JPH102336A - 軸受用保持器とその製造方法 - Google Patents

軸受用保持器とその製造方法

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JPH102336A
JPH102336A JP8175753A JP17575396A JPH102336A JP H102336 A JPH102336 A JP H102336A JP 8175753 A JP8175753 A JP 8175753A JP 17575396 A JP17575396 A JP 17575396A JP H102336 A JPH102336 A JP H102336A
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nitride layer
retainer
cage
bearing
nitriding
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JP8175753A
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English (en)
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Hiroshi Ueno
弘 上野
Kazuhisa Kajiwara
一寿 梶原
Akihiro Bun
明宏 文
Hideki Fujiwara
英樹 藤原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Koyo Seiko Co Ltd
Original Assignee
Koyo Seiko Co Ltd
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Publication date
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    • F16C33/00Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
    • F16C33/30Parts of ball or roller bearings
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
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Abstract

(57)【要約】 【課題】鋼板製保持器では、表面の酸化物が確実に除去
されない状態で、窒化が行われ、窒化層が不十分な部分
があるとともに、窒化層自体も平滑性に劣り、クラック
等も存在する。このため潤滑油の保持が充分でなく、油
膜切れが生じることがあった。 【解決手段】本軸受用保持器1では、プレス成形した環
板1aの表面の酸化物を、ふっ化処理12で金属ふっ化
膜に置き換えることによって除去する。金属ふっ化膜は
酸化物の生成も防止し、酸化物は確実に表面から除去さ
れて、この表面に窒化処理される。窒化層Nが環板1a
の表面に緻密且つ均一且つ十分に形成されている。従っ
て、表面の平滑性が保たれ保持器1の油膜切れは防止さ
れる。 【効果】緻密かつ均一であり平滑な窒化層Nを安定して
形成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼製軸受用保持器
とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来か
ら、鋼製軸受用保持器には、強度の向上や摩耗防止を図
る課題がある。この課題を解決するため、例えば、二輪
車用エンジン、特に、2サイクルエンジンの、クランク
軸受用の深溝型玉軸受では、いわゆる波形プレス保持器
が使用され、この波形プレス保持器の表面に、いわゆる
タフトライド処理と呼ばれる、塩浴窒化、ガス窒化等の
窒化処理を含む表面処理が施されていた。また、窒化処
理を施すと、潤滑性を向上できるという利点もある。
【0003】しかしながら、2サイクルエンジンのクラ
ンク軸受は、ガソリンに混合した潤滑油によって潤滑さ
れるため、常に一定量の潤滑油が供給されるとは限らな
い。そのため、上述のように窒化処理によって潤滑性を
高めた保持器であっても、油膜切れが生じることがあ
り、場合によっては、保持器と転動体との間で焼き付き
を生じる虞もあった。
【0004】上述の油膜切れの原因としては、以下のこ
とが考えられる。すなわち、窒化処理の前処理で、表面
の酸化物の除去が行われる。しかしながら、波形プレス
保持器の形状は複雑であり、酸化物が残りやすく、それ
に加えて、除去後にも再度酸素の吸着や酸化作用が働く
ので、表面の酸化物を完全に除去できない。この状態
で、窒化処理が行われると、窒化層は、酸化物が除去さ
れた部分には十分に、酸化物の残った部分には不十分に
形成されて、その結果、窒化層にむらが生じていたり、
クラックが多数形成されていた。不十分な窒化層の表面
では、もともと平滑度が充分でなく、クラックの存在も
あり、潤滑油が窒化層の最表面に保持され難く、よっ
て、油膜が切れ易く、潤滑が不充分になると考えられ
る。
【0005】そこで、本発明の主な目的は、上記の技術
的課題を解決し、均一な窒化層によって、油膜切れが生
じ難く、潤滑性の良い鋼製軸受用保持器を提供すること
である。また、本発明の他の目的は、上記の軸受用保持
器を安定して製造できる製造方法を提供することであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項1にかかる発明の鋼製軸受用保持器は、表面
に窒化物の平均粒子径が1μm以下の緻密な窒化層が形
成されたことを特徴とするものである。この構成によれ
ば、窒化層を、表面に緻密に、且つむらなく均一に、且
つ十分に形成できる。このような窒化層が形成された保
持器では、油膜が切れることもなく、良好な潤滑性を維
持できる。
【0007】この保持器は、例えば、以下の請求項2に
かかる発明の鋼製軸受用保持器の製造方法によって製造
することができる。請求項2に係る発明の軸受用保持器
の製造方法は、表面に窒化層が形成された鋼製軸受用保
持器の製造方法において、窒化処理の前に、保持器の表
面の酸化物を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理を含
むものである。
【0008】この構成によれば、ふっ化処理に用いる活
性化されたふっ素原子により、母材の鋼の表面に付着し
ていた加工助剤等の異物が破壊等されて除去され、表面
が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不働
態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。このように置
き換えられることによって、鋼の表面が金属ふっ化膜に
よって被覆保護された状態になり、後の窒化処理まで酸
化物の生成が阻止されるので、確実に酸化物を除去でき
る。従って、表面に緻密、且つ均一、且つ十分な窒化層
を形成することができる。
【0009】また、従来は、窒化処理の際、480℃〜
700℃の温度域では、鋼材中のCr,Mn,Si,A
lのような金属元素は、酸化されやすい。しかし、上記
温度領域においては、これらの金属元素を完全に中性も
しくは還元性に維持する雰囲気をつくることが困難なこ
とから、上記金属元素は上記温度領域で殆ど酸化され、
それによって窒化処理に際して鋼材の表面に粒界酸化物
が形成され、この粒界酸化物が障害となって窒化処理が
阻害される。結果として、鋼材の表面に窒化層を安定し
て形成できないでいた。
【0010】これに対して、本発明では、確実に酸化物
を除去できるので、一定の窒化層を安定して形成するこ
とができる。すなわち、窒化処理の際、480℃〜70
0℃程度の温度で、窒素源を有するガス(例えばNH3
ガス)とH2 ガスとの混合ガスを炉内に導入することに
より、上記H2 ガスによって、鋼材表面を被覆保護して
いる金属ふっ化膜は破壊され除去される。これにより、
浄化されて活性化した金属素地が現れ、この活性化した
金属素地に窒化ガス(例えばNH3 ガス)中のN原子が
作用し、内部に迅速に浸透拡散し、深い窒化層を均一に
形成する。すなわち、鋼の表面から内側に向かってCr
N,Fe2 N,Fe3 N,Fe4 N等の窒化物を含有す
る超硬質な化合物層(窒化層)が、均一に深く形成さ
れ、それに続いて硬質なN原子の拡散層が形成され、上
記化合物層+拡散層が全窒化層を構成する。また、窒化
層の硬さも、従来のタフトライド処理品と同等で、表面
硬さはビッカース硬さ450HV(試験荷重50gf)
を維持している。
【0011】本発明のふっ化処理に用いるふっ素系ガス
としては、NF3 ,BF3 ,CF4,HF,SF6 ,F
2 の単独もしくは混合物からなるふっ素源成分をN2
の不活性ガス中に含有させたガスが好適に用いられる。
なかでも、安全性、反応性、コントロール性、取扱性等
の点でNF3 が最も優れており、実用的である。このよ
うなふっ素系ガスでは、効果の点から、NF3 等のふっ
素源成分が0.05%〜20%(重量基準、以下同じ)
の濃度に設定される。好ましいのは、3%〜5%の範囲
内である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態にか
かる軸受用保持器及びその製造方法を、添付図面を参照
しながら詳細に説明する。まず、本発明の保持器につい
て説明する。図1は、本発明にかかる保持器の斜視図で
ある。図2は、図1の保持器を備えた軸受である玉軸受
の断面図である。図1及び図2を参照する。
【0013】保持器1は、例えばSPCC材等の低炭素
鋼板をプレス成形した一対の環板1aと、一対の環板1
aを互いに固定する鋲2とを備えている。一対の環板1
aは、対向して配置され、略円環状の保持器1を構成し
ている。環板1aには、複数の凹湾部1bが等間隔に形
成されており、凹湾部1bの間には、鋲着固定のための
鋲孔(図示せず)が形成されている。凹湾部1bは、互
いに対向して配置され、軸受Aの球状の転動体3を収容
するポケットPを形成している。
【0014】保持器1は、ポケットPに保持された転動
体3とともに、軸受Aの内輪4の外周面と、外輪5の内
周面との間に設けられて、内外輪を相対回転可能に支持
して、軸受Aを構成する。また、本発明の保持器1は、
後述する製造方法によって、環板1aの表面全体に、F
3 Nを主成分とする窒化物が、その平均粒子径が1μ
m以下であるように、緻密且つ均一に積層された状態の
窒化層Nが形成されている(後述する実施例の欄参
照)。なお、窒化層Nは、少なくとも環板1aのポケッ
トPを形成する部分に形成してあればよい。すなわち、
窒化層Nを、凹湾部1bの内周面のみに形成してもよい
し、上記内周面と他の部分とに形成してもよい。
【0015】保持器1は、例えば、以下のようにして製
造される。すなわち、図3は、本発明の製造方法の概略
工程図である。以下、図3を参照して、本発明にかかる
製造方法を説明する。本製造方法は、環板1aを形成す
る形成工程11と、形成された環板1aの表面の酸化物
を金属ふっ化膜に置き換えるふっ化処理12と、窒化層
Nを形成する窒化処理13と、環板1aを保持器1に組
み立てる組立工程14とを備えている。
【0016】形成工程11では、鋼板、例えばSPCC
材によりプレス成形されて、環板1aの形状を有した成
形品が形成される。ふっ化処理12では、被処理品であ
る成形品を、3ふっ化窒素(NF3 )、窒素等の混合気
中に、所定のふっ化温度T1、例えば300℃〜400
℃に所定時間(10分〜120分)保持する。その結
果、成形品の表面の異物等は、ふっ化処理に用いる活性
化されたふっ素原子によって破壊等されて除去され、表
面が浄化されると同時に、鋼表面の酸化皮膜のような不
働態膜が、金属ふっ化膜に置き換えられる。この際に、
表面に形成される金属ふっ化膜は、不働態膜であるの
で、表面への酸素の吸着や酸化作用を防止し、次の窒化
処理13まで酸化物の生成を阻止し、その結果、確実に
酸化物を除去することができる。
【0017】窒化処理13では、ガス窒化が行われる。
ここでの被処理品であるふっ化処理された成形品(表面
が金属ふっ化膜で覆われている)は、所定の反応ガス、
例えばNH3 単体からなるガスまたはNH3 と炭素源と
からなる混合ガス(例えばRXガス)中に、所定の窒化
温度T2に、所定時間(0.5時間〜5時間)保持され
る。
【0018】ふっ化温度T1から窒化温度T2に、温度
が昇温される過程で、被処理品表面の金属ふっ化膜は活
性化膜となる。その結果、窒化処理13で、窒素は金属
に速やかに深く浸透して、窒化層Nが形成される。その
後、所定時間をかけて、冷却される。被処理品は、冷却
終了まで、窒素ガス中に保持されており、表面に酸化物
の生成が防止される。
【0019】窒化処理13での窒化温度T2及び保持時
間は、窒化処理13で形成される窒化層Nの深さ等に応
じて、所定値に設定されるのが好ましい。窒化温度T2
としては、480℃〜700℃であれば、表面に硬い窒
化層を形成することができる。従って、潤滑性を向上す
ることができる。また、ふっ化処理12で被処理品の表
面が活性化されるので、窒化温度T2を、従来の窒化層
形成時に被処理品を保持する温度よりも低くすることが
できる。窒化温度T2が低くなる程に、窒化層Nの表面
が平滑に形成される傾向があり、特に、上述のように窒
化温度T2が480℃〜700℃であれば、この窒化温
度T2で形成される窒化層Nの表面が、従来形成された
タフトライド処理品の窒化層の表面よりも平滑になる。
窒化層Nの表面粗さは、未処理品、すなわち、研磨仕上
げ面の粗さ(中心線平均粗さRa=0.7μm〜1.0
μm、十点平均粗さRz=4.0μm〜7.0μm、最
大高さRmax=4.5μm〜7.5μm)に対し、殆
ど同じ値である。従来のタフトライド処理品の表面粗さ
は、Ra=1.5μm〜2.0μm、Rz=10.0μ
m〜15.0μm、Rmax=14.0μm〜18.0
μmであるから、本発明の窒化層Nは、表面粗さが従来
のタフトライド処理品に比べて小さく、また、かなり平
滑性を増している。
【0020】さらに、窒化層Nが上述するように平滑且
つ緻密であることに加え、クラックが殆どないため、窒
化層Nの最表面での潤滑油の保持性がよく(後述する実
施例の欄参照)、この点でも耐焼き付き性が向上して
いる(実施例の,欄参照)。また、窒化層Nでは、
摩擦が大きくなる虞がないので、油膜切れも生じ難く、
より一層焼き付き難くすることができる。ちなみに、無
潤滑状態での摩擦係数は0.24であり、従来のタフト
ライド処理品の0.54に対して2分の1以下となって
いる。なお、実験条件は、HRIDON式摩耗試験機に
て、試験片(SPCC材)にボール(SUJ2材)を荷
重200gf、速度100mm/秒、距離20mmで1
0往復させ、その際の動摩擦係数を測定し、各測定値の
最大値の平均値を求めた。
【0021】組立工程14では、窒化層Nの形成された
一対の環板1aは、鋲2によって鋲着固定され、保持器
1に組み立てられる。このように本実施の形態の保持器
1によれば、以下の作用効果を奏するものである。保持
器1は、鋼板製であるので、温度の高い環境でも、合成
樹脂性の保持器に比べて、安心して使用することができ
る。例えば、エンジン等で使用される軸受でも使用でき
る。
【0022】また、窒化層Nは、以下詳述するように、
強度の向上や摩耗防止を図ることができる上に、潤滑性
を向上できるという利点もある。特に、本実施の形態の
窒化層Nは、均一に緻密に形成されているので、多孔質
の部分がある従来の窒化層に比べて、表面がより一層硬
く、耐摩耗性が良好である。
【0023】また、保持器1では、表面の硬い窒化層N
によって鋼板の機械的強度が改善される上に、内部の窒
化されていない鋼板の部分によって柔軟性、靱性が維持
されるため、耐衝撃性を備えて、保持器としての強度が
より一層向上する。従って、この保持器1を備えた軸受
Aの回転時に、保持器1が、転動体3から衝撃を受けて
も、衝撃に耐えることができ、切損する虞もなく、実用
に適した保持器とすることができる。特に、本発明の製
造方法によって形成された窒化層Nは、従来のタフトラ
イド処理品に比べて、素材中心部分の硬さが低く(後述
する実施例の欄参照)、その結果、内部の柔軟性、靱
性がより一層向上して衝撃に耐えることができる。な
お、ここでの保持器としての強度とは、単純な形状の試
験片を測定して求められる材料自体の機械的強度でな
く、保持器を実際に使用した際の強度であって、材料自
体の強度に、柔軟性、靱性、耐衝撃性等が加味された強
度である。
【0024】また、本実施の形態では、窒化層Nは、ふ
っ化処理12により酸化物が確実に除去された表面に、
緻密に、且つむらなく均一に、且つ十分に形成されてい
るので、潤滑油を表面に保持でき、油膜が切れることも
なく、良好な潤滑性を維持できる。一方、従来のタフト
ライド処理による窒化層は、酸化物が残った表面に形成
されており、この酸化物の残った表面には十分に形成さ
れなかったので、不十分な窒化層であり、且つクラック
が存在していたので、油膜が切れることがあった(後述
する実施例の,欄参照)。
【0025】また、本発明の保持器1では、表面の窒化
層自身が潤滑性を向上する効果を、緻密、且つ均一、且
つ十分な窒化層Nとすることによって、より一層向上さ
せることができるので、潤滑が行われ難い状況でも、上
述の効果を高く維持できる。従って、潤滑が行われ難い
状況の生じ易い用途、例えば、二輪車用2サイクルエン
ジンのクランク軸受に、この保持器1を適用すると、顕
著な効果がある。ところで、潤滑性を向上する場合で
も、油溜まりとなる凹部が表面に形成され、凹部に保持
された潤滑剤が潤滑性を向上する場合には、潤滑が行わ
れ難い状況では、効果を維持することが困難である。
【0026】また、本実施の形態の保持器の製造方法に
よれば、以下の作用効果を奏するものである。窒化処理
13は、ガス窒化であるので、塩浴窒化のような環境汚
染の心配がない。また、従来の製造方法では、窒化処理
の際の480℃〜700℃の温度域で、鋼材中のCr,
Mn,Si,Al等の金属元素が殆ど酸化され、鋼材の
表面に粒界酸化物が形成されていた。この粒界酸化物が
障害となって、窒化処理が阻害され、その結果、鋼材の
表面に窒化層を安定して形成できないでいた。これに対
して、本発明では、ふっ化処理12で確実に酸化物を除
去できるので、一定の窒化層Nを安定して形成すること
ができる。窒化層の硬さも、従来のタフトライド処理品
と同等で、表面硬さはビッカース硬さ450HVを維持
している(後述する実施例参照)。
【0027】また、窒化処理13は、ガス窒化であるの
で、反応ガスが活発に動き回り、被処理品表面に窒素分
子が万遍なく行き渡り、入り込んだ部分にも、窒化層N
を均一に形成することができる。例えば、凹湾部1bの
内周面や端縁部等にも、窒化層Nが形成される。従っ
て、保持器全体として耐摩耗性が良好である。また、従
来、ガス窒化の場合、熱伝達が遅く、被処理品の表面が
十分に活性化するために長時間を要する場合があった。
一方、本発明の方法では、被処理品の表面に形成された
金属ふっ化膜は、窒化温度T2では、十分に活性化され
ているので、窒素は速やかに金属に浸透して、長時間を
かけずに十分な窒化層Nが形成される。
【0028】また、上述のように、窒化温度T2を、従
来の窒化層形成時に被処理品を保持する温度よりも低く
することができるので、熱変形等の熱による影響も少な
くすることができる。なお、本発明の保持器及びその製
造方法は、プレス成形された波形保持器以外にも、もみ
抜き保持器や冠形打抜き保持器等に適用することができ
る。また、材質も炭素鋼に限定されず、ステンレス鋼や
工具鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼にも適用でき
る。
【0029】また、上述の実施の形態では、保持器とし
ての組立は、環板1aを窒化処理した後に行われていた
が、これには限定されない。例えば、形成工程11の後
に組立工程14を行ない、その後、組み立てられた保持
器を被処理品として、ふっ化処理12及び窒化処理13
を行ってもよい。また、本発明の軸受用保持器及びその
製造方法は、上述の玉軸受以外にも、円筒ころ軸受、円
すいころ軸受、球面ころ軸受、針状ころ軸受等の種々の
転がり軸受用の、あらゆる形状の保持器に適用すること
ができる。
【0030】その他、本発明の要旨を変更しない範囲で
種々の設計変更を施すことが可能である。
【0031】
【実施例】上述の本発明の軸受用保持器の製造方法によ
り製作した保持器1の分析及び試験を行った。その結果
を説明する。また、比較例として、従来の保持器の分析
及び試験を同様に行った。比較例の保持器は、ふっ化処
理せずに、従来の方法で酸化物を除去して、塩浴窒化し
た保持器である。
【0032】表面状態分析方法 図8の斜視図に示すように、保持器1のポケットPを形
成する部分の表面S1(転動体と接する部分)と、表面
近傍の断面S2とを、走査形電子顕微鏡(日本電子株式
会社製 JSM─5400)を用いて分析した。
【0033】結果 得られた顕微鏡像を図4〜図7に示す。図4は、実施例
の保持器1の窒化層N表面の金属組織を表す写真であ
る。図5は、比較例の保持器の窒化層表面の金属組織を
表す写真である。図6は、実施例の保持器1の窒化層N
の断面の金属組織を表す写真である。図7は、比較例の
保持器の窒化層の断面の金属組織を表す写真である。な
お、図4〜図7は、倍率5000倍で得られた像を撮影
したものであり、各図に寸法を示す尺度が写し込まれて
いる。また、図6及び図7では、中央部から下方に表さ
れた白い部分が、保持器であり、それよりも上方に表さ
れた黒い部分は、撮影用部材である。
【0034】実施例の窒化層N表面の粒子は、図4に表
されているように、平均粒子径が1μm以下の微細な粒
子である。また、その粒子の大きさもほぼ均一である。
また、表面に大きな起伏は認められない。これらのこと
は、図6にも示されている。また、図6に示されている
表面近傍の状況から、表面は緻密に形成されていること
が判る。
【0035】一方、比較例の窒化層表面では、図5に表
されているように、粒子の大きさは様々で、粒子径が5
μm程度のものも認められる。また、表面の凹凸は、実
施例よりも大きく、また、図7では表面から内部にかけ
てクラックも認められる。 表面硬さ 実施例の保持器の表面硬さを、ビッカース硬さで測定し
た。測定位置は、図8に示す保持器のポケットPを形成
する部分の表面S1である。
【0036】 結果 実施例の平均硬さ 619HV(試験荷重25gf) 平均硬さ 451HV(試験荷重50gf) 平均硬さ 370HV(試験荷重100gf) 断面の硬さ 実施例の保持器の硬さを、表面からの距離の異なる複数
箇所の断面位置で測定した。同様に、比較例についても
測定した。なお、ビッカース硬さの試験荷重は、100
gfである。
【0037】結果 図13は、保持器の硬さと、表面からの距離との関係を
示すグラフである。図13には、線Ha(─○─)で実
施例を、線Hb(─■─)で比較例を示し、縦軸に硬さ
をビッカース硬さ(HV)で示し、横軸に表面からの距
離(μm)を示す。
【0038】実施例の窒化層Nは、表面近傍で硬さ約4
50HVであり、比較例の窒化層とほぼ同等である。ま
た、実施例の窒化層Nは、表面から内部寄りの部分で、
比較例の窒化層よりも硬さが低い。このことから、実施
例の窒化層Nは、表面が硬く内部が柔らかい2層硬度分
布を有し、しかも、実施例は、比較例よりも表面と内部
との硬度差が大きいことがわかる。
【0039】従って、実施例は、比較例よりも良好な耐
衝撃性を有すると考えられる。 油の保持性試験方法 実施例及び比較例の保持器表面の油の保持性を試験し
た。すなわち、平板状の試験片を作成し、作成した試験
片の表面に、実施例に形成されたものと同様の窒化層及
び比較例と同様の窒化層を形成した。各試験片の窒化層
の表面に、潤滑油0.01ccを滴下する。滴下前の表
面と、滴下後1時間を温度150℃で経過した表面と
を、レーザ顕微鏡で比較し、表面の油膜状況を測定す
る。
【0040】結果 観察された顕微鏡像を図9〜図12に示す。図9は、実
施例の窒化層N表面の金属組織を表す写真であり、油滴
下前の状態である。図10は、実施例の窒化層N表面の
金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態である。図
11は、比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真であ
り、油滴下前の状態である。図12は、比較例の窒化層
表面の金属組織を表す写真であり、油滴下後の状態であ
る。図9〜図12は、倍率500倍で得られた像を撮影
したものである。
【0041】実施例の窒化層Nでは、図10に示されて
いるように、潤滑油の存在を示す縞模様が全体に認めら
れ、油膜が表面に保持されていることが判る。なお、こ
のことは、滴下前の図9と滴下後の図10とを比較する
とより一層明瞭である。一方、比較例の窒化層では、図
11と図12とで差は少なく、また図12にも縞模様は
少ないので、油膜が充分に保持されていないことが判
る。
【0042】従って、実施例の窒化層Nは、比較例に比
べて潤滑油の保持性に優れていることが判る。 耐焼き付き性(A) 次に、耐焼き付き性の試験結果を説明する。上述の保持
器1を軸受に適用して、下記条件下で寿命を測定した。
ここでの寿命は、潤滑が停止された状態で、焼き付きが
生じるまでの時間である。
【0043】また、比較例として、従来の保持器の寿命
を、同様にして測定した。試験条件 適用した軸受 深溝形玉軸受(呼び番号6305) ラジアル荷重 200Kgf 回転数 11000rpm 潤滑条件 回転前に、2サイクルエンジン用潤滑油
を0.01cc滴下試験結果 本発明実施品 平均寿命38.5分 比較例 平均寿命18.6分 このように、本発明の保持器は、殆ど無潤滑に近い過酷
な条件下でも、従来品に比べて約2倍の寿命を有してい
る。 .耐焼き付き性(B) の軸受を、さらに過酷な条件を課して寿命を測定し
た。
【0044】試験条件 ラジアル荷重 400Kgf 回転数 11400rpm 潤滑条件 回転前に2サイクルエンジン用潤滑油を
0.005cc滴下試験結果 本発明実施品 平均寿命6.1分 比較例 平均寿命3.9分 このように、本発明の保持器は、さらに過酷な条件下で
も、従来品に比べて約1.6倍の寿命を有している。
【0045】なお、これら,の試験は、通常の使用
状態で想定されない過酷な条件が課された加速試験であ
る。従って、本発明の保持器は、通常の使用で焼き付く
ことはない。
【0046】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、表面に緻
密、且つむらなく均一に、且つ十分に形成された窒化層
が形成された保持器では、油膜が切れることもなく、良
好な潤滑性を維持できる。請求項2に係る発明によれ
ば、表面の酸化物をふっ化処理で確実に除去できるの
で、表面に緻密、且つ均一、且つ十分な窒化層を形成す
ることができる。また、確実に酸化物を除去できるの
で、一定の窒化層を安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる軸受用保持器の斜視図である。
【図2】図1の軸受用保持器を備えた軸受の断面図であ
る。
【図3】本発明の軸受用保持器の製造方法の概略工程図
である。
【図4】本発明の保持器の窒化層表面の金属組織を表す
写真である。
【図5】比較例の保持器の窒化層表面の金属組織を表す
写真である。
【図6】本発明の保持器の窒化層の断面の金属組織を表
す写真である。
【図7】比較例の保持器の窒化層の断面の金属組織を表
す写真である。
【図8】図4〜図7の観察位置を説明するための保持器
の斜視図である。
【図9】実施例の窒化層表面の金属組織を表す写真であ
り、油滴下前の状態を示す。
【図10】実施例の窒化層表面の金属組織を表す写真で
あり、油滴下後の状態を示す。
【図11】比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真で
あり、油滴下前の状態を示す。
【図12】比較例の窒化層表面の金属組織を表す写真で
あり、油滴下後の状態を示す。
【図13】実施例と比較例の保持器の硬さと、表面から
の距離との関係を示すグラフであり、縦軸に硬さをビッ
カース硬さ(HV)で示し、横軸に表面からの距離(μ
m)を示し、線Haで実施例の場合を示し、線Hbで比
較例の場合を示す。
【符号の説明】
1 保持器 12 ふっ化処理 13 窒化処理 N 窒化層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤原 英樹 大阪市中央区南船場三丁目5番8号 光洋 精工株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に窒化物の平均粒子径が1μm以下の
    緻密な窒化層が形成されたことを特徴とする鋼製軸受用
    保持器。
  2. 【請求項2】表面に窒化層が形成された鋼製軸受用保持
    器の製造方法において、 窒化処理の前に、保持器の表面の酸化物を金属ふっ化膜
    に置き換えるふっ化処理を含む鋼製軸受用保持器の製造
    方法。
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