【発明の詳細な説明】
創傷治癒用組成物 発明の分野
本発明はインスリン様成長因子およびインスリン様成長因子結合タンパク質の
組み合わせを含有する創傷治癒のための薬剤組成物およびこの組成物を用いる方
法に関する。発明の背景
インスリン様成長因子1および2(それぞれIGF-1およびIGF-2)は、互いの構造お
よびインスリンの構造に関係のある7kDaタンパク質である。IGF-1およびIGF-2は
身体中のほとんどの細胞にとって成長因子および分化因子であり、血清中に高濃
度で存在する(IGF-1は約300ng/mlおよびIGF-2は約1000ng/ml)。IGF-1の循環レベ
ルは、成長ホルモンにより主に決定される。この成長ホルモンは、肝臓をIGF-1
を生産するように刺激する。成長ホルモンの成長促進効果のほとんどは、IGF-1
により仲介されると考えられている。成長ホルモンおよびIGF-1の組み合わせは
、PCT特許出願第US91/03841号に記載のとおり直線成長および体重増加を刺激す
ることが示される。
創傷治癒を促進する種々の成長因子の使用は、J.Van BruntおよびA.Klausne
r、BioTechnology、6:25-30、1988年に示唆されている。SharrおよびSmithの米
国特許第4,885,163号に報告されるように、IGF-2は創傷に対して効果的な処置で
あることが示された。しかし、Lynchら、J.Clin.Invest.84:640-646、1989年
およびVan BruntおよびKlausner、Bio/Techn
ology 6:25-30、1988年に記載のとおり、IGF-1だけでは、部分的に深い創傷に効
果がないが、PDGF(血小板由来成長因子)との組合せで相乗的に作用し、結合組織
成長および上皮成長を促進する。米国特許第4,983,581号は、創傷治癒組成物中
にIGF-1およびTGF-βを使用することを報告している。PCT特許出願公開第WO91/1
8621号は、成長および体重増加を促進するために、成長ホルモンとの組合せでIG
F-1の使用を記載するが、創傷治癒のためでない。
血液中の循環IGF-1およびIGF-2は、現在6種知られている特異的な結合タンパ
ク質(IGFBP-1からIGFBP-6)に結合した。結合タンパク質は95%またはそれ以上の
IGFと血液中で結合する。結合タンパク質により結合した場合、IGF-1およびIGF-
2は、それらの生物学的機能を仲介する細胞表面のレセプターとの相互作用を阻
害される。インスリン様成長因子結合タンパク質1(IGFBP-1またはBP-1)は23kDa
のIGF結合タンパク質である。公開されたIGFBP-1で行ったインビボの実験は、IG
FBP-1がインビボでIGF-1インヒビターとして作用することを示す。Lewittyら、E
ndocrinology、129:2254-2256、(1991)は、IGFBP-1が、細胞のグルコース摂取を
促進するIGF-1の静脈注射を行ったラットの低血糖反応を阻害することを見出し
た。この特性のためIGF-1の十分な量が存在する場合に低血糖症に導かれ得る。
他のグループによる出版物は、IGFBP-1がインビボで成長阻止期間(例えば、飢餓
糖尿病)に発現されることを示し、またIGFBP-1がIGF-1インヒビターとして作用
し得ることを示
唆している。
インビトロでの実験は、IGFBP-1が細胞および組織でのIGF-1の効果を強化する
あるいは阻害するという矛盾した結論を生じた。IGFBP-1は、子宮内膜培養細胞(
Rutanenら、J.Clin. Endocrinol.Metab.60:173-180、1988)、絨毛癌細胞(Rit
vosら、Endocrinology、122:2150-2157、1988)、甲状腺小胞細胞(Fraumanら、En
docrinology、124:2289-2296、1989)、線維芽細胞(Liuら、Biochem.Biophys.R
es.Comm.、174:673-679、1991)、およびニワトリ軟骨細胞(Burchら、J.Clin.
Endocrinol.Metab.、70:173-180、1990)でIGF-1の効果を阻害することが報告さ
れた。対照に、Elginら、Proc.Natl.Acad. Sci.USA、84:3254-3258、(1987)
は、IGFBP-1が血小板プール血漿の存在下で線維芽細胞および平滑筋細胞でのIGF
-1有糸分裂促進効果を増したと報告した。続いての研究(ClemmonsおよびGardner
、Journal of Cellular Physiology、145:129-135、1990)では、血小板プール血
漿中の補助因子は、IGFBP-1がこれらの細胞にIGF-1の効果を強化するために必要
であることを示した。この因子の正体は知られていない。Koistinenら、Biochem
.Biophys.Res.Comm.、173:408-415、(1990)は、IGFBP-1がヒト線維芽細胞へ
のIGF-1の結合を阻害するが、それらのDNA合成を逆に刺激することを報告した。
同化作用のためのIGF-1およびIGFBP-3の組合せの使用は、PCT特許出願第WO92/
13556号中に記載されている。IGFBP-3の全身投与がIGF-1の同化作用効果を強化
することを見出された。
ところが、他の研究はIGFBP-1の全身投与がIGF-1の同化作用を阻害することを見
出した。
創傷治癒は無数の成分により仲介されるので、天然ヒトタンパク質を含有しそ
して投与および製造が簡単な創傷治癒組成物は、創傷治癒のために市販されてい
る現存の薬物類に有益な貢献をし得る。本発明は創傷治癒のための新規な組成物
を提供する。発明の要旨
本発明は創傷治癒のための非全身的投与用組成物中でのIGF-1とIGFBP、特にIG
FBP-1、との組合せの使用を記載する。IGFBP-1はIGF-1の活性を全身的に阻害す
ることが知られていたので、IGFBP-1が、創傷治癒のために非全身的投与で用い
た場合にIGF-1を強化することの発見は本当に驚きである。
本発明者らはIGFBP-1がインビトロでおよびインビボで全身に投与された場合
にIGF-1インヒビターとして作用することを決定した。対照に、本発明者らは、I
GFBP-1が、創傷治癒のために非全身的に適用した場合、IGF-1の成長促進効果を
強化することを見出した。非全身的治癒でのIGFBP-1の増強効果は、創傷部位でI
GF-1の半減期を延長するIGFBP-1の能力、創傷で細胞外プロテアーゼからIGF-1を
防御するIGFBP-1の能力、または2つの因子の真の相乗的相互作用によるもので
あり得る。
本発明は、IGF-1およびIGFBPならびに薬学的に受容可能な担体を含有し、創傷
治癒で使用する非全身的投与に適した組
成物に関する。
さらに、本発明は、創傷治癒速度の促進または創傷治癒の質を高める方法に関
する。この方法は、この様な創傷に、創傷治癒の促進に治療的に有効な量のIGF-
1およびIGFBPを非全身的に投与することを包含する。発明の詳細な説明
本発明は、IGF-1、IGFBP、および薬学的に受容可能な担体を含有し、創傷治癒
で使用する非全身的投与に適した薬剤組成物に関する。本発明はIGF結合タンパ
ク質1(IGFBP-1またはBP-1)に関して記載されているが、本発明者らは公知のIGF
結合タンパク質の6種の内のいずれの使用も意図している。
本明細書を通して用いた用語は以下に定義される:
用語「IGF」はIGFタイプIレセプター(例えば、IGF-1、IGF-2、(desl-3)IGF-1
、met-IGF-1、インスリン、およびタイプIレセプターと結合するいずれもの活
性フラグメントを包含する)に結合するポリペプチドを意味する。このホルモン
ファミリーはBlundellおよびHumbel、Nature、287:781-787 (1980)に記載されて
いる。この共通のレセプターとの結合性より、IGF-1に関して記載している本発
明の教示は、IGF-2、(des1-3)IGF-1、met-IGF-1、インスリン、およびタイプI
レセプターと結合するいずれもの活性フラグメントを包含することを意図してい
る。
用語「IGF-1」は天然ヒトIGF-1、組換え生産ヒトIGF-1、m
et-IGF-1、およびIGF-1のいずれもの活性フラグメントを意味する。
用語「IGFBP」は公知のIGF結合タンパク質の6種の内のいずれかまたはIGFに
結合するこれらの結合タンパク質の活性フラグメントを意味する。
用語「薬学的に受容可能な担体」は生理学的に適合性の水性または非水性溶媒
を意味する。
用語「被験体」は創傷治癒のための治療を必要とするヒトまたは動物を意味す
る。
用語「非全身的」は血液または血管の使用を直接的に含まないいずれもの投与
経路を意味する。非全身的投与に役立つ製剤の例は、膏薬、軟膏、クリーム、ゲ
ル、ローション、エアゾール、散剤、液剤、または固形剤を包含する。非全身的
投与は局所的経路、皮下注射、坐剤、浣腸、吸入エアゾール、経口経路、および
投与の非循環経路を包含する。
本発明の組成物は薬学的に受容可能な担体中にIGF-1およびIGFBP、特にIGFBP-
1を含有する。IGF-1はTorrance、CaliforniaのBachemから市販により得られ得る
。IGF-1はまた天然供給源から、例えば血漿から精製され得る。IGF-1はまた、例
えば以下の実施例で示されるような組換え技術を含む当業者に周知な方法により
調製され得る。実施例で記載された組換え法の発現系は特定の細菌を用いるが、
酵母、細菌、哺乳類、昆虫、または他の発現系もまた使用され得ることが意図さ
れる。IGF-1はまた当該分野で公知の従来の方法を用いて合成さ
れ得る。
IGFBP-1は羊水のような天然供給源から精製され得、または本明細書中に参考
として援用され、1989年10月19日に公開されたPCT出願公開第WO89/09792号に記
載された手順に従って生産され得る。IGFBP-1はまた、以下の実施例で示すよう
な本出願の発明者らが用いた手法により生産され得る。本発明者らは組換えIGFB
P-1とIGF-1との相互作用を決定するために、インビボおよびインビトロでの実験
を行った。
IGFBP-1に対するIGF-1のモル比が1:100から100:1の間にある組成物が意図され
る。創傷の表面部分25mm2に対して0.01μgより少ないIGF-1濃度を含有する組成
物は有効でないが、創傷の表面部分25mm2に対して500μgより多いIGF-1濃度を含
有する組成物は、IGF-1の循環レベルの上昇のような望ましくない副作用を有す
ると考えられている。投与頻度は用いた製剤中のIGF-1およびIGFBP-1の薬物動力
学のパラメーターに依存し得、そして当業者に容易に決定され得る。
本発明の製剤は非全身的投与のために設計されている。ある製剤は生理食塩水
が担体として用いられ得る液体形態にIGF-1およびIGFBP-1を取り込んでいる。他
の薬学的に受容可能な担体もまた使用され得ることが意図される。液体の製剤は
タンパク質および担体(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS))を含有している。
液体形態は創傷に直接適用され得、皮内に注入され得、または閉塞した包帯を浸
して用いられ得る。
液体形態に加えて、製剤は、膏薬、軟膏、クリーム、ゲル、
ローション、局所的なエアゾール、または散剤中にIGF-1およびIGFBP-1を取り入
れ得ることもまた意図され得る。
軟膏は(1)油脂性基材、すなわち固定油または炭化水素からなる基剤、例えば
白色ワセリンまたは鉱油、または(2)吸収性基剤、すなわち無水物質または水を
吸収し得る物質からなる基剤、例えば脱水ラノリン、のいずれかを用いて一般に
調製される。慣例上、油脂性または吸収性のいずれかの基剤の形成後に、活性成
分(IGF-1およびIGFBP-1)を所望する濃度となる量で添加する。
クリームおよびローションは油/水乳剤である。それらは、例えば、添加塩を
含む水溶性物質のような、典型的には固定油、炭化水素などを包含する油相(内
相)からなる。2つの相は乳化剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムのような界
面活性剤、アラビアゴムコロイド粘土、ヴィーガム(veegum)などのような親水性
コロイドの使用により安定化される。乳剤の形成において、活性成分(例えばIGF
-1およびIGFBP-1)は所望する濃度となる量で慣例上添加される。
ゲルは、上記のように、油脂性基剤、水、または乳濁性基剤から選択された基
剤を含有する。基剤にゲルの粘性を増すゲル化剤(基剤中にマトリックスを形成
する)を添加する。ゲル化剤の例は、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリル
酸重合体などである。慣例上、活性成分(例えばIGF-1およびIGFBP-1)は、ゲル化
剤の添加前に所望する濃度で製剤に添加される。
1つの実施態様では、担体および活性成分は、生理学的に適合性の徐放性製剤
に処方される。このような製剤中の主な溶媒は、本質的に水性または非水性のど
ちらかである。さらに、製剤はpH、浸透性、粘性、透明さ、色、滅菌性、安定性
、匂い、溶解速度、吸収、または活性成分の放出を改変または維持するために、
他の薬学的に受容可能な賦形剤を含有する。このような賦形剤は、単位用量また
は複数回用量のいずれかの形態で、投与する投与量を処方するため、通常および
慣例上用いられる物質である。
一旦薬剤組成物が処方されると、それは、液剤、懸濁液、ゲル、乳濁液、固形
剤、または乾燥あるいは凍結乾燥した散剤として滅菌バイアル中に保存され得る
。このような製剤は、すぐに使える形または投与直前に再構成する必要のある形
のどちらかで保存する。IGF-1およびIGFBP-1を含有する製剤は生理学的なpHでま
たはその付近で保存および投与される。現在、高pH(すなわち8より大きい)また
は低pH(すなわち5より少ない)での製剤の保存および投与は望ましくないと考え
られている。
本発明はまた上記の薬剤組成物を、それらを必要とする被験体に投与すること
による創傷を治療する方法に関する。
例えばIGF-1およびIGFBP-1を含有している本発明の治療組成物の投与様式は、
局所的塗布、皮下注射、坐剤、浣腸、吸入エアゾール、または経口経路を含む非
全身的方法を介し得る。IGF-1およびIGFBP-1の所望する用量を得、そして維持す
るために、繰り返しによる用量が投与され得る。これらの方法のいずれもが、IG
F-1およびIGFBP-1の前もって選択した濃度範囲を生じることを意図される。当業
者は、投与の適切な方法および種々の因子(例えば創傷のタイプおよび場所、被
験体の年齢および状態、および用いた製剤を含む)に依存する投与量を容易に決
定し得る。本発明の組成物を用いて治療可能な創傷のタイプの例は、化学熱傷ま
たは熱傷;皮膚移植提供者および移植部位;褥瘡性潰瘍、糖尿病潰瘍、静脈うっ
血性潰瘍、およびリポイド類壊死潰瘍を包含するが、これに限定されない皮膚潰
瘍;腹部、大腿部、および胸部を包含するが、これに限定されない外科的創傷、
創傷離開;角膜損傷および移植;抜歯および口内外傷;胃腸管(潰瘍性大腸炎)お
よび膀胱を包含するが、これに限定されない粘膜の破裂;およびその他の広範囲
な結合組織の外傷性切断、例えば、擦過傷。
本発明の薬剤組成物は皮膚の創傷に特に役立つ。
創傷治癒でのIGF-1のみの効果、およびIGFBP-1のみの効果、および組合せの効
果は、以下の実施例でさらに十分に記載したとおり、ウサギの耳の皮膚潰瘍モデ
ルを用いてテストされた。簡単に述べると、種々の比のIGF-1およびIGFBP-1、ま
たはコントロール緩衝液を、モデルに誘導した創傷に適用した。創傷部位からの
組織を組織学的分析に使用した。IGF-1またはIGFBP-1のみでは、コントロールと
比較して治癒に有意な効果を有さなかった。IGF-1とIGFBP-1との組合せはコント
ロールと比較して有意に促進した創傷治癒を示した。IGF-1がモル過
剰で存在した場合、この促進は最も大きかった。
実験はまた、糖尿病であり、そして正常なマウスまたは異型接合db/+マウスと
比較して創傷治癒の遅れを示す同型接合db/dbマウスを用いて行った。実験は、
このモデル中の創傷治癒でのIGF-1のみの効果、およびIGFBP-1のみの効果、およ
び組合せの効果を比較するように設計された。測定したパラメーターは以下のと
おりであった:(1)再上皮形成のパーセント;(2)新肉芽組織;および(3)毛細
血管数。IGF-1+IGFBP-1の組合せは、これらの創傷治癒パラメーターの各々で用
量依存性増加を生じた。IGF-1およびIGFBP-1の組合せに対する応答は、どちらか
のタンパク質のみの応答よりも良かった。
以下の実施例は、本発明を説明するが、この限りでない。
実施例1 IGF-1遺伝子の構築
IGF-1遺伝子を2段階で組み立てた。最初に、IGF-1をコードするDNA配列を、E.
coli OMP Aタンパク質の分泌性リーダー配列をコードするDNA配列(ompAL)に結
合した。この遺伝子の融合は、IGF-1がE. coliから効率よく分泌され得るかどう
かを決定するために構築された。第2の構築では、IGF-1が細胞内タンパク質と
してE. coli中に発現しており、OmpAリーダー配列をコードするDNA配列を削除す
ること、およびIGF-1の細胞内発現を可能にするDNA配列とそれらを置き換えるこ
とにより作製した。OmpAL-IGF-1遺伝子融合の構築
ラベルされた4種の合成オリゴヌクレオチドOmpA1U(配列番号1 )、OmpA2U(配
列番号2)、OmpA1L(配列番号3)、およびOmpA2L (配列番号4)は、対(1U+1Lお
よび2U+2L)でアニールし、そしてこの対を一緒に連結した。これらのオリゴヌク
レオチドの4種全てを、Applied Biosystems(Models 391および380A)から購入し
たDNA合成機を用いて合成した。次に連結混合物を制限酵素HaeIIIで切断した。
翻訳開始シグナルおよびompAシグナル配列の最初の21アミノ酸をコードする、生
じたBamHI/HaeIII制限フラグメントを精製した。このDNAフラグメントをBamHI+P st
Iで切断されたPUC18 DNA(Boehringer Mannhein Biochemicals,Indianapolis
,IN)と混合し、そして2種の合成オリゴヌクレオチド[IGF-1(1-14)U+L](配列番
号5および配列番号6)を一緒に連結した。連結混合物をE. coli JM109株(New E
ngland Biolabs,Beverly,MA)の形質転換に使用し、そして個々のコロニーを単
離した。これらのプラスミド(OmpALIGF-1pUC18)は、翻訳開始シグナル、次いでO
mpAシグナル配列およびIGF-1の最初の14アミノ酸をコードするDNA配列を有する
。
IGF-1の15から70までのアミノ酸をコードするDNA配列を含むM13ファージを、
2つの相補的な対のオリゴヌクレオチド(IGF1U+1LおよびIGF2U+2L)(配列番号7お
よび配列番号8)を一緒に連結し、そしてDNAフラグメントをPstI+HindIIIで切断
したM13 mp19 DNA(New England Biolabs,Beverly,MA)にク
ローニングして作製した。2本鎖DNAをファージのクローンから精製し、IGF-1タ
ンパク質の15〜70アミノ酸をコードするPstI/HindIIIフラグメントを単離した。
このDNAフラグメントは、PstI+HindIIIで切断されたプラスミドOmpALIGF-1pUC18
DNAと一緒に連結し、そしてE. coli JM107株(GIBCO BRL,Gaithersburg,MD)の
形質転換に使用した。OmpAL配列に融合したIGF-1遺伝子を含むBamHI/HindIIIフ
ラグメントを単離し、そしてプラスミドpT3X1-2のBamHI+HindIIIの生じた部位(1
991年6月13日に公開されたPCT出願公開第WO 91/08285号に記載された)にクロー
ニングした。ompAL-IGF-1遺伝子融合を含む完全なプラスミドをpT3XI-2φ10c(TC
3)ompALIGF-1と呼ぶ。メチオニルIGF-1遺伝子の構築
上記のOmpAL-IGF-1遺伝子融合を含むBamHI/HindIIIフラグメントをプラスミド
pT3XI-2φ10c(TC3)ompALIGF-1から精製し、そしてHinfIで切断した。約200bpのH inf
I/HindIII DNAフラグメントを、アニールされた相補的な合成オリゴヌクレオ
チド(MetIGF1U+1L)(配列番号9および配列番号10)と混合し、そしてBamHI+HindI
II切断したプラスミドpT3XI2 DNAと連結し、そしてE. coli JM107を形質転換す
るために用いた。完全なプラスミド構築物は、φ10c(TC3)IGF-1pT3XI-2と呼ばれ
、そしてイニシエーターのメチオニンとIGF-1配列の初めとの間に余分なアラニ
ン残基を含む。変異IGF-1遺伝子を含むBamHI/HindIIIフラグメントを単離し、そ
してプラスミドpT5TのBamHI+Hi
nd
IIIの生じた部位(Nature,Vol.343,No.6256,pp.341-346,1990に記載)に連
結した。連結混合物は、米国特許第4,952,496号に記載のE. coli BL21/DE3を形
質転換するために用い、そして生じた個々のコロニーを単離した。この構築物を
φ10c(TC3)IGF-1pT5Tと名付けた。
余分なアラニンコドンをインビトロ変異誘発で取り除いた。インビトロ変異誘
発をMuta-Geneキット(Bio-Rad Laboratories(Richmond,CA))を用いて行った。
以下の変異誘発の手順は、本質的にキットに添付された使用説明書に記載の通り
である。プラスミドφ10c(TC3)IGF-1pT3XI-2をBamHI+HindIIIで切断し、そして
変異IGF-1遺伝子を含む200bpまでのDNAフラグメントを精製し、そしてプラスミ
ドM13 mp19のBamHIおよびHindIII部位にクローニングした。
ウラシルを含む1本鎖のテンプレートDNAをE. coli CJ236株(Muta-Geneキット
で供給される、Bio-Rad Laboratories、Richmond,CA))でのファージの増殖によ
り調製した。変異誘発のために用いたオリゴヌクレオチドは以下の配列を有した
:
変異誘発反応産物をE. coli JM109株を形質転換するために用い、そして個々の
プラークを選び取った。
個々のファージから2本鎖の複製型DNAを単離し、BamHI+HindIIIで切断し、そ
してIGF-1遺伝子を含む200bpまでのフラグメントを精製した。精製したDNAをプ
ラスミドpT5TのBamHI+HindIIIの生じた部位にクローニングし、そしてE. coli B
L
21/DE3株を形質転換するために用いた。いくつかの分離株を配列決定し、そして
全てが正確だった。正確なプラスミドを有するある細菌のコロニーをφ10(TC3)m
utIGF-1pT5Tと名付けた。細菌中でのMet-IGF-1の発現
小スケールな実験のために、E. coliφ10(TC3)mutIGF-1pT5T株の一晩の培養物
を15μg/mlテトラサイクリンを含有する800mlのLuria Broth(10g/リットルトリ
プトン、5g/リットル酵母抽出物、および10g/リットルNaCl、pH7.5)培地で1:100
に稀釈し、そして600nmでの光学濃度が0.7〜0.9となるまで37℃で培養した。IPT
G(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(Sigma Chemical Company,St.L
ouis,MO)を最終濃度1mMまで添加し、培養物をさらに2.5〜3.0時間37℃で培養し
た。誘導期間の終わりで、細胞を遠心分離により回収した。細胞沈澱を氷冷バッ
ファーA(50mM Tris-HCl pH7.5/25mM NaCl/1mM DDT)で1回洗浄し、そして-70℃
で凍結保存するかまたはバッファーAに懸濁し直ぐに使用した。
大スケールな実験のために、E. coliφ10(TC3)mutIGF-1pT5T株を10リットルの
発酵槽で、複合培地中(40g/l NZアミンHD、2g/l KH2PO4、1g/l MgSO4・7H2O、1g/
l Na2SO4、1g/l Na3クエン酸・2H2O、50g/lグリセロール,0.1ml/l Macol 19::GE
60、2ml/l微量ミネラル、20mg/lチアミンHCl、および15mg/lテトラサイクリンHC
l、pH7)37℃で培養した。培養物の光学濃
度が約10に到達した時に、IPTGを最終濃度0.1mMまで添加した。細菌をさらに2〜
8時間培養し、そして遠心分離により回収し、そして細胞沈澱を使用するまで-70
℃で保存した。
実施例2 Met-IGF-1の精製
E. coli細胞をバッファーA(50mM Tris,pH7.5,20mM NaCl、および1mM DTT)
に懸濁し、そしてフレンチプレスセル(French pressure cell)を用いて1800psi
で破砕した。懸濁液を20,000×gで30分間遠心分離し、そして沈澱および上清の
アリコートをSDS-PAGEで分析した。Met-IGF-Iに対応している大きなバンドが、
沈澱中に存在したが、上清には存在しなかった。沈澱をバッファーAに再懸濁し
(40ml/10g細胞ペースト)、そして20,000×gで30分間再遠心分離した。この洗浄
手順を2回繰り返した。Met-IGF-Iを含む最終の沈澱を、6Mグアニジン、50mM Tri
s、pH7.5、6mM DTT(25ml/10g細胞ペースト)に、すりガラスホモジナイザーを用
いて再懸濁し、そして懸濁液を室温で15分間インキュベートした。非溶解性タン
パク質を20,000×gで30分間の遠心分離により除去した。沈澱および上清のSDS-P
AGE分析は、Met-IGF-Iが上清だけに存在することを示した。Met-IGF-1の再生
変性および還元したMet-IGF-1を以下の3工程の再生手順に
供した。
1)酸化剤、酸化グルタチオン(GSSG)を25mMの最終濃度となるように実施例2
からの上清に添加し、そして室温で15分間インキュベートした。
2)次に、溶液を50mM Tris,pH9.7で徐々に10倍希釈し150〜300μg/mlの最終
濃度とした。そしてジスルフィド変化のために、システインを5mMの最終濃度と
なるように添加した。
3)工程2)からの溶液をジスルフィド変化を完了するために、4℃で一晩イン
キュベートし、そして次に20,000×gで15分間遠心分離した。沈澱および上清のS
DS-PAGE分析は、上清が比較的均質なMet-IGF-Iで構成されることを示した。
上清のアリコート(50μl)をバッファーC(0.05% トリフルオロ酢酸)(TFA、P
ierce,Rockford,IL)で1mlに希釈し、逆相カラム(RP-4,1×250mm,SynChrom,L
afayette,IN)に注入し、そしてバッファーD(水中80%のアセトニトリル、0.04
2%TFA)で、線形濃度勾配(linear gradient)(1%のバッファーD/分の増加)を用
いて、0.1ml/分の流速で溶出した。
2つの大きなピークが、決定された:56.5分でピークIおよび58.2分でピーク
11。さらに、小さなピークが60分に存在し、そして75〜79分に広がったピークは
不適切に再生されたMet-IGF-I種を含んでいる。HPLCクロマトグラムの統合に基
づき、ピークIおよびピークIIは、それぞれ逆相カラムに流した粗Met-IGF-Iタ
ンパク質の約25%および30%を示した。ピークIおよびピークIIのN末端配列の
分析から、MetGlyProGlu
ThrLeu...(配列番号12)を得、この配列は、N末端の余分なメチオニン残基を除
いて、ヒトIGF-IのN末端アミノ酸配列と一致している。組換えヒトMet-IGF-I(B
achem,Torrance,CA)はピークIIと同一のリテンションタイムで溶出した。従っ
て、ピークIIは、購入した標準物と同一の生物学的活性および購入した標準物と
同一のリテンションタイムに証明される正確に再生したMet-IGF-Iを示す。正確
に再生しなかったIGF-1は生物学的活性の減少を示すか、または全く生物学的活
性を示さなかった。
実施例3 正確に再生したMet-IGF-1の単離
以下は、305gの細胞ペーストからのmet-IGF-1の調製の記載である。実施例2
の再生手順からの上清(6700ml)を10倍濃縮し、そして20mM HEPES、pH7.5に対し
て十分に透析した。透析したサンプルを20,000×gで15分間遠心分離し、沈澱し
たタンパク質を除去し、0.2μmフィルター(Corning,Corning,NY)を通しそして
同じ緩衝液で予め平衡化したS-Sepharoseカラム(5.0×40cm,Pharmacia LKB,Pi
scataway,NJ)に40ml/分の流速で流した。結合したmet-IGF-1を0.5M NaClの5000
mlの線形濃度勾配で、40ml/分の流速で溶出した。25mlの画分を集めた。2つの
対称のピークを決定した:0.12M NaClで溶出するピークA、および0.15M NaClで
溶出するピークB。ピークAおよびピークBのアリコートのSDS-PAGE分析は、そ
れらが比較的
均質なIGF-1(>90%均質性)を含むことを示した;しかし、いくつかの高分子量
のE. coliタンパク質がまだ存在していた。ピークAおよびBに対応するS-Sepha
rose画分を別々にプールした。S-SepharoseプールのHPLC分析(RP-4、1×250mm)
は、プールAおよびBがそれぞれ56.5分および58.2分で溶出する大きなピークお
よびいくつかの小さなピークからなることを示した。S-SepharoseプールBの大
きなRP-4ピークは市販購入した組換えヒトmet-IGF-1(Bachem,Torrance CA)と同
様のリテンションタイムで溶出した。
S-SepharoseプールBを2M NaCl、20mM HEPES、pH7.5にし、そして20mM HEPES
、pH7.5、2M NaClで予め平衡化したToyopearl Butyl-650S 5.0×25cm(Supelco,
Bellefonte,PA)疎水性相互作用カラムに30ml/分の流速で流した。結合したタン
パク質を1250ml線形濃度勾配で20mM HEPES、pH7.5、20%エタノールに40ml/分の
流速で溶出した。25mlの画分を集めた。主要なピークは約17.5%エタノールで溶
出し、そして小さなピークは13〜15%エタノールで溶出した。各画分のアリコー
ト(50μl)をバッファーC(0.05%TFA)を用いて200μlに希釈し、逆相カラム(RP-
4、1×250mm、Synchrom)に注入し、そして80%アセトニトリル、0.042%TFA(バ
ッファーD)で、線形濃度勾配(1%のバッファーD/分の増加)を用いて、0.1ml/
分の流速で溶出しだ。17.5%エタノールで溶出する大きなピークは、正確に再生
した均質なmet-IGF-1を含んでいた。このピークを含む画分をプールし、2mg/ml
に濃縮し、100mM HEPES、44mMリン
酸ナトリウム、pH6.0に対し透析し、そして-70℃で保存した。
相対的に少量(50〜100μg)の純粋な正確に折り畳まれた組換えmet-IGF-1が、7
5〜150mgのS-SepharoseプールB(1mlの0.05%TFA、バッファーC中)を逆相カラ
ム(RP-4、4.6×250mm)に注入し、そして水中の80%アセトニトリル、0.042%TFA
(バッファーD)で、線形濃度勾配(1%のバッファーD/分の増加)を用いて、0.5
ml/分の流速で溶出することにより得られ得た。58.2分のリテンションタイムで
溶出した正確に再生したmet-IGF-1をIM Tris、pH7(0.15ml/分)で中和し、100mM
HEPES、44mMリン酸ナトリウム、pH6(IGF結合緩衝液)またはリン酸緩衝生理食塩
水(PBS)のいずれかに対し透析し、そして-70℃で保存した。
実施例4 Met-IGF-1のIGF-1への変換
組換えmet-IGF-1を天然ヒトIGF-1に変換するために、先に記載された方法(本
明細書中で参考として援用したLorand,L.,1976,Meth.Enzymol.15: 53-543)
の変法を用いてAeromonas proteolyticaから単離したアミノペプチダーゼを使用
し、N末端のメチオニンを除去した。組換えmet-IGF-1を120μgmet-IGF-1、20mM
トリシン、pH8.0、1μgアミノペプチダーゼを含有する100μl反応混合液中に精
製アミノペプチダーゼ存在下または非存在下で、30分間25℃でインキュベートし
た。反応は、水中で0.05%TFAを1ml添加することにより停止した。
サンプルのアリコートを逆相カラムで分析し、そしてタンパク質ピークを回収し
、そして配列分析に用いた。Met-IGF-1は58.2分で溶出した;一方、アミノペプ
チダーゼと反応した物質は、天然ヒトIGF-1(Bachem,Torrence,CA)とともに56
分に移動した。以下に、一連の各配列サイクルで回復した各残基のピコモルをま
とめてあり、出発物質の100ピコモルを標準とする。
得られた配列:Gly、Pro、Glu、Thr;約2%の分子はアミノペプチダーゼにより
開裂されたN末端のMetを有さなかった。
得られた配列:Me、Gly、Pro、Glu
これらの結果は約98%のmet-IGF-1がアミノペブチダーゼにより天然IGF-1へ変
換されたことを示す。
実施例5 IGFBP-1の精製および再生
IGFBP-1を発現するE.coli細胞をバッファーA(50mM Tris,pH7.5,20mM NaCl
、および1mM DTT)に40ml/10g細胞ペーストの濃度で懸濁し、そしてフレンチプレ
スセルを用いて1800psiで破砕した。懸濁液を20,000×gで30分間遠心分離し、そ
して沈澱および上清のアリコートをSDS-PAGEで分析した。IGFBP-1に対応してい
る大きなバンドが、沈澱中に存在したが、上清には存在しなかった。沈澱をバッ
ファーAに再懸濁し(40ml/10g細胞ペースト)、そして20,000×gで30分間再遠心
分離した。この洗浄手順を2回繰り返した。IGFBP-1を含む最終の沈澱を、6Mグア
ニジン、50mM Tris、pH7.5、6mM DTT(25ml/10g細胞)に、すりガラスホモジナイ
ザーを用いて再懸濁した。懸濁液を室温で15分間インキュベートした。非溶解性
タンパク質を20,000×gで30分間遠心分離により除去した。IGFBP-1の最終濃度は
1.0mg/mlであった。沈澱および上清のSDS-PAGE分析は、IGFBP-1が上清だけに存
在することを示した。
変性および還元したIGFBP-1を以下の3工程の再生手順に供した:
a)酸化グルタチオン、混合ジスルフィド生成剤(GSSG)を25mMの最終濃度とな
るように上清に添加し、そして室温で15分間インキュベートした。
b)次に、溶液を50mM Tris,pH9.7で徐々に10倍希釈し、そしてフェニルメチ
ルスルホニルフルオリドを1mMの最終濃度
となるように添加した。タンパク質の最終濃度は100μg/mlであった。
c)再生混合液を4℃で一晩インキュベートし、そして次に20,000×gで15分
間遠心分離した。沈澱および上清のSDS-PAGE分析は、上清が比較的均質なIGFBP-
1で構成されることを示した。
上清のアリコート(50μl)をバッファーC(0.05% TFA)で200μlに希釈し、逆
相カラム(RP-4,1×250mm,Synchrom)に注入し、そして80%アセトニトリル、0.
042%TFA(バッファーD)で、線形濃度勾配(1%のバッファーD/分の増加)を用い
て、0.1ml/分の流速で溶出した。
再生IGFBP-1を示す単一の大きなピークが、68分で溶出した。5Mグアニジン,5
0mM Tris,pH7.5,100mM DTT中で、完全に還元および変性した後、再生IGFBP-1
のリテンションタイムは、71.0分に移動した。これらの結果は、IGFBP-1が、記
載した条件下で単一の主要種に再生することを示した。68.0分に溶出するIGFBP-
1のN末端配列の分析から、配列MetAlaProTrpAsnCysAlaPro...(三文字アミノ酸
コード)(配列番号13)を得、この配列は、組換えタンパク質のN末端の余分なメ
チオニン残基を除いて、ヒトIGFBP-1のN末端アミノ酸配列と一致している。再生IGFBP-1の単離
正確に再生したIGFBP-1を含む590gのE.coliペーストから
調製した再生混合液(15000ml)を1800mlまで濃縮し、20mMリン酸ナトリウム、pH6
.0に対して透析し、10,000×gで30分間遠心分離し、沈澱したE.coliタンパク質
を除去し、そして同様の緩衝液で予め平衡化したQ-Sepharose(Pharmacia/LKB,P
iscataway,NJ)カラム(5.0×60cm)に流した。結合したタンパク質を0.5M NaClま
での5000mlの線形濃度勾配で、20ml/分の流速で溶出した。25mlの画分を集めた
。単一の大きなピークが0.3〜0.4M NaClで溶出した;各画分の100μlアリコート
を逆相クロマトグラフィーカラム(RP-4 1×250mm Synchrom)により別々に分析し
た。正確に再生したIGFBP-1を優勢に含有する画分(RP-4分析から決定された)を
プールし(900ml)、pHを7.5に調節し、伝導度を1mM NaClに調整し(95mOhm)、そ
して20mM HEPES、pH7.5、1.0M NaClで予め平衡化したToyopearl butyl-650S疎水
性相互作用カラム(5×5cm)(Supelco,Bellefonte,PA)に30ml/分の流速で流した
。
タンパク質を1500ml線形濃度勾配で20mM HEPES、pH7.5に40ml/分の流速で溶出
した。単一の広がったピークが5〜15%エタノールで溶出した。各ピーク画分の
アリコート(10μl)をRP-4逆相クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEにより分析し
た。純粋な(95%)正確な再生IGFBP-1を含有する画分をプールし、6〜8mg/mlに濃
縮し、そして生物活性についてアッセイした。
実施例6 マウス3T3線維芽細胞でのIGF-1およびIGFBP-1の活性
クリスタルバイオレット染料アッセイを用いて、細胞増殖を測定した。アッセ
イを96ウェルのゼラチンコートしたプレートで行った。Balb/c 3T3線維芽細胞を
0.03Mグリセロールおよび0〜1000ng/ml IGF-1を含有する200μlの無血清DMEM(Du
lbecco改変Eagle培地、Mediatech,Herndon,VA)中に25,000細胞/ウェルで播い
た。細胞を72時間37℃でインキュベートした。この時に、培地を150μlの0.2%
クリスタルバイオレット、10%ホルムアルデヒド、10mMリン酸カリウムpH7.0と
入れ替えた。室温で20分間のインキュベート後、ウェルをPBSで3回洗浄し、そし
て細胞結合した染料を200μl/ウェルの50%エタノール/0.1Mクエン酸ナトリウム
pH4.2と共にインキュベートすることで離した。570nmでの吸光度を翌日に測定し
た。結果は組換えIGF-1が用量依存様式で3T3線維芽細胞の増殖を刺激することを
示した。最大増殖は約200ng/mlのIGF-1濃度で起こった。ED50は約20〜30ng/mlで
あった。
3T3線維芽細胞のIGF-1刺激性増殖におけるIGFBP-1の効果は、IGF-1の一定量お
よびIGFBP-1の増加量と細胞を共にインキュべートすることにより決定される。B
alb/c 3T3線維芽細胞を0.03Mグリセロールおよび20ng/mlまたは50ng/mlのいずれ
かのIGF-1、および種々の量(100ng/ml〜1×104ng/ml)のIGFBP-1を含有する200μ
lの無血清DMEM中に25,000細胞/ウェルで播いた。細胞をさらに72時間インキュベ
ートし、そして上記のように
処理した。IGF-1の両方の濃度で、5倍モル過剰量のIGFBP-1と共にインキュベー
トすることにより、線維芽細胞の増殖を約50%阻害した;10〜15倍モル過剰のIG
FBP-1がIGF-1依存性増殖の完全阻害に十分であった。ラット骨肉腫細胞でのIGF-1活性
IGF-1の有糸分裂活性は、IGF-1の変化量を無血清条件下でラット骨肉腫細胞と
共にインキュベートした場合に、それらの細胞のDNAに取り込まれた3H-チミジ
ンの相対的な量を測定することにより決定された。ラット骨肉腫細胞(UMR106細
胞株、アメリカンタイプカルチャーコレクション、受託番号CRL-1661、Rockvill
e,Maryland)を、48ウェル組織培養プレート(Costar,Cambridge,MA)に1ウェル
当たり7%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシ
ンおよび2mM L-グルタミンを含有する0.5mlのHam's F12(Mediatech,Herndon,V
A)中に5〜6×104細胞で播いた。プレートを37℃で72時間インキュベートした後(
この時細胞は密集する、すなわち、互いに接触している)、細胞をリン酸緩衝液
生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、そして100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレ
プトマイシンおよび2mM L-グルタミンを含有する無血清のHam's F12培地でさら
に24時間前インキュベートした。無血清培地中でこの前インキュベートを行った
後、IGF-1の階段希釈(1.0〜1,000ng/ml)を含有する0.5mlのF12無血清培地を細胞
と共にさらに20〜24時間インキュベートした。各ウェル
を0.5μCiの3H-チミジン(カタログ番号NET-027Z,NEN Research Products,Du
Pont Co.,Boston,MA)で4時間パルスラベルし、次いで、冷PBSで3回洗浄した
。取り込まれた3H-チミジンを7%冷トリクロロ酢酸(カタログ番号0414-01,J.T
.Baker Inc.,Phillipsburg,NJ)で沈澱させ、そして液体シンチレーション測
定により定量した。アッセイを3回行った。
これらの結果は組換えIGF-1が用量依存様式でUMR106ラット骨肉腫細胞を刺激
することを示した。最大増殖は100〜200μg/mlで起こった。ED50は約20〜30ng/m
lであった。
ラットUMR106骨肉腫細胞のIGF-1刺激有糸分裂におけるIGFBP-1の効果は、上記
のアッセイを用いて決定された。無血清培地と共に24時間前インキュベートした
後、細胞を50ng/ml IGF-1+100ng/ml〜10,000ng/mlの範囲の異なる量の組換えIG
FBP-1と共にさらに20〜24時間インキュベートした。20:1(IGFBP-1:IGF-1)のモル
比で、IGFBP-1はIGF-1の有糸分裂活性を80%減少した。
これらの結果はまた、異なる2つのタイプの細胞(ネズミBalb-c 3T3線維芽細
胞およびUMR106ラット骨肉腫細胞)を用いてインビトロでテストした場合、IGF-1
が生物学的に活性であることを示した。さらに、IGFBP-1はこれらの細胞のIGF-1
依存性増殖を阻害し、IGF-1と結合してIGF-1の細胞表面IGFレセプターへの結合
を妨げるIGFBP-1の能力を実証した。これらのアッセイの両方で、10〜20:1(IGF
BP-1:IGF-1)のモル比は、IGF-Iの生物学的活性を80〜100%阻害した。
実施例7
糖尿病(db/db)マウスモデル
同型接合db/dbマウスは糖尿病であり、そして正常マウスまたは異型接合db/+
マウスと比較して創傷治癒の遅れを示す(TsuboiおよびRifkin,Journal of Expe
rimental Medicine,172:245-251,1990)。以下の実験は、このモデルにおける
創傷治癒でのIGF-1およびIGFBP-1の効果を比較するように設計された。これらの
実験で用いたIGF-1はmet-IGF-1である。
db/db雌マウス(約8週齢)を処理グループにランダムに割り当てた。各マウス
は、6mmパンチバイオプシー道具を用いて背中の中央に6mmの十分に深い円形の創
傷を2箇所受けた。成長因子またはコントロール溶液、1mg/mlウシ血清アルブミ
ン(BSA(Sigma Chemical Company,Chicago,IL)を含有するリン酸緩衝生理食塩
水(PBS)を創傷に20μl適用した。溶液は5日間毎日適用した。創傷はこの時開い
たままであった。動物を8日目で屠殺し、そして創傷の組織学的切片を出来るだ
け広くとって調製した。測定したパラメーターは以下であった:(1)再上皮形成
のパーセント:(2)新肉芽組織;および(3)毛細血管数。
再上皮形成は、40倍拡大でテレビモニターでの組織学的切片のトレーシング(t
racing)を用いて、再上皮形成した上皮の長さ対元の創傷の幅の比を計算するこ
とにより決定された。データはパーセントで表す。
新肉芽組織は、テレビモニターで各創傷の肉芽組織の縁を
トレースすることから決定された。データは面積(mm2)で表す。
毛細血管数は、100倍拡大で肉芽組織の創傷全体の横断面での毛細血管数を数
えることにより決定した。実験1
最初の実験は生理食塩水コントロールに対してモル比約1:1のIGF-1:IGFBP-1
の増加量を比較するように設計した。最大用量は、モル比1:0.5のこの2つのタ
ンパク質をテストした。4つの処理グループは以下の通りであった:
1.コントロール 5匹のマウス
2.1μg IGF-1+4μg IGFBP-1 4匹
3.10μg IGF-1+40μg IGFBP-1 4匹
4.50μg IGF-1+100μg IGFBP-1 4匹
この実験の結果を表3に示す。
IGF-1+IGFBP-1の組合せは、再上皮形成の比および毛細血管数において用量依
存性増加を生じた(最大用量でコントロールと比較するとそれぞれ+156%および
+140%である)。肉芽組織ではやや有意でない増加を示した(+112%)。実験2
この実験は、実験1に見られたポジティブな効果がIGF-1、IGFBP-1、またはIG
F-1+IGFBP-1の組合せによるのかを決定するように設計した。
処理グループは以下の通りであった:
1. コントロール 9匹のマウス
2. 50μg IGF-1 5匹のマウス
3. 165μg IGFBP-1 4匹のマウス
4. 50μg IGF-1+165μg IGFBP-1 8匹のマウス
この実験の結果を表4に示す。再上皮形成および毛細血管数について、IGF-1
+IGFBP-1の組合せのポジティブな効果がくり返された(コントロールと比較する
とそれぞれ+133%および+143%である)。2因子の肉芽組織の刺激におけるより
良い応答がこの実験において見られた(コントロールと比較すると+161%である
)。IGF-1+IGFBP-1の組合せは、いずれかのタンパク質のみよりも良好であった
。
実施例8
ウサギの耳の皮膚潰瘍モデル
この実験は、ウサギの耳の十分に深い皮膚潰瘍モデルでIGF-1およびIGFBP-1の
効果をテストするために設計された(Mustoeら、Journal of Clinical Investiga
tion,87:694-703,1991)。この創傷治癒モデルは有意な創傷萎縮を妨げ、そし
て中心から起こる治癒のために新肉芽組織および上皮細胞を必要とする。IGF-1
のみの効果、IGFBP-1のみの効果、および3つの異なるモル比での2つの因子の
組合せの効果を比較した。
24匹の若成熟ニュージーランド白ウサギ(3.0〜3.5kg)を6つの比較グループに
分けた。外科的手順は手術用顕微鏡下および滅菌条件下で行った。ウサギはケタ
ミン(60mg/kg)およびジラジン(5mg/kg)の混合液の筋内注射により麻酔した。毛
を内側から両方の耳の縁に沿って剃った。各耳を固定し、そして6mmの潰瘍を4箇
所に6mmのトレフィンを用いて軟骨が露出する深さまでで作った。この創傷手順
では、軟骨膜が除去されるために軟骨が露出される。成長因子または媒体(vehic
le)溶液を、創傷時に創傷に5μlで1回だけ適用した。次いで、創傷を閉塞した
包帯(Tegaderm,3M Corporation,Minneapolis,MN)で覆った。異なる比較グル
ープ中のウサギの左耳および右耳は、表5に示した成長因子またはコントロール
溶液を受けた。
ウサギを創傷後7日目で屠殺した。各創傷を二分し、ホルマリンで固定し、そし
て組織学的分析に5μm横断切片を用いた。測定はレンズマイクロメーターを用い
て光学顕微鏡下で行われた。測定したパラメーターは以下のとおりであった:新
肉芽組織(元の創傷縁から測定した新肉芽組織の水平移動);肉芽組織間隙(進展
中の新肉芽組織の縁の間の距離)、上皮間隙(進展中の新上皮の縁の間の距離)、
および表面上のピークの高さ(軟骨と新肉芽組織の最も高い所との間の垂直方向
の距離)。
この実験の結果を、表6および表7に示す。IGF-1+IGFBP-1の組合せは、IGF-
1を過剰モル濃度(IGF-1:IGFBP-1グループ、5:1および11:1)で適用した場合、
新肉芽組織の形成を有意に刺激した。見られた効果は用量依存性であった。IGF-
1+IGFBP-1の等モルの組合せは可変的な応答を示し、低用量グループはコントロ
ール値より刺激を示し、そして高用量グループはコントロール値より刺激を示さ
なかった。再上皮形成および新肉芽組織の高さについて、IGF-1+IGFBP-1の組合
せ効果はほとんど目立たなかった。後者の2つのパラメーターは、このモデルで
は信頼性の少ない指標である。
示した数は、比較グループ1A〜6Aに対する処理グループ1B〜6Bでの新肉芽組織
の増加または減少パーセントである。表6からのデータをこれらの計算に用いた
。
IGF-1のみまたはIGFBP-1のみは、新肉芽組織を刺激することにおいて、緩衝溶
液で見られたレベルより有効ではなかった。
実施例9
ウサギの耳の皮膚潰瘍モデル(虚血性)
若成熟雌ニュージーランド白ウサギ(3.0〜4.0kg)を2つのグループに分けた。
1つのグループでは、6mm皮膚潰瘍がMustoeら、J.Clinical Invest.,87:694-7
03(1987)および上述の実施例8に記載のとおり正常な耳で4箇所作られた。
2つめのグループでは、6mm皮膚潰瘍がAhnおよびMustoe,Ann.Plastic Surge ry
,24:17-23(1990)に記載のとおり虚血性耳に3箇所作られた。虚血性耳は28匹
のウサギ(56の耳)に示された。耳は20〜28の組織オプトード(optode)で測定した
組織pO2を有する虚血性を再現した。軟骨、3つの大静脈および尾動脈を避けなが
ら、ウサギの耳の基部の周りに十分に深い周囲切開を行った。全ての小静脈、小
動脈、腹動脈、および中央動脈を分け、そして組織を切断した。皮膚を連続法に
より縫合した。創傷は尾動脈付近部を避けながら、腹動脈上を長腕および中央動
脈上を基部とした反転したL字型にされた。創傷は露出した軟骨まで広がり、そ
して中央の組織を取り出
した。各動物を感染、創傷の崩壊、または創傷被覆の損失または転換について毎
日試験した。虚血性モデルでは、虚血を生じた後直ぐに創傷を生じさせた。創傷
治癒は大いに損なわれた。このモデルは、多くのヒト慢性創傷に存在する低酸素
症(虚血)環境を再現する点で既知の創傷治癒モデルより大きく改良されている。
種々の比および種々の濃度のIGF-1および/またはIGFBP-1またはコントロール
緩衝液を創傷時に適用し、そして閉塞した包帯を適用した。創傷を組織学的分析
のために7日目で回収した。
テスト物質を実施例8に記載のとおり創傷時に一度創傷に適用した。テスト成
長因子の投与後、創傷を閉塞したポリウレタンフィルム(TEGADERMTM,3M Compan
y,Minneapolis,MN)で覆った。7日目で、ウサギを麻酔した。次いで耳全体を取
り出し、そして10%緩衝中和ホルムアルデヒド中で一晩またはオムニフィクス(o
mnifix)中で2.5時間固定した。創傷を皮膚表面および軟骨の両方を包含する方形
のブロックを完全に取ることにより、部分的に摘出した。次いで動物を屠殺した
。
組織学的分析では、組織を段階アルコールおよびキシレンで脱水し、そして次
いで標準的な手順によりパラフィンに包埋した。創傷を二等分にし、6μmの切片
にし、そして創傷の中央付近の断面切片を得た。切片をポリ-L-リジンをコート
したスライド上に載せ、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。スラ
イドを普通の光学顕微鏡下で観察した。
次いで、治癒の速度を示す種々のパラメーターの測定をした。測定したパラメ
ーターは以下を包含した:新上皮成長(「N-EG」);進展中の肉芽組織の縁の間の距
離(「P-P」はまた実施例8の肉芽組織間隙を意味する);新肉芽組織の高さ(「SP」は
また実施例8の表面上のピークの高さを意味する)、新肉芽組織(「TNG」);および
新創傷治癒組織の体積(「N-体積」)。N-体積は、0日目での創傷の体積および屠殺
した7日目の体積との間の違いから測定した標準体積式に同一中心的に従って仮
定創傷治癒を用いて算出した。P-Pは、組織学的な切断から移動している肉芽組
織の端の間の水平距離の直接的な測定である。P-P測定について、より小さな数
はより効果的な治癒を示している。TNGは新コラーゲン対無傷の皮膚の成熟コラ
ーゲンの染色の違いに基づいた新肉芽組織成長の測定である。N-EGは元の創傷の
端から測定した新上皮組織の水平移動の測定である。
表8および表9は、実施例8の非虚血性モデルおよび上記の虚血性モデルで得
た結果のまとめをそれぞれ提供している。表8および表9に示した全てのタンパ
ク質の量はμg用量である。
表8に示した結果は実施例8に記載した非虚血性研究から得た結果と一致する
。結果は、IGF-1がIGFBP-1よりモル過剰であることが好ましく、ところがいずれ
か一方のみでは効果的でないことを示す。さらに、用量依存性効果があるようだ
。5:1〜11:1のモル比を用いた場合、新肉芽組織形成および上皮形成での増加
が観察され、10:1の比(12.9μg IGFBP-1に対
して43.2μg IGF-1)がテストした用量範囲の中で最大効果を示した。虚血性モデ
ルにおいては、43.2μg/12.9μg(10:1)比が非常に有効であることが分かった。
統計学的分析は、研究した各グループについてスチューデントの両側t検定を
用いて実施した。全ての値は平均+/−SEMとして表す。0.05以下のp値を有意で
あるとみなした。
本発明は特定の実施態様に関して記載されているが、この限りであることを意
図しない。当業者に明らかな様々な改変は、本発明の意図および範囲から逸脱す
ることがないと考えられる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,H
U,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,MG,MN
,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,
SD,SE,SK,UA,US,VN
(72)発明者 ムストー,トーマス エイ.
アメリカ合衆国 イリノイ 60611―3042,
シカゴ,スイート 811,エヌ. フェア
バンクス コート 707 ノースウエスタ
ン ユニバーシティ メディカル スクー
ル