JPH10316418A - 酵素を用いた金属酸化物前駆体の調製方法 - Google Patents

酵素を用いた金属酸化物前駆体の調製方法

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JPH10316418A
JPH10316418A JP9121312A JP12131297A JPH10316418A JP H10316418 A JPH10316418 A JP H10316418A JP 9121312 A JP9121312 A JP 9121312A JP 12131297 A JP12131297 A JP 12131297A JP H10316418 A JPH10316418 A JP H10316418A
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metal oxide
oxide precursor
urease
metal
urea
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JP9121312A
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Minoru Takahashi
実 高橋
Hideo Unuma
英郎 鵜沼
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Nagase and Co Ltd
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Nagase and Co Ltd
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 粒子の形状および/または粒径がより正確に
制御された金属酸化物前駆体の調製方法を提供するこ
と。 【解決手段】 本発明の金属酸化物前駆体の調製方法
は、金属塩、尿素、およびウレアーゼを含む水溶液から
金属酸化物前駆体を沈殿させる工程を包含する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属酸化物前駆体
の調製方法に関する。より詳細には、本発明は、酵素を
用いて形状および粒径の制御された金属酸化物前駆体を
調製する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化アルミニウム(以下アルミナともい
う)などの金属酸化物の粉末はセラミックスの原料とし
て用いられている。セラミックスは幅広い用途に用いら
れており、緻密なセラミックスは高温構造材料、電子回
路用基板、電気絶縁材、ナトリウムランプ発光管などに
用いられ、そして多孔質のセラミックスは触媒担体、耐
火物などに用いられている。これらのセラミックス製品
は、通常、直径0.1〜1μm程度の金属酸化物の粉末を
所望の形状に成形し焼結して作られる。また、粉末形状
の金属酸化物自体も、研磨材、高分子材料のフィラー、
クロマトグラフィー用分離材などの用途に広く用いられ
ている。
【0003】上記のような用途に用いられる金属酸化物
粉末は、形状が球形に近く、かつ粒径が揃っていること
が要求される。特に焼結原料に用いられる粉末の粒子形
状および/または粒径が不揃いだと、成形時に粒子の充
填が不十分な部分(欠陥)が発生するために、焼結の進
行が妨げられたり、割れや変形などの原因となる。
【0004】金属酸化物粉末の製造方法は、最終的な製
品の種類や要求される純度により異なるが、以下の2種
類に大別される。
【0005】第一の方法はボーキサイトなどの原料鉱物
から金属酸化物を精製しこれを粉砕する方法である(バ
イヤー法)。この方法では例えばアルミナの場合およそ
99%程度の純度のものが得られ得る。これは電気絶縁材
または耐火物など、比較的純度が問題にならない用途に
用いられ得る。
【0006】第二の方法は、高純度の金属塩や有機金属
化合物を加水分解して金属水酸化物などの金属酸化物前
駆体とし、これを高温(例えばアルミナの場合、約1200
℃程度)で仮焼して金属酸化物とする方法である。この
ようにして得られる高純度の金属酸化物は電子回路用基
板、高温構造材料(高級耐火物)、またはクロマトグラ
フィー用分離材などに用いられ得る。
【0007】金属酸化物前駆体の製造方法としては、種
々の方法が実用化されている。出発物質として有機金属
化合物を使用する方法、あるいは純粋な金属を使用する
方法などが知られているが、最も廉価かつ単純な方法
は、金属塩水溶液とアンモニア水溶液を混合して金属水
酸化物を得る方法である。
【0008】 Mn++nNH4OH → M(OH)n+nNH4 + (I) (ここでMは金属を表す。) しかし、上式の反応に従って単純に2種類の水溶液を混
合すると、水酸化物の局所的かつ急激な核生成のために
通常はコロイド状の沈殿が得られる。コロイド状の沈澱
は洗浄や濾過がしにくく、また乾燥後には強く固化して
しまうなどの問題があり、取り扱いにくい。さらに上記
の方法で沈澱粒子の形状や大きさを制御するには、沈澱
を母液とともに放置する(「熟成」とよばれる)工程な
どが必要とされ、そのため非常に長時間を要する。
【0009】コロイド状の沈澱生成を回避し、粉末状の
沈澱を得るための方法が、古くから分析化学の手法とし
て一般に知られている均一沈澱法である(H.H.Willard,
N.K.Tang, J.Am.Chem.Soc., 59, 1190 (1937))。これ
は、金属塩水溶液にアンモニア水溶液を混合するかわり
に、金属塩水溶液にあらかじめ尿素を溶解させておき
(この段階では沈澱は生成しない)、これを約70℃〜約
90℃に加熱することにより下式の反応を徐々に進行させ
て、反応系内にNH4OHを徐々に供給するという方法
である。
【0010】 (NH2)2CO+3H2O → 2NH4OH+CO2 (II) このようにすると、(I)式の反応が見かけ上徐々に進
行することになるので水酸化物の急激な核形成が抑えら
れ、そのため比較的粒径の揃った(通常0.1〜1μm程
度の)取り扱いやすい粉末状の金属水酸化物の沈澱が得
られ得る(J.E.Blendell, H.K.Bowen, およびR.L.Cobl
e, Am. Ceram. Soc. Bull., 63,797-802(1984)など)。
これまでこの均一沈殿法によって、アルミナ、チタニア
(酸化チタン)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸
化インジウム/酸化錫複合粒子などの種々の酸化物の前
駆体の調製例が報告されている。
【0011】上記のようにして得られた金属酸化物粉末
を約1000〜約1200℃で焼成すれば、ほぼ沈澱粒子の形状
を保持したまま高純度の金属酸化物粉末になる。このよ
うにして作られる金属酸化物粉末は、強力な粉砕操作を
行わなくても(軽く解砕する程度で)、セラミックスの
原料粉末として、あるいは粒径のそろった粉末製品とし
て使用することができる。
【0012】しかし、均一沈澱法にも下記のようないく
つかの問題点がある。
【0013】(1)(II)式の尿素の分解速度が水溶液
の加熱温度に大きく依存する。そのため(I)式の見か
けの反応の進行速度を正確に、かつ幅広い範囲で制御す
ることは容易ではない。そのため、生成する沈殿粒子の
粒径を狭い範囲でそろえることは難しい。
【0014】(2)水溶液を加熱する必要があるため、
一旦生成した粉末状沈澱の一部が溶媒に再溶解し得、こ
れが再析出し得る。このため、得られる生成物は非晶質
の化合物と結晶質の化合物との混合物になる傾向があ
る。例えば、アルミニウム塩を使用してアルミナ前駆体
を沈殿させる場合、生成物は球形かつ非晶質の水酸化ア
ルミニウム(Al(OH)3)と針状かつ結晶質の擬べー
マイト(AlOOH)との混合物になることが報告され
ている(H.Nagai, Y.Oshima, K.Hirano および A.Kato,
Br.Ceram.Trans., 92, 114 (1993)など)。針状の析出
物の量は加熱時問が長くなるにつれて増加して、粒子の
形状が不均一となる。このことは上に述べたように粉末
を焼結体原料として用いる場合に特に不都合なものとな
り得る。
【0015】以上のように、従来の均一沈澱法では適正
な加熱時間の判断が困難であり、また生成する粒子の形
状および粒径を正確に制御することが難しいという問題
がある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来の
課題の解決を意図するものであり、その目的は、粒子の
形状および/または粒径が制御された金属酸化物前駆体
を調製する方法を提供することにある。本発明の他の目
的は、金属酸化物前駆体の沈殿生成を室温程度の穏やか
な条件で行うことにより、沈殿の溶解および再析出によ
る結晶粒子の析出を防ぎ、均一な形状の金属酸化物前駆
体を調製する方法を提供することにある。本発明のさら
なる目的は、そのような金属酸化物前駆体から得られる
粒子の形状および/または粒径が制御された金属酸化物
を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明の金属酸化物前駆
体の調製方法は、金属塩、尿素、およびウレアーゼを含
む水溶液から金属酸化物前駆体を沈殿させる工程を包含
する。
【0018】好適な実施態様において、上記金属塩は、
アルミニウム、ジルコニウム、チタン、鉄からなる群か
ら選択される金属の塩である。
【0019】さらに他の好適な実施態様において、上記
水溶液は、上記金属塩に対して過剰量の尿素を含む。
【0020】本発明によれば、本発明の方法を用いて調
製される金属酸化物前駆体もまた提供される。
【0021】好適な実施態様において、上記金属酸化物
前駆体は金属水酸化物である。
【0022】他の好適な実施態様において、上記金属酸
化物前駆体は、水酸化アルミニウムを含有し、実質的に
擬ベーマイトを含まない。
【0023】本発明の金属酸化物の調製方法は、本発明
の方法を用いて調製される金属酸化物前駆体を仮焼する
工程を包含する。
【0024】本発明によれば、本発明の方法によって得
られる金属酸化物もまた提供される。
【0025】
【発明の実施の形態】本明細書中において、金属酸化物
前駆体とは、仮焼などの手段によって目的とする金属酸
化物となり得る任意の物質を意味する。金属酸化物前駆
体は、通常、金属の水酸化物、酸水酸化物、炭酸塩、シ
ュウ酸塩などである。例えば、アルミナの前駆体として
はAl(OH)3(水酸化アルミニウム)、AlOOH
(ベーマイト、ダイアスポア)などが挙げられる。代表
的には金属酸化物前駆体は金属水酸化物である。
【0026】本発明の金属酸化物前駆体の調製方法は、
上述のように金属塩、尿素、およびウレアーゼを含む水
溶液から金属酸化物前駆体を沈殿させる工程を包含す
る。本発明の方法によれば、均一沈殿法において、前出
の(II)式: (NH2)2CO+3H2O → 2NH4OH+CO2 (II) で表される尿素の加水分解が、尿素分解酵素(ウレアー
ゼ)の作用によって行われる。従って、尿素がウレアー
ゼに対して過剰量存在すれば、ウレアーゼによる尿素の
分解速度はウレアーゼ濃度に依存する。従って、ウレア
ーゼの量と反応温度とを調節することによって、分解速
度を幅広い範囲で正確に制御することが可能である。こ
れに対して従来の均一沈殿法の場合、上述のように尿素
の分解反応は加熱によって進行するので、その反応速度
を幅広い速度範囲で正確に制御することは困難である。
【0027】金属水酸化物は前出の(I)式 Mn++nNH4OH → M(OH)n+nNH4 + (I) で示されるように、尿素の加水分解で得られたアンモニ
アと金属塩との反応によって生成する。従って金属水酸
化物の見かけの生成速度を決めるのは尿素の分解速度で
ある。本発明の方法によれば、上述のようにウレアーゼ
を用いることによって尿素の分解速度を正確に制御する
ことが可能となるため、結果として(I)式の反応速度
(すなわち沈殿形成速度)も正確に制御することが可能
となる。そのため、粒径が精密に制御された金属水酸化
物の粒子が得られ得る。
【0028】さらに、ウレアーゼによる尿素の分解反応
は室温付近(代表的には約10℃〜約50℃)の穏やかな条
件下で進行するため、一旦沈殿した金属水酸化物の加熱
による溶解、再析出による結晶性物質の析出も防ぐこと
ができる。
【0029】本発明によって提供される、尿素/ウレア
ーゼの組み合わせを金属酸化物前駆体の合成に応用する
技術は従来知られていない。尿素/ウレアーゼの組み合
わせを金属酸化物(アルミナ)の成形に利用する技術が
報告されている(F.H.Baader他 Ceramics Transaction
s, 51, 463-67 (1995))。しかしこれは、すでに合成さ
れた金属酸化物粉末を凝析して成形するための方法であ
り、本発明の方法とは全く異なる。
【0030】ウレアーゼ以外の酵素を有機−無機複合材
料の合成に応用した例として、リン酸カルシウムと生体
有機物質であるコラーゲンとの複合体を作るために、ア
ルカリフォスファターゼでグリセロリン酸を分解し、そ
れによって生じたリン酸イオンとあらかじめ加えておい
たカルシウムイオンとを反応させるという方法が報告さ
れている(E.Banks, S.Nakajima, L.C.Shapiro, O.Tile
vitz, J.R.Alonzo,およびR.R.Chianel1i, Science, 19
8, 1164-66 (1977);Y.Doi, T.Horiguchi, Y.Moriwaki,
H.Kitago, T.Kajimoto,およびY.Iwayama, J.Biomed.Ma
ter.Res., 31,43-49 (1996)など)。しかし、これらの
研究は、セラミックスの原料となる金属酸化物前駆体の
合成とは無関係であり、また、反応速度とそれに伴う生
成物の粒径の制御を目的とするものではない。
【0031】本発明の方法によって金属酸化物前駆体を
調製するための出発物質として用いられる金属塩は、ア
ルミニウム、ガリウム、ジルコニウム、チタン、インジ
ウム、スズ、鉄、ニッケル、コバルト、バナジウム、ニ
オブ、タンタル、クロムなどの任意の金属の塩である。
金属の種類は、金属酸化物の最終的な用途に応じて適宜
選択される。この金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩
酸塩(塩化物)などの当該分野で用いられる任意の塩が
使用され得る。使用される塩の種類は、金属の種類に応
じて適宜選択される。例えば、アルミニウム塩から均一
沈殿法を用いて金属酸化物前駆体を調製する場合、硫酸
アルミニウムを用いると粒子状の濾過しやすい沈殿が生
じ易いのに対し、硝酸アルミニウムまたは塩化アルミニ
ウムを用いるとコロイド状の沈殿が生じる傾向にあるこ
とが報告されている(藤田、松田、香山、窯業協会誌、
83, 586-88 (1975))。従って、本発明の方法において
も、金属塩としてアルミニウム塩を使用する場合には、
硫酸アルミニウムを使用することが好ましい。好適な金
属塩の種類は、使用する金属に応じて当業者が容易に選
択し得る。
【0032】本発明によれば、金属酸化物前駆体は、ま
ず金属塩、尿素、およびウレアーゼを含む水溶液を調製
し、次いでこの水溶液から金属酸化物前駆体を沈殿させ
ることによって調製される。水溶液は単に各成分を混合
することによって調製され得る。各成分を加える順序は
重要ではないが、通常、金属塩と尿素とを含む水溶液を
調製し、この水溶液にウレアーゼを加えることによって
調製される。水溶液は、本発明の目的に好ましくない影
響を与えない限り、水に加えてアルコールなどの水溶性
溶媒を含有し得る。さらに、水溶液は、上記成分に加え
て、本発明の目的に好ましくない影響を与えない限り、
必要に応じて任意の他の成分、例えば沈殿形成を制御す
るための塩類などを含有し得る。これらの任意成分は、
必要に応じて当業者が適宜選択し得る。
【0033】この水溶液における金属塩の初期濃度は金
属の種類によって異なるが、好適には2〜500mmol/L、
より好適には5〜200mmol/L程度である。アルミニウム
塩の場合、好適には5〜150mmol/L、より好適には5〜5
0mmol/L程度である。金属塩の初期濃度が低すぎると沈
殿が生成しにくく、他方、初期濃度が高すぎると沈殿が
完結しない場合がある。
【0034】尿素は、金属塩に対して過剰量で水溶液中
に含まれることが好ましい。好適には、水溶液は初期濃
度で、金属酸化物1モルに対して約3モル以上、より好
適には約10モルから約20モル、最も好適には約10モルか
ら約15モルの尿素を含む。また、上述のように尿素はウ
レアーゼに対して過剰に存在することが好ましい。尿素
が金属塩に対して少なすぎると沈殿が完結しない場合が
ある。また尿素がウレアーゼに対して少なすぎると反応
速度の制御が困難になり得る。尿素が多過ぎても実質的
な問題はないが、経済的な観点からあまり多すぎても利
点はない。
【0035】本発明の方法において用いられるウレアー
ゼの種類は特に限定されないが、用いられる金属塩水溶
液のpH領域(通常pH3〜4程度)で失活するような
ウレアーゼを使用することは好ましくない。水溶液にお
けるウレアーゼの初期濃度は、尿素の分解が急激に進ま
ない程度に低くすることが好ましい。後述の実施例で示
されるように、本発明の方法によれば、金属酸化物前駆
体の沈殿形成速度は金属塩濃度が一定であれば尿素濃度
にはほとんど依存せずウレアーゼ濃度に依存する。従っ
て、ウレアーゼの初期濃度を調節することにより、得ら
れる金属酸化物前駆体の沈殿の粒径を広い範囲で制御す
ることが可能となる。ウレアーゼの初期濃度を低くする
と沈殿形成速度は遅くなるため、得られる沈殿粒子の粒
径は相対的に大きくなり、ウレアーゼの初期濃度を高く
すると沈殿形成速度は早くなるため、得られる沈殿粒子
の粒径は相対的に小さくなる。このように、ウレアーゼ
の初期濃度は目的に応じて広い範囲で変更され得るが、
好適にはウレアーゼの初期濃度は1〜1000U(ユニッ
ト)/L程度である。
【0036】金属塩、尿素、およびウレアーゼを含む水
溶液を上述のように調製すると、ウレアーゼによる尿素
の分解によるアンモニアの生成に伴って、金属酸化物前
駆体の沈殿が徐々に進行する。この反応は、通常、金属
塩、尿素、およびウレアーゼを含む水溶液を調製した
後、これを室温付近、すなわち約10℃〜約50℃、好まし
くは約15℃〜約35℃、より好ましくは約20℃〜約30℃の
温度条件下に、静置またはゆるやかに撹拌しながら保持
することによって進行する。ウレアーゼによる尿素の分
解が進行するにつれて水溶液のpHの緩慢な上昇および
金属酸化物前駆体の沈澱析出による白濁が確認できる。
中性付近のpHになると金属塩の中和加水分解と金属酸
化物前駆体の沈澱生成が完結する。前述のように、完結
に要する時間は、金属塩濃度が一定の場合、ウレアーゼ
濃度に依存する。
【0037】本発明の金属酸化物前駆体の調製方法によ
って得られる金属酸化物前駆体は、上述のように通常、
非晶質の金属水酸化物である。本発明の方法によれば、
上述のように室温付近の穏やかな条件下で反応を進行さ
せることができるので、金属水酸化物の溶解、再析出に
よる結晶性の金属酸化物前駆体の形成が抑制される。結
晶性の金属酸化物前駆体は通常、針状などの非球形の形
状である。このような非球形の粒子を含む金属酸化物前
駆体からは、やはり非球形の粒子を含む、形状の不均一
な金属酸化物が得られる。形状の不均一な金属酸化物
は、特に焼結原料として用いる場合に、割れや変形など
を生じる原因となり得るため好ましくない。図1に本発
明の方法で調製した酸化アルミニウム前駆体の走査型電
子顕微鏡(SEM)写真(図1(A))と、従来の加熱による
均一沈殿法で調製した酸化アルミニウム前駆体の走査型
電子顕微鏡写真(図1(B))を示す。図1から明らかな
ように、本発明の方法によれば、粒径の揃った実質的に
球形の粒子として酸化アルミニウム前駆体が得られるの
に対し、従来の加熱による均一沈殿法の場合、細長い針
状結晶が混入した形状の不均一な酸化アルミニウム前駆
体となる。
【0038】本発明の方法によって得られる金属酸化物
前駆体は、上記のように望ましくない結晶性の金属酸化
物前駆体の形成が抑制されるため、実質的に非晶質であ
り得る。ここで実質的に非晶質であるとは、X線回折測
定で測定した場合、結晶構造に由来するピークが検出さ
れないことを意味する。具体的には、実質的に非晶質で
あるとは、結晶性成分の含量が金属酸化物前駆体全体の
約5重量%未満、好ましくは約1重量%未満であること
を意味する。例えば、本発明の方法によって酸化アルミ
ニウム前駆体を調製する場合には、得られる酸化アルミ
ニウム前駆体は、ほぼ水酸化アルミニウムであり得、実
質的に擬ベーマイトの針状結晶を含まない。図2に、本
発明の方法(酵素法)で調製した酸化アルミニウム前駆
体およびその仮焼生成物の粉末X線回折スペクトル(図
2(A))と、従来の加熱による均一沈殿法(加熱法)で
調製した酸化アルミニウム前駆体およびその仮焼生成物
の粉末X線回折スペクトル(図2(B))とを示す。未仮
焼の試料のスペクトルを比較すると明らかなように、本
発明の方法により得られる酸化アルミニウム前駆体の試
料では結晶の存在を示すピークが検出されないのに対
し、従来法で得られる試料では擬ベーマイト結晶に由来
するピークが検出される。
【0039】本発明の方法によれば、制御された速度で
沈殿が生じるので、得られる沈殿粒子は粒径の揃った実
質的に球形の粒子であり得る。本発明の方法により得ら
れる沈殿粒子の粒径は上述のようにウレアーゼの初期濃
度を調節することによって広い範囲で制御可能であり、
通常その平均粒径は約0.1μm〜約3.0μmである。その
粒度分布は狭い範囲内に制御され得、好ましくは粒径の
標準偏差は平均粒径に対して約±40%以内、より好まし
くは約±20%以内である。すなわち、例えば平均粒径1
μmのばあい、標準偏差は好ましくは約±0.4μm以
内、より好ましくは約±0.2μm以内である。従って、
粒度分布は好ましくは0.6μm〜1.4μm程度以内、より
好ましくは0.8μm〜1.2μm程度以内である。
【0040】本発明の方法によって得られる金属酸化物
前駆体を仮焼することによって、金属酸化物が得られ
る。仮焼は通常、約1000℃〜1500℃、好ましくは約1000
℃〜約1200℃で行われる。図1(A)に示されるように、
本発明の方法で得られる酸化アルミニウム前駆体は約10
00℃の仮焼によりγ-アルミナへに転移し得、約1200℃
の仮焼によりα-アルミナに転移し得る。
【0041】仮焼して得られる金属酸化物は仮焼前の金
属酸化物前駆体の形状をほぼ保ち得る。従って、本発明
の方法によって得られる実質的に球形で粒径の揃った均
一な金属酸化物前駆体から、同様に実質的に球形で粒径
の揃った均一な金属酸化物を得ることができる。このよ
うに本発明によれば、仮焼して得られた金属酸化物をさ
らに粉砕したり粒度調整を行うなどの煩雑な操作を行う
ことなく、軽く解砕するだけで粒径のそろった粉末製品
として使用することが可能となる。このような均一な金
属酸化物の粉末は、特に焼結原料に適している。
【0042】
【実施例】以下、実施例と比較例により本発明をより具
体的に説明するが、本発明はこれらによって限定される
ものではない。
【0043】実施例1 表1に示す4種類の水溶液(A〜D)を調製し、水酸化
アルミニウムの合成を行った。ウレアーゼとしては2000
U/gのウレアーゼ(ナガプシン(長瀬産業株式会社))
を用いた
【0044】
【表1】
【0045】これらの水溶液を、pHが約6.0になるま
で室温に静置した。その後得られた沈澱を濾過し、蒸留
水で洗浄し、凍結乾燥した。沈澱粒子の形状と大きさを
走査型電子顕微鏡(SEM(日本電子製、JSM-6100))
で観察した。また、沈澱粒子の結晶相を粉末X線回折法
(株式会社リガク製、RINT1000)で調べた。
【0046】pHが約6.0になるまでに要する時間は、
Aでは40日、BおよびDでは1週間、Cでは1日であっ
た。このことから、硫酸アルミニウムの中和加水分解の
見かけの速度はウレアーゼ濃度に依存し、尿素濃度には
依存しないことがわかる。また、得られた沈澱粒子はい
くぶん凝集した球形粒子であり、その平均粒径(SEM
写真より概算)は、溶液A、B、C、およびDから得ら
れたものそれぞれについて約1.9(0.5)μm、約0.9(0.3)
μm、約0.3(0.1)μm、および約1.0(0.3)μmであった
(かっこ内は標準偏差を示す)。これらの沈澱はX線回
折測定により非晶質であり、擬べーマイトは含まれてい
ないことがわかった。これを1200℃で2時間焼成したと
ころ、50重量%の灼熱減量の後に沈澱粒子の形状をほぼ
保ちつつα-Al23に変化した。
【0047】比較例1 硫酸アルミニウム5mmol/L、尿素65mmol/Lを含む水溶液
(溶液E)を丸底フラスコに入れ、マントルヒーターで
90℃に加熱し還流下で4時間保持して水酸化アルミニウ
ムの沈澱を得た。これは従来の均一沈澱法の手法に相当
する。得られた沈澱を実施例と同様の手順で濾過、洗
浄、乾燥し、同様の評価を行った。
【0048】その結果、平均粒径約0.3μmの球形粒子
と針状の沈澱の混合物が得られた。X線回折測定による
と擬べーマイトが含まれていることが判明した。これを
1200℃で2時間焼成したところ、50重量%の灼熱減量の
後に沈澱粒子の形状をほぼ保ちつつα-Al23に変化
した。
【0049】
【発明の効果】本発明の方法によれば、高純度の金属酸
化物前駆体が廉価に得られる均一沈殿法において、ウレ
アーゼを用いて尿素の分解を室温付近で速度を制御しつ
つ行うことによって、粒子の形状および/または粒径が
より正確に制御された均一な金属酸化物前駆体を調製す
ることができる。さらにウレアーゼによる尿素の分解反
応が、室温付近の穏やかな条件下で行われ得るため、沈
殿の溶解・再析出による結晶粒子の析出を抑制すること
が可能となり、均一な金属酸化物前駆体が調製され得
る。均一沈殿法において尿素の分解を室温付近で速度を
制御しつつ行う方法は、従来知られていない。
【0050】さらに本発明の方法によれば、この金属酸
化物前駆体を仮焼して金属酸化物を調製することによ
り、粒子の形状および/または粒径がより正確に制御さ
れた高純度で均一の金属酸化物が提供される。この金属
酸化物はさらなる粒度調整の必要がないため、製造コス
トの点でも有利であり得る。
【0051】本発明の方法によって得られる金属酸化物
は、特に高純度で均一な製品が求められる電子回路用基
板、高温構造材料(高級耐火物)、またはクロマトグラ
フィー用分離材などに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)は本発明の方法で調製した酸化アル
ミニウム前駆体の走査型電子顕微鏡写真であり、図1
(B)は従来の加熱による均一沈殿法で調製した酸化アル
ミニウム前駆体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図2】 図2(A)は本発明の方法で調製した酸化アル
ミニウム前駆体およびその仮焼生成物の粉末X線回折ス
ペクトルであり、図2(B)は従来の加熱による均一沈殿
法で調製した酸化アルミニウム前駆体およびその仮焼生
成物の粉末X線回折スペクトルである。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属塩、尿素、およびウレアーゼを含む
    水溶液から金属酸化物前駆体を沈殿させる工程を包含す
    る、金属酸化物前駆体の調製方法。
  2. 【請求項2】 前記金属塩が、アルミニウム、ジルコニ
    ウム、チタン、鉄からなる群から選択される金属の塩で
    ある、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記水溶液が、前記金属塩に対して過剰
    量の尿素を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の方法を用いて調製され
    る金属酸化物前駆体。
  5. 【請求項5】 金属水酸化物である、請求項4に記載の
    金属酸化物前駆体。
  6. 【請求項6】 水酸化アルミニウムを含有し、実質的に
    擬ベーマイトを含まない、請求項4に記載の金属酸化物
    前駆体。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の方法を用いて調製され
    る金属酸化物前駆体を仮焼する工程を包含する、金属酸
    化物の調製方法。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の方法によって得られ
    る、金属酸化物。
JP9121312A 1997-05-12 1997-05-12 酵素を用いた金属酸化物前駆体の調製方法 Withdrawn JPH10316418A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014105146A (ja) * 2012-11-29 2014-06-09 Hitachi Ltd アルミナ結晶粒子分散アルミナゾルの作製方法及びこれにより得られたアルミナ結晶粒子分散アルミナゾル並びにこれを用いて作製したアルミナ被覆部材
JP2017028303A (ja) * 2011-10-04 2017-02-02 信越化学工業株式会社 ホウ素拡散用塗布剤及び半導体デバイスの製造方法
CN119500056A (zh) * 2024-12-05 2025-02-25 天津天狮学院 一种脲酶法合成具有磁性Al2O3纳米材料的方法

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