JP2004257431A - ディスクブレーキ - Google Patents
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Abstract
【課題】パッドとシムの間に介在されたグリースが流れ出ることを防止するための構造が容易な構造によって形成されるディスクブレーキを提供する。
【解決手段】裏板21を有するパッド2と、パッド2をディスクロータへ押し付ける押圧部材と、パッド2の裏板21と押圧部材の間に介装されたシム4とを有し、シム4と裏板21の間にグリース7が介在されたディスクブレーキである。シム4は、裏板21側に設けられる第一シム5と、押圧部材側に設けられる第二シム6とを積層状に有し、第一シム5には、グリース7が介在させられるスリット状または貫通穴状に形成された貯留部50が形成されている。そして貯留部50は、温度20〜200℃においてグリース7が表面張力を利用して貯留部50の開口部全面を覆い張ることで貯留部50に貯留される形態になっている。
【選択図】 図4
【解決手段】裏板21を有するパッド2と、パッド2をディスクロータへ押し付ける押圧部材と、パッド2の裏板21と押圧部材の間に介装されたシム4とを有し、シム4と裏板21の間にグリース7が介在されたディスクブレーキである。シム4は、裏板21側に設けられる第一シム5と、押圧部材側に設けられる第二シム6とを積層状に有し、第一シム5には、グリース7が介在させられるスリット状または貫通穴状に形成された貯留部50が形成されている。そして貯留部50は、温度20〜200℃においてグリース7が表面張力を利用して貯留部50の開口部全面を覆い張ることで貯留部50に貯留される形態になっている。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ディスクブレーキに関し、とりわけパッドと、パッドをディスクロータに押し付ける押圧部材と、パッドと押圧部材の間に介装されたシムとを有するディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスクブレーキは、従来、様々な鳴き対策がなされており、例えば下記の特許文献1に示すディスクブレーキが知られていた。
特許文献1によると、ディスクブレーキは、裏板を有するパッドと、パッドをディスクブレーキに押圧する押圧部材と、パッドの裏板と押圧部材の間に介装されたシムを有していた。またシムと裏板の間には、ブレーキの鳴きを防止するためにグリースが介在させられていた。
また裏板の裏面には、裏板の外周に沿って環状に形成されたシール部材が取付けられていた。(なおシール部材は、特許文献1の図3の42の部材である)。そしてシール部材は、裏板とシムによって挟まれ、シール部材の環状内側においてグリースを保持し、これによってグリースがシムと裏板の間から流れ落ちることが防止されていた。
【0003】
【特許文献1】
実開平3−32224号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし特許文献1にかかるディスクブレーキは、上記のように環状のシール部材が必要であって、部品コストおよび組付コストが高くなる傾向にあった。
また環状のシール部材は、弾性変形に富む材料から形成されており、パッドを押圧部材によって押圧することで弾性変形していた。そのため環状のシール部材は、ブレーキの加圧方向と同じ方向に弾性変形し、ブレーキ制動時のフィーリングを悪化させる傾向にあった。
そこで本発明は、パッドとシムの間に介在されたグリースが流れ出ることを防止するための構造が容易な構造によって形成されるディスクブレーキを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明は、上記各請求項に記載の通りの構成を備えるディスクブレーキであることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によると、シムは、裏板側に設けられる第一シムと、押圧部材側に設けられる第二シムとを積層状に有し、第一シムには、グリースが介在させられるスリット状または貫通穴状に形成された貯留部が形成されている。そして貯留部は、温度20〜200℃においてグリースが表面張力を利用して貯留部の開口部全面を覆い張ることで貯留部に貯留される形態になっている。
【0006】
ところで従前のシムも、グリースを介在させるためにスリット状または貫通穴状に形成された貯留部を有しているものが知られていた(例えば、特許文献1)。しかし従前の貯留部は、多くのグリースを介在させるためにスリット幅または貫通穴を大きくする傾向にあった。そのためグリースが高温(200℃)になった場合には、グリースの粘度が低くなり、グリースが貯留部から流出しやすく、そのためにシール部材を必要としていた。
これに対して本発明は、貯留部が温度20℃(常温)〜200℃(高温)におけるグリースをグリースの表面張力を利用して貯留する。
したがって貯留部は、200℃の高温になった場合においてもグリースを貯留することができ、グリースの流出を防止する。そしてその構造は、特許文献1のようにシール部材を設けることなく形成されるため、容易に形成され得る。またシール部材のようにブレーキ制動時のフィーリングを悪化させることなく構成され得る。
【0007】
なお本発明は、貯留部が温度20〜200℃におけるグリースを貯留する形態であればよく、貯留部がさらに温度20℃以下におけるグリースを貯留しても構わないし、温度200℃以上におけるグリースを貯留しても構わない。
また本発明は、高温(200℃)のグリースの表面張力を考慮して貯留部が形成されている。しかし従前の貯留部は、グリースの表面張力を積極的に利用するという考えの基に設計されてはいなかった。
また本発明は、貯留部がグリースの表面張力を利用してグリースを貯留する。しかし従前の貯留部は、高温になった際にグリースが貯留部の開口部を覆い張らず、表面張力を十分に利用できなかった。そのため本発明は、表面張力を十分利用できない従前の形態に対して予測を越えた顕著な効果を生じている。
【0008】
請求項2に記載の発明によると、貯留部は、スリット幅または穴径が0.5〜2.0mmである。
実験の結果、20〜200℃におけるグリースを効果的に貯留する貯留部の形態は、スリット幅が0.5〜2.0mm、あるいは穴径が0.5〜2.0mmにおいて特に優れていることがわかった。すなわち貯留部のスリット幅、または穴径が0.5mmよりも小さい場合は、グリースが貯留部に入りにくく、グリースの多くが第一シムとパッドの裏板の間に保持され、そのためにグリースが貯留部に留まらず、貯留部から容易に流出していると考えられる。
またスリット幅または穴径が2.0mmよりも大きい場合は、グリースが高温(200℃)において粘性が低くなって、グリースが貯留部から流出していると考えられる。
かくして本発明によると貯留部は、20〜200℃のグリースを貯留でき、高温(200℃)においてもグリースを安定よく貯留できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
実施の形態1を図1〜5にしたがって説明する。
ディスクブレーキ1は、図1に示すようにディスクロータ10に押し付けられる一対のパッド2と、シリンダ30を備えるキャリパ3と、パッド2とキャリパ3を支持するマウンティングを備える(図への記載は省略)。
【0010】
キャリパ3は、スライドピンなどを備えるスライド部材を介してマウンティングにスライド可能に取付けられ、ディスクロータ10の軸心と平行方向にスライド可能に支持される。
またキャリパ3は、図1に示すように車両の車幅のインナ側にシリンダ30を備える。そしてシリンダ30内に、ピストン31が設けられている。ピストン31は、ブレーキペダルの踏込み力に応じてディスクロータ10の軸心と平行方向に移動し、インナ側のパッド2をディスクロータ10に押圧する。
【0011】
またキャリパ3は、図1に示すようにアウタ側のパッド2に当接する爪部32を備える。爪部32は、キャリパ3本体とともにマウンティングに対して移動することで、アウタ側のパッド2をディスクロータ10へ押圧する。したがって一対のパッド2は、ピストン31と爪部32によってディスクロータ10に押し付けられる。
なおピストン31と爪部32は、請求項に記載の押付部材に相当する。
【0012】
パッド2は、図1に示すようにディスクロータ10に押圧されてディスクロータ10の表面を摺動することで摩擦力を生ずる摩擦材20と、摩擦材20の裏面を支持する裏板21を備える。
裏板21は、図2に示すように上下両端(ディスクロータ10の周方向両端)に、上下両端から突出するガイド部21a(耳部)を有する。そしてマウンティングがガイド部21aを移動可能に案内支持する。したがってパッド2は、ガイド部21aを介してマウンティングに支持され、ガイド部21aに案内されてディスクロータ10の軸芯と平行な方向に移動する。
【0013】
またパッド2の裏側には、図2に示すように金属板から形成されたシム4が取付けられている。そしてシム4は、振動減衰効果によりブレーキの鳴きを抑える効果を奏する。
インナ側のパッド2の裏側に取付けられたシム4は、図1に示すように裏板21とピストン31の間に介装される。そしてアウタ側のパッド2の裏側に設けられるシム4は、裏板21と爪部32の間に介装される。
そしてシム4とパッド2の間には、ブレーキの鳴きを防止するためにグリースが介在させられる。
【0014】
なおシム4は、図2に示すように裏板21の裏面とほぼ同じ形状を有する第一シム5と第二シム6から成っている。そして第一シム5は、裏板21の裏面を覆い、第二シム6は、第一シム5の裏面を覆う。
第二シム6は、一体に設けられた複数の係合爪60を有する。そして係合爪60は、第二シム6と裏板21の間に第一シム5を挟んだ状態で裏板21に係合される。したがって第一シム5と第二シム6は、積層状に裏板21に取付けられ、第一シム5が図1に示すように裏板21側に設けられ、第二シム6がピストン31または爪部32側に設けられる。
【0015】
第一シム5は、図3に示すようにグリースを介在させられる貯留部50を複数有する。貯留部50は、スリット状に形成され、所定のスリット幅50aと、所定の延出長さ50bを有し、第一シム5を厚み方向に貫通する。貯留部50は、第一シム5の短手方向に延出しており、ディスクロータ10の周方向に対して直行方向、すなわちディスクロータ10の径方向に延出する。
したがってパッド2がディスクロータ10によって周方向にずれ、グリースがパッド2によって周方向にずれた場合であっても、貯留部50がグリースのずれる方向と直行する方向に延出しているため、貯留部50は、グリースを効率良く保持する。
【0016】
貯留部50のスリット幅50aは、グリースを効率良く貯留するために0.5〜2.0mmに形成されている。そして貯留部50には、図4に示すようにグリース7が介在されており、グリース7が貯留部50内に貯留されている。
貯留部50は、20〜200℃においてにグリース7がパッド2側の開口部全面を覆い張る構造になっている。そしてグリース7は、表面張力を利用して貯留部50の開口部全面を覆う。またディスクブレーキが過酷な条件において利用された場合には、パッド2近傍が200℃近くに達すると考えられているが、グリース7は、その高温(200℃)状態においても表面張力を利用して貯留部50の開口部全面を覆う。そのため貯留部50は、少なくとも20〜200℃におけるグリース7をグリース7の表面張力を利用して貯留する。
【0017】
すなわちスリット幅50aは、グリース7が自重によって裏板21と第一シム5の間から流出してしまうことを防止するために、グリース7の自重と表面張力(濡れ)から決定されている。とりわけ高温(200℃)におけるグリース7の自重と表面張力(濡れ)から決定されている。
さらにグリース7は、毛細管現象によって貯留部50内に入り込んでいる。
【0018】
ところで従前の第一シム105は、図4に示す貯留部50に代えて図7に示す貯留部100を有する。貯留部100は、スリット幅100aが約3〜4mmであって、グリース7の温度が高くなると除々にグリース7の粘性が下がり、図7に示すように裏板21と第一シム105の間から流出しやすくなる。
そしてさらに温度が上昇して約200℃に達した場合には、図8に示すようにグリース7の粘性がさらに低くなり、グリース7が表面張力を利用できず、裏板21と第一シム105の間からさらに流出しやすくなる。
【0019】
貯留部のスリット幅とグリースの流出量との関係を実験によって求め、その結果を図5に示した。
先ず、スリット幅とグリースの流出量との関係を常温(例えば、20℃)において実験し、その結果を図5の点線に示した。次に、高温(例えば、200℃)において実験し、その結果を図5の実線に示した。
実験の結果から次のことがわかった。すなわちスリット幅が0.5mmから2.0mmの場合(本形態の場合)は、常温、高温の両状態においてグリースの流出量が他のスリット幅の状態に比べて極めて少なかった。
【0020】
スリット幅が0〜0.5mmの場合は、常温、高温の両状態においてグリースの流出量が多かった。これはスリット幅が狭すぎることで、グリースが貯留部に入りにくく、グリースの多くが裏板21と第一シム5の間に保持され、そのためにグリースが流出しやすかったと考えられる。
またスリット幅が2〜4mmの場合は、グリースが高温(200℃)において粘性が低くなり、グリースが貯留部から流出していると考えられる。
【0021】
かくして本形態によると貯留部50は、20〜200℃のグリース7を貯留でき、常温(20℃)においても高温(200℃)においてもグリース7を安定よく貯留できる。
なお図5には、他の温度における実験結果を示していないが、20℃以下における通常使用温度の常温においては、図5に示した20℃における結果とほぼ同じ結果が得られた。したがって通常使用状態における常温においては、グリースの流出という問題が生じにくいことがわかった。
【0022】
また貯留部50は、第一シム5の全体の10〜50%の面積を占めるように、形成されることが好ましい。すなわち貯留部50の延出長さ50bと数が、前記した面積によって決定され、グリースを貯留する量と、第一シム5の剛性とが適度に決定されることが好ましい。
【0023】
以上のようにしてディスクブレーキ1が形成される。
すなわち貯留部50は、温度20〜200℃におけるグリースをグリースの表面張力を利用して貯留する。
したがって貯留部50は、200℃の高温になった場合においてもグリースを貯留することができ、グリースの流出を防止する。そしてその構造は、特許文献1のようにシール部材を設けることなく形成されるため、容易に形成され得る。またシール部材のようにブレーキ制動時のフィーリングを悪化させることなく構成され得る。
なお本形態は、貯留部50が温度20〜200℃におけるグリースを貯留する形態であればよく、貯留部50がさらに温度20℃以下におけるグリースを貯留しても構わないし、温度200℃以上におけるグリースを貯留しても構わない。
【0024】
また本形態は、図4に示すように高温(200℃)のグリース7の表面張力を考慮して貯留部50が形成されている。しかし従前の貯留部は、グリースの表面張力を積極的に利用するという考えの基に設計されてはいなかった。
また本形態は、貯留部50がグリース7の表面張力を利用してグリース7を貯留する。しかし従前の貯留部は、図8に示すように高温になった際にグリースが貯留部の開口部を覆い張らず、表面張力を十分に利用できなかった。そのため本形態は、図5に示すように表面張力を十分利用できない従前の形態に対して予測を越えた顕著な効果を生じている。
【0025】
また実験の結果、20〜200℃におけるグリースを効果的に貯留する貯留部50の形態は、スリット幅50aが0.5〜2.0mmにおいて特に優れていることがわかった。
また本形態によるとグリース7が貯留部50によって流出しにくくなっている。したがってディスクブレーキ1の鳴き抑制性能を長時間持続させることができる。またグリース7が流出しにくいため、グリースの補充回数を少なくすることもできる。
【0026】
また第一シム5と第二シム6は、ステンレス等の金属板から形成される形態であってもよいし、金属板の表面にNBRゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)などのゴム材を積層した積層板材から形成される形態(積層シム)であってもよい。そしてゴム材を積層させた形態の場合は、第一シム5または第二シム6がゴムの弾性力によってピストン31や爪部32からの圧力を分散させ、面圧分布改善を図ることで鳴き抑制をさらに高める。
【0027】
(実施の形態2)
実施の形態2を図6にしたがって説明する。
実施の形態2は、第一シム5が図3に示すスリット状の貯留部50に代えて、図6に示す貫通穴状の貯留部51を有する形態である。
図6に示すように第一シム5は、貫通穴状に形成された貯留部51を所定間隔毎に複数有する。貯留部51は、円孔状などの形状を有し、穴径51aは、グリースを効率良く保持するために0.5〜2.0mmに形成されている。そして貯留部51には、図4に示すようにグリース7が介在されており、グリース7が貯留部51内に貯留されている。
【0028】
貯留部51は、20〜200℃においてにグリース7がパッド2側の開口部全面を覆い張る構造になっている。そしてグリース7は、表面張力を利用して貯留部51の開口部全面を覆う。そのため貯留部51は、少なくとも20〜200℃におけるグリース7をグリース7の表面張力を利用して貯留する。
次に、貯留部の穴径とグリースの流出量との関係を実験によって求めた。その結果は、実施の形態1とほぼ同様であった(図5参照)。
すなわち本形態による貯留部51は、20〜200℃のグリースを貯留でき、高温(200℃)においてもグリースを安定よく貯留できる。
【0029】
(他の実施の形態)
本発明は、実施の形態1,2に限定されず、以下の形態であってもよい。
(1)すなわち実施の形態1,2は、浮動型のディスクブレーキであった。しかしディスクブレーキが対向型のディスクブレーキであって、そのディスクブレーキに実施の形態1,2と同じシムが利用される形態であってもよい。
(2)また実施の形態2の貯留部は、円孔状に形成されていたが、その形状は、真円状に限定されず、楕円形状であってもよい。また貯留部は、円孔状に限定されず、四角孔状などの角型孔状に形成される形態であってもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明に係るディスクブレーキによれば、パッドとシムの間に介在されたグリースが流れ出ることを防止するための構造が容易な構造によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスクロータとディスクブレーキの要部とを示す断面図である。
【図2】パッドとシムの斜視図である。
【図3】第一シムの正面図である。
【図4】ディスクロータとシムの一部拡大断面図である。
【図5】貯留部のスリット幅とグリースの流出量の関係、および貯留部の穴径とグリースの流出量の関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態2にかかる第一シムの正面図である。
【図7】従来の形態にかかる図4に相当する一部拡大断面図である。
【図8】従来の形態にかかる図4に相当する一部拡大断面図である。
【符号の説明】
1…ディスクブレーキ
2…パッド
3…キャリパ
4,104…シム
5,105…第一シム
6,106…第二シム
7…グリース
10…ディスクロータ
20…摩擦材
21…裏板
30…シリンダ
31…ピストン(押圧部材)
32…爪部(押圧部材)
50a,100a…スリット幅
50,51,100…貯留部
51a…穴径
【発明の属する技術分野】
この発明は、ディスクブレーキに関し、とりわけパッドと、パッドをディスクロータに押し付ける押圧部材と、パッドと押圧部材の間に介装されたシムとを有するディスクブレーキに関する。
【0002】
【従来の技術】
ディスクブレーキは、従来、様々な鳴き対策がなされており、例えば下記の特許文献1に示すディスクブレーキが知られていた。
特許文献1によると、ディスクブレーキは、裏板を有するパッドと、パッドをディスクブレーキに押圧する押圧部材と、パッドの裏板と押圧部材の間に介装されたシムを有していた。またシムと裏板の間には、ブレーキの鳴きを防止するためにグリースが介在させられていた。
また裏板の裏面には、裏板の外周に沿って環状に形成されたシール部材が取付けられていた。(なおシール部材は、特許文献1の図3の42の部材である)。そしてシール部材は、裏板とシムによって挟まれ、シール部材の環状内側においてグリースを保持し、これによってグリースがシムと裏板の間から流れ落ちることが防止されていた。
【0003】
【特許文献1】
実開平3−32224号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし特許文献1にかかるディスクブレーキは、上記のように環状のシール部材が必要であって、部品コストおよび組付コストが高くなる傾向にあった。
また環状のシール部材は、弾性変形に富む材料から形成されており、パッドを押圧部材によって押圧することで弾性変形していた。そのため環状のシール部材は、ブレーキの加圧方向と同じ方向に弾性変形し、ブレーキ制動時のフィーリングを悪化させる傾向にあった。
そこで本発明は、パッドとシムの間に介在されたグリースが流れ出ることを防止するための構造が容易な構造によって形成されるディスクブレーキを提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために本発明は、上記各請求項に記載の通りの構成を備えるディスクブレーキであることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によると、シムは、裏板側に設けられる第一シムと、押圧部材側に設けられる第二シムとを積層状に有し、第一シムには、グリースが介在させられるスリット状または貫通穴状に形成された貯留部が形成されている。そして貯留部は、温度20〜200℃においてグリースが表面張力を利用して貯留部の開口部全面を覆い張ることで貯留部に貯留される形態になっている。
【0006】
ところで従前のシムも、グリースを介在させるためにスリット状または貫通穴状に形成された貯留部を有しているものが知られていた(例えば、特許文献1)。しかし従前の貯留部は、多くのグリースを介在させるためにスリット幅または貫通穴を大きくする傾向にあった。そのためグリースが高温(200℃)になった場合には、グリースの粘度が低くなり、グリースが貯留部から流出しやすく、そのためにシール部材を必要としていた。
これに対して本発明は、貯留部が温度20℃(常温)〜200℃(高温)におけるグリースをグリースの表面張力を利用して貯留する。
したがって貯留部は、200℃の高温になった場合においてもグリースを貯留することができ、グリースの流出を防止する。そしてその構造は、特許文献1のようにシール部材を設けることなく形成されるため、容易に形成され得る。またシール部材のようにブレーキ制動時のフィーリングを悪化させることなく構成され得る。
【0007】
なお本発明は、貯留部が温度20〜200℃におけるグリースを貯留する形態であればよく、貯留部がさらに温度20℃以下におけるグリースを貯留しても構わないし、温度200℃以上におけるグリースを貯留しても構わない。
また本発明は、高温(200℃)のグリースの表面張力を考慮して貯留部が形成されている。しかし従前の貯留部は、グリースの表面張力を積極的に利用するという考えの基に設計されてはいなかった。
また本発明は、貯留部がグリースの表面張力を利用してグリースを貯留する。しかし従前の貯留部は、高温になった際にグリースが貯留部の開口部を覆い張らず、表面張力を十分に利用できなかった。そのため本発明は、表面張力を十分利用できない従前の形態に対して予測を越えた顕著な効果を生じている。
【0008】
請求項2に記載の発明によると、貯留部は、スリット幅または穴径が0.5〜2.0mmである。
実験の結果、20〜200℃におけるグリースを効果的に貯留する貯留部の形態は、スリット幅が0.5〜2.0mm、あるいは穴径が0.5〜2.0mmにおいて特に優れていることがわかった。すなわち貯留部のスリット幅、または穴径が0.5mmよりも小さい場合は、グリースが貯留部に入りにくく、グリースの多くが第一シムとパッドの裏板の間に保持され、そのためにグリースが貯留部に留まらず、貯留部から容易に流出していると考えられる。
またスリット幅または穴径が2.0mmよりも大きい場合は、グリースが高温(200℃)において粘性が低くなって、グリースが貯留部から流出していると考えられる。
かくして本発明によると貯留部は、20〜200℃のグリースを貯留でき、高温(200℃)においてもグリースを安定よく貯留できる。
【0009】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
実施の形態1を図1〜5にしたがって説明する。
ディスクブレーキ1は、図1に示すようにディスクロータ10に押し付けられる一対のパッド2と、シリンダ30を備えるキャリパ3と、パッド2とキャリパ3を支持するマウンティングを備える(図への記載は省略)。
【0010】
キャリパ3は、スライドピンなどを備えるスライド部材を介してマウンティングにスライド可能に取付けられ、ディスクロータ10の軸心と平行方向にスライド可能に支持される。
またキャリパ3は、図1に示すように車両の車幅のインナ側にシリンダ30を備える。そしてシリンダ30内に、ピストン31が設けられている。ピストン31は、ブレーキペダルの踏込み力に応じてディスクロータ10の軸心と平行方向に移動し、インナ側のパッド2をディスクロータ10に押圧する。
【0011】
またキャリパ3は、図1に示すようにアウタ側のパッド2に当接する爪部32を備える。爪部32は、キャリパ3本体とともにマウンティングに対して移動することで、アウタ側のパッド2をディスクロータ10へ押圧する。したがって一対のパッド2は、ピストン31と爪部32によってディスクロータ10に押し付けられる。
なおピストン31と爪部32は、請求項に記載の押付部材に相当する。
【0012】
パッド2は、図1に示すようにディスクロータ10に押圧されてディスクロータ10の表面を摺動することで摩擦力を生ずる摩擦材20と、摩擦材20の裏面を支持する裏板21を備える。
裏板21は、図2に示すように上下両端(ディスクロータ10の周方向両端)に、上下両端から突出するガイド部21a(耳部)を有する。そしてマウンティングがガイド部21aを移動可能に案内支持する。したがってパッド2は、ガイド部21aを介してマウンティングに支持され、ガイド部21aに案内されてディスクロータ10の軸芯と平行な方向に移動する。
【0013】
またパッド2の裏側には、図2に示すように金属板から形成されたシム4が取付けられている。そしてシム4は、振動減衰効果によりブレーキの鳴きを抑える効果を奏する。
インナ側のパッド2の裏側に取付けられたシム4は、図1に示すように裏板21とピストン31の間に介装される。そしてアウタ側のパッド2の裏側に設けられるシム4は、裏板21と爪部32の間に介装される。
そしてシム4とパッド2の間には、ブレーキの鳴きを防止するためにグリースが介在させられる。
【0014】
なおシム4は、図2に示すように裏板21の裏面とほぼ同じ形状を有する第一シム5と第二シム6から成っている。そして第一シム5は、裏板21の裏面を覆い、第二シム6は、第一シム5の裏面を覆う。
第二シム6は、一体に設けられた複数の係合爪60を有する。そして係合爪60は、第二シム6と裏板21の間に第一シム5を挟んだ状態で裏板21に係合される。したがって第一シム5と第二シム6は、積層状に裏板21に取付けられ、第一シム5が図1に示すように裏板21側に設けられ、第二シム6がピストン31または爪部32側に設けられる。
【0015】
第一シム5は、図3に示すようにグリースを介在させられる貯留部50を複数有する。貯留部50は、スリット状に形成され、所定のスリット幅50aと、所定の延出長さ50bを有し、第一シム5を厚み方向に貫通する。貯留部50は、第一シム5の短手方向に延出しており、ディスクロータ10の周方向に対して直行方向、すなわちディスクロータ10の径方向に延出する。
したがってパッド2がディスクロータ10によって周方向にずれ、グリースがパッド2によって周方向にずれた場合であっても、貯留部50がグリースのずれる方向と直行する方向に延出しているため、貯留部50は、グリースを効率良く保持する。
【0016】
貯留部50のスリット幅50aは、グリースを効率良く貯留するために0.5〜2.0mmに形成されている。そして貯留部50には、図4に示すようにグリース7が介在されており、グリース7が貯留部50内に貯留されている。
貯留部50は、20〜200℃においてにグリース7がパッド2側の開口部全面を覆い張る構造になっている。そしてグリース7は、表面張力を利用して貯留部50の開口部全面を覆う。またディスクブレーキが過酷な条件において利用された場合には、パッド2近傍が200℃近くに達すると考えられているが、グリース7は、その高温(200℃)状態においても表面張力を利用して貯留部50の開口部全面を覆う。そのため貯留部50は、少なくとも20〜200℃におけるグリース7をグリース7の表面張力を利用して貯留する。
【0017】
すなわちスリット幅50aは、グリース7が自重によって裏板21と第一シム5の間から流出してしまうことを防止するために、グリース7の自重と表面張力(濡れ)から決定されている。とりわけ高温(200℃)におけるグリース7の自重と表面張力(濡れ)から決定されている。
さらにグリース7は、毛細管現象によって貯留部50内に入り込んでいる。
【0018】
ところで従前の第一シム105は、図4に示す貯留部50に代えて図7に示す貯留部100を有する。貯留部100は、スリット幅100aが約3〜4mmであって、グリース7の温度が高くなると除々にグリース7の粘性が下がり、図7に示すように裏板21と第一シム105の間から流出しやすくなる。
そしてさらに温度が上昇して約200℃に達した場合には、図8に示すようにグリース7の粘性がさらに低くなり、グリース7が表面張力を利用できず、裏板21と第一シム105の間からさらに流出しやすくなる。
【0019】
貯留部のスリット幅とグリースの流出量との関係を実験によって求め、その結果を図5に示した。
先ず、スリット幅とグリースの流出量との関係を常温(例えば、20℃)において実験し、その結果を図5の点線に示した。次に、高温(例えば、200℃)において実験し、その結果を図5の実線に示した。
実験の結果から次のことがわかった。すなわちスリット幅が0.5mmから2.0mmの場合(本形態の場合)は、常温、高温の両状態においてグリースの流出量が他のスリット幅の状態に比べて極めて少なかった。
【0020】
スリット幅が0〜0.5mmの場合は、常温、高温の両状態においてグリースの流出量が多かった。これはスリット幅が狭すぎることで、グリースが貯留部に入りにくく、グリースの多くが裏板21と第一シム5の間に保持され、そのためにグリースが流出しやすかったと考えられる。
またスリット幅が2〜4mmの場合は、グリースが高温(200℃)において粘性が低くなり、グリースが貯留部から流出していると考えられる。
【0021】
かくして本形態によると貯留部50は、20〜200℃のグリース7を貯留でき、常温(20℃)においても高温(200℃)においてもグリース7を安定よく貯留できる。
なお図5には、他の温度における実験結果を示していないが、20℃以下における通常使用温度の常温においては、図5に示した20℃における結果とほぼ同じ結果が得られた。したがって通常使用状態における常温においては、グリースの流出という問題が生じにくいことがわかった。
【0022】
また貯留部50は、第一シム5の全体の10〜50%の面積を占めるように、形成されることが好ましい。すなわち貯留部50の延出長さ50bと数が、前記した面積によって決定され、グリースを貯留する量と、第一シム5の剛性とが適度に決定されることが好ましい。
【0023】
以上のようにしてディスクブレーキ1が形成される。
すなわち貯留部50は、温度20〜200℃におけるグリースをグリースの表面張力を利用して貯留する。
したがって貯留部50は、200℃の高温になった場合においてもグリースを貯留することができ、グリースの流出を防止する。そしてその構造は、特許文献1のようにシール部材を設けることなく形成されるため、容易に形成され得る。またシール部材のようにブレーキ制動時のフィーリングを悪化させることなく構成され得る。
なお本形態は、貯留部50が温度20〜200℃におけるグリースを貯留する形態であればよく、貯留部50がさらに温度20℃以下におけるグリースを貯留しても構わないし、温度200℃以上におけるグリースを貯留しても構わない。
【0024】
また本形態は、図4に示すように高温(200℃)のグリース7の表面張力を考慮して貯留部50が形成されている。しかし従前の貯留部は、グリースの表面張力を積極的に利用するという考えの基に設計されてはいなかった。
また本形態は、貯留部50がグリース7の表面張力を利用してグリース7を貯留する。しかし従前の貯留部は、図8に示すように高温になった際にグリースが貯留部の開口部を覆い張らず、表面張力を十分に利用できなかった。そのため本形態は、図5に示すように表面張力を十分利用できない従前の形態に対して予測を越えた顕著な効果を生じている。
【0025】
また実験の結果、20〜200℃におけるグリースを効果的に貯留する貯留部50の形態は、スリット幅50aが0.5〜2.0mmにおいて特に優れていることがわかった。
また本形態によるとグリース7が貯留部50によって流出しにくくなっている。したがってディスクブレーキ1の鳴き抑制性能を長時間持続させることができる。またグリース7が流出しにくいため、グリースの補充回数を少なくすることもできる。
【0026】
また第一シム5と第二シム6は、ステンレス等の金属板から形成される形態であってもよいし、金属板の表面にNBRゴム(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)などのゴム材を積層した積層板材から形成される形態(積層シム)であってもよい。そしてゴム材を積層させた形態の場合は、第一シム5または第二シム6がゴムの弾性力によってピストン31や爪部32からの圧力を分散させ、面圧分布改善を図ることで鳴き抑制をさらに高める。
【0027】
(実施の形態2)
実施の形態2を図6にしたがって説明する。
実施の形態2は、第一シム5が図3に示すスリット状の貯留部50に代えて、図6に示す貫通穴状の貯留部51を有する形態である。
図6に示すように第一シム5は、貫通穴状に形成された貯留部51を所定間隔毎に複数有する。貯留部51は、円孔状などの形状を有し、穴径51aは、グリースを効率良く保持するために0.5〜2.0mmに形成されている。そして貯留部51には、図4に示すようにグリース7が介在されており、グリース7が貯留部51内に貯留されている。
【0028】
貯留部51は、20〜200℃においてにグリース7がパッド2側の開口部全面を覆い張る構造になっている。そしてグリース7は、表面張力を利用して貯留部51の開口部全面を覆う。そのため貯留部51は、少なくとも20〜200℃におけるグリース7をグリース7の表面張力を利用して貯留する。
次に、貯留部の穴径とグリースの流出量との関係を実験によって求めた。その結果は、実施の形態1とほぼ同様であった(図5参照)。
すなわち本形態による貯留部51は、20〜200℃のグリースを貯留でき、高温(200℃)においてもグリースを安定よく貯留できる。
【0029】
(他の実施の形態)
本発明は、実施の形態1,2に限定されず、以下の形態であってもよい。
(1)すなわち実施の形態1,2は、浮動型のディスクブレーキであった。しかしディスクブレーキが対向型のディスクブレーキであって、そのディスクブレーキに実施の形態1,2と同じシムが利用される形態であってもよい。
(2)また実施の形態2の貯留部は、円孔状に形成されていたが、その形状は、真円状に限定されず、楕円形状であってもよい。また貯留部は、円孔状に限定されず、四角孔状などの角型孔状に形成される形態であってもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明に係るディスクブレーキによれば、パッドとシムの間に介在されたグリースが流れ出ることを防止するための構造が容易な構造によって形成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスクロータとディスクブレーキの要部とを示す断面図である。
【図2】パッドとシムの斜視図である。
【図3】第一シムの正面図である。
【図4】ディスクロータとシムの一部拡大断面図である。
【図5】貯留部のスリット幅とグリースの流出量の関係、および貯留部の穴径とグリースの流出量の関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態2にかかる第一シムの正面図である。
【図7】従来の形態にかかる図4に相当する一部拡大断面図である。
【図8】従来の形態にかかる図4に相当する一部拡大断面図である。
【符号の説明】
1…ディスクブレーキ
2…パッド
3…キャリパ
4,104…シム
5,105…第一シム
6,106…第二シム
7…グリース
10…ディスクロータ
20…摩擦材
21…裏板
30…シリンダ
31…ピストン(押圧部材)
32…爪部(押圧部材)
50a,100a…スリット幅
50,51,100…貯留部
51a…穴径
Claims (2)
- 裏板を有するパッドと、前記パッドをディスクロータへ押し付ける押圧部材と、前記パッドの裏板と前記押圧部材の間に介装されたシムとを有し、前記シムと前記裏板の間にグリースが介在されたディスクブレーキであって、
前記シムは、前記裏板側に設けられる第一シムと、前記押圧部材側に設けられる第二シムとを積層状に有し、前記第一シムには、前記グリースが介在させられるスリット状または貫通穴状に形成された貯留部が形成されており、
前記貯留部は、温度20〜200℃において前記グリースが表面張力を利用して前記貯留部の開口部全面を覆い張ることで前記貯留部に貯留される形態になっていることを特徴とするディスクブレーキ。 - 請求項1に記載のディスクブレーキであって、
貯留部は、スリット幅または穴径が0.5〜2.0mmであることを特徴とするディスクブレーキ。
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