明 細 書
アルミニウムと窒化ゲイ素の接合体およびその
製造方法
技術分野
この発明は、 アルミ ニウムと窒化ゲイ素の接合体および その製造方法に関し、 特に機械部品として利用可能な摺動 特性に優れた、 アルミ ニウムを母材とする接合体およびそ の製造方法に関するものである。
背景技術
近年、 排ガス、 オゾン層破壊等の地球環境問題が注目さ れるようになり、 自動車等の内燃機関においては、 ェネル ギ効率の向上が急務となっている。 エネルギ効率を向上さ せる方法の 1 つとして、 内燃機関を構成する部品の軽量化 が検討されている。 すなわち、 従来は鉄基の金属で作製さ れていた部品をアルミ ニウム基の部品で置換えるこ とが検 討されている。
しかしながら、 アルミニウム基の材料は、 一般に摺動特 性の面で劣るため、 アルミニウム基の部品の一部分をより 耐摩耗性に優れたセラ ミ ツ タスで構成する必要がある。
セラ ミ ッ クスとしては、 表 1 に示すように、 多くの材料 が知られている。 アルミニウム基の材料の軽量という長所 を損なう こ となく、 摺動特性に優れ、 強度ゃ靭性等の機械 部品とじて必要な特性を備えた材料としては、 窒化ゲイ素 が最も有望である。 このため、 アルミニウム基の材料と窒
化ゲイ素系焼結体とを接合する方法が多方面で検討されて きた。
表 1
たとえば、 特開平 6— 1 7 2 0 5 2号公報には、 セラ ミ ッ クス部品とアルミニウム基の材料とを嵌合する方法が開 示されている。 このような機械的な接合方法によれば、 一 般的に接合強度が小さいため、 接合される部材が外部から の負荷によって剝がれるという問題がある。 また、 セラ ミ ッ クス部品とアルミニゥム基の材料との間の両者の熱膨張 係数 (ほとんどの場合、 セラ ミ ッ クスの方が小さい) の差 によって、 昇温時に、 その嵌合部に隙間が発生し、 剝がれ がさらに拡張されるとともに、 セラ ミ ッ クス部品がアルミ ニゥム基の材料に対してずれることになり、 位置精度を確 保することができなく なるという問題があった。
このような問題を解決するため、 セラ ミ ッ クスとアルミ
ニゥム基の材料の間に化学的な結合を形成するこ とが検討 された。 最も一般的なセラ ミ ッ クスと金属の接合方法とし ては、 セラ ミ ッ クスの表面を、 いわゆる M o— M n法によ り メタライズした後、 貴金属のろう材を用いてろう付する 方法、 あるいはメタライズを省略して、 貴金属ろう材にチ タン (T i ) 等の活性金属を添加してセラ ミ ッ クスとの反 応性を向上させた、 いわゆる活性金属ろう材によってろう 付する方法がある。 これらの方法は、 いずれも、 7 0 0 eC 以上の高温に加熱する必要があり、 融点の低いアルミニゥ 厶基の材料には適用するこ とはできない。 また、 さ らに低 温で溶融する、 いわゆるはんだによって接合するこ とも考 えられる。 しかしながら、 この方法によれば、 アルミニゥ ム基の材料の表面の強固な酸化皮膜を除去するこ とは困難 であり、 セラ ミ ッ クスとアルミニウム基の材料とを接合す るこ とは不可能であつた。
このような技術的な背景により、 たとえば、 特開昭 6 1 — 2 0 9 9 6 5号公報には、 窒化ゲイ素焼結体の表面に反 応性の高い金属 ( F e , C o , N i , P t など) を配置し て、 好ま しく は 1 2 0 0て以上の真空雰囲気中でメタライ ズした後、 アルミニウムまたはその合金と接触させてその 共晶温度以下で加熱して接合する方法が開示されている。 しかし、 このメタライズ工程が金属の塗布や真空中での高 温処理等の煩雑な処理を含むため、 この方法は製造コス ト の上昇に繫がるという問題点があった。
また、 金属表面の耐摩耗性を向上させる方法として、 c
V D法や P V D法によるセラ ミ ッ クコーティ ングが考えら れる。 しかしながら、 このような方法によれば、 コ ーティ ング層が剝餱するという問題や、 基材をアル ミ ニウム基の 材料にした場合には、 コーティ ング面の剛性が不足すると いう問題があった。
以上のように、 従来の技術によれば、 アルミニウムを主 成分とする母材または基材に窒化ゲイ素からなる部材を接 合するこ とは困難であった。
そこで、 この発明の目的は、 上述の問題点を解消すると ともに、 アルミニウムを主成分とする母材と窒化ケィ素系 焼結体からなる部材とが強固に接合された接合体を安価に 提供するこ とである。
発明の開示
この発明においては、 上記の課題を解決するために以下 の ( 1 ) 〜 ( 2 0 ) に示されるように、 アルミニウムと窒 化ケィ素の接合体と、 その製造方法が提供される。
( 1 ) 接合体は、 アルミニウムを主成分とする母材と、 その母材に実質的に直接接合された窒化ゲイ素系焼結体か らなる部材とを備える。
ここで、 「実質的」 とは、 アルミニウムを主成分とする 母材と窒化ゲイ素系焼結体からなる部材との間に稜極的に 介在層を導入しないこ とを意味する。 たとえば、 母材と部 材との間の界面には、 他の元素 (T i , N i , F eなど)
の被覆層、 またはそれらの扳材を介在させない。 また、 そ の界面には接着剤等が用いられない。 しかし、 窒化ゲイ素 系焼結体の熱処理によって生じる表面酸化層がその界面に 存在する場合は、 母材と部材とが実質的に直接接合したも のとみなす。
( 2 ) 母材は、 純アル ミ ニウム金属、 アル ミ ニウム合 金、 またはアルミニウム基の複合材料 (たとえば、 ゥイ ス 力で強化されたもの、 セラ ミ ッ クスを分散させたもの等) から構成される。
( 3 ) —方、 部材を構成する窒化ゲイ素系焼結体と し て、 本発明の接合体の用途によっては、 焼結体全体に窒素 (N) と結合していないシ リ コ ン (S i ) を含む焼結体を 用いてもよい。
( 4 ) アル ミ ニウムを主成分とする母材と窒化ゲイ素 系焼結体からなる部材とが実質的に直接接合された界面は、 主と してシ リ コ ン (S i ) と結合した酸素を含む層からな る o
( 5 ) 特に上記 ( 3 ) の窒化ゲイ素系焼結体を用いる 場合には、 シ リ コ ン (S i ) がアルミニゥム側に拡散する ため、 母材と部材との間の接合界面の近傍には、 シ リ コ ン ( S i ) あるいはシ リ コ ン (S i ) 化合物を含む層が形成 されている。
上記のような本発明の接合体を製造するためには以下の ような製造方法が採用される。
( 6 ) アルミニウムを主成分とする粉末状またはバル ク状の母材と、 窒化ゲイ素系焼結体からなる部材とを型内 に充塡し、 加圧下で加熱するこ とにより、 母材と部材とを 接合する。
( 7 ) 型は、 0以上 7 X 1 0 - 6 K— 1以下の熱膨張係数 を有するものが望ま しい。
熱膨張係数が 0のものには C— Cコ ンポジッ 卜がある。 この場合、 C 一 Cコンボジッ トは、 特定結晶方位では、 ほ とんど熱膨張係数が 0 になり、 この方向性を活かした型の 設計をするこ とが可能である。
( 8 ) 型は、 必要に応じて最終製品に近い形状を有す るのが望ま しい。
( 9 ) 型の素材としては、 通電による急速加熱が可能 な導電性を有する型を用いるのが望ま しい。
こ こで、 導電性とは、 主たる特性と して絶縁性を示さな いという こ とを意味し、 好ま しく は抵抗率が 1 0 3 Ω c m 以下である。
( 1 0 ) 以上のような型を用いて接合が行なわれるが、 接合の生産方式としては、 生産性を向上させるために多数 個の型を準備し、 同時に多数個の母材と部材の組の処理を 行ない、 型への供給、 接合、 取外しのサイクルを連続して 一定のタク トで行なうのが望ま しい。 また、 それらを状況 に応じて組合せるこ とも可能である。 すなわち、 複数個の 母材と部材の組を同時に処理するこ とが可能な接合用型ま
たは接合用治具を用いてもよい。
次に、 接合の加熱条件としては以下のものが望ま しい。
( 1 1 ) 加熱時間は、 その最高温度での保持時間を 1 0分以内とするのが望ま しい。
また、 加熱の温度と しては、 5 0 0〜 8 0 0 °Cとするの が好ま しい。
加熱方式と しては以下の方法が望ま しい。
( 1 2 ) プラズマを利用した加熱方法。
( 1 3 ) 誘導電流によって加熱する方法。
( 1 4 ) マイ クロ波によって加熱する方法。
( 1 5 ) また、 上記の ( 1 3 ) ( 1 4 ) の加熱手段を 採用する場合において、 特にアルミニウムを主成分とする 母材のみを加熱するのがより好ま しい。
以上述べた上記 ( 1 2 ) 〜 ( 1 4 ) の加熱手段では、 被 接合体の両方またはいずれかに通電し、 何らかの通電電流 を流すこ とによって加熱が行なわれる。
また、 上記 ( 1 ) 〜 ( 5 ) の接合体を製造するための別 の方法としては以下のものが挙げられる。
( 1 6 ) アルミニウムを主成分とする母材と、 窒化ケ ィ素系焼結体からなる部材とを接合用型または接合用治具 内に配置し、 熱間鍛造によって母材の焼結と、 母材と部材 との接合とを同時に行なう。
この場合のアルミニウムを主成分とする母材の型内への 供給形態としては、 粉末状または粉末成形体とする。 また、
鍛造の温度は、 5 5 0〜 6 5 0 °Cとするのが好ま しい。
さらに上記鍛造の他には以下の製造方法が挙げられる。
( 1 7 ) 窒化ゲイ素系焼結体からなる部材を接合用型 内または接合用治具内に配置し、 アルミニウムを主成分と する母材を溶湯の形態で接合用型内または接合用治具内に 供給し、 成形と接合を同時に行なう こ とも可能である。
以上、 上記 ( 1 ) 〜 ( 5 ) の接合体を製造するための方 法として、 まず、 上記 ( 6 ) の製造方法があり、 その手段 と して上記 ( 7 ) 〜 ( 1 5 ) のものがあり、 さ らに同様に 前記 ( 1 ) 〜 ( 5 ) の接合体を製造するための別の方法と して上記 ( 1 6 ) , ( 1 7 ) の方法がある。
本発明においては、 さ らに、 ( 6 ) , ( 1 6 ) , ( 1 7 ) の製造方法に供給される被接合体の窒化ゲイ素系焼結体か らなる部材としては、 上記 ( 3 ) のものとは別に以下のも のを用いるのが適切である。
( 1 8 ) 予め、 窒化ゲイ素系焼結体を 8 0 0 °C以上 1 2 0 0 eC以下の温度で加熱処理したものを用いる。
加熱処理の雰囲気は、 不活性ガス、 酸素ガスを含む雰囲 気、 または真空中とする。
( 1 9 ) この場合、 特に酸素を含む雰囲気で加熱処理 を行なうのが好ま しい。
( 2 0 ) 焼結後未加工の焼結肌を有する窒化ゲイ素系 焼結体を-そのまま用いる。
本発明の接合体では、 従来の同じ組合せの接合体とは異
なり、 上記 ( 1 ) で記載されたように、 アルミ二ゥムを主 成分とする母材と、 その母材に実質的に直接接合された窒 化ゲイ素系焼結体からなる部材とから構成される。 本発明 の接合体においては、 母材と部材とが直接接合されている ため、 介在層の準備や、 その介在層を挿入する作業等を省 略するこ とができ、 製造コス トの低減を図るこ とができる。 また、 母材と部材とが直接接合されているので、 介在層に よって生じる接合界面での母材と部材の特性の劣化や、 界 面での接合欠陷の発生が回避され得る。 したがって、 本発 明の接合体によれば、 より信頼性の高いアルミニウムと窒 化ゲイ素の複合体を提供するこ とができる。
接合される母材の材料としては、 用途や使用条件の変化 に応じて、 種々のものが挙げられる。 その中でも、 アルミ 二ゥムを主成分とする材料と して、 上記 ( 2 ) で記載され たように、 純アルミニウム金属、 アルミニウム合金または アルミニウム基の複合材料が主に用いられる。
この中で、 特にアル ミ ニウム基の複合材料を用いる理由 は以下のように列挙される。
たとえば、 シリ コ ン ( S i ) を含有するァルミ二ゥ厶基 の複合材料は、 より高い剛性、 耐摩耗性を必要とする場合 に用いられる。 また、 金属またはセラ ミ ッ クスのウイ スカ を分散させたアルミニウム基の複合材料は、 より高い強度、 靭性を必要とする場合に用いられる。 さらに、 セラ ミ ッ ク ス硬質粒子を分散させたアル ミ ニウム基の複合材料は、 耐
摩耗性を必要とする場合に用いられる。
母材は、 溶製材や粉末冶金法で製造された材料が用いら れる。 このような母材の製造方法の選択は、 用途や使用条 件の変化に応じて適宜なされる。
本発明の接合体において部材を構成する窒化ゲイ素系焼 結体も、 用途に応じて適宜選択され得る。
まず、 接合強度を高めるために、 上記 ( 3 ) に記載され るように、 焼結体全体が窒素 (N) と結合していないシ リ コ ン (S i ) を一部含む、 いわゆるシ リ コ ンを主体とする 原料から窒化反応焼結して得られた窒化ゲイ素系焼結体を 用レ、る。
このよ う な窒化ゲイ素系焼結体を用いると、 上記 ( 5 ) に記載されるように、 母材と部材の加圧加熱接合によって 接合界面の近傍にシ リ コ ン (S i ) またはシ リ コ ン (S i ) 化合物を含む層が形成される。 これにより、 接合界面の 接合強度が向上する。 後述の実施例 7で説明されるように、 第 3図にその場合の断面の元素分析結果の一例が示されて いる。
また、 接合強度を高めるためには、 上記 ( 4 ) に記載さ れるように、 接合界面が、 主としてシ リ コ ン (S i ) と結 合した酸素 (0) を含む層から形成されてもよい。 こ の場 合、 アルミニウムを主成分とする母材側、 または窒化ゲイ 素系焼結体からなる部材側の界面となる部分に酸素が存在 すれば、 後述の実施例 3で説明される第 2図の断面の元素
分析結果のように、 接合界面に酸素が局在するこ とがわか る。 これにより、 接合界面の接合強度が向上する。
第 2図で示されるように、 酸素が局在する接合界面が形 成されるのは、 アルミニウムを主成分とする母材側の表面 からの酸素供給に起因することも考えられるが、 窒化ゲイ 素系焼結体からなる部材の表面から酸素が供給されること によるものが優先的である。
上述のように、 窒化反応焼結して得られた窒化ゲイ素系 焼結体を母材と して用いた場合、 それ以外の窒化ゲイ素系 焼結体を用いる場合に比べて、 シ リ コ ンまたはシ リ コ ン化 合物を含む拡散層が接合界面に形成されるため、 接合強度 はより高く なる。
しかしながら、 このような反応焼結した窒化ゲイ素系焼 結体では、 現在、 通常のもので 6 0 O M P a程度の曲げ強 度のものしか得られない。 そのため、 これ以上の曲げ強度 'を必要とする部材と して用いる場合には、 たとえ接合強度 が高くても、 本発明の接合体を利用するこ とができないと いう制約が存在する。
そこで、 高い強度が要求される用途では、 窒素と未結合 のシ リ コ ンを含まない窒化ゲイ素系焼結体が本発明の接合 体の部材に用いられる。 特に高い耐摩耗性、 曲げ強度、 疲 労特性を必要とする過酷な条件下で用いられる部材として 利用する—場合には、 少なく とも 1 2 0 0 M P a以上の常温 曲げ強度を有する窒化ゲイ素系焼結体を用いるこ とが望ま
しい。
次に、 本発明の接合体の製造方法について述べる。
上記 ( 6 ) に記載されるように、 アル ミ ニウムを主成分 とする母材と窒化ゲイ素系焼結体からなる部材とを型内に 充塡し、 加圧下で加熱するこ とによ り、 両者が接合される。
アルミ ニウムを主成分とする母材を形成する素材は、 粉 末状でもよ く、 バルク状でもよい。 この選択は、 母材を構 成する材料の種類によって最も適した安価な供給形態を考 慮すればよい。
たとえば、 母材を構成する材料が溶製材であれば、 バル ク状のものが用いられる。 シ リ コ ンの含有量が 2 0重量% 以上のアルミニウムー シ リ コ ン合金を母材として用いる場 合には、 ア トマイズ粉末の形態で準備する方が経済的に有 利である。 また、 ゥイ ス力が分散されたアルミニウム基の 複合材料や、 硬質セラ ミ ッ クスの粒子を分散したアル ミ二 ゥム基の複合材料を母材の材料として用いる場合には、 そ れぞれの原料粉末を供給して接合と同時に焼結してもよく、 予めバルク状のものを形成した後、 型内に供給してもよい。
窒化ゲイ素系焼結体は、 予め接合用の型に配置し、 その 後、 型内に以上のいずれかの形態でアルミニウムを主成分 とする母材を充填し、 所望の形状と用途を考慮した特性を 有する接合体が得られる条件下で加圧加熱処理し、 母材と 部材を接合する。
本発明の製造方法で用いられる型としては、 上記 ( 7 )
で記載されるように、 型の熱膨張係数は 0以上 7 X I 0 一6 K—1のものが望ま しい。 熱膨張係数が 0未満 (すなわち負) の型を用いると、 加熱時に窒化ゲイ素系焼結体が膨張する こ とにより、 型が破損するおそれがある。 また、 型の熱膨 張係数が 7 x 1 0 _ « Κ— 1を超えると、 接合後、 冷却したと きに型が収縮するこ とにより、 接合体の取外しが困難とな つたり、 型が接合体の取外しによって損傷する。
さ らに、 型の形状と しては、 上記の ( 8 ) に記載された ように、 最終製品の形状に近い形状のものを用いるこ とに より、 後加工での加工代を減らすこ とができ、 製造歩留り を向上させるこ とができる。 また、 用途によっては、 製造 された接合体の寸法精度が所望の範囲内であれば、 後加工 を省略するこ とができる。
型が導電性を有するこ とは、 加熱方式によっては必ずし も必須条件ではない。 たとえば、 型の外周から加熱する外 熱式では、 別に導電性 (たとえば、 抵抗率が 1 0 3 Ω c m 以下の半導体または導体) のものを用いる必要はない。 外 熱式では、 型の導電性如何にかかわらず、 窒化ゲイ素系焼 結体からなる部材とアルミニウムを主成分とする母材とが 直接接合されて、 所定の接合強度を有する接合体を得るこ とができる。
また、 加熱時間についても、 同様に母材と部材とが直接 接合されて所定の接合強度が得られれば、 必ずしも制約さ れるものではない。
しかしながら、 本発明の接合体を高い効率でかつ安価に 生産するより好ま しい方法としては、 上記の ( 1 2 ) 〜 ( 1 4 ) に記載されたプラズマ加熱、 誘導電流加熱、 マイ ク 口波加熱のいずれかの方式によって、 上記の ( 1 1 ) で記 載された最高温度における保持時間が 1 0分以内の接合方 法、 すなわち生産性の高い製造方法を行なうためには、 上 記の ( 9 ) に記載された導電性を有する接合用の型を用い るこ とが必要となる。
また、 本発明の接合体の製造方法においては、 高い生産 性を得るために、 上記の ( 1 0 ) に記載されるように、 量 産生産システムを接合リ ー ドタイムに合せ、 また前後のェ 程との接続において適宜コ ン トロールして採用するこ とが 好ま しい。 特に、 導電性の型を用い、 プラズマ加熱、 誘導 加熱、 マイ クロ波加熱のいずれかの高い効率の加熱手段を 採用すれば、 最高温度での保持時間が 1 0分以内の条件で も、 上記の生産システムを構成するこ とは可能である。 加熱温度は 5 0 0て以上 8 0 0 eC以下であるのが好ま し い。 5 0 0て未満では、 加熱されるアル ミ ニウムを主成分 とする母材の形状加工が困難であるからである。 また、 ァ ルミ二ゥ厶の溶融温度以上で 8 0 0 °Cを超えると、 アルミ 二ゥムが揮発し、 母材の変質または欠陥が生じるからであ o
導電性の型を用いて、 1 0分以内の加熱保持時間で接合 体を製造する場合には、 加熱手段としては上記の ( 1 2 )
〜 ( 1 4 ) の方式を採用する こ とができる。
プラズマ加熱では、 通電によって接合界面でプラズマが 発生し、 その表面の清浄化が行なわれる。 これにより、 緻 密なシリ コ ンの拡散層や酸素の局在層を短時間で形成する こ とができる。
誘導加熱では、 型の種類を選択するこ とにより、 型全体 の加熱、 被接合材のみの加熱のいずれも可能である。 誘導 加熱においても、 プラズマ加熱と同様に緻密な接合界面を 短時間で形成することができる。
マイ クロ波加熱も誘導加熱と同様の効果を達成するこ と ができる。
以上の加熱方式において、 上記の ( 1 5 ) で記載された ように、 導電性の被接合部であるアル ミ ニウムを主成分と する母材のみを加熱するのが好ま しい。 このような加熱に よれば、 熱効率がよ く、 より急速な加熱を行なう ことがで きる。
以上に記載された製造方法は、 接合用型内に部材と母材 を配置して、 加熱加圧する方法であるが、 その応用手段と して、 上記の ( 1 6 ) で記載されるように、 熱間鍛造によ つて接合することもできる。 この場合の鍛造温度は 5 5 0 て以上 6 5 0 °C以下とするのが望ま しい。 5 5 0 °C未満で は、 アル ミ ニウムを主成分とする母材自体の塑性変形によ る緻密化が困難である。 6 5 0 °Cを超えると、 アルミニゥ ムを主成分とする母材の軟化が激しくなり、 形状の精度が
劣化する。
さ らに、 上述の製造方法以外に、 上記の ( 1 7 ) で記載 されたように、 窒化ゲイ素系焼結体を接合用型内または接 合用治具内に配置し、 アルミニウムを主成分とする部材を 溶湯の形態で供給して铸込み、 接合と同時に成形する方法 を採用 してもよい。 この場合には、 上述の種々の窒化ケィ 素系焼結体、 または予め前処理をした窒化ケィ素系焼結体 を用いるこ とにより、 铸込みの保持時間、 冷却時間を適宜 制御する。 それにより、 接合界面においてアルミニウムを 主成分とする母材と窒化ゲイ素系焼結体が直接接合した接 合体を得るこ とができる。
さ らに、 本発明の接合体の接合界面の強度を向上させる ためには、 予め、 以下の処理が窒化ゲイ素系焼結体になさ れる。
上記の ( 1 8 ) で記載されたように、 窒化ゲイ素系焼結 体からなる部材をアルミニウムを主成分とする母材に接合 する前に、 窒化ゲイ素系焼結体を 8 0 0 eC以上 1 2 0 0 "C 以下で加熱処理し、 その表面を予め改質する。
本発明の接合体においては、 その接合界面には上述のよ うに少なく とも酸素が局在する層が形成されている。 この 酸素成分は、 上述のようにアルミニウムを主成分とする母 材側の表面から供給されるものもあるが、 その大部分は窒 化ゲイ素系焼結体からなる部材側の表面から供給されるも のである。 この酸素局在層の酸素量を十分確保するための
手段と して、 上記 ( 1 8 ) に記載された熱処理を行なう。 この熱処理を行なう と、 未処理のものより も接合強度は 改善され得る。 これは、 その処理によって表面に酸化物を 主成分とする焼結助剤の成分が窒化ケィ素系焼結体の接合 表面に浮上し、 酸素成分に富む表面が形成されるからであ る
さ らに、 上記の ( 1 9 ) に記載されたように、 その加熱 処理の雰囲気を酸素含有雰囲気にするこ とにより、 接合界 面の表面に積極的に二酸化シ リ コ ン ( S i 0 2 ) を形成す るこ とができる。
上記の加熱処理において温度を 8 0 0 °C以上 1 2 0 0 °C 以下とするのは、 8 0 0 °C未満では窒化ゲイ素の酸化が進 まず、 1 2 0 0てを超えると窒化ゲイ素の表面酸化が進み すぎ、 窒化ゲイ素の特性が劣化するからである。
また、 上記の ( 2 0 ) に記載されたように、 窒化ゲイ素 系焼結体からなる部材の接合前の状態として、 接合面を加 ェ仕上げする方法もあるが、 焼結体の表面を敢えて加工仕 上げする必要のない場合には、 焼結肌のまま (未加工のま ま) にして部材を準備してもよい。 これにより、 製造コス トを低く抑えるこ とができる。 この焼結肌を有する窒化ケ ィ素系焼結体に予め、 上記の ( 1 8 ) または ( 1 9 ) に記 載の熱処理を施してもよい。
図面の簡単な説明
第 1 図は、 この発明の実施例で用いられる接合用型の一
例を示す断面図である。
第 2図は、 この発明の接合体における接合界面の元素分 布の分析結果を示す図である。
第 3図は、 この発明の別の実施例の接合体における接合 界面での元素分布の分析結果を示す図である。
第 4図は、 この発明の接合体を製造するために用いられ る型の別の実施例を示す断面図である。
第 5図は、 第 4図で示される接合用型を用いて得られた 接合体を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施例を説明するが、 本発明はこれらの 実施例によって何ら制限されるものではない。
実施例 1
6 m m X 6 mm x 3 mmの直方体からなる窒化ゲイ素焼 結体と、 純度 9 9 %のアル ミ ニウム粉末とを、 第 1 図に示 すように力一ボン製の型にセッ ト した。 6 ΙΏ Π Χ 6 ΙΏ ΙΏの 正方形の面を接合面とした。 窒化ゲイ素焼結体は、 焼結助 剤として 5重量%OY 2 03 — 3重量%の八 1 2 03 が添 加されて製造されたものが用いられた。 窒化ゲイ素焼結体 の常温における曲げ強度は、 1 3 0 0 M P a ( J I S R 1 6 0 1 に準拠した 3点曲げ強度) であった。 窒化ゲイ素焼 結体の表面は研削加工された。
窒化ケィ素焼結体とアル ミ ニウム粉末は第 1 図に示され るように充塡された。 型 4の中に配置された型 3の上に窒
化ゲイ素焼結体 1 がセッ トされた。 この窒化ゲイ素系焼結 体 1 の上にアルミニウム粉末 2が充塡された。 アルミニゥ 厶粉末 2の上に杵 5が置かれた。
アルミニウム粉末の型内の充填高さは 1 8 m mであった。 このカーボン製の型を、 機械的な加圧とパルス状の電流に よる急速加熱が可能な炉内に設置し、 真空中、 荷重 2 0 0 k gを印加しながら、 6 7 0 °Cに加熱し、 2分間保持した。 なお、 昇温時間は 4分、 冷却時間は 1 5分であった。 また、 パルス状の電流はプラズマを発生するために用いた。 カー ボン製の型とカーボン製の杵との間の隙間には、 若干、 溶 融したと推定されるアルミニウムがみられたが、 ほとんど . のアル ミ ニウムは残留し、 窒化ゲイ素とアル ミ ニウムの接 合体が得られた。
接合体の側面を研削加工して、 側面に付着しているアル ミニゥムを除去し、 せん断強度測定用の試験片を作製した。 接合体には、 接合時によ くみられる熱応力に起因するクラ ッ クはみられなかった。
この接合体のアルミニウムの部分を固定してせん断強度 を測定したところ、 2 1 0 M P aであり、 良好な接合が形 成されるこ とが判明した。
実施例 2
実施例 1 において、 アルミニウム粉末の代わりに一辺 6 m mの立方体のアルミニウムバルク (純度 9 9 % ) を用い た他は、 実施例 1 と同様の方法で接合と評価を行なった。
同様に良好な接合体が得られ、 そのせん断強度は 1 7 0 M P aであった。
実施例 3
実施例 1 において、 研削加工後の窒化ゲイ素焼結体の試 料を表 2に示す条件 (雰囲気、 温度) で 1 時間加熱処理し、 実施例 1 と同様の条件で接合と評価を行ない、 表 2に示さ れる結果を得た。 なお、 真空雰囲気の圧力は 1 0— 2 t o r rであり、 それ以外のガスはすべて 1 気圧とした。
表 2
また、 大気中、 1 0 0 0 °cで加熱処理した窒化ゲイ素焼 結体を用いた接合体を接合面に垂直に切断し、 E P MAを 用いて接合面近傍の元素の分布状況を調べた。 その結果は 第 2図に示される。 第 2図に示すように、 接合界面に酸素 濃度
の高い層が存在するこ とが判明した。
実施例 4
実施例 1 で用いた、 研削加工した窒化ゲイ素焼結体の代 わりに、 この焼結体を大気中で 1 0 0 0 で 1 時間加熱処 理した試料を用い、 純度 9 9 %のアルミニウム粉末の代わ りに、 シ リ コ ンを 2 0重量%含有する急冷凝固アルミニゥ ム合金粉末を用いた。 接合条件は、 表 3に示される条件で 行なわれた。 このようにして得られた窒化ゲイ素とアルミ ニゥム合金の接合体の評価結果は、 表 3 に併わせて示され ている。
表 3
実施例 5
実施例 4 において、 加熱処理した窒化ケィ素焼結体の代 わりに、 焼結後処理していない試料を用いて実施例 1 と同 様の条件で接合と評価を行なった。 良好な接合体が得られ、 その接合強度は 1 8 O M P aであった。
実施例 6
実施例 4で用いた加熱処理した窒化ゲイ素焼結体とアル ミニゥム合金粉末を表 4 に示される材質の型にセッ 卜 した。 表 4 に示す加熱方法 · 接合条件 (温度、 印加荷重) で接合
し、 その評価を行なった。 その評価結果は表 4 に示されて いる。 なお、 型と試料の付着を防止するため、 試料を充塡 する前に型の内壁にカーボン製のシー トを巻いた。
表 4
表 4で示される型材質と加熱方法の組合せのうち、 窒化 ゲイ素製の型を誘導炉中で使用した場合には、 アルミニゥ ムの誘導加熱で加熱が行なわれたものと推定される。 また、 熱膨張係数の高い鋼製の型を使用した場合には、 冷却後の 収縮によって接合体を取出すのが困難であった。
実施例 7
実施例 1 における窒化ゲイ素焼結体の代わりに、 窒素と 結合していないシ リ コンを 2重量%含む窒化ゲイ素焼結体 (焼結体の曲げ強度は 5 5 0 M P a ) を用い、 実施例 1 と 同じ条件で接合体を作製した。 ただし、 熱応力の緩和に配 慮して、 冷却時間を 1 時間と した。 得られた接合体にはク ラ ッ クは観察されず、 その接合強度は 2 1 O M P aであつ
得られた接合体の試料を、 接合面に垂直に切断し、 接合 面近傍の元素分布を測定した。 第 3図に示すように、 アル ミニゥム側にシリ コンが徐々 に拡散した領域がみられ、 そ れが接合強度の向上に寄与したものと推定される。
実施例 8
実施例 3で用いた、 大気中 1 0 0 0でで 1 時間加熱処理 した窒化ゲイ素焼結体と、 純度 9 9 %のアルミニウム粉末 を、 第 1 図に示すように、 アルミ ナ製の型にセッ ト した。 なお、 型と試料との付着を防ぐため、 カーボンシー トを型 と試料の間に介在させた。 この型を、 カーボンヒータ (外 熱式) を有する、 いわゆるホッ トプレス炉内に設置し、 真 空中で 2 0 0 k gの荷重を印加しながら 6 6 0 °Cに加熱した 。 昇温に要した時間は 3 0分であった。 保持時間は 5分、 2 0分、 6 0分とした。 冷却後、 クラ ッ ク等の欠陥のない 接合体が得られた。 実施例 1 と同様のせん断強度を測定し た結果、 それぞれ、 保持時間に対して、 3 1 0 M P a、 2 0 0 M P a、 1 5 0 M P aであった。
実施例 9
実施例 1 で用いた窒化ゲイ素焼結体と同じ素材を、 直径 2 5 mm厚み 3 mmの形状に研削加工した後、 大気中 9 0
0 °Cで 1 時間加熱処理した窒化ゲイ素焼結体の試料と、 シ リ コンを 2 5重量%含有した急冷凝固アルミニウム合金粉 末とを、 第 4図に示されるようにセッ ト した。 第 4図に示 されるように、 凸形状の力一ボン製の杵 6を用いて 5 ト ン
の荷重を印加しながら、 アルゴン雰囲気中でパルス状電流 によって加熱し、 2分間保持した。 保持温度は、 6 2 0 °C と 6 8 0 °Cとした。
いずれの保持温度においても、 第 5図に示される形状の 接合体が得られた。 第 5図に示すように、 アル ミ ニウム合 金 7が窒化ゲイ素焼結体 1 に接合されている。 接合体にク ラ ッ ク等の欠陥はみられなかった。
実施例 1 0
実施例 9 と同じ形状の試料を同時に 3個セッ 卜するこ と が可能な、 孔の 3箇所開いたカーボン製の型を用いて、 同 一形状のカーボン製の杵 3個で同時に接合を行なった。 印 加荷重を 1 5 ト ンとした他は、 実施例 9 と同じ接合条件で あった。 良好な接合体が 3個、 同時に得られた。
実施例 1 1
実施例 1 で用いた窒化ゲイ素焼結体と同じ素材を、 1 5 m m 1 5 m m x 3 m mの直方体に研削加工した後、 大気 中 9 0 0てで 1 時間加熱処理した窒化ゲイ素焼結体の試料 を、 自動車エンジンのロ ッ カーアーム形状のカーボン製の 型内にセッ 卜 した。 型を 3 0 0てに予熱した後、 型の上部 から、 シ リ コ ンを 1 5重量%含むアル ミ ニウム合金の溶湯 を流し込み、 凝固するまで 5気圧で加圧した。 型を分解し て試料を取出したところ、 摺動部に窒化ゲイ素焼結体が接 合された一口 ッカーアームが得られた。 同じ方法で、 実施例 1 と同形状の試料を作製し、 せん断強度を測定したところ、
3 2 O M P aであった。
得られた口 ッカーアームを用いてエン ジ ン回転試験を行 なった。 煤を混入させた潤滑油を用いて高速回転による加 速試験を 1 2 0時間実施した。 試験後のロ ッカーアームに は接合部やその他の部分に破損は観察されなかった。 また、 摺動面の摩耗量は、 であった。 現在、 主として用い られている、 摺動面を焼結合金 ( C r 一 M o鋼) で形成し たロ ッカーアームでは、 上記と同じ条件で 1 5 0 z mの摩 耗量が観測されている。 したがって、 本発明の接合体から 形成されたロ ッカーアームによれば、 大幅に耐摩耗性が向 上することがわかる。
実施例 1 2
実施例 9で用いた窒化ゲイ素焼結体と、 シ リ コ ンを 2 5 重量%含有する急冷凝固アル ミ ニウム合金粉末成形体 (相 対密度 6 5 %、 高さ 2 0 mm ) を、 第 1 図に示すように鋼 製の鍛造の型にセッ 卜 した。 温度 5 8 0 °C, 荷重 4 0 ト ン で鍛造したところ、 良好な接合体が得られた。
実施例 1 3
実施例 9で用いた窒化ゲイ素焼結体と、 表 5 に示される アル ミ ニウム基の複合材料を、 第 1 図に示されるように炭 化ゲイ素製の型にセッ 卜 し、 真空中で 1 0 ト ンの荷重を印 加しながら、 パルス状電流によって 6 1 0 °Cまで加熱し、 5分間保持した。 アルミニウム基の複合材料は直径 2 5 mm 、 厚み 6 mmの寸法形状を有するものを型にセッ ト した。
表 5 に示されるいずれのアルミニウム基の複合材料を用い ても、 良好な接合体が得られた。 得られた接合体から、 断 面形状が 6 m m X 6 m mの試料を切出し、 せん断強度を測 定したところ、 表 5 に示される結果を得た。
表 5
産業上の利用可能性
以上のように、 この発明によれば、 アルミニウムと窒化 ケィ素とが強固に接合された接合体を安価に提供するこ と ができるので、 この発明は自動車等の内燃機関の機械部品 と して軽量の摺動特性に優れた部品およびその製造に有利 に適用することができる。