ
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