JPH09281A - モノオキシゲナーゼ活性の安定化方法 - Google Patents

モノオキシゲナーゼ活性の安定化方法

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JPH09281A
JPH09281A JP15333295A JP15333295A JPH09281A JP H09281 A JPH09281 A JP H09281A JP 15333295 A JP15333295 A JP 15333295A JP 15333295 A JP15333295 A JP 15333295A JP H09281 A JPH09281 A JP H09281A
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monooxygenase
inhibitor
monooxygenase activity
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JP15333295A
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Takashi Senba
尚 仙波
Masaharu Mukoyama
正治 向山
Toshimi Komatsuzaki
聡美 小松崎
Koichi Sakano
公一 阪野
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 芳香族化合物に酸素を付与する反応を触媒す
るモノオキシゲナーゼ活性を有する微生物を用いた物質
変換反応において生じるモノオキシゲナーゼ活性の経時
的な低下を効率よくかつ簡便に抑制するモノオキシゲナ
ーゼ活性の安定化方法を提供する。 【構成】 モノオキシゲナーゼ活性を有する微生物を利
用した芳香族化合物の酸化反応系にタンパク質合成阻害
剤および/またはプロテアーゼ活性阻害剤を添加するこ
とを特徴とする、モノオキシゲナーゼ活性の安定化方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、モノオキシゲナーゼ活
性の安定化方法に関するものである。さらに詳しく述べ
ると、本発明は、芳香族化合物に酸素を付与する反応を
触媒するモノオキシゲナーゼ活性を有する微生物を用い
た物質変換反応時に生じるモノオキシゲナーゼ活性の経
時的な低下を抑制する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】モノオキシゲナーゼは、一原子酸素添加
酵素ともいい、代表的なものに水酸化酵素があるが、一
原子の分子状酸素を基質に導入する反応を触媒するオキ
シゲナーゼの一種であり、この活性を利用して種々の物
質変換による有用物質の生産が知られている。モノオキ
シゲナーゼ活性を有する微生物としてはメタン資化性細
菌が知られている(特開昭54−157,895号公
報、特開昭57−65,187号公報、特開昭58−4
7,496号公報、特開昭58−193,691号公報
及び特公昭62−47,517号公報)。また、メタン
資化性細菌とは全く異なる菌学的性質を有し、炭素原子
が2個以上のアルカンを資化する微生物についても、種
々の化合物を酸化するモノオキシゲナーゼ活性を有する
ことが知られており(特開昭60−210,991号公
報、特開昭60−210,992号公報及び特開昭63
−133,980号公報)、さらに、特開昭59−1
7,980号公報ではエタン、プロパン及びブタンで生
育させた菌体を用いたアルケンのエポキシ化、アルカン
の酸化、脂環式化合物の酸化及び芳香族化合物の酸化が
記載されている。
【0003】これらモノオキシゲナーゼ活性を有する菌
体を用いて、種々の化合物の酸化反応が可能である。と
ころが、酸化する化合物(反応基質)がモノオキシゲナ
ーゼの活性を誘導する効果を持たない場合には、先に列
挙したいずれの微生物を用いても、反応開始時から短時
間の間では、反応速度は一定であるものの、早い場合に
は1時間以内に反応速度が低下し始め、やがて反応が停
止してしまうというモノオキシゲナーゼの不安定さが問
題となっている。
【0004】上記問題を解決するために、一旦活性が低
下した菌体を回収し、再度モノオキシゲナーゼ活性を誘
導しうる培地等に接種して、一定時間処理することで活
性を回復させる方法や、順次活性の高い菌体と交換して
いく方法などが考案されている。しかしながら、一旦失
われた活性を回復させる前者の方法では、菌体培養とほ
ぼ同等の培養が必要であること、操作が繁雑になり余分
な設備や労力を必要とするなどの問題が生じる。また、
順次活性の高い菌体と交換していく後者の方法では、反
応継続時間に比べて非常に長時間かけて調製した菌体を
短時間使用して廃棄することになり、経済的に不利であ
るという欠点がある。
【0005】したがって、本課題は、菌体のモノオキシ
ゲナーゼ活性の低下を抑制し、反応継続時間を延長させ
る方法を開発することによってしか、抜本的に解決され
得ないと考えられる。このため、モノオキシゲナーゼ活
性の低下を抑制して、芳香族化合物を効率良く酸化でき
る方法は、いまだ提案されておらず、このような方法の
開発が依然として強く要望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明
は、芳香族化合物に酸素を付与する反応を触媒するモノ
オキシゲナーゼ活性を有する微生物を用いた物質変換反
応において生じるモノオキシゲナーゼ活性の経時的な活
性の低下を効率よくかつ簡便に抑制する方法を提供する
ことを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、芳香族化
合物をフェノール誘導体等へ変換する能力を有する新規
なマイコバクテリウム(Mycobacterium) 属に属する微生
物を発見した。この微生物は、従来知られているモノオ
キシゲナーゼ活性を有する微生物と同様、芳香族化合物
の酸化反応に供すると、初期反応速度が十数時間しか維
持されず、それ以降は徐々に反応速度が低下してしまう
という問題を生じた。そこで、本発明者らは、上記問題
を解決すべく、モノオキシゲナーゼによる反応を利用し
た芳香族化合物からフェノール誘導体などを得るための
変換反応の際に生じるモノオキシゲナーゼ活性の低下の
原因の解明および活性の安定性を向上させる方法の開発
に関して鋭意検討を行った。
【0008】検討の結果、活性が経時的に減少するの
は、従来報告されているような、反応基質や反応生成物
による酵素の失活作用ばかりではなく、菌体の生理作用
によって活性が失われるという現象によることを初めて
明らかにした。すなわち、活性の低下は、菌体のおかれ
ている環境中にモノオキシゲナーゼ活性を誘導しうる物
質であるところの誘導基質が消失するか、または、効果
を発揮するに足らない濃度にまで減少することによって
起こることをつきとめた。さらに、菌体によってモノオ
キシゲナーゼが分解されることが活性低下の一因である
可能性が強く示唆された。この際、モノオキシゲナーゼ
を分解するのは、タンパク質分解酵素であるプロテアー
ゼによると考えられるが、モノオキシゲナーゼの誘導基
質が十分量存在する環境下では活性の低下が起こらない
ことから、このプロテアーゼはモノオキシゲナーゼの誘
導基質の濃度が有効な濃度よりも低下した条件によって
生合成される誘導酵素であると考えられた。そこで、こ
のプロテアーゼの影響を除外する手段を講じることによ
って、モノオキシゲナーゼの分解を防止し、ゆえに活性
が維持できると考えた。
【0009】これらの研究成果により、プロテアーゼ活
性を除外する方法として、2つの方法、すなわち、タン
パク質合成阻害剤を添加することによって菌体によるプ
ロテアーゼの生合成を阻害する方法およびプロテアーゼ
の活性阻害剤を添加することによってプロテアーゼの作
用を阻害する方法を考案するに至った。このようにし
て、モノオキシゲナーゼ活性の低下が効果的に抑制でき
る方法を見い出し、活性の安定性を向上させることに成
功し、これにより、本発明を完成した。
【0010】すなわち、上記目的は、モノオキシゲナー
ゼ活性を有する微生物を利用した芳香族化合物の酸化反
応系にタンパク質合成阻害剤及びプロテアーゼ活性阻害
剤からなる群より選ばれた少なくとも一種を添加するこ
とを特徴とする、モノオキシゲナーゼ活性の安定化方法
によって達成される。
【0011】本発明は、上記タンパク質合成阻害剤が抗
生物質であるモノオキシゲナーゼ活性の安定化方法を示
すものである。本発明はまた、上記タンパク質合成阻害
剤がクロラムフェニコール、または、その誘導体である
モノオキシゲナーゼ活性の安定化方法を示すものであ
る。本発明はまた、上記プロテアーゼ活性阻害剤がセリ
ンプロテアーゼ活性を阻害する効果を有する化合物、シ
ステインプロテアーゼ活性を阻害する効果を有する化合
物およびそれらの混合物からなる群より選ばれた少なく
とも一種であるモノオキシゲナーゼ活性の安定化方法を
示すものである。本発明はまた、上記プロテアーゼ活性
阻害剤がフェニルメチルスルフォニルフルオライドであ
るモノオキシゲナーゼ活性の安定化方法を示すものであ
る。本発明はさらに、モノオキシゲナーゼ活性を有する
微生物がマイコバクテリウム(Mycobacterium) 属に属す
る微生物である上記いずれかに記載のモノオキシゲナー
ゼ活性の安定化方法である。
【0012】
【作用】本発明のモノオキシゲナーゼ活性の安定化方法
は、モノオキシゲナーゼ活性を有する微生物の菌体を誘
導基質の存在下において培養して得た、モノオキシゲナ
ーゼ活性の高い活性菌体を用いて、所望の化合物の酸化
反応を行う際、その反応系に、タンパク質合成阻害剤、
プロテアーゼ活性阻害剤およびそれらの混合物からなる
群より選ばれた少なくとも一種を添加することを特徴と
するものである。
【0013】以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明のモノオキシゲナーゼ活性の安定化
方法の一実施態様を以下の通りに説明する。肉汁寒天培
地に生育させたマイコバクテリウム エスピー NS1
2523株(Mycobacterium sp. NS12523) 一白金耳を、
表1に示される培地組成を有する培地(以下、A培地と
称する)に適当な炭素源を加えた培地5mlに接種、培
養することによって、種培養液を調製する。次いで、こ
の種培養液を上記と同じ組成の培地100mlを入れた
500ml容の坂口フラスコに接種し、増殖が定常期に
入るまで培養し、一定量の菌体を含む培養液を調製す
る。このようにして調製された培養液から遠心分離
(1,000〜10,000×g、5〜20分)によっ
て菌体を回収し、さらに、モノオキシゲナーゼ活性の誘
導基質を炭素源として添加したA培地100mlを入れ
た500ml容の坂口フラスコに菌体を接種、培養する
ことによって、高いモノオキシゲナーゼ活性を有する活
性菌体を調製する。培養液を遠心分離(1,000〜1
0,000×g、5〜20分)することによって培養液
から活性菌体のみを回収し、必要であれば、水、緩衝液
または生理食塩水等で菌体を洗浄する。このようにして
回収された活性菌体をリン酸緩衝液(0.2g/リット
ルの硫酸マグネシウムを含む、50mM KH2 PO4
溶液;水酸化ナトリウムにてpHを7に調整)中に菌体
濃度が0.1〜50g湿重量/100ml、好ましくは
0.5〜20g湿重量/100mlになるように懸濁
し、目的とする物質変換反応における触媒としての菌体
懸濁液を調製する。この菌体懸濁液50mlを500m
l容のフラスコに入れ、タンパク質合成阻害剤を添加し
た後、基質およびエネルギー源を添加し、20〜35℃
で所望時間好気条件下で振盪(50〜300rpm)す
ることによって、モノオキシゲナーゼによる基質の酸化
反応を行い、目的とする生成物(フェノール誘導体、芳
香族アルデヒド、芳香族アルコール、芳香族カルボン酸
及び芳香族ケトン等)を得る。
【0015】
【表1】
【0016】本発明において、モノオキシゲナーゼによ
る酸化反応に使用される基質としては、目的とする生成
物質の種類によって異なるが、芳香族化合物が使用され
る。具体的には、フェノール、アセトアニリド、ベンゾ
ニトリル、フェニルアセトニトリル、フェニルアラニ
ン、サリチル酸、o−クレゾール、トルエン、ベンジル
アルコール、p−キシレン及びp−クレゾール等が挙げ
られる。なお、フェノール、アセトアニリド、ベンゾニ
トリル、フェニルアセトニトリル、フェニルアラニン、
サリチル酸、o−クレゾール、トルエン、ベンジルアル
コール、p−キシレン及びp−クレゾールを基質として
用いた場合、それぞれ、ハイドロキノン、p−アセトア
ミノフェノール、p−シアノフェノール、p−ヒドロキ
シフェニルアセトニトリル、チロシン、ゲンチジン酸、
メチルハイドロキノン、安息香酸、安息香酸、p−トル
イル酸及びp−ヒドロキシ安息香酸がモノオキシゲナー
ゼによる酸化反応によって生成する。また、上記基質の
添加濃度は、100〜50,000ppm、好ましくは
500〜30,000ppmである。
【0017】本発明における酸化反応をより効率的に行
うために、反応液にエネルギー源となる物質を添加する
ことが好ましい。該エネルギー源とは、酸化反応におい
て必要な補酵素であるNADHやNADPHを供給する
のに利用される物質を示す。
【0018】本発明において、モノオキシゲナーゼによ
る酸化反応に使用されるエネルギー源としては、菌株が
その物質を分解して得られるエネルギーで補酵素である
NADやNADPを還元してそれぞれNADHやNAD
PHを生成できるものであれば特に制限されないが、具
体的には、グルコース及びシュークロースなどの糖類、
酢酸などの有機酸類、メタノール、エタノール、プロパ
ノール及びブタノールなどのアルコール類、およびアセ
トンやメチルエチルケトンなどのケトン類等の炭素源が
挙げられる。これらのうち、グルコース、酢酸及びエタ
ノールが微生物によって効率よく分解され、かつ添加濃
度によらず、モノオキシゲナーゼによる反応を阻害しな
い点で好ましく使用される。なお、変換反応に用いる基
質がフェノール誘導体へ変換されると同時にその一部分
が微生物によって分解、資化されるものであれば、菌体
はそれによってエネルギーを獲得できうると考えられる
ので、該エネルギー源としての炭素源の供給は特に必要
とされない。また、上記エネルギー源の添加濃度は、反
応基質のモル濃度に対し、0.1〜10倍、好ましくは
0.2〜5倍である。
【0019】本発明において使用されるタンパク質合成
阻害剤は、それを添加することによってモノオキシゲナ
ーゼ活性の安定性の向上がはかれればよく、特に制限さ
れないが、タンパク質の合成を阻害する作用を有する抗
生物質であることが好ましい。これらの代表例として
は、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、スピラ
マイシン、リンコマイシン、ベルナマイシン、ブラスチ
シジンS、チオストレプトマイシン、スポランジオマイ
シン、ストレプトマイシン、ジヒドロストレプトマイシ
ン、ジヒドロスペクチノマイシン、パクタマイシン、エ
デイン、テトラサイクリンおよびこれらの誘導体等が挙
げられ、これらのうち、クロラムフェニコールおよびク
ロラムフェニコールスクシネートやクロラムフェニコー
ルモルフォリンアセテートなどのクロラムフェニコール
誘導体が好ましく使用され、クロラムフェニコールが特
に好ましい。また、上記タンパク質合成阻害剤の添加濃
度は、反応液1リットルに対して、通常、1〜1,50
0μM、好ましくは10〜750μM、より好ましくは
50〜500μMである。
【0020】本発明におけるモノオキシゲナーゼによる
酸化反応は、分子酸素が酸素供給源として必要である。
従って、菌体懸濁液、基質及びエネルギー源からなる反
応液中に過不足なく酸素を供給する必要がある。反応液
への酸素の供給方法としては、例えば、攪拌、振盪及び
通気攪拌槽における空気または酸素の通気及び攪拌操作
などが挙げられる。通気攪拌または振盪によって酸素を
供給する場合の条件は特に制限されず、用いる装置の大
きさ及び形状、および菌体懸濁液の量によって適宜決定
される。
【0021】また、本発明におけるモノオキシゲナーゼ
による酸化反応は、基質及び生成する物質の性質に適し
たpHの範囲内で行われる。本発明において、上記pH
の範囲は、5〜9、好ましくは6〜8である。これか
ら、本発明において使用できる活性菌体を懸濁するため
の液は上記pHの範囲内に入るものであれば使用できる
が、代表例としては、リン酸緩衝液、ジメチルグルタル
酸緩衝液及びトリス塩酸緩衝液等が挙げられる。また、
上記した緩衝液以外にも生理食塩水等の塩類溶液を使用
してもよい。さらに、反応の間にpHが大きく変動しな
い場合、あるいはpHをコントロールできる場合には、
緩衝液を必ずしも使用する必要はない。
【0022】上記実施態様においては、菌体の分離を遠
心分離によって行ったが、菌体の分離は、この方法に制
限されず、瀘過及び沈降分離等、一般的な菌体の分離方
法によって行われる。
【0023】また、上記実施態様においては、マイコバ
クテリウム エスピー NS12523株(Mycobacteri
um sp. NS12523) を微生物として使用したが、本発明に
おいて使用できる微生物は上記微生物に限られるもので
はなく、モノオキシゲナーゼ活性を有する微生物であれ
ば特に制限されないが、具体的には、メチロシヌス属(M
ethylosinus)、メチロコッカス属(Methylococcus) 、ロ
ドコッカス属(Rhodococcus) 、マイコバクテリウム属(M
ycobacterium) 、ノカルディア属(Nocardia)及びシュー
ドモナス属(Pseudomonas) 等に属する微生物が挙げられ
る。これらのうち、マイコバクテリウム属(Mycobacteri
um) 、ノカルディア属(Nocardia)及びロドコッカス属(R
hodococcus) に属する微生物が好ましく使用でき、より
好ましくはマイコバクテリウム エスピー NS125
23株(Mycobacterium sp. NS12523) が使用される。な
お、マイコバクテリウム エスピー NS12523株
(Mycobacterium sp. NS12523) は、本発明者らによって
発見された芳香族化合物を酸化しフェノール誘導体等へ
変換する能力を有するマイコバクテリウム属(Mycobacte
rium) に属する新規な微生物である。
【0024】上記実施態様において使用されたマイコバ
クテリウム エスピー NS12523株(Mycobacteri
um sp. NS12523) の菌学的性質を以下に示す。
【0025】(a)形態的性質 細胞の形および大きさ: 不規則な形態を有する桿
菌で、大きさが約1μm×3〜6μmである 細胞の多形性の有無: 培養時期によって、細胞の
長さが変化する 運動性の有無: なし 胞子の有無: なし 抗酸性: 陰性〜陽性(培養時期によって変化す
る) (b)培養的性質 肉汁寒天平板培養(30℃): 周縁部が波状で乾
燥した白色のコロニーを形成する。コロニーの大きさ
は、30℃で3日間培養した際、直径約3〜10mmで
ある。 肉汁液体培養: 表面にも生育する。直径0.3〜
1mm程度の細胞集塊を形成する。 肉汁ゼラチン穿刺培養: ゼラチンの液化なし リトマス・ミルク: アルカリ性 (c)生理的性質 グラム染色性: 陽性 硝酸塩の還元: + 脱窒反応: − MRテスト: − VPテスト: − インドールの生成: − 硫化水素の生成(TSI培地): − デンプンの加水分解: + クエン酸の利用:シモンズ(Simmons) の培地: − クリステンセン(Christensen) の培地: + 無機窒素源の利用: + 色素の生成:キングA(King A)培地: − キングB(King B)培地: − SCD寒天培地: − 肉汁寒天培地: − ウレアーゼ:クリステンセン(Christensen) の培地: + オキシダーゼ: − カタラーゼ: + 生育の範囲(SCD培地): 生育可能pHが4.5〜8.9 生育可能温度が14.0〜47.5℃ 酸素に対する態度: 好気性 O−Fテスト(Hugh Leifson法): F型(反応は弱い) (d)下記の糖類からの酸及びガスの生成の有無
【0026】
【表2】
【0027】(e)その他の特徴的な生理的性質 サリチル酸の分解性: + 安息香酸の分解性: + ペニシリンGの耐性: + ミコール酸に関して、薄層クロマトグラフィーにより既
知の微生物であるマイコバクテリウム ヴァッカエ I
FO14118株(Mycobacterium vaccae IFO14118) と
比較したところ、マイコバクテリウム ヴァッカエ I
FO14118株とミコール酸スポットのRf値と近似
する位置にミコール酸スポットが複数個認められた。
【0028】本菌株について、バージーズ マニュアル
オブ システマティック バクテリオロジー、第二巻
(Bergey´s Manual of Systematic Bacteriology 2nd)
(1986年)を参考にして検索を行った結果、本菌株
はマイコバクテリウム属(Mycobacterium) 微生物のマイ
コバクテリウム スメグマティス(Mycobacterium smegm
atis) に類似する特徴を有していることがわかった。し
かし、タイプカルチャーである、マイコバクテリウム
スメグマティス IFO3082、3153、3154
及び13167株と本菌株を比較したところ、いずれの
タイプカルチャーもメチルエチルケトンを炭素源とする
完全合成培地でほとんど生育しなかった点で、本菌株と
は異なっていた。さらに、いずれのタイプカルチャーも
モノオキシゲナーゼ活性を有しないあるいは活性が非常
に低かった。これらの結果より、本菌株は従来知られる
菌種とは異なる性質を有することから、本菌株をマイコ
バクテリウム エスピー NS12523株(Mycobacte
rium sp. NS12523) (以下、単に「NS12523株」
と称する)と命名した。
【0029】このNS12523株は、平成7年5月3
0日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託さ
れ、その受託番号はFERM P−14958号であ
る。
【0030】本発明において、微生物の培養に使用する
培地は、固体または液体培地のいずれでもよく、また、
使用する菌株が資化しうる炭素源、適量の窒素源、無機
塩及びその他の栄養素を含有する培地であれば、合成培
地または天然培地のいずれでもよい。
【0031】本発明の菌株の培養において使用できる炭
素源としては、本菌株が良好に生育し、モノオキシゲナ
ーゼ活性を発現しうるものであれば特に制限されず、グ
ルコース、プロパン、ブタン、アセトン、メチルエチル
ケトン、2−ブタノール、エタノール、プロパノール、
1−ブタノール、酢酸及びシュークロース等が挙げられ
る。これらのうち、菌株の生育を考慮すると、グルコー
ス、酢酸、アセトン、メチルエチルケトン、エタノー
ル、プロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノール
等が炭素源として好ましく使用され、また、モノオキシ
ゲナーゼ活性を高めることを考慮すると、プロパン、ブ
タン、アセトン、メチルエチルケトン及び2−ブタノー
ルなどがモノオキシゲナーゼ活性の誘導基質として好ま
しく使用される。この際、上記炭素源の添加量は、0.
01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
これらの炭素源は、単独あるいは2種以上の混合物の形
態で使用できる。
【0032】本発明の菌株の培養において使用できる窒
素源としては、肉エキス、ペプトン、バクトペプトン、
ポリペプトン、酵母エキス、大豆加水分解物、大豆粉
末、ミルクカゼイン、カザミノ酸、各種アミノ酸及びコ
ーンスティープリカー等の有機窒素化合物、およびアン
モニア、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム及び塩化
アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸カリウム及び
硝酸ナトリウムなどの硝酸塩、尿素等の無機窒素化合物
等が挙げられる。これらの窒素源も、単独あるいは2種
以上の混合物の形態で使用できる。
【0033】本発明において使用できる無機塩として
は、一般的な細菌の培養に用いられるものが使用できる
が、例えば、マグネシウム、マンガン、カルシウム、ナ
トリウム、カリウム、銅、鉄及び亜鉛などのリン酸塩、
塩酸塩、硫酸塩及び酢酸塩等から選ばれた1種または2
種以上を使用することができる。これらのうち、高いモ
ノオキシゲナーゼ活性を得るためには鉄塩を無機塩とし
て比較的高濃度で添加することが好ましく、鉄塩の添加
濃度としては、鉄に換算して、1リットルの培養液中、
0.3〜60mg、好ましくは1〜30mgである。
【0034】ここで、本発明においてNS12523株
を使用する際に好ましく使用できるA培地以外の培地の
一組成例を以下の表3に示し、以下、この培地をB培地
と称する。これらのA培地およびB培地は、これらの培
地に上記したような所定の炭素源を添加して調製した培
地でNS12523株を培養すると、NS12523株
は直径1mm以下の小さい集塊を形成しながら増殖し、
培養液を静置すると速やかに沈降し、容易に菌体のみを
回収できるため、本発明における微生物の培養に好まし
く使用できる。
【0035】
【表3】
【0036】本発明において高いモノオキシゲナーゼ活
性を得るための完全合成培地としてはA培地に誘導基質
としての上記したような炭素源を加えた培地が好ましく
使用され、増殖をさらに促進するための有機態窒素源培
地としてはB培地の組成に上記したような炭素源を加え
た培地が好ましく使用される。
【0037】本発明において、微生物の培養は、上記実
施態様において詳細に記載した培養に限られるものでは
なく、使用する微生物が適切に培養できる公知の培養方
法によって行われる。一般的には、本発明による微生物
の培養は、好気的条件下で行われ、その際の培養条件
は、使用する微生物の種類、培地の組成や培養法によっ
て適宜選択され、使用する菌株が増殖しモノオキシゲナ
ーゼ活性が発現できる条件であれば特に制限されない。
通常は、培養温度が、20〜45℃、好ましくは30〜
40℃であり、また、培養に適当な培地のpHは、4.
5〜9、好ましくは6〜8である。
【0038】また、本発明によると、誘導基質としての
炭素源が培地中で消失するとモノオキシゲナーゼ活性が
低下するため、高いモノオキシゲナーゼ活性を有する菌
体を得るためには、誘導基質としての炭素源が培地中に
残存している段階で微生物の培養を終了させることが重
要である。ただし、単に目的量の菌体を得る場合には、
モノオキシゲナーゼ活性の低下に関係なく、定常期に達
するまで菌体の増殖を継続してもよい。このため、上記
実施態様において示したように、一定量の菌体を得るた
めの培養段階及びこのような培養段階で得られた菌体に
誘導基質を添加して短時間培養を行うことによってモノ
オキシゲナーゼ活性の高い菌体を得ることを目的とした
培養段階に分けて、微生物の培養を行うことが好ましい
が、前述したような2段階からなる培養を行わずに、誘
導基質濃度を一定に制御することができる培養装置を用
いて菌体の増殖とモノオキシゲナーゼ活性の発現の両方
を一段階で行い、活性菌体を得てもよい。
【0039】培養時間は、使用する微生物の種類、培養
温度及びpHや菌体の初期濃度等の培養条件および培養
方法によって異なるが、例えば、一定量の菌体を得るた
めの培養段階では、NS12523株を一白金耳、1重
量%のメチルエチルケトンを炭素源として加えたA培地
5mlに接種し30℃で3日間培養して種培養液を調製
し、この種培養液を上記と同様の培地100mlを入れ
た500ml容の坂口フラスコに接種し、30℃で振盪
培養(140rpm)を行った場合、2〜5日である。
また、活性菌体を得るための培養段階では、上述の培養
段階で得たモノオキシゲナーゼ活性が十分高くない菌体
を誘導基質としてメチルエチルケトンを1重量%添加し
た新鮮なA培地100mlを入れた500ml容の坂口
フラスコに接種して30℃で振盪培養(140rpm)
を行った場合、6〜72時間である。このような方法に
よって、目的とする酸化反応に供試できるモノオキシゲ
ナーゼ活性を有する菌体を調製することができる。
【0040】このようにして得られた活性菌体を用い
て、所望の物質変換反応を行うことができる。
【0041】さらに、上記実施態様では、モノオキシゲ
ナーゼ活性の安定化を目的としてタンパク質合成阻害剤
が使用されたが、タンパク質合成阻害剤の代わりにプロ
テアーゼ活性阻害剤を添加してもよい。この際、使用で
きるプロテアーゼ活性阻害剤としては、誘導、合成され
たプロテアーゼ活性を阻害するものであれば特に制限さ
れないが、セリンプロテアーゼおよび/またはシステイ
ンプロテアーゼ活性を阻害する化合物であることが好ま
しい。本発明において使用されるプロテアーゼ活性阻害
剤としては、クロロメチルケトン、ジイソプロピルフル
オロリン酸、フェニルメチルスルフォニルフルオライ
ド、4−トルオルスルフォニルフルオライド、L−1−
トシルアミド−2−フェニル(エチル)クロロメチルケ
トン、N−p−トシル−L−リジンクロロメチルケトン
及びペプチドアルデヒド等のセリンプロテアーゼ阻害剤
およびL−トランス−エポシキスクシニル−ロイシルア
ミド(4−グアニド)ブタン、ペプチドアルデヒド及び
ペプチジルジアゾメチルケトン等のシステインプロテア
ーゼ阻害剤が挙げられ、これらのうち、特にフェニルメ
チルスルフォニルフルオライドが好ましく用いられる。
さらに、上記プロテアーゼ活性阻害剤の添加濃度は、反
応液1リットルに対して、通常、0.1〜100μM、
好ましくは0.5〜50μM、より好ましくは1〜25
μMである。
【0042】さらに、本発明によるモノオキシゲナーゼ
活性の安定化を目的として、上記タンパク質合成阻害剤
およびプロテアーゼ活性阻害剤を組み合わせたものを添
加することも可能である。この場合のタンパク質合成阻
害剤及びプロテアーゼ活性阻害剤の種類及び添加は、上
記した種類及び範囲がそれぞれ使用される。また、タン
パク質合成阻害剤及びプロテアーゼ活性阻害剤添加は、
上記範囲内の濃度の任意の割合で行われるが、具体的に
は、タンパク質合成阻害剤及びプロテアーゼ活性阻害剤
の添加の割合は、重量比で、0.1:1〜1:0.1で
ある。
【0043】
【実施例】以下、実施例を参照しながら本発明をさらに
具体的に説明する。
【0044】実施例1〜4、比較例1 肉汁寒天培地(ディフコ(Difco) 社製)に生育させたマ
イコバクテリウム エスピー NS12523株(Mycob
acterium sp. NS12523) を一白金耳、炭素源としてメチ
ルエチルケトンを1重量%添加したA培地5mlを入れ
た試験管に接種し、30℃で3日間培養することによっ
て、種培養液を調製した。次いで、この種培養液を上記
と同様の組成の培地100mlを入れた500ml容の
坂口フラスコに接種し、さらに30℃で3日間培養し、
培養液を調製した。このようにして得た培養液から遠心
分離(6,000×g、5分)によって菌体を回収し、
菌体を前記と同様の組成の新鮮な培地100mlを入れ
た500ml容の坂口フラスコに接種して30℃でさら
に24時間培養して、モノオキシゲナーゼ活性の高い活
性菌体を調製した。このようにして得られた培養液を遠
心分離(6,000×g、5分)することによって培養
液から活性菌体のみを回収し、菌体をリン酸緩衝液中に
菌体濃度が5g湿重量/100mlになるように懸濁し
た。
【0045】この菌体懸濁液10mlを100ml容の
フラスコ5本にそれぞれ分注し、うち4本のフラスコに
はタンパク質合成阻害剤および/またはプロテアーゼ活
性阻害剤として、それぞれ、150μMクロラムフェニ
コール(図1において黒菱形)(実施例1)、150μ
Mクロラムフェニコール+0.5μMフェニルメチルス
ルフォニルフルオライド(図1において黒三角)(実施
例2)、150μMクロラムフェニコール+5μMフェ
ニルメチルスルフォニルフルオライド(図1において白
四角)(実施例3)および5μMフェニルメチルスルフ
ォニルフルオライド(図1において白菱形)(実施例
4)を添加した。なお、比較対照として残りのフラスコ
には阻害剤を添加しなかった(図1において黒四角)
(比較例1)。阻害剤をそれぞれ所定の濃度で添加した
後、基質としてフェノール、エネルギー源としてグルコ
ースをそれぞれ1,000ppmになるように添加し、
30℃で40時間往復振盪(60rpm)することによ
って酸化反応を行った。所定時間経過した後、各フラス
コから反応液をサンプリングし、高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)分析によって生成したハイドロキノ
ンの濃度を測定した。結果を図1に示す。
【0046】図1より、タンパク質合成阻害剤および/
またはプロテアーゼ活性阻害剤を添加したことにより得
られるハイドロキノンの生成量は、無添加で反応を行っ
た際の生成量に比べて上昇していることが示される。ま
た、タンパク質合成阻害剤および/またはプロテアーゼ
活性阻害剤を添加した系ではハイドロキノンの生成量が
40時間まで増加していることからモノオキシゲナーゼ
活性は反応開始後40時間までは少なくとも維持されて
いるのに対して、無添加の系ではハイドロキノンの生産
が18時間でほぼ停止してしまっていることから、タン
パク質合成阻害剤および/またはプロテアーゼ活性阻害
剤を添加したことにより反応継続時間は延長されること
も明かに示される。
【0047】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のモノオキシ
ゲナーゼ活性の安定化方法は、モノオキシゲナーゼ活性
を有する微生物を利用した芳香族化合物の酸化反応系に
タンパク質合成阻害剤、プロテアーゼ活性阻害剤および
それらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも一種
を添加することを特徴とするものである。したがって、
本発明の方法を用いることによって、モノオキシゲナー
ゼ活性を有する微生物を用いた物質変換反応において、
モノオキシゲナーゼ活性の安定性を損なわせる原因の一
つであるプロテアーゼの影響を除外し、モノオキシゲナ
ーゼ活性の経時的な低下を効率よくしかも簡便に抑制で
き、モノオキシゲナーゼによる物質変換反応継続時間を
顕著に延長できるものである。
【0048】また、本発明のモノオキシゲナーゼ活性の
安定化方法は、タンパク質合成阻害剤、プロテアーゼ活
性阻害剤およびそれらの混合物からなる群より選ばれた
少なくとも一種を添加することによって簡便に行われる
方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるモノオキシゲナーゼを用いた酸
化反応における反応時間に対するハイドロキノンの生成
量の関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C12N 1/38 C12R 1:32) (72)発明者 阪野 公一 茨城県つくば市観音台1丁目25番地12 株 式会社日本触媒内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 モノオキシゲナーゼ活性を有する微生物
    を利用した芳香族化合物の酸化反応系にタンパク質合成
    阻害剤及びプロテアーゼ活性阻害剤からなる群より選ば
    れた少なくとも一種を添加することを特徴とする、モノ
    オキシゲナーゼ活性の安定化方法。
  2. 【請求項2】 該タンパク質合成阻害剤が抗生物質であ
    る、請求項1に記載のモノオキシゲナーゼ活性の安定化
    方法。
  3. 【請求項3】 該タンパク質合成阻害剤がクロラムフェ
    ニコールまたはその誘導体である、請求項2に記載のモ
    ノオキシゲナーゼ活性の安定化方法。
  4. 【請求項4】 該プロテアーゼ活性阻害剤がセリンプロ
    テアーゼ活性を阻害する効果を有する化合物、システイ
    ンプロテアーゼ活性を阻害する効果を有する化合物およ
    びそれらの混合物からなる群より選ばれた少なくとも一
    種である、請求項1から3のいずれかに記載のモノオキ
    シゲナーゼ活性の安定化方法。
  5. 【請求項5】 該プロテアーゼ活性阻害剤がフェニルメ
    チルスルフォニルフルオライドである、請求項4に記載
    のモノオキシゲナーゼ活性の安定化方法。
  6. 【請求項6】 モノオキシゲナーゼ活性を有する微生物
    がマイコバクテリウム(Mycobacterium) 属に属する微生
    物である、請求項1から5のいずれかに記載のモノオキ
    シゲナーゼ活性の安定化方法。
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