JPH10147847A - 耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼 - Google Patents

耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼

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JPH10147847A
JPH10147847A JP30479996A JP30479996A JPH10147847A JP H10147847 A JPH10147847 A JP H10147847A JP 30479996 A JP30479996 A JP 30479996A JP 30479996 A JP30479996 A JP 30479996A JP H10147847 A JPH10147847 A JP H10147847A
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Japan
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steel
delayed fracture
fracture resistance
less
strength
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JP30479996A
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English (en)
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Tatsuo Maeda
龍男 前田
Yutaka Moriya
豊 森谷
Tetsuo Shiragami
哲夫 白神
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】1400N/mm2 以上の引張強さを有し、か
つ耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼あるいは機械
構造用鋼であって、さらにマルエージ鋼のような焼入れ
後の長時間の時効処理を省略し、製造コストが低く、か
つ工業規模での生産が可能な鋼材を提供する。 【解決手段】本発明の鋼は、重量%で、C:0.2〜
0.35%と、Si:0.1%以下と、Mn:0.1%
以下と、P:0.01%以下と、Ti:0.015〜
0.055%と、B:0.0005〜0.003%と、
Ni:7〜12%と、sol.Al:0.01〜0.1%
と、N:0.008%以下とを含有し、残部がFe及び
不可避的不純物からなる耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に高強度ボルト
用鋼あるいは機械構造用鋼などに用いられる耐遅れ破壊
性に優れた引張強さ:1400N/mm2 以上の高強度
鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、高強度機械構造用鋼では、例えば
ボルトとして、橋梁、建物、建設機械、自動車に多く使
用されている。この種のボルトとして、ISO規格に規
定された引張強さが1200N/mm2 級の強度区分1
2.9ボルトさらに引張強さが1400N/mm2 級の
強度区分14.9ボルトがある。しかしながら、どのよ
うな用途においても、引張強さが1200N/mm2
超える鋼では遅れ破壊の危険性が増すことから、例えば
現在橋梁、建物に使用されているボルトの強度は111
0N/mm2 級が上限となっており、腐食環境がマイル
ドであり、遅れ破壊の発生の危惧されない用途、例えば
自動車のエンジン用ボルトとして、引張強さが1200
N/mm2 級のボルトが使用されている。
【0003】従来、使用されている機械構造用鋼とし
て、例えば、引張強さが1000N/mm2 級鋼では、
JIS G 4105に規定されているSCM440あるいはSC
M435などのクロムモリブデン鋼あるいはAISI1
0B30などのボロン鋼が用いられている。引張強さが
1200N/mm2 級ではJIS G 4103に規定されている
SNCM616などのニッケルクロムモリブデン鋼があ
るものの、2回の焼入れ処理が必要であることから、広
く使用されるに至っていない。
【0004】また、引張強さが1400N/mm2 級以
上の引張強さを有し、かつ耐遅れ破壊性に優れた鋼につ
いてはいくつかの提案がなされている。例えば、140
0N/mm2 級の高強度な鋼材として、マルエージ鋼が
知られている。マルエージ鋼は極低炭素の高ニッケル鋼
であり、コバルト、チタン、モリブデンを添加し、かつ
焼入れ処理後に長時間の時効処理を行い、鋼中に金属間
化合物を析出させることによって、強度を高めている。
また、この鋼は極低炭素であることから、耐遅れ破壊性
も比較的優れている。しかしながら、この鋼では、高価
なコバルトを使用するため、高価格になる。
【0005】これに対して、例えば、特開平6-158228号
公報では、コバルトを使用しないマルエージ鋼が開示さ
れているものの、この鋼では、Moが0.3〜3%添加
されていることから、十分な低価格が得られず、またA
lが0.01〜2%添加されていることから、連続鋳造
時にタンディシュのアルミナによるノズルの詰まりが生
じやすく生産性が劣り、広く使用されるに至っていな
い。
【0006】また、マルエージ鋼のような焼入れ後の長
時間の時効処理を行わない鋼材として、例えば、特公昭
60-14096号公報、特開平5-148580号公報、特開平6-1581
70号公報及び特開平6-25745 号公報が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公昭
60-14096号公報では、Moが多量に添加されており、十
分な低コスト化が得られていない。また、特開平5-1485
80号公報、特開平6-158170号公報及び特開平6-25745 号
公報ではSiとMnを低減することにより、焼入れ前の
加熱時の粒界酸化を防止し、粒界の強度を高めることに
よって、耐遅れ破壊性を高めているが、Si,Mnの含
有量の低減が十分でなく、耐遅れ破壊性の改善は不十分
である。また、特開平5-148580号公報ではNiの含有量
が0.2〜3%であり、特開平6-158170号公報及び特開
平6-25745 号公報ではNiが添加されておらず、焼入れ
組織中の残留オーステナイトの生成量が不十分であり、
かつ鋼中への水素の侵入を抑制する効果が得られないこ
とから、粒界に集積する水素量が高くなり、遅れ破壊の
発生を完全には防止することはできず、かつMoの含有
量が高く、十分な低コストが得られていない。
【0008】上記したように、これまでに開示された鋼
材では、耐遅れ破壊性と経済性の面から課題が残ってい
る。本発明の目的は、1400N/mm2 以上の引張強
さを有し、かつ耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルト用鋼
あるいは機械構造用鋼であって、さらにマルエージ鋼の
ような焼入れ後の長時間の時効処理を省略し、製造コス
トが低く、かつ工業規模での生産が可能な鋼材を提供す
ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決し目的を
達成するために、本発明は以下に示す手段を用いてい
る。 (1)本発明の鋼は、重量%で、C:0.2〜0.35
%と、Si:0.1%以下と、Mn:0.1%以下と、
P:0.01%以下と、Ti:0.015〜0.055
%と、B:0.0005〜0.003%と、Ni:7〜
12%と、sol.Al:0.01〜0.1%と、N:0.
008%以下とを含有し、残部がFe及び不可避的不純
物からなる耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼である。 (2)本発明の鋼は、重量%で、S:0.005〜0.
03%をさらに含有することを特徴とする上記(1)に
記載の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼である。 (3)本発明の鋼は、重量%(以下%は重量%を示す)
で、Cu:0.01〜0.3%、Cr:0.01〜0.
3%、Mo:0.01〜0.3%、Nb:0.01〜
0.05%、V:0.01〜0.1%及びCa:0.0
01〜0.005%の群から選択された1種または2種
以上をさらに含有することを特徴とする上記(2)に記
載の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼である。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明者は、1400N/mm2
以上の引張強さを有し、かつ耐遅れ破壊性に優れ、さら
にマルエージ鋼のような焼入れ後の長時間の時効処理を
省略することが可能な高強度鋼を提供するために、鋼の
化学成分と引張強さ及び耐遅れ破壊性との関係について
鋭意研究を重ねた。
【0011】その結果、以下に示すような知見を得た。 (1)Si,Mnそれぞれの含有量を0.1%以下に低
減し、焼入れ前の加熱時の粒界酸化を防止し、かつ粒界
への偏析を軽減し、粒界強度の低下を防止することによ
って、耐遅れ破壊性を顕著に向上させることができる。 (2)TiとBを同時に添加する。すなわち、上記
(1)のように、Mnを低減すると結晶粒の粗大化を招
くことから、本発明においては、Tiを添加することに
よって、Ti窒化物により結晶粒の細粒化を達成し、耐
遅れ破壊性の向上を達成しようとするものである。さら
に、Ti窒化物を析出させることによって、鋼中の固溶
N量を低減し、鋼中の固溶B量を確保することができ、
この固溶Bは旧オーステナイト粒界に偏析することによ
って、フェライト変態を抑制し、鋼の焼入れ性を高める
ことができる。さらに、この固溶Bの旧オーステナイト
粒界への偏析によって、粒界強度を顕著に低めるPの偏
析量を低減することができる。上記のように、TiとB
を同時に添加することによって、耐遅れ破壊性を顕著に
向上させることができる。 (3)Si,Mnそれぞれの含有量の低減とTi,Bの
添加によって、微細な焼入れ・焼き戻し組織であるマル
テンサイト組織を得ることができ、これにより、耐遅れ
破壊性に優れた鋼材を製造することができる。
【0012】ついで、本発明者は、さらに高い引張強さ
を得て、かつ耐遅れ破壊性に優れた鋼材を得る場合に、
Sを添加する方法が有効な手段であることを見出だし
た。すなわち従来、Sは旧オーステナイト粒界へ偏析す
る元素であるとともに、MnSを生成し、このMnSは
熱間圧延によって、圧延方向に展伸することによって、
鋼材使用時に応力集中が生じて、耐遅れ破壊性を劣化さ
せることが知られており、例えば特開平3-6352号公報な
どのように、耐遅れ破壊性を高める方法として、Sを低
減する方法が開示されている。
【0013】しかし、本発明者は、従来の常識を覆し、
Mn量を0.1%以下に制御して、MnSの析出は回避
できるとともに、さらに、適正なTi,Sの添加量と適
正な熱間圧延方法によって、熱間圧延後の冷却時にSを
微細なTiSあるいはTi422 として析出させ
て、旧オーステナイト粒界へのSの偏析が回避できるこ
とを見出だした。また、TiSあるいはTi422
は焼入れ前加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制
し、その後のマルテンサイト組織を微細にし、耐遅れ破
壊性の向上に顕著に寄与することや、マルテンサイト中
のTiSあるいはTi422 はマルテンサイトの強
化に寄与し、高い引張強さを得ることができることも見
出だした。
【0014】以上の知見に基づき、本発明者は、Siと
Mnの含有量を低減し、TiとBを同時に添加し、さら
にSを添加するようにして、耐遅れ破壊性に優れた高強
度鋼の化学成分を具体化し、その化学成分組成範囲を特
定することにより、1400N/mm2 以上の引張強さ
を有し、かつ耐遅れ破壊性に優れ、さらにマルエージ鋼
のような焼入れ後の長時間の時効処理を省略することが
可能な本発明の鋼を見出だし、本発明を完成させた。
【0015】すなわち、本発明は鋼組成を下記範囲に限
定することにより、1400N/mm2 以上の引張強さ
を有し、かつ耐遅れ破壊性に優れ、さらにマルエージ鋼
のような焼入れ後の長時間の時効処理を省略し、製造コ
ストが低く、かつ工業規模での生産が可能な遅れ破壊特
性に優れた高強度鋼を提供することができる。
【0016】以下、本発明の成分添加理由、成分限定理
由について説明する。 (1)成分組成範囲 C:0.2〜0.35% Cは焼入れ・焼戻しによって、鋼の強度を高めるために
必須の元素であり、0.2%以上のCを含有せしめる必
要がある。一方、0.35%を越える添加では、靭性が
低下し、かつ粒界の強度を低下せしめて、耐遅れ破壊性
の劣化を招くために、Cの上限値は0.35%である。
【0017】Si:0.1%以下 Siは不可避的不純物であり、その含有量が0.1%を
越えると、粒界に偏析し、かつ焼入れ前のオーステナイ
ト加熱時に粒界酸化を助長することから、その上限値は
0.1%である。
【0018】Mn:0.1%以下 Mnは焼入れ時のオーステナイト加熱時に、オーステナ
イト粒界でPと競合偏析することによって、焼入れ・焼
き戻し組織での旧オーステナイト粒界強度を低下させ
る。また、鋼中に存在するSと結合し、熱間圧延時に伸
長することによって、耐遅れ破壊特性を劣化させる。従
って、Mnの含有量は可能な限り低く抑制するのが好ま
しいため、0.1%以下である。
【0019】P:0.01%以下 Pは不可避的不純物元素であり、かつオーステナイト加
熱時に粒界に偏析して、粒界強度を低下させ、顕著に耐
遅れ破壊特性を劣化させる。このため、その上限値は
0.01%である。
【0020】Ti:0.015〜0.055% 不可避的不純物元素であるNと結合し、B窒化物の生成
を抑制し、固溶Bを十分に確保することによって、焼入
れ性を確保し、かつTiN,TiCの生成によって、オ
ーステナイトの細粒化に寄与する。従って、その下限値
は0.015%である。ただし、Tiの添加量が過剰に
なるとむしろ靭性を劣化させることから、その上限値は
0.055%である。
【0021】B:0.0005〜0.003% Bは鋼中に固溶Bとして、存在することによって、鋼の
焼入れ性を顕著に高める。この効果を得るために0.0
005%以上のBの添加が必要である。ただし、過剰な
Bの添加は、オーステナイト粒界でのB炭硼化物を生成
し、粒界強度を低下させることによって、耐遅れ破壊特
性を劣化させる。従って、その上限値は0.003%で
ある。
【0022】Ni:7〜12% Niは鋼の焼入れ性を向上させるとともに、腐食環境下
での水素侵入を抑制し、さらに焼入れ・焼き戻し組織中
の残留オーステナイト量を増加させて、鋼中に侵入した
水素を有効にトラップし、粒界への水素の量を低減させ
ることによって、耐遅れ破壊特性を向上させる。7%未
満の添加では所望の効果が得られず、一方12%を越え
る添加は上記の効果を飽和させるとともに、製造コスト
の顕著な上昇を招くことになる。従って、その含有量は
7〜12%である。
【0023】sol.Al:0.01〜0.1% Alは脱酸元素であり、鋼の延性と靭性を確保する上で
必要な元素であり、0.01%未満では所望の効果が得
られず、一方0.1%を越えて含有させても、その効果
が飽和し、あるいは逆に延性と靭性の低下を招くことに
なる。このため、Alの含有量は0.01〜0.1%で
ある。
【0024】N:0.008%以下 Nは不可避的不純物元素であり、耐遅れ破壊特性と靭性
を確保する上で極力低減する必要がある。Nが0.00
8%を越えるとB窒化物が生成し、固溶B量が減少する
ことによって、焼入れ性が低下する。従って、Nの上限
量は0.008%である。
【0025】本発明の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼に
は、上記の成分にさらにSを添加してもよい。また、S
の添加とともにCu、Cr、Mo、Nb、V及びCaの
群から選択された1種または2種以上をさらに含有して
もよい。これらの元素の作用とそれぞれの望ましい添加
量は以下の通りである。
【0026】S:0.005〜0.03% 上記したように本発明では、Mn量を0.1%以下に制
御していることから、MnSの析出を抑制するととも
に、熱間圧延後の冷却時に微細なTiSあるいはTi4
22 を析出させて、焼入れ前加熱時のオーステナイ
ト粒の粗大化を抑制し、マルテンサイト組織を微細に
し、耐遅れ破壊性の向上に顕著に寄与する。さらにマル
テンサイト中のTiSあるいはTi422 はマルテ
ンサイトを強化し、高い引張強さを得ることができる。
Sの添加量が0.005%未満では、所望の効果が得ら
れず、一方、Sの添加量が過剰になると、固溶Sが粒界
に偏析することによって、粒界強度が低下し、耐遅れ破
壊性が劣化することになる。このため、Sの含有量は
0.005〜0.03%とした。
【0027】Cu:0.01〜0.3% Cuは焼入れ性を高める元素であり、かつ鋼の腐食速度
を低下させることにより、鋼中に侵入する水素量を低減
する効果がある。Cuの添加量が0.01%未満では所
望の効果が得られず、0.3%を越える添加では、熱間
加工性が低下し、製品の表面性状が劣化する。従って、
Cuの含有量は0.01〜0.3%である。
【0028】Cr:0.01〜0.3% Crも焼入れ性を高める元素であり、Crの添加量が
0.01%未満では所望の効果が得られず、一方0.3
%を越える添加では、焼入れ前のオーステナイト加熱時
に粒界酸化を助長し、耐遅れ破壊性の劣化を招くため
に、その上限値は0.3%である。
【0029】Mo:0.01〜0.3% Moは焼入れ性を高める元素であり、かつ焼入れ・焼戻
し組織の靭性を顕著に高める元素である。Moの添加量
が0.01%未満では、所望の効果が得られない。一
方、0.3%を越えると靭性の低下を招くことになる。
従って、Moの含有量は0.01〜0.3%である。
【0030】Nb:0.01〜0.05% NbはVと同様に鋼の細粒化を図り、焼戻し軟化抵抗を
得る上で有効な元素である。しかし、0.01%未満で
は所望の効果が得られず、0.05%を越える添加で
は、鋼の靭性が損なわれる。従って、Nbの含有量は
0.01〜0.05%である。
【0031】V:0.01〜0.1% Vは鋼の細粒化を図り、また焼き戻し軟化抵抗を得る上
で有効な元素である。しかし、0.01%未満では所望
の効果が得られず、0.1%を越える添加では、鋼の靭
性が損なわれる。従って、Vの含有量は0.01〜0.
1%である。
【0032】Ca:0.001〜0.005% Caは脱酸元素であり、燐化物あるいは硫化物を形成
し、オーステナイト加熱時に粒界に偏析するP量あるい
はS量の低減に有効であり、顕著に耐遅れ破壊特性を向
上させる。Caの添加量が0.001%未満では所望の
効果が得られず、0.005%を越える添加では、靭性
の低下を招くことになる。従って、Caの含有量は0.
001〜0.005%である。
【0033】上記の成分範囲に調整することにより、1
400N/mm2 以上の引張強さを有し、かつ耐遅れ破
壊性に優れ、さらにマルエージ鋼のような焼入れ後の長
時間の時効処理を省略し、製造コストが低く、かつ工業
規模での生産が可能な遅れ破壊特性に優れた高強度鋼を
得ることが可能となる。以下に本発明の実施例を挙げ、
本発明の効果を立証する。
【0034】
【実施例】表1に示す化学組成の150kgf鋼塊を溶
製し、分塊圧延によって、116mm角のビレットを製
造した。その後、これらのビレットを980〜1180
℃に加熱したのち、粗圧延を行い、900℃以上の温度
にて仕上げ圧延を行った後、830〜870℃の温度で
巻き取り、12.7mm径の線材コイルを製造した。こ
の12.7mm径の線材コイルを11.79mm径に冷
間引き抜きした後、多段フォーマによる冷間鍛造とその
後の冷間転造によって、首下長さが95mmのM12ボ
ルトを製作した。これらの化学組成の異なるM12ボル
トを860〜920℃で30分間加熱した後、水焼入れ
を行い、その後200〜600℃で30分間の焼戻しを
行った。
【0035】それぞれの化学組成のボルトを0.2%耐
力と等しい軸力で締め付けた後、2種類の腐食環境での
遅れ破壊試験を行い、耐遅れ破壊性を評価した。すなわ
ち、0.1規定塩酸水溶液中に200時間浸漬し、それ
ぞれの化学組成のボルトの各30本の中の破断した本数
の割合(%)を調べた。また、締め付けたボルトを恒温
槽内に設置し、50℃の温度で、3.5%NaClを1
5時間噴霧した後、70℃で2時間乾燥した後、再度5
0℃の温度で、3.5%NaClを5時間噴霧し、その
後30℃で2時間乾燥するサイクルを1日の内に実施
し、このサイクルを6ケ月間繰り返して行い、それぞれ
の化学組成のボルトの各30本の中の破断した本数の割
合(%)を調べた。
【0036】表1において、No.1〜15は本発明鋼
であり、No.16〜26は比較鋼、No.27は従来
鋼であるJIS−SCM440である。表2に、遅れ破
壊試験に供したボルトの焼戻し温度と引張試験結果及び
2種類の腐食環境での遅れ破壊試験結果を示す。なお、
引張試験は、ボルトの軸部からJIS14号引張試験片
を採取し、平行部径が4mmであり、標点距離を20m
mとして、引張試験を行った。表2から明らかなよう
に、本発明鋼であるNo.1〜15は、適量のCの添加
によって、所望の引張強さが得られており、かつSi,
Mnの低減によって、粒界強度を高めることができ、耐
遅れ破壊性の顕著な向上が得られている。さらに、Ti
とBを同時に添加することによって、粒界強度を高める
ことができ、耐遅れ破壊性が顕著に向上している。ま
た、No.8、9では、S添加によって、TiS,Ti
422 の析出により、結晶粒の微細化が得られ、顕
著な耐遅れ破壊性の向上が得られている。No.10、
11、12はそれぞれCu,Cr,Moを添加すること
によって、鋼の焼入れ性を高めることができ、耐遅れ破
壊性を損なうことなく、高い引張強さが得られている。
また、No.13,14はそれぞれNb,Vを添加する
ことによって、鋼の焼戻し軟化抵抗を高めることがで
き、耐遅れ破壊性を損なうことなく、高い引張強さが得
られている。No.15はCaを添加することによっ
て、オーステナイト粒界へのPの偏析を軽減することが
でき、耐遅れ破壊性が向上している。
【0037】一方、比較鋼であるNo.16〜26を本
発明の実施例であるNo.1〜15と比較すると、N
o.16ではCの添加量が低いために、所望の引張強さ
が得られていない。また、No.17〜21は粒界強度
を低下させる原因となって、耐遅れ破壊性を低下させる
元素であるC,Si,Mn,P,Sそれぞれの添加量が
高く、耐遅れ破壊性が劣るものであり、No.22では
Tiの添加量が低すぎるために、TiNの生成量が少な
く、鋼中に残存した固溶NがB窒化物として析出し、固
溶Bによる焼入れ性を確保することが不十分になるとと
もに、結晶粒の粗大化による耐遅れ破壊性の劣化が生じ
ている。No.23ではNの含有量が高いために、N
o.21の場合と同様に、固溶Bによる焼入れ性を確保
することが不十分になるとともに、結晶粒の粗大化によ
る耐遅れ破壊性の劣化が生じている。No.24では、
Bの添加量が低く、十分なBによる焼入れ性が得られ
ず、所望の引張強さが得られていない。一方、No.2
5では、Bの含有量が高いために、粒界で炭硼化物を生
成することを原因として、粒界強度が低くなり、耐遅れ
破壊性が劣っている。No.26では、Niの含有量が
低いことを原因として、かつ鋼中に侵入する水素量が増
加することによって、耐遅れ破壊性が劣化している。ま
た、JIS SCM440鋼であるNo.27の耐遅れ
破壊性は、本発明鋼(No.1〜15)の耐遅れ破壊性
に比べ劣っている。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、鋼組成を特定すること
により、マルエージ鋼のような焼入れ後の長時間の時効
処理を省略し、通常の焼入れ・焼戻し処理によって、1
400N/mm2 以上の引張強さを有し、かつ耐遅れ破
壊性に優れた鋼材を提供することができる。従って、本
発明の鋼材を用いることにより、高強度ボルトなどの機
械構造用鋼を安価に提供することができるなど、産業上
極めて有用である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.2〜0.35%と、
    Si:0.1%以下と、Mn:0.1%以下と、P:
    0.01%以下と、Ti:0.015〜0.055%
    と、B:0.0005〜0.003%と、Ni:7〜1
    2%と、sol.Al:0.01〜0.1%と、N:0.0
    08%以下とを含有し、残部がFe及び不可避的不純物
    からなる耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼。
  2. 【請求項2】 鋼は、重量%で、S:0.005〜0.
    03%をさらに含有することを特徴とする請求項1に記
    載の耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼。
  3. 【請求項3】 鋼は、重量%で、Cu:0.01〜0.
    3%、Cr:0.01〜0.3%、Mo:0.01〜
    0.3%、Nb:0.01〜0.05%、V:0.01
    〜0.1%及びCa:0.001〜0.005%の群か
    ら選択された1種または2種以上をさらに含有すること
    を特徴とする請求項2に記載の耐遅れ破壊性に優れた高
    強度鋼。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2001062639A (ja) * 1999-08-20 2001-03-13 Kobe Steel Ltd 耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法

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JP2001062639A (ja) * 1999-08-20 2001-03-13 Kobe Steel Ltd 耐遅れ破壊性に優れた高強度ボルトおよびその製造方法

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