JPH10137264A - 有床義歯の作製方法 - Google Patents

有床義歯の作製方法

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JPH10137264A
JPH10137264A JP31125496A JP31125496A JPH10137264A JP H10137264 A JPH10137264 A JP H10137264A JP 31125496 A JP31125496 A JP 31125496A JP 31125496 A JP31125496 A JP 31125496A JP H10137264 A JPH10137264 A JP H10137264A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 有床義歯の作製において、湿熱重合法,乾熱
重合法,マイクロ波重合法等の何れの重合方法を用いた
場合でも、簡便な操作で義歯床用レジンを粘膜面側から
重合開始させ、適合精度に優れた有床義歯を作製できる
方法を提供する。 【解決手段】 石膏模型上で蝋義歯を作製し、埋没用石
膏を用いてフラスコ内に石膏模型と共に蝋義歯を埋没
し、流蝋して得た義歯床部分の空隙に餅状の義歯床用レ
ジンを填入し、加熱重合して有床義歯を作製する方法に
おいて、義歯床用レジンを填入する前の石膏模型表面に
鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を
含む塗布材を塗布し、義歯床用レジンとして、メタクリ
ル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸
化物とを含む粉剤と、モノメタクリル酸エステル単量体
と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含む液剤
とから成る義歯床用レジンを用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有床義歯を作製す
る際に、フラスコ内に填入された餅状の義歯床用レジン
を石膏模型面側から重合を開始させることにより、適合
性に優れた有床義歯を作製する方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に有床義歯の作製方法は、患者の口
腔内状態を再現した石膏模型上で、義歯床部分を蝋で作
製し人工歯を配列して蝋義歯を作製し、この蝋義歯を石
膏模型と共に埋没用石膏を用いてフラスコ内に埋没し、
埋没用石膏が硬化したら義歯床部分を流蝋し、得られた
義歯床部分の空隙に粉剤と液剤とを練和して餅状とした
義歯床用レジンを填入し、その後、加熱することにより
義歯床用レジンを重合硬化させ、冷却後、掘り出し、研
磨する工程で行われている。
【0003】義歯床用レジンの加熱重合方法としては、
沸騰水中で加熱する湿熱重合法,乾熱重合装置を使用す
る乾熱重合法,電子レンジのマイクロ波で加熱するマイ
クロ波重合法等が採用されている。しかし、湿熱重合方
法や乾熱重合方法の場合には、熱伝導によりフラスコの
外側から加熱されるためフラスコの外側に近い部分から
義歯床用レジンの重合が開始してしまい、またマイクロ
波重合法の場合には石膏模型や埋没用石膏中の残留水分
量によって昇温速度が異なってしまうので義歯床用レジ
ンの重合開始部位が不規則となっている。更に、義歯床
部分の厚みや形状は複雑で各個人によっても異なるた
め、義歯床用レジンの重合開始部位をコントロールする
ことは不可能である。その結果、重合が遅れて始まった
部位には義歯床用レジンの重合収縮等に起因する適合精
度の低下が生じている。
【0004】有床義歯においては、口腔内に接する部分
である粘膜面側の適合精度が最も重要であり、この部分
の適合精度が劣るものは患者の口腔内に適合せず疼痛を
起こしたり脱落したりする。そのため、義歯床用レジン
の重合を義歯の粘膜面側から開始させて適合精度を向上
させる試みがなされている。特開平4−266754号
公報では、予めフラスコを義歯床用レジンの重合温度以
上であって、且つ石膏模型の粘膜面側を人工歯側より高
温にしておき、これに餅状の義歯床用レジンを填入し、
熱重合させる方法が開示されている。しかし、予め2種
の温度にフラスコを加熱しておくには大きな設備が必要
であることや、加熱されたフラスコの取扱いには火傷等
の危険性が伴うことや、また石膏模型に接した義歯床用
レジンの重合が急激に進行するため硬化物中に気泡が入
ったり、充分な量の義歯床用レジンが填入されない間に
硬化が進行してしまったりする等の問題点があった。ま
た、特開平1−256954号公報では、アルミニウム
粉末が混入された石膏で作製した石膏模型を用いてマイ
クロ波重合法を行うことによって、石膏模型が選択的に
加熱されて義歯床用レジンを粘膜面側から重合させるこ
とができるので精度の良い有床義歯が作製できることが
開示されている。しかし、この開示はマイクロ波重合法
専用であり、湿熱重合法や乾熱重合法には応用できない
という問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を解決し、特に有床義歯の作製において湿熱
重合法,乾熱重合法,マイクロ波重合法等の何れの重合
方法を用いた場合でも、安全且つ簡便な操作で義歯床用
レジンの重合開始位置を自由にコントロールできる方法
によって義歯床用レジンを粘膜面側から重合開始させ
て、適合精度に優れた有床義歯を作製できる方法を開発
することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を
解決すべく鋭意研究の結果、義歯床用レジンが、粉剤と
してメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導
体と有機過酸化物とを含み、液剤がモノメタクリル酸エ
ステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライド
とを含む構成の場合に、義歯床用レジンの硬化反応であ
るバルビツール酸誘導体と第4級アンモニウムクロライ
ドとの反応が、鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩によっ
て急速に促進され重合速度が加速されることを究明し、
有床義歯を作製する場合に、餅状の義歯床用レジンを填
入する前の石膏模型表面に、この鉄塩,銅塩,若しくは
コバルト塩の1種又は2種以上を存在させておくことに
よって義歯床用レジンを粘膜面側から重合開始させるこ
とができ、その結果、粘膜面側の適合精度に優れた有床
義歯の作製が可能になることを究明して本発明を完成し
たのである。
【0007】
【発明の実施の形態】即ち、本発明に係る有床義歯の作
製方法は、石膏模型上で蝋義歯を作製し、埋没用石膏を
用いてフラスコ内に石膏模型と共に蝋義歯を埋没し、流
蝋して得た義歯床部分の空隙に餅状の義歯床用レジンを
填入し、加熱重合して有床義歯を作製する方法におい
て、義歯床用レジンを填入する前の石膏模型表面に鉄
塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含
む塗布材を塗布すると共に、義歯床用レジンとして、メ
タクリル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有
機過酸化物とを含む粉剤と、モノメタクリル酸エステル
単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライドとを含
む液剤、とから成る義歯床用レジンを用いることを特徴
とするものである。
【0008】具体的な有床義歯の作製手順に基づいて、
更に詳細に説明すると、有床義歯の作製は、 (1) 印象材を使用して口腔内の印象採得を行う。 (2) 得られた印象に石膏を注入して硬化させ、患者の口
腔内を再現した石膏模型を作製する。 (3) この石膏模型上で義歯床部分は蝋を用いて形成する
と共に、人工歯を配列して蝋義歯を作製する。 (4) 埋没用石膏を用いてフラスコ内に石膏模型ごと蝋義
歯を埋没させる。 (5) 埋没用石膏が硬化したら、蝋義歯付き石膏模型の部
分でフラスコを分割して、蝋義歯の蝋部分(義歯床部
分)を温湯等で軟化除去して流蝋させ、義歯床部分の陰
型空隙を得る。 (6) 義歯床部分の空隙を形成している石膏模型面と埋没
用石膏面とにレジン分離剤を塗布する。 (7) 義歯床の粘膜面側となる石膏模型表面に鉄塩,銅
塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布
材を筆等を用いて塗布する。 (8) 粉剤がメタクリル酸エステル重合体とバルビツール
酸誘導体と有機過酸化物とを含み、液剤がモノメタクリ
ル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロ
ライドとを含む義歯床用レジンを混合練和して餅状化さ
せる。 (9) 餅状となった義歯床用レジンを義歯床部分の空隙内
に填入して、分割していたフラスコを一体化させる。 (10) 義歯床用レジンを填入したフラスコを、湿熱重合
法の場合は沸騰水中に入れ,乾熱重合法の場合は乾熱重
合装置を使用し,マイクロ波重合法の場合は電子レンジ
を使用して加熱し、義歯床用レジンを加熱重合させる。 (11) 冷却後、埋没用石膏を破壊して人工歯を保持した
状態で重合硬化した義歯床用レジンを掘り出す。 (12) 付着している石膏を電気エンジンを使用して除去
し、仕上げ研磨する。 の工程で行われ、適合精度に優れた有床義歯が完成する
のである。
【0009】即ち、本発明方法は、従来の有床義歯の作
製工程の中に、新たに前記(7)の義歯床用レジンを填入
する前の石膏模型表面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト
塩の1種又は2種以上を含む塗布材を塗布する工程を取
り入れたこと、前記(8)の工程において、義歯床用レジ
ンとしてメタクリル酸エステル重合体とバルビツール酸
誘導体と有機過酸化物とを含む粉剤と、モノメタクリル
酸エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロラ
イドとを含む液剤とから成る義歯床用レジンを用いたこ
と、を特徴とするものである。
【0010】前述した如く、本発明に係る有床義歯の作
製方法に使用される義歯床用レジンは、硬化反応がバル
ビツール酸誘導体と第4級アンモニウムクロライドとの
反応で行われる粉剤と液剤との組み合わせから成るもの
であることが必要である。具体的には、粉剤が、メタク
リル酸エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過
酸化物とを含むものであり、液剤が、モノメタクリル酸
エステル単量体と架橋剤と第4級アンモニウムクロライ
ドとを含むものが使用される。
【0011】粉剤の構成成分であるメタクリル酸エステ
ル重合体としては、メタクリル酸メチル重合体又はメタ
クリル酸メチルを主成分とする共重合体が主に用いられ
る。メタクリル酸メチルを主成分とする共重合体として
は、メタクリル酸メチル・メタクリル酸エチル共重合
体,メタクリル酸メチル・メタクリル酸ブチル共重合
体,メタクリル酸メチル・トリメタクリル酸トリメチロ
ールプロパン共重合体,メタクリル酸メチル・スチレン
共重合体などが挙げられ、メタクリル酸メチル重合体と
これ等のメタクリル酸メチルを主成分とする共重合体と
を混合して使用することができる。
【0012】更に餅状化時間や餅状化義歯床用レジンの
操作性を調整するために、メタクリル酸メチル重合体,
メタクリル酸メチルを主成分とする共重合体,又はメタ
クリル酸メチル重合体にメタクリル酸メチルを主成分と
する共重合体を加えた混合物にメタクリル酸メチル以外
のメタクリル酸エステル重合体の1種又は2種以上を混
合することができる。メタクリル酸メチル以外のメタク
リル酸エステル重合体としては、メタクリル酸エチル重
合体,メタクリル酸ブチル重合体などが挙げられ、メタ
クリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル共重合体と
しては、メタクリル酸エチル・トリメタクリル酸トリメ
チロールプロパン共重合体などが挙げられる。
【0013】粉剤に配合されるバルビツール酸誘導体と
しては、第5の位置がアルキル基又はアリール基で置換
されたバルビツール酸誘導体が好ましく、1,3,5−トリ
メチルバルビツール酸、1,3,−ジメチル−5−フェニル
バルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビ
ツール酸、5−エチルバルビツール酸、5−n−ブチルバ
ルビツール酸、5−フェニルバルビツール酸、1−ベンジ
ル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−
5−エチルバルビツール酸などが挙げられるが、中で
も、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸、5−n−
ブチルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチル
バルビツール酸は特に好ましい。これ等は1種又は2種
以上を混合して使用しても良い。また、これ等のバルビ
ツール酸誘導体の添加量はメタクリル酸エステル重合体
100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましい。添加量
が0.05重量部未満であるとマイクロ波が照射されたとき
の重合反応の促進効果が不充分となり硬化体が不均質に
なり内部気泡を生ずる恐れがあり、3重量部を超えると
第4級アンモニウムクロライドを含む液剤と混合された
ときに重合反応が早期に開始され、適当な操作時間が得
られないことがあり、また硬化体の耐水性が劣化する恐
れがある。
【0014】粉剤に配合される有機過酸化物としては、
ベンゾイルパーオキイサイド、4,4'−ジクロロベンゾイ
ルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキ
サイド、ジラウロイルパーオキサイドなどが挙げられる
が、特に好ましくはベンゾイルパーオキサイドであり、
これ等は夫々1種又は2種以上を混合して使用しても良
い。これ等の有機過酸化物の添加量は、メタクリル酸エ
ステル重合体100重量部に対して0.1〜2重量部が好まし
い。添加量が0.1重量部未満であるとマイクロ波が照射
され重合反応が開始されてから組成物全体の重合を連鎖
的に急速に進行させる能力が不充分となり、硬化体が不
均質となる。また、添加量が2重量部を超えると重合反
応時の発熱量が多くなり組成物の内部温度が著しく高く
なるためメタクリル酸メチル単量体の気化による気泡を
生じることがある。
【0015】その他、粉剤の成分には、更に「歯ぎん
色」を再現するために有機若しくは無機の着色顔料や着
色された繊維などを添加することができる。
【0016】液剤に用いられるモノメタクリル酸エステ
ル単量体にはメタクリル酸メチル単量体が主に用いられ
るが、粉剤と混合したときの餅状化時間や餅状化義歯床
用レジンの操作性を調整するために、メタクリル酸メチ
ル単量体以外のモノメタクリル酸エステル単量体を混合
して用いることができる。その他のモノメタクリル酸エ
ステル単量体としては、メタクリル酸エチル単量体,メ
タクリル酸ブチル単量体,メタクリル酸イソブチル単量
体,メタクリル酸2−エチルヘキシル単量体,メタクリ
ル酸シクロヘキシル単量体,メタクリル酸テトラヒドロ
フルフリル単量体などが挙げられ、これ等の1種又は2
種以上を混合して用いることができる。
【0017】液剤に配合される架橋剤としては、多官能
性メタクリレート、ジアリルフタレート又は多官能性メ
タクリレートにジアリルフタレートを加えた混合物が用
いられ、多官能性メタクリレートとしては、エチレング
リコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメ
タクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレー
ト、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ウレ
タン結合を含む多官能性メタクリレートなどが好適に用
いられ、これ等は夫々1種又は2種以上を混合して使用
しても良い。これ等の添加量は、モノメタクリル酸エス
テル単量体100重量部に対し0.1〜15重量部が好ましい。
0.1重量部未満であると重合反応速度が不充分となり、
硬化体が不均質になり易く、また架橋密度が不足し緻密
な構造とならないため変形し易くなる。15重量部を超え
ると重合収縮が大きくなり義歯の適合精度が悪くなる傾
向があり、更に硬化体が脆くなり破折し易くなる傾向が
ある。
【0018】液剤成分に配合される第4級アンモニウム
クロライドとしては、メタクリル酸エステル単量体に溶
解し易いものが好ましく、ドデシルトリメチルアンモニ
ウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウ
ムクロライド、ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニ
ウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロ
ライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライドな
どが挙げられるが、特に好ましくはジラウリルジメチル
アンモニウムクロライドである。これ等は1種又は2種
以上を混合して使用しても良い。これ等の第4級アンモ
ニウムクロライドの添加量としては、モノメタクリル酸
エステル単量体100重量部に対し0.05〜1重量部が好ま
しい。添加量が0.05重量部未満であるとバルビツール酸
誘導体との反応によるラジカル生成が充分に行われない
ため、マイクロ波が照射されたときの重合反応の促進効
果が不充分になり硬化体が不均質になり内部気泡を生ず
る恐れがある。また1重量部を超えると重合反応が早期
に開始され、適当な操作時間が得られないことがあり、
また硬化体の耐水性が劣化する傾向がある。
【0019】液剤成分には更に保存安定性のために重合
禁止剤として、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメ
チルエーテル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベゾフェノ
ン、2,4−ジメチル−6−タ−シャリ−ブチルフェノー
ル、ブチルヒドロキシトルエンなどが適宜添加可能であ
り、また紫外線防止剤なども添加可能である。
【0020】また、本発明に係る有床義歯の作製方法に
おいては、鉄塩,銅塩,コバルト塩の1種又は2種以上
を含む塗布材の石膏模型表面への塗布が義歯床用レジン
の硬化反応の促進に重要であり、これらの塩は溶媒中に
含有させて石膏模型面に筆等により塗布される。具体的
に使用される鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩として
は、塩化物,硝酸塩,硫酸塩,酢酸塩,アクリル酸塩,
メタクリル酸塩,その他有機酸の塩,アセチルアセトン
等との有機錯体が挙げられ、これら多価の金属化合物塩
は何れの価数のものでも良い。代表的な例として、銅塩
としては、塩化第二銅,硝酸銅,酢酸銅,アクリル酸
銅,メタクリル酸銅,アセチルアセトン銅等があり、ま
た鉄塩としては、塩化第二鉄,硝酸鉄,酢酸鉄,アクリ
ル酸鉄,メタクリル酸鉄,アセチルアセトン鉄等が、コ
バルト塩としては、塩化第二コバルト,硝酸コバルト,
酢酸コバルト,アクリル酸コバルト,メタクリル酸コバ
ルト,アセチルアセトンコバルト等が挙げられるが、中
でも塩化第二銅,アセチルアセトン銅,塩化第二鉄が好
ましく使用できる。
【0021】これらの鉄塩,銅塩,コバルト塩は石膏模
型面に筆等により塗布されるものであるから多数回塗り
重ねなくても良いように、その濃度は塗布材の溶媒100
重量部に対して0.005〜10重量部であることが好まし
い。0.005重量部未満ではバルビツール酸誘導体と第4
級アンモニウムクロライドの重合反応を促進する効果が
弱く、10重量部を超えると鉄塩,銅塩,若しくはコバル
ト塩自体の色調が義歯床に現れたり重合した義歯床が変
色したりする傾向が生じる。
【0022】また、これらの塩を含む塗布材に使用され
る溶媒としては、通常、水が用いられるが、必要に応じ
て増粘材などの塗布操作性の改善のための添加剤が含ま
れていても良い。また、鉄塩,銅塩,コバルト塩は、高
級アルコール,ハイドロカーボン,樹脂液,シリコーン
等の油状物に分散させたり、これにアルコール,クロロ
ホルム等に粘度調整を加えたものを塗布材として用いて
も良い。その他、一般に有床義歯の作製においては、重
合後の義歯床用レジンを掘り出し易くするために、石膏
模型面や埋没用石膏面に予めアルギン酸ソーダを主成分
とする水溶液をレジン分離剤として塗布使用している
が、このような分離剤の水溶液中に、これらの塩類を含
有させて塗布材とすることも可能である。
【0023】なお、この塗布材は、石膏模型面に筆等に
より塗布された際に液粘度によって塗布層の厚みに差異
が生じることが考えられるが、通常1〜70μmの厚さに
塗布した場合が適合精度に良好な結果が得られた。
【0024】本発明に係る有床義歯の作製方法は、湿熱
重合,乾熱重合,マイクロ波重合の何れの重合方法にも
適用可能であり、使用されるフラスコとしては、分割し
て餅状の義歯床用レジンを填入し万力等で加圧するタイ
プ(填入加圧型と言う場合がある)のものや、分割型で
はあるがレジン注入装置を使用して注入口から餅状の義
歯床用レジンを加圧注入するタイプ(加圧注入型と言う
場合がある)のものなどがあるが何れのタイプでも良
く、また材質も真鍮のような金属製でもFRPのような
プラスチック製でも制限されることなく使用することが
できる。
【0025】
【実施例】以下、実施例及び比較例に基づいて、有床義
歯の作製を行い適合精度の比較を行った。 実施例1 表1に示すように、粉剤としてメタクリル酸メチル重合
体:100重量部,1−シクロヘキシル−5−エチルバル
ビツール酸:1重量部,ベンゾイルパーオキサイド:1
重量部を配合し、液剤としてメタクリル酸メチル単量
体:100重量部,エチレングリコールジメタクリレー
ト:0.5重量部,ジラウリルジメチルアンモニウムクロ
ライド:0.5重量部を配合して、義歯床用レジンを調整
した。また塗布材として、水:100重量部,アルギン酸
ソーダ:5重量部,アセチルアセトン銅:1重量部を調
整した。
【0026】《適合試験》 1)石膏模型は、上顎無歯顎模型作製用シリコーン枠
(ニッシン株式会社製,商品名:シリコーン型402U)
に、模型用超硬石膏(株式会社ジーシー製,商品名:ニ
ューフジロック)を指定混水比で練和して注入して2個
の石膏模型を作製し、一方の石膏模型は有床義歯の作製
に使用し、もう一方の石膏模型は完成したマスター模型
1として有床義歯の適合試験に使用した。 2)石膏模型上でパラフィンワックス(株式会社ジーシ
ー製,商品名:パラフィンワックス)を用いて義歯床部
分を形成して人工歯3を配列して蝋義歯を作製した。 3)埋没用石膏(株式会社ジーシー製,商品名:アドバ
ストーン)を用いて、石膏模型と蝋義歯とをフラスコ内
に埋没した。なお、フラスコは、湿熱重合用の填入加圧
型真鍮製フラスコ,湿熱重合用の加圧注入型真鍮製フラ
スコ,マイクロ波重合用の填入加圧型FRP製フラス
コ,マイクロ波重合用の加圧注入型FRP製フラスコの
何れかを使用することとし、使用したフラスコの種類は
表1中に示した。 4)埋没用石膏が硬化後、蝋義歯付き石膏模型の部分で
フラスコを分割して流蝋槽中で流蝋した。 5)義歯床部分の蝋が除去されてできた空隙を形成して
いる石膏模型面と埋没用石膏面にレジン分離剤(株式会
社ジーシー製,商品名:アクロセップ)を塗布した。 6)石膏模型面には各実施例と比較例に示した塗布材を
筆により塗布した。 7)各実施例と比較例に示した粉剤と液剤とから成る義
歯床用レジンを重量比で10:4.3(粉剤:液剤)の割合
で混合練和して餅状化し、フラスコ内の義歯床部分空隙
内に填入した。なお、填入はフラスコの使用方法に従っ
て填入加圧方式又は加圧注入方式で行った。 8)義歯床用レジンを填入したフラスコを湿熱重合法の
場合は70℃で30分加熱後100℃で60分間加熱し、マイク
ロ波重合法の場合は電子レンジ(周波数2450MHz,高周
波出力500W)を使用して3分間加熱し、義歯床用レジン
を加熱重合した。 9)室温放冷60分間,水冷30分間の条件で冷却後、埋没
用石膏を破壊して人工歯を保持した状態で重合硬化して
いる義歯床用レジン2を掘り出した。 10)バリ及び付着した石膏を電気エンジンを使用して除
去し有床義歯を作製し、37℃水中に1日間保管した。 11)得られた人工歯3に重合硬化している義歯床用レジ
ン2が固着されている有床義歯をほぼ無圧でマスター模
型1に嵌め込み、辺縁を即時重合レジン(株式会社ジー
シー製,商品名:ユニファスト)で固定し、図1で示す
X−X線部で切断し、投影機(株式会社キーエンス製マ
イクロスコープ)で図2に示す粘膜面側の5点(A,
B,C,D及びEの各点)の隙間量を測定し、適合精度
を比較した。結果は表1に示した。
【0027】実施例2〜10、比較例1〜2 実施例2〜10及び比較例1〜2は、義歯床用レジン,
塗布材,フラスコの種類,重合方法を表1に示したもの
に変えた以外は実施例1と同様にして適合試験を実施し
た。結果は表1にまとめて示した。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】実施例と比較例の試験結果より明らかな
ように、本発明方法によれば、従来の湿熱重合方法やマ
イクロ波重合方法と比べて、優れた適合精度を有する有
床義歯の作製が可能となった。また、実施例7〜10は
義歯床用レジン,塗布材が同じで重合方法とフラスコの
種類とが異なる例であるが、実施例9,10のように加
圧注入型のフラスコを用いた場合に格段に適合精度が向
上した有床義歯が作製できることが判明した。
【0030】このように本発明に係る有床義歯の作製方
法によれば、義歯床用レジンが粉剤としてメタクリル酸
エステル重合体とバルビツール酸誘導体と有機過酸化物
とを含み、液剤がモノメタクリル酸エステル単量体と架
橋材と第4級アンモニウムクロライドとを含む構成の場
合に、餅状の義歯床用レジンを填入する前の石膏模型表
面に鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以
上を含んだ塗布材を一層塗布しておくことよって義歯床
用レジンを粘膜面側から重合を開始させることができ、
簡便な操作で適合精度に優れた有床義歯の作製が可能に
なった。その結果、患者は、口腔粘膜面に良好に適合し
脱落の恐れのない満足した有床義歯を装着できるという
非常に優れた効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】適合精度の試験に使用した上顎無歯顎模型の平
面図である。
【図2】適合試験における隙間測定個所を示す第1図の
X−X線部で切断した模型と有床義歯の切断面図であ
る。
【符号の説明】
1 マスター模型 2 重合硬化している義歯床用レジン 3 人工歯 A〜E 模型と有床義歯との隙間測定箇所

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石膏模型上で蝋義歯を作製し、埋没用石
    膏を用いてフラスコ内に石膏模型と共に蝋義歯を埋没
    し、流蝋して得た義歯床部分の空隙に餅状の義歯床用レ
    ジンを填入し、加熱重合して有床義歯を作製する方法に
    おいて、 義歯床用レジンを填入する前の石膏模型表面に鉄塩,銅
    塩,若しくはコバルト塩の1種又は2種以上を含む塗布
    材を塗布すると共に、 義歯床用レジンとして、メタクリル酸エステル重合体と
    バルビツール酸誘導体と有機過酸化物とを含む粉剤と、
    モノメタクリル酸エステル単量体と架橋剤と第4級アン
    モニウムクロライドとを含む液剤、とから成る義歯床用
    レジンを用いることを特徴とする有床義歯の作製方法。
  2. 【請求項2】 鉄塩,銅塩,若しくはコバルト塩の1種
    又は2種以上を含む塗布材として、溶媒100重量部に対
    して0.005〜10重量部の濃度の塗布材を使用する請求項
    1に記載の有床義歯の作製方法。
  3. 【請求項3】 義歯床用レジンの粉剤として、メタクリ
    ル酸エステル重合体100重量部に対して、バルビツール
    酸誘導体0.05〜3重量部、有機過酸化物0.1〜2重量部
    から成る組成物を使用する請求項1又は2に記載の有床
    義歯の作製方法。
  4. 【請求項4】 義歯床用レジンの粉剤において、バルビ
    ツール酸誘導体が1−ベンジル−5−フェニルバルビツ
    ール酸,5−n−ブチルバルビツール酸,1−シクロヘ
    キシル−5−エチルバルビツール酸から選ばれる1種又
    は2種以上であり、有機過酸化物がベンゾイルパーオキ
    サイドであるものを使用する請求項1から3までのいず
    れか1項に記載の有床義歯の作製方法。
  5. 【請求項5】 義歯床用レジンの液剤として、モノメタ
    クリル酸エステル単量体100重量部に対し、架橋剤が0.1
    〜15重量部、第4級アンモニウムクロライドが0.05〜1
    重量部から成る組成物を使用する請求項1から4までの
    いずれか1項に記載の有床義歯の作製方法。
  6. 【請求項6】 義歯床用レジンの液剤において、モノメ
    タクリル酸エステル単量体がメタクリル酸メチル単量体
    であるか、又はメタクリル酸メチル単量体とメタクリル
    酸メチル単量体以外のモノメタクリル酸エステル単量体
    との混合物であり、架橋剤が多官能性メタクリレート、
    ジアリルフタレート又は多官能性メタクリレートにジア
    リルフタレートを加えた混合物であり、第4級アンモニ
    ウムクロライドがジラウリルジメチルアンモニウムクロ
    ライドであるものを使用する請求項1から5までのいず
    れか1項に記載の有床義歯の作製方法。
  7. 【請求項7】 流蝋して得た義歯床部分の空隙に餅状の
    義歯床用レジンを填入するフラスコとして、加圧注入型
    のフラスコを用いる請求項1から6までのいずれか1項
    に記載の有床義歯の作製方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002085428A (ja) * 2000-09-14 2002-03-26 Sanesu Sekko Kk 歯科用石膏組成物
JP2009102640A (ja) * 2007-10-22 2009-05-14 Heraeus Medical Gmbh 自己硬化性プラスチックのための開始剤系、その使用および該開始剤系を含有する骨セメント組成物

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