JPH1061699A - 湿式摩擦相手材の仕上げ処理方法 - Google Patents

湿式摩擦相手材の仕上げ処理方法

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JPH1061699A
JPH1061699A JP22238096A JP22238096A JPH1061699A JP H1061699 A JPH1061699 A JP H1061699A JP 22238096 A JP22238096 A JP 22238096A JP 22238096 A JP22238096 A JP 22238096A JP H1061699 A JPH1061699 A JP H1061699A
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wet
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Masato Suzuki
雅登 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 初期から摩擦係数が安定化した湿式摩擦相手
材を得る。 【解決手段】 潤滑油中で摩擦材と摩擦係合する鋼材か
らなる湿式摩擦相手材(セパレートプレート)の仕上げ
処理方法において、湿式摩擦相手材に研磨処理を施した
後、表面の硬度を高める硬化処理を施す。湿式摩擦相手
材の表面の硬度を高めることにより摩擦履歴による表面
形状の変化を抑え、それによって摩擦係数の変化を抑制
して、初期から安定した摩擦係数を得る。なお、この硬
化処理は、研磨処理後の湿式摩擦相手材を300〜50
0℃の温度で3〜30分間加熱するだけの簡易な熱処理
として行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車の自動変速機
等における潤滑油中で湿式摩擦材と摩擦係合する湿式摩
擦相手材の仕上げ処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の自動変速機においては、一般に
鋼板からなる基板(芯金)の両面に湿式摩擦材を接着し
た複数のディスクプレート(摩擦材)と、1枚板の複数
のセパレートプレート(湿式摩擦相手材)とを交互に配
した多板形クラッチを組込み、潤滑油として使用される
ATF(オートマチックトランスミッションフルード)
の中で、これらのプレートを相互に圧接して摩擦係合さ
せ、また開放することによって、駆動力を伝達または遮
断するようにしている。なお、この場合、駆動力を滑ら
かに伝達するために、摩擦材と摩擦相手材との間に回転
差を発生させつつ、つまり、半クラッチと同様の状態
で、駆動力を伝達するようにすることもなされている。
また、この自動変速機には、反力要素を固定しまた開放
するために、同様な多板形ブレーキ、或いはバンドブレ
ーキも一般に組込まれている。
【0003】そして、従来より、このような潤滑油中で
互いに摩擦係合する摩擦材と摩擦相手材とにおいて、そ
の摩擦材、即ち、湿式摩擦材としては「ペーパー摩擦
材」と呼ばれるペーパー系の湿式摩擦材が一般的であ
る。この湿式摩擦材は、パルプやアラミド繊維等の基材
繊維と摩擦調整剤や体質充填剤等の充填材を抄造して得
た抄紙体に、熱硬化性樹脂からなる樹脂結合剤を含浸
し、加熱硬化して形成したものであり、軽量で、安価で
あるだけでなく、材質が多孔質で比較的弾性にも富むた
め油吸収性が高く、しかも、耐熱性、耐磨耗性等が比較
的優れている等の特徴を有している。
【0004】また、このような湿式摩擦材に対する湿式
摩擦相手材としては、ブレーキドラム等の場合にはネズ
ミ鋳鉄が使用されるが、一般的には、強度、靱性等に優
れた材料である鋼材、即ち、通常の炭素鋼が使用されて
いる。そして具体的には、例えば、多板形クラッチまた
はブレーキの場合の湿式摩擦相手材(セパレートプレー
ト)は、冷間圧延鋼板等の鋼材板をリングプレート状に
打抜き加工し、次いでバリ取り研削等の後加工を行って
形成され、また、最終的な仕上げ処理としてブラシ研磨
等の研磨処理を施して製造される。なお、このように鋼
材から製造された湿式摩擦相手材の硬度(表面硬度)
は、一般に、ビッカース硬度(HV)において200〜
270である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
湿式摩擦材と湿式摩擦相手材とを組付けて湿式摩擦係合
装置を形成し、潤滑油中で互いに圧接して摩擦係合させ
た場合、それらは組付け直後から直ちに一定の摩擦係数
で摩擦係合する訳ではない。即ち、使用初期には、摩擦
材と摩擦相手材との馴染みが悪く、相互の当たり付きが
十分でないため、摩擦係数は一般に低く、また不安定で
ある。そして、それらの摩擦係合が繰返され、それらが
摩擦履歴を受けるに従って摩擦係数は徐々に増加し、そ
の後ようやくほぼ一定の値となって安定する。
【0006】そのような初期の摩擦係数が安定化するま
での変化率は、多いときには20%近くになることもあ
る。つまり、初期の摩擦係数が20%近く増加した後、
始めて摩擦係数が安定化する。そのため、湿式摩擦係合
装置におけるこの摩擦係数の変化は、これがクラッチま
たはブレーキとして組込まれた自動変速機の場合では、
変速フィーリングの変化を引起こすことになる。またこ
の場合、最良のフィーリング性を得るためのチューニン
グが初期状態の摩擦係数を基準として行われると、その
変化はフィーリング性をもっぱら悪化させるものとな
る。
【0007】したがって、このように初期の摩擦係数が
相対的に低く、不安定であることは、安全上問題となる
ことではないが、いずれにしても好ましいことではな
い。そのため、摩擦材と湿式摩擦相手材とを組付けて湿
式摩擦係合装置を係合する前に、予めこれらの部材の擦
り合せを行なって、そのような摩擦係数の変化を抑制
し、初期から安定した摩擦係数が得られるようにするこ
とが知られている。しかし、この方法は、手間がかかり
面倒であるだけでなく、処理条件の設定が難しく、例え
ば、短時間で処理するために高い圧力で係合させると、
湿式摩擦材を磨耗させてしまう。
【0008】そこで、本発明は、初期から安定した摩擦
係数を得ることができる湿式摩擦相手材の仕上げ処理方
法の提供を課題とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、初期段階に
おける摩擦係数の変化について詳細な検討を重ねた結
果、研磨処理を施した後の湿式摩擦相手材の表面は摩耗
し易く、摩擦係数の変化が生じる原因は、主にその表面
形状の変化にあることを突き止めた。そこで、摩擦係数
の変化を抑制するためにはその磨耗を抑制すればよいと
の観点から更に検討を重ね、研磨処理後の湿式摩擦相手
材の表面を硬化することによって、上記の課題を有効に
解決できることを見出し、また確認した。
【0010】即ち、請求項1にかかる湿式摩擦相手材の
仕上げ処理方法は、潤滑油中で摩擦材と摩擦係合する鋼
材からなる湿式摩擦相手材の仕上げ処理方法において、
その湿式摩擦相手材に研磨処理を施した後、表面の硬度
を高める硬化処理を施すことを特徴とするものである。
【0011】また、請求項2にかかる湿式摩擦相手材の
仕上げ処理方法は、請求項1における硬化処理が、研磨
処理後の湿式摩擦相手材を300〜500℃の温度で3
〜30分間加熱する熱処理からなるものである。
【0012】このように、本発明の湿式摩擦相手材の仕
上げ処理方法では、鋼材からなる湿式摩擦相手材に研磨
処理を施した後、硬化処理を施してその表面の硬度を高
めている。そのため、その磨耗が抑制され、表面形状の
変化が抑制されるため、摩擦係数の変化も抑制され、そ
の結果、初期から安定した摩擦係数を得ることができ
る。また、請求項2によれば、研磨処理後の湿式摩擦相
手材は比較的低温度で短時間の簡易な熱処理によって時
効硬化され、その表面の硬度が向上されるので、より簡
易に摩擦係数を初期から安定化させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、この湿式摩擦相手材の仕上
げ処理方法について更に詳細に説明する。
【0014】上記のように、本発明の湿式摩擦相手材の
仕上げ処理方法は、鋼材からなる湿式摩擦相手材に、最
終的な仕上げ処理として研磨処理を施した後、その表面
の硬度を高める硬化処理を施すものである。
【0015】ここで、この湿式摩擦相手材を構成する鋼
材としては、通常の炭素鋼材の他にも、高炭素鋼である
炭素工具鋼、またはこれに焼入れ性を考慮してMn,C
r,Ni,Moのような合金元素を加えた合金工具鋼、
マルエージング鋼等を用いることができる。また、この
鋼材からなる湿式摩擦相手材自体は、摩擦係合する摩擦
材の形状と対応する形状に形成され、具体的には、多板
形クラッチまたはブレーキのセパレートプレートとし
て、リングプレート或いはディスク状に形成することが
できる。そして、このような形状の湿式摩擦相手材は、
鋼材の平板をプレートカッタ(プレス機)により環状に
打抜き加工することによって、或いは円弧状に打抜いた
後複数枚組み合わせて環状に連結することによって、形
成することができる。また、湿式バンドブレーキ用のブ
レーキドラムの形態に形成することも適宜可能である。
【0016】そして、研磨処理後のこのような湿式摩擦
相手材に施す硬化処理は、少なくともその表面の硬度を
高めて、その耐摩耗性を向上することができる処理であ
ればよい。
【0017】そのような処理として最もよく知られてい
るのは、焼入れであり、高温に加熱した後急速に冷却す
る処理方法である。しかし、この方法は、硬度を大幅に
高めることができるが同時に靭性を低下させ、また、高
熱により湿式摩擦相手材が変形する可能性もある。その
ため、その硬化処理としては、内部はそのままで表面部
のみを硬化する処理、即ち、表面硬化処理が好ましい。
【0018】そして、この表面硬化処理としては、表面
層に炭素を侵入、拡散させ、炭素量を増した後、焼入れ
硬化させる浸炭処理や、鋼中に窒素を侵入させ、窒化物
を生成させて硬化させる塩浴窒化処理、ガス軟窒化処
理、酸窒化処理等の窒化処理、鋼中に炭素と窒素とを同
時に侵入、拡散させる浸炭窒化処理、窒素を侵入、拡散
させるとともに、最表面に硫化物と窒化物を主体とする
化合物層を生成させる浸硫窒化(スル・スルフ法)、或
いは、高周波誘導電流を利用した急速加熱焼入れである
高周波焼入れ処理、高周波焼入れに比べ更に硬い硬化層
が得られるレザー焼入れ処理、火炎焼入れ処理、電解焼
入れ処理等の表面焼入れ処理、更には、容射、肉盛り、
蒸着等により表面に炭化物、窒化物、ホウ化物、金属等
の硬化層を形成する被覆処理(コーティング処理)等が
挙げられる。ただし、これらの処理方法中でも、比較的
簡易であり、また所望の硬度を得るための条件設定が容
易である点では、シアン酸ナトリウムを主剤とするタフ
トライド処理を代表とする軟窒化処理が好ましい。
【0019】しかし、最も簡易な硬化処理は、研磨処理
後の湿式摩擦相手材を300〜500℃で3〜30分
間、より好ましくは、350〜450℃で5〜15分間
加熱する熱処理である。このような熱処理によれば、比
較的低温で短時間の加熱処理であるため、加熱装置を備
えた簡単な加熱炉によって、簡易に湿式摩擦相手材の表
面硬度を高めることができる。そして、この加熱条件に
よって、研磨処理後の湿式摩擦相手材の表面硬度をビッ
カース硬度HVにおいて一般に290〜350とするこ
とができ、またそれによって、初期の摩擦係数の変化率
を5%以内に抑えることができる。
【0020】なお、硬化処理による湿式摩擦相手材の表
面硬度は、耐摩耗性を向上し、摩擦係数の変化をより抑
制するためには、高いほど好ましい。しかし、湿式摩擦
相手材の表面硬度が余り高いと、それと摩擦係合する摩
擦材の摩耗を引起こすことになる。そのため、その表面
硬度は上記の290〜350が好ましく、より好ましい
のは303〜330程度である。
【0021】ところで、この湿式摩擦相手材と摩擦係合
する摩擦材としては、通常使用される湿式摩擦材、即
ち、パルプやアラミド繊維等の基材繊維と摩擦調整剤や
体質充填材等の充填材とを抄造して得た抄紙体に、熱硬
化性樹脂からなる樹脂結合剤を含浸し、加熱硬化して形
成したペーパー系摩擦材を使用することができる。そし
て、このような湿式摩擦材と湿式摩擦相手材とを潤滑油
中で摩擦係合するように組付けて形成した湿式摩擦係合
装置は、自動変速機の多板形クラッチ或いはブレーキと
して、或いは、一般の湿式クラッチまたはブレーキ等と
して適用することができる。
【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例及び比較例により更に
具体的に説明する。
【0023】図1及び図2は本発明の実施例と比較例の
仕上げ処理方法による湿式摩擦相手材の摩擦履歴試験結
果を示すものであり、図1は初期から摩擦係数が安定化
するまでの摩擦係数の変化率を示す表図、また、図2は
摩擦履歴試験前後の湿式摩擦相手材(実施例1,比較例
1)の表面形状を示す図である。
【0024】即ち、以下のように本発明の実施例及び比
較例の仕上げ処理方法によって湿式摩擦相手材(セパレ
ートプレート)を作製し、それらを湿式摩擦プレートと
共にSAE#2摩擦試験機に装着して、その摩擦係数の
安定性に関する評価を行った。また、実施例1と比較例
1の湿式摩擦相手材については、摩擦履歴試験前後の表
面形状を測定し、その変化を合わせて観察した。
【0025】〈実施例1〉冷間圧延された厚さ1.8mm
の炭素鋼材[S45C]の平板を、プレス機によりリン
グ状に打ち抜き加工し、次いでバリ取り研削を行って、
1枚板からなり、外周にスプラインまたは同様のものと
係合する係合歯を有するリングプレート状の湿式摩擦相
手材、即ち、セパレートプレートを作製した(外径12
6mm,内径106mm)。
【0026】そして、得られた湿式摩擦相手材の仕上げ
処理として、その表面に砥石入りナイロンブラシによる
ブラシ研磨処理を施した。そして更に、この研磨処理後
の湿式摩擦相手材を電気加熱炉に入れ、400℃で10
分間加熱し、次いで室内に放置して冷却した。
【0027】なお、このように、研磨処理後に400℃
×10分の熱処理を施して得られた湿式摩擦相手材は、
その表面硬度がビッカース硬度(HV)において309
であった。
【0028】〈実施例2〉実施例1における仕上げ処理
としての熱処理の条件を300℃で3分間とした以外
は、実施例1と同じ方法及び条件で湿式摩擦相手材を作
製した。そして、こうして得られた湿式摩擦相手材の表
面硬度は、HV292であった。
【0029】〈実施例3〉実施例1における仕上げ処理
としての熱処理の条件を500℃で30分間とした以外
は、実施例1と同じ方法及び条件で湿式摩擦相手材を作
製した。この湿式摩擦相手材の表面硬度は、HV298
であった。
【0030】〈実施例4〉実施例1におけるブラシ研磨
処理に代えてバレル研磨処理を施し、また、この研磨処
理後に実施例1と同じ400℃×10分の熱処理を施し
て、同様に湿式摩擦相手材を作製した。得られた湿式摩
擦相手材の表面硬度は、HV308であった。
【0031】〈比較例1〉これらの実施例1乃至実施例
3に対して、比較例1は熱処理を施さないものである。
即ち、仕上げ処理としてはブラシ研磨処理のみを行な
い、その他は実施例1と同様に湿式摩擦相手材を作製し
た。この熱処理を施さない湿式摩擦相手材は、その表面
硬度がHV248であった。
【0032】〈比較例2〉実施例1における熱処理の条
件を250℃で2分間とした以外は、実施例1と同じ方
法及び条件で湿式摩擦相手材を作製した。そして、こう
して得られた湿式摩擦相手材の表面硬度は、熱処理を施
さない比較例1よりも高いが各実施例よりも低く、HV
258であった。
【0033】〈比較例3〉実施例1における熱処理の条
件を550℃で40分間とした以外は、実施例1と同じ
方法及び条件で湿式摩擦相手材を作製した。この比較的
高い温度で長時間の熱処理を施した湿式摩擦相手材の表
面硬度は、HV263であった。
【0034】〈比較例4〉更に、実施例4に対して、熱
処理を施さないで湿式摩擦相手材を作製した。即ち、仕
上げ処理としてはバレル研磨処理のみを行ない、同様に
湿式摩擦相手材を作製した。この熱処理を施さない湿式
摩擦相手材は、その表面硬度がHV246であった。
【0035】〔評価試験〕このようにして得られた各実
施例及び比較例の湿式摩擦相手材を、湿式摩擦プレート
と共にSAE#2摩擦試験機に装着し、潤滑油中で摩擦
係合試験を2000サイクル行って、400サイクル毎
に摩擦係数(動摩擦係数)を測定した。そして、初期か
ら摩擦係数がほぼ安定化するまでの摩擦係数の変化率、
即ち、初期の摩擦係数μb とほぼ安定化した摩擦係数μ
s との差(摩擦係数の変化量,一般にμb <μs )をそ
の初期の摩擦係数μb で割った百分率[摩擦係数の変化
率(%)=(μs −μb )/μb ×100]を算出し
た。
【0036】なお、この摩擦履歴試験の試験条件は次の
とおりである。 係合回転数:3000rpm イナーシャ:0.294kg・m2 押圧荷重:2940N 潤滑油:ATF(オートフールドタイプT) 油温:120℃。
【0037】またここで、使用した湿式摩擦プレートの
湿式摩擦材はペーパ系摩擦材からなり、詳細には、パル
プ30重量%、アラミド繊維10重量%、ケイソー土2
0重量%、及びカシューダスト10重量%からなる抄紙
体に、20重量%のフェノール樹脂からなる結合剤を含
浸して熱成形したものからなる。そして、この湿式摩擦
材を、内周側に係合歯を有する湿式摩擦相手材と同様の
リング状芯金の両面に接着して、湿式摩擦プレートとし
て形成した。
【0038】実施例及び比較例の各湿式摩擦相手材につ
いて行ったこの摩擦試験の結果、即ち、摩擦係数の変化
率を、バーグラフで図1に示す。
【0039】更に、これとは別に、実施例1及び比較例
1で得られた各湿式摩擦相手材について、上記の摩擦履
歴試験(2000サイクル)前後の表面形状(表面あら
さ,凹凸)を触針式表面あらさ測定器によって測定し
た。それによって得た摩擦相手材の表面形状のチャート
を図2に示す。
【0040】〔試験結果〕図1のように、従来からの一
般的な技術に相当する比較例1及び比較例4の湿式摩擦
相手材(セパレートプレート)では、初期から摩擦係数
が安定化するまでの摩擦係数の変化率が比較的大きく、
20%近い変化率を示している。つまり、初期の摩擦係
数が20%近く上昇した後に始めて、ようやく摩擦係数
が安定化している。
【0041】これに対して、研磨処理後の湿式摩擦相手
材に更に熱処理を施してその表面硬度を向上した実施例
1乃至実施例4では、いずれも摩擦係数の変化率が少な
く、5%以内である。つまり、摩擦係数は初期から余り
変化することなく、そのままほぼ一定の値に安定化して
いる。
【0042】また、表面形状の変化を示す図2(a)〜
(c)についてみると、仕上げ処理として研磨処理のみ
を施した比較例1の湿式摩擦相手材では、研磨処理後の
新品時には適度な表面あらさを有し、微細な鋭い凹凸形
状を有する表面形状(a)が、摩擦履歴試験後には、そ
の凹凸が摩耗され、全体的に丸みを持った滑らかな表面
形状(c)に変化している。しかしこれに対して、その
研磨処理後に熱処理を施した実施例1の湿式摩擦相手材
では、摩擦履歴試験後の表面形状(c)は、凹凸の尖っ
た先端が摩耗されてはいるが、ほとんど摩擦履歴試験前
の新品時と同じ表面形状を維持している。
【0043】そこで、これらの試験結果から、湿式摩擦
相手材の仕上げ処理として、研磨処理を施した湿式摩擦
相手材に更に熱処理を施すことによって、湿式摩擦相手
材の表面硬さが向上され、摩擦履歴による表面形状の変
化が抑制されるため、摩擦係数の変化が抑制され、初期
から安定した摩擦係数を確保できることが分かる。ただ
し、同様に熱処理を施しているが、熱処理条件が250
℃×2分である比較例2及び550℃×40分である比
較例3では、湿式摩擦相手材の表面硬度が十分に向上さ
れず、そのため、摩擦係数の変化率が十分に低下されて
いない。したがって、この熱処理条件は、実施例1乃至
実施例4のような加熱温度300〜500℃×処理時間
3〜30分の範囲が好ましく、それによって、HV約2
90以上に表面硬度を高めることができ、また摩擦係数
の変化率を5%以内に抑えることができる。
【0044】なお、本発明について特定の実施例を挙げ
て説明したが、本発明を実施する場合には、各種の条件
等はこれらの実施例に限定されるものではなく、その他
にも種々に変更することができる。そして、例えば、研
磨処理後の湿式摩擦相手材の表面硬度を高める手段とし
ては、実施例のような熱処理だけでなく、軟窒化処理、
或いは高周波焼入れ等の表面硬化処理も適宜採用するこ
とができる。しかし、最も簡易に実施できる点等から、
その手段としては実施例のような熱処理が好ましい。
【0045】
【発明の効果】以上のように、請求項1にかかる湿式摩
擦相手材の仕上げ処理方法は、潤滑油中で摩擦材と摩擦
係合する鋼材からなる湿式摩擦相手材の仕上げ処理方法
において、湿式摩擦相手材に研磨処理を施した後、表面
の硬度を高める硬化処理を施すことを特徴とするもので
ある。
【0046】したがって、この湿式摩擦相手材の仕上げ
処理方法によれば、鋼材からなる湿式摩擦相手材に研磨
処理を施した後、硬化処理を施してその表面の硬度を高
めるようにしているため、摩擦履歴による表面形状の変
化を抑え、それによる摩擦係数の変化を抑制することが
できる。即ち、硬化処理という簡易な処理によって、初
期から摩擦係数が安定した湿式摩擦相手材を得ることが
できる。
【0047】また、請求項2にかかる湿式摩擦相手材の
仕上げ処理方法は、請求項1において、前記硬化処理
が、300〜500℃の温度で3〜30分間加熱する熱
処理からなるものである。
【0048】したがって、この湿式摩擦相手材の仕上げ
処理方法によれば、湿式摩擦相手材の表面の硬度を高め
る硬化処理が単に加熱するだけの簡単な処理であるた
め、初期から摩擦係数が安定した湿式摩擦相手材をより
簡易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施例と比較例の仕上げ処理
による湿式摩擦相手材の摩擦係数の変化率を示す表図で
ある。
【図2】 図2は本発明の実施例1と比較例1の仕上げ
処理による湿式摩擦相手材の摩擦履歴試験前後の表面形
状を示す図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 潤滑油中で摩擦材と摩擦係合する鋼材か
    らなる湿式摩擦相手材の仕上げ処理方法において、 前記湿式摩擦相手材に研磨処理を施した後、表面の硬度
    を高める硬化処理を施すことを特徴とする湿式摩擦相手
    材の仕上げ処理方法。
  2. 【請求項2】 前記硬化処理は、研磨処理後の湿式摩擦
    相手材を300〜500℃の温度で3〜30分間加熱す
    る熱処理からなることを特徴とする湿式摩擦相手材の仕
    上げ処理方法。
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