JPH10231908A - トロイダル式無段変速機用転動体およびその製造方法 - Google Patents

トロイダル式無段変速機用転動体およびその製造方法

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JPH10231908A
JPH10231908A JP3525397A JP3525397A JPH10231908A JP H10231908 A JPH10231908 A JP H10231908A JP 3525397 A JP3525397 A JP 3525397A JP 3525397 A JP3525397 A JP 3525397A JP H10231908 A JPH10231908 A JP H10231908A
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JP
Japan
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rolling
quenching
continuously variable
variable transmission
tempering
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JP3525397A
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English (en)
Inventor
Noriko Uchiyama
山 典 子 内
Nobuo Kino
野 伸 郎 木
Shinichiro Takemoto
本 真一郎 竹
Yoichi Watanabe
辺 陽 一 渡
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Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 転動部の温度上昇による硬さ低下を防止し、
転動面の陥没深さを大幅に低減して、転動寿命がより一
層向上した長寿命のトロイダル式無段変速機用転動体を
提供する。 【解決手段】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
転動体(入力ディスク5,出力ディスク9,パワーロー
ラ10)を用いたトロイダル式無段変速機1において転
動体を製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用い
て転動体形状に成形したあと浸炭焼入れ焼もどしまたは
浸炭窒化焼入れ焼もどしを施し、あるいは、浸炭焼入れ
または浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを
施し、転動面の研削加工を行った後に前記転動面にショ
ットピーニングを施し、その後仕上げ加工を行って、転
動面の表面硬さをHV800以上、表面粗さをRa0.
1μm以下とした転動体を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車などの車両
やその他の回転動力源等において、無段変速機として使
用することが可能であるトロイダル式(転がり式)無段
変速機を構成する転動体およびその製造方法に関するも
のである。
【0002】
【課題が解決しようとする課題】自動車などの車両にお
いて使用される変速機としては、従来の4段や5段など
の有段変速機に代えて、無段変速機を採用する試みもな
されており、数年前より一部実用化されて市販されてい
るものもある(“新型車解説書 NISSANマーチ”
平成4年1月 日産自動車株式会社 編集発行C−9頁
〜C−48頁)。
【0003】この無段変速機は、連続的に変速するた
め、燃費,動力性能が向上すること、変速ショックがな
いこと、等の特長を持っており、その構造によって、ベ
ルト式とトロイダル式の2つに大別される。
【0004】その中で、トロイダル式の無段変速機は、
図1に示すように、潤滑油を介して接触する金属製転動
体を用いた構造を有するものであって、このトロイダル
式無段変速機1は、入力軸2に接続したローディングカ
ム3および連結軸4を介して一体で回転する入力ディス
ク5,5を備えていると共に、歯車6,7を介して出力
軸8を回転させる出力ディスク9,9を備え、入力ディ
スク5,5と出力ディスク9,9との間にパワーローラ
10,10,10,10を設け、各パワーローラ10は
ボールベアリング11を介して各々支持体12により支
持された構造を有するものである。
【0005】そして、このトロイダル式無段変速機1で
は、入力ディスク5と出力ディスク9との間で挟まれた
パワーローラ10の傾きを変化させ、入力ディスク5と
出力ディスク9の相対回転速度を変えて変速しつつ、入
力軸2から出力軸8へと動力を伝達する仕組みになって
いる(特開平1−229158号など)。
【0006】このようなトロイダル式無段変速機1の金
属製転動体(5,9,10)においては、トルクを伝達
するために入力ディスク5に対しローディングカム3に
よって荷重を加えるようにしているので、駆動した際に
入力ディスク5とパワーローラ10との間、およびパワ
ーローラ10と出力ディスク9との間に、最大4GPa
程度にまで達する高い接触圧力が生じると共に、転動体
内部の深い位置に高いせん断応力が発生する。
【0007】そのため、従来の場合においては、機械構
造用鋼に浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼も
どし等の表面硬化処理を施すことによって表面硬さを確
保し、深い硬化層を得るようにすることもあった(特開
平7−71555号など)。しかしながら、入力ディス
ク5、出力ディスク9、パワーローラ10等の転動体の
接触面では高い接触圧力が生じ、スピンすべりによって
生じる発熱により転動体接触部の温度が上昇し、硬さが
低下することによって早期剥離、破損を起こし易く、転
動疲労寿命を低下させるという問題点があった。
【0008】
【発明の目的】本発明は、上記した課題にかんがみてな
されたものであって、機械構造用鋼を素材とし、浸炭焼
入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを施し、あ
るいは、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周
波焼入れ焼もどしを施し、転動面の研削加工を行った後
に前記転動面にショットピーニングを施し、その後仕上
げ加工を行うことにより、転動面の面粗度を低下させる
ことなく表面硬さを向上させることで、転動部の温度上
昇による硬さの低下を防止し、転動寿命がより一層向上
した長寿命のトロイダル式無段変速機用転動体を提供す
ることを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係わるトロイダ
ル式無段変速機用転動体は、請求項1に記載しているよ
うに、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を
用いたトロイダル式無段変速機において、機械構造用鋼
を素材とし且つ浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入
れ焼もどし後に転動面にショットピーニングが施されて
いて転動面の表面硬さがHV800以上、表面粗さがR
a0.1μm以下となっている構成としたことを特徴と
している。
【0010】同じく、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体は、請求項2に記載しているように、潤
滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を用いたト
ロイダル式無段変速機において、機械構造用鋼を素材と
し且つ浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波
焼入れ焼もどしした後に転動面にショットピーニングが
施されていて転動面の表面硬さがHV800以上、表面
粗さがRa0.1μm以下となっている構成としたこと
を特徴としている。
【0011】また、本発明に係わるトロイダル式無段変
速機用転動体の製造方法は、請求項3に記載しているよ
うに、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体を
用いたトロイダル式無段変速機において前記転動体を製
造するに際し、素材として機械構造用鋼を用いて成形し
たあと浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もど
しを施し、転動面の研削加工を行った後に前記転動面に
ショットピーニングを施し、その後仕上げ加工を行っ
て、転動面の表面硬さをHV800以上、表面粗さをR
a0.1μm以下とする構成としたことを特徴としてい
る。
【0012】同じく、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体の製造方法は、請求項4に記載している
ように、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転動体
を用いたトロイダル式無段変速機において前記転動体を
製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用いて浸炭
焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼も
どしを施し、転動面の研削加工を行った後に前記転動面
にショットピーニングを施し、その後仕上げ加工を行っ
て、転動面の表面硬さをHV800以上、表面粗さをR
a0.1μm以下とする構成としたことを特徴としてい
る。
【0013】そして、本発明に係わるトロイダル式無段
変速機用転動体の製造方法の実施態様においては、請求
項5に記載しているように、ショットピーニングに際し
て、平均硬さがHV700〜800で且つ平均粒径が
0.6mm以下のショットを用い、転動中の硬度低下を
抑制しなおかつ転動面の面粗度を低下させることなく転
動疲労寿命を向上させるようになすことができる。
【0014】本発明に係わるトロイダル式無段変速機用
転動体およびその製造方法において、機械構造用鋼とし
ては、JISに制定された機械構造用炭素鋼であるSC
や、機械構造用合金鋼であるSNC,SNCM,SC
r,SCM,SMn,SMnC等を用いることができ、
必要に応じて適宜の添加元素を適量含有させたものを用
いることができる。
【0015】また、場合によっては、表面硬化処理後に
バニシング加工を行うこともできる。このバニシング加
工は、ボールまたはローラを押しつけて転がすことによ
り材料を加工硬化させて強化し、予め、実働時と同等の
最大せん断応力τ0を実働時と同等の最大せん断応力深
さZo位置付近に発生させる条件(工具形状,押しつけ
荷重等)で行うことにより、最大せん断応力深さZo位
置近傍に微小な塑性変形および残留オーステナイトの加
工誘起変態を実働前に生じさせて最大せん断応力深さZ
o位置近傍を強化させて転動面の陥没による寸法精度の
低下を抑制して転動疲労寿命を向上させるようになすこ
とができる。
【0016】
【発明の作用】本発明に係わるトロイダル式無段変速機
用転動体は、潤滑油を介して接触する複数個の金属製転
動体を用いたトロイダル式無段変速機において、請求項
1に記載の発明では機械構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼
入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどし後に転動面
にショットピーニングが施されていて、また、請求項2
に記載の発明では機械構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼入
れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどし
した後に転動面にショットピーニングが施されていて、
それぞれ、転動面の表面硬さがHV800以上、表面粗
さがRa0.1μm以下となっていることを特徴とする
ものであり、また、本発明に係わるトロイダル式無段変
速機用転動体の製造方法は、潤滑油を介して接触する複
数個の金属製転動体を用いたトロイダル式無段変速機に
おいて前記転動体を製造するに際し、請求項3に記載の
発明では素材として機械構造用鋼を用いて成形したあと
浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを施
し、また、請求項4に記載の発明では素材として機械構
造用鋼を用いて成形したあと浸炭焼入れまたは浸炭窒化
焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを施し、それぞ
れ、転動面の研削加工を行った後に前記転動面にショッ
トピーニングを施し、その後仕上げ加工を行って、転動
面の表面硬さをHV800以上、表面粗さをRa0.1
μm以下とするようにしたことを特徴とするものである
が、このような構成とした理由について作用と共に説明
する。
【0017】図1に例示したようなトロイダル式無段変
速機1の入力ディスク5、出力ディスク9、パワーロー
ラ10などの転動体は、高荷重を受けながら高速で回転
する。そして、高荷重を受けながら高速で回転する場
合、転動部ではスピン滑りによって発熱を生じて温度が
上昇するため、転動部の硬さは熱によって低下(軟化)
し、接触面が陥没することによって、早期剥離や破損を
起こし易く、転動疲労寿命を低下させてしまうことにな
る。
【0018】例えば、図1のトロイダル式無段変速機1
に適用した場合、転動部を通過した潤滑油の温度は、流
入前に比較して30℃程度上昇していることから、潤滑
油の温度が100℃では、転動体の接触部は最低でも1
30℃程度まで上昇しているという記述がある(特開平
7−208568号公報等)。
【0019】一方、ショットピーニングは、一般に、浸
炭最表面の異常層(軟化層)をつぶすことによって疲労
強度の低下を改善し、圧縮残留応力の増大による疲労強
度の向上が期待できることから、トロイダル式無段変速
機への適用例がある(特開平7−07155号公報、特
開平7−208568号公報等)。
【0020】さらに、ショットピーニングによって、残
留オーステナイトがマルテンサイトへ加工誘起変態する
ことで、加工前の硬さに対して表面硬さが15〜130
%程度向上することが知られており(「鉄鋼材料便覧」
日本金属学会、日本鉄鋼協会編、第226頁)、機械
構造用鋼に浸炭または浸炭窒化処理した後、場合によっ
てはさらに高周波焼入れした後、ショットピーニングを
実施すると、表面硬さはHV800以上が達成できる。
【0021】転動疲労強度の向上は、焼もどし軟化抵抗
性が高くなるほど増大することから、ショットピーニン
グを施さない場合に比較して、ショットピーニングを施
した場合に表面硬さが向上するため、300℃焼もどし
硬さも向上する。
【0022】しかし、ショットピーニングを施すと、シ
ョット痕の影響で表面が荒れてしまうため、金属接触を
起こしやすくなることから、かえって転動疲労強度が低
下してしまうという問題もあった。
【0023】例えば、トラクションドライブ無段変速機
用転動体の表面粗さの記述としては、(社)日本トライ
ボロジー学会 トライボロジー会議の予稿集、 (名古
屋1993−11)、第657頁−第660頁の文献が
ある。
【0024】この文献には、自動車用ハーフトロイダル
型トラクションドライブ無段変速機に現われるような高
面圧、高周速、高温度を考慮した試験方法および試験条
件では、転動体となる駆動ローラおよび従動ローラの平
均表面粗さをRa0.08μm以下にした場合に、金属
接触の影響は小さいという記述がある。
【0025】従って、転動疲労強度の向上のため金属接
触の影響を小さくするには、転動体の平均表面粗さをR
a0.1μm以下とすることが望ましい。
【0026】一方、ショットピーニングによる加工層の
深さは浅いので、ショットピーニング後に切削などの加
工を行うと、この層が失われてしまい、表面硬さの向上
効果は少なくなってしまう。
【0027】そこで、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入
れ、あるいは、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後高周
波焼入れ等の表面硬化処理を施した後、予め研削加工を
行い、寸法精度を確保した上で、ショットピーニングを
施し、その後ラッピング等の仕上げ加工を行うことで、
表面粗さRa0.1μm以下を達成できる。
【0028】また、ショットピーニングの際のショット
には、平均硬さがHV700〜800で且つ平均粒径が
0.6mm以下のものを用いることで、表面粗さRa
0.1μm以下を達成できるが、平均硬さがHV700
〜800を超え、平均粒径が0.6mmを超えるもので
は、表面粗さRa0.1μm以下を達成することが難し
い。
【0029】従って、本発明では、機械構造用鋼を素材
とし、浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もど
しを施し、転動面の研削加工を行った後に前記転動面に
ショットピーニングを施し、その後仕上げ加工を行うこ
とによって、あるいは、浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入
れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを施し、転動面の研削
加工を行った後に前記転動面にショットピーニングを施
し、その後仕上げ加工を行うことによって、転動面の表
面硬さがHV800以上、表面粗さがRa0.1μm以
下とすることで、転がり接触面での金属接触を防ぎ、高
荷重・高回転においても軟化抵抗に優れ、硬度低下が抑
制されて、接触後の陥没量が低減し、剥離寿命が向上す
る。
【0030】
【発明の効果】本発明に係わるトロイダル式無段変速機
用転動体では、潤滑油を介して接触する複数個の金属製
転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、請求
項1に記載の発明では機械構造用鋼を素材とし且つ浸炭
焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどし後に転動
面にショットピーニングが施されていて、また、請求項
2に記載の発明では機械構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼
入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もど
しした後に転動面にショットピーニングが施されてい施
されていて、転動面の表面硬さがHV800以上、表面
粗さがRa0.1μm以下となっている構成としたか
ら、転がり接触面での金属接触を防ぎ、高荷重・高回転
下においても軟化抵抗に優れ、硬さ低下が抑制され、接
触後の陥没量が低減し、剥離寿命が向上することとなっ
て、転動疲労寿命をより一層向上させたトロイダル式無
段変速機用転動体とすることが可能であるという著しく
優れた効果がもたらされる。
【0031】そして、請求項1に記載しているような浸
炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを採用
したときでも、また、請求項2に記載しているような浸
炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼
もどしを採用したときでも、それぞれの焼入れ方法がも
つ特長を活かしたうえで、いずれの場合においても、転
動疲労寿命をより一層向上させたトロイダル式無段変速
機用転動体とすることが可能であるという著大なる効果
がもたらされる。
【0032】また、本発明に係わるトロイダル式無段変
速機用転動体の製造方法では、潤滑油を介して接触する
複数個の金属製転動体を用いたトロイダル式無段変速機
において前記転動体を製造するに際し、請求項3に記載
の発明では素材として機械構造用鋼を用いて成形したあ
と浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入れ焼もどしを
施し、また、請求項4に記載の発明では素材として機械
構造用鋼を用いて成形したあと浸炭焼入れまたは浸炭窒
化焼入れ後さらに高周波焼入れ焼もどしを施し、それぞ
れ、転動面の研削加工を行った後に前記転動面にショッ
トピーニングを施し、その後仕上げ加工を行って、転動
面の表面硬さをHV800以上、表面粗さをRa0.1
μm以下とするようにしたから、請求項1および2に記
載したごとき転動疲労寿命をより一層向上させたトロイ
ダル式無段変速機用転動体を製造することが可能である
という著大なる効果がもたらされる。
【0033】
【実施例】この実施例においては、先に説明した図1の
トロイダル式無段変速機1に適用した場合について述べ
る。すでに説明したように、図1に示すトロイダル式無
段変速機1は、金属製転動体である入力ディスク5,出
力ディスク9およびパワーローラ10を1組とし、必要
とされる動力伝達性能により1組ないしは複数組(本実
施例の場合は2組)から構成される。
【0034】これらの金属製転動体である入力ディスク
5,出力ディスク9およびパワーローラ10において、
その素材としてはいずれも表1および表2に示すような
機械構造用鋼であるSCM420H、SCM440Hを
使用した。
【0035】熱間鍛造後焼準処理を行った鋼材を部品形
状に機械加工した後、SCM420Hには図2,図3に
示す表面硬化処理条件の浸炭焼入れ焼もどし、または図
4,図5に示す表面硬化処理条件の浸炭窒化焼入れ焼も
どし、または図6に示す表面硬化処理条件のプラズマ浸
炭焼入れ焼もどしを施した。
【0036】また、SCM440Hには図7に示す表面
硬化処理条件の浸炭焼入れ後高周波焼入れ焼もどし、ま
たは図8に示す表面硬化処理条件の浸炭窒化焼入れ後高
周波焼入れ焼もどしを施した。
【0037】なお、図2〜図6に示す表面硬化処理条件
の浸炭焼入れ焼もどし、浸炭窒化焼入れ焼もどし、プラ
ズマ浸炭焼入れ焼もどしに際しては、網状炭化物を球状
化するために2次焼入れを実施した。
【0038】そして、各条件で表面硬化処理を行った
後、転動面等の研削加工を行って所定の寸法形状に仕上
げた。その後、エアーノズルタイプのショットピーニン
グ機械を用い、同じく表1および表2に示す平均粒径
0.3〜0.8mm,硬さがHV700〜800のラウ
ンドカットワイヤをショットとして用いて、アークハイ
ト0.48mmA,カバレッジ300%以上でショット
ピーニング加工を行った。
【0039】その後、転動面をラッピング加工により仕
上げ加工して、入力ディスク5,出力ディスク9および
パワーローラ10を作製した。
【0040】次いで、作製した入力ディスク5,出力デ
ィスク9およびパワーローラ10の品質を確認するため
に、転動面の表面粗さを測定し、また、ビッカース硬度
計で常温での硬さ測定を行った。そしてさらに、高温で
の軟化抵抗性を知るために、300℃で3時間焼もどし
処理を施したのちの硬さをも測定した。
【0041】次に、これらの転動体を図1に示した様に
組み付けてトロイダル式無段変速機1とし、表3に示す
試験条件で耐久試験を実施して、耐久試験後の陥没深さ
を測定した。
【0042】これらの測定結果を同じく表1および表2
に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】表1および表2より明らかなように、本発
明の実施例1〜5に示すごとく、浸炭焼入れ焼もどしま
たは浸炭窒化焼入れ焼もどし後に転動面にショットピー
ニングが施されていて転動面の表面硬さがHV800以
上、表面粗さがRa0.1μm以下であるものとするこ
とによって、転がり接触面での金属接触を防ぎ、耐久試
験100時間経過後においても転動面の陥没深さを小さ
いものとすることが可能であって、これにより剥離の発
生が大幅に低減され、転動疲労寿命に優れるものにでき
ることが確かめられた。
【0047】また、実施例6〜7に示すごとく、プラズ
マ浸炭焼入れ焼もどし後に転動面にショットピーニング
が施されていて転動面の表面硬さがHV800以上、表
面粗さが0.1μm以下であるものとしたときでも、浸
炭焼入れ焼もどしや浸炭窒化焼入れ焼もどし後にショッ
トピーニングが施されていて所定の硬さおよび粗さとな
っているものと同様に優れたものにすることができ、高
温処理のため浸炭時間の大幅な短縮が可能であることが
確認された。
【0048】さらにまた、実施例8〜9に示すごとく浸
炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後にさらに高周波焼入れ
焼もどしを施し、転動面の研削加工を行った後に前記転
動面にショットピーニングを施すことによっても、転動
面の陥没深さおよび寿命は浸炭焼入れ焼もどしまたは浸
炭窒化焼入れ焼もどしを施し、転動面の研削加工を行っ
た後に前記転動面にショットピーニングを施したものと
同等に優れたものとなり、浸炭時間の大幅な短縮が可能
であることが確認された。
【0049】これに対し、比較例1〜4に示すごとくシ
ョットピーニングを施さない場合には、常温での表面硬
さが低いために、300℃での焼もどし硬さも低いもの
となり、それゆえ、転動面の陥没量が多く、短時間で剥
離が発生するものとなっていた。
【0050】また、比較例5〜7に示すごとく、ショッ
トピーニングを施したとしてもショットの大きさが過大
である場合には、常温での硬さおよび300℃での焼も
どし硬さが大であっても、転動面の表面粗さがRa0.
1μm超過となり、転がり接触面での金属接触を起こす
ために、表面温度の上昇幅が大きくなることから、同じ
ショットピーニングを施したものに比べて陥没量が多
く、短時間で剥離が発生するものとなっていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】トロイダル式(転がり式)無段変速機の構造を
例示する断面説明図である。
【図2】本発明の実施例で採用したガス浸炭焼入れ焼も
どしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例および比較例で採用したガス浸
炭焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図
である。
【図4】本発明の実施例で採用したガス浸炭窒化焼入れ
焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説明図である。
【図5】本発明の実施例および比較例で採用したガス浸
炭窒化焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説
明図である。
【図6】本発明の実施例および比較例で採用したプラズ
マ浸炭焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示す説
明図である。
【図7】本発明の実施例および比較例で採用したガス浸
炭後高周波焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件を示
す説明図である。
【図8】本発明の実施例および比較例で採用したガス浸
炭窒化後高周波焼入れ焼もどしによる表面硬化処理条件
を示す説明図である。
【符号の説明】 1 トロイダル式(転がり式)無段変速機 5 入力ディスク(転動体) 9 出力ディスク(転動体) 10 パワーローラ(転動体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡 辺 陽 一 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、機械
    構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭
    窒化焼入れ焼もどし後に転動面にショットピーニングが
    施されていて転動面の表面硬さがHV800以上、表面
    粗さがRa0.1μm以下となっていることを特徴とす
    るトロイダル式無段変速機用転動体。
  2. 【請求項2】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において、機械
    構造用鋼を素材とし且つ浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入
    れ後さらに高周波焼入れ焼もどしした後に転動面にショ
    ットピーニングが施されていて転動面の表面硬さがHV
    800以上、表面粗さがRa0.1μm以下となってい
    ることを特徴とするトロイダル式無段変速機用転動体。
  3. 【請求項3】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において前記転
    動体を製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用い
    て成形したあと浸炭焼入れ焼もどしまたは浸炭窒化焼入
    れ焼もどしを施し、転動面の研削加工を行った後に前記
    転動面にショットピーニングを施し、その後仕上げ加工
    を行って、転動面の表面硬さをHV800以上、表面粗
    さをRa0.1μm以下とすることを特徴とするトロイ
    ダル式無段変速機用転動体の製造方法。
  4. 【請求項4】 潤滑油を介して接触する複数個の金属製
    転動体を用いたトロイダル式無段変速機において前記転
    動体を製造するに際し、素材として機械構造用鋼を用い
    て浸炭焼入れまたは浸炭窒化焼入れ後さらに高周波焼入
    れ焼もどしを施し、転動面の研削加工を行った後に前記
    転動面にショットピーニングを施し、その後仕上げ加工
    を行って、転動面の表面硬さをHV800以上、表面粗
    さをRa0.1μm以下とすることを特徴とするトロイ
    ダル式無段変速機用転動体の製造方法。
  5. 【請求項5】 ショットピーニングに際して、平均硬さ
    がHV700〜800で且つ平均粒径が0.6mm以下
    のショットを用い、転動中の硬度低下を抑制しなおかつ
    転動面の面粗度を低下させることなく転動疲労寿命を向
    上させる請求項4または5に記載のトロイダル式無段変
    速機用転動体の製造方法。
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