JPH09302424A - 亜鉛−チタン母合金の製造方法およびマンガン乾電池 - Google Patents

亜鉛−チタン母合金の製造方法およびマンガン乾電池

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JPH09302424A
JPH09302424A JP8266201A JP26620196A JPH09302424A JP H09302424 A JPH09302424 A JP H09302424A JP 8266201 A JP8266201 A JP 8266201A JP 26620196 A JP26620196 A JP 26620196A JP H09302424 A JPH09302424 A JP H09302424A
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元 村上
Ryohei Ashihara
良平 芦原
Kohei Kubota
耕平 久保田
Koichi Sato
光一 佐藤
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Mitsui Mining and Smelting Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の鉛含量0.3〜0.5重量%の負極缶と
同等の加工性、機械的強度、及び耐腐食性を有する鉛減
量または鉛無添加の負極缶を使用したマンガン乾電池、
及びその亜鉛合金に添加する亜鉛ーチタン母合金の製造
法を提供する。 【解決手段】 スポンジチタンの添加量0.001〜5
重量%、溶解温度500〜750℃、溶製時間0.5〜
6時間として、亜鉛−チタン母合金を製造する。こうし
て製造された、金属チタン及びZn−Ti原子比が1/
2以上の金属間化合物が組織中に殆ど残存しない亜鉛ー
チタン母合金を用いて負極亜鉛缶とする。負極缶の鉛含
量を0.002〜0.4重量%または無添加とし、チタ
ン含量0.001〜0.005重量%で、随伴不純物で
ある鉄を50ppm以下としたマンガン乾電池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高耐食亜鉛めっき
や乾電池の負極亜鉛缶に用いる亜鉛合金に添加する亜鉛
−チタン母合金の製造方法、およびマンガン乾電池に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、マンガン乾電池の負極亜鉛缶の加
工性・機械的強度を高め、さらに負極の腐食、すなわち
電池の自己消耗を防止するために、一般的に負極亜鉛缶
を構成する亜鉛に0.3〜0.8重量%の鉛を添加して
いる。この鉛は、水銀、カドミウム同様、廃棄乾電池の
環境汚染問題で問題視されつつあり、減量または無添加
での生産が急務である。しかしながら、亜鉛中から鉛を
減量もしくは除去すると、負極亜鉛缶の加工性、機械的
強度が急激に低下し、さらに亜鉛の腐食が起こりやすく
なることが知られている。
【0003】この問題点のうち、亜鉛の腐食性に関する
問題点を解決するための手段として、亜鉛合金中にマン
ガン、インジウム、ビスマス等の金属を添加すること
は、既に知られている(特公昭50−11576号公
報、他)。しかし、インジウム、ビスマスなどの金属を
亜鉛中に添加し耐腐食性を付与すると、従来の鉛を単独
で添加した亜鉛合金より作製した負極亜鉛缶と比べる
と、その加工性、機械的強度は鉛の添加量の減少ととも
に損なわれる傾向にある。
【0004】この問題点を解決する方法として、亜鉛合
金中へのチタンの添加が報告されている(特開平7−9
4194号公報、特開平7−153449号公報)。こ
の亜鉛合金へのチタンの添加は、負極亜鉛缶の加工性、
機械的強度といった特性を改善する働きはあるが、ある
一定量以上の添加にともない亜鉛合金の耐腐食性、放電
性能に関しては悪化させるものである。また、Tiの添
加方法により、ピット状腐食の発生原因、あるいは負極
亜鉛缶製缶時の加工不良の原因になりうる。
【0005】従来より、亜鉛−チタン母合金の製造方法
としては、黒鉛坩堝を用いて溶解した700〜750℃
の電気亜鉛(純度99.99重量%)中に、指定濃度に
なるよう板状またはボタン状チタンを添加し、溶解する
方法が提案されている。ところで、上記製造方法におい
ては、溶解するまでの時間が2.0重量%濃度で6時
間、5重量%濃度では9時間程度を要するという問題が
あった。さらに、溶解した時点で金属チタンおよびZn
−Ti原子比が1/2以上の金属間化合物を組織中に残
存させないために、その溶製時間として、約20時間程
度保持する必要があった。この結果、従来の亜鉛−チタ
ン母合金の製造方法は、亜鉛が溶解し、原料を添加した
ときから合金化するまでの時間(以下「溶製時間」とい
う。)が長く、コストが大幅にかかるという問題があ
る。
【0006】また、このような条件において製造しても
なお金属チタンおよびZn−Ti原子比が1/2以上の
金属間化合物が組織中に残存するという問題があり、こ
のため負極亜鉛缶の製缶時において、加工不良を起こす
という問題もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
問題に鑑み、溶解しやすいチタン原料を用いて溶製時間
を短縮し、なおかつ金属チタンおよびZn−Ti原子比
が1/2以上の金属間化合物が組織中に残存しない亜鉛
−チタン母合金の製造方法を提供することを目的とす
る。また、本発明は、亜鉛合金中の鉛添加量を減量もし
くは無添加にした場合でも、従来量の鉛を0.3〜0.
5重量%含有した負極亜鉛缶と同等の加工性、機械的強
度を保持し、さらに亜鉛の腐食防止という点でも同等以
上の特性を有する負極亜鉛缶を使用した水銀・カドミウ
ム無添加のマンガン乾電池を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する本発
明の亜鉛−チタン母合金の製造方法は、亜鉛を主体とす
る亜鉛−チタン母合金の製造方法において、原料となる
チタンにスポンジチタンを使用することを特徴とする。
亜鉛を主体とする第2の発明の亜鉛−チタン母合金の製
造方法は、上記スポンジチタンの添加量を0.001〜
5重量%および溶解温度を500〜750℃とし、溶製
時間を0.5〜6時間として、亜鉛−チタン母合金を製
造することを特徴とする。亜鉛を主体とする第3の発明
の亜鉛−チタン母合金の製造方法は、上記製造方法にお
いて、鉛、インジウム、ビスマス、マンガンのうち一種
または二種以上を0.001〜10重量%添加すること
を特徴とする。
【0009】また、本発明のマンガン乾電池は、上記の
亜鉛を主体とする亜鉛−チタン母合金を負極亜鉛缶に用
いるものである。すなわち、金属間化合物Zn2Ti、
ZnTi、ZnTi2、および金属Ti相を含まない亜
鉛ーチタン合金を負極亜鉛缶とする。さらに、詳しく
は、本発明のマンガン乾電池は、有底円筒状の負極亜鉛
缶と、前記負極亜鉛缶の内部にセパレータを介して装填
された二酸化マンガンを活物質とする正極合剤を含み、
前記負極亜鉛缶が、0.002〜0.4重量%の鉛、
0.001〜0.005重量%のチタンおよび残部が随
伴不純物である鉄を50ppm以下含有し、かつ金属間
化合物Zn2Ti、ZnTi、ZnTi2、および金属T
i相を含まないことを特徴とする。また、本発明のマン
ガン乾電池は、有底円筒状の負極亜鉛缶と、前記負極亜
鉛缶の内部にセパレータを介して装填された二酸化マン
ガンを活物質とする正極合剤を含み、前記負極亜鉛缶
が、0.001〜0.005重量%のチタンおよび残部
が随伴不純物である鉄を50ppm以下含有し、かつ金
属間化合物Zn2Ti、ZnTi、ZnTi2、および金
属Ti相を含まないことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を詳細
に説明する。本発明では、亜鉛を主体とする亜鉛−チタ
ン母合金の製造方法において、原料となるチタンとし
て、スポンジチタンを使用する。ここで、スポンジチタ
ンとは、JIS「H2151」規定の製品で、四塩化チ
タンのマグネシウム還元法およびナトリウム還元法によ
る製品をいう。
【0011】また、使用するスポンジチタンの添加量は
0.001〜5重量%とするのが好ましい。添加量とし
て、0.001重量%未満の添加では、溶湯に添加する
母合金量が増加し好ましくなく、一方5重量%を越える
添加では、溶解が困難で製造コストの上昇や金属チタン
等が組織中に残存し、製缶時の加工不良を生じるおそれ
があり好ましくないからである。
【0012】次に、溶解温度としては、500〜750
℃とするのが好ましい。これは、溶解温度が500℃未
満では、スポンジチタンが溶解しずらくなり、そのため
に未溶解なスポンジチタンや混合物としての金属チタン
等が多く残存するために好ましくないからである。一
方、溶解温度が750℃を越えると、亜鉛が気化するた
めに不活性ガスの注入法を用いたりする場合がある。ま
た用いない場合でも、チタンがより酸化しやすい状態な
ために、酸化物の生成を多くしてチタン中に窒素等をと
りこんだ状態を形成する。このために、混合物としての
金属チタン等がより多く残存するために好ましくないか
らである。
【0013】次に、溶製時間としては、0.5〜6時間
とするのが好ましい。これは、溶製時間が0.5時間未
満では、未溶解なスポンジチタンや混合物としての金属
チタン等が多く残存するために好ましくないからであ
る。一方、溶製時間が6時間を越えると、酸化物の生成
が多く発生するため、逆に混合物としての金属チタン、
金属間化合物Zn2Ti、ZnTiおよびZnTi2等が
増えていく傾向を示し好ましくないからである。
【0014】また、溶解時においては、良く撹拌するこ
とにより添加したスポンジチタンが酸化しないようにす
るのがよい。また、必要に応じて、例えば鉛、インジウ
ム、ビスマスおよびマンガン等を適宜添加した母合金と
してもよい。
【0015】以上のようにチタン原料として使用するス
ポンジチタンの溶解温度、濃度および溶製時間等の条件
を適切にして亜鉛−チタン母合金を製造すれば、亜鉛−
チタン母合金中に混合物として金属チタン相、および金
属間化合物Zn2Ti、ZnTi、ZnTi2の合計がφ
10×500mmの円柱状インゴットの場合、その中心
軸に平行に切断した縦断面における顕微鏡観察におい
て、10cm2当たりの残存数が40コ以下であり、鉄
が0.1重量%以下となる。
【0016】よって、上記条件によってスポンジチタン
を用いて亜鉛−チタン母合金を製造し、得られた母合金
を使用すれば、負極亜鉛缶の製缶時の加工不良が解消さ
れる。ここで、本発明の母合金の用途は、乾電池の負極
亜鉛缶の他に例えば高耐食性亜鉛めっき用の亜鉛合金添
加用としても有用である。
【0017】次に、本発明のマンガン乾電池の負極亜鉛
缶を構成する亜鉛合金について説明する。負極亜鉛缶を
構成する亜鉛合金は、0.001〜0.005重量%の
チタンを含有し、随伴不純物である鉄を50ppm以下
含有する。ここにおいて、前記負極亜鉛缶は、0.00
1〜0.05重量%のインジウムおよび0.001〜
0.05重量%のビスマスからなる群より選択される少
なくとも一種を含有することが好ましい。また、前記負
極亜鉛缶中の随伴不純物である鉄の含有量は15ppm
以下であることが好ましい。
【0018】亜鉛合金中のチタンは、主としてその添加
量の増加とともに合金の圧延性および機械的強度を向上
させる。また、チタンは、添加量が一定量を越えると合
金の耐腐食性を低下させる。さらにある放電様式で異常
放電を引き起こす。一方、インジウムおよびビスマス
は、添加量の増加とともに合金の耐腐食性を向上させる
が、合金の圧延性を低下させる。なお、鉛は、添加量の
増加とともに圧延性、耐腐食性を大きく向上させ、また
添加量1.0重量%程度を限度として機械的強度を向上
させる。したがって、鉛の添加量が少なくなると、負極
缶用亜鉛合金中に随伴する不純物である鉄の耐腐食性に
与える影響度は大きくなる。
【0019】さらに、前記負極亜鉛缶用亜鉛合金に含有
されるチタンは、金属チタンを亜鉛溶湯に直接浸漬する
ことでは添加できない。それはチタンの融点が亜鉛溶湯
温度に比べて高すぎるためであり、一般にこのような場
合には、上記のようにあらかじめ母合金を作製し、これ
を亜鉛溶湯に浸漬する方法をとる。本発明において、種
々のチタン濃度の亜鉛−チタン母合金による添加を試み
たが、チタン濃度が8重量%以上では亜鉛溶湯への溶解
に30分以上を要し、この間の亜鉛溶湯中のチタン量が
制御できないことと、溶解時のチタンの酸化ロスが大き
くなり好ましくない。そのため母合金中のチタン濃度は
低いほど亜鉛用湯への添加は容易であるが、目標添加量
に対し必要な母合金の量が増え経済的に不利になる。以
上のことから本発明において、亜鉛−チタン母合金中の
チタン濃度は8重量%以下、望ましくは0.5重量%〜
5重量%である。
【0020】さらに、発明者らは、亜鉛−チタン母合金
の製造条件により負極亜鉛缶の加工時の加工不良率が変
化することを見出した。その原因は、亜鉛−チタン間に
は多くの金属間化合物が生成するが、このうちZn2T
i、ZnTi、ZnTi2のようなTi比の高い化合物
は融点が650℃以上と高く、亜鉛溶湯の中でも溶解せ
ずに残存し、負極亜鉛缶製缶時に加工不良を引き起こす
ことであった。また、金属チタンがそのまま母合金に混
入した場合も同様な問題が生じる。そこで、上記のよう
に亜鉛−チタン母合金の製造条件を種々検討した結果、
原料となるチタンには、スポンジチタンを使用し、添加
量0.001〜5重量%において、溶解温度500〜7
50℃、溶解時間を0.5〜6時間とした製造条件で作
製した亜鉛−チタン母合金には、有害なチタン比の高い
化合物や金属チタンは含まれないか、含まれたとしても
負極亜鉛缶製缶時に有害とならない程度の微量で微小粒
子であることを見出した。
【0021】本発明の組成の負極亜鉛缶を使用すること
により、負極亜鉛缶用亜鉛合金中の鉛添加量を減量した
場合でも、従来の負極亜鉛缶の材料である鉛を0.3〜
0.5重量%含有した亜鉛合金を使用して作製した負極
亜鉛缶と同等以上の加工性と機械的強度を得ることがで
きる。さらに、亜鉛の腐食防止についても同等、もしく
はそれ以上の効果が得られる。また、鉛を含有しない場
合でも本発明によれば、従来の負極亜鉛缶の材料である
鉛を0.3〜0.5重量%含有した亜鉛合金を使用して
作製した負極亜鉛缶と同等の加工性と機械的強度を得る
ことができる。さらに、亜鉛の腐食防止についても同等
の効果が得られる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 《実施例1〜16》JIS「H2107」規定による電
気亜鉛(純度99.99重量%)地金組成の亜鉛を30
番の黒鉛坩堝に入れ、電気炉中において650℃にて溶
解し、各0.5重量%濃度、1.0重量%濃度、2.0
重量%濃度および3.0重量%濃度になるようにスポン
ジチタンを添加した。このスポンジチタンの添加後、各
々0.5時間、1時間、2時間および4時間の溶製時間
後に、φ10×500mmのインゴットケースに鋳込ん
だ。得られた円柱状インゴットの中心軸に平行な縦断面
を顕微鏡で観察し、10cm2当たりの金属チタン等の
残存数を調査した。その結果を表1に示す。
【0023】《比較例1〜3》JIS「H2107」規
定による電気亜鉛(純度99.99重量%)地金組成の
亜鉛を30番の黒鉛坩堝に入れ、電気炉中において65
0℃にて溶解し、6.0重量%濃度になるようにスポン
ジチタンを添加した。この添加後、各々4時間、16時
間および24時間の溶製時間後に、φ10×500mm
のインゴットケースに鋳込んだ。得られた円柱状インゴ
ットの縦断面を顕微鏡で観察し、10cm2当たりの金
属チタン等の残存数を調査した。その結果を表2に示
す。
【0024】《従来例1〜9》JIS「H2107」規
定による電気亜鉛(純度99.99重量%)地金組成の
亜鉛を30番の黒鉛坩堝に入れ、電気炉中において75
0℃にて溶解し、各1.0重量%濃度、2.0重量%濃
度および5.0重量%濃度になるように板状チタンまた
はボタン状チタンを添加した。この添加後、各々4時
間、8時間および24時間の溶製時間後に、φ10×5
00mmのインゴットケースに鋳込んだ。得られたイン
ゴットの縦断面を顕微鏡で観察し、10cm2当たりの
金属チタン等の残存数を調査した。その結果を表2に示
す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】表1および表2からわかるように、本発明
によれば金属チタン等の混入物のほとんどないチタン−
亜鉛母合金を製造することができる。
【0028】《実施例17》以下に示す試料No.1〜
試料No.66で用いた亜鉛合金は、次の方法で溶製し
た。すなわち、黒鉛坩堝中にて所定量の亜鉛(純度9
9.99重量%)を溶解し、450℃に保持した。これ
に鉛、インジウム、ビスマスの小片をこの順に、目標組
成に対し、添加歩留まり100%として算出した量を溶
湯中に投入し、溶解するまで攪拌した。チタンはこの後
に亜鉛−3重量%チタンの母合金の小片を用い目標組成
に対し添加歩留まり95重量%として算出した量を添加
し、溶解するまで攪拌した。チタン母合金溶解後、表面
に生成しているドロスを丁寧に除去し、450℃の溶湯
温度にて金型鋳造し、幅300mm、長さ1500m
m、厚さ10mmの形状の板を得た。これを200℃に
て圧延し厚さ5mmの板とした。上記方法で調整した亜
鉛合金の組成を表3〜5に示す。
【0029】次に、各サンプルの表面を観察して圧延性
を評価した。圧延後、所定の大きさの丸形小片にプレス
で打ち抜いた。そして、この小片をインパクト成型法に
より、単1(R20)サイズのマンガン乾電池用負極亜
鉛缶を作製した。このようにして作製した負極亜鉛缶の
機械的強度を比較するために、以下に示すような測定法
を用い、各組成の負極亜鉛缶の機械的強度を測定した。
図2に示すように各組成の負極亜鉛缶10をVブロック
11上に設置し、負極亜鉛缶開口部から10mmの位置
に円錐状の端子12を当てて押す。この端子の当たって
いる点の端子の移動方向の変位量と、この点に掛かる力
を記録計で記録する。単1(R20)サイズの負極亜鉛
缶では、変位量が約4mmでほぼ一定値を示すので、4
mm変位時に測定点に掛かる力を、便宜上、各負極亜鉛
缶の機械的強度とする。
【0030】次に、各組成の負極亜鉛缶の腐食防止の効
果を評価するために、各負極亜鉛缶を使用して電解液中
での水素ガス発生試験を行った。なお、ガス発生試験
は、電解液として塩化亜鉛30重量%、塩化アンモニウ
ム1.9重量%以下のもの5mlを用い、45℃中で一
定重量に切断した負極亜鉛缶を電解液中に浸漬して、3
日間のガス発生量を測定するものである。各組成の亜鉛
合金の圧延性評価、缶の機械的強度、およびガス発生量
の測定結果を表3、表4および表5に示す。表中の圧延
性の欄の記号の意味は、次のとおりである。また、ガス
発生量は、1日当たりの平均値で表した。 ○:圧延片の全面良好 ×:圧延片の両側面部分に亀裂が発生 ××:全面に亀裂が発生し所定の厚さまで圧延できない
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
【表5】
【0034】表中の試料No.7〜10および試料N
o.18〜21からわかるように、インジウム単独また
はインジウムと鉛を含む亜鉛合金にチタンを添加する
と、負極亜鉛缶の機械的強度が向上することがわかる。
同様に、試料No.27〜30および試料No.39〜
42から、ビスマス単独またはビスマスと鉛を含む亜鉛
合金にチタンを添加すると、負極亜鉛缶の機械的強度が
向上することがわかる。次に、試料No.1〜5および
試料No.13〜17から、チタンを含む亜鉛合金にイ
ンジウムを添加することにより、水素ガス発生を抑制す
る効果が生じることがわかる。同様に、試料No.22
〜25および試料No.33〜38から、チタンを含む
亜鉛合金にビスマスを添加することにより、水素ガス発
生を抑制する効果が生じることがわかる。また、試料N
o.4〜6および試料No.24〜26から、チタンの添
加により圧延性は向上するが、インジウムまたはビスマ
スの量が単独で0.1重量%以上になると、チタン添加
による圧延性向上効果が弱くなる。
【0035】以上の結果をまとめると、良好な圧延性を
保持するとともに、従来例の鉛を0.4重量%添加した
試料No.69と比べて、負極亜鉛缶の機械的強度およ
びガス発生抑制効果が同等または以上を満足するのは、
インジウム0.001〜0.05重量%またはビスマス
0.001〜0.05重量%で、チタン0.001〜
0.005重量%の範囲である。この範囲を逸脱した場
合、すなわち添加量が少ない場合、前記亜鉛合金は柔ら
かく、添加量が多い場合は、前記亜鉛合金圧延時にもろ
くなり亀裂が生じる。さらには、ガス発生により電池保
存時の実用的な放電性能が維持できないという問題が生
じる。鉛を含む合金と鉛を含まない合金とを比較する
と、鉛を含まない合金は、水素ガス発生を抑制する効果
が若干劣るが、従来例の試料No.69のそれと同等ま
たはそれ以上であり、機械的強度はこれを上回ってい
る。
【0036】また試料No.43〜47の結果からわか
るように、インジウム、ビスマスが共存すると、いずれ
か一方が存在するものに比べて、水素ガス発生を抑制す
る効果が増す。また、インジウムとビスマスをそれぞれ
0.05重量%添加した場合でも圧延性は良好であっ
た。
【0037】一方、従来から亜鉛合金の随伴不純物であ
る鉄の含有量が、負極亜鉛缶の耐食性維持に大きな影響
を与えることは周知の事実であるが、この負極缶用亜鉛
合金の鉛を減量する中で、インジウム、ビスマスなどの
耐食性を向上させる金属の添加とともに、亜鉛合金中の
鉄の含有量を制御することが、大きなポイントとなって
くる。試料No.48、3、49〜51は、亜鉛合金中
の鉛添加量を減量した場合の、鉄の含有量が、負極亜鉛
缶の耐食性に及ぼす影響を調べたもので、亜鉛合金中の
鉄の含有量が50ppmを越えるとガス発生量が増加す
ることがわかる。したがって、負極亜鉛缶用亜鉛合金の
鉛添加量を減量する際の、亜鉛合金中の随伴不純物であ
る鉄の含有量は、50ppm以下が好ましい。鉄含有量
を15ppm以下に制御すると、さらに耐食性が向上す
る。また、試料No.52、15、53〜55の結果に
より、亜鉛合金中に鉛を添加しない場合、前記影響はさ
らに大きいことがわかる。
【0038】これらの結果より各成分元素の含有量が上
記範囲内にあると、従来の鉛を0.3〜0.5重量%含
んだ負極亜鉛缶と同等以上の加工性、機械的強度を保持
し、さらに腐食防止という点でも同等またはそれ以上の
特性を有する。
【0039】次に、チタンの含有量と電池性能との関係
について、さらに詳しく説明する。すなわち、チタンを
0.01重量%以上添加すると、軽負荷間欠放電におい
て異常放電が発生する。
【0040】以下、図1に示す構成の単1サイズ(R2
0)のマンガン乾電池について、39Ωの抵抗を負荷と
し、1日4時間放電し、20時間休止というJIS規格
に定められた放電試験をした結果にもとづいて説明す
る。まず、図1に示すマンガン乾電池の構成例を説明す
る。1は二酸化マンガンを活物質とする正極合剤で、有
底円筒状の負極亜鉛缶3内にセパレータ2を介して装填
されている。正極合剤1の中央には正極集電体の炭素棒
5が挿入されている。4は負極亜鉛缶3の底部に挿入さ
れた底部絶縁紙である。負極亜鉛缶3の上部開口部はプ
ラスチック製のシーリング部材9により封口されてい
る。6は正極端子を兼ねるキャップ一体封口板、7は負
極端子板、8は外装缶を示す。
【0041】図3の実線は、通常のマンガン乾電池の典
型的な間欠放電カーブを示している。この電池の放電開
始直後、2時間後、および終了直前の電池電圧をそれぞ
れE1、E2、およびE3で示し、20時間休止後に再
び放電を開始した直後の電池電圧をE4で示す。図3の
ように、放電の進行とともに電池電圧は、E1、E2、
E3と低くなり、休止後の電圧E4は、E3よりも高い
値まで復帰する。ところが、表6に示す通り、負極亜鉛
缶のチタン含有量が、0.006重量%以上になると、
図3の破線に示すように、休止後の放電開始直後の電圧
E4’は、前回の放電終了直前の電圧E3’よりもさら
に低くなる。
【0042】
【表6】
【0043】このように休止後の電圧が復帰しないばか
りか下がってしまう異常放電が発生するのは、亜鉛缶表
面に導通の妨げとなる物質が生成したことによるものと
考えられる。E4’の下がり方が大きいと、試料No.
63のように持続時間が著しく短くなる。この異常放電
の一例を図4に示す。この現象は、チタンの添加量の多
いところで発生する。すなわち、表6の試料No.1
8、19、56〜59、試料No.64、65に示すよ
うに、チタン添加量0.005重量%以下では、異常放
電は発生しない。試料No.60〜63、66に示すよ
うに、チタン添加量0.006重量%以上で異常放電が
発生する。上の例では、Zn−Ti−In合金、Zn−
Ti−Bi合金について説明したが、Zn−Ti−In
−Bi合金、およびこれらの合金に鉛を添加した合金に
おいても上記と同様な挙動が起こる。
【0044】また、亜鉛−チタン母合金製造において、
Zn2Ti、ZnTi、ZnTi2、および金属Ti相を
含まない亜鉛−チタン母合金による製缶性の比較を実施
した。製造方法は、原料となるチタンには、スポンジチ
タンを使用し、製造条件としては、添加量0.001〜
5重量%、溶解温度500〜750℃、溶解時間を0.
5〜6時間の最適範囲を用いた製造法をAとし、比較例
を製造法Bとする。
【0045】製造法A JIS H2107規定による電気亜鉛(純度99.9
9重量%)地金組成の亜鉛を30番の黒鉛坩堝内で電気
炉を用いて650℃にて溶解し、2.0重量%のスポン
ジチタンを添加した。4時間の溶製時間後、φ10×5
00mmのインゴットケースに鋳込み、それをチタン母
合金とした。 製造法B JIS H2107規定による電気亜鉛(純度99.9
9重量%)地金組成の亜鉛を30番の黒鉛坩堝内で電気
炉を用いて750℃にて溶解し、2.0重量%の板状、
またはボタン状チタンを添加した。24時間の溶製時間
後、φ10×500mmのインゴットケースに鋳込み、
それをチタン母合金とした。
【0046】上記製造法AおよびBにより得た亜鉛−チ
タン母合金を適用して前記試料No.57、59、6
0、62と同じ組成の合金試料を作製した。製造法Aに
より得た亜鉛−チタン母合金を用いたものを試料No.
57A、59A、60A、62Aとし、製造法Bにより
得た亜鉛−チタン母合金を用いたものを試料No.57
B、59B、60B、62Bとする。これらの合金を用
いて単1サイズ(R20)および単3サイズ(R6)の
負極亜鉛缶を製缶した際の異常発生率を表7に示す。
【0047】
【表7】
【0048】表7の結果から明らかなように、製造法A
を適用した合金にて製缶した負極亜鉛缶は、サイズにか
かわらず、すべて正常な加工性を示すが、製造法Bを適
用した合金にて製缶した負極亜鉛缶は、すべての例にお
いて、負極亜鉛缶のインパクト成型時に部分的に延性が
著しく悪い部分が発生し、表中に示すような頻度で正常
な缶に製缶できないものがあった。この製造法Bを適用
した合金で発生した異常缶の異常部分をマイクロX線で
調査すると、いずれの部分でもZn2Ti、ZnTi、
ZnTi2のようなTi比の高い化合物が検出された。
【0049】以上の結果から、原料となるチタンには、
スポンジチタンを使用し、添加量を0.001〜5重量
%において、溶解温度500〜750℃、溶解時間を
0.5〜6時間とした製造条件で作製した亜鉛−チタン
母合金を使用して作製した亜鉛合金を使用すると、従来
の鉛0.4重量%を含有した亜鉛合金と同等の加工性が
得られることがわかる。なお、鉛含有量の下限値である
0.002重量%とは、一般的にマンガン乾電池の負極
亜鉛缶用原料として使用されている亜鉛(純度99.9
9重量%)中に含有する不可避金属としての鉛含有量を
示している。
【0050】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、従来品に
較べて、溶製時間が短縮されると共に、金属チタンおよ
びZn−Ti原子比が1/2以上の金属間化合物が組織
中にほとんど残存しない亜鉛−チタン母合金を提供する
ことができる。また、本発明によれば、電池製造時に必
要な負極亜鉛缶の機械的強度が従来の負極亜鉛缶と同等
以上で、しかも電池保存時の防食効果も従来の負極亜鉛
缶と同等またはそれ以上のレベルで維持し、かつ軽負荷
間欠放電において異常放電が発生しない、環境汚染の危
険性の少ない有用なマンガン乾電池を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による円筒型マンガン乾電池の構成例を
示す半截断面図である。
【図2】本発明の実施例に用いた負極亜鉛缶の機械的強
度測定法を示す図である。
【図3】マンガン乾電池の間欠放電試カーブを示すもの
で、異常放電を説明するための図である。
【図4】異常放電を示す乾電池の典型的な間欠放電カー
ブを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01M 6/06 H01M 6/06 Z (72)発明者 久保田 耕平 東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号 三井金属鉱業株式会社内 (72)発明者 佐藤 光一 東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号 三井金属鉱業株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 亜鉛を主体とする亜鉛−チタン母合金の
    製造方法において、原料となるチタンにスポンジチタン
    を使用することを特徴とする亜鉛−チタン母合金の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 上記スポンジチタンの添加量を0.00
    1〜5重量%、溶解温度を500〜750℃、溶製時間
    を0.5〜6時間として、亜鉛−チタン母合金を製造す
    ることを特徴とする請求項1記載の亜鉛−チタン母合金
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 鉛、インジウム、ビスマス、およびマン
    ガンからなる群より選ばれた少なくとも一種を0.00
    1〜10重量%添加することを特徴とする請求項1また
    は2記載の亜鉛−チタン母合金の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法により製造された亜鉛−チタン母合金を用いて製造し
    た有底円筒状のマンガン乾電池用負極亜鉛缶。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方
    法により製造された亜鉛−チタン母合金を負極亜鉛缶に
    用いてなることを特徴とするマンガン乾電池。
  6. 【請求項6】 金属間化合物Zn2Ti、ZnTi、Z
    nTi2、および金属Ti相を含まない亜鉛ーチタン合
    金からなる有底円筒状のマンガン乾電池用負極亜鉛缶。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の負極亜鉛缶と、前記負極
    亜鉛缶の内部にセパレータを介して装填された二酸化マ
    ンガンを活物質とする正極合剤を含むマンガン乾電池。
  8. 【請求項8】 有底円筒状の負極亜鉛缶と、前記負極亜
    鉛缶の内部にセパレータを介して装填された二酸化マン
    ガンを活物質とする正極合剤を含むマンガン乾電池であ
    って、前記負極亜鉛缶が、0.002〜0.4重量%の
    鉛、0.001〜0.005重量%のチタンおよび残部
    が随伴不純物である鉄を50ppm以下含有し、かつ金
    属間化合物Zn2Ti、ZnTi、ZnTi2、および金
    属Ti相を含まないことを特徴とするマンガン乾電池。
  9. 【請求項9】 有底円筒状の負極亜鉛缶と、前記負極亜
    鉛缶の内部にセパレータを介して装填された二酸化マン
    ガンを活物質とする正極合剤を含むマンガン乾電池であ
    って、前記負極亜鉛缶が、0.001〜0.005重量
    %のチタンおよび残部が随伴不純物である鉄を50pp
    m以下含有し、かつ金属間化合物Zn2Ti、ZnT
    i、ZnTi2、および金属Ti相を含まないことを特
    徴とするマンガン乾電池。
  10. 【請求項10】 前記負極亜鉛缶が、0.001〜0.
    05重量%のインジウムおよび0.001〜0.05重
    量%のビスマスからなる群より選択される少なくとも一
    種を含有する請求項8または9記載のマンガン乾電池。
  11. 【請求項11】 前記負極亜鉛缶中の随伴不純物である
    鉄の含有量が15ppm以下である請求項8〜10のい
    ずれか一つに記載のマンガン乾電池。
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