JPH09285293A - 発酵法によるl−グルタミン酸の製造法 - Google Patents

発酵法によるl−グルタミン酸の製造法

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JPH09285293A
JPH09285293A JP8100808A JP10080896A JPH09285293A JP H09285293 A JPH09285293 A JP H09285293A JP 8100808 A JP8100808 A JP 8100808A JP 10080896 A JP10080896 A JP 10080896A JP H09285293 A JPH09285293 A JP H09285293A
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JP
Japan
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glutamic acid
strain
escherichia coli
gene
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JP8100808A
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Kazuhiko Matsui
和彦 松井
Yutaka Izui
裕 泉井
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Ajinomoto Co Inc
Original Assignee
Ajinomoto Co Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エシェリヒア属に属する微生物のL−グル
タミン酸の生産能を向上させ、安価かつ効率的なL−グ
ルタミン酸の製造法を提供する。 【解決手段】エシェリヒア属に属し、グルタミン代謝拮
抗物質に耐性を有し、かつα−ケトグルタル酸デヒドロ
ゲナーゼ活性が欠損もしくは低下した微生物を液体培地
で培養し、培養液中にL−グルタミン酸を生成蓄積せし
め、これを採取することを特徴とする発酵法によるL−
グルタミン酸の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発酵法によりL−
グルタミン酸を製造するために使用される微生物および
該微生物を用いた発酵法によるL−グルタミン酸の製造
法に関する。L−グルタミン酸は食品、医薬品等として
重要なアミノ酸である。
【0002】
【従来の技術】従来L−グルタミン酸は主としてブレビ
バクテリウム属、コリネバクテリウム属またはミクロバ
クテリウム属に属するいわゆるグルタミン酸生産菌また
はそれらの変異株を用いた発酵法により製造されてきた
(アミノ酸発酵、学会出版センター、195〜215
頁、1986年)。その他の菌株を用いた発酵法による
L−グルタミン酸の製造法としては、バチルス属、スト
レプトミセス属、ペニシリウム属等の微生物を用いる方
法(米国特許第3,220,929号)、シュードモナ
ス属、アースロバクター属、セラチア属、キャンディダ
属等の微生物を用いる方法(米国特許第3,563,8
57号)等が知られている。従来の方法によりL−グル
タミン酸の生産性はかなり高まってはいるが、今後の需
要の一層の増大に応えるためには、さらに安価かつ効率
的なL−グルタミン酸の製造法の開発が求められてい
る。
【0003】エシェリヒア・コリはその増殖速度の大き
さおよび遺伝子解析の進み方から、将来的に優れたL−
グルタミン酸生産菌として利用される可能性を有してい
るが、従来の報告ではエシェリヒア・コリによるL−グ
ルタミン酸の蓄積量は2.3g/lと極めて低いレベル
にあった(J.Biochem.、第50巻、164〜
165頁、1961年)。ところが最近、α−ケトグル
タル酸デヒドロゲナーゼ(以下、「α−KGDH」と略
すことがある)活性が欠損もしくは低下した変異株が高
いグルタミン酸生産能を有することが報告された(仏国
特許公開2680178号)。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、エ
シェリヒア属に属する微生物のL−グルタミン酸生産能
を向上させ、より安価でかつ効率的なL−グルタミン酸
の製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、エシェリ
ヒア属に属する微生物によるL−グルタミン酸の製造法
について鋭意研究を重ねた結果、エシェリヒア属に属す
る微生物にグルタミン代謝拮抗物質に対する耐性を付与
することにより、そのL−グルタミン酸蓄積濃度、生産
収率、または生産性を向上させ本発明を完成するに至っ
た。
【0006】本発明は以下の通りである。 (1)エシェリヒア属に属し、グルタミン代謝拮抗物質
に耐性を有し、かつL−グルタミン酸生産能を有する微
生物。 (2)エシェリヒア属に属し、グルタミン代謝拮抗物質
に耐性を有し、かつα−ケトグルタル酸デヒドロゲナー
ゼ活性が欠損もしくは低下した前記(1)記載の微生
物。 (3)グルタミン代謝拮抗物質が、アザセリンまたは6
−ジアゾ−5−オキソ−ノルロイシンである前記(1)
または(2)記載の微生物。 (4)前記(1)ないし(3)記載の微生物を液体培地
に培養し、培養液中にL−グルタミン酸を生成蓄積せし
め、これを採取することを特徴とする発酵法によるL−
グルタミン酸の製造法。
【0007】
【発明の実施の形態】
【0008】本発明に用いられるエシェリヒア属に属す
る微生物としては、例えばエシェリヒア・コリがあげら
れる。具体的には次のような株があげられる。 エシェリヒア・コリ K−12 (ATCC10798) エシェリヒア・コリ W3110(ATCC27325) エシェリヒア・コリ B (ATCC11303) エシェリヒア・コリ W (ATCC 9637)
【0009】本発明に用いられるグルタミン代謝拮抗物
質とは、エシェリヒア属に属する微生物の生育を阻害
し、その生育阻害がL−グルタミンの添加により回復す
る物質である。または、L−グルタミン生合成系に関与
する酵素の発現を抑制する作用または該酵素の活性を阻
害する作用を有し、その抑制または阻害がL−グルタミ
ンの添加により回復する物質である。
【0010】グルタミン代謝拮抗物質としては、たとえ
ばアザセリン、6−ジアゾ−5−オキソ−ノルロイシン
(以下、「DON」と略す)、ヂュアゾマイシンA等が
あげられる。グルタミン代謝拮抗物質は市販のものを用
いることができる。
【0011】本発明の微生物は、エシェリヒア属に属
し、グルタミン代謝拮抗物質に耐性を有し、かつL−グ
ルタミン酸生産能を有する微生物である。かかる性質を
有していれば、他の栄養要求性、他の薬剤抵抗性を有す
る微生物も本発明に用いることができる。
【0012】グルタミン代謝拮抗物質耐性株の誘導は親
株を紫外線照射するか、あるいは変異誘発剤(例えばN
−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(以
下、「NG」と略す)、エチルメタンスルホン酸等)で
処理した後、親株が生育できないような濃度のグルタミ
ン代謝拮抗物質を含む寒天培地で生育可能な菌株を採取
すればよい。
【0013】グルタミン代謝拮抗物質耐性株は、野生株
よりグルタミン代謝拮抗物質に強い耐性を有する株のこ
とである。
【0014】エシェリヒア属に属し、L−グルタミン酸
生産能を有する微生物としては、例えばα−ケトグルタ
ル酸デヒドロゲナーゼ活性が欠損もしくは低下した微生
物があげられる。
【0015】エシェリヒア属に属し、α−ケトグルタル
酸デヒドロゲナーゼ活性が欠損もしくは低下した微生物
およびその取得方法は、特開平5-244970号公報及び特開
平7-203980号公報に記載されている。具体的には次のよ
うな株があげられる。 エシェリヒア・コリW3110sucA::Kmr エシェリヒア・コリAJ12624(FERM BP−
3853) エシェリヒア・コリAJ12628(FERM BP−
3854) エシェリヒア・コリAJ12949(FERM BP−
4881) エシェリヒア・コリAJ13199(FERM P−1
5573)
【0016】エシェリヒア・コリW3110suc
A::Kmrは、エシェリヒア・コリW3110のαー
ケトグルタル酸デカルボキシラーゼ遺伝子(以下、「s
ucA遺伝子」と略す)が破壊されて得られた株であ
り、αKGDH完全欠損株である。W3110suc
A::Kmrは以下の様にして取得されたものである。
【0017】既に明らかにされているsucA遺伝子の
塩基配列(Eur.J.Biochem.、第141
巻、351〜359頁、1984年)に基づいてプライ
マーを合成し、エシェリヒア・コリW3110の染色体
DNAを鋳型にしてPCR法によりsucA遺伝子を増
幅する。増幅されたsucA遺伝子のコーディング領域
内に薬剤耐性遺伝子(本発明ではカナマイシン耐性遺伝
子)を挿入し、機能を失ったsucA遺伝子を作成す
る。ついで相同組換えを利用してW3110の染色体上
のsucA遺伝子を、薬剤耐性遺伝子が挿入されその機
能を失ったsucA遺伝子(sucA::Kmr)に置
換する。
【0018】αKGDH欠損株は上記の様な遺伝子工学
的な手法による以外にも通常の変異処理方法によっても
分離出来る。例えばX線や紫外線の照射、或いはNG等
の変異誘発剤で処理した後、以下の性質に基づいてαK
GDH欠損株を分離することができる。
【0019】αKGDH活性が欠損もしくは低下した変
異株は好気的培養条件下ではグルコースを含む最少培地
で生育できないか、もしくは生育速度が著しく低下す
る。ところが同一条件でも最少培地にコハク酸またはリ
ジン及びメチオニンを添加すると通常の生育が可能とな
る。また嫌気的培養条件下ではグルコースを含む最少培
地でも生育が可能である(Molec.Gen.Gen
etics、第105巻、182〜190頁、1969
年)。
【0020】エシェリヒア・コリAJ12624(FE
RM BP−3853)は、α−KGDH活性が低下
し、さらにL−グルタミン酸の分解活性が低下した変異
株である。
【0021】エシェリヒア・コリAJ12628(FE
RM BP−3854)は、α−KGDH活性が低下
し、さらにL−グルタミン酸の分解活性が低下し、ac
eオペロンの発現が構成的になった性質を併せ持つ変異
株である。
【0022】エシェリヒア・コリAJ12949(FE
RM BP−4881)は、エシェリヒア・コリW31
10sucA::Kmr に、フォスフォエノールピルベ
ートカルボキシラーゼ遺伝子およびグルタメートデヒド
ロゲナーゼ遺伝子を含むプラスミドが導入されて得られ
た株である。
【0023】エシェリヒア・コリAJ13199は、病
原性のない野生株エシェリヒア・コリW3110より誘
導されたエシェリヒア・コリW3110sucA::K
rを親株として通常の変異処理方法によって得られた
もので、アスパラギン酸βヒドロキサメートに耐性な変
異株である。アスパラギン酸βヒドロキサメートは、ア
スパラギン酸代謝拮抗物質の一種であるが、アスパラギ
ン酸代謝拮抗物質に耐性を有するエシェリヒア属に属す
る微生物は、そのL−グルタミン酸生産能が向上してい
る。
【0024】アスパラギン酸代謝拮抗物質とは、エシェ
リヒア属に属する微生物の生育を阻害し、その生育阻害
がL−アスパラギン酸の添加により回復する物質であ
る。または、L−アスパラギン酸生合成系に関与する酵
素の発現を抑制する作用または該酵素の活性を阻害する
作用を有し、その抑制または阻害がL−アスパラギン酸
の添加により回復する物質である。
【0025】アスパラギン酸代謝拮抗物質としては、た
とえばアスパラギン酸βヒドロキサメート、α−メチル
アスパラギン酸、β−メチルアスパラギン酸、システイ
ンスルフィン酸、ジフルオロコハク酸、ハダシン等があ
げられる。
【0026】アスパラギン酸代謝拮抗物質耐性株の誘導
は親株を紫外線照射するか、あるいは変異誘発剤(例え
ばNG、エチルメタンスルホン酸等)で処理した後、親
株が生育できないような濃度のアスパラギン酸代謝拮抗
物質を含む寒天培地で生育可能な菌株を採取すればよ
い。
【0027】アスパラギン酸代謝拮抗物質耐性株は、野
生株よりアスパラギン酸代謝拮抗物質に強い耐性を有す
る株のことである。
【0028】上記の株のように、KGDH活性が欠損も
しくは低下した性質に加えてグルタミン酸分解能が低下
した性質、マレートシンターゼ(aceB)、イソシト
レートリアーゼ(aceA)、イソシトレートデヒドロ
ゲナーゼ・フォスファターゼ(aceK)オペロンの発
現が構成的になった性質、フォスフォエノールピルベー
トカルボキシラーゼおよびグルタメートデヒドロゲナー
ゼが増強された性質、および/またはアスパラギン酸代
謝拮抗物質に対して耐性な性質を併せ持つ変異株は、一
層高いL−グルタミン酸生産能を有することから好まし
い。
【0029】本発明の微生物は、エシェリヒア属に属
し、グルタミン代謝拮抗物質に耐性を有し、かつL−グ
ルタミン酸生産能を有する微生物である。例えば以下の
ものがある。 エシェリヒア・コリAJ13200(FERM P−1
5574) エシェリヒア・コリAJ13201(FERM P−1
5575)
【0030】エシェリヒア・コリAJ13200および
エシェリヒア・コリAJ13201は、エシェリヒア・
コリAJ13199を親株として通常の変異処理方法に
よって得られたものである。エシェリヒア・コリAJ1
3200はアザセリンに耐性であり、エシェリヒア・コ
リAJ13201はDONに耐性である。
【0031】本発明におけるL−グルタミン酸生産用培
地は、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じて
アミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常
の栄養培地である。合成培地または天然培地のいずれも
使用可能である。培地に使用される炭素源及び窒素源
は、培養される菌の利用可能なものならばいずれの種類
を用いてもよい。
【0032】炭素源としては、グルコース、グリセロー
ル、フラクトース、シュクロース、マルトース、マンノ
ース、ガラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類が
用いられ、その他、酢酸、クエン酸等の有機酸等も単独
あるいは他の炭素源と併用して用いることができる。
【0033】窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモ
ニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸
アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩ま
たは硝酸塩等が用いられる。
【0034】有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタ
ミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプ
トン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆蛋白分解物等が用
いられ、生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性変異株
を培養する場合には要求される栄養素を補添する事が必
要である。
【0035】無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム
塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が用いられる。
【0036】培養方法は、発酵温度20ないし45℃、
pHを5ないし9に制御しつつ通気培養を行う。培養中
にpHが下がる場合には、炭酸カルシウムを加えるか、
アンモニアガス等のアルカリで中和する。かくして10
時間ないし4日間程度培養することにより培養液中に著
量のL−グルタミン酸が蓄積される。
【0037】培養終了後の培養液からL−グルタミン酸
を採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよ
い。例えば培養液から菌体を除去した後に濃縮晶析する
方法あるいはイオン交換クロマトグラフィー等によって
採取される。
【0038】
【実施例】次に実施例によって本発明をさらに詳細に説
明する
【実施例1】αKGDH欠損株の作出 (1)エシェリヒア・コリW3110のsucA遺伝子
およびジヒドロリポアミドサクシニルトランスフェラー
ゼ遺伝子のクローニング エシェリヒア・コリK12株のsucA遺伝子およびジ
ヒドロリポアミドサクシニルトランスフェラーゼ遺伝子
(以下、「sucB遺伝子」と略す)の塩基配列は既に
明らかにされている(Eur.J.Biochem.、
第141巻、351〜374頁、1984年)。報告さ
れている塩基配列に基づいて配列表配列番号1から4に
示すプライマーを合成し、エシェリヒア・コリW311
0株の染色体DNAを鋳型として、PCR法によりsu
cA遺伝子およびsucB遺伝子をそれぞれ増幅した。
【0039】合成したプライマーのうち、sucA遺伝
子の増幅に用いたプライマーは、配列表配列番号1およ
び2に示される。配列表配列番号1はEur.J.Bi
ochem.、第141巻、354頁、1984年に記
載されているsucA遺伝子の塩基配列図上の45番目
から65番目の塩基に至る配列に相当し、配列表配列番
号2はEur.J.Biochem.、第141巻、3
64頁、1984年に記載されているsucB遺伝子の
塩基配列図上の3173番目から3193番目までの配
列に相当する。
【0040】またsucB遺伝子の増幅に用いたプライ
マーは、配列表配列番号3および4に示される。配列表
配列番号3は同報文の354頁に記載されているsuc
A遺伝子の塩基配列図上の2179番目から2198番
目までの配列に、配列表配列番号4は同報文364頁に
記載されているsucB遺伝子の塩基配列図上の456
6番目から4591番目の配列に相当する。なお、su
cA遺伝子とsucB遺伝子はオペロンをなすことが明
らかにされている。
【0041】sucA遺伝子およびsucB遺伝子をP
CRで増幅する際の鋳型とした染色体DNAはエシェリ
ヒア・コリW3110株から常法(生物工学実験書、日
本生物工学会編、97〜98頁、培風館、1992年)
により調製した。
【0042】PCR反応は、PCRテクノロジー(ヘン
リーエーリッヒ編、ストックトンプレス、1989年)
8頁に記載されている標準反応条件を用いた。
【0043】生成したPCR産物の末端をT4DNAポ
リメラーゼにより平滑にし、ベクターpBR322のE
coRVサイトにクローニングした。pBR322に増
幅したsucA遺伝子をクローン化したものをpBR−
sucAと名づけ、sucB遺伝子をクローン化したも
のをpBR−sucBと名づけた。ついでこれらプラス
ミドを用いてエシェリヒア・コリJM109株を常法
(生物工学実験書、日本生物工学会編、139頁、培風
館、1992年)により形質転換し、形質転換株からそ
れぞれプラスミドを調製し、クローン化されているDN
A断片の制限酵素地図を作成した。報告されているsu
cA遺伝子およびsucB遺伝子の制限酵素地図と比較
し、クローン化されている遺伝子が同一地図を有するこ
とを確認した。
【0044】次にpBR−sucBをKpnI及びEc
oRIで消化し、sucB遺伝子を含むKpnI−Ec
oRI断片を調製し、一方、pBR−sucAを同様に
KpnIとEcoRIで消化した後、大きい方のDNA
断片を調製し、両者をT4DNAリガーゼにより連結
し、pBR−sucABを作成した(図1)。
【0045】(2)エシェリヒア・コリW3110の染
色体DNA上のsucA遺伝子の破壊 図2にエシェリヒア・コリW3110の染色体DNA上
のsucA遺伝子の破壊するための手順を示した。
【0046】まずpBR−sucABをKpnIで消化
し、T4DNAポリメラーゼにより両末端を平滑にし
た。一方、pUC4K(ファルマシア社製)をPstI
で消化し、カナマイシン耐性遺伝子を含むDNA断片を
調製後、両末端をT4DNAポリメラーゼにより平滑末
端にした。両者をT4DNAリガーゼにより連結し、p
BR−sucA::Kmrを作成し、ついで本プラスミ
ドからカナマイシン耐性遺伝子を含むHindIII−
EcoRIDNA断片を調製し、この直鎖状DNA断片
を用いてエシェリヒア・コリ ジェネティック ストッ
ク センター(米国エール大学)から入手したエシェリ
ヒア・コリJC7623株を常法(生物工学実験書、日
本生物工学会編、139頁、培風館、1992年)によ
り形質添加し、JC7623株の染色体DNA上のsu
cA遺伝子がカナマイシン耐性遺伝子の挿入されたsu
cA遺伝子(sucA::Kmr)に組換えられた株を
25mg/lのカナマイシンを含むL寒天培地(バクト
トリプトン10g/l、バクトイーストエキストラクト
5g/l、NaCl5g/l、pH7.2、寒天15g
/l)上で選択した。エシェリヒア・コリJC7623
株はrecB-、recC-、sbcB-の形質を有して
いるため直鎖状のDNAを用いて形質転換しても頻度良
く相同組換えを起こす。カナマイシン耐性株12株を取
得し、12株それぞれから染色体DNAを調製し、Kp
nIで消化した後、sucA遺伝子を含むDNA断片を
プローブにしてサザンハイブリダイゼイションを行った
ところ、12株ともそのsucA遺伝子がカナマイシン
耐性遺伝子の挿入されたsucA遺伝子に組換えられた
株であることが確認された。組換えられたことは以下の
結果によって確認できる。pBR−sucAのsucA
遺伝子を含む2.6kbのEcoRI−HindIII
断片をプローブとしてサザンハイブリダイゼイションを
行うとJC7623株の染色体DNAをKpnIで消化
した場合、sucA遺伝子内にKpnIサイトが存在す
るために5.2kbと6.2kbの2本のバンドが検出
される。一方、カナマイシン耐性遺伝子が挿入されたs
ucA遺伝子に組換えられた株ではカナマイシン耐性遺
伝子をsucA遺伝子内に挿入する際にKpnIサイト
が破壊されているため、その染色体DNAのKpnI消
化物では11.4kbの1本のバンドしか検出されな
い。
【0047】このようにして得られたカナマイシン耐性
のエシェリヒア・コリJC7623株にP1ファージを
感染させ、溶菌液を調製後、エシェリヒア・コリW31
10へsucA::Kmrを形質導入した。P1ファー
ジによる形質導入は常法(生物工学実験書、日本生物工
学会編、75〜76頁、培風館、1992年)によっ
た。カナマイシン耐性株として分離した株の代表株をW
3110sucA::Kmrと名付けた。
【0048】W3110sucA::Kmr株、並びに
W3110株のαKGDH活性をReed等の方法(メ
ソッド イン エンザイモロジー、第13巻、55頁、
1969年)により測定した。その結果を表1に示す。
W3110sucA::Kmr株にはαKGDH活性が
検出されず、W3110sucA::Kmr株がαKG
DH欠損株であることが確認された。
【0049】
【表1】
【0050】
【実施例2】DL−アスパラギン酸βヒドロキサメート
耐性株の分離 エシェリヒア・コリW3110sucA::Kmrを2
YT液体培地(バクトトリプトン16g/l、バクトイ
ーストエキストラクト10g/l、NaCl5g/l、
pH7.2)で一晩37℃で培養した。培養液0.1m
lを5mlの2YT液体培地に植菌し、37℃でさらに
3時間培養し、対数増殖期中期の菌体を集菌した。50
mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)に懸濁
し、遠心分離により再度集菌した。再度同じ操作を行い
菌体を洗浄した後、200mg/LのNGを含む50m
Mリン酸カリウムバッファーに懸濁し、30分間静置し
た後、遠心分離により集菌した。50mMリン酸バッフ
ァーに菌体を懸濁し、遠心分離により集菌した。さらに
2度同じ操作を行い菌体を洗浄した後、DL−アスパラ
ギン酸βヒドロキサメート0.25g/lを含むM9最
少培地(グルコース5g/l、リン酸水素2ナトリウム
17.1g/l、リン酸2水素カリウム3.0g/l、
塩化アンモニウム1.0g/l、NaCl0.5g/
l、硫酸マグネシウム7水和物0.25g/l、チアミ
ン塩酸塩1mg/l、寒天15g/l)に塗布し、37
℃で5〜8日間培養した。
【0051】DL−アスパラギン酸βヒドロキサメート
0.25g/Lを含むM9最少培地上に出現したコロニ
ーを釣り上げ、同組成のM9最少培地にて単コロニー分
離を行い、DL−アスパラギン酸βヒドロキサメート耐
性株AJ13199を分離した。親株であるW3110
sucA::KmrはDL−アスパラギン酸βヒドロキ
サメート0.25g/Lを含むM9最少培地に塗布した
場合、全く生育できず、コロニーの形成は見られなかっ
た。
【0052】
【実施例3】L−グルタミン酸生産菌の培養、及びL−
グルタミン酸生産 分離したDL−アスパラギン酸βヒドロキサメート耐性
株AJ13199、その親株であるW3110suc
A::KmrをL寒天培地(バクトトリプトン10g/
l、バクトイーストエキストラクト5g/l、NaCl
5g/l、寒天15g/l、pH7.2)で前培養した
後、120℃、10分間蒸気殺菌した下記組成のL−グ
ルタミン酸生産用培地20mLを注入した500ml容
振とう坂口フラスコに植菌して、37℃にて糖が枯渇す
るまで振とう培養したところ表2に示すような結果を得
た。
【0053】L−グルタミン酸生産用培地 グルコース(別殺菌) 40.0g/l 硫酸マグネシウム(別殺菌) 1.0g/l 硫安 20.0g/l リン酸2水素カリウム 1.0g/l 硫酸第一鉄7水和物 10.0mg/l 硫酸マンガン5水和物 10.0mg/l バクトイーストエキストラクト 2.0g/l チアミン塩酸塩 10.0mg/l 炭酸カルシウム(乾熱殺菌) 50.0g/l pH7.0(KOHで調製)
【0054】
【表2】
【0055】DL−アスパラギン酸βヒドロキサメート
耐性株AJ13199は親株に比し、グルタミン酸の蓄
積量は変わらなかったが、生育速度が高く、菌体量も多
く、培養時間が大幅に短縮され、単位時間当りのグルタ
ミン酸生産性は大幅に向上した。
【0056】AJ13199株以外にも多数のDL−ア
スパラギン酸βヒドロキサメート耐性株を分離し、実施
例3に示した方法で評価したところAJ13199と同
様に生育速度が高く、菌体量が多く、培養時間が大幅に
短縮された株が多数見いだされた。
【0057】
【実施例4】グルタミン代謝拮抗物質アザセリン、DO
N耐性株の分離 エシェリヒア・コリW3110から誘導されたエシェリ
ヒア・コリAJ13199(αKGDH欠損、アスパラ
ギン酸βヒドロキサメート耐性)を2YT培地(バクト
トリプトン16g/l、バクトイーストエキストラクト
10g/l、NaCl5g/l、pH7.2)で一晩3
7℃で培養。培養液0.1mlを5mlの2YT培地に
植菌し、37℃でさらに3時間培養し、対数増殖期中期
の菌体を集菌。50mMリン酸カリウムバッファー(p
H6.0)に懸濁し、遠心分離により再度集菌。再度同
じ操作を行い菌体を洗浄後、200mg/LのNGを含
む50mMリン酸カリウムバッファーに懸濁し、30分
間静置した後、遠心分離により集菌。50mMリン酸カ
リウムバッファーに菌体を懸濁し、遠心。さらに2度同
じ操作を行い菌体を洗浄した後、アザセリン5mg/l
を含むM9最少培地(グルコース5g/l、リン酸水素
2ナトリウム17.1g/l、リン酸2水素カリウム
3.0g/l、塩化アンモニウム1.0g/l、NaC
l0.5g/l、硫酸マグネシウム7水和物0.25g
/l、チアミン塩酸塩1mg/l、寒天15g/l)、
或はDON25mg/lを含むM9最少培地に塗布し、
37℃で5〜8日間培養した。
【0058】アザセリン、或はDONを含むM9最少培
地上に出現したコロニーを釣り上げ、アザセリンを5m
g/l、或はDON25mg/lを含むM9最少培地に
てそれぞれ単コロニー分離を行い、アザセリン耐性株、
及びDON耐性株を分離した。親株であるAJ1319
9はアザセリン5mg/l、或はDON25mg/lを
含むM9最少培地に塗布した場合、全く生育できず、コ
ロニーの形成は見られなかった。
【0059】
【実施例5】L−グルタミン酸生産菌の培養、及びL−
グルタミン酸生産 分離したアザセリン耐性株AJ13200、DON耐性
株AJ13201、及びをその親株であるAJ1319
9をL寒天培地(バクトトリプトン10g/l、バクト
イーストエキストラクト5g/l、NaCl5g/l、
寒天15g/l、pH7.2)で前培養した後、120
℃、10分間蒸気殺菌した下記組成のL−グルタミン酸
生産用培地20mlを注入した500ml容坂口フラス
コに植菌して、37℃にて振とう培養した。14時間培
養後、糖が枯渇したのでさらに培地中の糖濃度が40g
/lになるように追添し(培養ブロスを1.6ml引き
抜き、1.6mlの50%グルコース溶液を添加)、さ
らに9時間培養したところ表1に示すような結果を得
た。
【0060】L−グルタミン酸生産用培地 グルコース(別殺菌) 40.0g/l 硫酸マグネシウム(別殺菌) 2.0g/l 硫安 30.0g/l リン酸2水素カリウム 2.0g/l 硫酸第一鉄7水和物 20.0mg/l 硫酸マンガン5水和物 20.0mg/l バクトイーストエキストラクト 4.0g/l L−メチオニン 0.5g/l チアミン塩酸塩 20.0mg/l 炭酸カルシウム(乾熱殺菌) 50.0g/l pH7.0(KOHで調製)
【0061】
【表3】
【0062】アザセリン耐性株AJ13200、及びD
ON耐性株AJ13201はその親株であるAJ131
99に比し、高い収率でグルタミン酸を蓄積した。
【0063】AJ13200株、及びAJ13201株
以外にもAJ13199株からアザセリン耐性株、及び
DON耐性株を分離し、培養評価したところ、AJ13
200株、AJ13201株と同様に親株AJ1319
9株よりも高い収率でグルタミン酸を蓄積する株が見い
だされた。
【0064】
【実施例6】エシェリヒア・コリAJ13199株の親
株であるW3110sucA::Kmrからも実施例1
に記した方法によりアザセリン耐性株、DON耐性株を
分離し、120℃で10分間殺菌した下記組成のL−グ
ルタミン酸生産培地20mlを注入した500ml溶坂
口フラスコに実施例2に記した方法で前培養した変異
株、及びW3110sucA::Kmrを植菌し、糖が
枯渇するまで培養したところ、実施例2の結果と同様に
分離したアザセリン耐性株、及びDON耐性株の中に
は、親株に比しL−グルタミン酸生産性が向上した株が
見いだされた。
【0065】L−グルタミン酸生産培地 グルコース(別殺菌) 40 g/l 硫酸マグネシウム7水和物(別殺菌) 1 g/l 硫安 20 g/l リン酸2水素カリウム 1 g/l 硫酸第一鉄7水和物 10mg/l 硫酸マンガン5水和物 10mg/l バクトイーストエキストラクト 2 g/l チアミン塩酸塩 10mg/l 炭酸カルシウム(乾熱殺菌) 50 g/l pH7.0(KOHで調製)
【0066】
【発明の効果】本発明の方法により、エシェリヒア属に
属する変異株のL−グルタミン酸生産能を高めることが
でき、L−グルタミン酸を安価かつ効率的に製造するこ
とができる。
【0067】エシェリヒア・コリAJ12624は、平
成3年7月24日に工業技術院生命工学工業技術研究所
(郵便番号305 日本国茨城県つくば市東一丁目1番
3号)に寄託されており、受託番号FERM P−12
379が付与されている。同株は、平成4年5月15日
にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番
号FERM BP−3853が付与されている。エシェ
リヒア・コリAJ12628は、平成3年7月24日に
工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305
日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に寄託されて
おり、受託番号FERM P−12380が付与されて
いる。同株は、平成4年5月15日にブタペスト条約に
基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−
3854が付与されている。エシェリヒア・コリAJ1
2949は、平成5年12月28日に工業技術院生命工
学工業技術研究所(郵便番号305 日本国茨城県つく
ば市東一丁目1番3号)に寄託されており、受託番号F
ERM P−14039が付与されている。同株は、平
成6年11月11日にブタペスト条約に基づく国際寄託
に移管され、受託番号FERM BP−4881が付与
されている。エシェリヒア・コリAJ13199は、平
成8年4月18日に工業技術院生命工学工業技術研究所
(郵便番号305 日本国茨城県つくば市東一丁目1番
3号)に寄託されており、受託番号FERM P−15
573が付与されている。エシェリヒア・コリAJ13
200は、平成8年4月18日に工業技術院生命工学工
業技術研究所(郵便番号305 日本国茨城県つくば市
東一丁目1番3号)に寄託されており、受託番号FER
M P−15574が付与されている。エシェリヒア・
コリAJ13201は、平成8年4月18日に工業技術
院生命工学工業技術研究所(郵便番号305 日本国茨
城県つくば市東一丁目1番3号)に寄託されており、受
託番号FERM P−15575が付与されている。
【0068】
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列の特徴:エシェリヒア・コリsucA遺伝子増幅用
プライマー 配列 ACGCGCAAGC GTCGCATCAG G 21
【0069】配列番号:2 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列の特徴:エシェリヒア・コリsucA遺伝子増幅用
プライマー ATCGGCTACG AATTCAGGCA G 22
【0070】配列番号:3 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列の特徴:エシェリヒア・コリsucB遺伝子増幅用
プライマー 配列 CCGGTCGCGG TACCTTCTTC 20
【0071】配列番号:4 配列の長さ:26 配列の型:核酸 鎖の数:一本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:合成DNA 配列の特徴:エシェリヒア・コリsucB遺伝子増幅用
プライマー 配列 CGTAGACCGA ATTCTTCGTA TCGCTT 26
【図面の簡単な説明】
【図1】pBR−sucABの構築図を示す。
【図2】エシェリヒア・コリW3110の染色体DNA
上のsucA遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子が挿入さ
れたsucA遺伝子(sucA::Kmr)に置き換え
る過程を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:19) (C12P 13/14 C12R 1:19)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エシェリヒア属に属し、グルタミン代謝
    拮抗物質に耐性を有し、かつL−グルタミン酸生産能を
    有する微生物。
  2. 【請求項2】 エシェリヒア属に属し、グルタミン代謝
    拮抗物質に耐性を有し、かつα−ケトグルタル酸デヒド
    ロゲナーゼ活性が欠損もしくは低下した請求項1記載の
    微生物。
  3. 【請求項3】 グルタミン代謝拮抗物質が、アザセリン
    または6−ジアゾ−5−オキソ−ノルロイシンである請
    求項1または2記載の微生物。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし3記載の微生物を液体培
    地に培養し、培養液中にL−グルタミン酸を生成蓄積せ
    しめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるL
    −グルタミン酸の製造法。
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