JPH10121125A - 鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材 - Google Patents

鋼部材の表面処理方法及び表面処理鋼部材

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JPH10121125A
JPH10121125A JP8295716A JP29571696A JPH10121125A JP H10121125 A JPH10121125 A JP H10121125A JP 8295716 A JP8295716 A JP 8295716A JP 29571696 A JP29571696 A JP 29571696A JP H10121125 A JPH10121125 A JP H10121125A
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molten
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density energy
steel
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JP8295716A
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Koji Obayashi
巧治 大林
Michio Maruki
三千男 丸木
Takao Taniguchi
孝男 谷口
Yoshi Watanabe
好 渡辺
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Aisin AW Co Ltd
Original Assignee
Aisin AW Co Ltd
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    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D1/00General methods or devices for heat treatment, e.g. annealing, hardening, quenching or tempering
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    • C21D1/09Surface hardening by direct application of electrical or wave energy; by particle radiation
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C21METALLURGY OF IRON
    • C21DMODIFYING THE PHYSICAL STRUCTURE OF FERROUS METALS; GENERAL DEVICES FOR HEAT TREATMENT OF FERROUS OR NON-FERROUS METALS OR ALLOYS; MAKING METAL MALLEABLE, e.g. BY DECARBURISATION OR TEMPERING
    • C21D2211/00Microstructure comprising significant phases
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 被処理部材が薄板部品であっても熱歪みや焼
入れ不良がなく,また生産効率の高い,鋼部材の表面処
理方法,及びかかる表面処理を施した優れた表面処理鋼
部材を提供すること。 【解決手段】 高密度エネルギービーム照射によって鋼
部材の表層のみを融点以上に加熱して溶融部となし,次
いで該溶融部をマルテンサイト変態領域まで急冷してマ
ルテンサイト組織とする。鋼部材の上記表層の昇温速度
は,7500℃/秒以上であることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は,熱歪み等を低減しながら鋼部材
の表層に硬化層を形成する鋼部材の表面処理方法及び表
面処理鋼部材に関する。
【0002】
【従来技術】従来より,例えば摺動部分を有する鋼部材
においては,摺動部分の耐摩耗性を向上させるため,そ
の対策が種々講じられている。例えば,構成材料として
硬質鋼を用いる対策法がある。しかしながら,硬質鋼は
強い成形加工が困難であるので,例えば後述するロック
アップピストン等のような強い成形加工を伴う部材に対
して適用することができない。
【0003】そこで,このような強い成形加工を伴う鋼
部材に対しては,表層部のみを焼き入れして硬化させ,
これにより耐摩耗性を向上させる手段が採用されてい
た。従来,このような表面硬化法としては,高周波焼入
れや,電子ビーム(EB)焼入れ或いはレーザ焼入れ等
の高密度エネルギービーム照射による表面焼入れが知ら
れている。
【0004】これらの焼入れ方法においては次のような
手順によって表面硬化層を形成する。即ち,まず,被処
理材表面を高周波加熱や高密度エネルギービーム照射加
熱すると共に,その表層部をオーステナイト化温度(焼
入れ温度)に保持してオーステナイト化した時点で加熱
を停止する。次いで,鋼部材の自己放冷等により急速冷
却させて表層部のオーステナイトをマルテンサイトに変
態させて硬化層とする。
【0005】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来の表
面焼入れ方法においては,次の問題がある。即ち,従来
の表面焼入れ方法においては,表面を加熱して均一なオ
ーステナイトを得るために,少なくともオーステナイト
変態に必要な時間以上だけ表面層を焼入れ温度に保持す
る必要がある。
【0006】これを後述する図1のT−T−A曲線部に
より説明する。同図は,横軸に時間(対数目盛),縦軸
に温度をとり,A3 変態開始線(オーステナイト変態開
始線)とA3 変態終了線(オーステナイト変態終了線)
を示したものである。同図に従来の表面焼入れ方法にお
ける鋼部材表面の温度履歴を実線C1により示す。これ
により知られるごとく,従来においては,加熱を開始し
てから常温組織(フェライト・パーライト組織)が完全
にオーステナイトへ変態し終えるまで待って,その後焼
入れを行っていた。
【0007】そのため,被処理部材が例えば薄板部品で
ある場合には,オーステナイト変態時間の間に熱伝導に
より被処理部材の広範囲が温度上昇する。それ故,熱歪
みが発生して部材の形状精度を悪化させたり,自己放冷
が不十分となって焼入れ不良が発生したりする等の問題
が生じていた。また,上記のごとくオーステナイト変態
時間以上の高温保持時間を必要とするため,熱処理時間
が長く,生産性が悪いという問題もあった。
【0008】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてな
されたもので,被処理部材が薄板部品であっても熱歪み
や焼入れ不良がなく,また生産効率の高い,鋼部材の表
面処理方法,及びかかる表面処理を施した優れた表面処
理鋼部材を提供しようとするものである。
【0009】
【課題の解決手段】請求項1の発明は,高密度エネルギ
ービーム照射によって鋼部材の表層のみを融点以上に加
熱して溶融部となし,次いで該溶融部をマルテンサイト
変態領域まで急冷してマルテンサイト組織とすることを
特徴とする鋼部材の表面処理方法にある。
【0010】本発明において最も注目すべきことは,鋼
部材の表層のみを融点以上に加熱して溶融部となし,該
溶融部をマルテンサイト組織とすることである。即ち,
従来のように被処理部分をオーステナイト変態温度域に
キープして変態完了を待つのではなく,積極的にオース
テナイト変態温度以上の融点以上に急速に加熱して上記
溶融部を形成し,その後,後述するようにオーステナイ
ト組織を経てマルテンサイト組織を形成させることであ
る。
【0011】上記高密度エネルギービームとしては,例
えば電子ビーム,レーザビーム,また,ビームではない
が高周波加熱などの高密度エネルギーがある。本発明で
は,これらを総称して高密度エネルギービームという。
また,本発明において対象とする鋼部材としては,例え
ばS50C,S23C,S10C等の炭素鋼,SNC
M,SCR,SCM等の合金鋼,SK,SKH,SKS
等の工具鋼などがある。また,上記融点,マルテンサイ
ト変態領域は,鋼部材の材質等により決定される。
【0012】次に,本発明における作用につき説明す
る。本発明においては,上記のごとく,高密度エネルギ
ービーム照射によって鋼部材の表層のみを融点以上に加
熱して溶融部となす。このとき,加熱エネルギーが高密
度エネルギービーム照射によるため,非常に急速に溶融
部を形成することができる。また,加熱エネルギーが高
密度エネルギーであるため,鋼部材の表層のみを溶融部
とすることができる。そのため,鋼部材の表層部は,加
熱開始から極短い時間で溶融状態の溶融部となる。
【0013】次いで,高密度エネルギービーム照射を止
めるあるいは照射位置をずらすことにより,上記溶融部
は急速に自己放冷される。即ち,高密度エネルギービー
ム照射により形成された溶融部は上記のごとく鋼部材の
表層のみである。そのため,溶融部の周囲の鋼部材内部
は,溶融部よりも十分に低温状態に維持されている。そ
れ故,溶融状態にある上記溶融部は,その周囲の鋼部材
への熱伝導により,急速に自己放冷され,急冷される。
なお,自己放冷に加えて水冷等の強制冷却を行ってもよ
い。
【0014】そして,溶融部の急冷過程においては,ま
ず溶融層が凝固すると共に瞬時にオーステナイト組織と
なる。次いで,オーステナイト組織は,極めて短時間で
マルテンサイト変態領域まで急冷されてマルテンサイト
組織に変態する。これにより,上記溶融部はマルテンサ
イト組織の形成によって高硬度となり,優れた表面処理
層となる。
【0015】このように,本発明においては,まず鋼部
材の表層のみに溶融部を極めて短時間で形成し,次いで
極めて短時間でマルテンサイト化する。そのため,必要
十分な焼入れ硬化層を得ることができると共に,表面処
理時間を短縮でき,生産性の向上を図ることができる。
また,鋼部材の処理部周辺への熱伝導が少ないので周辺
部位の温度上昇が抑えられ,従来のような熱歪みの発生
も低減することができる。
【0016】したがって,本発明によれば,鋼部材が薄
板部品であっても,熱歪みや焼入れ不良の発生を低減し
つつ,高い効率で表面硬化処理を行うことができる。な
お,後述する実施形態例6のように,溶融部の深さ,
幅,及び加工速度を適宜選択することにより,表面処理
部分の表面を波打ちのない滑らかな仕上げ面にすること
もできる。
【0017】次に,請求項2の発明のように,上記鋼部
材の上記表層の昇温速度は,7500℃/秒以上である
ことが好ましい。上記昇温速度が7500℃/秒未満の
場合には被処理部の周囲への熱伝導の増大,処理時間の
増加等を招くという問題がある。なお,上限は,装置の
現実的な処理能力から考えて,50万℃/秒であること
が好ましい。
【0018】また,請求項3の発明のように,上記高密
度エネルギービーム照射開始から上記溶融部を形成する
までの時間は0.2秒以内であることが好ましい。0.
2秒を超える場合には,被処理部周辺への熱伝導が増大
し,そのため,周辺部位の温度上昇による熱歪みの増大
や,自己放冷が不十分となり焼入れ不良が発生するとい
う問題がある。なお,下限は,装置の現実的な処理能力
から考えて,0.003秒であることが好ましい。
【0019】また,請求項4の発明のように,上記溶融
部のマルテンサイト変態領域までの冷却速度は600℃
/秒以上であることが好ましい。上記冷却速度が600
℃/秒未満の場合には鋼種によっては冷却速度不足によ
る焼入れ不良が発生するという問題がある。なお,上限
は,熱歪みの抑制の点から考えて,1800℃/秒であ
ることが好ましい。
【0020】また,請求項5の発明のように,上記溶融
部は,鋼部材表面に波打ちが生じない溶融深さとするこ
とが好ましい。具体的には,溶融部の幅,加工スピード
に応じて,鋼部材表面に波打ちが生じない溶融深さにな
るよう高密度エネルギービームの出力,照射時間等を調
整することが好ましい。これにより,波打ちの発生のな
い形状精度に優れた鋼部材を得ることができる。
【0021】また,請求項6の発明のように,上記溶融
部は,完全に溶融状態となった全溶融層と,これに隣接
する不完全溶融層とすることもできる。不完全溶融層は
全溶融層からの熱伝導により,焼入れ硬化された層であ
って,昇温速度に応じてその焼入れ深さを制御すること
ができる。従って,比較的深い焼入れ深さが必要な場合
であっても,全溶融層を深くすることなく,必要十分な
焼入れ深さが得られるので,表面の波打ちを防止するこ
とができる。
【0022】また,請求項7の発明のように,上記高密
度エネルギービームは,1箇所のビーム発生源から発射
されたビームを複数箇所に分配して照射することもでき
る。即ち,例えば偏向レンズ等を用いて1箇所のビーム
発生源から発射されたビームを複数箇所に分配させるこ
とができる。この場合には,高密度エネルギービームを
鋼部材の複数箇所に同時に照射することができ,複数箇
所の表面処理を一操作により行うことができる。
【0023】それ故,生産効率が一層向上する。また,
この場合,上述したごとく,溶融部の周囲への熱伝導を
抑制することができるため,近接する複数箇所を同時に
処理した場合においても,各処理領域間における熱的干
渉がなく,互いの処理部分に不本意な焼きもどし,焼き
なまし等が発生することもない。
【0024】また,請求項8の発明のように,上記溶融
部の急冷は自然放冷によって行うことが好ましい。即
ち,溶融部から鋼部材内外への熱の放散により冷却する
ことが好ましい。この場合には水冷等の強制冷却の場合
よりも操作を簡単にすることができる。
【0025】また,請求項9の発明のように,上記鋼部
材全体の熱容量は上記溶融部の熱容量の4倍以上である
ことが好ましい。この場合には,溶融部から鋼部材内部
への自己放熱が一層速やかになり,急冷効果が一層確実
となる。また,請求項10の発明のように,上記溶融部
の溶融深さは上記鋼部材の肉厚の1/4以下であること
が好ましい。この場合には,上記熱容量規制の場合と同
様の効果を得ることができる。
【0026】次に,上記鋼部材の表面処理方法により表
面処理した表面処理鋼部材として,次の発明がある。即
ち,請求項11の発明のように,母材金属が溶融した後
急冷凝固したマルテンサイト組織の溶融・凝固部を有す
ることを特徴とする表面処理鋼部材がある。
【0027】本発明において最も注目すべきことは,上
記溶融・凝固部を有することである。この溶融・凝固部
は,マルテンサイト組織であり高硬度であるため,高い
耐摩耗性を有する。また,溶融・凝固部以外の部分はマ
ルテンサイト化されていないため,良好な加工性を示
す。それ故,本発明の表面処理鋼部材は,局部的に耐摩
耗性部位を有し,かつ塑性加工性に優れた部材として極
めて有効である。
【0028】また,請求項11の発明のように,上記溶
融・凝固部は,その熱容量が部材全体の熱容量の1/4
以下であることが好ましい。この場合には表面処理鋼部
材を薄肉化することができる。また,鋼部材が一様肉厚
のものであれば溶融・凝固部の深さを鋼部材の肉厚の1
/4以下にすることによっても鋼部材の薄肉化を図るこ
とができる。
【0029】また,請求項12の発明のように,上記溶
融・凝固部は耐摩耗面として使用されることが好まし
い。これにより,本発明の表面処理鋼部材の本来の機能
を十分に発揮させることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
実施形態例1 本発明の実施形態例にかかる鋼部材の表面処理方法につ
き,図1,図2を用いて説明する。即ち,本例の鋼部材
の表面処理は,図2に示すごとく,被処理材としての鋼
部材2(図2)に高密度エネルギービームを照射するこ
とによって,図1の実線E1に示すごとく,鋼部材2の
表層のみを融点Mp以上に加熱して溶融部21となし,
次いで該溶融部21をマルテンサイト変態領域(M)ま
で急冷してマルテンサイト組織22とする。
【0031】上記図1は,横軸に時間(対数目盛)を,
縦軸に温度(℃)をとった,T−T−A曲線図である。
同図には,曲線A31によりA3 変態開始線と,曲線A32
によりA3 変態終了線をそれぞれ示してある。そして,
本発明にかかる上記表面処理方法を実線E1で示すと共
に,比較のため従来のEB焼入れ方法を実線C1で示し
ている。尚,マルテンサイト変態は,鋼材質により決定
されるMs点以下の温度領域に臨界冷却速度以上の冷却
速度で冷却することにより得られる。そのため,図1に
は,便宜上,Ms点以下の領域をマルテンサイト変態領
域(M)として表している。同図において,本例による
処理時間と従来法による処理時間との時間差Tが,本発
明において短縮された熱処理時間である。
【0032】即ち,従来のEB焼入れC1の場合には,
処理部分の温度をオーステナイト変態温度にして,これ
を変態完了点まで保持する必要がある。そのため,全体
の処理時間が本例に比べて長くなっていた。これに対
し,本例においては,図1に示すごとく,溶融部21と
なる鋼部材2の表層を,7500℃/秒以上という極め
て速い昇温速度で加熱して,一気に融点Mp以上の溶融
状態の溶融部21を形成する。この場合の,高密度エネ
ルギービーム照射開始から溶融部21を形成するまでの
時間は0.2秒という非常に短い時間である。そして,
溶融部の深さは,鋼部材2の厚みの1/4以下になるよ
うに調整してある。その調整は,高密度エネルギービー
ムの出力及び照射パターンにより行った。
【0033】次いで,溶融部21形成直後に高温状態を
維持することなく,600℃/秒以上という極めて速い
冷却速度で溶融部21を冷却する。これにより,溶融部
21は直ちに凝固して,一旦均一オーステナイト組織に
なり,次いでさらに冷却が進むことによりマルテンサイ
ト領域まで冷却されてマルテンサイト組織22となる。
【0034】また,本例に示す表面処理は,図2に示す
ごとく,鋼部材2の表面処理部分20に対して,部分的
に高密度エネルギービーム11を照射することにより行
っている。つまり,図2A,Bに示すごとく,高密度エ
ネルギービーム発生源1より高密度エネルギービーム1
0を発射し,これを偏向レンズ112により最適な照射
パターンの高密度エネルギービーム11を鋼部材2に照
射する。
【0035】一方,鋼部材2は,図2に示すごとく,同
図の矢印方向へ一定の速度で移動させる。そして,表面
処理部分20は高密度エネルギービーム11の照射によ
って急速に加熱されて溶融部21となり,鋼部材2の移
動によって高密度エネルギービーム11の照射が完了し
た溶融部21は自己放冷により急冷される。これによ
り,鋼部材2には,マルテンサイト組織22の高硬度の
表層部が連続的に形成される。
【0036】このように,本例によれば,鋼部材2の表
層のみを急速に溶融状態まで加熱し,その後直ちに急冷
することができる。そのため,鋼部材2の表面処理部分
20以外の部分への熱伝導が少なく,熱歪みの発生を低
減することができると共に確実に自己放冷効果が得られ
る。
【0037】特に本例においては,溶融部21は,鋼部
材2の厚みの1/4以下の深さの表層のみに形成するた
め,600℃/秒以上という冷却速度で自己放冷され
る。そのため,マルテンサイト変態の臨界冷却速度を十
分に超える上記の冷却速度が得られ,焼入れ不良の防止
を確実に図ることができる。さらに,本例によれば,上
記のごとく処理時間を従来よりも格段に短くすることが
でき,生産効率の向上を図ることもできる。
【0038】実施形態例2 本例は,図3,図4に示すごとく,上記実施形態例1に
示した鋼部材の表面処理方法において,鋼部材2を回転
させながら,該鋼部材2における2箇所のリング状の表
面処理部分20(図4)に対して,高密度エネルギービ
ーム11,12を連続的に照射する熱処理装置及び方法
を示すものである。
【0039】本例における,被処理材としての鋼部材2
は,例えば後述するトルクコンバータ用部品のロックア
ップクラッチピストンのごとく皿状をなしている(図
3,図6参照)。そして,その2箇所にリング状の表面
処理部分20(図4)を一操作により処理する(図
4)。上記熱処理装置は,図3に示すごとく,鋼部材2
を入れる加工室19と,該加工室19内に高密度エネル
ギービーム11,12を照射するビーム発生源1と,上
記ビーム発生源1からの高密度エネルギービーム10の
照射パターン等を制御する集束レンズ111と偏向レン
ズ112とを有する。
【0040】また,加工室19内を減圧する真空排気装
置16と,上記集束レンズ111,偏向レンズ112を
制御する高速偏向制御装置110とを有する。上記集束
レンズ111,偏向レンズ112を制御することによ
り,鋼部材2に照射する高密度エネルギービーム11,
12の分配と,その出力及び照射パターンが調整され
る。これらの装置は,総合制御装置17によりコントロ
ールされる。また,上記加工室19の下部には,上記鋼
部材2の載置台15を回転させるための回転モータ15
0を有する。
【0041】そして,上記熱処理装置により,表面処理
を行うに当たっては,まず上記回転モータ150を駆動
させて,上記鋼部材2を図4の矢印方向に回転させてお
く。また,真空排気装置16により,加工室19内を真
空状態にする。そして,図3,図4に示すごとく,鋼部
材2に対して2つの高密度エネルギービーム11,12
をそれぞれ同時に照射する。この高密度エネルギービー
ム11,12は鋼部材2の回転によって鋼部材2上を相
対的に一定速度で移動していく。
【0042】これにより,図4に示すごとく,高密度エ
ネルギービーム11,12が照射された部分がそれぞれ
溶融部21となり,その直後マルテンサイト組織となっ
て,2箇所のリング状の表面処理部分20が硬化層とな
る。この場合には,2箇所の表面処理部分20を必要と
する鋼部材2に対して,非常に高い効率で処理すること
ができる。その他,実施形態例1と同様の効果を得るこ
とができる。
【0043】実施形態例3 本例は,実施形態例1及び2に示した鋼部材の表面処理
方法により処理した,本発明にかかる表面処理鋼部材の
具体例である。即ち,本例の鋼部材2は,図5,図6に
示すごとく,トルクコンバータに用いるロックアップク
ラッチピストン41である。
【0044】ここで,上記のトルクコンバータに用いる
ロックアップクラッチピストン41について簡単に説明
する。トルクコンバータは,自動車等の動力伝達系を構
成するものであって,図5,図6に示すごとく,ポンプ
インペラ100,該ポンプインペラ100と共にトーラ
スを構成するタービンランナ200,ステータ300,
ロックアップクラッチ装置400及びダンパ装置500
によって構成されている。
【0045】上記トルクコンバータにおいて,図示しな
いクランクシャフトを介して伝達されたエンジンの回転
は,フロントカバー600に伝達され,さらにこれに固
定されたポンプインペラ100に伝達される。ポンプイ
ンペラ100が回転すると,トーラス内の油が軸の周囲
を回転し,遠心力が加わってポンプインペラ100とタ
ービンランナ200及びステータ300間を循環させら
れる。
【0046】そして,ポンプインペラ100とタービン
ランナ200との間に配置されているステータ300
(内周側に一定方向にのみ回転を可能とするワンウェイ
クラッチ31が取り付けられている)等の作用により,
車両の発進時等のようにポンプインペラ100が回転を
開始したばかりでタービンランナ200との回転速度差
が大きい場合にはトルク変換機として動作してトルクを
増幅させる。一方,タービンランナ200の回転速度が
高くなってタービンランナ200とポンプインペラ10
0との回転速度差が小さくなった場合には単なる流体継
手として作動するようになっている。
【0047】このトルクコンバータには上記のごとくロ
ックアップクラッチ装置400が設けられているが,こ
れは燃費改善等のために設けられたものである。即ち,
車両が発進した後,予め設定された車速が得られると,
ロックアップクラッチ装置400のロックアップクラッ
チピストン41が図示しないロックアップリレーバルブ
による油の供給切り換えにより作動して軸方向に移動
し,摩耗材42を介してフロントカバー600と係合す
る。このため,エンジンの回転がトルクコンバータを介
することなく変速機構の入力軸に伝達されるので,燃費
を良くすることができる。
【0048】また,トルクコンバータに取り付けられた
前記ダンパ装置500は,ロックアップクラッチピスト
ン41とフロントカバー600との係脱時に発生する伝
達トルクの変動を吸収するためのものであり,ダボかし
め43によってロックアップクラッチピストン41に固
定されており,タービンランナ200と一体に回転させ
られるドリブンプレート51及びスプリング52,53
等から成っている。
【0049】ここで,スプリング52はロックアップク
ラッチピストン41の円周方向における8箇所に配設さ
れた第1ステージ用のものであり,またスプリング53
はロックアップクラッチピストン41の円周方向におけ
る4箇所に配設された第2ステージ用ものであって,こ
のスプリング53はスプリング52内に一つ置きに配設
される。なお,スプリング53はスプリング52より径
が小さく,かつ短く設定され,スプリング52の捩じれ
角が設定値になって伝達トルクが屈曲点トルクに到達し
た後に撓み始める。
【0050】従って,フロントカバー600から摩耗材
42を介して伝達された回転はダンパ装置500を介し
てタービンハブ700に伝達されるが,この際,スプリ
ング52,53が収縮して回転伝達時における伝達トル
クの変動を吸収する。また,エンジンの出力トルクの急
激な変動が図示しない変速装置に伝達されることによっ
て起きる振動,騒音等を防止する役目も担っている。
【0051】ところで,上述したようなトルクコンバー
タにおいては,ロックアップクラッチピストン41の正
駆動時(ロックアップクラッチ装置400が係合状態に
置かれてロックアップクラッチピストン41が図6にお
ける反時計回り方向に回転する時)及び逆駆動時(エン
ジンブレーキ時等でロックアップクラッチピストン41
が図6における時計回り方向に回動する時)にはスプリ
ング52が圧縮されるので,このスプリング52がロッ
クアップクラッチピストン41の平板部411と繰り返
し摺動する。そのため,ロックアップクラッチピストン
41の平板部411にはスプリング52との摺動による
摩耗が生じる。
【0052】また,ロックアップクラッチピストン41
の回転に伴って,スプリング52は遠心力を受け,ロッ
クアップクラッチピストン41の立上がり部412に押
しつけられる。したがって,ロックアップクラッチピス
トン41の正駆動時及び逆駆動時に,ロックアップクラ
ッチピストン41の立上がり部412もスプリング52
と繰り返し摺動することとなり,摩耗が生じる。
【0053】本例は,上記のような使用環境にあるロッ
クアップクラッチピストン41の,上記平板部411と
立上がり部412とに表面処理を施すものである。な
お,このロックアップクラッチピストン41は成形が容
易な低炭素鋼(S22C)よりなる。
【0054】まず,図7に本例において使用した装置を
示す。同図により知られるように,本例の装置は,実施
形態例2における装置と基本構成を同じとし,載置台1
5を45°傾けて配設した。また,ビーム発生源1から
発せられた高密度エネルギービーム10は,実施形態例
2と同様に2つの照射する高密度エネルギービーム1
1,12に分配される。その他は実施形態例2と同様で
ある。
【0055】次に,この装置を用いて,図8,図9に示
すごとく,ロックアップクラッチピストン41の平板部
411と立上がり部412の2箇所の表面処理部分40
1,402に同時に表面処理を施す。そして,厚み3m
mの平板部411及び立上がり部412に,それぞれ厚
み0.1〜0.2mmの硬化層を形成する。
【0056】具体的には,まず,図7に示すごとく装置
の載置台15にセットしたロックアップクラッチピスト
ン41を,表面処理部分401,402の移動速度が約
16.7m/分となる速度で回転させる。そして,図
7,図9に示すごとく,2つの高密度エネルギービーム
11,12として4.6KW出力の電子ビームを用い,
これを表面処理部分401,402にそれぞれ照射す
る。
【0057】これにより,2つの表面処理部分401,
402は,前記した図1の実線E1に示すごとく,極め
て短時間に表層のみが溶融して溶融部となり,次いで,
極めて短時間に急冷されてマルテンサイト組織となる。
この組織変態を,図10を用いてさらにわかり易く説明
する。図10は横軸に炭素の含有量,縦軸に温度をとっ
た,鉄−炭素系平衡状態図である。
【0058】本例における表面処理部分401,402
は,同図に示した一点鎖線L1 に沿って変化する。即
ち,まず電子ビーム照射によって常温組織(フェライト
・パーライト)が急速に加熱されて融体Lになる。次い
で,続く自己放冷により凝固してオーステナイトにな
り,その直後,自己放冷による更なる急冷が成されてマ
ルテンサイト組織に変態する。
【0059】このように得られたロックアップクラッチ
ピストン41における,表面処理部分401の断面の結
晶粒の写真を図11に示す。図11に示した目盛りは部
材の表面からの厚み方向の距離を示しており,0mmの
位置が外表面部である。同図より知られるごとく,表面
処理部分401は,最表面の約0.03mm厚みの全溶
融層211とその下の約0.17mm厚みの不完全溶融
層212とより構成されている。
【0060】次に,この表面処理部分401断面の硬度
分布を図12に示す。同図は,横軸に部材の表面からの
距離,縦軸に硬度(Hv)をとった。同図より知られる
ように,表面処理部分401には,約0.2mm以下の
極薄い硬化層が形成されていることが確認できる。これ
らの結果は表面処理部分402においても同じである。
【0061】したがって,本例により得られたロックア
ップクラッチピストン41は,その平板部411及び立
上がり部412の摺動部分に,耐摩耗性に優れた表面処
理部401,402をそれぞれ備えた状態となる。それ
故,このロックアップクラッチピストン41をトルクコ
ンバータに組み込んだ場合には,非常に優れた耐久性を
発揮する。また,表面処理部分401,402以外の部
分は,表面処理前と同じフェライト・パーライト組織で
あるため,塑性かしめ等の各種塑性加工を容易に施すこ
ともできる。
【0062】また,上記表面硬化層は非常に厚みが薄
く,また,高密度エネルギービーム11,12の影響が
表面処理部分以外の部分に殆ど及ばないため,ロックア
ップクラッチピストン41の外径形状は高い精度に維持
された状態となっている。それ故,本例のロックアップ
クラッチピストン41は,特に歪み取り工程を施すこと
なくトルクコンバータに組み込むことができ,生産コス
トの低減を図ることもできる。
【0063】また,従来のいわゆる電子ビーム焼入れ
(図1実線C1)の場合,これをロックアップクラッチ
ピストン41に適用する際には部材全体の熱容量が表面
処理部分の8倍以上であることが必要であった。そのた
め,従来は,ロックアップクラッチピストン41の肉厚
を厚く設定する必要があった。これに対し,本例におい
ては,表面処理部分401,402を上記のごとく極薄
くすることができるため,ロックアップクラッチピスト
ン41全体の厚みを薄くすることが可能である。この点
においても製造コストの低減を図ることができる。
【0064】さらに,本例においては,前述した図1に
示すごとく,従来の電子ビーム焼入れの場合に比べ,処
理時間を大きく短縮できる。しかも,2箇所の表面処理
部分401,402を同時に処理することができる。そ
れ故,従来よりも非常に高い生産性が得られる。なお,
本例の2箇所の表面処理部分401,402は,上記の
ごとく,それぞれ極めて短時間に処理されるため,互い
の熱影響を受けることもない。その他,実施形態例1,
2と同様の効果が得られる。
【0065】実施形態例4 本例は,実施形態例3における電子ビームの照射部軌跡
の1例を図13を用いて説明する。本例では,電子ビー
ムは2つの円偏向軌跡C1 ,C2 に従って照射される。
この場合,各円偏向軌跡C1 ,C2 によってそれぞれ被
熱処理領域25,26,即ち前記の高密度エネルギービ
ーム11,12の照射部分に相当する領域に電子ビーム
が照射され,その間中,被処理部材はその中心軸回りに
回転させられる。従って,被熱処理領域25,26にお
ける電子ビームの軌跡は矢印H方向に移動する。
【0066】なお,各円偏向軌跡C1 ,C2 は,x軸方
向及びy軸方向において正弦波の偏向波形を発生させ,
その偏向の組合せによって形成される。また,各円偏向
軌跡C1 ,C2 を切り換え,被熱処理領域25,26に
おいて交互に電子ビームを照射するために,図14に示
すような偏向波形w1 が発生させられ,該偏向波形w1
と前記y軸方向における偏向波形とが重ねられる。
【0067】従って,電圧VE が正の値を採る時間t1
の間に被熱処理領域25に電子ビームが照射され,電圧
E が負の値を採る時間t2 の間に被熱処理領域26に
電子ビームが照射される。
【0068】また,前記偏向波形w1 の時間t1 を短
く,時間t2 を長く設定することによって,被熱処理領
域25,26への照射エネルギーを調整することができ
る。例えば,実施形態例3におけるロックアップクラッ
チピストン41の平板部411は,立上がり部412ほ
ど高い耐摩耗性が要求されない。そこで,前記偏向波形
1 の時間t1 を短く,時間t2 を長く設定することに
よって,表面処理部分401を表面処理部分402より
も柔らかくすることができる。これによって,表面処理
の消費エネルギーを小さくすることができるたけでな
く,処理時間の更なる短縮を図ることができる。
【0069】実施形態例5 本例は,図15に示すごとく,被熱処理領域27,28
へ電子ビームを照射する場合の別例を示している。この
場合には,二つの面偏向軌跡C3 ,C4 によって電子ビ
ームが照射される。つまり,各面偏向軌跡C3 ,C4
よってそれぞれ被熱処理領域27,28に電子ビームが
照射され,その間中,被処理部材はその中心軸回りに回
転させられる。従って,この場合も被熱処理領域27,
28における電子ビームの軌跡は矢印H方向に移動す
る。
【0070】なお,各面偏向軌跡C3 ,C4 はx軸方向
及びy軸方向において三角波の偏向電圧を発生させるこ
とによって形成される。また,各面偏向軌跡C3 ,C4
を切り換え,被熱処理領域27,28において電子ビー
ムを照射するために,図16に示すような偏向波形w1
と前記x軸方向及びy軸方向における三角波とが重ねら
れる。勿論,円偏向と面偏向とを組み合わせたり,線,
楕円等の軌跡をたどるように電子ビームを偏向させるこ
ともできる。その他は,実施形態例4と同様である。
【0071】ところで,上記実施形態例ではトルクコン
バータのロックアップクラッチピストンを処理する例を
説明したが,その外,例えば多板摩擦係合装置における
プレート摺動部,部材同士又はスナップリング等による
結合部,オイルポンププレート,シールリング溝等,表
層部を全部又は部分的に硬化させる必要がある鋼部材で
あれば,いずれのものであっても本発明を適用すること
ができる。
【0072】実施形態例6 次に,本例は,実施形態例1の表面処理方法において,
表面処理部分における,再凝固時の表面の波打ちの発生
を防止するための条件を求めた。即ち,本発明は,表面
処理部分を一旦溶融することを最大の特徴とするため,
その溶融部が再凝固する際の表面状態が品質の重要なポ
イントとなる。そこで,本例においては,再凝固によっ
て,いわゆる波打ちが発生しない溶融深さを種々の面か
ら調査した。
【0073】まず最初に,表面処理部分の幅(溶融幅)
とを一定とし,加工スピード(高密度エネルギービーム
と鋼部材との相対速度)を順次変更し,それぞれの加工
速度において表面波打ちが発生する限界の溶融深さを測
定した。測定結果を図17に示す。
【0074】同図は,横軸に加工スピード(m/分),
縦軸に溶融深さ(μm)をとり,表面に波打ちが発生す
る溶融深さを実線E61により表した。この実線E61
よりも下方の領域は波打ちが発生しない領域である。同
図より知られるごとく,加工スピードだけを考えると,
加工スピードが速いほど,波打ちの発生しない溶融深さ
の限界が浅くなることがわかる。
【0075】次に,加工スピードを一定とし,表面処理
部分の幅を順次変更し,それぞれの表面処理部分の幅に
おいて表面波打ちが発生する限界の溶融深さを測定し
た。測定結果を図17に示す。同図は,横軸に表面処理
部分の幅(mm),縦軸に溶融深さ(μm)をとり,表
面に波打ちが発生する溶融深さを実線E62により表し
た。この実線E62よりも下方の領域は波打ちが発生し
ない領域である。同図より知られるごとく,表面処理部
分の幅だけを考えると,その幅が広いほど,波打ちの発
生しない溶融深さの限界が深くなることがわかる。
【0076】このように,本例においては,表面の波打
ち発生に影響する溶融深さについて,加工スピードと表
面処理部分の幅との2つの点からの判断基準を見出すこ
とができた。これにより,例えば加工スピードを上げる
場合には,溶融深さを浅くした方が表面波打ち発生の可
能性が低くなり,一方,加工スピードを下げる場合に
は,これまで以上に溶融深さを深くして硬化層を厚くす
ることもできるということが容易に判断できる。
【0077】また,単に表面処理部分の幅を狭くする場
合には,溶融深さを浅くした方が表面波打ち発生の可能
性が低くなり,一方,表面処理部分の幅を広げる場合に
は,これまで以上に溶融深さを深くして硬化層を厚くす
ることもできるということが容易に判断できる。したが
って,本例の結果を参考にすれば,表面処理部分の仕上
がり状態を,波打ちのない優れた状態にして製品精度を
確保することができる。
【0078】
【発明の効果】上記のごとく,本発明によれば,被処理
部材が薄板部品であっても熱歪みや焼入れ不良が少な
く,また生産効率の高い,鋼部材の表面処理方法,及び
かかる表面処理を施した優れた表面処理鋼部材を提供す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1の表面処理方法を示す,T−T−
A曲線図。
【図2】実施形態例1における,高密度エネルギービー
ムの照射状態を示す,(A)側面図,(B)平面図。
【図3】実施形態例2における,熱処理装置の説明図。
【図4】実施形態例2における,高密度エネルギービー
ムの照射状態を示す説明図。
【図5】実施形態例3における,ロックアップクラッチ
ピストンの縦断面からみた説明図。
【図6】実施形態例3における,ロックアップクラッチ
ピストンの平面側からみた説明図。
【図7】実施形態例3における,熱処理装置の説明図。
【図8】実施形態例3における,ロックアップクラッチ
ピストンの表面処理部分を示す説明図。
【図9】実施形態例3における,高密度エネルギービー
ムの照射状態を示す説明図。
【図10】実施形態例3における,鉄−炭素系平衡状態
図。
【図11】実施形態例3における,表面処理部分の断面
の結晶の構造を示す図面代用写真(倍率200倍)。
【図12】実施形態例3における,表面処理部分の断面
の硬度分布を示す説明図。
【図13】実施形態例4における,電子ビームの照射部
の軌跡を示す説明図。
【図14】実施形態例4における,電子ビームの偏向波
形例を示す説明図。
【図15】実施形態例5における,電子ビームの照射部
の軌跡の他の例を示す説明図。
【図16】実施形態例5における,電子ビームの偏向波
形例を示す説明図。
【図17】実施形態例6における,加工スピードと波打
ち限界溶融深さとの関係を示す説明図。
【図18】実施形態例6における,表面処理部分の幅と
波打ち限界溶融深さとの関係を示す説明図。
【符号の説明】
1...高密度エネルギービームの発生源, 10,11,12...高密度エネルギービーム, 2...鋼部材, 20...表面処理部分, 21...溶融部, 22...マルテンサイト組織, 41...ロックアップクラッチピストン, 401,402...表面処理部分,
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 好 愛知県安城市藤井町高根10番地 アイシ ン・エイ・ダブリュ株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高密度エネルギービーム照射によって鋼
    部材の表層のみを融点以上に加熱して溶融部となし,次
    いで該溶融部をマルテンサイト変態領域まで急冷してマ
    ルテンサイト組織とすることを特徴とする鋼部材の表面
    処理方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において,上記鋼部材の上記表
    層の昇温速度は,7500℃/秒以上であることを特徴
    とする鋼部材の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2において,上記高密度エ
    ネルギービーム照射開始から上記溶融部を形成するまで
    の時間は0.2秒以内であることを特徴とする鋼部材の
    表面処理方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項において,
    上記溶融部のマルテンサイト変態領域までの冷却速度は
    600℃/秒以上であることを特徴とする鋼部材の表面
    処理方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項において,
    上記溶融部は,鋼部材表面に波打ちが生じない溶融深さ
    とすることを特徴とする鋼部材の表面処理方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項において,
    上記溶融部は,完全に溶融状態となった全溶融層と,こ
    れに隣接する不完全溶融層とよりなることを特徴とする
    鋼部材の表面処理方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項において,
    上記高密度エネルギービームは,1箇所のビーム発生源
    から発射されたビームを複数箇所に分配して照射するこ
    とを特徴とする鋼部材の表面処理方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか1項において,
    上記溶融部の急冷は自然放冷によって行うことを特徴と
    する鋼部材の表面処理方法。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項において,
    上記鋼部材全体の熱容量は上記溶融部の熱容量の4倍以
    上であることを特徴とする鋼部材の表面処理方法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1項におい
    て,上記溶融部の溶融深さは上記鋼部材の肉厚の1/4
    以下であることを特徴とする鋼部材の表面処理方法。
  11. 【請求項11】 母材金属が溶融した後急冷凝固したマ
    ルテンサイト組織の溶融・凝固部を有することを特徴と
    する表面処理鋼部材。
  12. 【請求項12】 請求項11において,上記溶融・凝固
    部は,その熱容量が部材全体の熱容量の1/4以下であ
    ることを特徴とする表面処理鋼部材。
  13. 【請求項13】 請求項11又は12において,上記溶
    融・凝固部は耐摩耗面として使用されることを特徴とす
    る表面処理鋼部材。
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