【発明の詳細な説明】
名称:プロテアーゼにより開裂可能なタンパク質を組込んだ組換えウイルス
発明の分野
この発明は、プロテアーゼにより開裂可能なタンパク質を組込んだ組換えウイ
ルス粒子および該組換え粒子のさまざまな応用に関する。レトロウイルスエンベロープ
レトロウイルスエンベロープ糖タンパク質は、細胞表面受容体への特異的なウ
イルスの付着を媒介し、その結果ウイルスエンベロープと標的細胞膜との間の融
合を引起こす。今日までに調べられたレトロウイルスエンベロープスパイク糖タ
ンパク質はすべて、2つから4つのヘテロダイマーサブユニットを含有するホモ
オリゴマーである(Domsら、1993 Virology 193, 545)。各サブユニットは、そ
のC末端でより小さい膜貫通ポリペプチド(TM)に非共有結合的に付着する大
きなウイルス外糖タンパク質成分(SU)を含み、膜貫通ポリペプチドはこの複
合体をウイルス膜に固定する。ネズミC型レトロウイルスベクターの場合には、
SUはプロリンの豊富なヒンジによって接続される2つのドメインからなり、そ
のN末端ドメインは、受容体特異性を付与し、宿主域の異なる複数のネズミ白血
病ウイルス(MLV)の間で高い保存度を示す(Battini ら、1992 J.Virol 66 ,
1468-1475)。モロニーMLVエンベロープは、マウスおよびラット起源の細
胞でのみ見られるネズミカチオン性アミノ酸輸送体(CAT−1)内のペプチド
ループに選択的に付着するので、同種指向性の宿主域を付与する(Albritton ら
、1989 Cell 57, 659-666)。4070A MLVエンベロープは、多数の哺乳
動物種を通じて保存される、遍在性のRAM−1ホスフェート共輸送体における
エピトープに付着し、両種指向性の宿主域を付与する(Millerら、PNAS 91, 78
-82;VanZeijlら、1994 PNAS 91, 1168-1172)。したがって、4070Aエンベ
ロープを有するレトロウイルスベクターは無差別にヒト細胞に感染する一方、モ
ロニーエンベロープを有するベクターはヒト細胞に感染しない。タンパク質分解活性
今日までに研究されたすべてのレトロウイルスにおいて、SUおよびTMポリ
ペプチドは、細胞表面への輸送の間にゴルジ区画におけるタンパク質分解性成熟
を受ける一本鎖前駆体糖タンパク質から誘導される。開裂されていないエンベロ
ープ前駆体糖タンパク質は、ウイルスに組込まれ得るが、膜融合を引起こすこと
はできない。タンパク質分解性成熟/活性を必要とすることは、多くのウイルス
科の融合誘導膜糖タンパク質に共通した特徴であり、遍在するゴルジ区画セリン
プロテアーゼ、フリン(furin)によって媒介されるのが最も一般的である。し
かし、遍在する細胞間プロテアーゼによる開裂に対して耐性を示し、代わって、
少数の宿主系においてのみ利用可能な、分泌されるプロテアーゼによって開裂さ
れるウイルス膜糖タンパク質の十分に立証された例がある(KlenkおよびGarten,
1994 Trends Microbiol.2, 39)。さらに、ウイルスの侵入段階において赤血球
凝集素が標的細胞プロテアーゼによって活性化される、インフルエンザウイルス
株の少なくとも1つの例がある(Boycott ら、1994 Virology 203, 313)。これ
らの例においては、ウイルス膜糖タンパク質の結合反応はそのタンパク質分解性
開裂によっては影響を受けず、膜融合を引起こすその能力のみが影響される。SUのN末端伸長物としての非ウイルス性ポリペプチドの、レトロウイルスでの 提示
SU糖タンパク質の遺伝的にコードされた伸長物としてレトロウイルスベクタ
ーの表面で(糖)ポリペプチドの提示を可能にする一般的方法が開示されている
(WO 94/06920,メディカル・リサーチ・カウンシル)。ポリペプチ
ドは(遺伝子工学によって)SU糖タンパク質のN末端部に融合され、その結果
、ポリペプチドが移植されたエンベロープタンパク質は実質的に無傷のままであ
り、融合された非ウイルス性ポリペプチドリガンドはウイルス表面に提示される
。今日までに、一本鎖抗体、細胞成長因子および免疫グロブリン結合ドメインを
含む多数の異なったポリペプチドリガンド類をMLV系のレトロウイルスベクタ
ー上に提示するため、この方策が用いられてきた(WO 94/06920,メ
ディカル・リサーチ・カウンシル;WO 96/00294,メディカル・リサ
ーチ・カウンシル;Cossetら、1994 Gene Therapy 1, S1 ;およびNilsonら、19
94 Gene Therapy 1, S17)。報告されてきた他のキメラのレトロウイルスエンベ
ロープタンパク質(CD4キメラ、Kasaharaら、1994 Science266, 1373 ;Chu
およびDornburg,1995 J.Virol.69, 2659 ;Somia ら、1995 PNAS 92, 7570)
とは対照的に、N末端で伸長されたSU糖タンパク質のウイルスへの組込みには
、修飾されていないエンベロープ糖タンパク質の存在が必要とされない。
原則として、このようなキメラエンベロープタンパク質を提示するウイルスは
、(SUのN末端ドメインを介して)その本来のウイルス受容体、および提示さ
れるポリペプチドに対するコグネイト受容体の両者に多価的に付着できるであろ
う。これは上皮増殖因子(EGF)を提示するレトロウイルスベクターについて
も当てはまることを我々は見出した。しかしながら、その厳密な性質、そのオリ
ゴマー化する傾向およびそのSU糖タンパク質への結合の態様によって、提示さ
れるポリペプチドは、SUのN末端ドメインと本来のウイルス受容体との間の相
互作用に対して立体障害となり得る。N末端で伸長されたSU糖タンパク質によるレトロウイルス親和性(向性)の変 更
MLVレトロウイルスベクター上で、それらの無傷のSU糖タンパク質のN末
端伸長物として、異なる受容体結合ドメインが提示されたとき、提示されるリガ
ンドによって宿主域が拡大または制限され得るということが見出された(Cosset
ら、1995 J.Virol.69,6314-6322)。かくして、宿主域の拡大の一例として、
4070A SUからのRAM−1受容体結合ドメインを提示するネズミ同種指
向性ベクターが、RAM−1−陽性ヒト細胞に結合しかつこれに感染することが
できた。対照的に、宿主域の制限の一例として、EGFを提示する同種指向性お
よび両種指向性ベクターはEGF受容体に結合できたが、その後非感染性の侵入
経路に隔離され、EGF受容体陽性細胞では力価が大幅に減じられる一方、EG
F受容体陰性細胞では正常な力価が示された。EGF受容体陰性細胞は設計され
たレトロウイルスベクターに十分に感染可能であったが、それらがEGF受容体
を発現するよう遺伝的に修飾されたときは感染性の減少を示した。感染性の減少
は、EGF受容体発現のレベルに比例した。さらに、EGF受容体によるウイル
スの捕獲を競合的に阻害するため可溶性のEGFを添加したときは、遺伝子導入
が回復した。この後の例において、設計されたベクターは、本来のウイルス受容
体またはEGFに対する受容体に結合することができる。本来のウイルス受容体
への付着によって標的細胞の感染が起こる一方、EGF受容体への付着によって
は標的細胞の感染は起こらない。標的細胞が両種の受容体を発現する場合には、
2つの結合反応(RAM−1への4070Aエンベロープタンパク質の結合反応
およびEGF受容体へのEGFの結合反応)は競合して進行し、そして標的細胞
に対するウイルスの感染力は、EGF−EGF受容体結合反応がRAM−1から
ウイルスを遠ざけるべく競合する効率に比例して減じられる。
このメカニズムによって遺伝子導入が阻害され得る度合は、2つの結合反応(
本来の受容体へのエンベロープタンパク質の結合反応およびそのコグネイト受容
体への非ウイルス性リガンドの結合反応)の相対的アフィニティ、標的細胞表面
上の2つの受容体の相対密度、およびウイルス表面上の非ウイルス性リガンドと
無傷のエンベロープタンパク質との相対密度に依存する。加えて、遺伝子導入の
阻害は、非ウイルス性リガンドに対する受容体の固有の特性、たとえば該受容体
が標的細胞膜から突出する距離、標的細胞膜内でのその移動性、およびリガンド
結合後の細胞表面でのその半減期などに影響される。
SUのN末端ドメインと本来のウイルス受容体との間での相互作用に対する立
体障害によって別のメカニズムが提供され、これによって、SUのN末端伸長物
として提示されるポリペプチドはレトロウイルスの宿主域を制限できる。たとえ
ば、4070A MLV SUからのN末端ドメインをモロニーMLV SUの
N末端伸長物として提示するキメラエンベロープは明らかに、RAM−1(40
70A SUに対する受容体)に結合できるが、ecoR(モロニーSUに対す
る受容体)には結合できない。4070A SUからの提示されるドメインがモ
ロニーSU三量体の上に三量体のキャップを形成し、その受容体結合部位を完全
に覆うこともあり得よう。もしこのモデルが正しいのであれば、無傷の4070
A SU糖タンパク質の受容体結合部位(これを通じてウイルスはヒト細胞に付
着する)が、モロニーMLV SUのN末端ドメインなどの、ヒト細胞に結合し
ない提示ポリペプチドによってマスクされている、キメラエンベロープを生成さ
せることも可能なはずである。開裂可能ドメインのファージでの提示
ポリペプチドリガンドをエンベロープ糖タンパク質のN末端伸長物として提示
するレトロウイルスベクターと、遺伝子IIIタンパク質のN末端伸長物としてポ
リ
ペプチドリガンドを提示する繊維状バクテリオファージとの間にはある種の類似
性がある。開裂可能な結合ドメインを提示する繊維状「基質ファージ」のライブ
ラリが、最近、既知のプロテアーゼに対する最適の基質を同定するため使用され
た(MatthewsおよびWells,1993 Science 260, 1113 ;Matthewsら、1994 Prote
in Science3, 1197 ;Smith ら、1995 J.Biol.Chem.270, 6440)。しかし、繊
維状ファージは本来哺乳動物細胞には感染せず、遺伝子IIIタンパク質に融合さ
れた開裂可能なドメインがそれを提示するファージの親和性(向性)に影響し得
るということは立証されていない。発明の概要
第1の局面において、この発明は、真核細胞に感染可能な組換えウイルス粒子
を提供し、このウイルス粒子は、介在するリンカー領域を介して、この粒子の表
面に提示される異種のポリペプチドに融合される実質的に無傷のウイルス糖タン
パク質を含む。この異種のポリペプチドは、1つまたはそれ以上の真核細胞型に
感染するこのウイルス粒子の能力を調節するものであり、かつ、このリンカー領
域に存在する特定のプロテアーゼ開裂部位に対して選択的に作用するプロテアー
ゼによってウイルス糖タンパク質から開裂可能なものである。そして、ウイルス
糖タンパク質からのこの異種のポリペプチドの開裂によって、糖タンパク質は標
的細胞の表面のそのコグネイト受容体と正常に相互作用できるようになる。
このような粒子は、たとえば遺伝子治療のために必要とされるように、粒子内
に存在し得る核酸配列を特定の所望する標的細胞に配達することの標的化におい
て極めて有益である。
他の局面において、この発明は核酸構造物を提供し、この核酸構造物は融合タ
ンパク質をコードする配列を含む。この融合物は、介在するリンカー領域を介し
て異種のポリペプチドに融合される実質的に無傷のウイルス糖タンパク質を含み
、そこにおいて、融合タンパク質は、真核細胞に感染可能なウイルス粒子に組込
まれ得、さらに、この異種のポリペプチドは、1つまたはそれ以上の真核細胞型
に感染するこのウイルス粒子の能力を調節する一方、融合タンパク質からのこの
異種のポリペプチドの開裂によって、ウイルス糖タンパク質は真核細胞の表面の
そ
のコグネイト受容体と正常に相互作用できるようになる。
さらなる局面において、この発明は、上に規定した複数の核酸構造物を含む核
酸配列ライブラリを提供し、そこにおいて、介在するリンカー領域をコードする
配列の少なくとも一部は各構造物中でランダム化され、それにより、各構造物は
、ライブラリに集められた複数の異なるリンカー領域の1つを含む。
この発明は上に規定したウイルス粒子のライブラリも提供し、各粒子は上に規
定した核酸ライブラリからの単一の核酸構造物を含む。
ここで使用する際に「実質的に無傷」という用語は、翻訳後プロセシング、オ
リゴマー化(もしあれば)、ウイルス組込および融合誘導特性を保つようにその
ドメインをすべて保持しているウイルス糖タンパク質を指すことを意図している
。しかし、これらの機能に大きな影響を与えることなく、ある種の変更(たとえ
ば点突然変異、欠失、付加)を糖タンパク質に加えることができ、この発明の目
的において、このような小さな変更を含む糖タンパク質は実質的に無傷であると
見なされる。特定的には、特にN末端において、糖タンパク質はいくつかの(た
とえば1から10程度の)アミノ酸残基を欠いていてもよいが、その点を除いて
は野生型のタンパク質とほぼ一般的に同じ大きさであり、野生型のタンパク質と
実質的に同じ生物学的特性を有する。
介在するリンカー領域はかなり短いことが好ましいであろうし、典型的には4
から30のアミノ酸残基を含み、より典型的には5から10の残基を含むであろ
う。異種のポリペプチドによる感染の調節を最大化する傾向のため、短いリンカ
ーが好ましい。ある具体例において、適当なリンカー領域は、異種の提示される
ポリペプチドの本来の部分として存在し得る。
ウイルス粒子は、1つまたはそれ以上の真核細胞型に感染可能な任意のウイル
スであってもよいが、アデノウイルスまたはレトロウイルス(特にC型のレトロ
ウイルス)などの、遺伝子治療での使用に適したウイルス粒子であることが好都
合であろう。
ウイルス糖タンパク質はウイルスエンベロープ糖タンパク質を含むことが典型
的であろうが、異なるウイルス糖タンパク質に対応する配列を含むが全体として
実質的に無傷の機能的タンパク質を構成するキメラのポリペプチドであってもよ
い。
異種のポリペプチドは、短いアミノ酸配列(特にロイシンジッパーペプチド配
列のように配列がオリゴマー化されるならば、10から20残基程度のペプチド
など)であってもよいが、30またはそれ以上のアミノ酸残基からなることがよ
り典型的であろう。必須というわけではないが一般にポリペプチドは機能的結合
ドメインを含むであろう。リンカー領域を介してウイルス糖タンパク質に融合さ
れるとき、異種のポリペプチドは、1つまたはそれ以上の真核細胞型に感染する
ウイルス粒子の能力を調節する。特定的には、異種のポリペプチドの存在は、ウ
イルス糖タンパク質により媒介される真核標的細胞の感染プロセスを阻害する役
割を担う。「異種の」という用語は、本来融合されておらず、またさもなくばウ
イルス糖タンパク質に結合されていない任意のポリペプチドを指すことを意図し
ている。
異種のポリペプチドは、標的細胞の表面成分に対し特異的な結合アフィニティ
を有してもよいしまた有さなくてもよい。一具体例において、異種のポリペプチ
ドはある細胞表面成分に対してアフィニティを有し、それへの結合がウイルスに
よる細胞の感染を誘導しないようなものである。この一般的な具体例において(
各々が異なった特性を有する)さまざまな異なった例が考えられる。一例におい
て、真核細胞は、ウイルス糖タンパク質に対する受容体(これに結合するとウイ
ルスは細胞に感染できる)および異種のポリペプチドに対する非許容性受容体を
発現し、ここで感染の阻害は、単に、標的細胞上のそれぞれの受容体に結合しよ
うとするウイルス糖タンパク質と異種のポリペプチドとの間での競合によっても
たらされる。異なる例において、それぞれの受容体およびそれらのリガンドの立
体配座は、異種のポリペプチドのその受容体への結合が立体障害を起こすような
ものであり、それにより、ウイルス糖タンパク質のその受容体への結合またはウ
イルスと細胞の融合が遮断される。
第2の具体例において、異種のポリペプチドは、標的細胞上の非許容性受容体
に結合しない一方、異種のポリペプチドの存在が、ウイルス糖タンパク質のその
受容体への結合を妨げるのに十分な立体障害を生み出す役割を果たすか、または
、結合を生じさせ得る一方で続いて起こるウイルス粒子の標的細胞との融合を阻
害
し、その結果、結合および/または融合段階においてウイルス粒子による細胞の
感染が阻害される。
特定の具体例において、異種のポリペプチドは、ウイルス粒子の表面に提示さ
れるとき、オリゴマーを形成できる。典型的には、オリゴマーは二量体であるか
またはより好ましくは三量体であろう。このようなオリゴマー化によって、実質
的に無傷のウイルス糖タンパク質とその受容体との間での相互作用の効率的な阻
害が可能になり得、この阻害は、オリゴマー化された異種のポリペプチドのウイ
ルス糖タンパク質からのタンパク質分解性開裂によって取除くことができる。介
在するリンカーもオリゴマー化を受けてもよい。
ウイルス糖タンパク質自体がオリゴマーを形成できる場合(たとえばレトロウ
イルスenvタンパク質の場合)には、ウイルス糖タンパク質の化学量論と同じ
化学量論で異種のポリペプチドがオリゴマー化することが好ましい。血管内皮増
殖因子(VEGF)および腫瘍壊死因子(TNF)は両者とも、オリゴマー化し
細胞表面リガンドに対し高いアフィニティを有することが知られているタンパク
質である。これらのタンパク質の有効(オリゴマー形成および好ましくはリガン
ド結合)部分は、この発明により異種のポリペプチドとして使用するのに特に適
しているであろう。
この発明において、異種のポリペプチドは、プロテアーゼ開裂部位においてリ
ンカー領域を開裂させるプロテアーゼ(すなわちペプチド結合を開裂させること
ができる分子)の選択的作用によりウイルス糖タンパク質から開裂させることが
できる。この開裂部位は、類似する部位が異種のポリペプチド中に存在してもよ
いが(異種のポリペプチドへのタンパク質分解性攻撃がその機能に悪影響を与え
るかもしれないので、これは通常避けることが好ましい)、ウイルス糖タンパク
質中に存在しないか、またはウイルス糖タンパク質において少なくともプロテア
ーゼに接近できない特有のペプチド配列に相当する。リンカー領域におけるプロ
テアーゼ開裂部位の大きさおよび数は有利に変更することができる。たとえば、
同一のまたはそれぞれのプロテアーゼにより認識される2つまたはそれ以上の開
裂部位が存在すると開裂が促進され得るが、一方、1つの長い開裂部位を使用す
ると開裂の特異性が増強される傾向になるだろう。
多数の具体的なプロテアーゼおよびそれらが認識する開裂部位が当業者には周
知である(たとえはVassalliおよびPepper,1994 Nature 370,14-15およびその
参照文献を参照)。プロテアーゼは、組織の再構築、創傷の治癒、炎症および腫
瘍の浸潤などの多くの生理的および/または病理学的過程に関係し、このような
プロテアーゼはこの発明において有用であろう。有用であろうプロテアーゼの具
体的な種類は、(プラスミノーゲン/プラスミン酵素などの)セリンプロテアー
ゼ、システインプロテアーゼおよび(ゼラチナーゼAおよび膜型MMP(または
MT−MMP)などの)さまざまなタイプのマトリックスメタロプロテアーゼ(
MMP)を含む。
ウイルス糖タンパク質から異種のポリペプチドを開裂させる役割を果たすプロ
テアーゼは、ウイルス粒子を標的とすることが所望される細胞によってまたは少
なくともその標的細胞が位置付けられている組織のみによって選択的に分泌され
ることが好ましい。プロテアーゼは、標的細胞型の細胞によって分泌されること
が好ましく、また、それよりも好ましくはないが、標的細胞を含む組織から離れ
た(標的細胞以外の)細胞にのみよって分泌されることが好ましい。これによっ
てさらに特異性の度合が高められるが、このことは標的化された遺伝子デリバリ
ーのために粒子が使用されるときに望ましい。したがって、この発明は2段階の
標的化を可能にし、そこにおいて、(標的細胞の表面上のリガンドに対し特異的
なアフィニティを有するものなどの)異種のポリペプチドにより第1レベルの特
異性を課すことができ、そして、標的細胞によって分泌されるかまたは標的細胞
と同じ組織において分泌されるプロテアーゼによる異種のポリペプチドの選択的
な開裂により、第2のレベルの特異性を課すことができる。代わりに、関連する
プロテアーゼを外来的に添加してもよく、たとえばもしウイルス粒子が患者での
標的化された遺伝子デリバリーのために使用されるならば、標的細胞が位置する
組織にプロテアーゼを(たとえば注射によって)投与することができる。
プロテアーゼ開裂部位の関連するプロテアーゼ(すなわち部位を認識し開裂す
るもの)に対する接近(アクセス)能力もさまざまであり得る。(たとえば5ア
ミノ酸残基の)短い介在リンカー領域を使用すると開裂部位の接近能力は制限さ
れる傾向にあり、(たとえば15から20残基の)より大きなリンカー領域を使
用すると開裂部位の接近能力は増加する傾向にあるということを本発明者は見出
した。この現象はおそらく、ウイルス糖タンパク質および/または異種のポリペ
プチドの近接による開裂部位の立体障害によるものである。したがって、異種の
ポリペプチドの大きさを変えることによって開裂部位の接近能力を望むように変
更することも可能なはずである。
ある具体例において、開裂部位は、ウイルス粒子が真核細胞に結合される前に
、関連するプロテアーゼに接近できる。一方、他の具体例において開裂部位は、
ウイルス粒子が真核細胞に結合するまで、プロテアーゼに接近できない。この後
者の具体例において、開裂部位は、異種のポリペプチドがそのコグネイト受容体
に結合する結果生じる立体配座の変化により、接近可能になることができる。代
わりに、ウイルス糖タンパク質がそのコグネイト受容体に結合することで開裂部
位を接近可能にすることもでき、そうすると、異種のポリペプチドの開裂により
ウイルス粒子の標的真核細胞への融合が可能になる。
上に示したように、他の局面において、この発明は、非標的細胞に混じって存
在する標的真核細胞へ核酸を選択的に配達する方法を提供する。この方法は、真
核細胞に感染可能な組換えウイルス粒子を標的細胞および非標的細胞に投与する
ことを含む。この粒子は、配達されるべき核酸と、介在するリンカー領域を介し
て粒子の表面に提示される異種のポリペプチドに融合される実質的に無傷のウイ
ルス糖タンパク質を含む融合タンパク質とを含み、この異種のポリペプチドは、
1つまたはそれ以上の真核細胞型に感染するこの粒子の能力を調節し、かつ、リ
ンカー領域に存在する特定のプロテアーゼ開裂部位に選択的に作用するプロテア
ーゼによって糖タンパク質から開裂可能であり、それにより、糖タンパク質から
の異種のポリペプチドの開裂は、標的細胞の近くでまたは標的細胞で優先的に起
こり、かつ、ウイルス糖タンパク質が標的細胞の表面においてそのコグネイト受
容体と正常に相互作用するのを可能にする。
この方法はたとえば、組織培養の線維芽細胞に致死核酸を配達することをイン
ピトロで行なうことができ、その細胞は、培養において増殖のより遅いより分化
した細胞型よりもしばしば早く増殖する。代わりに、この方法は、遺伝子治療の
方法として、インビボで、または後にヒトもしくは動物の対象に再導入される細
胞についてエクスビボで行なうことができる。ウイルス粒子が標的細胞に結合さ
れるときにのみ、またはウイルス粒子が標的細胞に隣接しかくして標的細胞によ
り分泌されるプロテアーゼにさらされるときにのみ、プロテアーゼ開裂部位の優
先的な開裂が起こり得る。プロテアーゼの十分な濃度を確保するため、かつ、(
プロテアーゼの局所的投与によって)配達の特異性をさらに補助するため、ウイ
ルス粒子の投与後に、関連するプロテアーゼを外因的に添加することがより好ま
しい。(心筋梗塞の患者に与えられる、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼおよ
びtPAなどの酵素などの)いくつかのプロテアーゼはインビボで安全に与え得
ることが既に知られている。
さらなる局面において、この発明は、プロテアーゼにより開裂できる、または
開裂できないアミノ酸配列をコードする核酸配列に関して核酸配列をスクリーニ
ングする方法も提供する。既に述べたように、多くのウイルスエンベロープ糖タ
ンパク質は、真核細胞において合成され、真核細胞の細胞輸出経路を通じて処理
され、通常開裂に至るが、この開裂は感染性ウイルス粒子の生産には必須である
。
したがってこの発明は、真核細胞の輸出経路に存在するプロテアーゼによって
開裂できるまたは開裂できないアミノ酸配列をコードする核酸配列について、核
酸配列をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、真核細胞において複
数の核酸配列を発現させることを含む。各配列は、ランダム化された介在するリ
ンカー領域を介して異種のポリペプチドに融合される実質的に無傷のウイルス糖
タンパク質をコードする。この異種のポリペプチドの存在は、ウイルス糖タンパ
ク質とそのコグネイト受容体との(結合または融合)相互作用を阻害する働きを
し、そこにおいて、各核酸配列はウイルス組込を可能にするパッケージングシグ
ナルをさらに含み、それにより、真核細胞の輸出経路に存在するプロテアーゼに
より認識されるこれらの介在するリンカーが、異種のポリペプチドのウイルス糖
タンパク質からの開裂を可能にし、結果として感染性ウイルス粒子の生産がもた
らされる。この方法はさらに、このような開裂可能なリンカー領域の発現を誘導
する核酸配列を、感染した細胞から回収することを含む。
輸出プロテアーゼにより認識されるこれらのアミノ酸配列をつきとめるため、
必要に応じて核酸配列決定を行なってもよい。
上述の方法の修正によって、真核細胞輸入経路に存在するプロテアーゼによっ
て開裂できるまたは開裂できないアミノ酸配列をコードする核酸配列について核
酸配列のスクリーニングが可能になるであろう。上に説明したように、いくつか
の具体例においては、異種のポリペプチドの存在下、ウイルス糖タンパク質のそ
のコグネイト受容体への結合がなお可能ではあるが、ウイルス粒子とそれが結合
する真核細胞との融合は妨げられるであろう。そして、細胞輸入経路中のプロテ
アーゼによる異種のポリペプチドの開裂により細胞の感染が可能になるであろう
。
かくして、さらなる局面において、この発明は、プロテアーゼによって開裂で
きるまたは開裂できないアミノ酸配列をコードする核酸配列について核酸配列を
スクリーニングする方法を提供する。この方法は、真核細胞において複数の核酸
配列を発現させることを含む。各配列は、ランダム化された介在するリンカー領
域を介して異種のポリペプチドに融合される実質的に無傷のウイルス糖タンパク
質をコードし、この異種のポリペプチドの存在は、ウイルス粒子が結合された真
核細胞とウイルス粒子との融合を阻害する働きをし、そこにおいて、各核酸配列
はウイルス組込を可能にするパッケージングシグナルをさらに含む。この方法は
また、異種のポリペプチドを保持する(したがって非感染性である)ように生産
されたウイルス粒子を濃縮することと、濃縮された粒子を、プロテアーゼを含む
感染可能な真核細胞と接触させるかまたは濃縮された粒子をプロテアーゼの存在
下で感染可能な真核細胞と接触させることとを含み、その結果、プロテアーゼに
より認識されるこれらの介在リンカーのためにウイルス糖タンパク質からの異種
のポリペプチドの開裂が可能となり、真核細胞の生産的感染が起こる。この方法
はさらに、このような開裂可能なリンカー領域の発現を誘導する核酸配列を、感
染した細胞から回収することを含む。上述のように、相当するアミノ酸配列をつ
きとめることを可能にするため、必要に応じて核酸配列決定を行なってもよい。
粒子の合成の間に、輸出経路のプロテアーゼによって異種のポリペプチドがウ
イルス糖タンパク質から開裂され得る可能性があるので、濃縮ステップが必要と
される。本開示をもって、多くの可能な濃縮技術が当業者には容易に明らかであ
ろう。たとえば、感染可能な細胞を感染させる前に、ウイルス粒子をアフィニテ
ィ濃縮技術に供することができ、抗体が異種のポリペプチドに対してアフィニテ
ィを有する抗体アフィニティカラムに該粒子を通すことができよう。異種のポリ
ペプチドを保持する粒子はカラムに結合する一方、プロデューサ細胞からの輸出
の間に異種のポリペプチドが開裂された粒子はカラムをそのまま通過するであろ
う。洗浄後、結合した粒子は(たとえば遊離の異種のポリペプチドまたは抗体に
より認識されるその一部との競合によって、またはpHもしくは他の要素の変化
によって)溶出させることができ、次いで感染可能な「指示」細胞に感染させる
ため使用することができる。
この発明は、例示の実施例により、および添付の図面を参照して以下にさらに
説明される。
図1は、キメラのエンベロープをコードするレトロウイルスベクター構造物の
模式図である。
図2および図3は、あるキメラポリペプチドのウイルス組込およびそれらのフ
ァクターXaプロテアーゼに対する感度を示すウエスタンブロットの写真である
。
図4は、X−gal含有プレートにおけるアッセイによって判定された、ファ
クターXa処理を施されたまたは施されていない標的細胞についてさまざまなβ
−ガラクトシダーゼ形質導入ウイルスの感染力を示す写真である。
図5は、この発明を用いて2段階の遺伝子配達標的化が達成され得る様子を示
す摸式図である。
図6Aは、あるキメラポリペプチドのウイルス組込およびそれらのファクター
Xaプロテアーゼに対する感度を示すウエスタンブロットの写真である。
図6Bは、ファクターXa存在下でのまたは不在下でのある組換えウイルスの
感染力を示す捧グラフである。
図7は、キメラのエンベロープをコードするレトロウイルスベクター構造物の
模式図である。
図8Aは、2つのウエスタンブロットの写真であり、上部はさまざまなキメラ
ポリペプチドの電気泳動移動度を比較し、下部は存在するタンパク質の量を比較
する。
図8Bは、さまざまなキメラポリペプチドの、ファクターXaプロテアーゼに
対する感度を比較するウエスタンブロットの写真である。
図8Cは、あるキメラポリペプチドのプロセシングを比較するウエスタンブロ
ットの写真である。
図9は、ファクターXa処理が施されたまたは施されていない、NIH 3T
3細胞およびA431細胞についての組換えウイルスの増殖を比較する一連の写
真である。
図10は、キメラのエンベロープをコードするレトロウイルスベクター構造物
の模式図である。
図11は、ファクターXaプロテアーゼの不在(−)下でのまたは存在(+)
下での、NIH 3T3細胞またはA431細胞におけるさまざまな組換えウイ
ルスの(酵素形成単位「e.f.u.」での)力価を示す3つの表A、Bおよび
Cを示す。
図12は、キメラのエンベロープをコードするレトロウイルスベクター構造物
の模式図である。
図13Aは、さまざまなキメラポリペプチドのウイルス組込を示すウエスタン
ブロットの写真である。
図13Bは、p−アミノフェニル水銀(II)アセテート(APMA)により
プロテアーゼが予備−活性化されている(+)またはされていない(−)、プロ
−ゼラチナーゼAの存在(+)下または不在(−)下での、さまざまなキメラポ
リペプチドの感度を比較するウエスタンブロットの写真である。
図14は、プロ−ゼラチナーゼAの濃度に対してどのように組換えウイルスの
感染力が依存するかを示す棒グラフである。
図15は、HT 1080細胞またはA431細胞について3つの異なった組
換えウイルスの感染力を比較する棒グラフである。
図15Aは、HT 1080細胞またはA431細胞上の組換えウイルスの増
殖を比較する写真である。
図16は、HT 1080(H)細胞またはA431(A)細胞についてさま
ざまなウイルスの感染力を比較する4つの写真(I、II、IIIおよびIV)である
。
図17は、ゼラチン分解活性の検出のためのゲルの写真である。
図18および図19は、キメラのエンベロープをコードするレトロウイルスベ
クター構造物の模式図である。実施例 実施例1 概要
親和性(向性)変更結合ドメインを、ファクターXa開裂性リンカーを介して
ネズミ白血病ウイルス(MLV)エンベロープに固定し、その親和性(向性)を
ファクターXaプロテアーゼにより調節できるレトロウイルスベクターを生成さ
せた。リンカーがモロニーMLV SUのアミノ酸+7と融合されたときには、
結合ドメインはファクターXaによってベクター粒子から開裂させることができ
なかったが、モロニーまたは4070A MLV SU糖タンパク質のアミノ酸
+1と融合されたときには、効率的に開裂させることができた。開裂可能なEG
Fドメインを提示するベクターはEGF受容体発現細胞において選択的に隔離さ
れたが、EGFドメインがファクターXaによってベクター粒子から開裂された
ときには、それらの感染力は十分に回復した。エンベロープタンパク質のフラク
ションのみが開裂されたときには、感染力の部分的回復が観察された。一方、モ
ロニーMLV SUに融合される開裂可能なRAM−1結合ドメインを提示する
ベクターは宿主域が拡大され、その宿主域はファクターXaでの処理により戻る
ことが可能であった。特定のプロテアーゼへの暴露により親和性(向性)が調節
される、設計された結合特性を有するレトロウイルスベクターによって、レトロ
ウイルス遺伝子配達を目標にする上で新規な戦略が容易になり得ることが示唆さ
れる。序説、結果および考察
MLVから誘導されるレトロウイルスベクターは用途の広い遺伝子配達媒体で
あって、その宿主域は異なったエンベロープスパイク糖タンパク質の組込みによ
って変化させることができる(Miller,1992 Curr.Top.Microbiol.Immunol.
158,1;VileおよびRussell 、1995 British Medical Bulletin.51,12 ;Weis
s,in Retroviridae,J.Levy,Ed.(Plenum Press,1993),pp.1-108)。レト
ロウイルスエンベロープスパイク糖タンパク質は、標的細胞表面上の特定の受容
体へのウイルスの付着を媒介し、続いてウイルスの脂質膜と宿主細胞との間の融
合を引起こす。ネズミ白血病ウイルス(MLV)のエンベロープスパイク糖タン
パク質はホモ三量体であって、その中の3つのヘテロダイマーサブユニットは各
々、そのC末端でより小さい膜貫通ポリペプチド(TM)に付着する大きなウイ
ルス外糖タンパク質成分(SU)を含み、TMはこの複合体をウイルス膜に固定
させる(Augustら、1974 Virology 60,595 ;Ikeda ら、1975 J.Virol.16,53
;Kamps ら、1991 Virology 184,687)。SUはプロリンの豊富なヒンジによ
って接続される2つのドメインからなり、N末端ドメインは、受容体特異性を付
与し、宿主域の異なるMLV間で高い保存度を示す(Battini ら、1992 J.Viro
l.66,1468 ;Morganら、1993 J.Virol.67,4712 ;Battini ら、1995 J.Vi
rol.69,713)。モロニーMLVエンベロープは、マウスおよびラット起源の細
胞にのみ見られるネズミカチオン性アミノ酸輸送体(CAT−1)中のペプチド
ループに選択的に付着するので、同種指向性宿主域を付与する(Albritton ら、
1989 Cell 57,659 ;Albritton ら、1993 J.Virol.67,2091)。4070A
MLVエンベロープは、多くの哺乳動物種を通じて保存される遍在性のRAM
−1ホスフェート共輸送体上のエピトープに付着し、両種指向性宿主域を付与す
る(Millerら、1994 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,78 ;VanZeijlら、19
94 Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,1168 ;Kavanaugh ら、1994 Proc.Nat
l.Acad.Sci.U.S.A.91,7071)。したがって、4070Aエンベロープを有
するレトロウイルスベクターは無差別にヒト細胞に感染する一方、モロニーエン
ベロープを有するベクターは全くヒト細胞に感染しない。
レトロウイルスベクターのエンベロープ糖タンパク質中に新たな結合ドメイン
を作ることにより、細胞選択性レトロウイルス遺伝子配達が最近達成された(Va
lsesia-Wittmann ら、1994 J.Virol.68,4609 ;Kasaharaら、1994 Science 2
66,1373;Chu およびDornburg、1995 J.Virol.69,2659 ;Nikunjら、1995 P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 92,7570;Cossetら、1995 J.Virol.69,6314)
。異なった受容体結合ドメインが、MLVレトロウイルスベクター上でそれらの
無傷のSU糖タンパク質のN末端伸長物として提示されたとき(Russell ら、19
93 Nucl.Aclds.Res.21,1081)、提示されるリガンドによって宿主域が拡大
ま
たは制限され得ることが見出された(Cossetら、1995 J.Virol.69,6314)。
したがって、4070A SUからのRAM−1受容体結合ドメインを提示する
同種指向性ベクターはRAM−1−陽性ヒト細胞に感染できたが、一方、上皮増
殖因子(EGF)を提示する両種指向性ベクターはEGF受容体に結合できたも
ののその後非感染性の侵入経路に隔離され、EGF受容体陽性細胞での力価は大
幅に減じられたが、EGF受容体陰性細胞上では正常な力価がもたらされた。現
在の研究において、我々は、その設計された親和性(向性)を特定のプロテアー
ゼによって調節できるレトロウイルスベクターの生成の可能性を探った。
最初に、我々は、3つのアラニンを含有する短いリンカーによってEGFドメ
インがモロニーMLV SUのアミノ酸+7に融合された、上述のEGF−ML
Vエンベロープキメラ(EMo7)に、短いファクターXaプロテアーゼに敏感
なリンカー(アミノ酸配列IEGR)(Lottenbergら、1981 Methods Enzymol.
80,341)を挿入した。アラニンリンカーとモロニーSUのアミノ酸+7との間
にXa開裂シグナルが挿入され、以下に説明し図1に示す構造物EXMo7が得
られた。図1には、すべての構造物の一般的フォーマットが模式的に示されてお
り、提示されるリガンド(EGFまたは4070A−MLVのN末端結合ドメイ
ン)とMLVエンベロープタンパク質(モロニーまたは4070A)との間の融
合の部位を囲む配列が、各構造物に関して詳細に示される。各構造物の横には、
発現されるエンベロープ糖タンパク質単量体のN末端領域の模式図が示され、白
抜きの円は(同種指向性)モロニーMLV SU糖タンパク質のN末端受容体結
合ドメインを示し、黒い四角は(両種指向性)4070A MLV SU糖タン
パク質のN末端受容体結合ドメインを示し、クルーの三角はEGFを表わし、フ
ァクターXa開裂部位は矢印で示される。LTRは、長い末端反復配列(ロング
・ターミナル・リピート)、Lはエンベロープシグナルペプチド、pはポリアデ
ニル化配列である。NotIクローン化部位も図示される。
MLV gag−polコア粒子およびn1sLacZレトロウイルスベクタ
ーを発現するTELCeB6細胞(Cossetら、1995 J.Virol.69,7430-7436)
において、キメラのエンベロープおよび対照である同種指向性(モロニー)エン
ベロープが発現された。トランスフェクションされたTELCeB6細胞からウ
イルスを含有する上清を採収し、ろ過し(0.45μm)、90分間0μg/m
lまたは4μg/mlのファクターXaプロテアーゼで消化し、超遠心分離にか
けてウイルス粒子をペレット化した。ファクターXaプロテアーゼでの処理の前
(−)または処理の後(+)に、キメラのエンベロープを組込んだレトロウイル
ス粒子をウエスタン免疫ブロット法(図2)により分析した。レーンA、Bおよ
びCは、それぞれ、Mo、EXMo1およびEXMo7エンベロープを組込んだ
、ペレット化されたレトロウイルスベクターを装填したものである。(Sambrook
ら、Molecular cloning,A laboratory manual,(Cold Spring Habour,N.Y.
,1989)pp.16.33-16.36に説明されているように)異なったエンベロープ発現構
造物をTELCeB6パッケージング細胞にトランスフェクションし、安定なフ
レオマイシン(50μg/ml)耐性コロニーを広げプールした。細胞を、10
%の胎仔ウシ血清で補足されたDMEMにおいて増殖させ、集密状態になったと
き37℃から32℃に移して72時間インキュベートした。レトロウイルス粒子
を含有する上清を、32℃での10mlの血清を含まないDMEMにおける一晩
(16時間)のインキュベーションの後採収し、ろ過して(0.45μm)、そ
の後2.5mMのCaCl2の存在下で37℃において90分間0μg/mlま
たは4μg/mlのファクターXa(Promega)とともにインキュベートした。
上清を、4℃で1時間SW40ロータ(Beckman)において30000rpmで
遠心分離し、ペレット化されたウイルス粒子を100μlのリン酸塩緩衝生理食
塩水中に再懸濁した。各サンプル20μlを還元条件下で10%のポリアクリル
アミドゲル上で分離し(Laemmli,Nature(London,277,680(1970))、その後
タンパク質をニトロセルロースペーパーに移した。SUタンパク質を、ラウシャ
ーネズミ白血病ウイルスエンベロープ糖タンパク質に対する特定のヤギ抗体(Qu
ality Biotech Inc,USA)、次に西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ウサギ抗ヤギ
抗体(DAKO Denmark)を使用して、既に説明されたように(Cossetら、1995 J.
Virol.69,6314)検出し、増強された化学発光キット(Amersham Life Science
)を用いて展開した。
ファクターXaによってEGFはEXMo7エンベロープから開裂されず(図
2、レーンC)、開裂部位がこの位置に挿入されたときにはプロテアーゼに対し
て接近不可能になることを示唆した。
そこで我々は、3つのアラニンからリンカーなるまたは3つのアラニンとIE
GRファクターXa開裂部位とからなるリンカーによって、EGFがモロニーS
Uのアミノ酸(+7ではなく)+1に融合される、キメラのエンベロープをコー
ドする(以下に説明する)新しい構造物EMo1およびEXMo1を作った(図
1を参照)。EMo1およびEXMolのキメラエンベロープをビリオンに組込
み、90分間0μg/mlまたは4μg/mlのファクターXaプロテアーゼで
処理した後免疫ブロットで分析した。図2は、EXMo1エンベロープがファク
ターXaによって開裂され、変更されていないモロニーSUと区別がつかない移
動度を有するSU開裂産物が得られたことを示す。ファクターXa開裂部位が欠
損している対照EMo1エンベロープは開裂されなかった。これらの結果は、I
EGRペプチドの認識を最適化しファクターXaによって開裂するためには、キ
メラエンベロープにおけるIEGRペプチドの正確な位置付けが重要であること
を示す。
我々は既に、短い(AAA)リンカーによりEGFが4070A SUのアミ
ノ酸+5に融合されたキメラのエンベロープを提示するレトロウイルスベクター
の宿主域が、EGF受容体により媒介され制限されることを明らかにした(Coss
etら、J.Virol.69,1995前掲書)。これらのキメラエンベロープを提示するレ
トロウイルスはEGF受容体に結合できたが、その後非感染性の侵入経路に隔離
され、EGF受容体陽性細胞における力価は大幅に減じられたが、EGF受容体
陰性細胞における力価はほぼ正常であった。
そこで我々は、それぞれAAAリンカーまたはAAAIEGRリンカーによっ
てEGFが4070A SUのアミノ酸+1に融合されたキメラのエンベロープ
をコードする(以下に説明する)プラスミドEA1およびEXA1を構築した(
図1を参照)。DNA構造物
本明細書では、変更されていないモロニーおよび4070A MLVエンベロ
ープをコードする(Cossetら、1995 J.Virol.69,前掲に記載の)発現プラスミ
ドFBMoSALFおよびFB4070ASALFをそれぞれ、MoおよびAと
呼ぶ。EA、(以前はEMOと呼んだ)EMo7およびAMO発現プラスミドの
構造もCossetら、(前掲)に記載される。
EXo7、EMo1およびEXMo1を生成させるため、PCRプライマーN
otXMo7Back、NotMo1BackおよびNotXMo1Backを
(それぞれ)プライマーenvseq7とともに使用し、NotIおよびBamHIで
消化され、EMo7のNotI/BamHI消化バックボーンにクローニングされた、
Mo(FBMoSALF)からの変更されたエンベロープフラグメントを増幅さ
せた。
EA1およびEXA1を生成するため、PCRプライマーNotA1Back
およびNotXA1Backを(それぞれ)プライマー4070Aforととも
に使用し、NotIおよびBamHIで消化され、EAのNotI/BamHI消化バックボ
ーンにクローニングされたA(FB4070ASALF)からの変更されたエン
ベロープフラグメントを増幅させた。
最後に、AMOからのNdeI−NotIフラグメントをそれぞれEMo1およびE
XMo1のNdeI/NotI消化バックボーンにクローニングすることによって、(
以下に示す)AMo1およびAXMo1構造物を生成させた。すべての構造物の
正確性はDNA配列決定により確認した。
使用したオリゴヌクレオチドは以下のとおりであった(制限部位に下線を付す
)。
NotXMo7Back,5’−GCA AAT CTG CGG CCG C AA TCG AGG GAA GG
C CTC ATC AAG TCT A
TA ATA TCA CC(Seq ID No.1);
NotMo1Back,5’−GCA AAT CTG CGG CCG CA
G CTT CGC CCG GCT CCA GTC C(Seq ID N
o.2);
NotXMo1Back,5’−GCA AAT CTG CGG CCG C AA TCG AGG GAA GG
G CTT CGC CCG GCT C
CA GTC C−3’(Seq ID No.3);
NotA1Back5’−GCA AAT CTG CGG CCG CAAT
GG CAG AGA GCC CCC ATC−3’(Seq ID No.
4);
NotXA1Back5’−GCA AAT CTG CGG CCG CAA TCG AGG GAA GG
A TGG CAG AGA GCC CCC
ATC−3’(Seq ID No.5);
envseq7,5’−GCC AGA ACG GGG TTT GGC C
−3’(Seq ID No.6);
4070Afor,5’−CTG CAA GCC CAC ATT GTTC
C−3’(Seq ID No.7)
図3は、発現されたEXAIエンベロープのドメイン間リンカー中のIEGR
配列がファクターXaにより正しく認識され開裂された一方、対照EAIエンベ
ロープの開裂はなかったことを示している。(ファクターXaプロテアーゼでの
処理の前(−)または処理の後(+)の組換え両種指向性レトロウイルス粒子の
免疫ブロットである)図3を参照し、レーンA、BおよびCは、それぞれ、A、
EAIおよびEXAIエンベロープを組込んだペレット化されたレトロウイルス
ベクターを装填したものである。図2に関して上述したように分析が実行された
。
次に我々は以下のように、EGF受容体陰性ヒト細胞系およびEGF受容体陽
性ヒト細胞系におけるEA1およびEXA1キメラエンベロープを組込んだベク
ターの力価を検定した。EGF受容体発現細胞系、A431(ATCC CRL
1555)、HT1080(ATCC CCL121)およびEJ(Bubenik ら
、1973 Int.J.Cancer 11,765)を、5%のCO2雰囲気において37℃で、1
0%の胎仔ウシ血清(Gibco-BRL)で補足されたDMEMにおいて増殖させた。
ジャーカットT細胞(ATCC CRL8805)は、5%のCO2雰囲気にお
いて37℃で10%の胎仔ウシ血清で補足されたRPMIにおいて増殖させた。
感染のため、標的細胞を6ウェルのプレートに2×105細胞/ウェルで接種し
、37℃で一晩インキュベートした。β−ガラクトシダーゼ−形質導入レトロウ
イルスを含むプロデューサー細胞上清を、血清を含まない培地における32℃で
の一晩のインキュベーションの後にろ過した(0.45μm)。2.5mlの血
清を含まない培地中の上清希釈物を、8μg/mlのポリブレンの存在下で2時
間、標的細胞とともにインキュベートした。次にレトロウイルス上清を取除き、
48から72時間細胞をレギュラー培地でインキュベートした。β−ガラクトシ
ダーゼ活性の検出のため、既に説明されている(Takeuchiら、1994 J.Virol.6
8,8001)ようにX−Ga1染色を行なった。6ウェルのプレートの下に置かれ
た格子を使用して、顕微鏡で青く染色されたコロニーを数えることにより、ウイ
ルスの力価(酵素形成単位/ml)を計算した。
EA1またはEXA1エンベロープを組込んだ両ベクターともEGF受容体陰
性ジャーカット細胞に感染できたが、EGF受容体発現ヒト細胞において選択的
に隔離された。ただし、EXA1の隔離はEA1の隔離よりも不完全であった(
表1)。EGF受容体へのベクターの結合を防ぐため、可溶性EGFが競合体と
して添加されたとき、EGF受容体陽性細胞におけるこれらの感染力は十分に回
復でき(表1)、設計されたエンベロープのEGF受容体への結合によって隔離
が特異的に媒介されることが確認された。
我々は次に、EXA1エンベロープにより付与された制限された宿主域を、提
示されるEGFドメインの開裂によって拡大する(すなわち両種指向性に戻す)
ことができるかどうかをテストした。EA1またはEXA1エンベロープを組込
んだベクターを、ファクターXaの投与量を増やしながらファクターXaで処理
し、EGF受容体発現A431細胞において力価検定した(表2)。融合された
EGFドメインを90分間にわたって4μg/mlファクターXaで完全に開裂
させる(図3)ことによって、EXA1エンベロープを有するベクターの感染力
は完全に回復したが、EA1エンベロープを保有するベクターの感染力には全く
影響がなかった。ファクターXaの濃度がより低いときにはベクター力価の部分
的な回復が観察され、ベクター粒子のエンベロープタンパク質のフラクションの
みが開裂されたときには、ベクター粒子が低レベルの感染力を回復させ得ること
を示した。これらのデータは、EGFを提示するレトロウイルスベクターがEG
F受容体によって競合的に隔離されることのさらなる証拠を提供するものであり
、それらの親和性(向性)が、EGFドメインをウイルス表面から開裂させる特
定のプロテアーゼによって調節できることを示している。
ファクターXaプロテアーゼは、エンベロープで包まれたウイルスの表面のプ
ロ凝固剤リン脂質に直接結合することができ(PryzdialおよびWright,1994 Blo
od 84,3749-3757)、したがって、設計されたベクター粒子のEXA1エンベロ
ープが開裂された後に設計されたベクター粒子のリン脂質と安定して結びつくよ
うになるかもしれない。そこで、A431細胞におけるEXA1エンベロープを
組込んだベクターの感染力の回復が、EGFの開裂によるものであり、粒子結合
ファクターXaプロテアーゼにより媒介されるのではないことを確認するため、
対照実験を行なった。そこで我々は、ファクターXaプロテアーゼにより開裂可
能な(AAAIEGR)または開裂不可能な(AAA)リンカーによってモロニ
ーSUのアミノ酸+1にRAM−1受容体結合ドメインが融合されたキメラエン
ベロープをコードする、(上述の)プラスミドAXMo1および対照プラスミド
AMo1を構築した(図1)。予想したように、AMo1およびAXMo1キメ
ラエンベロープを組込んだベクターはRAM−1に結合でき、さまざまなヒト細
胞系について目標とする感染を可能にし、AXMo1エンベロープのドメイン間
リンカー中のIEGR配列は、ファクターXaにより正確に認識され、開裂され
た(データは示さず)。そこで我々は、AXMo1エンベロープにより付与され
た拡大された宿主域を、提示される4070Aドメインの開裂によって制限(す
なわち同種指向性に戻す)できるかどうかを試験した。4μg/mlのファクタ
ーXaで90分間処理することにより、AXMo1エンベロープを有するベクタ
ーのヒト細胞に対する感染力は選択的に破壊されたが、マウス細胞に対する感染
力は減じられなかった(表2)。AMo1エンベロープを保有するベクターはプ
ロテアーゼでの処理には影響されなかった。これらのデータは、AMoエンベロ
ープを提示するレトロウイルスベクターの拡大された親和性(向性)が提示され
る4070Aドメインによるものであるということを確認するものであり、A4
31細胞におけるEXA1エンベロープを組み込んだベクターの感染力の回復は
、EGFの開裂によるものであり、粒子結合ファクターXaプロテアーゼにより
媒介されるものではなかったことを示す。
要約すると、我々は、ファクターXaプロテアーゼに対する基質として作用す
るリンカーにより、ウイルスエンベロープ糖タンパク質に固定される開裂可能な
結合ドメインを提示するレトロウイルスベクターを生成させた。この提示される
結合ドメインはベクターに対し新規な宿主域特性を付与し、これらの宿主域の変
化はベクターをファクターXaで処理することによりもとに戻すことができる。
原則的には、上記のもの以外の細胞表面受容体を認識する結合ドメインとともに
、ファクターXa以外のプロテアーゼに対する基質であるリンカーを使用するこ
とが可能なはずである。特定のプロテアーゼへの暴露によって親和性(向性)が
調節される、設計された結合特異性を有するレトロウイルスベクターにより、レ
トロウイルス遺伝子配達を目標とするための新規な戦略が容易になるであろう。
* FACS分析により測定されたEGFの受容体の状態
†+ 1μMのヒトEGF(R&D systems,英国)の存在下でのレトロウイルス
ベクターを用いた細胞のインキュベーションを示す。
* βガラクトシダーゼ形質導入レトロウイルスを含むろ過された上清を、2
.5mMのCaCl2を添加して、37℃で90分間さまざまな濃度(0.00
156、0.25および4μg/ml)のファクターXa(Promega)とともに
プレインキュベートした。処理された上清を、次に、標的細胞に加え、(12)
に説明するようにウイルスの力価を測定した。
実施例2
本発明者らは、EXA1エンベロープを組込んだベクターが、それらの提示さ
れるEGFドメインの開裂に際して、EGF受容体陽性細胞におけるその感染力
を回復するかどうかを立証する道をさがした。そこで、EA1またはEXA1エ
ンベロープを組込んだベクターをファクターXaで処理し、EGF受容体発現A
431細胞において力価を検定した。90分間にわたって4μg/mlのファク
ターXaで、融合したEGFドメインを完全に開裂させると、EXA1エンベロ
ープを有するベクターの感染力が完全に回復されたが、EA1エンベロープを保
有するベクターの感染力には全く影響がなかった(図4)。図4は、キメラEG
F−4070A MLVベクター粒子を用いたA431細胞の、ファクターXa
により媒介される感染を示す。β−ガラクトシダーゼ形質導入レトロウイルス(
A、EA1またはEXA1)を含むろ過された上清を、2.5mMのCaCl2
を添加して、37℃で90分間、0(−)μg/mlまたは4(+)μg/ml
の濃度のファクターXa(Promega)でプレインキュベートした。そして上述の
ように、処理された上清を標的細胞の形質導入のために使用した。X−galで
染色されたプレートを拡大せずに写真に撮った。
ファクターXaの濃度がより低いときにベクター力価の部分的な回復が見られ
(表2)、ベクター粒子のエンベロープタンパク質のフラクションのみが開裂さ
れたとき、ベクター粒子は低レベルの感染力を回復できることを示した。これら
のデータは、EGFを提示するレトロウイルスベクターがEGF受容体によって
競合的に隔離されるというさらなる証拠を提供し、かつ、EGFドメインをウイ
ルス表面から開裂させる特定のプロテアーゼによりそれらの親和性(向性)を調
節できることを示す。
上に概説した2段階のターゲッティング戦略においては、設計された結合ドメ
インを介してのキメラエンベロープの標的細胞への付着が、キメラエンベロープ
の開裂に先立って行なわれる。そこで、細胞表面で開裂されたEGF受容体結合
ベクター粒子がそれらの標的細胞の感染に至り得るかどうかを判定するため、我
々はこのベクターをEGF受容体陽性A431細胞およびEJ細胞に付与し、細
胞を洗浄し、ファクターXaプロテアーゼでそれらを処理した。EGF受容体上
に隔離され次にファクターXaプロテアーゼにより開裂されたとき、EXA1エ
ンベロープを組込んだベクターはそれらの標的細胞の感染に進んだが、EA1エ
ンベロープを組込んだベクターは感染に至らなかったことを、表3が示す。
目標を定めることができ注入可能なベクターが利用できると、選択された標的
組織へのインビボでの直接的な遺伝子配達を必要とする遺伝子治療法の開発は非
常に容易になるはずである。この報告において我々は新規な2段階ターゲッティ
ング戦略の実行可能性を立証したが、これは、特定の受容体/プロテアーゼの組
合せを発現する細胞に感染するよう設計されたレトロウイルスベクターの生成を
可能にするであろう。腫瘍の浸潤の間に協働して細胞外マトリックスを分解する
プロテアーゼ(Poustis-Delpont ら、1992 Cancer Research 52,3622-3628;Va
ssalliおよびPepper、1994 Nature 370、14-15;Satoら、1994 Nature 370,61-
65;およびChenら、1995 Breast Cancer Res.Treat.31,217-226)、やはり膜
プロテアーゼである造血分化抗原(Shipp およびLook、1993 Blood 82,1058-10
70)またはHIVの侵入経路に関係している膜プロテアーゼ(MuraKamiら、1991
Biochim.Biophys.Acta 1079,79-284)など、この点で、有用となり得る多く
の膜結合プロテアーゼがある。
既知のプロテアーゼに対する最適の基質を同定するため、最近、開裂可能な結
合ドメインを提示する繊維状「基質ファージ」のライブラリが使用された(Matt
hewsおよびWells、1993 Science 260,1113-1117 ;Matthewsら、1994 Protein
Science 3,1197-1205 ;およびSmith ら、1995 J.Biol.Chem.270,6440-644
9)。原則的には、ランダム化されたリンカー配列を備える、N末端で伸長され
たエンベロープを発現する同様のレトロウイルスディスプレイライブラリを生成
できるはずである。このようなライブラリは、新規の細胞内プロテアーゼもしく
は膜結合プロテアーゼを同定するために設計されるか、または新規の細胞特異的
受容体−プロテアーゼの組合せを目標とするキメラエンベロープを分離するため
に設計される、選択戦略の基礎を提供するであろう。
* βガラクトシダーゼ形質導入レトロウイルスを含む2mlのろ過された上
清とともに、4℃で1時間、A431細胞およびEJ細胞をインキュベートした
。そして、冷たい、血清を含まない培地で、細胞を二度洗浄し、血清を含まない
培地において37℃で2時間、0μg/mlまたは4μg/mlのファクターX
a(Promega)とともに細胞をインキュベートした。10%の胎仔ウシ血清で補
足された培地を用いた48時間のインキュベーションの後、表1に記載するよう
に、ウイルスの力価を測定した。実施例3 概要
上述のように、レトロウイルスベクター粒子上にそのエンベロープスパイク糖
タンパク質のN末端伸長物として、いくつかのポリペプチドが提示された。キメ
ラエンベロープのフォールディング、組立、輸送、ウイルス組込み、受容体の付
着および融合の誘発は、N末端ポリペプチドの独特な構造的および機能的特性に
依存して、N末端ポリペプチドによりさまざまに影響され得る。この実施例にお
いて、ホモ三量体4070A SU糖タンパク質からのRAM−1結合ドメイン
は、ホモ三量体モロニーSU糖タンパク質のN末端に移植されたとき、ホモ三量
体モロニーSU糖タンパク質によるRec−1に媒介される感染を強力に阻害し
得ることを、本発明者らは立証する。また、4070AエンベロープのN末端に
融合されるとき、短い三量体ロイシンジッパーペプチドは、4070Aエンベロ
ープによるRAM−1に媒介される感染を阻害できるが、単量体螺旋状ペプチド
はこれを阻害できないことも示す。開裂シグナルをキメラエンベロープに作りこ
み、ファクターXaプロテアーゼを添加することによって、提示されるポリペプ
チドをベクター粒子から開裂できるようにした。三量体ポリペプチドを提示する
すべてのエンベロープにおいて、ウイルス上に組込まれたエンベロープから三量
体N末端伸長物が開裂されたとき、Rec−1またはRam−1により媒介され
る感染に対する立体化学的遮断が逆転した(取り消された)。これらのデータは
、阻害N末端伸長物によりエンベロープの機能が隠されてしまうのは、これらが
移植されたSU糖タンパク質三量体の先端で、その三量体複合体に組立てられる
結果であることを示唆している。レトロウイルスベクター標的化についてのこの
意味を考察する。
MLVから誘導されるレトロウイルスベクターは、用途の広い遺伝子配達媒体
であって、その宿主域特性は、特定の受容体に対するその付着を媒介し続いて融
合を引起こす膜糖タンパク質により決定される。ネミズ白血病ウイルス(MLV
)のエンベロープ糖タンパク質は、ウイルスの表面にホモ三量体複合体として提
示される(Fassら、Nature Structural Biology 3 :465-469 ;Kamps ら、Viro
logy 184:687-694)。三量体の各サブユニットは2つの部分、SUとTMとか
らなる。SU(表面)成分は、全くウイルス外にあり、より小さなTM成分を介
してレトロウイルスに付着し、TM成分はこの複合体をウイルス膜に固定させる
(Pinterら、Virology 91 :345-351)。SU糖タンパク質のN末端ドメインは
、受容体特異性を付与し、宿主域の異なる複数のMLVの間で高い保存度を示す
(Battiniら、J.Virol.69:713-719)。モロニーMLVエンベロープは、ネズ
ミカチオン性アミノ酸輸送体に結合するので、同種指向性の宿主域を付与する(
Albritton ら、J.Virol.67 :2091-2096 ;Albritton ら、Cell 57 :659-666
)。4070A MLVエンベロープは、多数の哺乳動物種を通じて保存される
RAM−1ホスフェート輸送体に付着し、両種指向性の宿主域を付与する
(Kavanaugh ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91 :7071-7075)。標的細胞受
容体との結合が生じた後、三量体SU−TM複合体は大規模な立体配座の再配置
を被るものと考えられ、これがウイルス膜と標的細胞膜との間での融合プロセス
を引起こす。
本発明者らおよびその同僚らは、そのSU糖タンパク質に新たな決定因子を作
りこむことによって、選択された標的細胞へのレトロウイルスベクターの侵入を
目標とするための異なった戦略を探究してきた(Cossetら、J.Virol.69:6314-6
322 :Nilsonら、Gene Ther.3:280-286 ;Russell ら、Cold Spring Harbour
Laboratory,Cold Spring Harbour,N.Y.;Valsesia-Wittmann ら、J.Virol.
68:4609-4619 ;Valsesia-Wittmann ら、J.Virol.70:2059-2064)。前掲実
施例においては、プロテアーゼ−基質の相互作用を通じてレトロウイルスベクタ
ーのターゲッティングを可能にする新規な2段階戦略が説明され、ここでは、レ
トロウイルスベクターが、設計された結合ドメインを介して標的細胞に付着し(
第1段階)、その後ウイルスを結合ドメインに繋ぐ設計されたリンカーが特定の
プロテアーゼにより開裂され(第2段階)、ウイルスは標的細胞の感染に進むこ
とができる。この2段階ターゲッティング戦略の欠点は上述のように、ベクター
付着の特異性を支配している一方で、開裂可能な結合ドメインは、非標的細胞上
のその本来の受容体にSU三量体が付着する能力を完全には遮断しないというこ
とである。したがって、開裂されなかったベクターは、Ram−1受容体を通じ
て非標的細胞に感染する能力を保持する。この欠点を克服するため、開裂されて
いないベクターの感染力を完全に阻害する一方、選択されたプロテアーゼへの暴
露によって感染力を十分に回復できるようなエンベロープ変更物の開発に、我々
は関心を寄せてきた。
モロニーMLVエンベロープキメラの同種指向性感染力の特徴を調べるための
(本明細書に記載する)実験の過程で、Ram−1標的化AXMo1エンベロー
プを提示するベクター(Nilsonら、Gene Ther.3:280-286)は、それがまずフ
ァクターXaプロテアーゼにより開裂されないと、同種指向性受容体(Rec−
1)を通じて効率的に細胞に感染できないことが見出された。AXMo1エンベ
ロープのこの特性を説明するため、我々は、提示されるRAM−1結合ドメイン
はそれが移植されたモロニーSU糖タンパク質三量体の先端で三量体複合体を形
成し、そのためにそのRec−1結合部位が遮断されるのではないか、という仮
説を立てた。さらにこの仮説をテストするため、我々は、4070A SU糖タ
ンパク質上にオリゴマー化するロイシンジッパーペプチド(Harbury ら、Scienc
e 262 :1401-1407)を移植し、このキメラエンベロープを組込んだレトロウイ
ルスベクターの特徴を調べた。材料および方法 プラスミド構造物
4070A MLVおよびモロニーMLVの変更されていないエンベロープは
、それぞれ、発現プラスミドFB4070ASALF(A)およびFBMoSA
LF(Mo)でコードされた(Cossetら、1995 J.Virol.69,7430-7436)。フ
ァクターXaプロテアーゼにより開裂可能な(AAAIEGR)または開裂不可
能な(AAA)リンカーによって、モロニーSUのアミノ酸+1に、4070A
SUからのRAM−1受容体結合ドメインが融合されているキメラエンベロープ
をコードする、構造物AMo1およびAXMo1については既に説明されている
(Nilsonら、Gene Ther.3:280-286)。3つのアラニンからなるリンカーまた
は3つのアラニンとIEGRファクターXa開裂部位とからなるリンカーにより
EGFが4070A SUのアミノ酸+1に融合されているキメラエンベロープ
をコードする、構造物EA1およびEXA1も説明されている(Nilsonら、Gene
Ther.3:280-286)。
螺旋状ペプチドを提示するベクターを構築するため、4070A MLVエン
ベロープと提示されるEGFドメインとの間に、12のアミノ酸(AAAGGG
ーのそれぞれがある、プラスミドpEGS1XA1およびpEGS3XA1がま
ず生成された。PCRプライマーNotGS1XA1backおよびNotGS
3XA1back(のそれぞれ)をプライマー4070Aforとともに使用し
て、NotIおよびBamHIで消化され、EA1のNotI/BamHIで消化されたバッ
クボーンにクローニングされた、EXA1からの変更されたエンベロープフ
ラグメントを増幅した。
図7は、螺旋状ペプチドAA、VLおよびIIが4070A MLV SUの残
基+1に融合されているキメラエンベロープ糖タンパク質をコードするプラスミ
ド構造物の模式図である。その一般的フォーマットが概略的に示され、これらペ
プチドとSUタンパク質との間のリンカーおよび螺旋状ペプチドのアミノ酸配列
(1文字の略号)が詳細に示される。LTRは、長い末端反復配列(ロング・タ
ーミナル・リピート)であり、Lはエンベロープシグナルペプチドである。7反
復のa位置およびd位置にあるアミノ酸残基は太字で示す。
プラスミドpVLXA1、pVLGS1XA1およびpVLGS3XA1を生
成させるため、PCRプライマーGa14 VLbackおよびGa14 VL
forを用い、それらのそれぞれから合成を開始させることによりPCRフラグ
メントを生成させ、次に、外側のプライマーGa14backおよびGa14f
orを用いて、フラグメントをさらに増幅した。このPCR産物をSfiIおよびN ot
Iで消化し、EXA1、pEGS1XA1およびpEGS3XA1のSfiI/N ot
Iで消化されたバックボーンにクローニングした。
プラスミドpAAXA1およびpAAGS3XA1を生成させるため、PCR
プライマーGa14 AAbackおよびGa14 AAforを用い、それら
のそれぞれから合成を開始させることによりPCRフラグメントを生成させ、次
に、外側のプライマーGa14backおよびGa14forを用いて、フラグ
メントをさらに増幅した。このPCR産物をSfiIおよびNotIで消化し、EXA
1およびpEGS3XA1のSfiI/NotIで消化されたバックボーンにクローニ
ングした。
プラスミドpIIXA1、pIIGS1XA1およびpIIGS3XA1を生成させ
るため、PCRプライマーGa14 IIbackおよびGa14 IIforを用
い、それらのそれぞれから合成を開始させることによりPCRフラグメントを生
成させ、次に、外側のプライマーGa14backおよびGa14forを用い
て、フラグメントをさらに増幅した。このPCR産物をSfiIおよびNotIで消化
し、EXA1、pEGS1XA1およびpEGS3XA1のSfiI/NotIで消化
されたバックボーンにクローニングした。DNA配列決定によって、すべて
の構造物の正しい配列が確かめられた。
以下のオリゴヌクレオチドを使用した(制限部位には下線を付す)。
NotGS1XA1back, 5’−GCA AAT CTG CGG CC G CA
G GTG GAG GCG GTT CAA TCG AGG GA
A GGA TGG CAG AG−3’(Seq ID No.10);
NotGS3XA1back,5’−GCA AAT CTG CGG CCG CA
G GTG GAG GCG GTT CAG GCG GAG GTG
GCT CTG GCG GTG GCG GAT CGA TCG AGG
GAA GAA TGG CAG AG−3’(Seq ID No.11)
;
Ga14 VLback(SfiI部位を有する),5’−GGC ATT CA
T GCG GCC GCG GCC CAG CCG GCC ATG AA
G CAA CTA GAA GAC AAG GTG GAG GAA CT
C CTT AGC AAG GTA TAC C−3’(Seq ID No
.12);
Ga14 VLfor(NotI部位を有する),5’−GCA AAT CTG CGG CCG C
CT CTC CAA CAA GCT TCT TCA
GTC GAG CGA CTT CGT TCT CAA GAT GGT
ATA CCT TGC TAA GGA G−3’(Seq ID No.
13);
Ga14 AAback(SfiI部位を有する),5’−GGC ATT CA
T GCG GCC GCG GCC CAG CCG GCC ATG AA
G CAA GCA GAA GAC AAG GCA GAG GAA GC
T CTT AGC AAG GCT TAC C−3’(Seq ID No
.14);
Ga14 AAfor(NotI部位を有する),5’−GCA AAT CTG CGG CCG C
CT CTC CAG CAA GCT TCT TTG
CTC GAG CAG CTT CGT TCT CTG CAT GGT
AAG CCT TGC TAA GAG C−3’(Seq ID No.
15);
Ga14 IIback(SfiI部位を有する),5’−GGC ATT CAT
GCG GCC GCG GCC CAG CCG GCC ATG AAG
CAA ATC GAA GAC AAG ATA GAG GAA ATT
CTT AGC AAG ATC TAC C−3’(Seq ID No.
16);
Ga14 IIfor(NotI部位を有する),5’−GCA AAT CTG CGG CCG C
CT CTC CTA TAA GCT TCT TGAT
TC GAG CAA TTT CGT TCT CTA TAT GGTAG
A TCT TGC TAA GAA TTT C−3’(Seq IDNo.
17);
Ga14 back,5’−GGC ATT CAT GCG GCC GCG
GC−3’(SEQ ID No.18);
Ga14 for,5’−GCA AAT CTG CGG CCG CCTC
TC−3’(Seq ID No.19);および4070Afor(上述)。標的細胞系およびウイルスの生産
GP+Env AM12細胞(Markowitz ら、Virology 167:400-406)は、
ネズミ細胞系NIH 3T3から誘導され、干渉によってRAM−1受容体を遮
断するMLV−Aエンベロープを発現する。NIH 3T3、GP+Env A
M12およびヒト細胞系A431(Giardら、J.Natl.Cancer Inst.51,1417-
1421)を、10%の胎仔ウシ血清で補足されたDMEMで増殖させた。リン酸カ
ルシウム沈澱法(Takeuchiら、J.Virol.68:8001-8007)によって、異なった
エンベロープ発現構造物をTELCeB6パッケージング細胞(Cossetら、J.V
irol.69:7430-7436)にトランスフェクションし、安定したフレオマイシン(
50mg/ml)耐性コロニーを広げ、プールした。10%の胎仔ウシ血清で補
足されたDMEMで細胞を増殖させ、集密状態になったとき37℃から32℃に
移し、72時間インキュベートした。10mlの血清を含まないDMEM(感染
用)、または、2%の胎仔ウシ血清で補足されたDMEM(免疫ブロット用)に
おいて32℃で一晩(16時間)インキュベーションの後、レトロウイルス粒子
を含む上清を採収した。すべての上清を使用前にろ過した(0.45μm)。免疫ブロット
1%のトリトンX−100、0.05%のSDS、5mg/mlのデオキシコ
ール酸ナトリウム、150mMのNaClおよび1mMのPMSFを含有する2
0mMのトリス−HCl緩衝液(pH7.5)中でウイルスプロデューサ細胞を
溶解した。溶解産物を4℃で10分間インキュベートし、10000×gで10
分間遠心分離にかけて核をペレット化した。4℃で1時間、SW40ローター(
Beckman,USA)において30000rpmで、ろ過されたウイルス上清(10m
l)を超遠心分離することにより、ウイルスサンプルが得られた。ペレット化し
たウイルス粒子を100μlのPBS中に再懸濁した。(細胞溶解産物について
は30μl、または、ペレット化されたビリオンについては10μlの)サンプ
ルを、還元条件下で10%のポリアクリルアミドゲル上で分離し、続いてニトロ
セルロースペーパーにタンパク質を移した。ファクターXaでの開裂のため、1
0μlのペレット化されたウイルス粒子を、分離ゲル上に流す前に、2.5mM
のCaCl2の存在下で37℃で90分間、0μg/mlまたは4μg/mlの
ファクターXa(Promega,USA)とともにインキュベートした。それぞれ1/1
000および1/10000に希釈された、ラウシャーネズミ白血病ウイルス(
RLV)gp70 SUまたはRLV p30キャプシドタンパク質(CA)の
いずれかに対する特定のヤギ抗体(Quality Biotech Inc,USA)を用いて、既
に説明されたように(Cossetら、J.Virol.69:6314-6322)、SUタンパク質
を検出した。西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ウサギ抗ヤギ抗体(DAKO,Denmar
k)および増強された化学発光キット(Amersham Life Science,UK)によってブ
ロットを展開した。標的細胞の感染
標的細胞を6ウェルのプレートに2×105細胞/ウェルで接種し、37℃で
1晩インキュベートした。β−ガラクトシダーゼ形質導入レトロウイルスを含む
プロデューサー細胞上清を、血清を含まない培地で32℃で1晩インキュベート
した後、ろ過した(0.45μm)。採収した上清を、2.5mMのCaCl2
の存在下で37℃で90分間、0μg/mlまたは4μg/mlのファクターX
a(Promega)とともにインキュベートした。8μg/mlのポリブレンの存在
下で6時間、2mlの血清を含まない培地中の上清希釈物を標的細胞とともにイ
ンキュベートした。そしてレトロウイルス上清を取除き、48から72時間レギ
ュラー培地で細胞をインキュベートした。βガラクトシダーゼ活性の検出のため
、X−Ga1染色を、既に説明されている(Tatuら:EMBO J.14:1340-1348)
ように行なった。6ウェルのプレートの下に置かれた格子を使用して顕微鏡で青
く染色されたコロニーを数えることにより、ウイルスの力価(酵素形成単位/m
l)を計算した。結果 Ram−1ターゲッティングドメインを発現するエンベロープによるRec−1 媒介感染
AMo1およびAXMo1は、開裂不可能な(AAA)またはファクターXa
により開裂可能な(AAAIEGR)リンカーにより、4070A SUからの
RAM−1受容体結合ドメインがモロニーSUのアミノ酸+1と融合されている
、既に説明されたキメラエンベロープである(Nilsonら:Gnen Ther.3:280-28
6)。AMo1およびAXMo1エンベロープを組込んだウイルスをペレット化
し、0μg/mlまたは4μg/mlのファクターXaプロテアーゼで開裂させ
、プローブとして抗エンベロープ抗血清を用いて免疫ブロットで分析した。
ファクターXaにより開裂可能なN末端RAM−1結合ドメインを発現するキ
メラエンベロープのレトロウイルス組込みおよび開裂による、可逆性の感染阻害
を、図6Aおよび図6Bに図示する。図6Aは、ファクターXaプロテアーゼで
の処理の前(−)または処理の後(+)のMo、AMo1またはAXMo1エン
ベロープを組込んだ、ペレット化された組換えレトロウイルス粒子を、SU糖タ
ンパク質に対する抗血清でプローブした、免疫ブロットである。図6Bは、ファ
クターXaプロテアーゼで処理されたまたは処理されていない、β−ガラクトシ
ダーゼ形質導入レトロウイルス(AMo1、AXMo1、MoおよびA)を含む
、採収されたプロデューサー細胞上清で、標的細胞系GP+Env AM12が
感染されたときの結果を示す。X−gal染色によりβ−ガラクトシダーゼ活性
の検出が行なわれ、力価はe.f.u./mlで表わされた。
キメラエンベロープが(変更されていないモロニーSUよりは効率的ではなか
ったが)等しく効率的にビリオンに組込まれ、AMo1エンベロープはそうでは
なかったが、AXMo1はファクターXaプロテアーゼにより開裂され、変更さ
れていないMo SUと区別できない移動度を持つSU開裂産物を得たことが、
図6Aから明らかである。
次に、対応するRam−1受容体を干渉によって遮断する4070Aエンベロ
ープを過剰に発現するNIH3T3トランスフェクタント(GP+Env AM
12)、およびNIH3T3細胞に対して、これらのRam−1標的化ベクター
の感染力をテストした。Rec−1およびRam−1の両者を発現する変更され
ていないNIH3T3細胞に対してはベクターAMo1およびAXMo1は十分
に感染力を持ち、力価は106efu/mlを超えた(図示せず)が、Ram−
1が欠損した細胞に対してはこれらの感染力は大幅に減じられ、これらが同種指
向性受容体Rec−1を利用できなかったことを示唆した(図6B)。この結果
は、予想されなかったものであって、単量体の増殖因子ドメインまたは1本鎖抗
体フラグメントを提示する同様のキメラモロニーSU糖タンパク質で得られた結
果と対照的であった。該キメラモロニーSU糖タンパク質で得られた結果におい
てはRec−1に媒介される感染は、提示されるドメインによって深刻なダメー
ジを受けることはなかった(Agerら:Human Gene Ther.,印刷中;Cossetら、J
.Virol.69:6314-6322)。このことから、提示されるRam−1結合ドメイン
は、それが移植されたモロニーSU糖タンパク質三量体の先端で三量体の複合体
を形成しており、それによって、Rec−1結合部位を遮断しているおよび/ま
たはRec−1媒介融合の誘発に干渉しているのではないかという説が導かれた
。このような遮断は、ベクターからRam−1結合ドメインを開裂させることに
よって取り消すことができると予想され、この予測にたがわず、Ram−1ター
ゲッティングドメインがファクターXaプロテアーゼによってその表面から開裂
されたとき、Rec−1に対して陽性の、Ram−1が欠損した細胞に対して、
AXMo1ベクターの感染力が十分に回復した(図6B)。螺旋状ペプチドを提示するキメラ4070Aエンベロープの構築
三量体のポリペプチドが三量体のエンベロープ糖タンパク質のN末端に融合さ
れたとき、三量体のエンベロープ糖タンパク質の機能を遮断できるという考えを
さらにテストするため、そして、この考えを両種指向性MLV SU糖タンパク
質に適用できるかどうかを判断するため、我々は、ファクターXaにより開裂可
能なリンカーを介して単量体のまたは三量体化する螺旋状ペプチドが4070A
SUのアミノ酸+1と融合されたキメラエンベロープをコードする一連の構造
物を作った(図7)。これらの研究のために選ばれた螺旋状ペプチドは、三量体
の超螺旋の形成を強制したり(VLおよびIIペプチド)またはオリゴマー化を防
いだり(AAペプチド)することが知られている7反復のa位置およびd位置に
系統的なV、L、IまたはA(1文字のアミノ酸略号)置換を伴う、二量体のG
CN4ロイシンジッパーペプチドの変異体であった(Harbury ら:Science 262
:1401-1407)。これらの構造物を設計しているとき、我々は、提示されるVL
およびIIペプチドが下地である4070A SU糖タンパク質にあまりに近接し
て繋がれると、提示されるVLおよびIIペプチドのオリゴマー化が妨害されるの
ではないかと憂慮した。そこで、4070A SU糖タンパク質と提示される
9)からなるリンカーを挿入することにより変化させた。この太字体で示す配列
はファクターXaにより認識され開裂されることが知られているものである(Ni
lsonら:Gene Ther.3:280-286)。キメラ4070Aエンベロープの発現、ウイルス組込みおよび開裂
AA、VLおよびIIキメラエンベロープならびに対照である両種指向性(40
70A)エンベロープを、MLV gag−polコア粒子およびn1s La
cZレトロウイルスベクターを発現するTELCeB6細胞に安定にトランスフ
ェクションした(Cossetら、J.Virol.69:7430-7436)。この安定にトランス
フェクションされたTELCeB6細胞から、ウイルスを含む上清を採収し、超
遠心分離して、ウイルス粒子をペレット化した。次に、ウイルスのコアタンパク
質およびエンベロープタンパク質の存在に関して、免疫ブロットでペレットを分
析した(図8A)。
図8は、4070A MLV SUのN末端伸長物としてファクターXaによ
り開裂可能な螺旋状ペプチドを発現するキメラエンベロープのウイルス組込みお
よび開裂を示す。図8Aは、キメラエンベロープを組込んだペレット化レトロウ
イルス粒子の免疫ブロットである。各レーンの内容は以下のとおりである。すな
わち、1:VLXA1、2:VLGS1XA1、3:VLGS3XA1、4:A
AXA1、5:AAGS3XA1、6:IIXA1、7:IIGS1XA1、8:II
GS3XA1および9:Aである。免疫ブロットの上部は抗SU抗血清でプロー
ブされ、下部は、p30 CAタンパク質を検出するため抗p30抗血清でプロ
ーブされた。
図8Bは、キメラエンベロープのファクターXaに媒介される開裂を図示して
おり、ファクターXaプロテアーゼでの処理の前(−)または処理の後(+)の
A、VLXA1、AAXA1、IIXA1またはEXA1エンベロープを組込んだ
、ペレット化された両種指向性組換レトロウイルス粒子を、抗SU抗血清でプロ
ーブした免疫ブロットの形をとる。
図8Cは、ウイルスを生産するTELCeB6トランスフェクタントA、VL
XA1、AAXA1、IIXA1および対照であるトランスフェクションされてい
ないTELCeB6から調製された細胞溶解産物を、抗SU抗血清でプローブし
た免疫ブロットである。
各サンプルに存在するベクター粒子の数を、p30 CAタンパク質を検出す
るためp30抗血清で染色して測定すると、ほぼ等しいことがわかった(図8A
)。しかし、抗SU抗血清で染色して、異なったキメラエンベロープのウイルス
組込みの効率を比較したときは、オリゴマー化するペプチドの存在が組込みに大
きな影響を与えることがわかった。対照単量体ペプチド(AA)を提示するエン
ベロープは野生型の4070Aエンベロープとほぼ同程度に効率的に組込まれた
一方、VLペプチドを提示するエンベロープの組込みははるかに非効率的であり
、IIペプチドを提示するエンベロープでは視認できる組込みはなかった。螺旋状
ペプチドを、それが移植されたSU糖タンパク質から開裂させることができるか
どうかを判定するため、ウイルスペレットを0μg/mlまたは4μg/mlの
ファクターXaプロテアーゼで消化し、前と同様に免疫ブロットで分析した。
図8Bは、発現されるエンベロープVLXA1、AAXA1および対照EXA
1がファクターXaプロテアーゼで開裂されているとき、移動度のシフトがあり
、螺旋状ペプチドが実際にSUから開裂されていることを示している。IIXA1
キメラエンベロープの組込みはレベルが低いため、このベクターについては開裂
は見られない。この免疫ブロットは、キメラエンベロープAAXA1が、VLX
A1の10倍効率的に組込まれたことも示す。
VLおよびIIキメラエンベロープの不十分な組込みをさらに調べるため、我々
は、ウイルスを生産するTELCeB6トランスフェクタントから調製された細
胞溶解産物の免疫ブロットを行なった。図8Cは、3つのキメラエンベロープす
べての、プロセシングを受けていない前駆体が細胞溶解産物において検出できる
ことを示す。しかし、VLおよびIIエンベロープ前駆体はAA前駆体ほど存在量
が多くない。また、VLおよびII前駆体の成熟SUへのプロセシングは、AA前
駆体のプロセシングに比べ大きく損なわれており、これらのキメラエンベロープ
が小胞体からゴルジ区画へ効率的に移送されないことを示している。開裂前および開裂後のキメラエンベロープを提示するベクターの感染力
螺旋状ペプチドが、それらが融合された4070Aエンベロープの機能をマス
クしていたかどうかを判定するため、我々は、ベクターを、ファクターXaプロ
テアーゼでの開裂前および開裂後、Ram−1を発現する細胞である、NIH3
T3およびA431上で力価検定した(表4および図9)。図9は、ファクター
Xaにより開裂可能なN末端のオリゴマー化するペプチドを発現するキメラエン
ベロープVLXA1の開裂による、感染の可逆的な阻害を示し、かつ、X−ga
1染色後のウイルスで感染された細胞の拡大図である。キメラエンベロープVL
XA1は、NIH 3T3およびA431細胞において感染の強い阻害を示して
おり、これはファクターXaの添加によって消すことができる。
AAペプチドを提示する対照ベクターの力価は、野生型両種指向性ベクターの
力価に匹敵し、この力価はファクターXa開裂後も変化せず、AAペプチドが下
地である4070Aエンベロープの機能に大きく干渉しないことを示す。逆に、
三量体化するVLおよびII螺旋状ペプチドを提示するベクターにおいては両細胞
系において力価が大幅に減じられ、これはファクターXa開裂によって2000
倍も増強された。VLXA1キメラエンベロープの場合には、4μg/mlファ
クターXaプロテアーゼでの開裂によって、NIH3T3細胞での力価は151
efu/mlから3×105efu/mlに増加し、A431細胞においては3
18efu/mlから105efu/mlに増加した(図9)。II螺旋状ペプチ
ドを提示するベクターにおいては、おそらくはIIペプチドを提示するキメラエン
ベロープの組込みが減じるために、VLペプチドを提示するものに比べて概して
より低い力価を示した。ドメイン間の間隔は、開裂されていないベクターの力価
に対しても、ファクターXaプロテアーゼへの暴露後観察された力価の増強度に
対しても、明らかな影響をほとんど及ぼさなかった。
考察
上記実施例において、我々は、ホモ三量体の4070A SU糖タンパク質か
らのRam−1結合ドメインは、ホモ三量休のモロニーSU糖タンパク質のN末
端に移植されると、ホモ三量体のモロニーSU糖タンパク質によるRec−1媒
介感染を阻害できることを示した。また、我々は、単量体の螺旋状ペプチドでは
できないが、短い三量体のロイシンジッパーペプチドでは、4070Aエンベロ
ープのN末端に融合されると、4070AエンベロープによるRam−1媒介感
染を阻害できることも示した。いずれの場合にも、ウイルスに組込まれたエンベ
ロープから三量体N末端伸長物を開裂させるためファクターXaプロテアーゼを
用いることによって、Rec−1媒介またはRam−1媒介感染に対する遮断を
取り消すことができた。我々は、これらの阻害N末端伸長物によってエンベロー
プの機能がマスクされるのは、これらが移植されるSU糖タンパク質三量体の先
端で、これらが三量体複合体に組立てられる結果であると考える。
我々が4070Aエンベロープに融合させたVL、IIおよびAAペプチドは、
GCN4ロイシンジッパーの突然変異体であって、そこにおいて、二量体形成を
誘導する保存され埋もれている残基は、バリン、ロイシン、イソロイシンまたは
アラニン残基と置換されている(Harbury ら:Science 262 :1401-1407)。V
L突然変異体はオリゴマー化して、極度に安定な(Tm95℃)2本鎖および3
本鎖のα−ヘリックス超螺旋構造を形成するが、一方、II突然変異体はVL構造
物よりもさらに安定な(Tm>100℃)3本鎖の超螺旋のみを形成する。AA
ペプチドにおいては、GCN4ロイシンジッパーの疎水性コア残基はすべてアラ
ニンで置換され、突然変異体ペプチドのオリゴマー化を防ぐ一方、その螺旋構造
を保存する。
変更されていない4070Aエンベロープに比べてごくわずかな組込みの減少
しか示さなかった、対照AAペプチドを提示するキメラエンベロープに対し、V
LおよびIIペプチドを提示するキメラエンベロープのレトロウイルス組込みは大
幅に損なわれていた。VLキメラエンベロープのウイルスペレットにおける存在
量はAAキメラエンベロープのそれの約10分の1であり、IIキメラエンベロー
プの組込みはあまりにも貧弱だったため、ペレット化されたビリオンの免疫ブロ
ットでは視認できなかった。トランスフェクションされたTELCeB6細胞か
らの細胞溶解産物を抗エンベロープ抗血清で免疫ブロットすると、各キメラエン
ベロープに対する前駆体ポリペプチドの細胞内存在量が、ウイルスペレットにお
けるそれらの存在量と密接に相関することがわかった。したがって、VLおよび
IIキメラエンベロープのウイルス組込みが低いのは、ウイルスプロデューサー細
胞でのそれらのフォールディングおよび/または発現が貧弱である結果である。
現在のところ、何がVLおよびIIキメラエンベロープの発現を損なわせるのか
は明らかでない。異なった(オリゴマー化するまたは対照の)キメラエンベロー
プ発現プラスミドをトランスフェクションした後得られた安定に形質導入された
TELCeB6クローンの数または大きさには差異がなかったので、いずれのタ
ンパク質もウイルスプロデューサー細胞に対して毒性を持たないものと思われる
(データは示さず)。VLおよびIIエンベロープ前駆体が小胞体内において未熟
なオリゴマー化をするために、VLおよびIIエンベロープ前駆体の細胞内での存
在量が少ないという、別の可能性もあるだろう。発生期のポリペプチド鎖のそれ
らのN末端VLまたはIIペプチドを介しての未熟なオリゴマー化は、個別のサブ
ユニットのフォールディングに深刻なダメージを与え、それらの凝集および加速
的なタンパク質分解性破壊を導くかもしれない。この考え方に沿って、関連する
系において、十分にフォールディングされたサブユニットをホモ三量体に組立て
できるよりも前に、インフルエンザ赤血球凝集素単量体のシャペロンにより誘導
されるフォールディングが小胞体において完成することが知られている(Valses
ia-Wittmann ら:J.Virol.68:4609-4619)。II螺旋状ペプチドが極めて安定
な三量体を形成すること、およびVLペプチドがこれよりも若干弱い相互作用物
を形成するという事実によって、VLペプチドを提示するキメラエンベロープが
、IIペプチドを提示するキメラエンベロープよりも良好な組込みを行った理由が
説明されるかもしれない。この考えをテストするため、我々はこの研究で使用し
たVLおよびIIペプチドに比べ安定性が低い(すなわち融解温度が低い)三量体
のロイシンジッパーペプチドを提示するキメラエンベロープを生成させることを
計画している。
VLまたはIIキメラエンベロープを保有するベクターはすべて、NIH3T3
細胞およびA431細胞において感染の阻害を示し、これはファクターXaプロ
テアーゼによってベクターからペプチドを開裂させることによって逆転可能であ
った。これらのエンベロープの組込みレベルが下がっているために、これらの力
価は野生型のレベルまで完全には回復しなかった。したがって、VLおよびIIペ
プチドは、それらが融合されるレトロウイルスエンベロープ糖タンパク質の機能
をマスクする、オリゴマー化ペプチドアダプターとして機能する。オリゴマー化
ペプチドが下地の結合ドメインをマスクすることによってベクターのその標的細
胞への結合が遮断される結果、感染が阻害されるのかもしれない。そうではなく
、オリゴマー化するペプチドの存在がエンベロープ三量体の解離を妨げ、融合を
遮断するのかもしれない。残念ながら、VLおよびIIキメラエンベロープの組込
みが減損しているため、研究を総合しても有用な情報が得られず、我々はこれら
のメカニズムのうちいずれがより支配的であるかを決定できていない。
NIH3T3およびA431細胞に感染させるためVLおよびIIペプチドを提
示する開裂されていないベクターを用いたとき、低レベルのバックグラウンドの
感染力が一貫して観察された(表4)。このバックグラウンドは、A431細胞
におけるよりも、NIH3T3細胞においての方が若干高く、4070A SU
とオリゴマー化ペプチドとの間に挿入されたリンカーペプチドの長さが増加する
に伴い増加する傾向にあった。標的細胞から誘導される内因性プロテアーゼによ
り小数のキメラエンベロープが開裂されるため、このバックグラウンドの感染力
が生じるものと我々は考える。開裂可能なEGFドメインを提示するキメラエン
ベロープを用いた以前の研究において、我々は、NIH3T3細胞およびA43
1細胞から放出されるプロテアーゼにより、IEGRファクターXa開裂部位を
わずかに開裂できることを観察した。我々はまた、ファクターXa開裂部位と提
示されるEGFドメインとの間のリンカー配列の長さを増加させると、これらの
内因性プロテアーゼに対するファクターXa部位の接近能力が増すことも見いだ
した。
要約すると、開裂可能な三量体のペプチドアダプターを4070A SUエン
ベロープ糖タンパク質のN末端に融合させることにより、レトロウイルスベクタ
ーの感染力を可逆的に阻害できることを我々の結果は明らかにしている。アダプ
ターをSU糖タンパク質から開裂させるプロテアーゼに、ベクター粒子を暴露す
ることにより、感染力は回復する。我々が現在開発している2段階(標的化され
た付着、標的化された開裂)ターゲッティング戦略において、非標的細胞の感染
を防ぐため、これらのアダプターが有用であろうと予測される。この研究におい
て使用されたVLおよびIIペプチドアダプターを提示するキメラエンベロープの
発現は貧弱であった。そこで、それらが提示されるキメラエンベロープの発現に
ダメージを与えない、同様のマスキングアダプターを明らかにすることを我々は
試みている。実施例4 EGF結合ドメインを有する開裂可能なオリゴマー化するアダプターを含むレト ロウイルスの構築 材料および方法 プラスミド構造物
ベクターpEGF LVA1およびpEGF LVXA1は、開裂不可能な
+1に融合された、オリゴマー化するペプチドLVを提示し、かつさらに、EG
F結合ドメインを提示する。これらのベクターを生成させるため、PCRプライ
マーGa14 LV、Ga14 LVbackおよびGa14 LVforを用
い、オリゴマー化するペプチドLVをコードするPCRフラグメントを組立てた
(Harbury ら:1993 Science 262,1401-1407)。このPCR産物をNotIおよびEag
Iで消化し、EA1およびEXA1のNotI消化バックボーンにクローニング
した。図10は、2つの構造物の模式図を示す。DNA配列決定により構造物の
正しい配列を確かめた。
以下のオリゴヌクレオチドを使用した(制限部位には下線を付す)。
Ga14 LV,5’−GAC AAG CTA GAG GAA GTA
CTT AGC AAG CTC TAC CAT GTC GAG AAC
GAA CTT GCT CGA GTT AAG AAG−3’(Seq I
D No.22);
Ga14 LVback(NotI部位を有する),5’−GGC ATT C
AT GCG GCC GCA ATG AAG CAA GTG GAA G
AC AAG CTA GAG GAA GTA C−3’(Seq ID N
o.23);
Ga14 LVfor(EagI部位を有する),5’−GCA AAT CT G CGG CCG A
CT CTC CCA GAA GCT TCT TA
A CTC GAG CAA GTT C−3’(Seq ID No.24)
.標的細胞系およびウイルスの生産
ネズミ細胞系NIH 3T3およびヒト細胞系A431を、10%の胎仔ウシ
血清で補足されたDMEMにおいて増殖させた。リン酸カルシウム沈殿法によっ
てエンベロープ発現構造物をTELCeB6パッケージング細胞にトランスフェ
クションし、安定したフレオマイシン(50mg/ml)耐性コロニーを広げプ
ールした。10%の胎仔ウシ血清で補足されたDMEMで細胞を増殖させ、集密
状態になったとき、37℃から32℃に移し、72時間インキュベートした。1
0mlの血清を含まないDMEMにおいて感染のために32℃で1晩(16時間
)インキュベートした後、レトロウイルス粒子を含む上清を採収した。使用前に
すべての上清をろ過した(0.45μm)。標的細胞の感染
標的細胞を、6ウェルのプレートに2×105細胞/ウェルで接種し、37℃
で1晩インキュベートした。β−ガラクトシダーゼ形質導入レトロウイルスを含
む採収された上清を、2.5mMのCaCl2の存在下で、37℃で90分間0
μg/mlまたは4μg/mlのファクターXa(Promega)とともにインキュ
ベートした。2mlの血清を含まない培地中の上清希釈物を、8μg/mlのポ
リブルンの存在下で6時間、標的細胞とともにインキュベートした。次に、レト
ロウイルス上清を取除き、48から72時間、細胞をレギュラー培地でインキュ
ベートした。β−ガラクトシダーゼ活性の検出のためX−Ga1染色を行ない、
6ウェルのプレートの下に置かれた格子を使用して顕微鏡で青く染色されたコロ
ニーを数えることにより、ウイルスの力価(酵素形成単位/ml)を計算した。キメラエンベロープを組込んだウイルスの宿主域特性
オリゴマー化するペプチドが、それが融合された4070Aエンベロープの機
能をマスクしているかどうかを判定するため、Ram−1を発現する細胞NIH
3T3およびA431において、ファクターXaプロテアーゼで開裂させる前お
よび開裂させた後、我々はベクターの力価を検定した(図11)。いずれのベク
ターも野生型の両種指向性のベクターと比べ、NIH3T3細胞およびA431
細胞における力価が大幅に減少した。4μg/mlのファクターXaプロテアー
ゼでEGF LVXA1を開裂させると、NIH3T3細胞およびA431細胞
における力価は200倍にまで増加した。しかし、ファクターXa開裂シグナル
を保有しない対照ベクターEGF LVA1の開裂では、このような力価の増加
は起こらなかった。
これらのデータは、単量体結合ドメインは、特定のプロテアーゼによって開裂
されるまでは、下地のエンベロープの機能を遮断する、三量体化アダプターの部
分として提示され得ることを示している。実施例5
脈管形成、炎症および腫瘍の浸潤は、細胞外マトリックスを分解するマトリッ
クスメタロプロテアーゼ(MMP)の過剰な発現に関係する。したがって、MM
Pは治療における有望な標的である。MMPインヒビターを用いる代わりとして
、我々はMMP−活性化可能な遺伝子配達システムを開発している。ここで、活
性化されたMMPによって効率的に開裂される阻害アダプターを組込んだベクタ
ーの構築について我々は説明する。MMPに対して敏感なベクターは、内因性の
膜結合MMPを発現する標的細胞において選択的に開裂活性化作用を受け、遺伝
子配達が劇的に増強された。MMPにより活性化可能なベクターは、患部を治療
用遺伝子の標的とするための新たな可能性を提供するであろう。
脈管形成、組織の再構築、炎症および創傷の治癒において、マトリックスメタ
ロプロテアーゼ(MMP)が重要であり、これは、癌の浸潤および転移ならびに
慢性関節リューマチにおける関節軟骨の破壊を含むさまざまな病理学的過程にお
いて重要な役割を果たす(Liottaら、1991 Cell 64,327 :Woessner Jr.,1991
FASEB J.5,2145 ;Rayおよび Stetler-Stevenson 1994 Eur.Respir.J.7,2
062 ;Karelinaら、1995 J.Invest.Dermatol.105,411)。既知のMMPは、
マトリライシン、コラゲナーゼ1−3、ストロメライシン1−3、ゼラチナーゼ
AおよびゼラチナーゼBならびに細胞膜に固定される4つの膜型MMP(MT−
MMP)のグループを含む(Satoら、1994 Nature 370,61 ;Takinoら、1995 J
.Biol.Chem.270,23013 ;Willおよび Hinzmann.1995 Eur.J.Biochem.23
1,602;Puenteら、1996 Can.Res.56,944)。ほとんどのMMPはチモーゲン
の形で分泌され、それらのタンパク質分解活性を働かせることができるようにす
るためにはその前に活性化が必要である。酵素の正味の活性はまた、MMPの組
織インヒビター(TIMP1−3)によって調節される。一旦活性化されると、
MMPは、カスケード経路内で互いに協働し、細胞外マトリックスの分解を引起
こす。腫瘍の浸潤については、ゼラチナーゼA(GLA;MMP−2)およびM
T−MMPが特に関係がある。プロ−GLAはストロマ線維芽細胞によって分泌
され、腫瘍細胞膜上、特に腫瘍の浸潤が進行する領域に集中する(Afzal ら、19
96 Lab.Invest.74,406 ;Nomuraら、1996 Int.J.Can.(Pred.Oncol.)69,9
)。これは、プロ−GLA−TIMP−2複合体として、MT1−MMPに結合
し、MT1−MMPは、腫瘍細胞の表面におけるその開裂の活性化を媒介する(
Stronginら、1995 J.Biol.Chem.270,5331 ;Emmert-Buckら、1995 FEBS Let
ters 364,28 ;Gilles ら、1996 Int.J.Can.65,209)。事実、MT1−M
MPにより媒介されるプロ−GLAの活性化は、癌の進行において重要であると
考えられ、浸潤性または転移性の腫瘍において、活性なGLAの濃度の上昇がし
ばしば見られる。したがって、新規治療薬の有望な標的としてMMPの活用は極
めて興味深く、現在多くの臨床試験によっていくつかの一般的または特殊なMM
Pインヒビターが、MMP関連疾患の治療におけるそれらの有用性についてテス
ト中である(Hodgson、1995 Biotech.13,554 ;Ecclesら、1996 Can.Res.56
,2815)。そこで、MMPインヒビターの使用の代替案として、我々は、MMP
により活性可能な遺伝子配達システムの使用を提案する。
この実施例は、膜結合MMPにより、ヒトEGF受容体発現癌細胞に対する感
染力が強力に活性化される、標的化レトロウイルスベクターの生成を説明する。
短い開裂不可能なまたはプロテアーゼにより開裂可能なリンカーを介して40
70Aネズミ白血病ウイルス(MLV)SUエンベロープ糖タンパク質のN末端
コドンに、EGFの53アミノ酸受容体結合ドメインをコードするcDNAが結
合されている、一連のキメラエンベロープ発現構造物を生成した。概括すると、
キメラベクターE.AおよびE.X.Aは、SfiI制限部位およびNotI制限部位
が両端に位置するEGF cDNAが、ドメイン間の3アラニンからなるリンカ
ー(E.A.)または3アラニンとIEGRファクターXa開裂配列とからなる
リンカー(E.X.A)とともに、野生型4070A MLV SU(表面タン
パク質gp70)エンベロープのN末端コドン+1に挿入されているものである
。図12は、キメラエンベロープ発現構造物、E.A、E.G4S.A、E.X
.AおよびE.MMP.Aの模式図である。エンベロープ構造物はTELCeB
6補足細胞にトランスフェクションされ、ウイルス生産クローンを50μg/m
lのフレオマイシンを含有する10%のFCS−DMEM選択培地にプールし広
げた。矢印は、それぞれのプロテアーゼによって開裂され得る部位を示す。
構造物E.MMP.AおよびE.G4S.Aを得るため、E.Aについて(上
述の)プライマー4070Aforとともに、PCRプライマーA1Ge1A
Nb(5’ GCA AAT CTG CGG CCG CAC CTT TG
G GAC TTT GGG CAA TGG CAG AGA GCC CC
C ATC,Seq ID No.27)またはNL1A1B(5’ GCA
AAT CTG CGG CCG CAG GTG GAG GCG GTT
CAA TGG CAG AGA GCC CCC ATC,Seq ID N
o.28)をそれぞれ用いて、5’伸長物として、MMPにより開裂可能なリン
カー(PLGLWA)または開裂不可能なリンカー(G4S)をコードする、4
070A SUコード配列のNotIが末端についたPCRフラグメントを生成さ
せた。PCRフラグメントをNotIおよびBamHIで消化し、E.AのNotI−Bam
HIで消化されたバックボーンにクローニングし、構造物E.MMP.Aおよび
E.G4S.Aを生成させた。DNA配列決定により、構造物の配列をチェック
し確かめた。
E.AおよびE.G4S.Aキメラエンベロープはそれぞれ、開裂不可能なリ
ンカーAAAおよびAAAGGGGS(Seq ID No.25)(1文字の
アミノ酸略号)を含み、E.X.Aエンベロープは、ファクターXaにより開裂
可能なリンカーAAAIEGRを含み、E.MMP.Aエンベロープはリンカー
示した配列はGLAおよびMT1−MMPにより認識され開裂されることが知ら
れている(Yeら、1995 Biochem.34,4702;Willら、J.Biol.Chem.271,印刷
中)(図12)。
前掲実施例で説明したように、モロニーMLVgag−polタンパク質およ
びn1sLacZレトロウイルスベクターを発現するTELCeB6補足細胞に
、このキメラエンベロープ構造物および野生型の4070Aエンベロープ発現構
造物を安定にトランスフェクションした。機能的エンベロープ発現プラスミドで
のこれらの細胞のトランスフェクションに際し、lacZマーカー遺伝子を導入
できる、感染性のエンベロープに包まれたベクター粒子が培養上清中に回収され
る。プールされたトランスフェクション済TELCeB6細胞の集密プレートか
らウイルス上清が採収され、超遠心分離によりウイルス粒子がペレット化され、
プローブとして抗エンベロープ抗血清を用いた免疫ブロットが行なわれた。免疫
ブロットは、前掲実施例で説明したように行なった。この結果を図13Aおよび
図13Bに示す。
図13Aは、EGFキメラベクター(レーン2=E.A;レーン3=E.X.
A;レーン4=E.MMP.A;レーン5=E.G4S.A)と野生型4070
A SU(レーン1およびレーン6)のウイルス組込みの比較を示す免疫ブロッ
トである。図13Bは、精製されたp−アミノフェニル水銀(11)アセテート
(APMA)−活性化ゼラチナーゼA(GLA)による、E.MMP.A中の、
MMPにより開裂可能なリンカーの開裂を立証する免疫ブロットである。E.M
MP.Aウイルスペレットのアリコートを、それぞれ、PBSのみ(レーン1)
、APMA−活性化GLA(最終濃度は32μg/ml;レーン2)、および、
最終濃度2mMのAPMA(レーン3)とともにインキュベートした。レーン4
は、変更されていない野生型の4070A−SUを示す。
野生型4070A−SUと比較した移動度の減少によって示されるように、4
つのキメラエンベロープがすべて発現されビリオンに組込まれたこと、および、
4つの異なった組換えウイルス株においてエンベロープ組込みの相対的効率が比
較できるものであったことが、図13Aから明らかである。
GLAがE.MMP.AベクターにおけるPLGLWA配列を認識でき、した
がって、下地の4070A SU糖タンパク質を分解せずにキメラウイルスエン
ベロープからEGFドメインを開裂させるかどうかを判定するため、我々は、E
.MMP.Aおよび対照ウイルスペレットのアリコートを、PBS、p−アミノ
フェニル水銀(II)アセテート(APMA)またはAPMA活性化GLAとと
もに、37℃で30分間インキュベートし、その後上述したように免疫ブロット
を行なった(ゼラチナーゼA(GLA)はチモーゲンの形で精製され、使用前に
25℃で1時間APMA(2mM)とともにインキュベートして活性化する必要
がある。再懸濁したE.X.A、E.G4S.AまたはE.MMP.Aウイルス
ペレット、10μlを、PBS、APMA(最終濃度2mM)またはAPMA活
性化GLA(32μg/ml)とともに、37℃で30分間インキュベートした
)。
活性化GLAを用いたE.MMP.A−SUの処理において、野生型4070
A−SUと同じ移動度のバンドが回復され、さらなるGLAに媒介される分解な
しに、このキメラエンベロープからEGFドメインが効率的に開裂され得ること
が示された(図13B)。E.G4S.AおよびE.X.Aキメラエンベロープ
はGLAでの処理によっては影響を受けず、開裂はMMPに対して敏感なリンカ
ーに特異的なものであることを示した(図示せず)。
我々の以前のデータ(Nilsonら、1996 Gene Therapy 3,280)は、E.X.A
ベクターの感染力は、EGF受容体陽性A431細胞においては最小であったが
、ファクターXaプロテアーゼでキメラエンベロープを開裂させることによって
、十分にかつ選択的に回復できることを示した。この結果は、本研究で生成させ
たE.X.Aベクター株を用いて確認された。ベクター株は、A431細胞にお
いてEGF受容体に強く結合し、ファクターXaプロテアーゼによって表面から
EGFドメインが開裂された後力価を103efu/mlから106efu/ml
に上昇させた(データは示さず)。A431細胞における、E.A、E.G4S
.AおよびE.MMP.Aベクターの感染力は低く、102−103efu/ml
の間であり、ファクターXaプロテアーゼでの処理によっても大幅には増加しな
かった(図示せず)。
MMPにより開裂可能なE.MMP.Aベクターの感染力がGLAによって活
性化できるかどうかを判定するため、我々は、外因性のプロ−GLAの濃度を増
加させつつA431細胞について感染を行なった。A431細胞はプロ−GLA
を活性化してGLAにすることが知られているので、APMAによるプロテアー
ゼの予備−活性化は必要なかった。
感染アッセイのため、10%のFCS−DMEM中のA431細胞を、24ウ
ェルの組織培養プレート(Corning,New York)に、1ウェルあたり3×104の
密度で接種し、37℃で1晩置いた。翌日培地を取除き、細胞を血清を含まない
DMEM中で1度洗浄した。さまざまな量(最終濃度2−40μg/ml)のプ
ローGLAを、200μlのろ過されたE.MMP.Aウイルス上清と混合し、
その後混合物をA431細胞に添加し、37℃で6時間インキュベートした。6
時間後、培地を取除き、細胞を血清を含まないDMEM中で1度洗浄した。次に
、細胞を37℃で72時間10%のFCS−DMEM中でインキュベートし、冷
PBS中で1度洗浄し、0.5%のグルタルアルデヒド−PBS中に15分間固
定し、再びPBSで1度洗浄し、そして、37℃で1晩X−galとともにイン
キュベートした。ベクターにより形質導入されたコロニー(青いコロニー)の数
を数え、力価がウイルス上清1mlあたりのefuとして表わされた。図14の
グラフは、A431細胞における、E.MMP.A MMP感受性ベクターの力
価の増加(efu×10-4/ml)が、細胞に添加されたプローゼラチナーゼA
(プロ−GLA)の量と相関することを示している。
外因性のプロ−GLAの濃度が、2μg/mlから40μg/mlに増加する
につれて、投与量に依存した態様で、E.MMP.Aベクターの感染力が増加し
たことがわかった。プロ−GLAの不在下での1.3×103efu/mlから
、40μg/mlのプロ−GLAの存在下での6.5×104efu/mlへと
、力価は50倍に増加した。開裂不可能なE.G4S.Aベクターの力価は、プ
ロ−GLAの不在下での1.2×102efu/mlから、40μg/mlのプ
ロ−GLAの存在下での1.4×102efu/mlとなり、相対的に変化がな
か
った。E.X.Aの感染力は、40μg/mlのプロ−GLAの存在下で3倍に
しか増加していないので(図示せず)、感染力の活性化は、MMPにより開裂可
能なリンカーを備えるベクターに特有のものであった。
我々は、次に、外因性MMPの不在下で内因性の標的細胞由来MMPがE.M
MP.Aベクターを活性化する可能性を探った。HT1080は、構造的にMT
1−MMPおよびプロ−GLAを生成するヒト線維芽細胞系である(Okada ら、
1995 Proc.Natl.Acad.Sci.92,2730)。そこで、我々は、HT1080細胞
およびA431細胞上で、E.G4S.A、E.X.AおよびE.MMP.Aの
ウイルス上清を、外因的にプロ−GLAを添加することなく、37℃で6時間イ
ンキュベートした。ろ過されたE.X.A、E.G4S.AまたはE.MMP.
Aウイルス上清200μlを、8μg/mlのポリブレンとともにA431細胞
またはHT1080細胞に添加し、37℃で6時間の後、インキュベーション培
地を取除き、細胞を血清を含まないDMEM中で1度洗浄した。細胞を37℃で
72時間10%のFCS−DMEMにおいてインキュベートし、その後X−ga
1で染色した。
図15は、A431細胞およびHT1080細胞におけるEGFキメラベクタ
ーの力価を示すグラフである。青いβ−ガラクトシダーゼ陽性コロニーの数によ
って示されるように、A431細胞におけるよりもHT1080細胞における方
がE.MMP.Aベクターの感染力が高いことを、図15Aは示している。10
mlのろ過されたE.MMP.Aウイルス上清のうち1mlを、37℃で30分
間、5mMのCaCl2とともにインキュベートし、その後、それぞれの細胞タ
イプにおいて37℃で6時間インキュベートした。6時間後、血清を含まないD
MEM中で細胞を洗浄し、10%のFCS−DMEM中で72時間インキュベー
トし、その後、それらをX−galで染色した。それぞれの力価を、efu/m
lウイルス上清として示す。
外因性のプロ−GLAの不在下ではA431細胞におけるベクターの感染力は
低く、以前の結果と一致した。しかし、HT1080細胞においては、MMPに
より開裂可能なベクターE.MMP.Aの感染力は、MMP耐性の対照ベクター
E.G4S.AおよびE.X.Aと比較して2桁高いオーダーで活性化された
(図15、図15A)。したがって、添加される外因性のMMPが全くない場合
に、MMP依存性のE.MMP.Aベクターの力価がより高いのは、HT108
0細胞により内因的に生産されるMMPによるその開裂のためであるはずである
。
MMP活性化可能E.MMP.Aベクターが、A431細胞に優先して、MM
Pを発現するHT1080細胞を選択的に標的化できるかどうかを判定するため
、我々は同じペトリ皿上で同時に両方の細胞タイプにベクターを感染させた。我
々はカバーガラス上でA431細胞とHT1080細胞とを別個に増殖させ、そ
れらを同一のペトリ皿に載せ、E.MMP.Aまたは対照ベクターを含む上清を
添加した。6ウェルのプレートに含まれる25mmの Thermanoxカバーガラス(
Corning)上に、A431細胞とHT1080細胞とを別個に接種し、10%の
FCS−DMEMにおいて、1晩置き、その後、培地を取除き、細胞を血清を含
まないDMEM中で1度洗浄した。細胞で覆われたカバーガラスを10cmのペ
トリ皿(Falcon)に置き、E.G4S.A(1:1.5希釈)、E.MMP.A
(1:1.5)または4070A(1:20)上清を、8μg/mlのポリブレ
ンとともにペトリ皿に添加した。37℃で6時間のインキュベーション期間の終
了時に、培地を取除き、X−gal染色の前に、細胞を72時間10%のFCS
−DMEM中でインキュベートした。この結果を図16に示す。HT1080(
H)細胞およびA431(A)細胞において増殖されたE.MMP.Aベクター
はIおよびIIに、対照E.G4S.AベクターはIIIに、野生型4070Aベクタ
ーはIVに示す。
E.MMP.Aは、HT1080細胞およびA431細胞の両方の細胞タイプ
に与えられたとき、A431細胞に優先して、HT1080細胞に感染した。野
生型4070Aベクターおよび開裂不可能なリンカーを備えるE.G4S.Aベ
クターはこのような優先性を示さなかった(図16)。これらの実験において、
MMP活性化可能E.MMP.Aベクターは、HT1080細胞の不在下よりも
その存在下において、効率的にA431細胞に感染するということはなかった。
このことは、HT1080細胞から培地に放出される可溶性GLAがベクターの
活性化においては重要な役割を果たしていないことを示唆する。その代わり、こ
の結果は、E.MMP.Aベクターの開裂活性化がHT1080細胞の表面に局
在すること、および、これが、これらの細胞上のEGF受容体に結合するベクタ
ー粒子に作用する膜結合MMPにより媒介されることを強く示している。
MMPにより開裂可能なベクターの開裂活性化においてMT−MMPが重要な
役割をはたすことは、天然のMMPインヒビター、TIMP−1およびTIMP
−2ならびに合成阻害剤CT1339を用いた実験の結果によって裏付けられた
。阻害の研究のため、最終濃度が10μg/mlのTIMP−1、TIMP−2
(5μg/ml)またはCT 1339(1mM)を使用した。これらの阻害剤
を、200μlの希釈された(1:10)E.MMP.Aまたは希釈されていな
いE.G4S.Aウイルス上清に添加した。次にこの混合物を、血清を含まない
DMEMで1度洗浄されたA431細胞またはHT1080細胞に添加し、細胞
を37℃で6時間インキュベートした。インキュベーション期間の終了時に、こ
の細胞を血清を含まないDMEMで1度洗浄し、10%のFCS−DMEM中で
72時間インキュベートし、その後X−galで染色した。形質導入されたコロ
ニーの数を正確に数えられるよう、E.MMP.A上清を希釈し、力価を得た。
A431細胞についての阻害研究は16μg/mlのプロ−GLAの存在下で2
00μlの希釈されていないE.MMP.AまたはE.G4S.Aを用いて行な
われた。
天然のMMPインヒビターTIMP−1、TIMP−2または合成阻害剤CT
1339を添加してまたは添加せずに、16μg/mlのプロ−GLAの存在下
でA431細胞に、または、外因性のプロ−GLAの不在下でHT1080細胞
に、MMP依存性のE.MMP.Aベクターを添加した。値(平均±SD、n=
3)は、(阻害剤を含まない)対照における力価の減少と比較した(阻害剤を含
むものの)力価の減少をパーセンテージで表わす。
3つの阻害剤はすべてGLAに対して強い活性を有しており、外因性GLAに
よるE.MMP.Aベクターの活性化を妨げることができる(表5)。しかしな
がら、TIMP−2およびCT1339とは異なり、TIMP−1は、HT10
80細胞における内因性MMPによるE.MMP.Aの活性化を効率的に遮断で
きなかった(表5)。TIMP−1と他の阻害剤との重要な違いは、TIMP−
1が、HT1080細胞において発現されるMT1−MMPに対しては弱い活性
しか示さないという点である(図17、以下に説明)。したがって、これらの実
験は、E.MMP.AベクターのHT1080に媒介される活性化において、M
T−MMPが中心的な役割を果たしていることを裏付けている。
図17は、HT1080細胞上の内因性プロ−GLAの細胞の活性化に対する
、TIMP−1または合成MMP阻害剤CT1339の効果を示すゼラチンザイ
モグラムである。いずれのの阻害剤も存在しない状態(レーン1)、10μg/
mlのTIMP−1の存在下で(レーン2)または30μg/mlのTIMP−
1の存在下で(レーン3)、および1μMのCT1339の存在下で(レーン4
)、あるいは10μMのCT1339の存在下で(レーン5)、E.MMP.A
ウイルス上清を、37℃で6時間、HT1080細胞上でインキュベートした。
インキュベーション期間の終了時に、0.5g/mlの変性I型コラーゲンを含
む7%のSDS−PAGEゲルに、この上清のアリコートを載せ、4℃で1時間
電気泳動を行ない、その後、2.5%のトリトン−X100中で15分間2回に
わたってこのゲルをインキュベートしてSDSを取除き、水中で洗浄し、100
mMのトリス、30mMのCaCl2、0.0015%のBrijおよび0.0
01%のNaN3中で、室温で1晩インキュベートした。次に、このゲルを0.
25%のクマシーブリリアントブルーグリーン(Sigma)で染色した。ゼラチン
ザイモグラム上のゼラチン分解活性の位置は、青く染色されたバックグラウンド
中の明瞭なバンドとして検出できる。
リガンド−受容体の相互作用を通じてレトロウイルスベクターの標的を定める
多くの試みがさまざまな形で成功している(Valsesia-Wittmannら、1994 J.Vir
ol.68,4609 ;Cossetら、1995 J.Virol.69,6314 ;Kasaharaら、1994 Scie
nce 266,1373;Matanoら、1995 J.Gen.Virol.76,3165;Somia ら、1995 Pr
oc.Natl.Acad.Sci.92,7570)。ここで我々は2段階ターゲッティング戦略
を採用したが、これは、プロテアーゼ−基質の相互作用の特異性を利用して、受
容体によりねらいが定められるレトロウイルスベクターの感染力を活性化するこ
とを可能にする。我々は既にベクター活性化のため外因性のファクターXaプロ
テアーゼの添加を用いてきたが、この方策はインビボでの遺伝子治療においては
用途がかなり限られてしまうかもしれない。ここにおいて初めて、我々は、内因
的に生産された疾患関連プロテアーゼによって感染力を活性化できるレトロウイ
ルスベクターを明らかにした。このベクターは、ヒト腫瘍細胞系において、膜結
合MMPにより最適に開裂および活性化される。
我々が探求してきたこのターゲッティング戦略は、HIV侵入メカニズムと興
味深い相似性を有し得るものである。HIV侵入メカニズムにおいては、CD4
への最初のウイルス付着が、gp120における立体配座の再配置またはタンパ
ク質分解性開裂、および最近特徴付けられたHIV共−受容体の1つへの第2の
ウイルス付着を導く(Fengら、1996 Science 272,872 ;Dengら、1996 Nature
381,661;Handley ら、1996 J.Virol.70,4451)。したがって、設計された
SU糖タンパク質を有するC型レトロウイルスベクターは、HIVのような本来
的に生じるウイルスにより用いられる侵入メカニズムを突き止めるためのモデル
システムとして開発できるだろう。
この報告において我々が説明したタイプの標的化ベクターが、癌などのMMP
関連疾患における遺伝子治療の新たな可能性を開くことが望まれる。このような
疾患においては、脈管形成、浸潤性および転移能力のために、腫瘍沈積物のMM
P生産が増加することが必要であり、この増加が悪い予後と密接に相関している
(Murrayら、1996 Nature Med.2,461)。実施例6 三量体結合ドメイン、TNFアルファおよびCD40リガンドのレトロウイルス における提示
以下の実験は、TNFアルファまたはCD40リガンドをN末端伸長物として
保持するキメラエンベロープを、レトロウイルスベクター粒子に組込むことがで
き、そこで、三量体結合ドメインは、それが融合されたエンベロープ糖タンパク
質の上にキャップを形成していると思われることを示すものである。したがって
、
これらのキメラエンベロープを組込んだベクターの両種指向性感染力は、低い一
方、三量体リガンドをこれらの表面から開裂させることによって大幅に増強され
る。細胞系
前掲実施例においてTELCeB6細胞系を説明している。NIH 3T3、
A431(ヒト扁平上皮癌;ATCC CRL1555)およびHT1080(
ヒト線維芽細胞;ATCC CCL121)細胞系を、10%の胎仔ウシ血清(
FCS;PAA Biologicals,UK)、ベンジルペニシリン(60mg/ml)およ
びストレプトマイシン(100mg/ml)で補足されたDMEM(Gibco-BRL
,UK)において、5%のCO2雰囲気中37℃で増殖させた。B細胞系である、
Daudi(ヒトバーキットリンパ腫;ATCC CCL 213)、Raji
(ヒトバーキットリンパ腫;ATCC CCL 86)およびK422(ヒト非
ホジキンB細胞;Dryer ら、1990 Blood 75 :709-714)、ならびにT細胞系で
ある、ジャーカット(ヒト急性T細胞白血病;ATCC TIB 152)を、
10%のFCS、ベンジルペニシリン(60mg/ml)およびストレプトマイ
シン(100mg/ml)で補足されたRPNI 1640(Gibco -BRL)にお
いて、5%のCO2雰囲気中37℃で増殖させた。キメラエンベロープ発現ベクターの構築
ヒト腫瘍壊死因子アルファ(TNF−a)−4070A SUキメラエンベロ
ープ発現ベクターである、TNF−a.A、TNF−a.GS.A、TNF−a
.X.A、TNF−a.XA、およびTNF−a.MMP.Aは、SfiIおよびN ot
I制限部位が両端に位置し、異なるリンカーによって野生型の4070A M
LV SUエンベロープのN末端コドン+1に挿入される、TNF−a cDN
A(Wangら、1995 Science,228 :149-154)を有する(図18)。TNF−a
.Aベクターは、3アラニン(AAA)リンカーにより結合され、TNF−a.
GS.Aは開裂不可能なAAAG4Sリンカーにより、TNF−a.X.Aはフ
ァ
Xaプロテアーゼはアルギニン残基の後ろでIEGRを開裂させ、PLGLWA
リンカーはゼラチナーゼA(MMP−2)およびMT−MMPに対してグリシン
残基とロイシン残基との間で感受性である。
CD40L−4070A SUキメラエンベロープ発現ベクターは、SfiIお
よびNotI制限部位が両端に位置し、前述のように4つの異なったリンカーによ
って4070A MLVのN末端コドン+1に挿入される、CD40L cDN
Aの部分を有する。これらのベクターは、CD40L.A、CD40L.GS.
A、CD40L.X.AおよびCD40L.MMP.Aと名付けられる(図19
)。
三量体ヒトTNF−aの155のアミノ酸をコードする、PCR誘導SfiI−N ot
IDNAフラグメントを、cDNAテンプレートおよび2つのプライマー、す
なわち
SfiI部位を有するsTNFback(5’>CCG GTA CCG GC
C CAG CCG GCC TCT TCT TCT CGT ACC CC
G,Seq ID No.29)と、
NotI部位を有するnTNFfor(5’>AAG TCT TAG CGG
CCG CCA GAG CGA TGA TAC CGA AG,SeqI
D No.30)とを用いて生成させた。
三量体CD40L(Gly 116 - Leu 261 ;Karpusasら、1995 Structure,3 :
1031-1039)の可溶性細胞外ドメインの145のアミノ酸をコードする、SfiI−Not
IPCRフラグメントを、cDNAテンプレート(ATCC 7981 3
)および2つのプライマー、すなわち
SfiI部位を有するsCD40Lb(5’>CCG GTA CCG GCC
CAG CCG GCC GGT GAT CAG AAT CCT CAA
ATT GC,Seq ID No.31)と、
NotI部位を有するnCD40Lf(5’>AAG TCT TAG CGG
CCG CGA GTT TGA GTA AGC CAA AGG,Seq
ID No.32)とを用いて生成させた。それぞれのPCRフラグメントを
、SfiIおよびNotI制限酵素で消化し、SfiI−NotIで消化されたEA.1バ
ックボーンまたはEXA.1にクローニングし、それぞれ、TNF−a.Aまた
はCD40L.AおよびTNF−a.X.AまたはCD40L.X.Aを得た(
Nilsonら、1996 Gene Therapy 3 :280-286)。
TNF−a.GS.AまたはCD40L.GS.AおよびTNF−a.MMP
.AまたはCD40L.MMP.Aを得るため、SfiI−NotIで消化されたTN
F−aまたはCD40LのPCRフラグメントをそれぞれ、SfiI−NotIで消化
されたE.GS.AバックボーンまたはE.MMP.Aバックボーンにクローニ
ングした(Pengら、A gene delivery system activatable by disease-associat
ed matrix metalloproteinases,寄託済)。この構造物の配列は、DNA配列決
定によりチェックされ確かめられた。ウイルスの生産
さまざまなTNF−aおよびCD40Lエンベロープ発現プラスミドを、リン
酸カルシウム沈殿法(Sambrookら、1989,Molecular cloning :A laboratory m
anual)によりTELCeB6パッケージング細胞に、安定にトランスフェクシ
ョンした。トランスフェクションされた細胞を、37℃で10%のFCS−DM
EM中で増殖させ、50μg/mlのフレオマイシン(Sigma,Poole,Dorset,
UK)を用いて選択した。耐性コロニーをプールし広げ、採収する前に、集密細胞
を32℃72時間の条件に移した。そして、血清を含まないDMEMとともに3
2℃で集密細胞を1晩インキュベーションした後、ウイルス上清を採収しろ過し
た(0.45μm,Acrodisc,Gelman Sciences MI,USA)。そして、これらの
ろ過された上清を、免疫ブロット、結合アッセイまたは感染アッセイのいずれか
のために用いた。免疫ブロット
免疫ブロットのため、ろ過されたウイルス上清を、SW40ローターにて4℃
で1時間30000rpmで超遠心分離(Beckman,USA)することによって、ウ
イルス粒子をペレット化した。次に、ペレットを100μmの冷PBS中に再懸
濁し、さらなる分析まで−70℃で保存した。ウイルスタンパク質のアリコート
(10μl)を、10%のSDS−PAGEゲル上で電気泳動によって分離し、
ニトロセルロース膜(Hybond ECL,Amensham Life Science,UK)上に電気的に
移動させ、ラウシャー白血病ウイルスgp70−SUエンベロープタンパク質に
対するヤギ抗血清(Quality Bioteck,USA)での免疫染色によって検出し、次に
、西洋ワサビペルオキシダーゼ抱合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン抗体(DAKO,De
nmark)によって検出し、増強された化学発光キット(Amersham)によって展開
した。
細胞においてプロセシングされたもの(SU)およびプロセシングされなかっ
たもの(SU+TM)を検出するために、ウイルス補足細胞をペトリ皿(直径1
0cm)上で集密状態となるまで増殖させ、冷PBS中で1度洗浄し、そして、
20mMのトリス−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1%のトリ
トン−X、0.05%のドデシル硫酸ナトリウム、5mg/mlのデオキシコー
ル酸ナトリウムおよび1mMのPMSFを含む細胞溶解緩衝液とともに、4℃で
10分間インキュベートした。溶解された細胞をプレートからかき取り、懸濁物
を10000×gで20分間遠心分離にかけ、核をペレット化した。電気泳動お
よび免疫ブロットのために上清30μlを用いた。結果:
キメラTNF−a−4070A SUに対する免疫ブロット上にはエンベロー
プタンパク質の視認できるバンドはなく、エンベロープ発現がほとんどないかま
たは全くないことを示した。細胞溶解産物を試験したとき、プロセシングされな
かった(SU+TM)キメラエンベロープタンパク質はあったが、検出可能なプ
ロセシングされた(SU)エンベロープタンパク質はほとんどなかった。CD4
0L−4070A SUに対する免疫ブロットの結果は、キメラエンベロープ発
現および組込みを示し、キメラエンベロープ間の発現は、最も発現の多かったC
D40L.MMP.A−SUを除いては同程度であった。感染アッセイ i.キメラベクターによる細胞の感染:三量体のリガンドによる4070Aの感 染力の遮断
TNF−aおよびCD40Lキメラベクターの、NIH 3T3、A431お
よびHT1080細胞における感染力をテストした。6ウェルの組織培養プレー
ト(Corning,New York)に1ウェルあたり約1×105細胞の密度で、37℃
で1晩細胞を接種した。翌日培地を取除き、細胞を血清を含まないDMEM中で
1度洗浄した。ろ過されたウイルス上清のアリコート(1ml)を用いて、8μ
g/mlのポリブレンの存在下で細胞を感染させた。6時間のインキュベーショ
ン期間の終了時に、培地を取除き、細胞を血清を含まないDMEM中で1度洗浄
し、10%のFCS−DMEMを添加した。次に、細胞を37℃で72時間イン
キュベートした後、X−galで染色した。細胞を冷PBS中で1度洗浄し、1
5分間0.5%のグルタルアルデヒド−PBSに固定し、冷PBS中で1度洗浄
し、37℃で1晩X−galとともにインキュベートした。β−ガラクトシダー
ゼ遺伝子とともに形質導入されたコロニー(青いコロニー)の数を数え、力価を
、酵素形成単位(efu)/mlウイルス上清として表わした。ii.ファクターXaプロテアーゼによるウイルス上清の処理:プロテアーゼに よる感染力の遮断の反転
ろ過された上清のアリコート(1ml)を、4μg/mlのファクターXaプ
ロテアーゼ(New England Biolabs,UK)の存在下でまたは不在下で、37℃で
1時間、2.5mMのCaCl2とともにインキュベートした。インキュベーシ
ョン期間の終了時に、上清をNIH 3T3細胞またはHT 1080細胞に6
時間添加し、次いで上清を除去し、10%のFCS−DMEM中で洗浄し、維持
した後、上述と同じようにX−galで染色した。結果
:TNF−a−4070Aキメラ
TNF−a−4070Aベクターの、NIH3T3細胞およびHT1080細
胞における力価は低かった(表6)。このように感染力のレベルが低いのは、キ
メラエンベロープ発現のレベルが低いためであったかもしれない。しかし、これ
は、4070A−SUにおける三量体TNF−aの提示のためであったかもしれ
ない。三量体は、両種指向性ベクターの感染力を遮断できた。なお、この両種指
向性ベクターは、ヒトTNF−a受容体を保持しないネズミNIH 3T3細胞
においては強い感染力を持つはずである。
この三量体TNF−aによる感染力の遮断は、ファクターXaプロテアーゼを
添加し、TNF−a.X.Aベクター上のTNF−aリガンドを開裂させてしま
うことにより反転させることができ、4070A−SUは細胞に結合し細胞を感
染させるようになった。結果的に、ファクターXaプロテアーゼでの処理の後、
TNF−a.X.Aベクターの力価は、HT1080細胞およびNIH 3T3
細胞において、それぞれ4倍および60倍に増加した(表7)。
CD40L−4070Aキメラ
CD40L−4070Aキメラの感染力は、NIH 3T3、A431および
HT1080細胞において野生型の感染力よりも顕著に低く(表8)、エンベロ
ープにおけるCD40Lの提示がベクターの感染力を遮断することを示す。
ファクターXaプロテアーゼによるCD40L.X.Aの処理によって、ベク
ターの感染力は劇的に増加する(表9)。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 FI
C12Q 1/68 C12Q 1/68 A
// A61K 48/00 A61K 48/00
(C12N 15/09 ZNA
C12R 1:92)
(31)優先権主張番号 9604562.0
(32)優先日 1996年3月4日
(33)優先権主張国 イギリス(GB)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),AU,CA,JP,U
S
(72)発明者 モーリン,フランシス・ジョアン
イギリス、シィー・ビィ・1 4・ティ・
エイチ ケンブリッジ、ヒューラット・ロ
ード、19
(72)発明者 ニルソン,ボゥ・ハンス・カート
スウェーデン、エス−240 10 ダルビー、
ハラルド・ハインツ、ベー・11
(72)発明者 ペン,カー−ファイ
イギリス、シィ・ビィ・1 2・イー・テ
ィ ケンブリッジ、ハービィ・ロード、ハ
ウス・5
【要約の続き】