JPH093504A - 希土類・鉄・ボロン系焼結永久磁石製造用の成形材料 - Google Patents

希土類・鉄・ボロン系焼結永久磁石製造用の成形材料

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JPH093504A
JPH093504A JP7153644A JP15364495A JPH093504A JP H093504 A JPH093504 A JP H093504A JP 7153644 A JP7153644 A JP 7153644A JP 15364495 A JP15364495 A JP 15364495A JP H093504 A JPH093504 A JP H093504A
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atomic
alloy powder
alloy
rare earth
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JP7153644A
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Yoshihisa Kishimoto
芳久 岸本
Nobushige Hiraishi
信茂 平石
Wataru Takahashi
渉 高橋
Yutaka Matsuura
裕 松浦
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Nippon Steel Corp
Proterial Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Sumitomo Special Metals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 R:10〜30原子% (但し、RはYを包含する
希土類元素のうち少なくとも1種) 、B:2〜28原子
%、Fe:65〜82原子% (但し、このFe量の50原子%まで
はCoで置換することができる) を主成分とする合金粉末
100 重量部に、潤滑剤として少なくとも1種のほう酸エ
ステル系化合物0.01〜2重量部を、該合金に対する20℃
における接触角が2°以上の有機溶剤 (例、エチレング
リコール) で希釈してから混合した、希土類・鉄・ボロ
ン系永久焼結磁石製造用成形材料。 【効果】 潤滑剤の添加による成形体強度の低下が解消
し、金型潤滑を行わずに連続プレス作業が可能となる。
磁気印加下での合金粉末の配向性が向上し、磁石特性に
優れた焼結永久磁石が得られる。潤滑剤と一緒にアミン
化合物を混合すると、成形材料を大気中で長時間放置し
ても潤滑剤の効果が持続する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、R (但し、RはYを包
含する希土類元素のうち少なくとも1種) 、B、Feを主
成分とする、残留磁束密度(Br)、固有保持力(iHc) 、最
大エネルギー積[(BH)max] といった磁石特性に優れた高
性能の希土類・鉄・ボロン系焼結永久磁石を粉末冶金法
により製造する際に用いる成形材料に関する。
【0002】
【従来の技術】永久磁石は、一般家庭の各種電気製品か
ら大型コンピューターの周辺端末機器に至る幅広い分野
で使用される、極めて重要な電気・電子材料の一つであ
る。近年の電気・電子機器の小型化、高機能化の要求に
伴い、永久磁石材料はますます高性能化が求められるよ
うになった。
【0003】現在の代表的な永久磁石材料は、アルニ
コ、ハードフェライト、および希土類コバルト磁石であ
る。近年のコバルトの原料事情の不安定化に伴い、コバ
ルトを20〜30wt%含有するアルニコ磁石の需要は減り、
鉄の酸化物を主成分とする安価なハードフェライトが磁
石材料の主流を占めるようになった。
【0004】一方、希土類コバルト磁石は、コバルトを
50〜60wt%も含むうえ、希土類鉱石中にあまり含まれて
いないSmを使用するため大変に高価であるが、他の磁石
に比べ、磁気特性が格段に高いため、主として小型で付
加価値の高い磁気回路に多用されるようになった。
【0005】さらに、希土類コバルト磁石に匹敵する高
い磁気特性を示す、より安価な永久磁石材料として、高
価なSmやCoを必ずしも含有する必要のない希土類・鉄・
ボロン系合金の磁気異方性焼結体からなる永久磁石が提
案された (特開昭59−46008号公報) 。また、R−Fe−
B系永久磁石の温度特性を改良するために、Feの一部を
Coで置換することにより、生成合金のキュリー点を上昇
させて温度特性を改善したR−Fe−Co−B系磁気異方性
焼結体からなる永久磁石も提案された (特開昭59−6473
3 号公報) 。
【0006】本発明では、希土類・鉄・ボロン系合金を
R−Fe−B系合金と表記する。ここで、RはYを含む希
土類元素のうち少なくとも1種であり、Feの一部はCoで
置換されてもよい。
【0007】このR−Fe−B系焼結永久磁石は、一般に
次のような工程により製造される。まず、成分金属また
は合金(例、フェロボロン)を所定組成となるように混
合して溶融させ、得られた溶湯を鋳造して、所定組織の
R−Fe−B系合金の鋳塊 (インゴット) を調製する。こ
の鋳塊を、例えばスタンプミルまたは水素化粉砕法等に
より平均粒径20〜500 μm程度まで粗粉砕した後、さら
にジェットミル等の微粉砕機で1〜20μmまで微粉砕し
て、原料となる合金粉末を得る。
【0008】別の方法として、希土類金属酸化物粉末、
鉄粉、フェロボロン粉を粒状Caを用いて還元し、次いで
副生したCa酸化物を水を用いて分離するという還元拡散
法により、R−Fe−B系合金粉末を粉末状で直接得るこ
とができる。この場合には、必要によりさらに1〜20μ
mまで微粉砕する。
【0009】得られた合金粉末に少量の潤滑剤を混合
し、磁気異方性を付与するために磁場中でプレス成形し
た後、得られた成形体 (圧粉体) を所定温度で焼結する
と、R−Fe−B系焼結永久磁石が得られる。通常は、焼
結後に焼結体を時効処理し、さらに焼結体をNiめっき等
の防食膜で被覆して耐食性を付与する。
【0010】潤滑剤は、磁場中でのプレス成形時に合金
粉末の流動性を確保すると同時に、金型からの離型を容
易にするために添加される。成形時に合金粉末の流動性
がないと、粉末と金型 (ダイス壁面等) との摩擦により
ダイス面や成形体表面に傷、剥がれ、割れ等が発生する
ことがあり、また配向 (各粉末の磁化容易方向を磁場方
向に整列させて磁気異方性を発現させる) のための合金
粉末の回転が阻害され、磁気特性が劣化し易い。
【0011】この潤滑剤として各種の物質が有用である
ことがこれまでにも提案されている。例えば、オレイン
酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸類およびその塩、ビス
アマイド (特開昭63−138706号公報、特開平4−214803
号公報) 、高級アルコール、ポリエチレングリコール
(特開平4−191302号公報) 、ポリオキシエチレンソル
ビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトー
ル脂肪酸エステル等のポリオキシエチレン誘導体 (特開
平4−124202号公報) 、固形パラフィン、ショウノウ等
(特開平4−214804号公報) 、パラフィン類とソルビタ
ン脂肪酸エステルもしくはグリセリン脂肪酸エステルと
の混合物 (特開平4−52203 号公報) 等が知られてい
る。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の潤滑剤
は、潤滑効果がさほど高くないため、プレス成形時のダ
イス面および成形体表面のきず、剥がれ、割れ等を防止
するには、別に金型に離型剤や離型油等(例、脂肪酸エ
ステル類等)を塗布するか、或いは合金粉末に潤滑剤を
大量に添加することが必要であった。
【0013】金型への離型剤等の塗布 (金型潤滑) は、
成形作業を煩雑にし、連続プレス成形にとって望ましく
ない。また、潤滑剤を大量に添加すると、焼結後の残留
炭素が増加し、得られる磁石の固有保持力が低下する
上、潤滑剤は凝集性が極めて高く、混合後も凝集粒子と
して存在するため、焼結後に大きな空孔となり、最終の
防食膜の被覆時に膜のピンホール発生の原因となる。さ
らに、潤滑効果が不十分であると、磁場中でのプレス成
形時に良好な配向度が得られず、残留磁束密度が不十分
となる。
【0014】これらの問題を解決する手段として、本発
明者等は先に、ほう酸エステル系化合物がR−Fe−B系
合金粉末の潤滑剤として最適であることを見出した。R
−Fe−B系合金粉末にほう酸エステル系化合物を添加す
ると、金型潤滑を行わずに連続プレス成形が可能とな
り、しかもプレス成形を磁場印加下で行う際の合金粉末
の配向性が向上することから、磁気特性、特に残留磁束
密度(Br)と最大エネルギー積[(BH)max] が向上した焼結
磁石が得られる。また、ほう酸エステル系化合物は少量
で潤滑効果があり、熱揮散性が比較的高いため、プレス
成形後の焼結時にほぼ完全に飛散し、残留炭素の少ない
磁石を得ることができるので、残留炭素による磁石特性
の低下を避けることができる。
【0015】このように、ほう酸エステル系化合物は潤
滑剤として非常に有効であり、R−Fe−B系合金粉末に
対してごく少量 (合金粉末100 重量部に対して0.01〜1
重量部) を配合しただけで上記のような極めて高い潤滑
効果を発現する。しかし、この配合量が少量でよいとい
う利点が、焼結磁石の工業的な大量生産においては、生
産性を上げようとした場合、次に述べるような問題を生
ずることが判明した。
【0016】ほう酸エステル系化合物の多くは、常温で
は粘稠な液体ないし固体の形態をとる。従って、例え
ば、上記のように少量のほう酸エステル系化合物を乾式
混合方法によりR−Fe−B系合金粉末に混合しようとす
る場合、これを合金粉末中に均一に分散させるには長時
間を要する。この点を解決するため、ほう酸エステル系
化合物を過剰に添加するか、あるいはパラフィン系溶剤
でほう酸エステル系化合物を希釈して混合する方法が採
られていた。
【0017】しかし、これらの方法では、ほう酸エステ
ル系化合物の過剰分または希釈に用いたパラフィン系溶
剤が潤滑効果をさらに付与する結果、得られたプレス成
形体では、R−Fe−B系合金粉末間の摩擦作用の低減が
過度になって、成形体の強度が低下し、そのため、プレ
ス成形工程から次の焼結工程へ移行する際のハンドリン
グにより、成形体の割れ、欠け等が発生し、歩留まりが
低下するという不都合を生ずる場合がある。
【0018】このような事情に鑑み、本発明の目的は、
ほう酸エステル系化合物を潤滑剤としてR−Fe−B系焼
結永久磁石をプレス成形する際に、得られる成形体の強
度低下が少なく、安定した生産性を与えるとともに、金
型潤滑剤の塗布なしで工業的に安定して連続プレス成形
が可能で、かつ充分に高い磁石特性を有する焼結磁石を
製造することができる、R−Fe−B系永久磁石の製造用
の成形材料を提供することである。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、潤滑効果
の高いほう酸エステル系化合物を、R−Fe−B系合金に
対する20℃での接触角が2°以上の有機溶剤で希釈して
から、R−Fe−B系合金粉末に混合することにより、少
量のほう酸エステル系化合物を合金粉末中に容易に均一
分散させることができ、かつ連続プレス成形で得られる
成形体の強度低下を抑制でき、上記目的を達成すること
ができることを見出した。
【0020】ここに、本発明は、R:10〜30原子% (但
し、RはYを包含する希土類元素のうち少なくとも1
種) 、B:2〜28原子%、Fe:65〜82原子% (但し、こ
のFe量の50原子%まではCoで置換することができる) を
主成分とする合金粉末に、潤滑剤として少なくとも1種
のほう酸エステル系化合物を、該合金に対する20℃にお
ける接触角が2°以上の有機溶剤で希釈して、混合した
ことを特徴とする、希土類・鉄・ボロン系焼結永久磁石
製造用の成形材料である。
【0021】合金粉末には、上記有機溶剤で希釈された
ほう酸エステル系化合物に加えて、さらにアミン化合物
を一緒に混合してもよい。成形材料を長時間放置する
と、ほう酸エステル系化合物が大気中の水分と反応して
加水分解し、その潤滑効果が低下していくが、アミン化
合物を混合することによってこのほう酸エステル系化合
物の加水分解が抑制され、ほう酸エステル系化合物の潤
滑効果を長時間にわたって保持することができる。
【0022】
【作用】本発明で用いるR−Fe−B系合金粉末は、R:
10〜30原子%、B:2〜28原子%、Fe:65〜82原子%
(但し、Feの50原子%まではCoで置換されていてもよい)
を含有する、R2Fe14B 結晶粒を主体とする合金粉末であ
る。
【0023】希土類元素Rは、イットリウム (Y) を包
含し、軽希土類 (セリウム族) と重希土類 (イットリウ
ム族) の両者を含む希土類元素である。Rとしては、軽
希土類だけで充分であり、特にNdおよびPrが好ましい。
通例、Rは1種だけでよいが、原料入手上その他の理由
により、安価な2種以上の希土類元素の混合物 (ミッシ
ュメタル、ジジム等) を使用することもできる。Sm、
Y、La、Ce、Gd等の重希土類は、軽希土類、特にNdおよ
び/またはPr等との混合物として用いることが好まし
い。Rは純希土類元素である必要はなく、工業上入手可
能な純度のものでよい。即ち、製造上不可避な不純物が
混入していても差し支えない。
【0024】希土類元素Rの割合が10原子%未満では、
α−Fe相が析出し、粉砕に悪影響を与える上、高い磁石
特性、特に高い固有保磁力(iHc) が得られない。Rが30
原子%を越えると残留磁束密度(Br)が低下する。Bの割
合が2原子%未満では高い固有保磁力が得られず、28原
子%を越えると残留磁束密度が低下する。Feの割合が65
原子%未満では残留磁束密度が不足し、82原子%を越え
ると高い固有保磁力が得られない。
【0025】Feの一部はCoで置換することができる。そ
れにより、合金のキュリー点が上昇し、永久磁石の温度
特性が向上する。しかし、CoがFeより多くなると、高い
固有保磁力が得られなくなるので、Feの一部をCoで置換
する場合、CoはFe+Coの合計量の50原子%を上限とす
る。従って、Coの上限は41原子%である。Coを添加する
場合、その添加効果を十分に得るには、5原子%以上の
量で添加することが好ましい。好ましいCoの添加量は5
〜25原子%の範囲である。
【0026】高い残留磁束密度と高い固有保磁力をとも
に有する優れた永久磁石を得るには、合金粉末の組成を
R:10〜25原子%、B:4〜26原子%、Fe:65〜82原子
%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、R:
12〜20原子%、B:4〜24原子%、Fe:65〜82原子%で
ある。
【0027】本発明で用いる合金粉末には、R、B、Fe
(またはFe+Co) の他に、製造工程で不可避的に混入す
る不純物、或いは低価格化、特性改善などの目的で意図
的に混入した元素も少量であれば共存させることができ
る。
【0028】例えば、Bの一部を、4.0 原子%以下の
C、4.0 原子%以下のSi、3.5 原子%以下のP、2.5 原
子%以下のS、3.5 原子%以下のCuのうちの少なくとも
1種、合計量で4.0 原子%以下で置換することにより、
合金粉末の生産性改善、低価格化が可能となる。
【0029】また、9.5 原子%以下のAl、4.5 原子%以
下のTi、9.5 原子%以下のV、8.5原子%以下のCr、8.0
原子%以下のMn、5原子%以下のBi、12.5原子%以下
のNb、10.5原子%以下のTa、9.5 原子%以下のMo、9.5
原子%以下のW、2.5 原子%以下のSb、7原子%以下の
Ge、3.5 原子%以下のSn、5.5 原子%以下のZr、5.5原
子%以下のHf、5.5 原子%以下のGa、のうち少なくとも
1種を合金中に含有させることにより、永久磁石の固有
保磁力 (iHc)を一層向上させることが可能となる。
【0030】本発明で用いるR−Fe−B系合金粉末の製
造方法は特に制限されないが、例えば、前述した一般的
な方法で合金粉末を製造することができる。この方法に
よれば、高周波炉、アーク炉等などを用いて真空または
不活性雰囲気中で所定の合金組成となるように出発原料
(成分金属または合金)を溶解し、得られたR−Fe−B
系合金の溶湯を水冷鋳型に鋳造して合金インゴットを得
る。
【0031】次いで、この合金インゴットをスタンプミ
ル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等により平均粒
径が20〜500 μm程度になるまで機械的に粗粉砕した
後、さらにジェットミル、振動ミル、ボールミル等によ
り平均粒径が1〜20μmになるように微粉砕して原料の
合金粉末を得る。
【0032】別の方法として、粗粉砕を水素化粉砕法に
より行うこともできる。水素化粉砕法では、上記の合金
インゴットを水素ガス中に保持して、希土類水素化物、
Fe2B、Feに分解させ、次いで水素圧を下げて希土類水素
化物から水素を解離させてR−Fe−B系合金粉末を得
る。水素化粉砕法により粗粉砕を行うと、その後に行う
微粉砕における破砕性が良好となり、粒度分布が比較的
狭い合金粉末を得ることができる。
【0033】R−Fe−B系合金の別の方法として、特開
昭63−317643号公報および特開平5−295490号公報に記
載の単ロールもしくは双ロール法、または特開昭60−1
7905号公報に記載のガスアトマイズ法により、合金
溶湯を急冷凝固させてR−Fe−B系合金粉末を得るこ
ともできる。このように合金溶湯を急冷凝固させると、
結晶粒径の小さい組織をもった、粉砕性に優れた合金が
生成する。そのため、得られた合金を、次いで上記と同
様に粗粉砕および微粉砕すると、粒径分布の狭い、粒径
が非常によく揃った合金粉末が得られる。その結果、プ
レス成形時の合金粉末の充填密度が高くなり、磁石特
性、中でも最大エネルギー積[(BH)max] がさらに向上し
た焼結永久磁石を製造することができる。
【0034】使用する合金粉末の粒度は、平均粒径が1
〜20μmであればよく、2〜10μmの範囲がより好まし
い。平均粒径が20μmを越えると、焼結磁石とした後に
優れた磁石特性、とりわけ高い固有保磁力が得られな
い。平均粒度が1μm未満では、永久磁石の作製工程
(即ち、プレス成形、焼結、時効処理工程) における合
金の酸化が著しく、優れた磁石特性が得られない。
【0035】本発明によれば、このR−Fe−B系合金粉
末に、潤滑剤として、少なくとも1種のほう酸エステル
系化合物を、R−Fe−B系合金に対する20℃における接
触角が2°以上の有機溶剤で希釈してから混合し、得ら
れた混合物を焼結永久磁石製造時のプレス成形工程に成
形材料として使用する。潤滑剤の添加時期は、R−Fe−
B系合金の微粉砕前、微粉砕中、および微粉砕後のいず
れであってもよい。
【0036】本発明において、ほう酸エステル系化合物
とは、ほう酸 (オルトほう酸H3BO3とメタほう酸HBO2
含む) または無水ほう酸 (B2O3) を1種もしくは2種以
上の1価または多価アルコールと反応させてエステル化
することにより得られる、ほう酸トリエステル型の化合
物を意味する。
【0037】ほう酸または無水ほう酸のエステル化に使
用できる1価または多価アルコールとしては、下記(1)
〜(4) の化合物が例示される。
【0038】(1) 一般式:R1 −OHで示される1価ア
ルコール、(2) 下記一般式で示されるジオール、
【0039】
【化1】
【0040】(3) グリセリンまたは置換グリセリンとそ
れらのモノまたはジエステル、(4) 上記(2) および(3)
以外の多価アルコールならびにそのエステルもしくはア
ルキレンオキサイド付加物。
【0041】上記一般式において、R1 は炭素数3〜22
個の脂肪族、芳香族または複素環式の飽和または不飽和
有機基を意味し、R2 、R3 、R4 およびR5 は同一で
も異なるものでよく、それぞれHまたは炭素数1〜15の
脂肪族または芳香族の飽和または不飽和1価有機基を意
味し、R6 は、単結合、−O−、−S−、−SO2 −、
−CO−、または炭素数1〜20の脂肪族もしくは芳香族
の飽和もしくは不飽和有機2価基を意味する。
【0042】(1) の1価アルコールの具体例としては、
n−ブタノール、 iso−ブタノール、n−ペンタノー
ル、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタ
ノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノ
ール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノー
ル、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカ
ノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデ
カノール等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜18のアル
コールである。そのほか、アリルアルコール、クロチル
アルコール、プロパルギルアルコール等の脂肪族不飽和
アルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール
等の脂環式アルコール、ベンジルアルコール、シンナミ
ルアルコール等の芳香族アルコール、フルフリルアルコ
ール等の複素環式アルコールも1価アルコールに含まれ
る。
【0043】炭素数2以下の1価アルコール(メタノー
ル、エタノール)とのほう酸エステル系化合物は沸点が
低く、R−Fe−B系合金粉末と混合した後に揮散して、
成形前に潤滑剤が失われる可能性がある。炭素数22を超
える1価アルコールとのほう酸エステル系化合物は、融
点が高く、均一混合性にやや劣る上、焼結後に残炭とし
て残存する可能性がある。
【0044】(2) のジオール (2価アルコール) の具体
例としては、エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペ
ンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、ネ
オペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘ
プタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジ
オール、1,10-デカンジオール、その他のα,ω−グリコ
ール、さらにはピナコール、ヘキサン-1,2-ジオール、
オクタン-1,2-ジオール、ブタノイル−α−グリコー
ル、その他の対称α−グリコールが挙げられる。総炭素
数が10以下で、融点が比較的低いジオールが、合成が容
易でコスト的にも有利であることから好ましい。
【0045】(3) のグリセリン類の例としては、グリセ
リン自体、ならびにグリセリンと炭素数8〜18の脂肪酸
とのモノエステルまたはジエステルが挙げられる。これ
らのエステルの代表例はラウリン酸モノおよびジグリセ
ライド、オレイン酸モノおよびジグリセライド等であ
る。また、置換グリセリン (例、ブタン-1,2,3-トリオ
ール、2-メチルプロパン-1,2,3-トリオール、ペンタン-
2,3,4-トリオール、2-メチルブタン-1,2,3-トリオー
ル、ヘキサン-2,3,4-トリオール等) それ自体、ならび
にそれらと炭素原子数8〜18の脂肪酸とのモノエステル
またはジエステルも使用できる。
【0046】(4) の多価アルコールの具体例としては、
トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット、アラビ
ット、ソルビット、ソルビタン、マンニット、マンニタ
ンなどが挙げられる。また、これらの多価アルコールと
炭素数8〜18の脂肪酸とのモノエステル、ジエステルま
たはトリエステル等のエステル化物 (但し、少なくとも
1個のアルコール性OH基が残留) 、ならびにこれらの
多価アルコールにアルキレンオキサイド (エチレンオキ
サイド、プロピレンオキサイド等) を1〜20モル、好ま
しくは4〜18モル付加させたエーテル型の付加物も使用
できる。
【0047】ほう酸または無水ほう酸と上記アルコール
とのエステル化反応は、これらの反応成分を単に一緒に
加熱するだけで容易に進行する。反応温度はアルコール
の種類によっても異なるが、通常は 100〜180 ℃程度で
ある。反応成分は、ほぼ化学量論比で反応させることが
好ましい。得られたほう酸エステル系化合物の室温での
性状は一般に粘稠な液体もしくは固体である。
【0048】R−Fe−B系合金粉末に潤滑剤として混合
するほう酸エステル系化合物の量は、原料合金粉末の粒
径、ダイス、成形体の形状、寸法および摩擦面積、プレ
ス条件等に応じて適宜選定すればよい。ほう酸エステル
は、従来の潤滑剤とは異なり、ごく少量の添加で成形性
改善効果がある。添加量の増大とともに抜き圧などの成
形性は向上するが、前述の通り、多量に添加するとプレ
ス成形体のグリーン強度が低下し、成形体のハンドリン
グ時に割れ、欠け等による歩留りの低下を惹起するのみ
ならず、焼結工程において焼結体に炭素が残留して、磁
気特性が低下するようになる。
【0049】このような観点から、ほう酸エステル系化
合物の好ましい添加量は、R−Fe−B系合金粉末100 重
量部に対して、0.01〜2重量部の範囲、より好ましくは
0.1〜1重量部の範囲である。
【0050】このようにほう酸エステル系化合物の添加
量が少量であり、しかもこの化合物の多くが粘稠な液体
または固体であって、R−Fe−B系合金粉末中に均一に
分散させるには、長時間の混合作業が必要となり、R−
Fe−B系焼結磁石の大量生産における障害となる。本発
明では、この混合作業を容易にするために、潤滑剤のほ
う酸エステル系化合物を特定の有機溶剤で希釈してから
R−Fe−B系合金粉末と混合する。それにより、成形体
のグリーン強度の低下を引き起こさない少量のほう酸エ
ステル系化合物を、短時間の混合で容易に合金粉末中に
均一分散でき、成形体の強度低下を伴わずに、所望の潤
滑効果を発揮させることができる。
【0051】本発明において潤滑剤のほう酸エステル系
化合物の希釈に用いるのは、R−Fe−B系合金に対する
20℃での接触角が2°以上の有機溶剤である。このよう
な有機溶剤を希釈剤として用いることにより前述の効果
が得られる機構は充分には解明されていないが、現時点
では次のように推測される。
【0052】ほう酸エステル系化合物を潤滑剤として用
いる場合、潤滑剤が必ずしも合金粉末粒子を完全に被覆
していなくても、必要とする連続プレス成形性と磁場配
向性が十分に得られ、必要以上に合金粉末粒子が潤滑剤
で被覆されると、逆に合金粒子間の摩擦低減作用が過剰
になる。例えば、パラフィン系、オレフィン系もしくは
芳香族系炭化水素などの希釈剤として通常用いられる有
機溶剤は、合金粉末の表面に対する濡れ性を高め、潤滑
剤の被覆量を増大させる。これに対し、本発明で用いる
有機溶剤は、上記のような通常の有機溶剤に比べて、合
金粉末の表面のに対する濡れ性を低減させ、合金粉末粒
子の潤滑剤による過剰な被覆を抑制する。その結果、得
られるプレス成形体の強度低下が抑制される。
【0053】有機溶剤のR−Fe−B系合金に対する接触
角について次に説明する。図1に模式的に示すように、
水平に保持したR−Fe−B系合金平面上に有機溶剤の液
滴を静置すると、合金表面上に置いた液滴の表面と合金
面との交点において、合金の表面張力 (rsv) と液体の
表面張力 (rlv) および合金表面−液体間の界面張力
(rsl) がつりあって、 rsv = rlv・cos θ + rsl が成り立つ。この合金表面上に置いた液滴の表面と合金
表面との交点における、液滴に引いた接線と合金表面と
のなす角 (θ) が、有機溶剤のR−Fe−B系合金に対す
る接触角である。
【0054】本発明においては、この合金表面に対する
20℃で測定した接触角が2°以上となる有機溶剤を、潤
滑剤であるほう酸エステル系化合物の希釈に用いる。こ
の接触角が2°未満では、R−Fe−B系合金粉末に対す
る潤滑剤希釈液の濡れ性が大きくなりすぎ、潤滑剤が合
金粒子表面を過剰に被覆することになり、合金粉末間の
摩擦力が低下し、得られるプレス成形体の強度が低下す
る。
【0055】ほう酸エステル系化合物からなる潤滑剤の
希釈に用いる有機溶剤は、上記接触角が2°以上である
ことの他、希釈剤として必要な特性を備えている必要が
ある。まず、使用する有機溶剤は、大気中において化学
的に安定であり、ほう酸エステル系化合物と容易には反
応せず、ほう酸エステル系化合物が有する潤滑効果を著
しく阻害せず、合金粉末に対しても化学的に安定であ
り、かつ高温においてもR−Fe−B系合金と容易に反応
しないものがよい。さらに、希釈剤であるからには、常
温で比較的低粘度の液体であることが好ましく、ほう酸
エステル系化合物に対して常温で十分な溶解性を有する
必要がある。また、R−Fe−B系合金粉末に乾式で潤滑
剤を混合する場合には、混合中に蒸発等により溶剤が揮
散すると、ほう酸エステル系化合物がR−Fe−B系合金
粉末中に均一に混合できなくなることから、常温では比
較的揮発速度の遅い有機溶剤が好ましい。具体的には、
大気圧下での沸点が 100〜500 ℃、好ましくは 150〜30
0 ℃のものが好ましい。沸点が100 ℃より低いと、上述
のごとく、混合中に溶剤が揮散してしまう。一方、沸点
が500 ℃を超える有機溶剤は、プレス成形後の焼結工程
において完全に揮散せず、残留炭素となって残り、磁石
特性の低下を引きおこす。
【0056】このような特性を満たす任意の有機溶剤
を、本発明において潤滑剤のほう酸エステル系化合物の
希釈に使用することができる。好ましい希釈用有機溶剤
の具体例を次に列挙する。なお、カッコ内の数値は大気
圧下での沸点を示す。エチレングリコール(197℃) 、ト
リメチレングリコール(214℃) 、テトラメチレングリコ
ール(235℃) 、ペンタメチレングリコール(239℃) 、ヘ
キサメチレングリコール(250℃) 、プロピレングリコー
ル(187℃) 、2,3-ブタンジオール(184℃) 、1,3-フ゛タンシ゛オー
ル(204℃) 、ジエチレングリコール(245℃) 、トリエチ
レングリコール(278℃) 、3-メチル-1,3-ブタンジオー
ル(203℃) 、3-メチレンペンタン-1,3,5-トリオール(21
6℃/50mmHg) 、グリセリン(290℃) 等。
【0057】ほう酸エステル系化合物の希釈に用いる有
機溶剤の割合は特に限定されないが、通常は、ほう酸エ
ステル系化合物1〜80重量%、好ましくは10〜70重量
%、残部が有機溶剤という割合で両者を混合すればよ
い。ほう酸エステル系化合物と有機溶剤の合計量に基づ
いてほう酸エステル系化合物1重量%未満では、混合物
中のほう酸エステル系化合物の含有量が少なくなり、十
分な潤滑効果が得られず、また十分な潤滑効果を得るた
め混合物の添加量を増した場合には、粉末の流動性が悪
くなり、連続プレス成形において粉末の金型への給粉性
が低下する。逆に、混合物中のほう酸エステル系化合物
の量が80重量%を超えると、希釈剤の効果がほとんど得
られず、潤滑剤のみを添加した場合と同様の問題を生ず
る。
【0058】前述したように、R−Fe−B系合金粉末に
潤滑剤として添加したほう酸エステル系化合物は水分に
より加水分解を受けるので、大気中に長時間放置した場
合には加水分解により潤滑効果が低下する傾向がある。
本発明の好適態様にあっては、潤滑剤のほう酸エステル
系化合物の加水分解安定性を高めるために、潤滑剤と一
緒にアミン化合物を合金粉末に混合する。
【0059】本発明で用いるアミン化合物は、第一アミ
ン、第二アミンおよび第三アミンのいずれでもよく、ま
た窒素原子に結合した炭化水素残基がすべて脂肪族基
(脂環式基も含む) である脂肪族アミンおよび炭化水素
残基の一部または全部が芳香族基である芳香族アミンの
いずれでもよい。さらに、1分子中にアミノ基、イミノ
基等のアミン系窒素を1個持つモノアミン、2個持つジ
アミン、あるいは3個以上有するポリアミンのいずれも
使用できる。また、窒素原子に結合した炭化水素残基
は、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよく、
或いは不飽和基 (例、アリル基) であってもよい。
【0060】本発明で使用できるアミン化合物の例を挙
げると、脂肪族アミンとしてはプロピルアミン、イソプ
ロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシル
アミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、モノ
(イソプロパノール) アミン、モノ (n−ブタノール)
アミン、アリルアミン等の第一アミン; ジエチルアミ
ン、ジ (n−プロピル) アミン、ジイソプロピルアミ
ン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジア
リルアミン等の第二アミン; トリエチルアミン、トリプ
ロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミ
ン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチエタノ
ールアミン、N-ブチルエタノールアミン、トリアリルア
ミン等の第3アミンがある。また、シクロプロピルアミ
ン、シクロヘキシルアミン等の脂環式アミン等も使用で
きる。芳香族アミンとしては、アニリン、メチルアニリ
ン、ジメチルアニリン、エチルアニリン、ジエチルアニ
リン、トリイジン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン
等がある。
【0061】アミン化合物の添加量は、潤滑剤として用
いるほう酸エステル系化合物の種類や配合量、アミン化
合物の種類、必要となる加水分解の抑制の程度などの条
件に応じて、ほう酸エステル系化合物の加水分解の抑制
に有効なように適宜選択すればよい。添加量が少なすぎ
ては、ほう酸エステル系化合物の加水分解を十分に抑制
できず、多すぎると後続の焼結工程において焼結体に残
留する炭素量が多くなり、磁石特性が低下する。
【0062】このような観点から、アミン化合物の好ま
しい添加量は、アミン化合物中のアミノ基とイミノ基の
合計当量/ほう酸エステル系化合物中のほう酸エステル
当量の比が 0.1〜10.0の範囲、より好ましくは 0.2〜2.
0 の範囲となる量である。
【0063】上記有機溶剤で希釈したほう酸エステル系
化合物からなる潤滑剤とアミン化合物のR−Fe−B系合
金粉末への混合は、乾式混合と、溶剤を用いた湿式混合
のいずれの方式でもよいが、本発明では潤滑剤のほう酸
エステル系化合物を予め有機溶剤で希釈していることか
ら、乾式混合でも容易に潤滑剤を合金粉末中に均一に混
合できるので、簡易に混合できる乾式混合の方が、本発
明による効果を十分に生かせ、有利である。
【0064】希釈した潤滑剤、またはこれとアミン化合
物の混合の時期は、前述したように、R−Fe−B系合金
粉末の微粉砕工程の前か後、あるいは微粉砕工程中のい
ずれでもよい。アミン化合物を併用添加する場合、希釈
した潤滑剤とアミン化合物を異なる時期に混合してもよ
く、その場合の混合の順序にも制限はない。これらを一
緒に添加する場合には、潤滑剤希釈用の上記有機溶剤に
潤滑剤であるほう酸エステル系化合物とアミン化合物と
を一緒に溶解させて添加してもよく、その方が均一混合
にとって有利である。また、これらの添加剤の混合時の
温度は室温〜50℃が適当である。
【0065】微粉砕前または微粉砕中の合金粉末に、希
釈した潤滑剤またはこの潤滑剤とアミン化合物とを添加
する場合、潤滑剤のほう酸エステル系化合物またはこれ
とアミン化合物の一部が、微粉砕中に揮発する可能性が
ある。従って、この場合には、微粉砕中の揮発による損
失分を見込んで、これらの添加剤を所定の配合量より多
めに (例、最大約2倍まで) 添加することが好ましい。
【0066】R−Fe−B系合金粉末に、上記有機溶剤で
希釈したほう酸エステル系化合物からなる潤滑剤を単独
で、あるいはアミン化合物とを一緒に混合した本発明の
成形材料から、通常の粉末冶金法に従ってプレス成形お
よび焼結を行うとR−Fe−B焼結永久磁石が製造され
る。
【0067】予め有機溶剤で希釈しておくことにより、
少量のほう酸エステル系化合物を合金粉末中に確実に均
一混合することができ、成形体強度を低減させずに、十
分な成形性 (摩擦低減、離型性) を付与できる。また、
アミン化合物を併用した場合には、大気中に長時間放置
した後でも潤滑剤の効果が低下しないため、従来は一般
的に必要であった連続プレス成形における金型への離型
剤の塗布工程 (金型潤滑工程) を省略でき、この工程を
省略しても連続プレス成形中の粉末と金型との摩擦によ
る傷、割れ、剥がれ等の発生を長時間にわたり防止でき
る。そのため工程が簡略化され、プレス成形を工業的に
安定して連続的かつ大量に実施することができるように
なる。
【0068】なお、プレス成形時に磁場を印加すれば磁
気異方性の、磁場を印加しなければ磁気等方性の永久磁
石となる。通常は、より高い磁気特性を得るために、磁
場中でプレス成形を行う。印加する磁場の強さは8kOe
以上、特に10 kOe以上が好ましく、成形圧力は 0.5〜3
ton/cm2 の範囲が適当である。
【0069】プレス成形後の焼結は、例えば、アルゴン
等の不活性雰囲気中または真空中、1000〜1100℃で1〜
8時間行うのが普通である。その後、必要に応じて時効
処理を行うと固有保磁力が向上する。時効処理は一般に
500〜600 ℃で1〜6時間の加熱により行われる。得ら
れた焼結永久磁石は、必要に応じて腐食から保護するた
めに、Niめっきなどによる防食膜で被覆してもよい。
【0070】本発明の成形材料から得られた磁気異方性
のR−Fe−B系焼結永久磁石は、固有保磁力(iHc) ≧ 1
kOe、残留磁束密度 (Br) >4kGを示し、最大エネルギ
ー積[(BH)max]はハードフェライトと同等以上となり、
好ましい範囲では、(BH)max≧10 MGOe を示す。特に、
合金粉末が、R:12〜20原子%、B:4〜24原子%、F
e:65〜82原子%であって、Rの50原子%以上を軽希土
類が占める場合に、最もすぐれた磁石特性が得られ、中
でも軽希土類金属がNdの場合には、(BH)max はその最大
値が33 MGOe 以上に達する。
【0071】Feの一部 (最大で41原子%) をCoで置換し
た場合には、得られる磁気異方性の焼結永久磁石は、上
記と同等の磁石特性を示すと同時に、残留磁束密度の温
度係数が0.1 %/℃以下となり、温度特性が改善され
る。
【0072】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。なお、実施例中、%および部は特に指定のな
い限り重量%および重量部である。
【0073】なお、実施例で使用したR−Fe−B系合金
粉末の製造原料は、純度99.9%の電解Fe、Bを19.4%含
有し残部はFeおよびC等の不純物からなるフェロボロン
合金、純度99.7%以上のNdであった。
【0074】(実施例1)原子%で15%Nd−8%B−77%
Feの組成になるように原料を配合し、Ar雰囲気中で高周
波炉により溶解した後、溶湯を水冷銅鋳型で鋳造し、合
金鋳塊を得た。この合金鋳塊をスタンプミルにより35メ
ッシュ以下まで粗粉砕し、次に湿式ボールミルにより微
粉砕して、平均粒径3.3 μmの合金粉末を得た。
【0075】ほう酸エステル系化合物として、n−ブタ
ノールとほう酸を3:1のモル比で110 ℃において4時
間加熱して縮合反応させることにより得た、下記構造の
ほう酸エステル系化合物(a) を使用した。このほう酸エ
ステル系化合物を50%濃度になるようにエチレングリコ
ールで希釈してから使用した。
【0076】
【化2】
【0077】万能混合攪拌機に、上記合金粉末100 部に
対して、希釈した潤滑剤0.2 部 (ほう酸エステル系化合
物0.1 部+希釈溶剤0.1 部) を装入し、常温で乾式混合
して、添加剤を合金粉末中に均一に分散させることによ
り成形材料を得た。
【0078】この成形材料を、ほう酸エステル系化合物
の加水分解による連続プレス成形性への影響を調査する
ために、室温で大気中に6時間放置した後、金型への離
型剤の塗布を行わずに、12 kOeの横磁場 (プレス成形方
向と垂直方向の磁場) を印加しながら、1.5 t/cm2 の成
形圧力でプレス成形を連続50回行い、直径29 mm ×厚さ
10 mm のディスク型の成形体を得た。得られた成形体を
アルゴン中1070℃で4時間加熱して焼結させ、次いで55
0 ℃で2時間加熱の時効処理を行い、磁気異方性を示す
R−Fe−B系焼結永久磁石を得た。
【0079】このときの連続プレス成形性 (成形体の
傷、割れ、剥がれ等の有無、成形時の異音等) 、成形体
密度、成形体強度、焼結・時効処理後の残炭量、および
磁石特性{残留磁束密度(Br)、固有保磁力(iHc) 、最大
エネルギー積 [(BH)max]}、ならびに用いた有機溶剤の
上記組成のR−Fe−B系合金に対する20℃における接触
角の結果を表1にまとめて示す。
【0080】接触角は、協和界面科学製の正接触角計CA
−DT型を用い、実施例と同組成のR−T−B系合金焼結
材 (乾式研磨、脱脂洗浄、乾燥したもの) に対して液滴
法により求めた。成形体強度は、アムスラー型油圧式試
験機を用い、プレス方向に圧力を加えた時に成形体が圧
壊する強度を求めた。
【0081】(比較例1)ほう酸エステル系化合物(a) 0.
1 部を有機溶剤で希釈せずに用いた点を除いて、実施例
1と同様にして、乾式混合による成形材料の調製、その
大気中放置、および焼結永久磁石の作製を行った。試験
結果を表1に示す。
【0082】(実施例2)潤滑剤としてネオペンチルグリ
コールとトリデカノールとほう酸とを等モルづつ縮合反
応させて得た、代表的には下記構造で示されるほう酸エ
ステル系化合物(b) を使用した。このほう酸エステル0.
1 部とジブチルアミン0.041 部とを一緒に0.5 部のジエ
チレングリコールに溶解した溶液を、合金粉末100 部に
添加して、実施例1と同様に成形材料の調製と大気中放
置、および焼結永久磁石の作製を行った。試験結果を表
1に示す。
【0083】
【化3】
【0084】(比較例2)希釈用の有機溶剤としてジエチ
レングリコールの代わりにn−デカンを用いた点を除い
て実施例2と同様にして、成形材料の調製と大気中放
置、および焼結永久磁石の作製を行った。試験結果を表
1に示す。
【0085】(実施例3)ほう酸エステル系化合物とし
て、オレイン酸モノグリセライドとn−ブタノールとほ
う酸とを等モルづつ縮合反応させて得た、代表的には下
記構造で示されるほう酸エステル系化合物(c) を使用し
た。このほう酸エステル1.0 部とトリプロピルアミン0.
33部とを一緒に1,3-ブタンジオール0.5 部に溶解した溶
液を、合金粉末100 部に添加して、実施例1と同様に成
形材料の調製と大気中放置、および焼結永久磁石の作製
を行った。試験結果を表1に示す。
【0086】
【化4】
【0087】(比較例3)希釈用の有機溶剤として1,3-ブ
タンジオールの代わりにキシレンを用いた点を除いて実
施例3と同様にして、成形材料の調製と大気中放置、お
よび焼結永久磁石の作製を行った。試験結果を表1に示
す。
【0088】(実施例4)ほう酸エステル系化合物とし
て、ペンタエリトリットジオクチルエステルと2−エチ
ルヘキサノールとほう酸とを等モルづつ縮合反応させて
得た、代表的には下記構造で示されるほう酸エステル系
化合物(d) を使用した。このほう酸エステル2.0 部とジ
エチルアニリン0.039 部とを一緒に2部のグリセリンに
溶解した溶液を合金粉末100 部に添加して、実施例1と
同様に成形材料の調製と大気中放置、および焼結永久磁
石の作製を行った。試験結果を表1に示す。
【0089】
【化5】
【0090】(比較例4)希釈用の有機溶剤としてグリセ
リンの代わりにシクロヘキサンを用いた点を除いて実施
例4と同様にして、成形材料の調製と大気中放置、およ
び焼結永久磁石の作製を行った。試験結果を表1に示
す。
【0091】(実施例5)ほう酸エステル系化合物とし
て、ネオペンチルグリコールとほう酸とを3:2のモル
比で縮合反応させて得た、代表的には下記構造のほう酸
エステル系化合物(e) を使用した。このほう酸エステル
系化合物0.01部とエチレンジアミン0.018部とを一緒に
0.09部の1,5-ペンタンジオールに溶解した溶液を合金粉
末100 部に添加して、実施例1と同様に成形材料の調製
と大気中放置、および焼結永久磁石の作製を行った。試
験結果を表1に示す。
【0092】
【化6】
【0093】(比較例5)希釈用の有機溶剤として1,5-ペ
ンタンジオールの代わりにジエチレングリコールジエチ
ルエーテルを用いた点を除いて実施例5と同様にして、
成形材料の調製と大気中放置、および焼結永久磁石の作
製を行った。試験結果を表1に示す。
【0094】(従来例)実施例1で用いたR−Fe−B系合
金粉末を用い、潤滑剤とアミン化合物を添加混合せず、
従来の金型潤滑方式によりプレス成形を行い、焼結永久
磁石の作製を行った。試験結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】表1の結果からわかるように、本発明に従
って、R−Fe−B系合金に対する20℃での接触角が2°
以上の有機溶剤でほう酸エステル系化合物を希釈してか
らR−T−B系合金粉末に潤滑剤として混合することに
より、得られた成形材料をプレス成形した場合の成形体
強度が、潤滑剤を添加しない従来の金型潤滑方式で得ら
れる成形体強度とほぼ同程度の値になった。即ち、ほう
酸エステル系化合物の添加による成形体強度の低下が避
けられた。また、添加したほう酸エステル系化合物が極
めて高い潤滑効果を示すため、磁場中成形時に印加した
磁場に対する合金粉末の配向性が向上する結果、残留磁
束密度が向上し、その結果得られる最大エネルギー積も
向上した。
【0097】一方、比較例1に示すように、潤滑剤のほ
う酸エステル系化合物を希釈せずにそのまま合金粉末に
混合すると、実施例1と比較例1との対比から明らかな
ように、成形体強度が低下する上、均一混合が不十分と
なる結果、磁場配向性がやや低下し、残留磁束密度と最
大エネルギー積が低下した。
【0098】また、比較例2〜5に示すように、ほう酸
エステル系化合物の希釈溶剤として、R−Fe−B系合金
に対する20℃での接触角2°未満の慣用の有機溶剤を用
いると、合金粉末に対する潤滑剤希釈液の濡れ性が増大
し、ほう酸エステル系化合物が合金粉末表面を過剰に被
覆するため、成形体密度は高くなるものの、合金粉末粒
子間の摩擦作用が低下し、その結果、成形体強度が著し
く低下した。
【0099】なお、以上の実施例および比較例では、ほ
う酸エステル系化合物の加水分解への影響を調査するた
め、成形材料を大気中に6時間放置してから連続プレス
成形を行ったため、アミン化合物を添加しなかった実施
例1および比較例1では連続プレス成形性が不良となっ
た。しかし、成形材料を直ちに連続プレス成形作業に使
用した場合には、実施例1および比較例1のいずれも連
続プレス成形性は良好となり、50回の連続プレスの終了
時まで支障なく良好な成形体を得ることができた。
【0100】
【発明の効果】本発明によれば、R−Fe−B系合金粉末
に、潤滑剤としてほう酸エステル系化合物を、R−Fe−
B系合金に対する20℃での接触角が2°以上の有機溶剤
で希釈してから混合することにより、少量のほう酸エス
テル系化合物を合金粉末中に均一に分散させることがで
き、且つほう酸エステル系化合物の合金粉末表面への必
要以上の被覆が抑制される結果、成形体中の合金粉末間
の摩擦作用の過度の低下が抑えられ、ほう酸エステル系
化合物の添加に起因する成形体強度の低下が解消され
る。
【0101】その結果、プレス成形で得られた成形体の
ハンドリングが容易になって、ハンドリング時の成形体
損傷が避けられる。しかも、ほう酸エステル系化合物の
潤滑効果が極めて高いため、本発明に従って上記溶媒で
潤滑剤のほう酸エステル系化合物を希釈しても、潤滑効
果の低下は認められず、金型潤滑を行わずに短い作業時
間で連続プレス作業を支障なく実施でき、R−T−B系
焼結永久磁石の安定した大量生産が可能となる。
【0102】また、ほう酸エステル系化合物の添加によ
る潤滑効果によって、成形体密度が向上し、また磁場印
加下での成形における合金粉末の配向性が向上するた
め、本発明の成形材料から、磁石特性、特に残留磁束密
度と最大エネルギー積が改善された磁気異方性の焼結永
久磁石を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】R−T−B系合金に対する有機溶剤の接触角に
関する説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 渉 大阪市中央区北浜4丁目5番33号 住友金 属工業株式会社内 (72)発明者 松浦 裕 大阪府三島郡島本町江川2丁目15−17 住 友特殊金属株式会社山崎製作所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R:10〜30原子% (但し、RはYを包含
    する希土類元素のうち少なくとも1種) 、B:2〜28原
    子%、Fe:65〜82原子% (但し、このFe量の50原子%ま
    ではCoで置換することができる) を主成分とする合金粉
    末に、潤滑剤として少なくとも1種のほう酸エステル系
    化合物を、該合金に対する20℃における接触角が2°以
    上の有機溶剤で希釈して混合したことを特徴とする、希
    土類・鉄・ボロン系焼結永久磁石製造用の成形材料。
  2. 【請求項2】 R:10〜30原子% (但し、RはYを包含
    する希土類元素のうち少なくとも1種) 、B:2〜28原
    子%、Fe:65〜82原子% (但し、このFe量の50原子%ま
    ではCoで置換することができる) を主成分とする合金粉
    末に、潤滑剤として少なくとも1種のほう酸エステル系
    化合物を、該合金に対する20℃における接触角が2°以
    上の有機溶剤で希釈して、かつアミン化合物と一緒に混
    合したことを特徴とする、希土類・鉄・ボロン系焼結永
    久磁石製造用の成形材料。
JP7153644A 1995-06-20 1995-06-20 希土類・鉄・ボロン系焼結永久磁石製造用の成形材料 Withdrawn JPH093504A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6485677B1 (en) 1997-06-26 2002-11-26 Höganäs Ab Method for making sintered products and a metal powder composition therefor
EP0991086A4 (en) * 1998-04-22 2003-04-23 Sumitomo Spec Metals METHOD OF MANUFACTURING AN R-FE-B PERMANENT MAGNET, LUBRICANTS AND SEPARATORS FOR APPLICATION TO FORMING
CN113571280A (zh) * 2021-07-23 2021-10-29 包头天和磁材科技股份有限公司 钕铁硼磁体粗粉助剂及制备方法、用途和磁体的制备方法

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