JPH09291313A - 磁気特性・被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

磁気特性・被膜特性に優れる方向性けい素鋼板の製造方法

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JPH09291313A
JPH09291313A JP10500196A JP10500196A JPH09291313A JP H09291313 A JPH09291313 A JP H09291313A JP 10500196 A JP10500196 A JP 10500196A JP 10500196 A JP10500196 A JP 10500196A JP H09291313 A JPH09291313 A JP H09291313A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁気特性・被膜特性に優れる方向性けい素鋼
板を安定して生産できるようにする。 【解決手段】 AlN 系インヒビターを有する方向性けい
素鋼板を製造するにあたり、脱炭焼鈍工程における雰囲
気中のP(H2O)/P(H2) の値を、その均熱過程で0.70
未満、その昇温過程では均熱過程の値より低くし、か
つ、焼鈍分離剤に、MgO :100 重量部に対して、TiO2
0.5 〜15重量部、SnO2:0.1 〜10重量部およびSr化合物
をSr換算で0.1 〜10重量部のそれぞれの範囲で複合添加
したものを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、方向性けい素鋼
板の製造方法に関し、特に脱炭焼鈍工程及び焼鈍分離剤
組成を工夫することによって磁気特性及び被膜特性を大
幅に改善しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】方向性けい素鋼板は、主として変圧器あ
るいは回転機器等の鉄心材料として使用され、磁気特性
として磁束密度が高く、鉄損及び磁気歪が小さいことが
要求される。磁気特性に優れる方向性けい素鋼板を得る
には、{110}<001>方位、いわゆるゴス方位に
高度に集積した2次再結晶組織を得ることが肝要であ
る。
【0003】かかる方向性けい素鋼板は、2次再結晶に
必要なインヒビター、例えばMnS, MnSe, AlN等を含む方
向性けい素鋼スラブを加熱して熱間圧延を行ったのち、
必要に応じて焼鈍を行い、1回あるいは中間焼鈍を挟む
2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、次いで脱炭
焼鈍を行ったのち、鋼板にMgO を主成分とする焼鈍分離
剤を塗布してから最終仕上げ焼鈍を行うことによって製
造される。そして、この方向性けい素鋼板の表面には、
特殊な場合を除いて、フォルステライト(Mg2SiO4)質絶
縁被膜(以下、単にフォルステライト絶縁被膜またはフ
ォルステライト被膜という)が形成されているのが普通
である。この被膜は表面の電気的絶縁だけでなく、その
低熱膨張性に起因する引張応力を鋼板に付与することに
より、鉄損さらには磁気歪をも効果的に改善する。
【0004】このフォルステライト被膜は仕上焼鈍にお
いて形成されるが、その被膜形成挙動は鋼中のMnS, MnS
e, AlN等のインヒビターの挙動に影響するため、優れる
磁気特性を得るために必須の過程である2次再結晶その
ものにも影響を及ぼす。また、形成されたフォルステラ
イト被膜は、2次再結晶が完了したあとには不用となる
インヒビター成分を被膜中に吸い上げて鋼を純化するこ
とによっても鋼板の磁気特性の向上に貢献する。従っ
て、このフォルステライト被膜形成過程を制御して被膜
を均一に生成させることは、優れた品質の方向性けい素
鋼板を得るうえで非常に重要である。
【0005】また、当然のことながら形成されたフォル
ステライト被膜は外観が均一で欠陥のないこと、かつせ
ん断、打抜き及び曲げ加工等において被膜のはく離を生
じないようにするため、密着性に優れることが要求され
る。さらに、その表面は平滑で鉄心として積層した時
に、高い占績率を有することが要求とされる。
【0006】かように製品品質に多大な影響を及ぼすフ
ォルステライト絶縁被膜は、一般に以下のような工程で
形成される。まず、所望の最終板厚に冷間圧延された方
向性けい素鋼板用の最終冷延板を、湿水素中で700 〜90
0 ℃の温度で連続焼鈍を行う。この焼鈍(脱炭焼鈍)に
より 冷間圧延後の組織を、最終仕上げ焼鈍において適正
な2次再結晶が起こるように1次再結晶させ、 最終仕上げ焼鈍における2次再結晶を完全に行わせ
るとともに、製品の磁気特性の時効劣化を防止するた
め、鋼中に0.01〜0.10wt%程度含まれる炭素を0.003 %
程度以下までに脱炭し、 鋼中Siの酸化によって、SiO2を含むサブスケールを
鋼板表層に生成させる。その後、MgO を主成分とする焼
鈍分離剤を鋼板上に塗布し、コイル状に巻取って還元あ
るいは非酸化性雰囲気にて2次再結晶焼鈍と純化焼鈍を
兼ねた最終仕上げ焼鈍を最高1200℃程度の温度で行うこ
とにより、主として以下の反応式で示される固相反応に
よってフォルステライト絶縁被膜を形成させるのであ
る。
【数1】2MgO +SiO2→Mg2SiO4
【0007】このフォルステライト絶縁被膜は、1μm
前後の微細結晶が緻密に集積したセラミクッス被膜であ
り、上述の如く、脱炭焼鈍により鋼板表層に生成したSi
O2を含有するサブスケールを一方の原料物質として、そ
の鋼板上に生成させるものであるから、このサブスケー
ルの種類、量、分布等はフォルステライトの核生成や粒
成長挙動に関与するとともに被膜結晶粒の粒界や粒その
ものの強度にも影響を及ぼし、従って仕上げ焼鈍後の被
膜品質にも多大な影響を及ぼす。
【0008】また、他方の原料物質であるMgO を主体と
する焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に
塗布されるため、乾燥させたのちも物理的に吸着したH2
O を保有するほか、一部が水和してMg(OH)2 に変化して
いる。そのため、仕上げ焼鈍中は800 ℃付近まで少量な
がらH2O を放出し続ける。このH2O により仕上げ焼鈍中
に鋼板表面は酸化される。この酸化もフォルステライト
の生成挙動に影響を及ぼすとともにインヒビターの挙動
にも影響を与え、この追加酸化が多いと磁気特性が劣化
する要因となる。このMgO が放出するH2O による酸化し
易さも、脱炭焼鈍で形成されたサブスケールの物性に大
きく影響される。また、当然ながら、焼鈍分離剤中に配
合されるMgO 以外の添加物も、たとえ添加量が少量であ
っても、被膜形成および2次再結晶過程に大きく影響す
る。
【0009】特にインヒビター成分としてAlN を含む方
向性けい素鋼板においては、このサブスケールの物性が
仕上げ焼鈍中の脱窒挙動あるいは焼鈍雰囲気からの侵窒
挙動に大きく影響を及ぼし、従って磁気特性にも大きく
影響を与える。すなわち、脱窒が進行し過ぎるとインヒ
ビターの抑制力は弱まり、十分に2次再結晶せず磁気特
性の劣化をもたらす。逆に侵窒が進行し過ぎるとインヒ
ビターの抑制力が過剰となって2次再結晶したとして
も、正常な2次再結晶が生じにくくなり、この場合も磁
気特性の劣化が生じる。このように、インヒビターとし
てAlN を用いる場合には、高磁束密度が得られる反面、
2 次再結晶が不安定になる傾向があり、その主要な原因
のひとつとしてサブスケールの物性のばらつきが影響し
ていると考えられている。
【0010】以上述べたように、脱炭焼鈍において鋼板
表層に形成されるサブスケールの物性を制御すること
は、優れたフォルステライト質絶縁被膜を適切な温度で
均一に形成させるために、また、2 次再結晶を正常に発
現させるために欠かせない技術であり、方向性けい素鋼
板の製造技術の重要な項目の一つである。
【0011】これまで方向性けい素鋼板の脱炭焼鈍に関
しては、例えば、特開昭59−185725号公報に開示されて
いるように、脱炭焼鈍後鋼板の酸素含有量を制御する方
法、特公昭57−1575号公報に開示されているように、雰
囲気の酸化度を脱炭焼鈍の前部領域では0.15以上とし、
引き続く後部領域の酸化度を0.75以下でかつ前部領域よ
りも低くする方法、特開平2−240215号公報や特公昭54
−24686 号公報に示されているように脱炭焼鈍後に非酸
化性雰囲気中で850 〜1050℃の熱処理を行う方法、ある
いは特公平3−57167 号公報に開示されているように、
脱炭焼鈍後の冷却を750 ℃以下の温度域では酸化度を0.
008 以下として冷却する方法等が知られている。
【0012】また、上述した脱炭焼鈍に関する提案とは
別に、磁気特性の向上を目的に焼鈍分離剤中に配合され
るMgO 以外の添加物として、特公昭54−14567 号公報に
開示されているように、Cu, Sn, Ni, Coあるいはそれら
を含む化合物を0.01〜15重量部(金属元素として)添加
する方法、特開昭60−243282号公報に開示されているよ
うにTiO2またはTiO を0.5 〜10重量部とSrS, SnS, CuS
を0.1 〜5.0 重量部、またはそれに加えて硝酸アンチモ
ンを0.05〜2.0 重量部添加する方法、特開昭61−79780
号公報に示されているように、コロイド状のSbもしくは
Sbを含む化合物またはコロイド状のSnもしくはSnを含む
化合物を添加する方法等が知られている。
【0013】一方、被膜特性の改善に関しては焼鈍分離
剤中に主成分であるMgO に加えてTiO2等のTi化合物を含
有させる技術が数多く開示されている。例えば特公昭51
−12451 号公報では、Mg化合物100 重量部に対しTi化合
物が2〜40重量部となるように配合することにより、い
ずれもフォルステライト被膜の均一性と密着性が向上す
る方法が開示されている。また、特公昭56−15466 号公
報では焼鈍分離剤に用いるTiO2を微細粒とすることによ
り、Ti化合物からなる黒点状付着物を消滅させる方法が
開示されている。さらに、特公昭57−32716 号公報で
は、フォルステライト絶縁被膜を密着性が良くかつ優れ
た均一性をもって形成させる方法として、Sr化合物をSr
換算で0.1 〜10重量部配合する技術が提案されている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
脱炭焼鈍時の雰囲気制御法は、いずれも一定の効果は認
められるとはいえ必ずしも十分なものではなく、ストリ
ップの幅方向あるいは長手方向で磁気特性やフォルステ
ライト絶縁被膜の密着性、厚みあるいは均一性などが劣
化する場合があり、優れた品質を有する製品を安定生産
し、さらなる歩留まり向上を図るためには、いまだ改善
の余地を残すものであった。特に前述したように、AlN
をインヒビターとして利用することにより高磁束密度の
方向性けい素鋼板を製造する場合には、2次再結晶が不
安定になって磁気特性がばらつく傾向が往々にしてみら
れた。
【0015】また、上記焼鈍分離剤中に配合されるMgO
以外の添加物についても、いずれもそれなりの効果は認
められるとはいえ必ずしも十分なものではなかった。さ
らにいえば、フォルステライト絶縁被膜は脱炭焼鈍時に
生成するサブスケールを一方の原料として、またMgO を
主体とする焼鈍分離剤を他方の原料として生成するもの
であるから、その両者がフォルステライト絶縁被膜の品
質のばらつき及び磁気特性のばらつきに大きく影響する
と思われるが、その観点から、サブスケールと焼鈍分離
剤との相互関係を考慮して、それらを同時に検討した例
はなかった。
【0016】この本発明は、上記問題点を有利に解決し
ようとするものであり、コイルの全幅及び全長にわたっ
て欠陥のない均一で密着性に優れたフォルステライト絶
縁被膜を有し、かつ磁気特性にも優れる方向性けい素鋼
板を得るための製造方法を提案することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】前述したように、フォル
ステライト絶縁被膜は脱炭焼鈍時に生成するサブスケー
ルを一方の原料として、またMgO を主体とする焼鈍分離
剤を他方の原料として生成するものであるから、それら
両者がフォルステライト絶縁被膜の品質のばらつき及び
磁気特性のばらつきに大きく影響すると考えられる。発
明者らは、この観点に基づき、ストリップにおけるフォ
ルステライト絶縁被膜の品質のばらつき及び磁気特性の
ばらつきの原因を詳細に調査したところ、脱炭焼鈍にお
いて鋼板表層に生成するサブスケールの量及び質のばら
つきが大きく影響していることを見いだした。このこと
は、ストリップの幅方向あるいは長手方向において、サ
ブスケール形成反応が必ずしも均一には起こっていない
ことを意味する。
【0018】この原因について更に調査を進めたとこ
ろ、特に脱炭焼鈍の昇温過程における雰囲気の酸化性の
変動が関係していることを見いだした。さらにMgO に加
えて焼鈍分離剤中に配合する添加物を検討したところ、
TiO2, SnO2, Sr化合物の複合添加が磁気特性および被膜
特性の更なる向上に効果があることを見いだした。すな
わち、いかにサブスケールを均一に生成させても、鋼板
をコイル状に巻取って最終仕上げ焼鈍する以上、コイル
の内・中・外巻では磁気特性・被膜特性にある程度の差
が生じてしまう。その差を抑制し、さらなる特性の向上
を図るのにこれらの添加物が有効であることがわかっ
た。この発明は以上の知見にもとづいてなされたもので
あり、その要旨とするところは以下の通りである。
【0019】sol Al:0.01〜0.05wt% および、N:0.00
4 〜0.012 wt% を含有する方向性けい素鋼板用スラブを
素材として、熱間圧延し、その後1回または中間焼鈍を
挟む2回以上の冷間圧延を行い、ついで、脱炭焼鈍を施
したのち、MgO を主体とする焼鈍分離材を塗布してか
ら、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程により方向性けい
素鋼板を製造するにあたり、脱炭焼鈍工程における雰囲
気中の水素分圧に対する水蒸気分圧の比:P(H2O)/P
(H2)の値を、その均熱過程で0.70未満、その昇温過程で
は上記均熱熱過程より低い値とし、焼鈍分離剤が、MgO
:100 重量部に対して、TiO2を0.5 〜15重量部、SnO2
を0.1 〜10重量部およびSr化合物をSr換算で0.1 〜10重
量部のそれぞれの範囲内で複合添加したものであること
を特徴とする磁気特性・被膜特性に優れる方向性けい素
鋼板の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】さて、発明者らは、脱炭焼鈍にお
ける雰囲気の酸化性、すなわち、水素分圧に対する水蒸
気分圧の比:P(H2O) /P(H2)(以下、単にP(H2O) /
P(H2)で表わす)と焼鈍分離剤中のMgO に加える添加物
が被膜外観、密着性および磁気特性ならびにそれらの特
性の均一性に及ぼす影響について、詳細に調査した。こ
れらの調査結果を以下に列記する。
【0021】実験1 C:0.07wt%(以下単に%で示す)、Si:3.30%、Mn:
0.069 %、Se:0.020%、sol Al:0.025 %、N:0.008
5%、およびSb:0.025 %を含有し、残部は実質的にFe
の組成からなる複数の方向性けい素鋼板用スラブを、そ
れぞれ熱間圧延したのち、1000℃の温度で均一化焼鈍を
行ってから、1000℃の温度で2分間の中間焼鈍を挟む2
回の冷間圧延によって最終冷延板厚:0.23mmとした。つ
いで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したの
ち、H2−H2O −N2雰囲気中にて840℃の温度で2分間の
脱炭焼鈍を施した。
【0022】この脱炭焼鈍の際、昇温過程および均熱過
程での雰囲気の酸化性を露点とH2ガス濃度の調整によっ
て、P(H2O) /P(H2)が0.2 〜0.8 の範囲でそれぞれ独
自に変化させた。
【0023】その後、MgO にTiO2を6%配合した焼鈍分
離剤をスラリー状にしてそれぞれの脱炭焼鈍板コイルに
塗布し乾燥させたのち、H2雰囲気中で1200℃・10時間の
2次再結晶・純化焼鈍(仕上げ焼鈍)に供した。
【0024】かくして得られた各コイル内・中・外巻部
のフォルステライト被膜の外観および均一性を評価する
とともに、磁気特性(磁束密度B8 、鉄損W17 50)を
調査した。
【0025】フォルステライト被膜の評価結果を図1〜
3に示す。ここで図1はコイル内巻部、図2はコイル中
巻部および図3はコイル外巻部におけるそれぞれ脱炭焼
鈍時の昇温過程および均熱過程でのP(H2O) /P(H2)と
仕上げ焼鈍後のフォルステライト被膜の外観との関係を
示すグラフである。
【0026】図1〜3から明らかなように、脱炭焼鈍時
の均熱過程でのP(H2O) /P(H2)の値が0.7 未満で、昇
温過程でのP(H2O) /P(H2)の値が均熱過程より低い場
合に、光沢のある美麗な灰色の均一な被膜が得られてい
る。ただし、コイル層間の雰囲気の流通性の悪いと考え
られるコイル中巻部の被膜の均一性は、コイルの内巻部
および外巻部に比しやや劣っている。一方、均熱過程で
のP(H2O) /P(H2)の値を0.7 以上とすると、昇温過程
でのP(H2O) /P(H2)の値の如何にかかわらず優れる被
膜特性は得られない。
【0027】ついで、磁気特性の調査結果の一例を表1
に示す。
【0028】
【表1】
【0029】表1から明らかなように、均熱過程でのP
(H2O) /P(H2)の値が0.7 未満で、かつ、昇温過程での
P(H2O) /P(H2)が均熱過程より低い場合にのみ良好な
磁気特性が得られている。しかし、コイルの中巻部の磁
気特性は内巻部及び外巻部より若干劣っている。
【0030】ここに、けい素鋼板の表面に生成する酸化
物の平衡状態図を図4に示す。この図4によると、P(H
2O) /P(H2)=0.7 は明らかにFeO の生成域である。よ
って、このような条件のもとで形成されるサブスケール
は保護性が悪くて仕上焼鈍中にMgO が放出するH2O によ
る酸化が激しく、良好なフォルステライト被膜が得られ
なくなるものと考えられる。
【0031】なお、上記したように均熱過程より昇温過
程のP(H2O) /P(H2)を低くすることによってフォルス
テライト被膜の品質が向上する詳細な理由は明らかでな
いが、昇温過程で生成するサブスケールが均熱過程で生
成するサブスケールの保護性を高めるためと考えられ
る。
【0032】実験2 コイル中巻部の被膜特性や磁気特性が内巻部および外巻
部に比し劣ることから、それらの向上をはかるため、Mg
O を主体とする焼鈍分離剤へ添加する添加物の磁気特性
に及ぼす影響を調査した。
【0033】C:0.065 %、Si:3.35%、Mn:0.072
%、Se:0.018 %、sol Al:0.023 %、N:0.0080%、
およびSb:0.026 %を含有し、残部は実質的にFeの組成
からな複数の方向性けい素鋼板用スラブを、それぞれ熱
間圧延したのち、1000℃の温度で2分間の中間焼鈍を挟
む2回の冷間圧延によって最終冷延板厚:0.23mmとし
た。ついで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化し
たのち、昇温過程のP(H2O) /P(H2):0.4 、均熱過程
のP(H2O) /P(H2):0.5 の条件のH2−H2O −N2雰囲気
中にて、840 ℃の温度で2分間の脱炭焼鈍を施した。
【0034】その後、MgO :100 重量部に対して、TiO2
を0〜20重量部、SnO2を0〜15重量部、Sr化合物として
Sr(OH)2 ・8H2O をSr換算で0〜15重量部のそれぞれの
範囲で変化させて配合した焼鈍分離剤をスラリーとして
脱炭焼鈍板コイルにそれぞれ塗布し乾燥させたのち、最
終仕上焼鈍として、25%N2含有のH2気流中で15℃/hの
昇温速度で1200℃の温度までの昇温に続いてH2雰囲気中
で1200℃・5時間の焼鈍を行った。しかるのち、りん酸
マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーテ
ィングを施した。
【0035】かくして得られた各製品コイルの内巻部、
中巻部および外巻部について、磁束密度(B8)、鉄損(W
17/50 ) 、被膜の曲げ密着性および被膜の外観などにつ
いて調査した。
【0036】なお、被膜の曲げ密着性は5mm間隔の種々
の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜がはく離し
ない最小径を測定したものである。これらの結果を表2
〜4に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】ここで、表2はTiO2の添加量を6重量部と
一定にした場合、表3はSnO2の添加量を5重量部と一定
にした場合、表4はSr(OH)2 ・8H2O の添加量をSr換算
で5重量部と一定にした場合のものである。
【0041】これらの表から明らかなように、MgO :10
0 重量部に対して、TiO2を0.5 〜15重量部の範囲、SnO2
を0.1 〜10重量部の範囲、Sr化合物をSr換算で0.1 〜10
重量部の範囲で複合添加した焼鈍分離剤を、均熱過程の
P(H2O) /P(H2)が0.70未満で、かつ、昇温過程のP(H
2O) /P(H2)が均熱過程のそれよりも低い条件で脱炭焼
鈍を行って生成したサブスケールを有する鋼板に塗布し
て仕上げ焼鈍を実施することで、被膜特性および磁気特
性に極めて優れる製品がコイル全長にわたって得られる
ことが分る。
【0042】特に、雰囲気の流通性の悪いコイル中巻部
での被膜、磁気特性ともに改善効果が大きいことがわか
る。また、コイル外巻部および内巻部では、添加物を上
記範囲内で複合添加した焼鈍分離剤を塗布したものは、
そうでないものに比し、被膜特性と磁束密度(B8)は同
等であるものの鉄損が著しく改善されている。
【0043】このように、最終仕上げ焼鈍時の雰囲気の
流通性が悪いコイル中巻部で被膜特性および磁気特性
(磁束密度、鉄損とも)が大きく改善されるのは、焼鈍
分離剤中の添加物であるTiO2, SnO2およびSr化合物の3
者が共存することにより、被膜形成過程が大きく変化
し、それを反映して2次再結晶過程も変化することによ
るものと考えられる。
【0044】これらの現象に関する2,3の調査結果を
以下に記す。MgO :100 重量部、TiO2:6重量部、Sn
O2:5重量部およびSr化合物をSr換算で:2重量部の組
成になる焼鈍分離剤を用いて仕上げ焼鈍を行ったとき
の、仕上げ焼鈍過程でのSn分析結果を図5に示す。図5
(a) は温度と被膜付き鋼板のSn含有量との関係、図5
(b) は温度と鋼中のSn含有量との関係のグラフである。
【0045】これらの図から明らかなように、仕上げ焼
鈍中にSnO2が分解してSnが鋼中に侵入していくことがわ
かる。この時、当然のことながらSnO2の分解によって酸
素が放出されてコイル層間の雰囲気に影響を及ぼすこと
が考えられる。
【0046】つぎに、焼鈍分離剤として、 A---MgO:100 重量部に対してTiO2:6重量部添加(こ
の発明に不適合) B---MgO:100 重量部に対してTiO2:6重量部、SnO2
3重量部およびSr化合物としてSr(OH)2 ・8H2OをSr換算
で:2重量部複合添加(この発明に適合) の2種類をそれぞれ脱炭焼鈍板に塗布し、仕上げ焼鈍中
に試料を引きだして、各温度での鋼板表面の蛍光X線分
析(酸素)測定を行った。これらの測定結果を図6に示
す。また、図7および図8に仕上焼鈍中900 ℃および10
50℃の温度での鋼板表面における反射赤外吸収スペクト
ルを測定した結果を示す。
【0047】これらの図から、焼鈍分離剤にAを用いた
場合に対しBを用いた場合では、2次再結晶開始前の95
0 ℃以下の温度では被膜(オリビン)の形成が抑制され
ているが、2次再結晶が進行中あるいは進行した975 ℃
以上の温度では逆に被膜(フォルステライト)の形成が
促進されていることがわかるとともに、焼鈍分離にTiO2
を単独で添加したものとTiO2,SnO2およびSr化合物を複
合添加したものとでは被膜の形成状況が明らかに異なる
ことを示している。
【0048】また、MgO を主体とする焼鈍分離剤にTi
O2、SnO2およびSr化合物の3者が共存した場合に磁気特
性(特に鉄損)が改善される理由を調査するため、上記
の焼鈍分離剤AおよびBをそれぞれ脱炭焼鈍板に塗布
し、仕上げ焼鈍を行った製品板について、1.7(T)・50Hz
における直流磁化鉄損 (Wh17/50 ) すなわちヒステリシ
ス損を測定した。それらの結果を図9に示す。
【0049】図9は、焼鈍分離剤にA(TiO2単独添加)
とB(TiO2、SnO2およびSr化合物の複合添加)とをそれ
ぞれ使用した場合の、磁束密度(B8)とヒステリシス損
(Wh 17/50 )との関係を示すグラフである。
【0050】この図から、焼鈍分離剤にBを使用した場
合はAを使用した場合に比し、磁束密度(B8)が同等の
値を示していてもヒステリシス損が低い値を示している
ことがわかる。したがって、焼鈍分離剤中にTiO2、SnO2
およびSr化合物を複合添加した場合の磁気特性の改善効
果はヒステリシス損の減少が大きく寄与しているものと
考えられる。
【0051】実験3 さらに、この発明に適合する条件で製造した場合、すな
わち、均熱過程のP(H 2O) /P(H2)が0.70未満で、か
つ、昇温過程のP(H2O) /P(H2)が均熱過程のそれより
も低い条件で脱炭焼鈍を行ってサブスケールを生成させ
た鋼板に、MgO を主成分とする焼鈍分離剤中に添加物と
してTiO2、SnO2およびSr化合物の3者を共存させた場合
のヒステリシス損の改善に関する調査を行った。
【0052】C:0.062 %、Si:3.25%、Mn:0.071
%、Se:0.022 %、sol Al:0.027 %、N:0.0082%お
よびSb:0.026 %を含有し、残部は実質的にFeの組成か
らなる複数の方向性けい素鋼板用スラブをそれぞれ熱間
圧延したのち、1000℃の温度で均一化焼鈍を行ってか
ら、1000℃の温度で2分間の中間焼鈍を挟む2回の冷間
圧延によって最終冷延板厚:0.23mmとした。ついで、こ
れらの冷延板を脱脂して表面を清浄化したのち、昇温過
程のP(H2O) /P(H2):0.35、均熱過程のP(H2O)/P
(H2):0.4 のH2−H2O −N雰囲気中にて840 ℃の温度で
2分間の脱炭焼鈍を施した。
【0053】その後、焼鈍分離剤として、 C---MgO 100重量部に対して、TiO2を10重量部添加した
スラリー(この発明に不適合) D---MgO 100重量部に対して、TiO2を10重量部、SnO2
5重量部およびSr化合物としてSrSO4 をSr換算で5重量
部添加したスラリー(この発明に適合) の2種類を、それぞれ脱炭焼鈍板コイルに塗布して乾燥
させたのち、H2雰囲気中で、1150℃の温度で5時間お
よび1200℃の温度で5時間の2次再結晶・純化焼鈍に
それぞれ供したのち、りん酸マグネシウムとコロイダル
シリカを主成分とするコーティングを施した。
【0054】かくして得られた製品コイルにおける内巻
部、中巻部および外巻部の磁束密度(B8) 、鉄損(W
17/50)、ヒステリシス損(Wh 17/50)、被膜の密着性およ
びその外観をそれぞれ調査した。これらの調査結果を表
5にまとめて示す。
【0055】
【表5】
【0056】表5より、この発明に不適合の焼鈍分離剤
を用いた場合にくらべ、この発明に適合する焼鈍分離剤
を用いた場合では、純化焼鈍温度を1200℃にすると被膜
特性および磁気特性は大幅に向上しているが、1150℃と
低くしても被膜特性および磁気特性の劣化が少なく、特
にヒステリシス損の劣化が少なくなっていることがわか
る。
【0057】この現象は前記したように、この発明に適
合する焼鈍分離剤組成を用いた場合には、仕上げ焼鈍に
おいて2次再結晶が進行した時点で被膜形成が促進され
る。そのため、純化焼鈍が1150℃と低くても、インヒビ
ター成分の被膜中への吸い上げが十分に進行し、また、
被膜が十分に生成するため被膜特性および磁気特性の劣
化が少ないと思われる。
【0058】このように、この発明によれば、純化焼鈍
温度を1150℃と低くしても、従来以上の被膜特性および
磁気特性を有する製品が得られること、すなわち、純化
焼鈍温度を低くできることは、使用するエネルギーが少
なくてすみ、経済的利点が大きく、さらに最終仕上げ焼
鈍時にコイル下側に生じる耳歪も少なくなるので、製品
の歩留り向上に大きな効果がある。また、1200℃の温度
で純化焼鈍した場合は、被膜特性および磁気特性が大幅
に向上するという効果も有する。
【0059】以上の一連の実験結果より、脱炭焼鈍にお
ける、均熱過程でのP(H2O) /P(H 2)を0.7 未満とし、
昇温過程でのP(H2O) /P(H2)を均熱過程のそれよりも
低い条件で脱炭焼鈍を行ってサブスケールを生成させ、
このサブスケールを生成させた鋼板に塗布するMgO を主
体とする焼鈍分離剤中に、TiO2, SnO2およびSr化合物を
共存させた場合、コイル全長にわたって、非常に優れる
被膜特性および磁気特性を有する製品が得られること、
磁気特性の改善効果は主にヒステリシス損の減少による
ものと考えられることなどが明らかとなった。
【0060】それらの理由は明確ではないが、脱炭焼鈍
時に生成するサブスケールがかなり均一で保護性の高い
ものとなることと相まって、焼鈍分離剤中にTiO2, SnO2
およびSr化合物を共存させたため、焼鈍分離剤中の添加
物の作用も従来のものと大きく異なることから、被膜形
成過程とそれを反映した2次再結晶過程に差が生じ、非
常に大きな被膜特性および磁気特性の向上がもたらされ
たものと思われる。
【0061】なお、従来より公知の焼鈍分離剤への添加
物の作用については、前記した、特公昭51−12451 号公
報によれば、TiO2は2次再結晶中に生成したMgO −TiO2
の混合物が鋼板表層のSiO2と反応して緻密にして良質の
ガラス状被膜を形成するために被膜の均一性と密着性の
向上に、特公昭54−14567 号公報によれば、Snあるいは
Sn化合物は仕上げ焼鈍時の雰囲気の調節機能により磁気
特性の向上に、特公昭57−32716 号公報によれば、Sr化
合物は鋼板の表面直下のフォルステライト粒を消失させ
ることにより磁気特性の向上にそれぞれ効果があること
が記載されているのみである。
【0062】つぎにこの発明の成分組成の限定理由およ
び好適範囲について述べる。この発明の対象とするけい
素鋼板用スラブの成分組成については、sol Alを0.01〜
0.05%、Nを0.004 〜0.012 %の範囲で含有する方向性
けい素鋼板として通常用いられている成分組成のもので
よく、例えば、C:0.02〜0.10%、Si:2.0〜4.0 %、M
n:0.02〜0.20%を含み、かつ、SおよびSeのうちの少
なくとも一方を単独、または双方合計で0.010 〜0.040
%を含む組成が好ましい。その他、必要に応じて、Sb:
0.01〜0.20%、Cu:0.02〜0.20%、Mo:0.01〜0.05%、
Sn:0.02〜0.30%、Ge:0.02〜0.30%およびNi:0.01〜
0.20%の範囲で含有させることもよい。
【0063】sol AlおよびNは、AlN インヒビターを形
成させるため必要である。Alは少なすぎると磁束密度が
低下し、多すぎると2次再結晶が安定しなくなるため、
solAlの含有量は0.01〜0.05%の範囲に限定する。また
Nは、少なすぎるとAlN インヒビターの量が不足して磁
束密度が低下し、多すぎるとブリスターと呼ばれる表面
欠陥が製品に多発するため、その含有量を0.004 〜0.01
2 %の範囲とする。
【0064】Cは、熱間圧延時のα−γ変態を利用して
結晶組織の改善を行うために重要な成分であり、含有量
が0.02%に満たないと良好な一次再結晶組織が得られ
ず、0.10%を超えると脱炭が難しくなって脱炭不良とな
り磁気特性が劣化するので0.02〜0.10%程度が好まし
い。
【0065】Siは、製品の電気抵抗を高め、渦電流損を
低減させる上で重要な成分であり、含有量が、2.0 %に
満たないと最終仕上げ焼鈍中にα−γ変態によって結晶
方位が損なわれ、4.0 %を超えると冷延性に問題がある
ため、2.0 〜4.0 %程度が好ましい。
【0066】MnとSe及びSはインヒビターとして機能す
るもので、Mn量が0.02%未満または、S,Seの単独もし
くは合計量が0.010 %未満であるとインヒビター機能が
不十分となり、Mn量が0.20%を超えまたは、S,Seの単
独もしくは合計量が0.040 %を超えるとスラブ加熱の際
に必要とする温度が高すぎて実用的でないので、Mnは0.
02〜0.20%、SまたはSeは単独あるいは合計量として0.
010 〜0.040 %とするのが好ましい。
【0067】さらに磁束密度を向上させるためにSb, C
u, Sn, Ge, Niなどを単独または複合して添加すること
が可能である。Sbは含有量が、0.20%を超えると脱炭性
が悪くなり、0.01%に満たないと効果がないので、その
含有量は0.01〜0.20%が好ましい。Cuは含有量が0.20%
を超えると酸洗性が悪化し、0.01%に満たないと効果が
ないので、その含有量は0.01〜0.20%が好ましい。Sn,
Geは含有量が0.30%を超えると良好な一次再結晶組織が
得られず、0.02%未満では効果がないので、それぞれの
含有量は0.02〜0.30%が好ましい。Niは含有量が0.20%
を超えると熱間強度が低下し、0.01%未満では効果がな
いので、その含有量は0.01〜0.20%が好ましい。
【0068】また、表面性状を改善するためにMoを添加
できる。含有量が0.05%を超えると脱炭性が悪くなり、
0.01%に満たないと効果がないので、その含有量は0.01
〜0.05%が好ましい。
【0069】つぎに、この発明の対象としている方向性
けい素鋼板の製造条件について述べる。従来より用いら
れている製鋼法で上記成分組成に調整した溶鋼を連続鋳
造法あるいは造塊法で鋳造し、必要に応じて分塊工程を
挟んでスラブを得、続いて熱間圧延をし、必要に応じて
熱延板焼鈍を行ったのち、1回ないし中間焼鈍を挟む2
回以上の冷間圧延により最終板厚の冷延板とする。
【0070】ついで、前記したこの発明に従う雰囲気中
のP(H2O) /P(H2)を制御した脱炭焼鈍を行う。この脱
炭焼鈍での昇温速度は、通常の10〜20℃/sの範囲に限
るものではなく、5〜30℃/sのより広範囲で行うこと
ができる。しかし昇温速度が5℃/sに満たなかった
り、30℃/sを上回る場合には、たとえ他の条件を満
たした脱炭焼鈍であっても、良好なフォルステライト被
膜が得られなくなるうれいがある。
【0071】この脱炭焼鈍を施した鋼板表面に、前記し
たこの発明に従うMgO にTiO2、SnO2およびSr化合物を添
加した焼鈍分離剤を、スラリー状にして塗布したのち乾
燥する。
【0072】ここで、焼鈍分離剤に用いるMgO は、水和
量(20℃×6分間にて水和後、100℃×1時間の強熱に
よる減量)が1〜5%の範囲のものを用いることがよ
い。これは、MgO の水和量が1%未満ではフォルステラ
イト被膜の生成が不十分となり、5%を超えるとコイル
層間への持込み水分量が多くなりすぎ鋼板の追加酸化量
が多くなるため、良好なフォルステライト被膜が得られ
なくなるおそれがあるからである。
【0073】また、焼鈍分離剤の塗布量は鋼板片面当り
4〜10g/m2の範囲で塗布することができる。これは、
塗布量が4g/m2より少ないとフォルステライトの生成が
不十分となり、10g/m2を超えるとフォルステライト被膜
が過剰に生成し厚くなるため占積率の低下をきたすから
である。
【0074】なお、焼鈍分離剤中への添加物のひとつで
あるSr化合物は、従来より公知の、例えばSrSO4 ,Sr(O
H)2 ・8H2O ,SrCO3 ,Sr(NO)3 などがあり、これらの
うちから選ばれる1種または2種以上をそれぞれ単独ま
たは複合して添加してよい。
【0075】焼鈍分離剤塗布後は、1000〜1200℃の温度
域で3〜50時間程度の2次再結晶・純化焼鈍(仕上げ焼
鈍)を行って製品板とする。
【0076】その後さらに、りん酸塩系の絶縁コーティ
ング好ましくは張力を付与する絶縁コーティングを施す
ことは有利である。また、最終冷延後、最終仕上焼鈍後
あるいは絶縁コーティング後に既知の磁区細分化処理を
行うこともよく、さらなる鉄損の低減に有効である。
【0077】
【実施例】
実施例1 C:0.071 %、Si:3.34%、Mn:0.069 %、Se:0.019
%、Al:0.025 %、N:0.090 %、Cu:0.10%およびS
b:0.027 %を含有し、残部は実質的にFeの組成からな
る複数のけい素鋼スラブを、それぞれ1430℃の温度で30
分間加熱後、熱間圧延を施して板厚:2.2mm の熱延板と
した。ついで、1000℃・1分間の熱延板焼鈍後、冷間圧
延にて板厚:1.5mm とし、1100℃・2分間の中間焼鈍の
のち、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.23mmに仕上
げた。
【0078】これらの冷延板に、H2−H2O −N2雰囲気中
にて840 ℃・2分間の脱炭焼鈍を施した。この時、昇温
過程および均熱過程の雰囲気の酸化性〔P(H2O) /P(H
2)〕を表6に示すように変化させた。
【0079】
【表6】
【0080】その後、表6に併記した組成の焼鈍分離剤
をそれぞれ鋼板に塗布し、N2雰囲気中での850 ℃・20時
間の保定に続いて、H2: 75vol%、N2: 25vol%の雰囲
気中で20℃/h の速度で1150℃まで昇温する2次再結晶
焼鈍を行い、引き続き1200℃のH2雰囲気中で5時間の純
化焼鈍を行った。しかるのち、りん酸マグネシウムとコ
ロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0081】かくして得られた各製品について、磁束密
度(B8 ) 、鉄損(W17/50 ) 、被膜の曲げ密着性および外
観について調査した。これらの調査結果を上掲表6に併
記して示す。
【0082】表6から明らかなように、この発明に従う
条件で製造した適合例は、いずれも良好な磁気特性およ
び被膜特性を示している。
【0083】実施例2 C:0.075 %、Si:3.27%、Mn:0.068 %、Se:0.021
%、Al:0.026 %、N:0.0085%およびSb:0.025 %を
含有し、残部は実質的にFeの組成からなる複数のけい素
鋼スラブを、それぞれ1430℃の温度で30分間加熱後、熱
間圧延を施して板厚:2.2mm の熱延板とした。ついで、
1000℃・1分間の熱延板焼鈍後、冷間圧延にて板厚:1.
5mm とし、1100℃・2分間の中間焼鈍ののち、2回目の
冷間圧延により最終板厚:0.23mmに仕上げた。
【0084】これらの冷延板にH2−H2O −N2雰囲気中に
て840 ℃・2分間の脱炭焼鈍を行った。この時、昇温過
程および均熱過程の雰囲気の酸化性を表7に示すように
変化させた。
【0085】
【表7】
【0086】その後、表7に併記した組成の焼鈍分離剤
をそれぞれ鋼板に塗布し、N2雰囲気中での850 ℃・20時
間の保定に続いて、H2: 85vol%、N2: 15vol%の雰囲
気中で15℃/h の速度で1100℃の温度まで昇温する2次
再結晶焼鈍を行い、引き続き1160℃のH2雰囲気中で5時
間の純化焼鈍を行った。しかるのち、りん酸マグネシウ
ムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施
した。
【0087】かくして得られた各製品について、実施例
1と同様の調査を行った。それらの調査結果を上掲表7
に併記して示す。表7から明らかなように、この発明の
適合例はいずれも良好な磁気特性および被膜特性を示し
ている。
【0088】実施例3 C:0.073 %、Si:3.30%、Mn:0.070 %、Se:0.020
%、Al:0.027 %、N:0.0083%、Cu:0.08%およびS
b:0.026 %を含有し、残部は実質的にFeの組成からな
る複数のけい素鋼スラブを、それぞれ1430℃の温度で30
分間加熱後、熱間圧延を施して板厚:2.7mm の熱延板と
した。ついで、1000℃・1分間の熱延板焼鈍後、冷間圧
延にて板厚:2.0mm とし、1100℃・2分間の中間焼鈍の
のち、2回目の冷間圧延により最終板厚:0.35mmに仕上
げた。
【0089】これらの冷延板にH2−H2O −N2雰囲気中に
て840 ℃・3分間の脱炭焼鈍を行った。この時、昇温過
程および均熱過程の雰囲気酸化性を表8に示すように変
化させた。
【0090】
【表8】
【0091】その後、表8に併記した組成の焼鈍分離剤
をそれぞれ鋼板に塗布し、N2雰囲気中で850 ℃・20時間
の保定に続いて、H2: 75vol%、N2: 25vol%の雰囲気
中で15℃/h の速度で1150℃まで昇温する2次再結晶焼
鈍を行い、引き続き1180℃の温度のH2雰囲気中で5時間
の純化焼鈍を行った。しかるのち、りん酸マグネシウム
とコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施し
た。
【0092】かくして得られた製品について、実施例1
と同様の調査を行った。これらの調査結果を上掲表8に
併記して示す。表8から明らかなように、この発明の適
合例は良好な磁気特性および被膜特性を示している。
【0093】
【発明の効果】この発明は、AlN 系インヒビターを有す
る方向性けい素鋼板の製造にあたり、脱炭焼鈍の昇温過
程および均熱過程での雰囲気の酸化度をそれぞれ制御す
ることと相まって、TiO2, SnO2およびSr化合物を複合添
加したMgO を主体とする焼鈍分離剤を用いるものであ
り、この発明によれば、磁気特性、被膜特性ともに極め
て優れる方向性けい素鋼板を安定して生産することがで
きるようになる。また、最終仕上げ温度を低くすること
ができるので、経済性に優れるとともに、製品の歩留り
向上および生産性の向上にも寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】コイル内巻部における、脱炭焼鈍時の昇温過程
および均熱過程でのP(H2O) /P(H2)と仕上げ焼鈍後の
フォルステライト被膜の外観との関係を示すグラフであ
る。
【図2】コイル中巻部における、脱炭焼鈍時の昇温過程
および均熱過程でのP(H2O) /P(H2)と仕上げ焼鈍後の
フォルステライト被膜の外観との関係を示すグラフであ
る。
【図3】コイル外巻部における、脱炭焼鈍時の昇温過程
および均熱過程でのP(H2O) /P(H2)と仕上げ焼鈍後の
フォルステライト被膜の外観との関係を示すグラフであ
る。
【図4】けい素鋼板の表面に生成する酸化物の平衡状態
図である。
【図5】仕上げ焼鈍過程でのSn分析結果を示すグラフで
ある。(a) は、温度と被膜付き鋼板のSn含有量との関係
のグラフである。(b) は、温度と鋼中のSn含有量との関
係のグラフである。
【図6】仕上げ焼鈍中の各温度での鋼板表面の蛍光X線
酸素分析結果を示すグラフである。
【図7】仕上げ焼鈍中の900 度の温度での波数と吸収ス
ペクトル強度との関係のグラフである。
【図8】仕上げ焼鈍中の1050℃の温度での波数と吸収ス
ペクトル強度との関係のグラフである。
【図9】焼鈍分離剤にA(TiO2単独添加)とB(TiO2
SnO2およびSr化合物の複合添加)とをそれぞれ使用した
場合の、磁束密度(B8) とヒステリシス損(Wh17/50)と
の関係を示すグラフである。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 sol Al:0.01〜0.05wt% および、N:0.
    004 〜0.012 wt% を含有する方向性けい素鋼板用スラブ
    を素材として、熱間圧延し、その後1回または中間焼鈍
    を挟む2回以上の冷間圧延を行い、ついで、脱炭焼鈍を
    施したのち、MgO を主体とする焼鈍分離材を塗布してか
    ら、最終仕上げ焼鈍を施す一連の工程により方向性けい
    素鋼板を製造するにあたり、 脱炭焼鈍工程における雰囲気中の水素分圧に対する水蒸
    気分圧の比:P(H2O)/P(H2)の値を、その均熱過程で
    0.70未満、その昇温過程では上記均熱熱過程より低い値
    とし、 焼鈍分離剤が、MgO :100 重量部に対して、TiO2を0.5
    〜15重量部、SnO2を0.1 〜10重量部およびSr化合物をSr
    換算で0.1 〜10重量部のそれぞれの範囲内で複合添加し
    たものであることを特徴とする磁気特性・被膜特性に優
    れる方向性けい素鋼板の製造方法。
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