JPH1025530A - 高周波用軟磁性合金とそれを用いた平面型磁気素子、アンテナおよび電波吸収体 - Google Patents

高周波用軟磁性合金とそれを用いた平面型磁気素子、アンテナおよび電波吸収体

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JPH1025530A
JPH1025530A JP9041202A JP4120297A JPH1025530A JP H1025530 A JPH1025530 A JP H1025530A JP 9041202 A JP9041202 A JP 9041202A JP 4120297 A JP4120297 A JP 4120297A JP H1025530 A JPH1025530 A JP H1025530A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、高周波用などの磁性材料として高
い比抵抗を有し、高周波数帯域で透磁率が高い軟磁性合
金を提供すること、およびそれを用いた平面型磁気素
子、アンテナ、電波吸収体を提供することを目的とす
る。 【解決手段】 本発明は、Coを主成分とし、さらに、
Fe、Ni、Pd、Mn、Alより選択された一種また
は二種以上の元素Tを主要成分とする面心立方構造また
は体心立方構造もしくは両者が混合した平均結晶粒径3
0nm以下の結晶相と、それら結晶相を取り囲むTi、
Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Wと希土類元素から選
ばれる一種または二種以上の元素M、O、および元素M
の酸化物の少なくとも一種以上と、Feと元素Tを含む
強磁性の非晶質相とを主体としてなるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高周波数帯域で高
い透磁率を示し、低損失の高周波用軟磁性合金とそれを
用いた平面型磁気素子(トランス、インダクタ)、アン
テナおよび電波吸収体に関する。
【0002】
【従来の技術】磁気素子の小型化、高性能化に伴い、高
い飽和磁束密度を有する上に、数百MHz以上の周波数
帯域における透磁率が高く、高い比抵抗を有する軟磁性
合金が求められている。従来、高い飽和磁束密度をもつ
磁性材料としてFeあるいはFeを主成分とする合金が
多く知られているが、スパッタ法などの成膜技術により
これらのFe系合金の磁性膜を作成すると、飽和磁束密
度は高いものの保磁力が大きく、また比抵抗が小さくな
ってしまい良好な軟磁気特性を得ることは困難であっ
た。また、高周波数における透磁率低下の原因の一つに
渦電流の発生による損失がある。この高周波透磁率の低
下の一因である渦電流損失を防ぐために、薄膜化および
薄膜の高抵抗化を図ることが望まれている。しかしなが
ら、磁気特性を保ったまま比抵抗を高めることは非常に
難しく、センダストやアモルファス合金などの合金系の
軟磁性薄膜の比抵抗は、数十〜百数十μΩ・cm程度と小
さく、少なくとも0.5T(テスラ)以上の飽和磁束密
度を確保しながら比抵抗を高めた軟磁性合金が求められ
ている。また、合金を薄膜として得る場合には、磁歪の
発生などの影響により良好な軟磁気特性を得ることはさ
らに困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような背景から本
発明者らは、Fe−M−O系(ただし、元素Mは4a、
5a族元素、あるいは希土類元素のうちの少なくとも一
種またはそれらの混合物を示し、50≦Fe≦70、5
≦M≦30、10≦O≦30(40)の組成を有する)
の軟磁性材料を開発し、特開平6―316748号明細
書において特許出願している。この系の軟磁性材料によ
れば、比抵抗が高い(215.3〜133709μΩ・
cm)ので高周波領域における渦電流損失が少なく、高
周波領域において高い透磁率を得ることができ、飽和磁
束密度が0.5T以上の高い値(0.7〜1.5T前
後)を得ることができ、保磁力も低い(0.8〜4.0
Oe)ものであった。ところが、一般的に透磁率を表
すには、透磁率の実数部(μ')と透磁率の虚数部
(μ'')の2つの値があり、トランス、インダクタやア
ンテナの用途には実数部の値が高く、虚数部の値は低い
ことが望まれるが、Fe−M−O系の軟磁性合金薄膜に
あっては数百MHz以上の高周波帯域では透磁率の実数
部(μ')の値を高い値にすることができるものの、透
磁率の虚数部が透磁率の実数部の値を超えるように大き
くなり、(透磁率の実数部)/(透磁率の虚数部)の
値、即ち、(μ')/(μ'')で表されるQ(性能係
数)の値が1を下回るようになり、損失が大きくなる問
題がある。
【0004】この種のバルク材料としてBa3Co2Fe
5441(一般にはCo2Zなどと表記する)などの組成
式で表されるマグネトプランバイトが高周波領域で高い
Q値を示すことが知られているが、このものにあっても
図14に示すように1GHzの高周波領域ではQの値が
1となり、それ以上の高周波帯域では損失が増大する問
題がある。これに対して、通信関係の分野(パーソナル
ハンディホンシステム:PHS)などにおいては、GH
z帯域がより一層利用される傾向にある。また、現在の
ところ部品としては空芯のインダクタが利用されている
が、占有面積が大きく、磁性薄膜をコアに用いることに
よって小型化するニーズがあり、また将来的にはさらに
高いQ値を持つ材料に対する要求が高まっていくと考え
られる。また、アンテナ材料においても同様の状況にあ
る。電波吸収体としては、吸収したい電波の周波数帯域
で透磁率の虚数部(μ'')が高いことが望まれるが、図
14に示す従来材料では1GHzから上の帯域で透磁率
の虚数部の値が急激に低下する傾向にあり、このような
従来材料ではGHz帯域の電波吸収体に適していない問
題がある。
【0005】本発明は前記課題を解決するためになされ
たもので、高周波用などの磁性材料として高い比抵抗を
有し、高周波数帯域で透磁率が高い軟磁性合金を提供す
ること、およびそれを用いた平面型磁気素子、電波吸収
体、アンテナを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の高周波用軟磁性
合金は、Coを主成分とし、Fe、Ni、Pd、Mn、
Alより選択された一種または二種以上の元素Tを主要
成分とする面心立方構造または体心立方構造もしくは両
者が混合した平均結晶粒径30nm以下の結晶相と、そ
れら結晶相を取り囲むTi、Zr、Hf、Nb、Ta、
Mo、Wと希土類元素から選ばれる一種または二種以上
の元素M、O、および元素Mの酸化物の少なくとも一種
以上と、Feと元素Tを含む強磁性の非晶質相とを主体
としてなるものである。本発明においては合金の平均結
晶粒径を7nm以下としたものである。本発明は、前記
高周波用軟磁性合金を下記の組成からなるものとしたも
のである。 (Co1-ccxyzws ただし、TはFe、Ni、Pd、Mn、Alから選ばれ
た一種または二種以上の元素であり、MはTi、Zr、
Hf、Nb、Ta、Mo、Wと希土類元素から選ばれた
一種または二種以上の元素であり、QはO、N、C、B
から選ばれた一種または二種以上の元素であり、XはS
iもしくはCrのうちの一種または二種の元素、ZはA
u、Agと白金族の元素のうちの一種または二種以上の
元素であり、組成比を示すcは、0.05≦c≦0.
5、y、z、w、sはat%で、3≦y≦30、7≦z
≦40、0≦w≦20、0≦s≦20の関係を満足し、
残部はxと不可避不純物である。
【0007】本発明は、前記組成において、前記組成比
yとzをat%で5≦y≦20、10≦z≦30とする
とさらに好ましい。本発明は、前記元素TをFeとする
とより好ましい。本発明においては、前記高周波用軟磁
性合金の結晶面内に一軸磁気異方性を有し、その異方性
磁界を10 Oe以上としたものである。本発明におい
ては、比抵抗を200μΩ・cm、あるいは比抵抗を4
00μΩ・cmとした。本発明においては、前記高周波
用軟磁性合金の共鳴周波数を2GHz以上としたもので
ある。本発明においては、前記高周波用軟磁性合金は、
成膜直後において非晶質相が全組織の30%以上の面積
を占めているものである。また、上記高周波用軟磁性合
金は、該合金の磁心を備えた平面型磁気素子、アンテ
ナ、電波吸収体として好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明についてさらに詳細
に説明する。本発明の高周波用軟磁性合金において、C
oと元素Tは主成分であり、CoとFeとNiは磁性を
担う元素である。特に高飽和磁束密度を得るためには、
CoとFeの含有量は多いほど好ましいが、CoとFe
の含有量を少なくし過ぎると飽和磁束密度が小さくなっ
てしまう。また、Coには一軸磁気異方性を大きくする
作用がある。Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W
から選ばれる一種または二種以上の元素と、希土類元素
(すなわち、周期表の3a族に属するSc、Y、あるい
は、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、G
d、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどの
ランタノイド)から選ばれる一種または二種以上の元素
である元素Mは、軟磁気特性と高抵抗を両立するために
必要なものである。これらは酸素と結合し易く、結合す
ることで酸化物を形成する。この酸化物の含有量を調整
することによって比抵抗を高めることができる。一方、
本願発明の組成範囲とするならば、高い比抵抗を得るこ
とができ、比抵抗を高めることで渦電流損失を低減する
ことができ、高周波透磁率の低下を抑制でき、高周波特
性を改善できる。
【0009】次に、元素T(Fe、Ni、Pd、Mn、
Alから選ばれた一種または二種以上の元素)は、Co
の面心立方構造(fcc構造)を安定化する。また、元
素Z(Au、Agと白金族の元素(Ru、Rh、Pd、
Os、Ir、Pt)のうちの一種または二種以上の元
素)は本願発明合金の耐食性を向上させるが、その含有
量が20at%(原子%)を超えると軟磁気特性(透磁
率)が劣化する。良好な軟磁気特性を確保しつつ高い飽
和磁束密度を維持するためには、at%で3≦M≦3
0、7≦Q≦40、0≦X≦20、0≦Z≦20の範囲
とすることが好ましい。また、さらに、良好な軟磁気特
性と高い飽和磁束密度を確実に得るためには、at%で
5≦M≦20、10≦Q≦30の範囲とすることがより
好ましい。
【0010】上記合金からなる磁性膜を作成するには、
スパッタ、蒸着など既存の薄膜形成技術を適宜使用すれ
ばよい。スパッタ装置としてはRF二極スパッタ、DC
スパッタ、マグネトロンスパッタ、三極スパッタ、イオ
ンビームスパッタ、対向ターゲット式スパッタなどの既
存のものを使用することができる。軟磁性合金膜中にO
(酸素)を添加する方法としては、Arなどの不活性ガ
ス中にO2ガスを混合した(Ar+O2)混合ガス雰囲気
中でスパッタを行なう反応性スパッタ、あるいは、元素
Mの酸化物(HfO2など)のチップを用いた複合ター
ゲットをAr雰囲気中、あるいはAr+O2混合ガス雰
囲気中でスパッタする方法が有効である。また、Coの
ターゲット上に希土類元素などの元素Mあるいは元素T
などの各種ペレットを配置した複合ターゲットを用い
て、Ar+O2混合ガス雰囲気中で製作することもでき
る。
【0011】さらに、軟磁性合金膜の組織において、微
細結晶相はfcc構造であっても、体心立方構造(bc
c構造)であっても良く、また、fcc構造の微細結晶
相とbcc構造の微細結晶相の両方を含み、その他の部
分はCoと元素Tを含む非晶質相を主体とする混合組織
であっても良い。そのような組織を有し、前記組成を有
する場合、この合金膜は結晶の面内に一軸磁気異方性を
有し、その異方性磁界が10 Oe以上であり、比抵抗
を200μΩ・cm以上、より高いものでは400μΩ
・cm以上とすることができる。また、このときの平均
結晶粒径は、30nm以下であり、より良好な磁気特性
を得るためには、7nm以下であることがより好まし
い。
【0012】
【実施例】
(1)成膜 高周波二極スパッタ装置を用いて、Coターゲットに本
発明の元素Mまたは元素Tなどの各元素の各種ペレット
を配置した複合ターゲットを用い、Ar+0.1〜1.
0%O2の混合ガス雰囲気中でスパッタを行ない、膜厚
が約2μmになるようにスパッタ時間を調整した。主な
スパッタ条件を以下に示す。 予備排気:1×10-6Torr以下 高周波入力:200W Arガス圧:6〜8×10-3Torr 基板:ガラス基板(間接水冷) (2)熱処理 成膜後、膜の軟磁気特性を改善するため、真空加熱炉中
で、無磁場あるいは磁場中で300〜600℃の温度範
囲で60〜360分間保持し徐冷するアニール処理を行
なった。 (3)測定 得られた合金磁性膜の組成を、EPMA(Electr
on Probe Micro Analysis)、
ICP(Inductive CoupledPlas
ma)、不活性ガス融解赤外線吸収法などにより求め
た。
【0013】(試験1)まず、上記合金磁性膜の500
MHzにおける複素透磁率の実数部の値(μ')と50
0MHzにおける複素透磁率の虚数部の値(μ'')を測
定した。また、比抵抗(ρ)を4端子法により測定し
た。図1に示す三角組成図に、前記の方法で製造したC
o−Fe−Hf−O系の薄膜試料(A、B、C、D、
E、F、G)における(Co+Fe)含有量とHf含有
量とO含有量に対する透磁率(μ'、μ'')と比抵抗
(ρ)の測定結果を示す。 図1に示す結果から、Hf
とOの濃度が高くなるに従って比抵抗が高くなり、これ
に伴ってQ(=μ'/μ'')の値が高くなり、高周波で
の損失は小さくなる。従って図1に示したA、B、Cの
試料は、アンテナや平面型磁気素子(トランス、インダ
クタ)として好適である。また、E、F、Gの試料は5
00MHz付近の使用ではμ''の値が高いので高周波帯
域での損失が高いことになり、電波吸収体として好適で
ある。ただし、前記の組成による応用区分は絶対的なも
のではなく、使用する周波数帯域や膜厚が変化すれば、
それに伴って変わってくるのは勿論である。
【0014】次に、Co46.5Fe17.5Hf14.421.6
る組成の合金膜の、高分解能透過型電子顕微鏡写真の模
式図を図2に示す。また、これに加えてこの試料につい
て電子線回折、X線回折を行った結果、この膜は3〜5
nm程度の粒径の体心立方構造の超微細な結晶粒と、そ
れを取り囲むように粒界に存在する非晶質相(図2に斜
線で示す領域)からなっていることが判明した。図3
に、種々のCo、Feの組成比率におけるCo−Fe−
Hf−O膜の、成膜直後(as−depo.)の状態で
のX線回折像を示す。また、図中には100MHzにお
けるμ'の値も併せて示した。図中、Fe55Hf
1134、Co65Hf1223は比較例である。Fe55Hf
1134には、bcc(110)の小さいピークと、2θ
=47°付近にアモルファスを示すハローが観察され、
bcc相とアモルファス相からなることがわかる。これ
にCoを加えていくと、bcc(110)の回折線は徐
々にブロードになり、hcp相を示すブロードな回折線
が現れる。Feを全てCoで置換したCo65Hf1223
では、hcp相からの微小な回折線とハローが現れてお
り、この試料は微細なhcp相とアモルファス相からな
ると推察され、μ'の値は小さく、十分な軟磁気特性は
得られない。これらの結果から、本発明の高周波用軟磁
性合金は、成膜直後に微細な結晶組織を有しており、さ
らにアモルファス相は全組織の30%以上、より好まし
くは30〜80%(面積%)を占めていることがわか
る。
【0015】また、Co46.5Fe17.5Hf14.421.6
る組成の試料について、透磁率の周波数依存性を測定し
た結果を図4に示す。この試料は、1GHzにおいても
Q≒2であり、従来材料よりもGHz帯域において低損
失であり、従って平面型磁気素子(トランス、インダク
タ)、アンテナの磁心として好適であることが判明し
た。また、この例の試料は、Fe−M−O系の材料より
もGHz帯域においてμ''が高いので、GHz帯域にお
ける電波吸収体の部材としても好適である。さらに、図
5にCo44.3Fe19.1Hf14.522.1なる組成の試料の
μ'、μ''の周波数依存性を示す。この試料は、静磁界
中で成膜した直後の状態であり、透磁率は磁化困難軸
(hard axis)方向の測定結果である。図5か
ら明らかなように、μ'は1GHzまでほぼ一定であ
り、μ''も低く抑えられており、性能係数Qは100M
Hzで61であり、1GHzにおいても2.9である。
この試料の飽和磁化は1.1Tで、比抵抗(ρ)は14
00μΩ・cmと非常に高い値であった。また、自然共
鳴周波数も1GHzよりも大きな値であり、2GHz以
上の値を示しているものと思われる。なお、比較例とし
て図5に示したFe61Hf1326なる組成の試料は、静
磁界中で400℃×3時間の熱処理を施したものであ
り、μ'は高いもののμ''も高く、100MHzにおい
てQ=26と低い値にとどまっている。
【0016】図6(A)は、成膜直後の状態におけるF
55Hf1134なる組成の膜の高分解TEM(Tran
smission Electron Microsc
opy)像、図6(B)は、Fe55Hf1134なる組成
の膜のEDX(EnergyDispersive X
−ray Spectroscopy)による微小領域
の組成分析結果を示したものであり、図7(A)は、成
膜直後の状態におけるCo44.3Fe19.1Hf14.522.1
なる組成の膜の高分解TEM像、図7(B)は、Co
44.3Fe19.1Hf14.522.1なる組成の膜のEDXによ
る微小領域の組成分析結果を示したものである。図6
(A)のTEM像より、Fe55Hf1134なる組成の膜
は、粒径10nm以下の微細なbcc結晶粒(図中番号
1)と、粒間のアモルファス相(図中番号2)からなる
ことがわかる。図6(B)の組成分析の結果から、bc
c相中にもHf、O元素が含まれていることが推察され
るが、アモルファス相中のHf、O濃度が結晶相中のH
f、O濃度に比べて高くなっていることがわかる。ま
た、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1なる組成の膜も同
様に、微細なbcc相とアモルファス相の混相組織を有
しているが、bcc結晶粒径は5nm以下であり、Fe
55Hf1134なる組成の膜の粒径に比べて非常に微細に
なっていることがわかる。EDXによる微小領域の組成
分析結果からは、結晶相内もアモルファス相内もおよそ
Co:Fe=7:3であるが、HfとOのピークはアモ
ルファス相内の方が結晶相内より大きく、Co44.3Fe
19.1Hf14 .522.1なる組成の膜においても、Hfおよ
びOはアモルファス相中に高濃度に含まれていると考え
られる。
【0017】図8は、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
なる組成の試料の磁化曲線を、Fe 61Hf1326なる組
成の試料と比較したものである。図中、Aの曲線は、磁
化容易軸(easy axis)方向の磁化曲線を示
し、Bの曲線は磁化困難軸方向の磁化曲線を示す。図よ
り明らかなように、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1
る組成の試料の異方性磁界Hkは4.8kA/mで、F
61Hf1326なる組成の試料の約4倍の大きさであ
り、異方性エネルギーKuも大きくなっている。また、
B−Hトレーサーにて測定した異方性の角度分散α90
値もCo44.3Fe19 .1Hf14.522.1なる組成の試料の
方が小さくなっており、Feの大部分をCoで置換する
ことにより強い一軸磁気異方性が付与されていることが
わかる。その結果、図4、図5で示したように周波数特
性が改善されたものと考えられる。
【0018】次に、本発明に係る組成系で前記とは異な
る組成の各種合金膜を前記と同等の方法で製造し、各合
金膜試料について500MHzにおける複素透磁率の実
数部の値(μ')と虚数部の値(μ'')を測定するとと
もに、電子線回折、X線回折を行った結果特定できた結
晶構造と平均結晶粒径を表1に記載する。
【0019】
【表1】
【0020】以上のような特性から、本発明に係る軟磁
性合金は、Fe−M−O系の微細結晶とアモルファス相
との混合型の、本発明者らが先に特許出願している軟磁
性合金と同様に比抵抗が高いために、渦電流損失が少な
い特徴があり、さらに、Fe−M−O系の軟磁性合金よ
りも一軸磁気異方性が数倍大きく、自然共鳴周波数がよ
り高周波数帯域側に移動しているので、GHz帯域での
自然共鳴損失を低減できていることが明らかである。
【0021】図9は、Fe−Hf−O系の膜およびCo
−Fe−Hf−O系の膜の複素初透磁率の実数部μ'と
性能係数Q(=μ'/μ'')の周波数特性を、これまで
に知られている主な合金系軟磁性薄膜と比較したもので
ある。従来の軟磁性薄膜は、1MHz付近でのμ'は高
いが比抵抗(ρ)が小さいため、渦電流による損失によ
りμ'は周波数の増加とともに低下する。これに対し
て、高抵抗率のFe−Hf−O系の膜は、1〜10MH
zの比較的低周波領域におけるμ'は低いものの、10
0MHz以上までほとんど一定であり、約40MHz以
上では、従来の軟磁性薄膜より高くなることがわかる。
また、高い比抵抗に加えて強い一軸磁気異方性を有する
Co44.3Fe19.1Hf14.522.1なる組成の膜において
は、μ'の値としては170程度に低下するが、1GH
zまでほぼフラットな周波数特性を示している。ここ
で、Fe62Hf1127膜は、静磁界を印加しながら成膜
した直後の状態、Fe61Hf1326膜は、無磁界中成膜
後に静磁界中熱処理したものであり、いずれも磁化困難
軸方向の測定結果である。一方Q値においても、Fe−
Hf−O系の膜およびCo−Fe−Hf−O系の膜は、
数十MHz以上の高周波数領域において高い値を示す。
特に、Co44.3Fe19.1Hf14.522.1なる組成の膜で
は、100MHzにおいて61、1GHzにおいても
2.9である。このように、Fe−Hf−O系の膜およ
びCo−Fe−Hf−O系の膜は、MHz〜GHzの広
い周波数帯域において優れた軟磁気特性を有する。
【0022】図10(a)、(b)に、前記組成の軟磁
性合金の磁性膜を用いて作成された平面型磁気素子(イ
ンダクタ)の第一の構造例を示す。この例のインダクタ
Bにおいては、基板1の両面にスパイラル状の平面コイ
ル2、2が形成され、各コイル2、2と基板面を覆って
絶縁膜3が設けられ、各絶縁膜3の上に磁性膜4が被覆
され、基板1の中央部分に形成したスルーホール5を介
してコイル2、2の中心部分が電気的に接続されてい
る。また、基板1の両面のコイル2、2からそれぞれ端
子6が基板1の外方に出されている。この構成のインダ
クタBにおいては、平面コイル2、2をそれぞれ絶縁膜
3を介して磁性膜4、4で挟むことにより、端子6、6
間にインダクタが構成されるようになっている。
【0023】前記基板1は、セラミック材料からなる基
板、Siウェハの基板あるいは樹脂基板などからなる。
セラミック材料で基板1を構成する場合は、アルミナ、
ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、
ステアタイト、ムライト、コージライト、フォルステラ
イト、スピネルなどの各種のものを適宜選択して用いる
ことができるが、熱膨張率をSiの熱膨張率に近づける
ために、熱電導率が大きく、曲げ強度も大きい窒化アル
ミニウムなどを用いることが好ましい。
【0024】平面コイル2は、銅、銀、金、アルミニウ
ムあるいはこれらの合金などの良導電性金属材料からな
り、インダクタンス、直流重畳特性、サイズなどに応じ
て、電気的に直列に、縦にあるいは横に絶縁膜を介して
適宜配置することができる。また、平面コイル2を並列
的に複数設けることでトランスを構成できる。さらに、
平面コイル2は、導電層を基板上に形成後、フォトエッ
チングすることにより各種の形状に作成できる。導電層
の製膜方法としては、プレス圧着、メッキ、金属溶射、
真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、ス
クリーン印刷焼成法などの適宜の方法を用いれば良い。
絶縁膜3は、平面コイル2への通電時において、磁性膜
4と導通してショートすることを防止するために設けら
れている。絶縁膜3は、ポリイミドなどの高分子フィル
ム、SiO2、ガラス、硬質炭素膜などの無機質膜から
なるものを用いることが好ましい。この絶縁膜3は、ペ
ースト印刷後に焼成する方法、溶融メッキ法、溶射、気
相メッキ、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーテ
ィングなどの方法により形成される。磁性膜4は、先に
説明した組成の軟磁性合金の膜から構成されている。
【0025】前記の如く構成されたインダクタBは、小
型かつ薄型で軽量であり、優れた磁気特性を有する磁性
膜4を有しているので、平面型磁気素子の小型軽量化に
寄与するとともに、優れたインダクタンスを示す。
【0026】図11は、前記組成の軟磁性合金の磁性膜
を用いて構成されたインダクタの第二の構造例を示す。
この例のインダクタCにおいては、基板10の上に酸化
膜11と磁性膜12と絶縁膜13とが順次積層され、絶
縁膜13上に平面コイル14が形成され、平面コイル1
4と絶縁膜13を覆って絶縁膜15が形成され、絶縁膜
15上に磁性膜16が形成されている。
【0027】前記基板10は先の例の基板1と同等の材
料からなり、磁性膜12は先の例の磁性膜4と同等の材
料からなり、絶縁膜13は先の例の絶縁膜3と同等の材
料からなる。前記酸化膜11は、基板10に例えばSi
ウェハの基板を用いた場合に、Siウェハを加熱して熱
酸化することにより形成できる。ただし、この酸化膜1
1は必須のものではなく、省略しても差し支えない。こ
の例の構成のインダクタCにおいても先に説明した例の
インダクタBと同様に、優れたインダクタンスを示し、
小型かつ軽量であり、平面型磁気素子の小型軽量化に寄
与する。また、上述した例においては、平面型磁気素子
(インダクタ)の例を示したが、例えば、一次側と二次
側のコイルを設けてトランスとして用いることも可能で
ある。
【0028】図12は本発明に係る軟磁性合金の磁性膜
20を基板シート21の一面に形成してなる電波吸収体
22の一例を示すものであり、この例において磁性膜2
0は先に説明した系の合金からなるシート状に形成され
ている。また、図13は図12の電波吸収体を複層構造
としたもので、磁性膜20を備えた基板シート21が3
層積層されて電波吸収体25が構成されている。この構
成において積層する磁性膜20、20、20はそれぞれ
先に説明した組成の軟磁性合金から形成されるが、各磁
性膜20、20、20の一軸磁気異方性の方向を交互に
90゜交差させて積層することが電磁波吸収性の面から
見て好適である。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明の軟磁性合金
は、前述した特定の組成と特定の組成比からなるCoを
主成分とする合金であり、高い飽和磁束密度を有し、高
い比抵抗を実現し、優れた透磁率を示す軟磁性合金であ
るので、GHz帯域でのQの値が大きくならず、損失の
少ない磁心を提供できるので、薄膜トランス、磁気ヘッ
ド用のコア、薄膜インダクタ、スイッチング素子などの
磁気素子の小型軽量化、高性能化に大きく寄与するもの
である。また、合金の結晶粒径は7nm以下であること
が好ましく、その場合により良好な磁気特性を得ること
ができる。
【0030】また、(Co1-ccxyzwsなる
組成式で示されたものは、飽和磁束密度を高く維持しつ
つ高比抵抗を実現でき、GHzにおよぶ高周波帯域にお
いても透磁率の実数部を高く、虚数部を適度な大きさに
制御できるので、高周波帯域でのQの値を小さくするこ
とがなく、損失の少ない磁心を提供できる。さらに、本
発明に係る範囲の組成であれば、合金の面内に一軸磁気
異方性を有しその異方性磁界を10 Oe以上とするこ
とができるとともに、比抵抗を200μΩ・cm以上あ
るいは400μΩ・cm以上にすることができる。
【0031】次に前記組成の軟磁性合金からなる磁心を
備えた平面型磁気素子(トランス、インダクタ)、電波
吸収体、アンテナであれば、GHz帯域での使用も可能
であり、インダクタとアンテナにおいてはGHz帯域で
の損失の少ない特性の優れたものを、電波吸収体におい
てはGHz帯域において吸収特性の良好なものを提供で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るFe−Hf−O系の合金膜にお
いて、各組成比の飽和磁束密度および/または比抵抗を
示す三角組成図である。
【図2】 Co46.5Fe17.5Hf14.421.6で示される
軟磁性合金膜の高分解能透過型電子顕微鏡写真の模式図
である。
【図3】 本発明の実施例および比較例の合金膜におけ
るX線回折の結果を示すグラフである。
【図4】 本発明の実施例の合金膜において透磁率の周
波数依存性を示すグラフである。
【図5】 本発明の実施例および比較例の合金膜におけ
る透磁率の周波数依存性を示すグラフである。
【図6】 図6(A)は、Fe55Hf1134なる組成の
膜の、成膜直後の状態における高分解TEM像、図6
(B)は、Fe55Hf1134なる組成の膜の、EDXに
よる微小領域の組成分析結果を示すチャートである。
【図7】 図7(A)は、Co44.3Fe19.1Hf14.5
22.1なる組成の膜の、成膜直後の状態における高分解T
EM像、図7(B)は、Co44.3Fe19.1Hf14.5
22.1なる組成の膜の、EDXによる微小領域の組成分析
結果を示すチャートである。
【図8】 本発明の実施例および比較例の合金膜の磁化
曲線を示すグラフである。
【図9】 Fe−Hf−O系の膜およびCo−Fe−H
f−O系の膜の複素初透磁率の実数部μ'と性能係数Q
(=μ'/μ'')の周波数特性を、これまでに報告され
ている主な合金系軟磁性薄膜と比較した結果を示すグラ
フである。
【図10】 図10(a)は本発明に係る平面型磁気素
子の第一の例を示す平面図、図10(b)は図10
(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図11】 本発明に係る平面型磁気素子の第二の例を
示す断面図である。
【図12】 本発明に係る電磁場吸収シートの第一の例
を示す斜視図である。
【図13】 本発明に係る電磁場吸収シートの第二の例
を示す斜視図である。
【図14】 従来材料における透磁率の周波数依存性を
示すグラフである。
【符号の説明】
B、C 平面型磁気素子(インダクタ)、 22、25 電波吸収体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早川 康男 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内 (72)発明者 牧野 彰宏 東京都大田区雪谷大塚町1番7号 アルプ ス電気株式会社内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Coを主成分とし、さらに、Fe、N
    i、Pd、Mn、Alより選択された一種または二種以
    上の元素Tを主要成分とする面心立方構造または体心立
    方構造もしくは両者が混合した平均結晶粒径30nm以
    下の結晶相と、それら結晶相を取り囲むTi、Zr、H
    f、Nb、Ta、Mo、Wと希土類元素から選ばれる一
    種または二種以上の元素M、O、および元素Mの酸化物
    の少なくとも一種以上と、Feと元素Tを含む強磁性の
    非晶質相とを主体としてなることを特徴とする高周波用
    軟磁性合金。
  2. 【請求項2】 平均結晶粒径が7nm以下であることを
    特徴とする請求項1に記載の高周波用軟磁性合金。
  3. 【請求項3】 前記高周波用軟磁性合金が、下記の組成
    からなることを特徴とする請求項1記載の高周波用軟磁
    性合金。 (Co1-ccxyzws ただし、TはFe、Ni、Pd、Mn、Alから選ばれ
    た一種または二種以上の元素であり、MはTi、Zr、
    Hf、Nb、Ta、Mo、Wと希土類元素から選ばれた
    一種または二種以上の元素であり、QはO、N、C、B
    から選ばれた一種または二種以上の元素であり、XはS
    iもしくはCrのうちの一種または二種の元素であり、
    ZはAu、Agと白金族の元素のうちの一種または二種
    以上の元素であり、組成比を示すcは、0.05≦c≦
    0.5、y、z、w、sはat%で、3≦y≦30、7
    ≦z≦40、0≦w≦20、0≦s≦20の関係を満足
    し、残部はxと不可避不純物である。
  4. 【請求項4】 前記組成比yとzがat%で5≦y≦2
    0、10≦z≦30であることを特徴とする請求項3記
    載の高周波用軟磁性合金。
  5. 【請求項5】 前記元素TがFeであることを特徴とす
    る請求項3記載の高周波用軟磁性合金。
  6. 【請求項6】 前記高周波用軟磁性合金の結晶面内に一
    軸磁気異方性を有し、その異方性磁界が10 Oe以上
    であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載
    の高周波用軟磁性合金。
  7. 【請求項7】 比抵抗が200μΩ・cm以上であるこ
    とを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高周波
    用軟磁性合金。
  8. 【請求項8】 比抵抗が400μΩ・cm以上であるこ
    とを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の高周波
    用軟磁性合金。
  9. 【請求項9】 前記高周波用軟磁性合金の共鳴周波数が
    2GHz以上であることを特徴とする請求項1〜8のい
    ずれかに記載の高周波用軟磁性合金。
  10. 【請求項10】 前記高周波用軟磁性合金は、成膜直後
    において非晶質相が全組織の30%以上の面積を占めて
    いることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の
    高周波用軟磁性合金。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の高
    周波用軟磁性合金から磁心が構成されてなることを特徴
    とする平面型磁気素子。
  12. 【請求項12】 請求項1〜10のいずれかに記載の高
    周波用軟磁性合金を要素として含むことを特徴とするア
    ンテナ。
  13. 【請求項13】 請求項1〜10のいずれかに記載の高
    周波用軟磁性合金を要素として含むことを特徴とする電
    波吸収体。
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