JPH0979484A - 摺動部材およびこれを用いた軸受並びに回転陽極x線管 - Google Patents
摺動部材およびこれを用いた軸受並びに回転陽極x線管Info
- Publication number
- JPH0979484A JPH0979484A JP23484595A JP23484595A JPH0979484A JP H0979484 A JPH0979484 A JP H0979484A JP 23484595 A JP23484595 A JP 23484595A JP 23484595 A JP23484595 A JP 23484595A JP H0979484 A JPH0979484 A JP H0979484A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- metal layer
- layer
- bearing
- metal
- solid lubricant
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 長寿命化が図られるだけでなく、摩擦係数の
変動を大幅に低減することが可能な摺動部材、およびこ
れを用いて安定した回転機能を保持・発揮する軸受並び
に信頼性の高い回転陽極X線管の提供。 【解決手段】 金属もしくはセラミックスからなる基体
(軸受の回転軸本体等)8と、この基体8の少なくとも
被摺動面を被覆する金属層9と、この金属層9を被覆す
る400℃において蒸気圧が10-6Pa以下である固体
潤滑剤層10とを具備してなり、前記金属層9と前記固
体潤滑層10からなる合金の生成エンタルピーが100
kJ/g−at以上であることを特徴とする摺動部材。
変動を大幅に低減することが可能な摺動部材、およびこ
れを用いて安定した回転機能を保持・発揮する軸受並び
に信頼性の高い回転陽極X線管の提供。 【解決手段】 金属もしくはセラミックスからなる基体
(軸受の回転軸本体等)8と、この基体8の少なくとも
被摺動面を被覆する金属層9と、この金属層9を被覆す
る400℃において蒸気圧が10-6Pa以下である固体
潤滑剤層10とを具備してなり、前記金属層9と前記固
体潤滑層10からなる合金の生成エンタルピーが100
kJ/g−at以上であることを特徴とする摺動部材。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油やグリースなど
液体潤滑剤を用いることのできない環境下、たとえば真
空中、あるいは特殊雰囲気中での使用や実施に適する摺
動部材、およびこの摺動部材を利用した軸受並びに回転
陽極X線管に関する。
液体潤滑剤を用いることのできない環境下、たとえば真
空中、あるいは特殊雰囲気中での使用や実施に適する摺
動部材、およびこの摺動部材を利用した軸受並びに回転
陽極X線管に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば回転陽極X線管などの真空中、
あるいは高温等の特殊雰囲気中使用される軸受もしくは
互いに噛み合いする歯車などにおいては、所要の機械的
強度を有する一方、表面が摺動性ないし潤滑性を有する
ことが望まれる。そして、このような用途に対する摺動
部材としては、たとえば高速度工具鋼などの金属製被摺
動面上、たとえばAgなどの固体潤滑剤膜を被着形成し
てなるものが知られている。
あるいは高温等の特殊雰囲気中使用される軸受もしくは
互いに噛み合いする歯車などにおいては、所要の機械的
強度を有する一方、表面が摺動性ないし潤滑性を有する
ことが望まれる。そして、このような用途に対する摺動
部材としては、たとえば高速度工具鋼などの金属製被摺
動面上、たとえばAgなどの固体潤滑剤膜を被着形成し
てなるものが知られている。
【0003】しかし、この場合は、固体潤滑剤膜(固体
潤滑剤層)の剥離や摩耗が起こり易く、被摺動面の潤滑
が損なわれるので、摺動部材の寿命が短いという問題が
ある。なお、前記固体潤滑剤膜が残っている場合でも、
固体潤滑剤による潤滑では、一般的に摩擦力の変動が大
きくて(図7参照)、安定した潤滑性能を要求される使
用様態に不向きである。
潤滑剤層)の剥離や摩耗が起こり易く、被摺動面の潤滑
が損なわれるので、摺動部材の寿命が短いという問題が
ある。なお、前記固体潤滑剤膜が残っている場合でも、
固体潤滑剤による潤滑では、一般的に摩擦力の変動が大
きくて(図7参照)、安定した潤滑性能を要求される使
用様態に不向きである。
【0004】この点をさらに詳述すると、回転陽極X線
管は、図8に概略構成を断面的に示すように、真空容器
内に電子を放射する陰極2と、回転軸3に回転子4と一
体的に固着された陽極ターゲット5とが対向して内装・
配置されている。ここで、回転軸3は、例えば2個の玉
軸受6,6’によって、支持軸7に回転自在に支持され
ており、また、前記玉軸受6,6’は、内輪6a,6
a’および外輪6b,6b’の間に回転自在に配置され
た複数個の球6c,6c’で構成されている。そして、
前記陽極ターゲット5は、真空容器1の外側に配置した
磁界発生機(図示せず)で発生した回転磁界によって、
回転軸3と一体に回転する。
管は、図8に概略構成を断面的に示すように、真空容器
内に電子を放射する陰極2と、回転軸3に回転子4と一
体的に固着された陽極ターゲット5とが対向して内装・
配置されている。ここで、回転軸3は、例えば2個の玉
軸受6,6’によって、支持軸7に回転自在に支持され
ており、また、前記玉軸受6,6’は、内輪6a,6
a’および外輪6b,6b’の間に回転自在に配置され
た複数個の球6c,6c’で構成されている。そして、
前記陽極ターゲット5は、真空容器1の外側に配置した
磁界発生機(図示せず)で発生した回転磁界によって、
回転軸3と一体に回転する。
【0005】一方、回転陽極X線管では、陰極3から放
射された電子が、陽極ターゲット5に衝突するとX線が
発生して、陽極ターゲット5および真空容器1内が高温
になる。この陽極ターゲット5および真空容器1内の高
温化に伴って、輻射や回転軸3からの熱伝導により、玉
軸受6,6’も高温化して、焼き付きや摩耗などおこし
やすいという問題がある。したがって、高温、高真空で
潤滑性を呈するPbやAg等の固体潤滑剤を一般的に使
用する一方、陽極ターゲット5を回転させて局部的な高
温化(溶融)を防止している。しかしながら、高出力化
のために、陽極ターゲット5に対する電子の衝突を増加
すると、陽極ターゲット5はさらに高温化し、結果的に
玉軸受6,6’の高温化が助長され、前記固体潤滑剤の
揮散等が起こり、潤滑機能の低下を招来するばかりでな
く、所要の高真空状態を保持し得なくなる。
射された電子が、陽極ターゲット5に衝突するとX線が
発生して、陽極ターゲット5および真空容器1内が高温
になる。この陽極ターゲット5および真空容器1内の高
温化に伴って、輻射や回転軸3からの熱伝導により、玉
軸受6,6’も高温化して、焼き付きや摩耗などおこし
やすいという問題がある。したがって、高温、高真空で
潤滑性を呈するPbやAg等の固体潤滑剤を一般的に使
用する一方、陽極ターゲット5を回転させて局部的な高
温化(溶融)を防止している。しかしながら、高出力化
のために、陽極ターゲット5に対する電子の衝突を増加
すると、陽極ターゲット5はさらに高温化し、結果的に
玉軸受6,6’の高温化が助長され、前記固体潤滑剤の
揮散等が起こり、潤滑機能の低下を招来するばかりでな
く、所要の高真空状態を保持し得なくなる。
【0006】上記摺動部材の寿命問題に対して、金属製
基体と固体潤滑剤層(膜)との間に、例えばNi等から
なる下地層を介在させて、固体潤滑剤層の剥離や摩耗を
抑制し、寿命を改善することも提案されている(特開昭
55−57717号公報参照)。
基体と固体潤滑剤層(膜)との間に、例えばNi等から
なる下地層を介在させて、固体潤滑剤層の剥離や摩耗を
抑制し、寿命を改善することも提案されている(特開昭
55−57717号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記寿
命の改善・向上を図った摺動部材の場合は、実用上なお
次のような問題がある。すなわち、金属製基体と固体潤
滑剤層との間に、基体金属層および固体潤滑剤層に対し
て、それぞれ溶解度の大きいNi等を中間層として介在
させた構成の場合でも、摺動(摩擦)動作中において摩
擦係数の変動が高く、安定した回転機能等を得られない
という不都合がある。つまり、前記中間層の介在配置に
伴って、金属製基体と固体潤滑剤層との間に、混溶型の
緩衝層が形成されるので、固体潤滑剤層の耐剥離性等は
改善され、その限りでの長寿命化は達成し得ることにな
る。しかし、例えば転がり軸受として所要の摺動・摩擦
の動作をおこなったとき、その摺動・摩擦動作中におい
て、摩擦係数の変動が激しくて、安定した回転機能を呈
しないので、実用性が大幅に制限されているのが実情で
ある(図9参照)。
命の改善・向上を図った摺動部材の場合は、実用上なお
次のような問題がある。すなわち、金属製基体と固体潤
滑剤層との間に、基体金属層および固体潤滑剤層に対し
て、それぞれ溶解度の大きいNi等を中間層として介在
させた構成の場合でも、摺動(摩擦)動作中において摩
擦係数の変動が高く、安定した回転機能等を得られない
という不都合がある。つまり、前記中間層の介在配置に
伴って、金属製基体と固体潤滑剤層との間に、混溶型の
緩衝層が形成されるので、固体潤滑剤層の耐剥離性等は
改善され、その限りでの長寿命化は達成し得ることにな
る。しかし、例えば転がり軸受として所要の摺動・摩擦
の動作をおこなったとき、その摺動・摩擦動作中におい
て、摩擦係数の変動が激しくて、安定した回転機能を呈
しないので、実用性が大幅に制限されているのが実情で
ある(図9参照)。
【0008】また、前記固体潤滑性の改善策として、鋼
製基体の摺動面に、たとえばCuを下地層として設け、
下地層面にPb層を被覆して潤滑性を持たせることも試
みられている。しかしながら、Pb/Cuによる摺動面
の2層構成の場合、その使用態様によっては、永続性
(寿命)の点で問題がある。特に、回転陽極X線管など
真空雰囲気中、もしくは高温度雰囲気中にて、例えば転
がり軸受として所要の摺動・摩擦の動作を行ったとき、
潤滑作用が低減・劣化する傾向が認められる。
製基体の摺動面に、たとえばCuを下地層として設け、
下地層面にPb層を被覆して潤滑性を持たせることも試
みられている。しかしながら、Pb/Cuによる摺動面
の2層構成の場合、その使用態様によっては、永続性
(寿命)の点で問題がある。特に、回転陽極X線管など
真空雰囲気中、もしくは高温度雰囲気中にて、例えば転
がり軸受として所要の摺動・摩擦の動作を行ったとき、
潤滑作用が低減・劣化する傾向が認められる。
【0009】本発明は、上記事情に対処してなされたも
ので、長寿命化が図られるだけでなく、摩擦係数の変動
を大幅に低減することが可能な摺動部材、およびこれを
用いて安定した回転機能を保持・発揮する軸受並びに信
頼性の高い回転陽極X線管を提供することを目的とす
る。
ので、長寿命化が図られるだけでなく、摩擦係数の変動
を大幅に低減することが可能な摺動部材、およびこれを
用いて安定した回転機能を保持・発揮する軸受並びに信
頼性の高い回転陽極X線管を提供することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願発明にかかる摺動部
材は、金属もしくはセラミックスからなる基体と、この
基体の少なくとも被摺動面を被覆する金属層と、この金
属層を被覆する400℃において蒸気圧が10-6Pa以
下である固体潤滑剤層とを具備してなり、前記金属層と
前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタルピーが10
0kJ/g−at以上であることを特徴とする。
材は、金属もしくはセラミックスからなる基体と、この
基体の少なくとも被摺動面を被覆する金属層と、この金
属層を被覆する400℃において蒸気圧が10-6Pa以
下である固体潤滑剤層とを具備してなり、前記金属層と
前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタルピーが10
0kJ/g−at以上であることを特徴とする。
【0011】また、本願発明にかかる軸受は、金属もし
くはセラミックスからなる軸受本体と、この軸受本体の
少なくとも被摺動面を被覆する金属層と、この金属層を
被覆する400℃において蒸気圧が10-6Pa以下であ
る固体潤滑剤からなる固体潤滑剤層とを具備してなり、
前記金属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタ
ルピーが100kJ/g−at以上であることを特徴と
する。
くはセラミックスからなる軸受本体と、この軸受本体の
少なくとも被摺動面を被覆する金属層と、この金属層を
被覆する400℃において蒸気圧が10-6Pa以下であ
る固体潤滑剤からなる固体潤滑剤層とを具備してなり、
前記金属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタ
ルピーが100kJ/g−at以上であることを特徴と
する。
【0012】さらに、本願発明にかかる回転陽極X線管
は、真空容器と、この真空容器内に電子を放出する陰極
と、この陰極から放射される電子の衝突によりX線を発
生する陽極ターゲットと、この陽極ターゲットに一体的
に固着された回転子と、前記陽極ターゲット回転自在に
支持する軸受とを具備してなる回転陽極X線管であっ
て、少なくとも前記陽極ターゲット側に設けられる前記
軸受は、金属もしくはセラミックスからなる軸受本体
と、この軸受本体の少なくとも被摺動面を被覆する金属
層と、この金属層を被覆する400℃において蒸気圧が
10-6Pa以下である固体潤滑剤層とを具備してなり、
前記金属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタ
ルピーが100kJ/g−at以上であることを特徴と
する。
は、真空容器と、この真空容器内に電子を放出する陰極
と、この陰極から放射される電子の衝突によりX線を発
生する陽極ターゲットと、この陽極ターゲットに一体的
に固着された回転子と、前記陽極ターゲット回転自在に
支持する軸受とを具備してなる回転陽極X線管であっ
て、少なくとも前記陽極ターゲット側に設けられる前記
軸受は、金属もしくはセラミックスからなる軸受本体
と、この軸受本体の少なくとも被摺動面を被覆する金属
層と、この金属層を被覆する400℃において蒸気圧が
10-6Pa以下である固体潤滑剤層とを具備してなり、
前記金属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタ
ルピーが100kJ/g−at以上であることを特徴と
する。
【0013】本発明において、摺動部材の基体もしくは
軸受を構成する軸受本体をなす金属としては、例えば高
速度工具鋼,ステンレス鋼,一般的な軸受鋼等が挙げら
れ、またセラミックスとしては窒化ケイ素,炭化ケイ
素,アルミナ,ジルコニアなど挙げられるが、真空雰囲
気中、もしくは高温度雰囲気中での使用・実施を考慮し
た場合は、高速度工具鋼もしくはセラミックスが望まし
い。
軸受を構成する軸受本体をなす金属としては、例えば高
速度工具鋼,ステンレス鋼,一般的な軸受鋼等が挙げら
れ、またセラミックスとしては窒化ケイ素,炭化ケイ
素,アルミナ,ジルコニアなど挙げられるが、真空雰囲
気中、もしくは高温度雰囲気中での使用・実施を考慮し
た場合は、高速度工具鋼もしくはセラミックスが望まし
い。
【0014】また、本発明において、基体もしくは軸受
本体の被摺動面を被覆する金属層と、この金属層を被覆
する固体潤滑剤層との組合せとしては、Ag/Mo,A
g/W,Cu/W、もしくはこれらを主成分(若干量の
添加成分を含む)とする組合せが挙げられる。そして、
この固体潤滑剤層などの厚さは、摺動部材の構造,大き
さ、摺動部材の摺動,摩擦動作における負荷などによっ
ても異なるが、転がり軸受面の場合は0.05〜10μ
m程度、一般的な摺動面の場合は 1〜10μm程度が
好ましい。また、前記金属層の厚さは、この固体潤滑剤
層の厚さより薄く設定することが望ましい。
本体の被摺動面を被覆する金属層と、この金属層を被覆
する固体潤滑剤層との組合せとしては、Ag/Mo,A
g/W,Cu/W、もしくはこれらを主成分(若干量の
添加成分を含む)とする組合せが挙げられる。そして、
この固体潤滑剤層などの厚さは、摺動部材の構造,大き
さ、摺動部材の摺動,摩擦動作における負荷などによっ
ても異なるが、転がり軸受面の場合は0.05〜10μ
m程度、一般的な摺動面の場合は 1〜10μm程度が
好ましい。また、前記金属層の厚さは、この固体潤滑剤
層の厚さより薄く設定することが望ましい。
【0015】上記構成の摺動部材によれば、摩擦発熱や
使用されている雰囲気の温度に起因する金属層と固体潤
滑剤層の拡散現象が抑えられ、固体潤滑剤層の変性、例
えば硬質化なども容易に回避される。したがって、固体
潤滑層の潤滑性能の劣化(低下)は防止される一方、固
体潤滑剤層から発生する摩耗粉による損傷も回避され
る。つまり、軸受およびこのような摺動部材を使用する
回転機構においては、変動の小さい摩擦係数(摩擦力)
で安定回転が得られ、かつすぐれた潤滑性能を長期に亘
って保持・発揮することが可能となる。また、回転陽極
X線管に応用した場合、回転陽極X線管の出力増大に伴
い高温化した場合でも、高真空状態を十分に保持しなが
ら、陽極ターゲットの回動にすぐれた潤滑性能を長期間
に亘って実現することが可能となる。
使用されている雰囲気の温度に起因する金属層と固体潤
滑剤層の拡散現象が抑えられ、固体潤滑剤層の変性、例
えば硬質化なども容易に回避される。したがって、固体
潤滑層の潤滑性能の劣化(低下)は防止される一方、固
体潤滑剤層から発生する摩耗粉による損傷も回避され
る。つまり、軸受およびこのような摺動部材を使用する
回転機構においては、変動の小さい摩擦係数(摩擦力)
で安定回転が得られ、かつすぐれた潤滑性能を長期に亘
って保持・発揮することが可能となる。また、回転陽極
X線管に応用した場合、回転陽極X線管の出力増大に伴
い高温化した場合でも、高真空状態を十分に保持しなが
ら、陽極ターゲットの回動にすぐれた潤滑性能を長期間
に亘って実現することが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下図1〜図6を参照して本発明
の実施の形態を説明する。 第1の実施形態 図1は本発明の第1実施形態に係る摺動部材の構成例を
断面的に示したもので、8は金属もしくはセラミックス
から成る回転軸本体(基体)、例えば高速度工具鋼製の
回転軸本体、9は前記回転軸本体8の少なくとも被摺動
面に被覆・配置された金属層、例えばMoから成る厚さ
0.1μm程度の金属層、10は前記Mo金属層9を被
覆する固体潤滑剤層、例えば厚さ1μm程度のAg層で
ある。なお、AgとMoの合金の生成エンタルピーは1
29kJ/g−at(大気圧下で129kJ/g)であ
る(CALPHAD Vol.1,No.4,pp'.341-359.Pergamon Pres
s,1977.Printed Great Britain参照)。また、Agの融
点は約2600℃であり、400℃における蒸気圧は1
0-9Pa以下である。
の実施の形態を説明する。 第1の実施形態 図1は本発明の第1実施形態に係る摺動部材の構成例を
断面的に示したもので、8は金属もしくはセラミックス
から成る回転軸本体(基体)、例えば高速度工具鋼製の
回転軸本体、9は前記回転軸本体8の少なくとも被摺動
面に被覆・配置された金属層、例えばMoから成る厚さ
0.1μm程度の金属層、10は前記Mo金属層9を被
覆する固体潤滑剤層、例えば厚さ1μm程度のAg層で
ある。なお、AgとMoの合金の生成エンタルピーは1
29kJ/g−at(大気圧下で129kJ/g)であ
る(CALPHAD Vol.1,No.4,pp'.341-359.Pergamon Pres
s,1977.Printed Great Britain参照)。また、Agの融
点は約2600℃であり、400℃における蒸気圧は1
0-9Pa以下である。
【0017】上記構成の摺動部材は、次のようにして製
造されたものである。すなわち、通常、高速度工具鋼製
の回転本体8、イオンプレーティング装置(図示せず)
を先ず用意する。次いで、前記イオンプレーティング装
置の所定位置に、前記回転軸本体8を装着する一方、プ
レーティング金属として、例えばMo金属をプレーティ
ング金属源部に装着した後、イオンプレーティング装置
を操作する。たとえば10-3Pa程度の減圧下、前記M
o金属に電子ビームを照射して蒸発させ、イオン化させ
る。一方、前記回転軸本体8に所要の加速電圧(例えば
100〜2000V程度)を印加するいわゆるイオンプ
レーティングを行って、厚さ0.1μm程度のMo金属
層9を被着・形成する。このMo金属層9の被着・形成
を終了してから、一旦イオンプレーティング装置の駆動
を停止し、前記プレーティング金属源部のMo金属に代
えてAg金属を装着する。その後、イオンプレーティン
グ装置を再び操作し、前記Mo金属に対するイオンプレ
ーティング操作に準じて、前記Ag金属をイオンプレー
ティングして、厚さ1μm程度のAg金属層(固体潤滑
剤層)10を被着・形成することによって、容易に製造
し得る。
造されたものである。すなわち、通常、高速度工具鋼製
の回転本体8、イオンプレーティング装置(図示せず)
を先ず用意する。次いで、前記イオンプレーティング装
置の所定位置に、前記回転軸本体8を装着する一方、プ
レーティング金属として、例えばMo金属をプレーティ
ング金属源部に装着した後、イオンプレーティング装置
を操作する。たとえば10-3Pa程度の減圧下、前記M
o金属に電子ビームを照射して蒸発させ、イオン化させ
る。一方、前記回転軸本体8に所要の加速電圧(例えば
100〜2000V程度)を印加するいわゆるイオンプ
レーティングを行って、厚さ0.1μm程度のMo金属
層9を被着・形成する。このMo金属層9の被着・形成
を終了してから、一旦イオンプレーティング装置の駆動
を停止し、前記プレーティング金属源部のMo金属に代
えてAg金属を装着する。その後、イオンプレーティン
グ装置を再び操作し、前記Mo金属に対するイオンプレ
ーティング操作に準じて、前記Ag金属をイオンプレー
ティングして、厚さ1μm程度のAg金属層(固体潤滑
剤層)10を被着・形成することによって、容易に製造
し得る。
【0018】なお、製造方法に関しては、上記したイオ
ンプレーティング法の他に、例えばメッキ法,真空蒸着
法,スパッタリング,イオンビームミキシング法などが
考えられるが、特に、スパッタリング法およびイオンプ
レーティング法は、膜厚が一様で均質かつ界面での密着
性の高い成膜をしやすいので、生産性また性能の点から
好ましい。
ンプレーティング法の他に、例えばメッキ法,真空蒸着
法,スパッタリング,イオンビームミキシング法などが
考えられるが、特に、スパッタリング法およびイオンプ
レーティング法は、膜厚が一様で均質かつ界面での密着
性の高い成膜をしやすいので、生産性また性能の点から
好ましい。
【0019】本発明に係る摺動部材の試験・評価とし
て、ピン・オン・ディスク型摩擦試験を行なった。すな
わち、前記イオンプレーティングの条件で、高速度工具
鋼製円板8’の一主面に、厚さ0.1μmのMo金属層
9’および厚さ1μmのAg金属層10’を順次被着・
形成して成るディスク試験片を用意した。そして、表1
に示す条件で、図2に斜視的に、図3に断面的にそれぞ
れ示すごとく、一定荷重のピン試験片11を、ディスク
試験片のAg金属層10’面に押し付け、その状態でデ
ィスク試験片を一定速度で回転させて、前記ピン試験片
11とディスク試験片との摺動(摩擦)面に作用する摩
擦力を、一定時間測定した。
て、ピン・オン・ディスク型摩擦試験を行なった。すな
わち、前記イオンプレーティングの条件で、高速度工具
鋼製円板8’の一主面に、厚さ0.1μmのMo金属層
9’および厚さ1μmのAg金属層10’を順次被着・
形成して成るディスク試験片を用意した。そして、表1
に示す条件で、図2に斜視的に、図3に断面的にそれぞ
れ示すごとく、一定荷重のピン試験片11を、ディスク
試験片のAg金属層10’面に押し付け、その状態でデ
ィスク試験片を一定速度で回転させて、前記ピン試験片
11とディスク試験片との摺動(摩擦)面に作用する摩
擦力を、一定時間測定した。
【0020】 表1 真空度 :10-4Pa台 荷 重 :1N 摺動速度:0.5m/s 試験時間:3時間 前記のいわゆるピン・オン・ディスク摩擦試験の結果
は、図4に示すごとく、摺動中の摩擦係数が低く、かつ
摩擦係数の変動も少なく、安定した摺動・動作すること
が確認された。
は、図4に示すごとく、摺動中の摩擦係数が低く、かつ
摩擦係数の変動も少なく、安定した摺動・動作すること
が確認された。
【0021】比較例1 比較のため、前記ディスク試験片の構成において、Mo
金属層9’を設けず鋼製円板8’の一主面に直接厚さ1
μmのAg金属層10’を、イオンプレーティング法で
被着・形成して成るディスク試験片について、同一条件
でピン・オン・ディスク摩擦試験を行なった結果は、図
7に示すごとく、摺動中の摩擦係数が一般的に高く、か
つ摩擦係数の変動も大きかった。なお、この比較例にお
いて、前記Ag金属層10’の代わりにPb金属層をイ
オンプレーティング法で被着・形成して成るディスク試
験片の場合も同様な結果(傾向)が認められた。
金属層9’を設けず鋼製円板8’の一主面に直接厚さ1
μmのAg金属層10’を、イオンプレーティング法で
被着・形成して成るディスク試験片について、同一条件
でピン・オン・ディスク摩擦試験を行なった結果は、図
7に示すごとく、摺動中の摩擦係数が一般的に高く、か
つ摩擦係数の変動も大きかった。なお、この比較例にお
いて、前記Ag金属層10’の代わりにPb金属層をイ
オンプレーティング法で被着・形成して成るディスク試
験片の場合も同様な結果(傾向)が認められた。
【0022】比較例2 さらに、他の比較例として、前記ディスク試験片の構成
において、高速度工具鋼製円板8’の一主面にMo金属
層9’の代わりに厚さ0.1μmのNi金属層、厚さ1
μmのAg金属層10’を、順次イオンプレーティング
法で被着・形成して成るディスク試験片について、同一
条件でピン・オン・ディスク摩擦試験を行なった結果
は、図9に示すごとく、摺動中の摩擦係数が高く、かつ
摩擦係数の変動も極めて大きかった。
において、高速度工具鋼製円板8’の一主面にMo金属
層9’の代わりに厚さ0.1μmのNi金属層、厚さ1
μmのAg金属層10’を、順次イオンプレーティング
法で被着・形成して成るディスク試験片について、同一
条件でピン・オン・ディスク摩擦試験を行なった結果
は、図9に示すごとく、摺動中の摩擦係数が高く、かつ
摩擦係数の変動も極めて大きかった。
【0023】上記のような試験、および評価結果から、
本発明に係る摺動部材、もしくは固体潤滑法の場合、比
較例の場合に比べて摺動(摩擦)中の摩擦係数が低く、
また摩擦係数の変動も少ないのは次のような理由による
ものと考えられる。すなわち、前記ピン・オン・ディス
ク摩擦試験では、ディスク試験片の被摺動(被摩擦)面
が、Ag金属層をイオンプレーティング法で被着・形成
する構成を採っているのに、前記図4,図7,図9から
明らかなように、摩擦係数の下限レベルを比べると、第
1の実施形態,比較例1,比較例2の順に高くなってい
る。つまり、摩擦係数の下限レベルは、Ni金属層を中
間層とした構成の場合が最も高い。ところで、前記Ni
と固体金属剤を成すAgの合金の生成エンタルピーは5
2kJ/g−atと低い値である(CALPHAD Vol.1,N
o.4,pp'.341-359.Pergamon Press,1977.Printed Great
Britain参照)ため、低熱量で拡散現象をおこし易い。
したがって、この界面では合金層を形成し、界面強度の
向上、固体潤滑剤層の被着強度の向上に寄与する。しか
しながら、前記合金層の形成は、固体潤滑剤を変性(変
質化)させることになり、潤滑性能の低下を招来するの
で、摩擦係数の下限レベルが高くなるといえる。
本発明に係る摺動部材、もしくは固体潤滑法の場合、比
較例の場合に比べて摺動(摩擦)中の摩擦係数が低く、
また摩擦係数の変動も少ないのは次のような理由による
ものと考えられる。すなわち、前記ピン・オン・ディス
ク摩擦試験では、ディスク試験片の被摺動(被摩擦)面
が、Ag金属層をイオンプレーティング法で被着・形成
する構成を採っているのに、前記図4,図7,図9から
明らかなように、摩擦係数の下限レベルを比べると、第
1の実施形態,比較例1,比較例2の順に高くなってい
る。つまり、摩擦係数の下限レベルは、Ni金属層を中
間層とした構成の場合が最も高い。ところで、前記Ni
と固体金属剤を成すAgの合金の生成エンタルピーは5
2kJ/g−atと低い値である(CALPHAD Vol.1,N
o.4,pp'.341-359.Pergamon Press,1977.Printed Great
Britain参照)ため、低熱量で拡散現象をおこし易い。
したがって、この界面では合金層を形成し、界面強度の
向上、固体潤滑剤層の被着強度の向上に寄与する。しか
しながら、前記合金層の形成は、固体潤滑剤を変性(変
質化)させることになり、潤滑性能の低下を招来するの
で、摩擦係数の下限レベルが高くなるといえる。
【0024】これに対して、本実施形態の場合は、中間
層を形成するMoと固体潤滑剤を成すAgの合金の生成
エンタルピーが129kJ/g−atと高い値であるた
め、拡散現象を起こしにくい。したがって、界面に合金
層を形成しにくいため、Ag金属本来の潤滑性能を維持
するとともに、低い摩擦係数を呈する。また、摩擦係数
(摩擦力)の変動にも、界面の合金層が影響しているも
のと考えられる。つまり、摺動(摩擦)面の固体潤滑剤
は、摩耗したり、その摩耗粉が相手面に移着したり、あ
るいは摺動(摩耗)面に噛み込まれた後排出されるな
ど、複雑な挙動を呈する。したがって、比較例2の場合
のように、固体潤滑剤の一部が変性し、硬質化などして
いると、その硬質化部や硬質摩耗粉が摺動(摩耗)面に
取り込まれたり、排出されたりすることによって、摩擦
力が大きく変動することになる。
層を形成するMoと固体潤滑剤を成すAgの合金の生成
エンタルピーが129kJ/g−atと高い値であるた
め、拡散現象を起こしにくい。したがって、界面に合金
層を形成しにくいため、Ag金属本来の潤滑性能を維持
するとともに、低い摩擦係数を呈する。また、摩擦係数
(摩擦力)の変動にも、界面の合金層が影響しているも
のと考えられる。つまり、摺動(摩擦)面の固体潤滑剤
は、摩耗したり、その摩耗粉が相手面に移着したり、あ
るいは摺動(摩耗)面に噛み込まれた後排出されるな
ど、複雑な挙動を呈する。したがって、比較例2の場合
のように、固体潤滑剤の一部が変性し、硬質化などして
いると、その硬質化部や硬質摩耗粉が摺動(摩耗)面に
取り込まれたり、排出されたりすることによって、摩擦
力が大きく変動することになる。
【0025】これに対し、第1の実施形態の場合は、前
述したように、中間金属層のMoとAg固体潤滑剤の合
金の生成エンタルピーが高いので、Ag固体潤滑剤が変
性せず、本来の潤滑性能を維持するため、摩擦係数の変
動が小さい安定した潤滑機能が得られる。
述したように、中間金属層のMoとAg固体潤滑剤の合
金の生成エンタルピーが高いので、Ag固体潤滑剤が変
性せず、本来の潤滑性能を維持するため、摩擦係数の変
動が小さい安定した潤滑機能が得られる。
【0026】実験の結果、中間層を形成する金属と固体
潤滑剤の合金の生成エンタルピ−が100kJ/g−a
t以上であれば所望の潤滑機能が得られる。 第2の実施形態 本実施形態は、上記した第1の実施形態にかかる摺動部
材を、転がり軸受における玉軸受に適用した場合であ
る。図5は構成例の要部を断面的に示したもので、12
は回転軸、13は高速度工具鋼の内輪13aと外輪13
bと、その間に回転自在に配置・装着された複数個の球
13cで構成されている玉軸受である。なお、前記内輪
13aは回転軸12を挿通した形で、回転軸12側に固
定されており、また外輪13bはハウジング14側に固
定されている。そして、前記内輪13aと外輪13bと
の間に、回転自在に配置・装着された複数個の球13c
が、内輪13aの外周面(内側転送面)側および外輪1
3bの内周面(外側転送面)側に接触しながら回転する
ことによって、前記回転軸12のスムースな回転が支持
されている。ここで、前記玉軸受13が具備する球13
cは、高速度工具鋼製の球本体13c1 ,前記球本体1
3c1 表面をイオンプレーティング法で被覆した厚さ
0.05μmのMo金属層13c2 、および前記Mo金
属層13c2 面をイオンプレーティング法で被覆した
0.5μmのAg金属層13c3 で構成されている。
潤滑剤の合金の生成エンタルピ−が100kJ/g−a
t以上であれば所望の潤滑機能が得られる。 第2の実施形態 本実施形態は、上記した第1の実施形態にかかる摺動部
材を、転がり軸受における玉軸受に適用した場合であ
る。図5は構成例の要部を断面的に示したもので、12
は回転軸、13は高速度工具鋼の内輪13aと外輪13
bと、その間に回転自在に配置・装着された複数個の球
13cで構成されている玉軸受である。なお、前記内輪
13aは回転軸12を挿通した形で、回転軸12側に固
定されており、また外輪13bはハウジング14側に固
定されている。そして、前記内輪13aと外輪13bと
の間に、回転自在に配置・装着された複数個の球13c
が、内輪13aの外周面(内側転送面)側および外輪1
3bの内周面(外側転送面)側に接触しながら回転する
ことによって、前記回転軸12のスムースな回転が支持
されている。ここで、前記玉軸受13が具備する球13
cは、高速度工具鋼製の球本体13c1 ,前記球本体1
3c1 表面をイオンプレーティング法で被覆した厚さ
0.05μmのMo金属層13c2 、および前記Mo金
属層13c2 面をイオンプレーティング法で被覆した
0.5μmのAg金属層13c3 で構成されている。
【0027】上記構成の転がり軸受について、真空中に
装着されている回転軸12を3000rpmで、100
0時間連続回転・駆動して、潤滑性もしくは摺動(耐摩
擦)性等を評価したところ、寿命および安定性の点です
ぐれた性能を示した。
装着されている回転軸12を3000rpmで、100
0時間連続回転・駆動して、潤滑性もしくは摺動(耐摩
擦)性等を評価したところ、寿命および安定性の点です
ぐれた性能を示した。
【0028】上記では、玉軸受13について、球本体1
3c1 表面にMo金属層13c2 およびAg金属層13
c3 を順次被着・形成した球13c1 を用いた構成例を
示したが、内輪13aの外周面(内側転送面)側および
外輪13b内周面(外側転送面)側に、それぞれ前記と
同様に、Mo金属層13c2 およびAg金属層13c3
を順次被着・形成した構成とした場合、あるいは両者に
ついてMo金属層13c2 およびAg金属層13c3 を
順次被着・形成した構成とした場合も同様の結果が認め
られた。
3c1 表面にMo金属層13c2 およびAg金属層13
c3 を順次被着・形成した球13c1 を用いた構成例を
示したが、内輪13aの外周面(内側転送面)側および
外輪13b内周面(外側転送面)側に、それぞれ前記と
同様に、Mo金属層13c2 およびAg金属層13c3
を順次被着・形成した構成とした場合、あるいは両者に
ついてMo金属層13c2 およびAg金属層13c3 を
順次被着・形成した構成とした場合も同様の結果が認め
られた。
【0029】ところで、転がり軸受は、転動体(球)と
レース(内・外輪)とが点接触もしくは線接触する状態
を採る。したがって、軸受が支持する荷重は、微小な接
触面に集中することになるので、面接触する他の摺動
(摩擦)面、例えば滑り軸受の接触面に比べると、摺動
(摩擦)により発生する熱が微小な領域に集中すること
になり、温度上昇が大きくなる傾向がある。そして、温
度上昇が起こると、材料間の相互拡散が起こり易くなる
ので、固体潤滑剤の変性が起こり、摩擦係数の上昇・変
動が起こるという問題がある。これに対して、本実施形
態の場合は、上記した実施形態1の場合でも説明したよ
うに、界面において拡散現象が起こりにくいため、固体
潤滑剤層が本来の潤滑性能を損なわず、摺動(摩擦)面
に荷重が集中する状態となる転がり軸受においては、よ
り一層の効果が得られるといえる。
レース(内・外輪)とが点接触もしくは線接触する状態
を採る。したがって、軸受が支持する荷重は、微小な接
触面に集中することになるので、面接触する他の摺動
(摩擦)面、例えば滑り軸受の接触面に比べると、摺動
(摩擦)により発生する熱が微小な領域に集中すること
になり、温度上昇が大きくなる傾向がある。そして、温
度上昇が起こると、材料間の相互拡散が起こり易くなる
ので、固体潤滑剤の変性が起こり、摩擦係数の上昇・変
動が起こるという問題がある。これに対して、本実施形
態の場合は、上記した実施形態1の場合でも説明したよ
うに、界面において拡散現象が起こりにくいため、固体
潤滑剤層が本来の潤滑性能を損なわず、摺動(摩擦)面
に荷重が集中する状態となる転がり軸受においては、よ
り一層の効果が得られるといえる。
【0030】さらに、こうした作用,効果は、高温雰囲
気中で使用する転がり軸受、または固体潤滑法において
有効である。 第3の実施形態 本実施形態は、上記した第2の実施形態で例示した玉軸
受を回転陽極X線管に適用した応用例である。図6は本
実施形態にかかる回転陽極X線管について、その概略構
成を断面的に示したもので、真空容器15内に電子を放
射する陰極16と、回転軸17に回転子18とともに一
体的に固着された陽極ターゲット19とが対向して内装
・配置されている。ここで、回転軸17は、たとえば2
個の玉軸受13,13’によって、支持軸20に回動自
在に支持されている。また、前記玉軸受13,13’
は、内輪13aと外輪13bとの間に回転自在に配置・
装着された複数個の球13cが、内輪13aの外周面
(内側転送面)側および外輪13bの内周面(外側転送
面)側に接触しながら回転することによって、前記回転
軸12のスムーズな回転が支持されている。そして、前
記玉軸受13,13’にそれぞれ装着されている球13
cは、高速度工具鋼製の球本体13c1 、前記球本体1
3c1 表面をイオンプレーティング法で被着した厚さ
0.05μmのMo金属層13c2 、および前記Mo金
属層13c2 面をイオンプレーティング法で被覆した
0.5μmのAg金属層13c3 で構成されている。前
記構成の回転陽極X線管においては、真空容器15の外
側に設置した磁界発生器(図示せず)で発生した回転磁
界によって、陽極ターゲット19が回転軸17と一体に
回転する。一方、陰極16から放射された電子が、陽極
ターゲット19に衝突するとX線が発生して、陽極ター
ゲット19および真空容器15内が高温になり、この高
温化にともなって、輻射や回転軸17からの熱伝導によ
り、玉軸受13,13’の高温化もまねく。しかし、前
記回転陽極X線管の構成においては、回転を形成してい
る玉軸受13、13’が、前記第1および第2の実施形
態で詳細に説明したごとく、摩耗粉に起因する固体潤滑
層の損耗、あるいは揮散による高真空状態の破壊(破
損)なども容易、かつ確実に回避ないし防止し得る。つ
まり、長期に亘って所要の潤滑性および高真空状態を保
持し得るので、信頼性の高い回転陽極X線管として常に
機能することが確認された。
気中で使用する転がり軸受、または固体潤滑法において
有効である。 第3の実施形態 本実施形態は、上記した第2の実施形態で例示した玉軸
受を回転陽極X線管に適用した応用例である。図6は本
実施形態にかかる回転陽極X線管について、その概略構
成を断面的に示したもので、真空容器15内に電子を放
射する陰極16と、回転軸17に回転子18とともに一
体的に固着された陽極ターゲット19とが対向して内装
・配置されている。ここで、回転軸17は、たとえば2
個の玉軸受13,13’によって、支持軸20に回動自
在に支持されている。また、前記玉軸受13,13’
は、内輪13aと外輪13bとの間に回転自在に配置・
装着された複数個の球13cが、内輪13aの外周面
(内側転送面)側および外輪13bの内周面(外側転送
面)側に接触しながら回転することによって、前記回転
軸12のスムーズな回転が支持されている。そして、前
記玉軸受13,13’にそれぞれ装着されている球13
cは、高速度工具鋼製の球本体13c1 、前記球本体1
3c1 表面をイオンプレーティング法で被着した厚さ
0.05μmのMo金属層13c2 、および前記Mo金
属層13c2 面をイオンプレーティング法で被覆した
0.5μmのAg金属層13c3 で構成されている。前
記構成の回転陽極X線管においては、真空容器15の外
側に設置した磁界発生器(図示せず)で発生した回転磁
界によって、陽極ターゲット19が回転軸17と一体に
回転する。一方、陰極16から放射された電子が、陽極
ターゲット19に衝突するとX線が発生して、陽極ター
ゲット19および真空容器15内が高温になり、この高
温化にともなって、輻射や回転軸17からの熱伝導によ
り、玉軸受13,13’の高温化もまねく。しかし、前
記回転陽極X線管の構成においては、回転を形成してい
る玉軸受13、13’が、前記第1および第2の実施形
態で詳細に説明したごとく、摩耗粉に起因する固体潤滑
層の損耗、あるいは揮散による高真空状態の破壊(破
損)なども容易、かつ確実に回避ないし防止し得る。つ
まり、長期に亘って所要の潤滑性および高真空状態を保
持し得るので、信頼性の高い回転陽極X線管として常に
機能することが確認された。
【0031】本実施形態では、両玉軸受13,13’の
内輪13aの外周面(内側転送面)側および外輪13b
の内周面(外側転送面)側に接触しながら回転する球1
3cとして、Mo金属層13c2 、およびAg金属層1
3c3 を被覆した構成のものを用いたが、前記球13c
が接触しながら回転する内輪13aの外周面(内側転送
面)側および外輪13bの内周面(外側転送面)側に、
Mo金属層13c2 、およびAg金属層13c3 を被覆
した構成としてもよいし、さらに両方について同様な構
成をとってもよい。さらに、前記構成において、両玉軸
受13,13’の球13cおよびこの球13cが接触し
ながら回転する内輪13aの外周面(内側転送面)側、
外輪13bの内周面(外側転送面)に、Mo金属層13
c2 、およびAg金属層13c3 を積層・被覆した構成
とすることも可能である。また、これらの手段は、高温
化しやすい陽極ターゲット19側の玉軸受13’に施し
ておけば、初期の目的、作用、効果を得ることは可能で
ある。
内輪13aの外周面(内側転送面)側および外輪13b
の内周面(外側転送面)側に接触しながら回転する球1
3cとして、Mo金属層13c2 、およびAg金属層1
3c3 を被覆した構成のものを用いたが、前記球13c
が接触しながら回転する内輪13aの外周面(内側転送
面)側および外輪13bの内周面(外側転送面)側に、
Mo金属層13c2 、およびAg金属層13c3 を被覆
した構成としてもよいし、さらに両方について同様な構
成をとってもよい。さらに、前記構成において、両玉軸
受13,13’の球13cおよびこの球13cが接触し
ながら回転する内輪13aの外周面(内側転送面)側、
外輪13bの内周面(外側転送面)に、Mo金属層13
c2 、およびAg金属層13c3 を積層・被覆した構成
とすることも可能である。また、これらの手段は、高温
化しやすい陽極ターゲット19側の玉軸受13’に施し
ておけば、初期の目的、作用、効果を得ることは可能で
ある。
【0032】なお、上記実施例においては、高速度工具
鋼を基体とした例を示したが、たとえばステンレス鋼、
窒化ケイ素、炭化ケイ素を使用することも可能である。
さらに、この基体表面に順次被着する中間金属および固
体潤滑剤の組合せが、Ag/WまたはCu/Wなどでも
同様に長寿命の潤滑特性を呈する。また、これら2層膜
の形成は、イオンプレーティング法に限られず、メッキ
法や真空蒸着法、あるいはこれらの組合せでよいが、少
なくとも固体潤滑剤は、イオンプレーティング法で形成
することが望ましい。
鋼を基体とした例を示したが、たとえばステンレス鋼、
窒化ケイ素、炭化ケイ素を使用することも可能である。
さらに、この基体表面に順次被着する中間金属および固
体潤滑剤の組合せが、Ag/WまたはCu/Wなどでも
同様に長寿命の潤滑特性を呈する。また、これら2層膜
の形成は、イオンプレーティング法に限られず、メッキ
法や真空蒸着法、あるいはこれらの組合せでよいが、少
なくとも固体潤滑剤は、イオンプレーティング法で形成
することが望ましい。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る摺動
部によれば、低くかつ安定した摩擦係数(摩擦力)での
摺動回転もしくは潤滑が可能になるとともに、このよう
なすぐれた潤滑特性が長期間に亘って、保持・発揮され
る。特に、前記摩擦係数の変動がほとんど認められない
こと、摩擦係数のレベルが低いこと、さらに長寿命であ
ること、真空中もしくは高温度雰囲気下での使用におい
て、具体的には、本発明に係る軸受や回転陽極X線管等
において重要な意義をもたらすといえる。
部によれば、低くかつ安定した摩擦係数(摩擦力)での
摺動回転もしくは潤滑が可能になるとともに、このよう
なすぐれた潤滑特性が長期間に亘って、保持・発揮され
る。特に、前記摩擦係数の変動がほとんど認められない
こと、摩擦係数のレベルが低いこと、さらに長寿命であ
ること、真空中もしくは高温度雰囲気下での使用におい
て、具体的には、本発明に係る軸受や回転陽極X線管等
において重要な意義をもたらすといえる。
【図1】本発明に摺動性部材の構成例を示す断面図。
【図2】本発明に係る摺動部材のピン・オン・ディスク
型摩擦試験の実施様態の要部を模式的に示す斜視図。
型摩擦試験の実施様態の要部を模式的に示す斜視図。
【図3】本発明に係る摺動部材のピン・オン・ディスク
型摩擦試験の実施様態の要部を模式的に示す断面図。
型摩擦試験の実施様態の要部を模式的に示す断面図。
【図4】本発明に係る摺動部材についてのピン・オン・
ディスク型摩擦試験結果を示す曲線図。
ディスク型摩擦試験結果を示す曲線図。
【図5】本発明に係る転がり軸受の他の構成例を示す断
面図。
面図。
【図6】本発明に係る回転陽極X線管の概略構成例を示
す断面図。
す断面図。
【図7】従来の摺動部材についてのピン・オン・ディス
ク型摩擦試験結果を示す曲線図。
ク型摩擦試験結果を示す曲線図。
【図8】従来の回転陽極X線管の概略構成例を示す断面
図。
図。
【図9】従来の他の摺動部材についてのピン・オン・デ
ィスク型摩擦試験結果を示す曲線図。
ィスク型摩擦試験結果を示す曲線図。
1,15…真空容器 2,16…陰極 3,12,17…回転軸 4,18…回転子 5,19…陽極ターゲット 6,6’,13,13’…玉軸受 6a,6a’,13a…玉軸受の内輪 6b,6b’,13b…玉軸受の外輪 6c,6c’,13c…玉軸受の球 7,20…支持軸 8…回転軸本体 8’…円板 9,9’…金属層 10,10’…固体潤滑剤層 11…ピン試験片 13c1 …球本体 13c2 …金属層(Mo金属層) 13c3 …固体潤滑剤層(Ag金属層) 14…ハウジング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 一秀 東京都府中市東芝町1番地 株式会社東芝 府中工場内
Claims (6)
- 【請求項1】 金属もしくはセラミックスからなる基体
と、この基体の少なくとも被摺動面を被覆する金属層
と、この金属層を被覆する400℃において蒸気圧が1
0-6Pa以下である固体潤滑剤層とを具備してなり、前
記金属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタル
ピーが100kJ/g−at以上であることを特徴とす
る摺動部材。 - 【請求項2】 前記基体は高速度工具鋼からなり、前記
金属層はMoからなり、前記固体潤滑層はAgからなる
ことを特徴とする請求項1記載の摺動部材。 - 【請求項3】 金属もしくはセラミックスからなる軸受
本体と、この軸受本体の少なくとも被摺動面を被覆する
金属層と、この金属層を被覆する400℃において蒸気
圧が10-6Pa以下である固体潤滑剤層とを具備してな
り、前記金属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エ
ンタルピーが100kJ/g−at以上であることを特
徴とする軸受。 - 【請求項4】 前記軸受本体は高速度工具鋼からなり、
前記金属層はMoからなり、前記固体潤滑層はAgから
なることを特徴とする軸受。 - 【請求項5】 真空容器と、この真空容器内に電子を放
出する陰極と、この陰極から放射される電子の衝突によ
りX線を発生する陽極ターゲットと、この陽極ターゲッ
トに一体的に固着された回転子と、前記陽極ターゲット
を回転自在に支持する軸受とを具備してなる回転陽極X
線管において、 少なくとも前記陽極ターゲット側に設けられる前記軸受
は、金属もしくはセラミックスからなる軸受本体と、こ
の軸受本体の少なくとも被摺動面を被覆する金属層と、
この金属層を被覆する400℃において蒸気圧が10-6
Pa以下である固体潤滑剤層とを具備してなり、前記金
属層と前記固体潤滑層からなる合金の生成エンタルピー
が100kJ/g−at以上であることを特徴とする回
転陽極X線管。 - 【請求項6】 前記軸受本体は高速度工具鋼からなり、
前記金属層はMoからなり、前記固体潤滑層はAgから
なることを特徴とする回転陽極X線管。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP23484595A JPH0979484A (ja) | 1995-09-13 | 1995-09-13 | 摺動部材およびこれを用いた軸受並びに回転陽極x線管 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP23484595A JPH0979484A (ja) | 1995-09-13 | 1995-09-13 | 摺動部材およびこれを用いた軸受並びに回転陽極x線管 |
Publications (1)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH0979484A true JPH0979484A (ja) | 1997-03-25 |
Family
ID=16977270
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP23484595A Pending JPH0979484A (ja) | 1995-09-13 | 1995-09-13 | 摺動部材およびこれを用いた軸受並びに回転陽極x線管 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JPH0979484A (ja) |
-
1995
- 1995-09-13 JP JP23484595A patent/JPH0979484A/ja active Pending
Similar Documents
| Publication | Publication Date | Title |
|---|---|---|
| US6764219B2 (en) | Full complement antifriction bearing | |
| US5150398A (en) | Bearing and rotary anode X-ray tube employing the bearing | |
| US7620153B2 (en) | Cage for x-ray tube bearings | |
| JP3535558B2 (ja) | 摺動部材、転がり軸受および回転陽極x線管 | |
| US4962519A (en) | Lubricated bearing retainer for X-ray tube | |
| JP2907866B2 (ja) | 回転陽極x線管 | |
| JPH0979484A (ja) | 摺動部材およびこれを用いた軸受並びに回転陽極x線管 | |
| JPS58174718A (ja) | ころがり軸受 | |
| JP2003254340A (ja) | 軸受装置 | |
| JPS622024A (ja) | 固体潤滑転がり軸受 | |
| JPH10205541A (ja) | 転がり軸受 | |
| JP6481798B2 (ja) | 転がり軸受 | |
| JP4467740B2 (ja) | 回転陽極型x線管 | |
| JP3770221B2 (ja) | 摺動部材 | |
| JPH03255224A (ja) | 真空用軸受 | |
| JPS60211750A (ja) | 回転陽極型x線管 | |
| JPH0741779A (ja) | 摺動部材 | |
| JPH09177796A (ja) | ころ軸受 | |
| JPH0372177B2 (ja) | ||
| JPH11247863A (ja) | 多点接触玉軸受 | |
| JP2002195276A (ja) | 転がり軸受 | |
| JPH05290769A (ja) | 回転陽極x線管 | |
| JPS6372051A (ja) | 回転陽極型x線管 | |
| JPH0414742A (ja) | 軸受装置及びそれを用いたx線管 | |
| JP3761727B2 (ja) | 金属潤滑膜および転がり軸受 |