【発明の詳細な説明】
ゴナドトロピン放出ホルモン受容体活性の抑制および調節
1.序論
本発明はゴナドトロピン放出ホルモン受容体(GnRH−R)のクローニング
、およびGnRH−Rを発現する遺伝子工学的に作製された宿主細胞に関する。
そのような工学的に作製された細胞は、GnRH−Rの活性化、調節および脱共
役に関与する薬物およびGnRH類似体を評価し、スクリーニングするのに用い
ることができる。
2.発明の背景
GnRH−Rは神経系および内分泌系の統合における重要なメディエーターで
ある。正常な生殖は、特異的な高親和性下垂体受容体に結合してゴナドトロピン
である黄体形成ホルモン(LH)および濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を開
始させる、生理的濃度のGnRHの拍動性(pulsatile)放出に依存している。生
理的濃度のGnRHは調和を保ちながら正常な生殖を統合するが、高レベルのア
ゴニストは反対の応答、すなわちゴナドトロピン分泌の抑制を引き起こす。視床
下部−下垂体−性腺軸を活性化および抑制するGnRH類似体の能力は、不妊か
ら前立腺癌にいたる種々の疾患の治療において広く臨床的有用性を見いだされて
きた。
性腺刺激物質GnRH−Rの応答性および能力は、アゴニスト、濃度および暴
露パターンによって影響される(Clayton,1989,J.Endocrinol 120:11-19)。
in vivoおよびin vitro両方の研究が、低濃度の拍動性のGnRHは受容体の活
動を刺激し、そして高濃度のアゴニストは受容体のダウンレギュレーションおよ
び脱感作を誘導することを立証した。GnRHのその受容体への結合は、ホスホ
リパーゼCを刺激し、イノシトール-1,4,5-トリホスフェートおよびジアシルグ
リセロールを生成する(Huckle およびConn,1988,Endocrine Reviews 9: 387-3
95)。次に、これらの第2メッセンジャーは細胞内貯蔵物からカルシウムを放出
し、プロテインキナーゼCを活性化する。受容体のアップレギュレーションは、
プロテインキナーゼCとカルシウムの両方を必要とするように思われる(Huckle
およびConn,1988,Endocrine Reviews 9: 387-395; Huckleら,1988,Journal
of Biological Chemistry 263: 3296-3302; Youngら,1985,Journal of Endocr
inology 107: 49-56)。どのエフェクターがダウンレギュレーションの基礎をな
しているのかは不明である。
GnRH−Rの調節および脱感作の基礎となる作用機構の理解においては受容
体結合の研究により大きな進歩があったが、GnRH−R遺伝子の転写物および
生合成の直接測定はこれまで不可能であった。GnRH−R cDNAのクロー
ニングは、GnRH−Rの活性化、調節および脱共役の評価を進展させるであろ
う。この受容体の一次配列の決定は、改善された類似体の方向づけられた設計を
容易にするであろう。しかし、強い興味にもかかわらず、今日までGnRH−R
遺伝子は如何なる種においてもクローニングして発現させられていない。
3.発明の概略
本発明はGnRH−R遺伝子およびタンパク質に関する。本明細書に開示する
DNA配列は、GnRH−Rの産生のために設計された発現系に、および/また
はGnRH−Rを発現し、そして好ましくはGnRH誘導シグナル伝達に応答す
る細胞系に、遺伝子操作され得る。そのような細胞系は、GnRHアゴニストお
よびアンタゴニストをスクリーニングし同定するために有利に用いることができ
る。本発明の別の側面によれば、GnRH DNA、アンチセンスオリゴヌクレ
オチド配列、GnRH発現産物、およびそのような産物に対する抗体を、GnR
H−Rの異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、または機能不全な変異型受
容体の発現)に関連する生殖疾患の診断および療法に用いることができる。Gn
RH−Rトランスジーンを有するトランスジェニック動物は、GnRH−R類似
体のin vivo評価のための動物モデルとして用いることができる。
本明細書に記載するGnRH−R配列の解明は、生殖内分泌学における大きな
進歩を反映しており、そして、GnRH−Rのシグナル伝達および調節の複雑な
性質を明らかにする。大抵のホルモンシグナルと異なり、GnRHは極めて重要
な情報を伝える脈拍の振動数および振幅を有する拍動性の様式で放出される(Wei
ssら,1990,Mol.Endocrinol.4:557-564; Hasenlederら,1991,Endocrinolog
y 128: 509-517)。GnRH−R結合能それ自体が、暴露期間および濃度に依存
してアゴニストによってアップまたはダウンレギュレーションされる(Loumayeお
よびCatt,1982,Science 215: 983-985)。前立腺肥大、前立腺癌、子宮内膜症
および性的早熟を含む種々のヒト疾患のコントロールを助けるGnRHアゴニス
トの臨床的有用性は、下垂体脱感作の誘導に依存している。GnRH−Rのクロ
ーニングは、視床下部、下垂体および性腺の各ホルモンの複雑な相互作用のより
大きい理解をもたらすであろう。
4.図の説明
図1。アンチセンスオリゴヌクレオチドによるセロトニン(5HT)受容体お
よびGnRH−R発現のハイブリッド阻害。100 nM 5HTまたは200 nM GnR
Hを横線の位置で浴に導入した。A:ラット脳RNA(5HT応答用)、αT3
−1 RNA(GnRH応答用)およびアンチセンス5HTIC受容体オリゴヌク
レオチドの混合物を前もって注射しておいた卵母細胞における5HTおよびGn
RHへの応答。16個の細胞が同じ応答を示した。B:ラット脳RNA、αT3−
1 RNAおよびアンチセンスWZ7オリゴヌクレオチドの混合物を前もって注
射しておいた卵母細胞におけるGnRHおよび5HTへの応答。24個の細胞が同
じ応答を示した。
図2。卵母細胞中に発現されたクローンWZ25の特徴付け。GnRHアンタ
ゴニストの不在下(左)および存在下(右)にWZ25転写物を注射した卵母細
胞のGnRHへの電気生理学的応答。図示した3つのトレーシング(tracing)は
異なる細胞に由来する。実線および点線は、それぞれGnRHおよびGnRHア
ンタゴニストの投与を示す。注射をしなかった卵母細胞はGnRHに全く応答し
なかった(n=12)。B:WZ25由来の転写物を注射した卵母細胞の膜におけるG
nRH−AおよびGnRHによる125I−GnRH−Aの置換。注射をしなかっ
た卵母細胞由来の膜と組み合わせたαT3−1細胞膜を用いた匹敵する置換曲線
も示した(●)。誤差線はSEMを示す。
図3。クローンWZ25のヌクレオチド配列(配列番号1)および推定される
アミノ酸配列(配列番号2)。番号付けは981 塩基対オープンリーディングフレ
ームの最初のメチオニンから始まる。推定されるアミノ酸配列をヌクレオチド配
列の下に示す。推定上の膜貫通領域 I〜VII に下線を付してある。アミノ酸配列
の下に付した記号は、潜在的Nグリコシル化部位(▲)、およびプロテインキナ
ーゼA(◆)、カゼインキナーゼ2(●)およびプロテインキナーゼC(*)の
リン酸化部位を示す(Hubbard およびIvatt,1981,Ann.Rev.Biochem.50:555-
583; KempおよびPearson,1990,Trends Biochem.Sci.15:342-346; Pearson
およびKemp,1991,Meth.Enzymol.200: 62-81; Kennelly およびKrebs,1991
,J.Biol.Chem.266:15555-15558)。
図4。GnRH−Rの疎水性プロット、ならびにGnRH(マウスゴナドトロ
ピン放出ホルモン受容体)、ILR(ヒトインターロイキン−8受容体)(Murph
y およびTiffany,1991,Science 253: 1280-1283)、SPR(ラットサブスタン
スP受容体)(HersheyおよびKrause,1990,Science 247: 958-962)、β1R
(ヒトβ1−アドレナリン性受容体)(Frielleら,1987,Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA 84:7920-7924)、およびRHO(ヒトロドプシン)(NathansおよびHognes
s,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81: 4851-4855)のアミノ酸配列のアライ
メント。I〜VII は推定上の領域を示す。枠で囲んだ部分は同一のアミノ酸残基
を示す。
図5。GnRH−R mRNAの分布。Aのオートラジオグラム:2μg のマ
ウス全下垂体、GT−1、GH3およびAtT20 RNA、および65 ngのα
T3−1全RNAを用いた溶液ハイブリダイゼーションアッセイ。B:3μg の
ポリ(A)+αT3−1 RNAを用いたノーザンブロット分析。C〜F:ラッ
ト下垂体前葉 in situハイブリダイゼーション。C:アンチセンスプローブX線
フィルムオートラジオグラフィー。D:センスプローブ対照(検量線= 450 μm)
。E、F:エマルジョンに浸漬した下垂体前葉切片の暗視野(検量線= 50μm)、
明視野(検量線= 100 μm)光学顕微鏡写真。分子量マーカーはHind IIIで消化し
たλ DNAであった。
図6。アフリカツメガエル卵母細胞におけるヒトGnRH−R cDNAの発
現。
図7。pSV2A-ヒトGnRH−R構築物を用いてトランスフェクトしたCOS−
1細胞から調製した膜に結合している〔125I〕GnRHアゴニストの置換。
図8。pSV2A-ヒトGnRH−Rを用いてトランスフェクトしたCOS−1細胞
におけるイノシトールホスフェート産生に及ぼすGnRHおよびGnRHアンタ
ゴニストの効果。
図9。ヒトGnRH−Rのヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列。
図10。ヒトGnRH−R cDNAを用いたノーザンブロット分析。レーン1
(T):ヒト精巣ポリ(A)RNA;レーン2(P):ヒト下垂体ポリ(A)R
NA;レーン3(A):ヒトβ−アクチンcDNA;レーン4(R):ヒトGn
RH−R cDNA.
図11。ヒトGnRH−Rの構造図。
5.発明の詳細な説明
本発明はマウスおよびヒトのGnRH−Rのクローニングおよび発現に関する
。生殖系において中心的な役割を果たすGnRH−Rは、Gタンパク質結合受容
体に特徴的な7つの膜貫通ドメインによって特徴付けられるが、典型的な細胞内
C末端を欠いている。GnRH−Rのこの変わった構造および調節ドメインは、
この受容体に媒介されるシグナル伝達および調節の独特な側面に関与している。
本発明により生産されるGnRH−Rは、受容体の活性化、調節および脱共役に
関与する薬物およびGnRH類似体を評価しスクリーニングするのに用いること
ができる。または、GnRH−R DNA、オリゴヌクレオチドおよび/または
アンチセンス配列、またはGnRH−R、そのペプチド断片、またはそれらに対
する抗体を生殖疾患の診断および/または治療に用いることができる。
説明を明確にするため、以下の分節では例としてマウスおよびヒトのGnRH
−Rを取り上げて本発明を説明する。しかし、原則を同様に適用して他の種のG
nRH−Rをクローニングし発現させること、およびこの独特なGnRH−Rフ
ァミリーに属する他の受容体(すなわち、細胞内C末端を欠き、かつGnRHま
たはその類似体に結合するGタンパク質型受容体)をクローニングし発現させる
ことが可能である。
5.1.GnRH−Rコード配列
マウスGnRH−Rのヌクレオチドコード配列(配列番号1)および推定され
るアミノ酸配列(配列番号2)を図3に示す。ヒトGnRH−Rのヌクレオチド
コード配列および推定されるアミノ酸配列を図9に示す。
本発明は以下のものを含む遺伝子を包含する。すなわち、(a)本明細書に開
示するDNA配列(図3および9に示す)の少なくとも1つ;(b)本明細書に
開示するDNA配列(図2および9に示す)によってコードされるアミノ酸配列
をコードする任意のDNA配列;(c)高ストリンジェント条件下で〔例えば、
0.5 M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM ETDA 中で65℃でフィル
ター結合DNAとハイブリダズさせ、そして 0.1xSSC/0.1% SDS を用いて68℃で
洗浄する(Ausubel F.M.ら(編),1989,Current Protocols in Molecular Biolo
gy,Vol.I,Green Publishing Associates Inc.およびJohn Wiley & Sons,In
c.,New York,p.2.10.3)〕本明細書に開示するコード配列(図2および9に
示す)の相補体にハイブリダイズし、かつ上記(a)の遺伝子によってコードさ
れる遺伝子産物に機能的に等価な遺伝子産物をコードする、任意のDNA配列;
および/または(d)中程度のストリンジェント条件等の比較的低いストリンジ
ェント条件下で〔例えば、0.2xSSC/0.1% SDS を用いて42℃で洗浄する(Ausubel
ら,1989,前出)〕本明細書に開示するコード配列(図2および9に示す)の相
補体にハイブリダイズし、なおかつ上記(a)の遺伝子によってコードされる遺
伝子産物に機能的に等価な遺伝子産物をコードする、任意のDNA配列である。
本発明はまた、上のパラグラフの(a)から(d)に記載のDNA配列にハイ
ブリダイズし、それゆえそれらの相補体である核酸分子、好ましくはDNA分子
をも含む。そのようなハイブリダイゼーション条件は、上に記述するように、高
ストリンジェント条件であるか、またはそれより低いストリンジェント条件であ
ってよい。核酸分子がデオキシオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)である場合、
高ストリンジェント条件とは、例えば、6xSSC/0.05% ピロリン酸ナトリウムを用
いて37℃(14塩基オリゴの場合)、48℃(17塩基オリゴの場合)、55℃(20塩基オリ
ゴの場合)および60℃(23 塩基オリゴの場合)で洗浄することをいう。これらの核
酸分子は、例えば、標的遺伝子の調節に有用な標的遺伝子アンチセンス分子とし
て、および/または標的、フィンガープリントおよび/または経路遺伝子核酸配
列の増幅反応におけるアンチセンスプライマーとして、働きうる。さらに、その
ような配列は標的遺伝子の調節に有用なリボザイムおよび/または三重らせん配
列の一部として用いることができる。さらに、そのような分子は、GnRH−R
関連疾患の存在、またはそれにかかりやすい素質を検出する診断方法の構成要素
として用いることができる。
本発明はさらに(a)上記コード配列および/またはそれらの相補体(すなわ
ちアンチセンス配列)の任意のものを含むDNAベクター;(b)コード領域の
発現を引き出す調節エレメントと機能しうる形で連結された上記コード配列の任
意のものを含むDNA発現ベクター;および(c)宿主細胞中でコード領域の発
現を引き出す調節エレメントと機能しうる形で連結された上記コード配列の任意
のものを含む遺伝子工学的に作製された宿主細胞を包含する。本明細書に用いる
調節エレメントという用語は、以下のものを含むがそれらだけに限定されない。
すなわち、誘導性および非誘導プロモーター、エンハンサー、オペレーターおよ
び発現を引き出し、調節する当業者に公知の他のエレメントである。本発明は本
明細書に開示するDNA配列の任意のものの断片を包含する。
最長オープンリーディングフレームは、分子量が約37,000の327アミノ酸タン
パク質をコードする。3個の共通なN結合グリコシル化部位が存在し、2個はN
末端に、そして1個は第1の細胞外ループに存在する(図3)。推定されるタン
パク質の疎水性分析は、他のGタンパク質受容体と20〜30% の配列類似性を有し
、そしてインターロイキン−8受容体に最も高い相同性を有する、7つの高度に
疎水性のアミノ酸ドメインを明らかにしている(図4)。
GnRH−RはGタンパク質受容体スーパーファミリーのほとんど最小のメン
バーであるが、GnRH−Rの第1の細胞質ループはGタンパク質受容体のどれ
よりも長く、そして他のGタンパク質受容体とは異なり、GnRH−Rは極性の
細胞質C末端を欠いている。GnRH−Rには高度に保存された残基、例えば多
くの受容体を安定化させる最初の2つの細胞外ループのそれぞれにあるシステイ
ン残基等が存在する一方、GnRH−Rの幾つかの特徴は他と異なっている。例
えば、多くのGタンパク質受容体の機能にとって必須であることが見いだされた
高度に保存された膜貫通ドメインIIのアスパラギン酸/グルタミン酸は、アスパ
ラギンに置換されている。他のGタンパク質受容体からの別の逸脱は、膜貫通ド
メインIII の近隣に位置する保存されたチロシンがセリンに代わっていることで
ある。これは、他のGタンパク質受容体のシグナル伝達にとって重要なドメイン
において、GnRH−Rに独特の潜在的なリン酸化部位を作り出している。他の
潜在的な調節リン酸化部位もまた存在する(図3参照)。
本発明はまた、ヒトを含む他の種から単離されたGnRH−R遺伝子に関する
。32Pで標識したマウスGnRH受容体の挿入配列を用いて、ランダムヘキサマ
ープライミングによりλgt10ヒト下垂体cDNAライブラリーを釣り上げること
により、ヒトGnRH受容体をクローニングした。単離したクローンが機能性ヒ
トGnRH−Rをコードすることを確認するため、合成RNA転写物を卵母細胞
に注射した。RNAを注射した卵母細胞はすべて、GnRHに暴露すると大きな
減極性電流を発生し、クローニングされたDNA断片が機能性受容体をコードし
ていることを示した。
ヒトGnRH−Rのヌクレオチドコード配列(配列番号3)および推定される
アミノ酸配列(配列番号4)を図9に示す。ヒトクローンの配列決定は、984 bp
オープンリーディングフレームを含む2160 bpの挿入配列を同定した。上記オー
プンリーディングフレームは、マウス受容体の推定される配列に90% 同一な328
アミノ酸タンパク質をコードする。
疎水性分析は、Gタンパク質結合受容体に特徴的な7つの疎水性ドメインを同
定した。マウス受容体の推定される構造に関して見いだされたように、ヒトGn
RH−Rは本質的にいかなるC末端細胞内ドメインをも欠いている。2個の潜在
的N結合グリコシル化部位が存在し、それらは最初の細胞外ドメインのそれぞれ
に1個づつ存在する。数個の細胞質セリンおよびトレオニン残基が細胞内ドメイ
ンに見いだされ、これらは調節リン酸化部位として働くのかもしれない(図11)
。
放射性標識したヒトGnRH−Rをプローブとして用いたノーザンブロット分
析は、ヒト下垂体ポリ(A)RNA中に約4.7 kbの転写物を同定した(図10)。
ヒト精巣から精製したポリ(A)RNA中には、またはヒトβアクチンcDNA
対照を用いた場合には、いかなるシグナルも検出されなかった。
上記RNAの5’末端および3’末端非翻訳ドメインの範囲を決定するため、
一次ライブラリースクリーニング由来のファージ単離物のPCR分析を実施した
。GnRH−R cDNA挿入配列の5’末端に近い配列に相当するアンチセン
スオリゴヌクレオチドプライマー、または上記挿入配列の3’末端付近に相当す
るセンスプライマーを、近隣のGTIクローニング部位に対して設計されたプラ
イマーと組み合わせて用いて、未精製クローンをマップした。同定された最長P
CR産物は、-1.3 kb の付加的5’末端配列および-0.3 kbの付加的3’末端配
列を有していた。これらのデータは、GnRH−R mRNAが少なくとも 1.3
kbの5’末端非翻訳配列および 1.5 kb の3’末端非翻訳配列を有することを
示唆する。ノーザンブロットデータに基づくならば、これは付加的非翻訳配列(
〈1kb)が単離されたクローンのいずれにも含まれていないことを示唆する。
本発明はまた、GnRH−R活性が存在する他の種より単離したGnRH−R
遺伝子に関する。GnRH−Rファミリーのメンバーは、本明細書では、GnR
Hに結合する受容体と定義される。このような受容体は、ヌクレオチドレベルで
約80%の相同性を、そして膜貫通ドメインの外の領域に位置する実質的な配列に
おけるアミノ酸レベルでは90%もの相同性を示しうる。
GnRH−Rファミリーの他の受容体のクローニングは、多数の異なる方法で
実施することができる。例えば、マウスおよびヒト配列を用いて、PCRプロー
ブとして使用可能な縮重または完全縮重オリゴヌクレオチドプローブを設計する
ことがでる。もしくは、GnRH−Rを発現する適切な細胞由来のcDNAライ
ブラリー、またはゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。図3
および11にそれぞれ示すマウスおよびヒト配列のN末端および細胞質ループ(細
胞内および細胞外の両方)を有利に用いて、このようなオリゴヌクレオチドプロ
ーブを設計することができる。なぜなら、これらの領域はGnRH−Rファミリ
ー内で比較的保存されているに相違ないからである。
または、バクテリオファージcDNAライブラリーを、低減したストリンジェ
ンシー条件のもとで、ヒトまたはマウスGnRH−Rクローンの放射性標識化断
片を用いてスクリーニングし、GnRH−R関連タンパク質を単離することがで
きる。使用できるクローニング戦略の総論としては、例えば、Maniatisら、1989
,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Press,N.Y.
;およびAusubel ら、1989,Current Protocols in Molecular Biology,Green
Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.を参照されたい。
本発明によれば、GnRH−R、その断片、融合タンパク質または機能的等価
物をコードするヌクレオチド配列を、適切な宿主細胞においてGnRH−Rもし
くはその機能的に活性なペプチド、融合タンパク質または機能的等価物の発現を
引き出す組換えDNA分子の作製に使用することができる。または、GnRH−
R配列の部分とハイブリダイズするヌクレオチド配列を、核酸ハイブリダイゼー
ションアッセイ、サザンおよびノーザンブロット分析、等に使用することもでき
る。
遺伝子暗号の縮重により、実質的にGnRH−Rアミノ酸配列、例えば図3に
示すマウス配列(配列番号2)または図9に示すヒト配列(配列番号4)、また
はその機能的等価物をコードする他のDNA配列を、本発明の実施においてGn
RH−Rのクローニングおよび発現に使用することができる。このようなDNA
配列には、ストリンジェントな条件下でマウスまたはヒトGnRH−R配列とハ
イブリダイズ可能なDNA配列、または遺伝子の縮重がないならばストリンジェ
ントな条件下でハイブリダイズ可能なDNA配列が含まれる。ストリンジェント
な条件は種々の方法で調節することができる。たとえば、ポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)を実施する場合は、プライマーの鋳型へのアニーリングが起こる温度
、または反応緩衝液中のMgCl2の濃度を調節することができる。放射性標識化D
NA断片またはオリゴヌクレオチドを用いてフィルターを精査する場合は、スト
リンジェンシーは洗浄液のイオン強度を変えることにより、またはフィルター洗
浄を実施する温度を注意深くコントロールすることにより調節することができる
。
本発明にしたがって使用することができる変更されたDNA配列は、同一の、
または機能的に等価な遺伝子産物をコードする配列をもたらす、様々なヌクレオ
チド残基の欠失、付加または置換を含む。遺伝子産物それ自体が、表に現れない
、したがって機能的に等価なGnRH−Rを産生するサイレント変化をもたらす
、
GnRH−R配列内のアミノ酸残基の欠失、付加または置換を含有してもよい。
このようなアミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水
性および/または両親媒性の類似性に基づいてなされる。例えば、負に荷電した
アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正に荷電したアミノ
酸にはリシンおよびアルギニンが含まれ;類似した親水性値をもつ非荷電の極性
ヘッド基(head group)を有するアミノ酸には以下のものが含まれる:すなわち、
ロイシン、イソロイシン、バリン;グリシン、アラニン;アスパラギン、グルタ
ミン;セリン、トレオニン;フェニルアラニン、チロシンである。本明細書では
、機能的に等価なGnRH−Rとは、GnRHに結合するが、その天然の対応物
であるGnRH−Rと必ずしも同一の結合親和性を有するわけではない受容体、
をいう。
本発明のDNA配列は、遺伝子産物のプロセシングと発現を改変する変更を含
むがそれらだけに限定されない種々の目的に合わせて、GnRH−Rコード配列
を変更するために遺伝子工学的に作製することができる。例えば、当分野で周知
の技法(例えば、部位特異的突然変異誘発法)を使用して突然変異を導入し、新
しい制限部位を挿入する、グリコシル化パターン、リン酸化等を変える、などが
可能である。例えば、酵母等の特定の発現系において、宿主細胞が遺伝子産物を
過度にグリコシル化することがある。そのような発現系を使用するときは、Gn
RH−Rコード配列を変更してN−結合グリコシル化部位を除去することが好ま
しい。例えば、マウス配列においては、図3に示すグリコシル化部位の1個以上
を変更することによりこれが達成できる。本発明の別な態様においては、GnR
H−R配列または改変されたGnRH−R配列を異種配列に連結して、融合タン
パク質をコードさせることができる。融合タンパク質は、GnRH−Rを異種部
分から切り離せるように、GnRH−R配列と異種タンパク質配列との間に位置
する開裂部位を含むように遺伝子工学的に作製することも可能である。
本発明のまた別な態様においては、当分野で周知の化学的方法を用いて、Gn
RH−Rのコード配列を全部または部分的に合成することが可能であろう。例え
ば、Caruthers ら、1980,Nuc.Acids Res.Symp.Ser.7:215-233; Creaおよび
Horn,180,Nuc.Acids Res.9(10):2331; Matteucci および Caruthers,1980,
Tetrahedron Letters 21:719; ならびに Chow および Kempe,1981,Nuc.Acids
Res.9(12):2807-2817 参照。または、GnRH−Rアミノ酸配列を全部または
部分的に合成する化学的方法を用いて、タンパク質自体を作製することも可能で
あろう。例えば、ペプチドは固相法により合成し、樹脂から切り離し、分取高速
液体クロマトグラフィーにより精製することができる(例えば、Creighton,198
3,Proteins Structures And Molecular Principles,W.H.Freeman and Co.,N
.Y.,pp.50-60参照)。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定
により確認できる(例えば、エドマン分解法; Creighton,1983,Proteins Stru
ctures and Molecular Principles,W.H.Freeman and Co.,N.Y.,pp.34-49参
照)。
5.2.GnRH−Rの発現
生物学的に活性なGnRH−Rを発現するため、GnRH−Rまたは上記第5
.1節に記述したその機能的等価物をコードするヌクレオチド配列を適切な発現
ベクター、すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメン
トを含むベクターに挿入する。GnRH−R遺伝子産物、および組換えGnRH
−R発現ベクターによってトランスフェクトまたは形質転換された宿主細胞また
は細胞系は、種々の目的に使用できる。これらの目的には、以下のものが含まれ
るがそれだけに限定されない。すなわち、GnRHの結合を競合的に阻害しGn
RHの活性を「中和する」抗体を含む、この受容体に結合する抗体(つまりモノ
クローナルおよびポリクローナル抗体)の作製;GnRH−Rを介して作用する
GnRH類似体または薬物のスクリーニングおよび選択;等である。
5.2.1.発現系
当業者に周知の方法を用いて、GnRH−Rコード配列および適切な転写/翻
訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には
、in vitro組換えDNA技法、合成技法およびin vivo組換え/遺伝子組換えが
含まれる。例えば、Maniatisら,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manu
al,Cold Springs Harbor Laboratory,N.Y.およびAusubelら、1989,Current Pr
oto
cols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and Wiley Inters
cience,N.Y.に記述されている技法を参照されたい。
種々の宿主−発現ベクター系がGnRH−Rコード配列を発現するのに使用で
きる。これらは以下のものを含むがそれだけに限定されない。すなわち、GnR
H−Rコード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAま
たはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換した細菌等の微生物;GnR
H−Rコード配列を含む組換え酵母発現ベクターを用いて形質転換した酵母;G
nRH−Rコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウ
イルス)に感染させた昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリ
フラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)に感染さ
せた、またはGnRH−Rコード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例
えば、Tiプラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系;または、安定に増幅
された(例:CHO/dhfr)またはDM染色体中で不安定に増幅された(例
:マウス細胞系)GnRH−R DNAの多重コピーを含むように遺伝子操作し
た細胞系を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、ワク
シニアウイルス)に感染させた動物細胞系である。
これらの系の発現エレメントは、その強度と特異性において異なる。使用する
宿主/ベクター系により、構成プロモーターおよび誘導プロモーターを含む多数
の適切な転写および翻訳エレメントの任意のものを発現ベクターに使用できる。
例えば、細菌系でクローニングを行うときは、バクテリオファージλのpL、plac
、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)等の誘導プロモーターが使
用できる;昆虫細胞系でクローニングを行うときは、バキュロウイルスのポリヒ
ドリンプロモーター等が使用できる;植物細胞系でクローニングを行うときは、
植物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば、熱ショックプロモーター;RUBI
SCO の小サブユニットのプロモーター;クロロフィルa/b結合タンパク質のプ
ロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(例えば、CaMVの35
S RNAプロモーター;TMVのコートタンパク質プロモーター)が使用でき
る;哺乳動物細胞系でクローニングを行うときは、哺乳動物細胞のゲノム由来の
プロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)、または哺乳動物ウイ
ルス由来のプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニ
アウイルス7.5Kプロモーター)が使用できる;GnRH−R DNAの多重コピ
ーを含む細胞系を作製するときは、SV40、BPV、およびEBVをベースと
するベクターを適切な選択マーカーと共に使用できる。
細菌系においては、発現されるGnRH−Rの意図された用途によって、多数
の発現ベクターが有利に選択できる。例えば、抗体の作製のために大量のGnR
H−Rを生産しなければならないときは、容易に精製できる融合タンパク質産物
の高レベル発現を引き出すベクターが望ましいだろう。このようなベクターには
以下のものが含まれるが、それらだけに限定されない。すなわち、大腸菌発現ベ
クターpUR278(Rutherら、1983,EMBO J.2:1791)(ここでGnRH−Rコード
配列は、ハイブリッド AS-lac Z タンパク質が産生されるように lac Zコード領
域のフレームに合わせてベクターに連結することができる);pIN ベクター(Ino
uye およびInouye,1985,Nucleic Acids Res.13:3101-3109; Van Heekeおよび
Schuster,1989,J.Biol.Chem.264:5503-5509); 等である。pGEXベクターも
また、外来ポリペプチドをグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を有する融
合タンパク質として発現するのに使用できる。一般に、このような融合タンパク
質は可溶性で、グルタチオン−アガロースビーズに吸着させ、次いで遊離グルタ
チオンの存在下で溶出させることにより、溶解した細胞から容易に精製できる。
これらpGEXベクターは、クローニングされた興味のあるポリペプチドをGST部
分から引き離せるように、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ開裂部位を
含むように設計されている。
酵母においては、構成または誘導プロモーターを含む多くのベクターが使用で
きる。総説については、Current Protocols in Molecular Biology,Vol.2,198
8,Ausubelら(編)、Greene Publish.Assoc.& Wiley Interscience,第13章;
Grantら、1987,Expression and Secretion Vectors for Yeast,in Methods in
Enzymology,Wuおよび Grossman(編),1987,Acad.Press,N.Y.,Vol.153,p
p.516-544; Glover,1986,DNA Cloning,Vol.II,IRL Press,Wash.,D.C.第
3章;およびBitter,1987,Heterologous Gene Expression in Yeast,Methods
in Enzymology,BergerおよびKimmel(編)、Acad.Press,N.Y.,Vol.152,p
p.673-684;および The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces,1982
,Strathernら(編)、Cold Spring Harbor Press,Vols.IおよびIIを参照さ
れたい。
植物発現ベクターを使用する場合には、多数のプロモーターのうち任意のもの
によってGnRH−Rコード配列の発現を推進させることができる。例えば、C
aMVの35S RNAおよび19S RNAプロモーター(Brissonら、1984,Nature
310:511-514)、またはTMVの外被タンパク質プロモーター(Takamatsuら、198
7,EMBO J.6:307-311)等のウイルスプロモーターが使用できる。または、RUBIS
CO の小サブユニット(Coruzziら、1984,EMBO J.3:1671-1680; Broglieら、198
4,Science 224:838-843)等の植物プロモーター;もしくは、大豆 hspl7.5-Eま
たは hsp17.3-B(Gurleyら、1986,Mol.Cell.Biol.6:559-565)等の熱ショッ
クプロモーターが使用できる。これらの構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド
、植物ウイルスベクター、直接DNA形質転換、マイクロインジェクション、エ
レクトロポレーション、等を用いて植物細胞に導入することができる。これらの
技法の総論については、例えば、Weissbach およびWeissback,1988,Methods f
or Plant Molecular Biology,Academic Press,NY,第VIII節,pp.421-463;な
らびに、GriersonおよびCorey,1988,Plant Molecular Biology,2d Ed.,Blac
kie,London 第7-9章を参照されたい。
GnRH−Rを発現するのに使用できる別の発現系は、昆虫系である。このよ
うな系の1つにおいては、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa calif ornica
)核多角体病ウイルス(AcNPV)が外来遺伝子を発現するベクターとして使
用される。このウイルスは、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugipe rda
)細胞中で増殖する。GnRH−Rコード配列は、このウイルスの非必須領域
(例えばポリヒドリン遺伝子)にクローニングし、AcNPV プロモーター(例えば
ポリヒドリンプロモーター)の制御下に置くことができる。GnRH−Rコード
配列の挿入がうまくゆくと、ポリヒドリン遺伝子の不活性化と閉鎖されていない
(non-occluded)組換えウイルス(すなわち、ポリヒドリン遺伝子によってコード
されるタンパク質のコートを欠くウイルス)の産生をもたらすであろう。次に、
これらの組換えウイルスを用いて、挿入遺伝子を発現させるスポドプテラ・フル
ジペルダ細胞を感染させる(例えば、Smithら、1983,J.Viol.46:584; Smith
,米国特許第4,215,051参照)。
哺乳動物細胞においては、ウイルスベースの多数の発現系が使用できる。アデ
ノウイルスを発現ベクターとして使用する場合は、GnRH−Rコード配列をア
デノウイルスの転写/ 翻訳制御複合体、例えば後期プロモーターおよび3部分リ
ーダー配列に連結することができる。次に、このキメラ遺伝子をin vitroまたは
in vivo 組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイル
スゲノムの非必須領域(例えば、E1またはE3領域)への挿入は、感染した宿
主中で生存可能であり、かつGnRH−Rを発現することができる組換えウイル
スをもたらす(LoganおよびShenk,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),81:36
55-3659)。または、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーターを使用することも
できる。(例えば、Mackettら、1982,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79:7415
-7419; Mackettら、1984,J.Virol.49:857-864; Panicaliら、1982,Proc.Na
tl.Acad.Sci.79:4927-4931参照)。
挿入されたGnRH−Rコード配列の効率的な翻訳のためには、特異的開始シ
グナルもまた必要とされる場合がある。これらのシグナルには、ATG開始コド
ンおよび隣接配列が含まれる。それ自身の開始コドンおよび隣接配列を含む完全
なGnRH−R遺伝子を適切な発現ベクターに挿入する場合は、付加的翻訳制御
シグナルはなんら必要とされない。しかし、GnRH−Rコード配列の一部のみ
を挿入する場合は、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルを供給しな
ければならない。さらに、その開始コドンは、挿入配列全体の翻訳を確実にする
ために、GnRH−Rコード配列のリーディングフレームと一致していなければ
ならない。これらの外因性翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然および合
成の多様な起源のものでありうる。発現効率は、適切な転写エンハンサーエレメ
ント、転写ターミネーター、等を包含させることにより増強できる(Bitterら、
1987,Methods in Enzymol.153:516-544 参照)。
さらに、挿入配列の発現を調節する、または所望の特異的様式で遺伝子産物を
修飾しプロセシングする宿主細胞株を選択することができる。このようなタンパ
ク質産物の修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、開裂)
は、そのタンパク質の機能にとって重要でありうる。異なる宿主細胞は、タンパ
ク質の翻訳後プロセシングおよび修飾のための、特徴的で特異的な作用機構をも
つ。適切な細胞系または宿主系を選択して、発現された外来タンパク質の適正な
修飾およびプロセシングを確実にすることができる。この目的のため、一次転写
物の適切なプロセシング、すなわち遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化の
ための細胞機構をもつ真核宿主細胞が使用できる。このような哺乳動物宿主細胞
には、CHO、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、WI
38等が含まれるが、これらだけに限定されない。
組換えタンパク質の長期間にわたる高収率産生のためには、安定した発現が望
ましい。例えば、GnRH−Rを安定的に発現する細胞系を遺伝子操作すること
が可能である。ウイルスの複製起点を含む発現ベクターを使用するよりも、むし
ろ適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー配列、転写
ターミネーター、ポリアデニル化部位、等)によって制御されるGnRH−R
DNAおよび選択マーカーを用いて宿主細胞を形質転換することができる。外来
DNAの導入に続いて、遺伝子操作した細胞を1〜2日間富化培地中で増殖させ
、そして次に選択培地に替えてもよい。組換えプラスミド中の選択マーカーは、
選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをその染色体中に安定に組み込み
、そしてフォーカスを形成するまで増殖することを可能とする。次にこのフォー
カスをクローニングし、細胞系へと拡大させることができる。この方法は、Gn
RH−Rを細胞表面に発現し、かつGnRHが仲介するシグナル伝達に応答する
細胞系を遺伝子操作に有利に使用することができる。このように遺伝子操作され
た細胞系は、GnRH類似体をスクリーニングするのに特に有用である。
多数の選択系を使用することができる。これらの選択系には 以下のものが含
まれるが、それらだけに限定されない。すなわち、単純ヘルペスウイルスチミジ
ンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、1977,Cell 11:223)、ヒポキサンチン−グアニン
ホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(SzybalskaおよびSzybalski,1962,P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 48:2026)、およびアデニンホスホリボシルトランス
フェラーゼ遺伝子(Lowyら、1980,Cell 22:817)を、それぞれtk-、hgprt-
またはaprt-細胞に採用することができる。また、代謝拮抗物質耐性を、
メトトレキセートへの耐性を付与するdhfr遺伝子(Wiglerら、1980,Natl.
Acad.Sci.USA 77:3567; O'Hareら、1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:15
27);マイコフェノール酸への耐性を付与するgpt遺伝子(MulliganおよびBe
rg,1981,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:2072);アミノグリコシドG−
418への耐性を付与するneo遺伝子(Colberre-Garapinら、1981,J.Mol.
Biol.150:1);およびハイグロマイシンへの耐性を付与するhygro遺伝子(
Santerreら、1984,Gene 30:147)の選択の基礎として使用できる。最近、さらな
る選択遺伝子が報告された。それらは、細胞がトリプトファンの代わりにインド
ールを利用できるようにするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノー
ルを利用できるようにするhisD(Hartman およびMulligan,1988,Proc.Na
tl.Acad.Sci.U.S.A.85:8047);およびオルニチンデカルボキシラーゼインヒ
ビターである2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン(DFMO)への耐
性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)[McConlogue L.,1987,
In: Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor labo
ratory(編)]である。
本明細書に記載の特定の実施態様において、SV40初期プロモーターを含む発現
ベクターpSV2A 中にヒトGnRH−RのcDNAをサブクローニングした。pSV2
A-ヒトGnRH−R構築物を用いて、DEAE−デキストラントランスフェクシ
ョン法(Keown,W.A.ら,1990,in Methods of Enzymology,Vl.185(Goeddel,D.
V.編),pp.527-537,Academic Press,New York)によりCOS−1細胞を一過性
にトランスフェクトした。トランスフェクトされたCOS−1細胞由来の膜を用
いた実験は、異種発現された受容体はGnRHと結合可能であることを示した。
また、リガンド結合がイノシトールリン酸代謝と結びついていることが見いださ
れ、これはさらにトランスフェクトされたCOS−1細胞が機能性ヒトGnRH
−Rを発現したことを示していた。
5.2.2.GnRH−Rを発現するトランスフェクタント(transfectant)
または形質転換体の同定
コード配列を含み、そして生物的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞を少
なくとも4種類の一般的アプローチにより同定することができる。すなわち、(
a)DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーション;(b)「マ
ーカー」遺伝子機能の有無;(c)宿主細胞におけるGnRH−R mRNA転
写物の発現によって測定される転写レベルの評価;および(d)イムノアッセイ
または生物活性によって測定される遺伝子産物の検出である。
第1のアプローチでは、GnRH−Rコード配列、その一部または誘導体にそ
れぞれ相同なヌクレオチド配列を含むプローブを用いて、発現ベクターに挿入さ
れたGnRH−Rコード配列の存在をDNA−DNAまたはDNA−RNAハイ
ブリダイゼーションによって検出することができる。
第2のアプローチでは、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキ
ナーゼ活性、抗生物質耐性、メトトレキセートへの耐性、形質転換表現型、バキ
ュロウイルスにおける閉鎖体(occlusion body)の形成、等)の有無に基づいて組
換え発現ベクター/宿主系を同定し、選択することができる。例えば、GnRH
−Rコード配列がベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入されている場合は、マ
ーカー遺伝子機能の不在によってGnRH−Rコード配列を含む組換え体を同定
することができる。または、GnRH−Rコード配列の発現を制御するために用
いられたものと同一の、または異なるプロモーターの制御下に、マーカー遺伝子
をGnRH−R配列とタンデムに配置することができる。誘導または選択に応答
してのマーカーの発現は、GnRH−Rコード配列の発現を示す。
第3のアプローチでは、GnRH−Rコード領域の転写活性をハイブリダイゼ
ーションアッセイによって評価することができる。例えば、RNAを単離し、そ
してGnRH−Rコード配列またはその特定部分に相同なプローブを用いてノー
ザンブロットにより分析することができる。または、宿主細胞の全核酸を抽出し
、そのようなプローブへのハイブリダイゼーションをアッセイすることができる
。
第4のアプローチでは、GnRH−Rタンパク質産物の発現を、例えばウエス
タンブロット、イムノアッセイ(ラジオイムノ沈降法、酵素結合イムノアッセイ
、等)によって免疫学的に評価することができる。しかし、発現系が成功したこ
とについての最終的試験は、生物的に活性なGnRH−R遺伝子産物の検出を必
要とする。受容体活性を検出するためには多数のアッセイが使用できる。これら
の
アッセイにはGnRHまたはGnRH類似体結合アッセイ;および試験基質とし
た遺伝子操作した細胞系を用いるGnRH生物学的アッセイが含まれるが、それ
らだけに限定されない。
本明細書に記述する特定の実施態様において、ヒトGnRH−R cDNAを
含む組換え発現ベクターを用いてトランスフェクトしたCOS−1細胞から細胞
膜を調製した。125I標識GnRH類似体を用いて、ヒトGnRH−Rの発現を
検出した。さらに、第7.1.5 節に記述するようにGnRH刺激イノシトールリン
酸(IP)産生レベルを測定することにより、生物的に活性なGnRH−Rの発
現を検出することができた。
5.2.3.GnRH−Rの回収
生物的に活性なGnRH−Rを高レベルで産生するクローンが一旦同定された
ならば、そのクローンを増やし、大量の受容体を産生するのに用いることができ
る。産生された受容体は、以下のものを含むがそれらだけに限定されない、当分
野で周知の技法を用いて精製することができる。すなわち、イムノアフィニティ
ー精製;高速液体クロマトグラフィー、ビーズに結合したGnRHまたはGnR
H類似体等の固定化リガンドを用いるアフィニティークロマトグラフィーを含む
クロマトグラフ法;抗体を用いるイムノアフィニティー精製;等である。
GnRH−Rコード配列が開裂可能な融合タンパク質をコードするように遺伝
子操作されている場合、アフィニティー精製技法を用いて容易に精製を行なうこ
とができる。例えば、コラゲナーゼ開裂認識共通配列をGnRH−Rのカルボキ
シ末端とプロテインAの間で遺伝子操作することが可能である。生じる融合タン
パク質は、プロテインA部分に結合するIgGカラムを用いて容易に精製するこ
とができる。コラゲナーゼを用いて処理することにより、融合していないGnR
H−Rを容易にカラムから放出させることができる。別の例は、外来のポリペプ
チドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)を有する融合タンパク質
として発現するpGEXベクターの使用であろう。融合タンパク質は、クローニング
した遺伝子とGST部分の間にトロンビンまたは第Xa因子開裂部位を持つよう
に遺伝子操作することができる。この融合タンパク質は、グルタチオンアガロー
スビーズに吸着させ、次にグルタチオンの存在下で溶出することにより、細胞抽
出物から容易に精製することができる。本発明のこの側面において、任意の開裂
部位または酵素開裂基質を、GnRH−R配列と精製に用いうる結合パートナー
を有する第2ペプチドまたはタンパク質(例えば、それに対してイムノアフィニ
ティーカラムを調製することができる任意の抗原)の間で遺伝子操作することが
できる。
5.3.GnRH−Rを規定する抗体の創成
遺伝子組換えで産生されたGnRH−Rのエピトープに対する抗体を作製する
ために、当分野で公知の種々の方法を用いることができる。中和性抗体、すなわ
ち受容体のGnRH結合部位で競合する抗体は、診断および治療剤にとって特に
好ましい。ウイルスの血清マーカーを規定する抗体は、診断用途に好ましいであ
ろう。そのような抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖抗
体、Fab断片およびFab発現ライブラリーにより作製された断片を含むが、
これらだけに限定されない。
抗体の産生のため、ウサギ、マウス、ラット等を含むがこれらだけに限定され
ない種々の宿主動物を、GnRH−Rを用いた注射により免疫感作することがで
きる。宿主の種によって、免疫応答を増大させるため、種々のアジュバントを用
いることができる。これらのアジュバントには以下のものが含まれるが、それら
だけに限定されない。すなわち、フロイントアジュバント(完全および不完全)
、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル、リゾレシチン、プルロニックポリオー
ル等の界面活性剤、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホール
リンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(カルメット−
ゲラン(Calmette-Guerin)杆菌)およびコリネバクテリウム・パルバム(Coryneb
acterium parvum)等の潜在的に有用なヒトアジュバントである。
GnRH−Rに対するモノクローナル抗体は、培養中での連続的継代細胞系に
よる抗体分子の産生を提供する任意の技法を用いて調製することができる。これ
らの技法は以下のものを含むがそれらだけに限定されない。すなわち、Kohlerお
よびMilsteinによって最初に記述されたハイブリドーマ技法(Nature,1975,25
6:495-497)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosborら,1983,Immunology Toda
y,4:72; Coteら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.,80:2026-2030)およびEBV
−ハイブリドーマ技法(Coleら,1985,Monoclonal Antibodies and Cancer Ther
apy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96)である。さらに、適切な抗原特異性を有
するマウス抗体分子由来の遺伝子を適切な生物活性を有するヒト抗体分子由来の
遺伝子と共にスプライシングすることにより「キメラ」抗体(Morrison ら,1984
,Proc.Natl.Acad.Sci.,81:6851-6855; Neuberger ら,1984,Nature,312:
604-608; Takeda ら,1985,Nature,314:452-454)を産生するために開発された
技法を用いることができる。または、一本鎖抗体(米国特許第4,946,778 号)を
産生するために記述された技法を、GnRH−R特異的一本鎖抗体の産生のため
に適合させることもできる。
GnRH−Rの特異的結合部位を有する抗体断片は公知の技法によりつくり出
すことができる。例えば、そのような断片は抗体分子のペプシン消化により生成
されるF(ab')2断片、およびF(ab')2断片のジスルフィド架橋を還元することによ
り生成されるFab 断片を含むが、これらだけに限定されない。またはFab 発現ラ
イブラリーを構築して(Huseら,1989,Science,246:1275-1281)、GnRH−R
に対する所望の特異性を有するモノクローナルFab 断片の迅速で容易な同定を可
能とすることができる。
5.4.GnRH−R、DNAおよび遺伝子操作した細胞系の用途
上記のGnRH−R DNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、GnRH−
R発現産物、抗体、および工学的に作製された細胞系は、生殖疾患の診断および
治療のため、ならびにドラッグデザインおよび薬物の発見において、多数の用途
を有する。
例えば、GnRH−R DNA配列はGnRH−R発現の異常を診断するため
に生検のハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、in situ ハイブリダイゼー
ションアッセイを含むサザンまたはノーザン分析)に用いることができる。治療
剤への応用としては、GnRH−R DNA配列に基づいて設計したアンチセン
ス分子またはリボザイム分子を利用して、GnRH−R遺伝子産物の輸送および
発現をブロックすることができる。これについては、翻訳開始部位(例えば、G
nRH−Rヌクレオチド配列の-10から+10の間の領域)由来のオリゴヌクレオチ
ドが好ましい。または、GnRH−R DNAを遺伝子治療アプローチに用いて
、GnRH−Rおよびその機能を再構成するため、正常な組換え遺伝子を患者の
欠陥細胞に導入する、つまり内因性突然変異を正すことが可能であろう。
本発明の別な実施態様においては、生検組織における受容体発現パターンを決
定するため、またはin vivo診断イメージングのためにGnRH−Rに特異的な
抗体を用いることができる。このような使用においては、「中和」抗体が好まし
い。例えば、イメージング化合物と結合させた抗体を患者に投与して、GnRH
−Rの位置および分布をin vivoで「マップ」することができる。
本発明の別な実施態様においては、GnRH−R自体、またはそのGnRH結
合部位を含む断片をin vivoで投与することができるであろう。遊離のGnRH
−Rまたはそのペプチド断片は、GnRHと競合的に結合し、そしてGnRHと
天然の受容体との相互作用をin vivoで抑制できるであろう。
本発明の別な実施態様においては、GnRH−Rに特異的な抗体応答の刺激を
避妊の手段として用いることができる。例えば、GnRH−RまたはGnRH−
R融合タンパク質を用いた注射により種々の宿主動物を免疫感作して、それら動
物の免疫系を刺激し、循環性抗GnRH−R抗体の産生をもたらすことができる
。
GnRH−Rおよび/またはGnRH−Rを発現する細胞系は、GnRH−R
活性のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する抗体、ペプチド、有機分
子または他のリガンドをスクリーニングするのに用いることができる。例えば、
GnRHの活性を中和することができる抗GnRH−R抗体は、GnRH−R機
能を抑制するために使用できる。さらに、GnRH活性が低下している生殖疾患
に用いるため、GnRH活性を模倣する抗GnRH−R抗体を選択することがで
きる。あるいは、遺伝子組換えで発現させた可溶性タンパク質またはタンパク質
を発現する細胞系を用いたペプチドライブラリーまたは有機化合物のスクリーニ
ングは、GnRHの生物活性を抑制することによって機能する治療剤分子の同定
に有用でありうる。
本発明の1実施態様において、GnRH−Rの全コード領域またはそのリガン
ド結合ドメインを発現する工学的に作製された細胞系は、GnRHアンタゴニス
トおよびアゴニストをスクリーニングし、同定するために使用できる。合成化合
物、天然物、および潜在的に生物的に活性な物質の他の供給源を多数の方法でス
クリーニングすることができる。GnRHまたはその類似体のGnRH−Rへの
結合を抑制する試験化合物の能力は、第7.1.4 節に記述するような標準的受容体
結合技法を用いて測定することができる。
発現細胞におけるシグナル伝達応答に及ぼすGnRH結合の効果を阻止または
模倣する作用物質の能力を測定することが可能である。例えば、第2メッセンジ
ャー生成の調節または細胞代謝の変化、等の応答(すなわち、細胞内カルシウム
貯蔵物の放出またはプロテインキナーゼCの活性化)をモニターすることができ
る。本明細書に記述する特定の実施態様においては、GnRH刺激イノシトール
リン酸(IP)産生をGnRH−R媒介シグナル伝達のインジケーターとして利
用した。GnRH媒介シグナル伝達の測定のためのアッセイは、これらの目的の
ために開発された任意の常用技法を用いて実施することができる。
GnRH−GnRH−R系を介してシグナル伝達を調節する試験化合物の能力
もまた動物モデル系を用いてin vivoで測定することができる。たとえば、トラ
ンスジーンとしてGnRH−R DNAを含むトランスジェニック動物を遺伝子
操作して、そのようなアゴニストまたはアンタゴニストの効果をin vivoで試験
することができる。発現細胞におけるシグナル伝達応答に及ぼすGnRH結合の
効果を阻止する作用物質の能力を測定することが可能である。例えば、ホルモン
の産生、生殖機能の抑制または活性化、またはホルモン応答性腫瘍の大きさの退
縮、等の応答をモニターすることができる。
5.4.1.GnRH-Rタンパク質または遺伝子操作された細胞系を用いるペプチド
ライブラリーのスクリーニング
固相支持体に結合したアミノ酸のすべてのありうる組み合わせからなるランダ
ムペプチドライブラリーを使用して、GnRH-Rのリガンド結合部位に結合しうるペ
プチドを同定することができる。ペプチドライブラリーのスクリーニングは、受
容体との相互作用によってGnRH-Rの生物活性を阻害するかまたは活性化するよう
に作用をする薬剤の発見について治療的価値を有しうる。
GnRH-Rに結合しうる分子の同定は、ペプチドライブラリーを組換え可溶性GnRH
-Rタンパク質を用いてスクリーニングすることにより達成できる。GnRH-Rの発現
および精製方法は上記5.2.1.節に記載されており、そして組換え完全長Gn
RH-Rまたは興味ある機能性ドメインに応じGnRH-Rの断片を発現させるのに使用で
きる。例えば、GnRH-Rの細胞内および細胞外リガンド結合ドメインは別々に発現
させてペプチドライブラリーのスクリーニングに使用することができる。
GnRH-Rと相互作用し複合体を形成するペプチド/固相支持体を同定および単離
するために、GnRH-R分子を標識または「タグ付け」することができる。GnRH-Rタ
ンパク質はアルカリホスファターゼ若しくはセイヨウワサビペルオキシダーゼ等
の酵素へ、またはフルオレセインイソチオシアナート(FITC)、フィコエリトリ
ン(PE)またはローダミンを包含しうる蛍光標識等の他の試薬へのコンジュゲー
ションにより標識できる。任意の既知の標識のGnRH-Rへのコンジュゲーションは
当該技術分野でよく知られた技術を用いて実施できる。
あるいはまた、GnRH-R発現ベクターを、商業的に入手しうる抗体が存在するエ
ピトープを含有するキメラGnRH-Rタンパク質を発現するように遺伝子操作するこ
ともできる。エピトープ特異的抗体は、酵素、蛍光色素または着色若しくは磁気
ビーズを用いる標識化を含む当該技術分野でよく知られた方法を用いてタグ付け
することができる。
GnRH-Rに結合しうるペプチドを同定するには、この「タグ付けされた」GnRH-R
コンジュゲートをランダムペプチドライブラリーと22℃で30分から1時間インキ
ュベートして、GnRH-Rとライブラリー内のペプチド種との間に複合体を形成させ
る。次にこのライブラリーを洗浄してすべての未結合GnRH-Rタンパク質を除去す
る。GnRH-Rがアルカリホスファターゼまたはセイヨウワサビペルオキシダーゼと
コンジュゲートしている場合には、ライブラリー全体をアルカリホスファターゼ
またはペルオキシダーゼのいずれかの基質、例えば、それぞれ5−ブロモ−4−
クロロ−3−インドイルホスフェート(BCIP)または3,3',4,4'-ジアミノベンジ
ジン(DAB)を含有するペトリ皿に注ぐ。数分間インキュベートした後、ペプチド
/固相−GnRH-R複合体の色が変わり、そして容易に同定されマイクロマニピュレ
ーターを用いて解剖顕微鏡の下に物理的に単離されうる。もし蛍光タグ付きGnRH
-R分子を用いる場合には、複合体は蛍光活性化ソーティングにより単離されうる
。異種構造のエピトープを発現するキメラGnRH-Rタンパク質を使用する場合には
、ペプチド/GnRH-R複合体の検出は標識されたエピトープ特異的抗体を用いるこ
とにより達成されうる。ひとたび単離されると、固相支持体に結合したペプチド
の同定はペプチド配列決定により決定されうる。
可溶性GnRH-R分子を用いることに加え、別の態様ではGnRH-Rを発現する無傷の
細胞を用いてGnRH-Rに結合するペプチドを検出することが可能である。無傷の細
胞の使用は、マルチサブユニットであるか、若しくは不安定である受容体と一緒
に、または細胞膜の脂質ドメインが機能することを必要とする受容体と一緒に使
用することが好ましい。GnRH-Rを発現する細胞系を作製する方法は、5.2.1
.節および5.2.2.節に記載されている。この技術で使用される細胞は生き
た細胞であるかまたは固定された細胞のいずれでもよい。細胞はランダムペプチ
ドライブラリーとインキュベートされ、そしてライブラリー中のあるペプチドに
結合して標的細胞と関連固相支持体/ペプチドとの間に「ロゼット」を形成する
であろう。このロゼットは次に示差遠心分離により単離されるか、または解剖顕
微鏡の下に物理的に除かれうる。
全細胞アッセイの代替として、GnRH-R分子は、標識されるかまたは「タグ付け
」されていてもよいリポソームに再構成でき、そして前記したようにしてペプチ
ドライブラリーのスクリーニングに使用できる。
5.4.2.GnRH-Rタンパク質または遺伝子操作された細胞系を用いる化合物の
スクリーニング
GnRH-Rを発現する細胞系を使用して、GnRH-R活性を変調するかまたはGnRH-R介
在シグナル伝達を変調する分子をスクリーニングすることができる。かかる分子
には小さい有機若しくは無機化合物、またはGnRH-R活性を変調するか若しくはGn
RH-R/GnRH複合体の形成を促進若しくは抑制する他の分子が包含されうる。合成
化合物、天然産物、および潜在的に生物学的に活性な物質の他の供給源を多数の
方法でスクリーニングできる。
試験分子がGnRH-GnRH-R 結合および/またはGnRH-Rシグナル伝達を妨害する能
力は標準的な生化学的技術を使用して測定できる。触媒活性の活性化若しくは抑
制、他のタンパク質の燐酸化若しくは脱燐酸化、第2メッセンジャー産生の活性
化若しくは変調、細胞性イオンレベルの変化、シグナリング分子の会合、解離若
しくは転座、または特異的な遺伝子の転写若しくは翻訳のような応答も監視でき
る。これらのアッセイはスクリーニングの過程でこれらの目的のために開発され
た慣用の技術を用いて実施できる。
リガンドのその細胞性受容体への結合は、シグナル伝達経路を介して、種々の
細胞過程に影響しうる。GnRH-R/GnRHシグナリング経路の制御の下にある細胞過
程には、それらに限定されるわけではないが、非調節細胞増殖、分化の阻止また
は細胞死のような異常なまたは潜在的に有害な過程に加え、ホルモン産生のよう
な正常な細胞機能、および細胞の増殖および/または分化が包含されうる。当該
技術分野で知られた技術による記載された細胞過程のいかなる定性的または定量
的観察および測定もが、スクリーニング経路におけるシグナル伝達のスコアリン
グ手段として有利に使用されうる。
GnRH-Rと相互作用する化合物のスクリーニング、同定および評価のための種々
の態様が以下に記載されており、これら化合物はGnRH受容体シグナリング経路の
制御の下に種々の細胞過程に影響を及ぼしうる。
本発明は下記のことを包含するGnRH-R活性を変調しうる化合物の同定方法を包
含する、すなわち、
(a) 純粋なまたは半純粋形態の、膜調製物中の、または全生存細胞もしくは固定
細胞中のGnRH-Rまたはその機能性誘導体に上記化合物を接触させ;
(b) 工程(a)の混合物を、GnRHまたはGnRH類似体の存在下で上記化合物がシグナ
ル伝達を促進または抑制するのに十分な期間でインキュベートし;
(c) シグナル伝達を測定し;
(d) 上記シグナル伝達活性を、上記化合物の不存在でインキュベートしたGnRH-R
のシグナル伝達と比較して、それにより上記化合物がシグナル伝達を促進するか
または抑制するか決定する。
GnRH-R、またはシグナル伝達を変調しうる化合物の同定に有用なその機能性誘
導体は、それらが有意なシグナル伝達能を保持する限り、例えばアミノ酸欠失お
よび/または挿入および/または置換をしてもよい。GnRH-Rの機能性誘導体は、
天然に存在するかまたは組換えにより発現されたGnRH-Rから、タンパク質分解に
よる開裂に続く当業者に知られた慣用の精製操作により調製できる。あるいはま
た、機能性誘導体は組換えDNA技術により、機能性ドメインを包含するGnRH-R
の一部分を好適な細胞中で発現させることにより生産できる。機能性誘導体はま
た化学的に合成することもできる。GnRH-Rを発現する細胞は粗製または精製され
てGnRH-Rの供給源として使用されうるし、またはこれらアッセイにおける試験用
に膜調製物中で使用されうる。あるいはまた、全生存細胞または固定細胞を直接
これらのアッセイに使用することもできる。
GnRH-Rシグナル伝達活性は標準的な生化学的技術によるかまたはそのシグナル
により制御される細胞過程を監視することにより測定できる。例えば、GnRH-R活
性の変調を評価するために、GnRH-Rを含有する反応混合物に試験分子を添加した
後にホスホリパーゼCの活性化またはイノシトール−1,4,5 −トリホスフェート
若しくはジアシルグリセロールの生成をアッセイすることができる。あるいはま
た、プロテインキナーゼCの活性化または細胞内貯蔵所からのカルシウムイオン
の放出をアッセイすることもできる。
本発明はさらに、GnRH-Rと相互作用するとGnRH-RへのGnRHの結合作用を模倣す
るシグナルを引き起こすかまたはその引き金を引く化合物をスクリーニングする
方法を提供する。シグナル伝達は、シグナリング経路の制御の下にある細胞過程
がリガンド結合により惹起される場合と同様の様式で影響される場合に模倣され
る。かかる化合物はGnRH-Rを活性化する天然に存在するかまたは合成的に生産さ
れた分子であってもよい。
また、本発明は化学的または生物学的調製物中のGnRH-Rに結合可能な分子を同
定する方法であって、
(a) GnRH-Rまたはその機能性断片を固相マトリックスに固定し;
(b) 上記化学的または生物学的調製物を、上記化合物を結合させるのに十分な期
間、工程(a)で作製した固相マトリックスに接触させ;
(c) 固相マトリックスからすべての未結合物質を洗い落とし;
(d) 固相に結合された上記化合物の存在を検出し;
それにより上記化合物を同定する、
ことを含んでなる該方法をも包含する。
前記方法はさらに下記工程をも包含しうる、すなわち、
(e) 結合した化合物を固相マトリックスから溶出させ、それにより該化合物を単
離する。
「GnRH-Rに結合可能な化合物」なる用語は、GnRH-Rと相互作用する天然に存在
するかまたは合成的に生産された任意の分子を指す。かかる化合物には、GnRH-R
シグナル伝達を直接的または間接的に変調できるとともに細胞内部でGnRH-Rの細
胞内ドメインと天然に会合している分子が包含されうる。かかる化合物の例とし
ては、(i)GnRH-Rの天然の基質;(ii)シグナリング複合体の一部分である天然に
存在する分子;および/または他の細胞型により生産された天然に存在するシグ
ナリング分子がある。
5.5.増殖性疾患の治療におけるGnRH-R類似体の使用
本発明の態様においては、アゴニストまたはアンタゴニスト活性のいずれかに
よりGnRH-R変調に関与する薬物は癌のような増殖性疾患の治療に有用でありうる
。例えば、GnRH-Rの活性を変調する薬物は、細胞表面上にGnRH-Rを発現するGnRH
応答性癌細胞の増殖を調節するのに使用できる。
GnRH-R活性が介在するホルモンレベルの調節はまたホルモン応答性腫瘍の治療
にも有用でありうる。本発明の別の態様においては、アゴニストまたはアンタゴ
ニストGnRH-R活性のいずれかを示す薬物はホルモン応答性腫瘍の異常増殖を間接
的に変調するのに使用できる。エストロゲンおよびテストステロンのようなホル
モンの生産はGnRH-R活性の変調によって調節されうる。例えば、GnRH-R活性の変
調剤は、血清テストステロンレベルを低下させるという所望される効果を得るた
めに男性前立腺癌患者に投与されうる。加えて、GnRH-R変調剤はエストロゲン活
性のレベルを低下させるために女性の乳癌患者に投与されうる。
5.6.薬理学的調製物
GnRH-R受容体シグナル伝達を変調する特定のペプチド、タンパク質、有機化合
物または抗体は、それ自体でまたは適当な担体若しくは賦形剤と混合し医薬組成
物として患者に投与できる。
治療されるべき特有の状態に応じて、これらの薬剤は製剤化されそして全身的
ににまたは局所的に投与されうる。製剤化および投与の技術は「Remington's Ph
armaceutical Sciences」,Mack Publishing Co.,Easton,PA,最新版、に見出
されうる。好適な経路には、例えば、経口、直腸、経粘膜、または経腸投与;筋
肉内、皮下、骨髄内注射、ならびに髄腔内、直接心室内、静脈内、腹腔内、鼻内
、または眼内注射を含む非経口送達が包含され、固形腫瘍の場合にはその固形腫
瘍に直接注射されうる。注射用には、本発明の薬剤は水溶液、好ましくはハンク
ス溶液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液のような生理学的に適合する緩衝
液中で製剤化されうる。経粘膜投与には、透過すべき障壁に対して適切な浸透剤
が製剤中に使用される。かかる浸透剤は当該技術分野で一般的に知られている。
本発明化合物は当該技術分野でよく知られた製剤学上受容されうる担体を用い
て経口投与に適する剤形に容易に製剤化できる。かかる担体は、治療すべき患者
に経口摂取させるために本発明化合物を錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤
、シロップ剤、スラリー、懸濁液、等として製剤化することを可能にする。
本発明で使用するのに好適な医薬組成物には、その意図する目的が達成できる
ような有効量で活性成分を含有する組成物が包含される。有効量の判定は特に本
明細書中に提示される詳細な開示に照らして充分に当業者の能力の範囲内にある
。
活性成分に加え、これらの医薬組成物は活性化合物の医薬上使用できる製剤へ
の加工を容易にする賦形剤および補助剤を包含する適当な製剤学上受容されうる
担体を含有しうる。経口投与用に処方された製剤は錠剤、糖衣錠、カプセル剤ま
たは液剤の形態であってもよい。
本発明の医薬組成物は、例えば慣用の混合、溶解、顆粒形成、糖衣形成、研和
、乳化、カプセル化、捕捉(entrapping)または凍結乾燥工程等のそれ自体知られ
た
方法で製造できる。
非経口投与のための医薬製剤には水溶性形態における活性化合物の水溶液が包
含される。加えて、活性化合物の懸濁液を適当な油性の注射懸濁液として調製で
きる。好適な親油性溶媒若しくはビヒクルにはゴマ油のような脂肪油、またはオ
レイン酸エチル若しくはトリグリセライドのような合成脂肪酸エステル、または
リポソームが包含される。水性注射懸濁液はカルボキシメチルセルロースナトリ
ウム、ソルビトールまたはデキストランのような懸濁液の粘度を高める物質を含
有しうる。場合によっては、懸濁液は高濃度溶液の調製を可能にするために化合
物の溶解度を増大させる好適な安定剤または薬剤を含有してもよい。
経口使用用の医薬製剤は、活性化合物を固形賦形剤と混合し、得られる混合物
を必要により粉砕し、所望の場合は好適な補助剤を添加後に顆粒の混合物を加工
して錠剤または糖衣錠コアとすることにより得ることができる。好適な賦形剤は
、特に、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖な
どの充填剤;例えばとうもろこし澱粉、小麦澱粉、米澱粉、馬鈴薯澱粉、ゼラチ
ン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロースナトリウム、/および/またはポリビニルピロ
リドン(PVP)のようなセルロース調製物である。所望の場合は、架橋ポリビニル
ピロリドン、アガー、またはアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムのような
その塩などの崩壊剤を添加できる。
糖衣錠コアには適当なコーティングが付与される。この目的には濃厚な糖溶液
を使用でき、これは場合によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、
カルボポル(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チ
タン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有しうる。同
定のためまたは異なる活性化合物量の組み合わせを特徴づけるために錠剤または
糖衣錠コーティングに染料または顔料を添加できる。
経口使用できる医薬製剤にはゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならび
にゼラチンと可塑剤(例えばグリセロールまたはソルビトール)とから作られる
軟質シールカプセルが包含される。プッシュフィットカプセルは活性成分を、ラ
クトースのような充填剤、澱粉のような結合剤および/またはタルク若しくはス
テアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および場合により安定剤と混合して含
有できる。軟質カプセルにおいては、活性化合物を脂肪油、流動パラフィン、ま
たは液状ポリエチレングリコールのような適当な液体中に溶解または懸濁するこ
とができる。加えて、安定剤を添加できる。
適合性の医薬担体中に製剤化された本発明の化合物を包含する組成物は調製さ
れ、適当な容器に入れられ、そして指示された状態の治療のためにラベルを付け
ることができる。ラベルに指示された適当な状態には生殖性疾患および癌のよう
な増殖性疾患の治療が包含されうる。加えて、本発明の化合物は避妊法として使
用できる。
本発明の疎水性化合物にとって好ましい製剤上の担体は、ベンジルアルコール
、無極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、および水相を包含する共溶媒系で
ある。好ましい共溶媒系はVPD共溶媒系である。VPDは3%W/V のベンジル
アルコール、8%W/V の無極性界面活性剤ポリソルベート80、および65W/V のポ
リエチレングリコール300 を無水エタノール中で容量となした溶液である。VP
D共溶媒系(VPD:5W)は水溶液中の5%デキストロースを用いて1:1希釈したVP
Dからなる。この共溶媒系は疎水性化合物をよく溶解させ、そしてそれ自体全身
投与に際して低い毒性しか生じない。当然、共溶媒系の割合はその溶解性および
毒性特性を破壊することなくかなり変動させることができる。さらに、共溶媒成
分の同一性も変動させることができる。例えば、他の低毒性無極性界面活性剤を
ポリソルベート80の代わりに使用でき、ポリエチレングリコールのフラクション
サイズを変動させることができ、他の生物適合性ポリマー(例えばポリビニルピ
ロリドン)がポリエチレングリコールに代わることができ、そして他の糖または
多糖類がデキストロースに代わることができる。
あるいはまた、疎水性医薬化合物のための他の送達系も使用することができる
。リポソームおよび乳剤は疎水性薬物のための送達ビヒクルまたは担体の良く知
られた例である。通常はより毒性が大きいという犠牲はあるが、DMSOのようなあ
る種の有機溶媒も使用できる。
医薬組成物はまた好適な固形またはゲル相担体または賦形剤をも包含しうる。
かかる担体または賦形剤の例には炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、種々の糖、
澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリマー(例えばポリエチレングリ
コール)が包含されるがそれらに限定されるわけではない。
本発明のGnRH-R変調化合物の多くは製剤学上適合するカウンターイオンとの塩
として提供されうる。製剤上適合する塩は塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リ
ンゴ酸、コハク酸、等を包含するがそれらに限定されない多くの酸を用いて形成
できる。塩は水性のまたは対応する遊離塩基形態である他のプロトン性溶媒中に
より溶解しうる傾向がある。
本発明の方法において用いられる何れの化合物でも、治療上有効な投与量は、
最初に、細胞培養アッセイから予想される。例えば、投与量は、動物モデルで処
方して、細胞培養で決定されるようなIC50(すなわち、GnRH-R活性の最大の半
分の抑制を達成するテスト化合物の濃度)を含む循環濃度範囲を達成することが
可能である。かかる情報を用いて、ヒトにおいて有用な投与量をさらに正確に決
定することが可能である。
治療上有効な投与量とは、患者の症状の改善または延命をもたらすような化合
物の量を言う。かかる化合物の毒性および治療上の効能は、例えば、LD50(母
集団の50%に対する致死投与量)およびED50(母集団の50%に治療上有効
な投与量)を決定するために、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的
操作により決定することが可能である。毒性と治療上の効果との投与比率は治療
指数であり、それは、LD50/ED50の比率として表される。大きな治療指数を
示す化合物が好ましい。これらの細胞培養アッセイおよび動物研究から得られる
データは、ヒトで使用するための投薬量の範囲を処方するのに用いることが可能
である。かかる化合物の投薬量は、好ましくは、循環濃度の範囲内にあり、毒性
がほとんどない、あるいは毒性が全くないED50を含む。投薬量は、採用される
投薬形態および用いられる投与経路に応じて、この範囲内で変化させてもよい。
正確な配合処方、投与経路および投薬量は、患者の状態をみながら、各医師によ
り選択することが可能である。(例えば、Finglら、1975,”The Pharmacologic
al Basis of Therapeutics”,Ch.1 p.1を参照)。
投薬の量および間隔を、それぞれ調節して、GnRH-R受容体阻害効果を維持する
のに十分な活性部分の血漿レベルを達成してもよい。全身投与のための通常の患
者の投薬量は、1〜2000mg/日の範囲であり、通常は1〜250mg/日であ
り、典型的には10〜150mg/日である。患者の体重について言えば、通常の
投薬量範囲は0.02〜25mg/kg/日であり、通常は0.02〜3mg/kg/日であり、典型
的には0.2〜1.5mg/kg/日である。患者の体表面積について言えば、通常の投薬量
範囲は0.5〜1200mg/m2/日であり、通常は0.5〜150mg/m2/日であり、典型
的には5〜100mg/m2/日である。
投薬の量および間隔をそれぞれ調節して、GnRH-R受容体抑制効果を維持するの
に十分な活性部分の血漿レベルを達成してもよい。通常の平均的な血漿レベルは
、50〜5000μg/ml内でなければらなず、通常は50〜1000μg/mlであ
り、典型的には100〜500μg/mlである。
あるいはまた、上記化合物は、全身的ではなく局所的に投与してもよく、例え
ば、該化合物をしばしばデポー製剤または持続型放出製剤として直接的に腫瘍に
注入することにより投与されてもよい。
さらに、薬剤を、標的薬剤運搬系(targeted drug delivery system)で投与し
てもよく、例えば、腫瘍特異的抗体で被覆されたリポソームとして投与される。
このリポソームは、腫瘍によって標的にされ、選択的に摂取される。
局所投与または選択的摂取の場合、薬剤の有効な局所濃度は、血漿濃度には関
係しない。
6.実施例:機能的マウスGnRH-Rのクローニング
以下のサブセクションは、マウスGnRH-Rを表す相補的DNAのクローニングを
説明し、ツメガエル(Xenopus)卵母細胞発現を用いてその同一性を確認する。セ
ンスRNA転写物の注入より、機能的な高親和性のGnRH-Rの発現が起こる。しか
し、性腺細胞系RNAを用いたGnRH-Rの発現は、アンチセンス・オリゴヌクレオ
チドにより遮断される。ラット下垂体前葉におけるin situハイブリダイゼーシ
ョンによって、特徴的なGnRH-Rの分布が明かになる。このヌクレオチド配列は、
327個のアミノ酸の蛋白質をコードし、これは、G蛋白質が結合している受容
体に特徴的な7個の推定の膜貫通ドメインを有するが、典型的な細胞内C末端が
欠如している。このGnRH-Rの変わった構造および新規な潜在的調節ドメインは、
そのシグナル形質導入および調節の独特な面を説明する。
6.1.材料および方法
薬剤は、以下の供給元から得た。:GnRH-Rアンタゴニスト[D-Phe2.6,Pro3]-Gn
RH(Bechem,Torrance,CA)、ブセレリン(buserelin)(D-Ser(But)6,Pro9-N-エチ
ルアミドGnRH)Hoerchst-Roussel Pharmaceuticals(Somerville,NJ)。他の全て
の薬品は、Sigma Chemical Co.(St.Louis,MO)からであった。全ての動物の
管理は、NIH Guide for the CareおよびUse of Laboratory Animalsに従った。
6.1.1.卵母細胞のマイクロインジェクションおよび記録
成体雌性アフリカツメガエル(Xenopus laevis)(Nasco,Ft.Atkinson,WI)を
18〜20℃および15h/9hの昼/夜サイクルに保持した。卵母細胞を注入
のために調製し、応答を先述のようにして記録した(Sealfonら、1990,Mol.End
ocrinol 4; 119-124)。細胞を0.5ml容の浴に入れ、標準的な二電極技術(Dascal
,1987,CRC Crit.Rev.Biochem.417: 47-61)を用いて電圧を−70mVにクラ
ンプした(clamped)。ペプチド・リガンドは、潅流緩衝液に希釈し、上記浴に導
入した。クランプ電流(clamp current)は、チャート記録計を用いて記録した。
反転電位(reversal potentials)は、アゴニストを用いて、あるいは用いずに、I
BM PC/AT装置で、TL-1インターフェースおよびpCLAMPソフトウエア[Axon Instru
ments(Burlingame,CA)]を用いて、2秒間にわたる−70〜+10mVの連続ラン
ピング(continuous ramping)により決定した。
6.1.2.PCRクローニングおよびハイブリッド阻害スクリーニング
RNAの調製およびcDNAの合成は先述のようにして行った(Sealfonら、19
90,Mol.Endocrinol 4: 119-124; Snyderら、1991,Neurosci Lett 122: 37-40
)。ハイブリッド阻害スクリーニング(hybrid arrest screening)のためのサブク
ローンは、GPRスーパーファミリーの保存された膜貫通ドメインに対応する種
々の縮重オリゴヌクレオチドを用いたPCRを用いて単離した。このオリゴヌク
レオチドは、WZ7を含むサブクローンの群を単離するのに用い、公表されたオリ
ゴマーの配列から改変し(Zhouら、1990,Nature 347: 76-80)、これは膜貫通III
[5'-GAGTCGACCTGTG(CT)G(CT)(GC)AT(CT)(AG)CNNT(GT)GAC(AC)G(CG)TAC-3']およ
び膜貫通VI[5'-CAGAATTCAG(AT)AGGGCANCCAGCAGAN(CG)(AG)(CT)GAA-3']に対応す
る。PCRは、低いストリンジェント条件で行った。反応の一部は、高いストリ
ンジェント条件で再増幅し、制限酵素で消化し、pBluescript II KS+(Stratagen
e)にサブクローニングし、配列決定した。ハイブリッド阻害アッセイでは、5HTI
C受容体の膜貫通IIに対応するアンチセンス・オリゴヌクレオチド(5'-ATCAGC
AATGGCTAG-3')(Juliusら、1988,Science 241: 558-564)およびWZ7に対応するオ
リゴヌクレオチド(5'-AGCATGATGAGGAGG-3')を合成した。αT3-1(1mg/ml)とラ
ット脳全RNA(1mg/ml)との混合物を、アンチセンス・オリゴヌクレオチド
(100μg/ml)を用いて、10分間にわたって、37℃で、200mMのNaClお
よび5mMのTrisを含有する緩衝液(pH 7.4,3μl容)中でプレインキュベート
した。ツメガエルの卵母細胞に50nlの上記混合物を注入し、48時間にわたっ
てインキュベートした後で、記録した。
6.1.3.ライブラリー・スクリーニングおよび配列決定
UniZap(Stratagene)αT3-1 cDNAライブラリーの106個のプラークを、
ランダム・ヘキサマー・プライマーによって32P標識化されているWZ7の挿入物
を用いてスクリーニングした。40個の陽性のプラークを同定し、2回目および
3回目のスクリーニングで7個を精製した。WZ25を、ヘルパー・ファージ切り出
しによってpBluescript II SK+にサブクローニングし、両ストランドを、ジデオ
キシ連鎖末端法によって、シーケナーゼT7DNAポリメラーゼ(USB)を用いて
配列決定した。配列は、taqポリメラーゼ標識化およびApplied Biosystems自動
シーケンサーを用いて両ストランドを再度配列決定することによって、さらに確
認した。予想される細胞質C末端がWZ25内での突然変異により末端切断される可
能性を除外するために、3´配列を2種のさらなる独立したクローン内で確認し
た。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、VAXコンピュータのWisconsin GCGパッ
ケージおよびマイクロプロセッサのMacVector(IBI)を用いて分析した。
6.1.4.WZ25 RNA転写物の特徴決定
pBluescript II SK+(Stratagene)中のWZ25を直鎖状にし、T3RNAポリメラ
ーゼ(Stratagene)を用いて、キャップ化されたRNA転写体を合成した。卵母細
胞に1.25 ngの得られた転写体を注入し、48時間にわたってインキュベートし
た後で、記録した。卵母細胞は、緩衝液またはGnRHアンタゴニスト(アンタゴニ
スト6:[Ac-D-Nal(2)1,D,α-Me-pCl-Phe2,D-Trp3,D-Arg6,D-Ala10]GnRH;
アンタゴニスト27:[Ac-D-Nal(2)1,D-α-Me-pCl-Phe2,D-Trp3,N-ε-lpr-Ly
s5,D-Tyr6,D-Ala10]GnRH;(Cander Spuyら、1987,Vickery BH and Nestor JJ
(eds)LHRH and its Analogs: Cotraceptive and therapeutic Applications.
NTP Press,Lancaster,Englandを参照))のいずれかを用いて、3分間にわたっ
て予備処理した後で、GnRH投与を行った。受容体の発現を確認するために、卵母
細胞は、アンタゴニストを3分間にわたって洗い出した後で、GnRHに再度さらし
た。
6.1.5.ラジオリガンド結合アッセイ
膜を調製するために、500個の卵母細胞にそれぞれ2.5 ngの合成WZ25RNA
を注入した。48時間後、卵母細胞の膜を記載(Kobilkaら、1987,J.Biol.Che
m.262: 15796-15802)のようにして調製し、10mMのHEPES、1mMのEDTAおよび0.
1%のウシ血清アルブミンを含有する結合緩衝液に再懸濁して、20個の卵母細胞
/mlの最終濃度を得た。125I-[D-Ala6,NaMe-Leu7,Pro9-NHEt]GnRH(GnRH-A)を
用いた受容体結合アッセイは、ラットおよびヒツジの下垂体膜について先述した
もの(Millarら、1989,J.Bio.Chem.264: 21007-21013)に基づいた。10-6M
のGnRHアナログの存在下での結合は、非特異的な結合であると考えた。平均のBo
(最大結合)および非特異的結合の値は、それぞれ1429および662cpmであった。
GnRH-AおよびGnRHについての解離定数(Kd)は、Enzfitter(Elsevier-BIOSOFT)を
用いて決定した。
6.1.6.溶液ハイブリダイゼーション、ノーザンブロット分析および
in situ ハイブリダイゼーション
399ヌクレオチドの32P標識化したGnRH-Rおよび117ヌクレオチドの1B15
(シクロフィリン内部ストランド)アンチセンスcRNAプローブを合成し、記
載の方法(Autelitanoら、1989,Mo Cell.Endo.67: 101-105)を用いてRNA
に溶液でハイブリダイズした。ポリ(A)+αT3-1 RNAを用いたノーザンブロッ
ト分析は、記載(Sambrookら、1989,Molecular Cloning: A Laborabory Manual
.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)のようにし
て行った。35S−UTP標識したcRNAを用いたin situハイブリダイゼー
ションは、自由に浮遊している下垂体の切片の上で、公表された方法(Gall & Is
ackson,1989,Science 245: 758-761)にしたがって行った。切片を載せ、Amers
ham Beta-max フィルムに3日間にわたってさらすか、あるいは放射活性エマル
ジョンに浸漬し、17日後に現像させた。
6.2.結果
6.2.1.機能的マウスGnRH-RのcDNAクローニング
マウス性腺刺激細胞系であるαT3-1[5]からのRNAは、ツメガエル卵母細胞
における機能的GnRH-Rの発現を支配するものであるが(Sealfonら、1990,Mol.E
ndocrinol 4: 119-124)、これを用いて、G蛋白質結合受容体(GPR: Probstら、1
992,DNAand Cell Bio 11:1-20 を参照)の保存されたモチーフに対応する縮重
オリゴヌクレオチドを用いるPCRのためのcDNAを合成した。PCR生成物
をサブクローニングし、配列決定して、アンチセンス・オリゴマーをハイブリッ
ド阻害アッセイのために合成した(Kawashi,1985,Nuc.Acids Res.13: 4991-5
004)。クローンWZ7に対応するオリゴヌクレオチドは、α-T3-1およびラット脳R
NAと共に同時注入した場合、卵母細胞におけるGnRH-Rの発現を完全に消滅させ
たが、脳5HTIIC受容体の発現には影響しなかった(図1)。第2のアンチセンス
・オリゴヌクレオチドは、WZ7の別のセグメントを示すが、これもまた、テスト
した全ての卵母細胞(n=16)においてGnRH-R発現を完全に、かつ特異的に失
わせた。クローンWZ7は、αT3-1バクテリオファージcDNAライブラリーをス
クリーニングするためのプローブとして用い、7個の陽性のプラークを精製した
。
1.3kbの最大の挿入物(すなわち、WZ25)を有するクローンが機能的GnRH-Rをコ
ードするか否かを試験するために、それをRNA合成および卵母細胞発現のため
にサブクローニングした。全ての合成RNA注入卵母細胞(n>50)は、GnRH
にさらした場合、GnRH-R発現の大きな減極性応答特性(depolarizing response c
haracteristic)を示した(図2)。WZ25 RNA転写体によって卵母細胞におい
て誘発されるGnRHに対する応答の反転電位(Vr)およびカルシウム依存性は、α
T3-1 RNAを用いて予め得られたものと同様であった(Sealfonら、1990,Mol
.Endocrinol 4: 119-124)。GnRHによってもたらされる電流のVrは、−27±0.
79mV(n=7)であり、卵母細胞における塩素イオンのものと一致した(Barish
,1983,J.Physiol.342: 309-325)。GnRHによってもたらされる応答は、記録
する1時間前に卵母細胞を5mMのEGTAで予備処理することによって完全に失われ
た(n=4)が、潅流液中おけるCa2+の不存在によってそれ程影響を受けなかっ
た(n=7)。したがって、クローンWZ25から発現された受容体は、ホスファチ
ジルイノシトール加水分解を起こす受容体(Dascal,1987,CRC Crit.Rev.Bio
chem.417:47-61を参照)に特徴的な、卵母細胞のカルシウムに依存するクロラ
イドの流れによって媒介される応答を示した。得られた応答の薬理学は、哺乳動
物のGnRH-Rの発現と一致した。GnRHアゴニスト[D-Ser(t-Bu)6,Pro9-NHEt]GnRH
(100nM ブセレリン、n=6)は、RNA注入卵母細胞において減極性の電
流をもたらした。等モルの弱いGnRHアンタゴニスト[D-Phe2.6,Pro3]GnRHの存在
下では、GnRH単独に対する応答と比較して、GnRHへの応答が60%低下した(そ
れぞれ、1880±551 nA,n=5、および4756±1082 nA,n=4)。2種の潜在的
なGnRHアンタゴニストは、GnRHによってもたらされる電流を完全になくした(図
2A)。
このcDNAクローンによってコードされる受容体をさらに特徴決定するため
に、WZ25 RNA転写体を注入した卵母細胞から精製した膜の上でのラジオリガ
ンド結合アッセイを行った。GnRHアゴニスト[D-Ala6,NαMe-Leu7,Pro9-NHEt]G
nRH(GnRH-A)は、合成RNAが注入された卵母細胞の膜と高い親和性で結合した
(図2B)。125I-GnRH-AをGnRH-Aで置換することにより、WZ25 RNA注入卵
母細胞膜およびαT3-1細胞膜において、それぞれ4.5および2.9nMという同様のKd
であることが明らかになった。クローン化した受容体に結合したGnRH-AのGnRHに
よる置換は、以前にαT3-1膜について報告されているように(Hornら、1991,Mol
.Endocrinol.5: 347-355)、それ程有効ではない桁数であった。したがって、
ハイブリッド阻害および発現のデータにより、クローンWZ25がマウスGnRH-Rを示
すことが確認される。
6.2.2.マウスGnRH-Rのコード配列の特徴決定
クローンWZ25のヌクレオチド(配列番号1)および対応する予想されるアミノ
酸配列(配列番号2)を図3に示す。最長のオープン・リーディング・フレーム
は327個のアミノ酸の蛋白質(相対的分子質量、Mr=37,683)をコードする。
可溶化したラットGnRH-Rの結合サブユニットについては、さらに長い大きさのも
の(Mr 50,000-60,000)が報告されており(Hazumら、1986,J.Bio.Chem.261:
13043-13048; Iwashitaら、1988,J.Mol.Endocrinol.1: 187-196)、これは受
容体のグリコシル化による。3つのコンセンサスN連結グリコシル化部位が存在
し、2つはN末端にあり、1つは推定される第1の細胞外ループにある。第1の
ATGは翻訳開始部位を示すと考えられる。その理由は、それがKozakコンセンサス
配列(Kozak,1987,Nuc.Acids Res.15: 8125-8148)と非常に類似しており、か
つ、さらなる5’配列を有する第2のcDNAクローンが、このリーディング・
フレーム内に−54および−57の位置で、2つの非センス・コドンを含むから
である。したがって、あらゆる上流スタート部位での翻訳開始は、正しいオープ
ン・リーディング・フレームに到達する前に終了するであろう。ポリアデニル化
シグナルは全くなく、明らかなポリ(A)末端が、ライブラリー構築の際の3’非
翻訳領域におけるオリゴ(dT)プライミングを最も表すと思われる。しょ糖勾配(S
ealfonら,1990,Mol.Endocrinol 4: 119-124)およびノーザンブロット分析に
より決定したところ、単離された機能的GnRH-R cDNAは1.3kbであるが、こ
の配列を含むmRNAは約4.6kbである(図5B)。一次ライブラリー・スクリ
ーニングにより同定される40個の陽性のプラークのPCR分析から、GnRH-R
mRNAがさらなる5’非翻訳配列と3’非翻訳配列との双方を含有することが
示唆される。
導き出された蛋白質の疎水性分析から、インターロイキン−8受容体と高度の
相同性を有する他のGPRに類似する20〜30%の配列を有する高い疎水性の
アミノ酸の7つのストレッチ(stretches)が証明される(図4)。GnRH-R中の幾
つかの高度に保存された残基(例えば、多くの受容体を安定化する最初の2つの
細胞外ループの各々に存在するシステイン等)が注目されるが、GnRH-Rの幾つか
の特徴は珍しいものである。例えば、高度に保存された細胞貫通IIアスパルテー
ト/グルタメートは、多くのGPRの機能にとって重要であることがわかってい
るが、これはアスパラギンで置き換えられる。GnRH-Rは、GPRのスーパーファ
ミリーの中でほとんど最短のものであり、あらゆる他のGPRとは異なって、極
性細胞質C末端が欠如している。推定される第1の細胞質ループは、他の如何な
るGPRよりも長い。GPRの中でも独特なことに、GnRH-Rは二量重合により活
性化する(Connら,1982,Nature 296: 653-655; Gregory & Taylor,1982,Natu
re 300: 269-271)。その珍しい構造は、この提案された活性化のメカニズムに役
立つであろう。
他のGPRとののもう1つの相違(deviation)は、セリンの、細胞貫通IIIに隣
接して位置する保存されたチロシンへの置換である。これにより、他のGPRの
シグナル形質導入にとって重要なドメインに潜在的なリン酸化部位がつくられ、
これはGnRH-Rに独自ものである。C末端のリン酸化は、GnRH-Rでは見られないこ
とであるが、これは、幾つかのGPRの減感作に寄与する(Probstら,1992,DN
A and Cell Biology 11: 1-20を参照)。GnRH-Rの新規なリン酸化部位が受容体
の減感作に介在するか否かを決定することは興味深いことである。他の潜在的な
調節リン酸化部位も存在する(図3)。
種々の神経内分泌細胞系におけるGnRH-R mRNAの存在は、溶液ハイブリダ
イゼーション/ヌクレアーゼ保護アッセイによって調べた(図5A)。GnRH-Rm
RNAはαT3-1細胞およびマウス下垂体において検出されたが、神経由来のGnRH
(GT-1)、コルチコトロピン(corticotroph)(AtT20)またはソマトラクトトロ
ピン(somatolactotroph)(GH3)細胞系では該アッセイの検出限界で検出されな
かった。GT-1およびAtT-20細胞系において検出可能なGnRH-R mRNAが存在し
ないことは、溶液ハイブリダイゼーション/ヌクレアーゼ保護アッセイにおいて
高濃度のRNAを用いて確認されている(Dr.Andrea C.gore,非公開のデータ
)。図5Cは、ラット下垂体前葉におけるGnRH-R mRNAの分布を示す。標識
は、腺全体に不均一に分布し、GnRH-Rオートラジオグラフィによってパターンが
予め観察された(Badr & Pelletier,1988,Neuropeptides 11:7-11)。明視野(br
ight-field)および暗視野(dark-field)顕微鏡法により、GnRH-R mRNAを発
現する細胞の密集化が明らかになった(図5E,F)。
7.実施例:ヒトGnRH-Rのクローニングおよび特徴決定
以下のサブセクションは、ヒトGnRH-Rを表す相補的DNAのクローニングを説
明し、かつツメガエル卵母細胞発現を用いてその同一性を確認する。さらに、こ
のヒトGnRH-Rは、COS-1細胞内で発現して、機能的に活性であることが示された
。
7.1.材料および方法
7.1.1.ヒトGnRH-Rのクローニング
GT10ヒト下垂体cDNAライブラリー(Clontech)の120万個のプラークを、高
いストリンジェント条件で、マウスGnRH-R挿入物(Tsutsumiら,1992,Mol.Endo
crinol.6: 1163-1169)(ランダム・ヘキサマー・プライミングにより32P標識
されている)でプローブした(Sambrookら,1989,Molecular Cloning: A Labora
tory Mnual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y
.)。32個の陽性のプラークを二連のフィルターで同定した。すなわち、10個
はさらに特徴決定するために選別し、6個は次のスクリーニングによってうまく
精製した。最も大きな挿入物を有するクローンを、pBluescript II SK+(構築物
LC27-4)のEcoRI部位にサブクローンし、両ストランドを、Applied Biosystems
自動シーケンサー(Foster City,CA,USA)で、合成オリゴヌクレオチド・プライ
マーを用いて、繰り返し配列決定した。配列は、VAXコンピューターのWisconsin
GCGパッケージを用いて分析した。
7.1.2.ツメガエル卵母細胞での発現
構築物LC27-4を直鎖状にし、キャップ化RNA転写体をT3RNAポリメラー
ゼを用いて合成した。卵母細胞の調製および電気生理学は先述(Sralfonら,1990
,Mol.Endocrinol.4: 119-124)のようにして行った。細胞に1〜10ngの合成
転写物を注入し、電気生理学を二電極電圧クランプにより48時間後に記録した
。全てのアゴニストおよびアンタゴニストを0.2μMの濃度でかけた。アンタゴニ
ストは、GnRHにさらす前に浴に3分間導入した。
以下のGnRHアナログを用いた。:GnRH-A:[D-Ala6,N-Me-Leu7,Pro9-NHEt]G
nRH;アンタゴニスト5:[D-pGlu1,D-Phe2,D-Trp3.6]GnRH;アンタゴニスト6
:[Ac-D-NaI(2)1,D-α-Me-pCl-Phe2,D-Trp3,D-Arg6,D-Ala10]GnRH;アンタ
ゴニスト13:[Ac-D-NaI1,D-α-4-ClPhe2,D-Pal3,D-Arg6,D-Ala10]GnRH;
アンタゴニスト27:[Ac-D-NaI(2)1,D-α-Me-pCl]-Phe2,D-Trp3,N-ε-ipr-L
ys5,D-Tyr6,D-Ala10]GnRH[Van der Spuyら,1987,”LHRH and its Analogs":
Contraceptive and Therapeutic Applications(Vickery,B.H.およびNestor
,J.J.eds)NTP Press,Lancaster]。ブセレリン(buserelin)[D-Ser(But)6,Pro9
]GnRH)は、Hoerchst-Roussel Pharmaceuticals(Somerville,NJ,USA)の寛大な
贈与であった。
7.1.3.COS-1 細胞のトランスフェクション
ヒトGnRH-R cDNAを、SV40初期プロモーターを含有する発現ベクターpSV2
Aにサブクローニングした。COS-1細胞は、pSV2A-ヒトGnRH-R構築体により、DEAE
−デキストラン法(Keownら,1990,”Methods in Enzymology”VI.185(Goedde
l,D.V.,ed.)pp.527-537,Academic Press,New York)を用いて瞬間的にトラ
ンスフェクトした。GnRH結合の検討では、3x106細胞/10cm皿を15μgの
DNAでトランスフェクトした。イノシトールリン酸産生に関する検討では、1.
8x105細胞/ウエル(12ウエルのプレート)を1.5μgのDNAでトランスフ
ェクトした。細胞は、トランスフェクションの48時間後にアッセイした。
7.1.4.受容体結合
細胞の膜は、トランスフェクトした細胞から、ラット下垂体について記載した
ような単一の遠心分離工程(Millarら,1989,J.Biol.Chem.264: 21007-21013
)を用いて調製した。受容体結合アッセイは、先述(Tsutsumiら,1992,Mol.End
ocrinol.6: 1163-1169)のようにして、125I-GnRH-Aを用いて行った。10-7Mの
GnRH-Aを用いて、非特異的な結合を推定した。
7.1.5.イノシトールリン酸産生の刺激
GnRHで刺激されるイノシトールリン酸(IP)産生は、記載(Davidsonら,1990,
Endocrinology 126: 80-87)のようにして決定した。LiClの存在下での[3H]IPの
蓄積は、リン酸イノシトールのターンオーバーの指標として用いた。簡単に言う
と、トランスフェクトされた細胞は、一夜にわたって[3H]イノシトールで標識化
し、LiClの存在下で1.0μMのGnRHで刺激した。反応は、過塩素酸およびフィチン
酸の添加により停止した。KOHで中和した後、イノシトールリン酸をDowexイオン
交換カラムで分離し、カウントした。
7.1.6.ノーザンブロットおよびPCR分析
RNAは、6つのヒト下垂体(5つは男性、1つは女性のもの、年齢30〜4
5才)およびヒト精巣(年齢80才)から、グアニジニウム・チオシアネートで
抽出することにより調製し、続いて塩化セシウム中で遠心分離した(Sambrookら
,1989,"Molecular Cloning":A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab
oratory Press,Cold Spring Harbor,NY)。Promega PolyA Tract mRNA単離装置
を用いて調製した下垂体(1.6μg)および精巣(0.9μg)のポリ(A)RNAを
、1%アガロース、2.2Mホルムアルデヒド・ゲルで電気泳動し、20xSSC中
のニトロセルロース膜(HYbond-C extra,Amersham)に移し、減圧下で80℃で固
定した。構築体LC27-4からの挿入物を、7.2x108cpm/μgの比活性までAmersha
m Megaprime Labelling Kitを用いて標識化した。ブロットをプレハイブリダイ
ズし(2時間)、2xPipes、50% ホルムアルデヒド、0.5%SDS、100μg/mlの
ニシンの精子DNA中で42℃でハイブリダイズし(一夜)、続いて洗浄した(
最終洗浄 0.2xSSC、0.1%SDS、60℃、10分間)。ヒトRNAにおけ
る過剰の5’および3’非翻訳配列を明らかにする(delineate)ために、クロー
ンを、一次ライブラリー・スクリーニングにおける二連のフィルタで同定し、精
製されなかったものは、GT10クローニング部位および公知のヒトGnRH-R挿入物に
向かう対になったプライマーを有するPCR鋳型として用いた。得られるPCR
反応の生成物は、1%アガロースゲル上で、PCR鋳型としてクローンLC27-4を
用いて得られるものと比較した。
7.2.結果
7.2.1.ヒトGnRH-Rのクローニングおよび特徴決定
クローンLC27-4の配列決定は、2160bpの挿入物であることが同定された(図9
)。最大のオープン・リーディング・フレーム(1008bp)は、該クローンの5’末
端に伸びる。翻訳開始部位は、Kozakコンセンサス配列(Kozak,1987,Nucleic A
cids Res.15: 8125-8148)の存在により、一部分は第1のATGとされる。特徴決
定されるクローンはその完全な5’範囲内のリーディング・フレームに残ってい
るという理由から、さらなる上流開始部位の存在は除外できない。しかし、さら
なる5’コード領域の存在はありそうにないと考えられる。その理由は、翻訳開
始部位が大きな確実性をもって指定される(assigned)ことが可能な、マウス受容
体との高い相同性のためである(Tsutsumiら,1992)。したがって、ヒト受容体c
DNAは、328 個のアミノ酸の蛋白質をコードする984bpのリーディング・フレ
ームを、マウス受容体の予想される配列と90%の同一性で含む。長い3´非翻
訳領域は、ポリアデニル化シグナルを全く含まない。
ノーザンブロット分析を用いて、全長ヒトGnRH RNAの大きさを決定した。
このプローブは、ヒト下垂体ポリ(A)RNAにおける約4.7 kbの単一のバンド
であることが明らかになった(図10)。ヒト精巣から精製されたポリ(A)R
NAまたはヒトβ−アクチンcDNAコントロールを用いて精製したポリ(A)
RNAでは、シグナルは全く検出されなかった。RNAの5’および3’非翻訳
ドメインの範囲を決定するために、一次ライブラリー・スクリーニングからのフ
ァージ単離物のPCR分析を行った。LC27-4挿入物の5’末端付近の配列を表す
アンチセンス・オリゴヌクレオチド・プライマー、または同じ配列の3’末端付
近のセンス・プライマーを、隣接するGT1クローニング部位に対して設計された
プライマーとの連結(conjunction)に用いて、精製されていないクローンのマッ
ピングを行った。同定した最長のPCR生成物は、約1.3kbのさらなる5’配列
および0.3kbのさらなる3’配列を有していた(図示せず)。これらのデータは
、GnRH-R mRNAが少なくとも1.3kbの5’非翻訳配列と1.5kbの3’非翻訳配
列とを含むことを示唆する。ノーザンブロットのデータに基づくと、このことは
、さらなる非翻訳配列(<1kb)が単離されたクローンの何れにも含まれていな
いことを示唆する。
疎水性分析(Kyte-Dolittle)により、G蛋白質結合受容体の特徴である7つの
疎水性ドメインを同定した(図9参照)。マウス受容体の予想される構造からわ
かるように、ヒトGnRH-Rは、本質的に、あらゆるC末端細胞内ドメインが欠如し
ている。2つの潜在的なN連結グリコシル化部位が存在し、最初の2つの細胞外
ドメインの各々にある。幾つかの細胞質セリンおよびトレオニン残基が、細胞内
ドメインに見いだされ、調節リン酸化部位としての役割を果たす。
7.2.2.ツメガエル卵母細胞の注入
単離された最大のクローンであるLC27-4は、約2.2kbの挿入物を含有していた
。このクローンが機能的ヒトGnRH-Rをコードするか否かを試験するために、合成
RNA転写体をツメガエル卵母細胞に注入した。全てのRNA注入卵母細胞は、
2x10-7M のGnRH(n=17)または2x10 M のブセレリン(N=6;図
1)にさらした際に、大きな減極性電流を生じ、これは、組織または細胞系RN
Aを用いた卵母細胞における哺乳動物のGnRH-Rの発現に従って得られる応答(Sea
lfonら,1990,Mol.Endocrinol.4: 119-124)とは区別できなかった。これらの
応答は、等モル濃度の2種の潜在的なGnRH受容体アンタゴニストによって完全に
遮断された(それぞれn=5;図6)。
7.2.3.ヒトGnRH-RのCOS-1細胞における発現
クローン化されたヒトGnRH-Rをさらに特徴決定するために、受容体をCOS-1細
胞内で発現した。ヒトGnRH-R構築体でトランスフェクトされたCOS-1細胞からの
膜を用いた結合のデータを図7に示す。GnRH-AのGnRH-A、GnRHおよびアンタゴニ
スト5による置き換えは、解離定数がそれぞれ0.97nM、2.8nMおよび8.4nMであり
、ヒト下垂体膜を用いて予め得たもの(Wormaldら,1985,J.Clin.Endocrinol
.Metab.61: 1190-1198)と類似する値であった。
COS-1細胞内で発現された受容体は機能的であり、イノシトールリン酸代謝に
関連することがわかった。最大の受容体の刺激で、リン酸イノシトール(phospho
inositol)代謝において約8倍の増加が達成され、GnRHのEC50は約3nMであっ
た。(10-8)MのGnRHにより誘発されるPIターンオーバーの刺激は、GnRHア
ンタゴニストにより濃度依存的に抑制された(図8)。GnRHで刺激される(10-8
M)イノシトールリン酸産生は、アンタゴニスト13(IC50が6.7x10-9M
)およびアンタゴニスト5(IC50が1.05x10-7M)によって抑制され(図示
せず)、Kdの値がそれぞれ2.1 x10-10Mおよび3.6 x10-9Mであった(Leslie
,F.M.,1987,Pharmacol.Rev.39: 197-247)。
本発明は、例示した実施例によって範囲が限定されるものではなく、それらの
実施例は、本発明の単一の形態を説明するものとして意図され、機能的に等価で
あるあらゆるクローン、DNAまたはアミノ酸配列は本発明の範疇内である。ま
さに、本発明の種々の改変は、上記の記載および添付の図面から、当業者であれ
ば可能である。そのような改変は添付の請求の範囲の範疇内であると意図される
。
さらに、ヌクレオチドについて与えられる全ての塩基対の大きさはおよその値
であり、説明の目的で用いられる、と理解すべきである。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12P 21/08 G01N 33/53 D
G01N 33/53 33/577 B
33/577 A61K 31/70
// A61K 31/70 39/395 P
39/395 C07K 14/72
C07K 14/72 A61K 37/02