JP2004281232A - ビーム源及びビーム処理装置 - Google Patents

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Katsunori Ichiki
克則 一木
Akio Shibata
明夫 柴田
Akira Fukuda
明 福田
Hirokuni Hiyama
浩国 檜山
Kazuo Yamauchi
和雄 山内
Seiji Sagawa
誠二 寒川
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Abstract

【課題】正イオン、負イオン、中性粒子等の各種ビームを低エネルギ、大イオン電流密度で、かつ、大口径で均一に被処理物に照射することができると共に、グリッド電極の大口径化、および長寿命化ができるビーム源、およびビーム処理装置を提供する。
【解決手段】ガスを導入する手段と、ガスをプラズマ化して正イオンと負イオンとが同時に混在する状態を生成する正負イオンプラズマ生成手段と、正負イオンプラズマを生成する正負イオンプラズマ生成室と、複数のビーム引き出し穴を設けた複数のグリッド電極と、複数のグリッド電極間の相互に電圧を印加することで、正イオン又は負イオンを加速し、グリッド電極に設けたビーム引き出し穴を通してイオンまたは該イオンから中性化されたビームを引き出すことを特徴とする。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路やハードディスク等の情報記憶媒体、微細光学素子あるいはマイクロマシーンなどの製造工程に用いて好適なビーム源及びそのビーム源を用いたビーム処理装置に係り、特に高密度プラズマから低エネルギで高いイオン電流密度のビームを生成するビーム源及びそのビーム源を用いたビーム処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路、ハードディスク等の情報記憶媒体、微細光学素子あるいはマイクロマシーン等の分野において、その加工パターンが著しく微細化されている。かかる分野の加工においては、直進性が高く(高指向性であり)、且つ大口径で高密度のエネルギービームを照射して被処理物の成膜又はエッチングなどを施す技術が注目されている。
【0003】
このようなエネルギービームのビーム源としては、正イオン、負イオン、中性粒子等の各種のビームを生成するものが知られている。このような正イオン、負イオン、中性粒子等のビームをビーム源から被処理物の任意の部位に照射することで、被処理物の局所的な成膜やエッチング、表面改質、接合、接着などを行うことができる。
【0004】
従来の正イオンビーム源について、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4等に開示されている。負イオンビーム源の例は、特許文献1、特許文献2等に開示されている。中性粒子ビーム源の例は、特許文献3、特許文献4、特許文献5等に開示されている。また、ビーム技術ではないが同様の目的で正イオンおよび負イオンを被処理物の直上で同時に生成させ、これらを交互に加速して被処理物に照射する正負イオンエッチングは特許文献6、特許文献7等に開示されている。
【0005】
非特許文献1には2枚グリッド方式と1枚グリッド方式の正イオンビーム源について開示してある。2枚グリッド方式では500Vの加速電圧を加えれば、0.5mA/cm2のイオン電流密度が得られるが、100V以下では数十μA/cm2の電流密度しか得られないため、100V以下では実用的なエッチングは期待できないと述べている。一方、1枚グリッド方式ならば20Vと低い加速電圧から1mA/cm2と高い電流密度が得られるが、ビーム引き出し穴の穴径はシース長と同等もしくはそれ以下でなければ、効率よく平行に直進するイオンビームを引き出せないと記述している。実験では100meshのグリッドを使用したと記載されているからビーム引き出し穴の穴径は250μm以下である。そしてこのグリッドは5〜10時間しか使用できなかったと記載されている。
【0006】
非特許文献2では2枚グリッド方式の正イオンビーム源について開示している。2枚グリッド方式ではイオン電流密度はグリッド電極間距離の2乗に反比例するため、イオン電流密度を高めるためには電極間隔を狭めることが有効だが、電極間隔を狭めると、熱膨張でたわむことで制限があると記載されている。大口径化したとき、グリッド電極のところどころに絶縁碍子を挟む技術を開示しているが、この技術はビーム放出面におけるイオン電流密度の均一性を満足できないのでシリコンウエハやガラス基板などに微細加工を施す工業プロセスでの実用化は難しい。
【0007】
非特許文献3には、3枚グリッド方式の直径450mmの正イオンビーム源に関する技術が記載されている。グリッド電極に開口したビーム引き出し穴の穴径は1〜2mmで、グリッド電極材料にはスパッタ率が低く熱膨張率の小さいMoとTiを使う例が記載されている。これらの電極は、熱膨張を一方向に逃がすため、電極を皿型に成形している。さらに、グリッド電極に炭素を使う例も記載されている。炭素のスパッタ率は更に小さく、熱膨張率がほぼ零にできるので皿形成形が不要だと記載されている。この例ではプラズマに接する1枚目のグリッド電極(文献中ではスクリーン電極と呼ばれている)の電位は1000Vで、2枚目のグリッド電極(文献中では加速電極と呼ばれている)の電位は−200Vである。
【0008】
特許文献5には、正イオンビーム源からのイオンの引き出しについて記述がある。即ち、2枚グリッド方式でイオンを効率よく引き出すにはグリッド電極間距離がイオンシース長とほぼ等しくなるようにし、ビーム引き出し穴の穴径はグリッド電極間距離よりも小さく設計する必要があると述べている。
【0009】
特許文献6には、負イオンビーム源についての記述がある。これは、いったんハロゲンや酸素などの負性ガスを用いて高密度プラズマを生成し、発生したイオンを輸送管でプラズマ処理室に送る間に、正イオンを電子と再結合させて活性ラジカルに変換し、その活性ラジカルを、金属製の多数の穴を開けた板に通し、その穴の中を活性ラジカルが通過するときに、穴の内壁の金属表面と活性ラジカルとの間で電荷交換過程を経て負イオンを生成し、それを加速用のグリッド電極で加速して被処理物に照射する技術が開示されている。
しかし、ハロゲンや酸素の活性ラジカルは金属を腐食させる作用があるため、実際に利用できる金属は金、白金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムであると開示されている。これらの金属材料を使用しても、腐食や酸化は完全には防げないため、消耗品となるが、これらの金属は高価で、10インチ以上のウエハを処理することを狙って大口径化するとさらにコストが上がるため、ますます産業利用するには実用的ではないという問題がある。
【0010】
特許文献2には、負イオンビーム源についての記載がある。このビーム源は基本的には2枚グリッド方式であり、負イオンを加速するように2枚のグリッド電極間に電圧が印加されているが、そのグリッド電極のビーム引き出し穴の形状がスリット状で、かつ、2枚のグリッド電極のうちプラズマ生成室側のグリッド電極にはスリットを横切る方向、すなわち、ビームが通過する方向に垂直に1000Gauss(0.1T)程度の磁界が印加されていて、負イオンと電子のラーマ半径の違いを利用して負イオンは通過させて被処理物に向けて照射され、電子はトラップされるようにしている。しかし、この文献で記述されているプラズマ発生部は特に高密度プラズマ、すなわち、正イオン密度が1011個/cm3を超えるようなものを想定しておらず、また、プラズマ生成部の下流にある2枚のスリット状電極の間に印加する電圧は100V〜2000Vの間で調整できると記載されているものの、実施例では1000Vと高い電圧を印加している。つまり、この文献が開示しているのは、電子をトラップして負イオンだけを選択的に被処理物に照射する技術だけであるが、そのプラズマ密度は低く、イオンの加速電圧は1000V前後と高いため、パターン幅が狭く、ダメージにも弱い。このため、例えば半導体LSIを加工するために、ビームを効率良く高速で加速する技術を何ら開示していない。つまり、高密度プラズマから低エネルギで大イオン電流密度のビームを引き出すための技術は何ら教示していない。
【0011】
特許文献3には、中性粒子ビーム源についての記載がある。このビーム源は高密度プラズマから20〜400eVの低エネルギの中性粒子ビームを引き出す中性粒子ビーム源について開示している。このビーム源の構成は1枚グリッド方式で、グリッド電極にはアルミを用いている。ガスに酸素を導入してプラズマを生成するとグリッド電極のアルミには自然酸化膜が形成されて、グリッド電極表面が誘電体膜で絶縁されるため、グリッド電極に高周波電圧を印加すると加速電極との間に生じる自己バイアス電圧でイオンが加速されるという仕組みである。プラズマは正イオンと加熱された電子とから成る一般的なプラズマを専ら利用している。このため、たとえば1011個/cm3の高密度プラズマから100eVと低エネルギでイオンビームを引き出すときイオンシース長はわずか0.5mm程度となる。このため、グリッド電極に開口するビーム引き出し穴の穴径をイオンシースより小さく例えば0.13mmとしてある。これは、非特許文献1でも記載されているように、こうしなければ、効率よく平行にイオンを引き出せないからである。しかしながら、0.13mmと小さい穴を多数開けるのは容易ではない。さらに、イオンを中性粒子ビームに変換するため、ビーム引き出し穴のアスペクト比を10程度と高くしなければならず、これを実現するためにアルミ板をドライエッチングで開口することを開示している。このように、上記方法では、高密度プラズマから低エネルギビームを効率よく引き出すために、ビーム引き出し穴の穴径をイオンシース長以下に小さくせねばならず、しかも、中性粒子ビームに変換するために、アスペクト比は10とする必要があり、グリッド電極の板厚は1.6mmと薄くなる。このため、機械的強度が十分に保てなくなりハンドリングが難しくなり、特に10インチ以上のビーム源を作るため大口径化すると熱膨張でグリッド電極がたわんでしまうため、工業上実用化するのは困難であるという問題がある。
【0012】
本発明者等による特許文献4には中性粒子ビーム処理装置が開示されている。この中で、高周波をパルス変調して正負イオンプラズマを生成し、生成された負イオンを、1枚グリッド方式もしくは2枚グリッド方式でグリッド電極(文献ではオリフィス電極と表現)に向けて加速し、負イオンがビーム引き出し穴を通過する間に中性粒子ビームに変換される技術を開示している。
【0013】
同様に本発明者等による特許文献5には、以下の構成のビーム源を開示している。即ち、2枚の電極の間で高密度プラズマを生成し、そこで発生したプラズマをメッシュ電極(上流から2枚目の電極)から主に拡散によって染み出させ、電子温度を下げながら2枚目の電極と3枚目の電極の間でダウンフロープラズマを生成している。ガスが負性ガスである場合は、ここで正負イオンプラズマが形成されており、負イオンが生じにくいアルゴンなどの希ガスを用いた場合には、単にプラズマ密度が低下している。そのイオンを2枚目と3枚目の電極にかけた電圧により生じる電界で加速している。このため、高密度プラズマを生成できるが、ビームを引き出す電極の手前ではシース長が1mmと長くなるまでプラズマ密度を低下させ、製作が容易なφ1mmのビーム引き出し穴を持つグリッド電極からでも、ビームを引き出せるようにしたが、必ずしも積極的に高密度ビームを引き出せるようにはなっていない。
【0014】
非特許文献4や特許文献7では、高周波電圧を印加してプラズマを生成するが、高周波電圧の印加を停止すると電子温度が下がり、残留ガスに付着して負イオンを形成することが開示されている。したがって、高周波電圧の印加と停止を交互に繰り返すことで正負イオンを形成できる。この文献では、被処理物に交互に正負のDCバイアス電圧を印加したり、400kHz程度の高周波を印加することで、被処理物に交互に正イオンと負イオンを加速/衝突させることができる、とも開示している。
【0015】
【特許文献1】
米国特許第6217703号明細書
【特許文献2】
米国特許第4158589号明細書
【特許文献3】
米国特許第6331701号明細書
【特許文献4】
特開2002−289581号公報
【特許文献5】
特開2001−28244号公報
【特許文献6】
米国特許第5928528号明細書
【特許文献7】
米国特許第5827435号明細書
【非特許文献1】
J.M.E.Harper, J.J.Cuomo, P.A.Leary, G.M.Summa, H.R.Kaufman,
F.J. Bresnock, ”Low Energy Ion Beam Etching”, J.Electorchem.
Soc.:SOLID−STATE SCIENCE AND TECHNOLOGY, 1981
【非特許文献2】
Harold R. Kaufman,“Technology of ion beam sources used in
sputtering”, J. Vac. Sci. Technol., 15(2), 1978
【非特許文献3】
北村、「イオンエンジン(直流放電型)」、J.Vac.Soc.Jpn, 45(4),
329−335, 2002 Ion Engine(Direct Current Discharge Type)
【非特許文献4】
石川、イオン源工学、pp177−179、アイオニクス株式会社、1986
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
半導体集積回路などの量産化やコストダウン等のためには、半導体集積回路製造装置の大口径化が必須であるが、従来のイオンビーム源を大口径化し、正イオン、負イオン、中性粒子等の各種のビームを生成しようとすると、次のような問題点があった。
【0017】
2枚グリッド方式のイオンビーム源では高いイオン電流密度を得るためにはグリッド電極間隔を短くする必要がある。これは、非特許文献1で指摘しているとおり、引き出せるイオン電流密度は電極間距離の2乗に反比例し、引き出し電圧の3/2乗に比例するからである。そして、最大のイオン飽和電流密度を得るためには、非特許文献4にあるように、電極間距離はシース長と同程度かやや短くし、ビーム引き出し穴の径も電極間距離と同程度にしなければならない。
従来の2枚グリッドのイオンビーム源はプラズマ密度が低いから電極間距離や穴径を大きくできたが、正イオンと加熱された電子とから成る専ら用いられているプラズマにおいて高密度プラズマ(正イオン密度〜1011個/cm3)で引き出し電圧が100Vと低いとシース長は0.5mm程度と短い。
【0018】
シース長sは次式で表される。
【数1】
Figure 2004281232
【0019】
このプラズマから高いイオン電流密度を得るには、穴径も電極間距離も極めて短くなり製作は実質上困難である。仮に可能であるとしても、グリッド電極の板厚は0.5mm以下と薄いため、たわみが生じる。この問題を克服するために、セラミクス碍子などで、ところどころをピン止めすることが開示されているが、非特許文献1で指摘しているように、イオンエンジンのアプリケーションにはこの方法はよいが、半導体製造装置の目的にこの技術を利用すると均一性が悪くなる。また、たわんでも、2枚の電極が同じ方向にたわめば電極間距離は保たれるので、モリブデンやチタン電極では電極を皿状にカールさせる技術が知られている。しかしながら、この方法では、たとえばアスペクト比の高いビーム引き出し穴を有するグリッド電極、たとえば穴の径が0.13mmで穴の長さが1.6mmといったビーム引き出し穴を、グリッド電極がカールしているにもかかわらず、発散を抑えて平行なビームを出せるようにすることは困難である。線膨張率の小さいグラファイト材料を用いれば、たわみの問題は解決するが、脆いため、ハンドリング時に壊れやすい欠点がある。また、穴径が小さくなると、2枚のグリッド電極の穴同士の位置合わせが困難になる。
【0020】
非特許文献1に記されている1枚グリッド方式のイオンビーム源ならば低い引き出し電圧でも飽和イオン電流密度を得ることができるが、そのためには、イオン引き出し穴径をシース長より短くする必要がある。プラズマ密度が高密度(〜1011個/cm3)になると、シース長は0.5mm程度と小さくなるため、穴径は0.1mm程度にする必要がある。すると、イオンを効率よく引き出すためには、板厚も同等に薄くしなければならない。そうすると、加速されたイオンが電極をスパッタするため、薄い電極では電極の寿命が短くなる欠点がある。特許文献3で開示しているイオンの加速手段も基本的には同様で電極はスパッタされる。
【0021】
以上のように、従来のイオンビーム技術は高密度プラズマを生成しても500V以下、望ましくは200V以下の低エネルギで高いイオン電流密度のイオンビームを引き出すことができなかった。このため、工業プロセスにおいて、高イオン電流密度、低エネルギのイオンビームを利用してエッチレートの高いプロセスを実用上のレベルで実現することはできなかった。
さらに、イオンビーム技術以外にも被処理物に微細加工を施す目的で広く工業利用されている反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)技術がある。特に正負イオンプラズマを利用する特許文献6、7の技術では、正イオンと電子とから成るプラズマを利用する技術と異なり、チャージアップやダメージやマイクロローディング効果を抑止できる優位性がある。しかしながら、ビーム技術と異なり、グリッド電極がプラズマと被処理物の間に介在せず被処理物がプラズマに直接的に曝されるため、被処理物が不必要なラジカルに曝されて不要な堆積物が被処理物の表面や加工側壁に堆積したり、プラズマから放射される真空紫外光(VUV:Vacuum Ultraviolet)の照射を受けて被処理物上に作りこんだ半導体デバイスなどのダメージの原因になるという問題がある。
【0022】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、正イオン、負イオン、中性粒子等の各種ビームを低エネルギ、大イオン電流密度で、かつ、大口径で均一に被処理物に照射することができると共に、グリッド電極の大口径化、および長寿命化ができるビーム源、およびビーム処理装置を提供することを目的とする。
さらに詳しくは、産業上、半導体集積回路やハードディスクなどをより安価に提供することが求められており、その点から加工速度の速い大イオン電流密度が得られ、かつ一度に多量の被処理物が処理できる大口径のビーム源が必要とされる。そして、イオンを引き出すグリッド電極に、被処理物に形成した回路や結晶構造にダメージを引き起こすことなく、また、取り扱いやすい500V以下、望ましくは100V程度の低電圧のビーム源が要望されており、かつビーム源において最も消耗の激しいグリッド電極の長寿命化がさらに要望されており、これらの課題の解決を目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】
このような従来技術における問題点を解決するために、本発明の一態様は、ガスを導入する手段と、前記ガスをプラズマ化して正イオンと負イオンとが同時に混在する状態を生成する正負イオンプラズマ生成手段と、前記正負イオンプラズマを生成する正負イオンプラズマ生成室と、前記正負イオンプラズマ生成室内に配置されたプラズマ電位固定電極と、複数のビーム引き出し穴を設けたグリッド電極と、前記プラズマ電位固定電極と前記グリッド電極との間に電圧を印加する電圧印加部とを備え、前記正負イオンプラズマの前記正イオンの密度が1010個/cm3以上で、前記電圧印加部に印加する電圧が500V以下で、前記グリッド電極に設けた前記ビーム引き出し穴の穴径が0.5mm以上であることを特徴とするビーム源である。
さらに、前記正負イオンの正イオンの密度が1011個/cm3以上で、印加する電圧が200V以下でビーム引き出し穴の穴径が1mm以上であることが好ましい。
【0024】
本発明の他の一態様は、ガスを導入する手段と、前記ガスをプラズマ化して正イオンと負イオンとが同時に混在する状態を生成する正負イオンプラズマ生成手段と、前記正負イオンプラズマを生成する正負イオンプラズマ生成室と、複数のビーム引き出し穴を設けた複数のグリッド電極と、前記複数のグリッド電極間の相互に電圧を印加することで、前記正イオン又は前記負イオンを加速し、前記グリッド電極に設けた前記ビーム引き出し穴を通してイオンまたは該イオンから中性化されたビームを引き出すことを特徴とするビーム源である。
【0025】
このような構成により、たとえば従来技術にあっては、1×1011個/cm3と高い正イオン密度のプラズマにおいては、専ら正イオンと電子とから成るプラズマだったので、引き出し電圧が100Vと低いときにはシース長が0.5mmと短く、ビーム引き出し穴径が0.1mmよりも短いグリッド電極でなければイオンを引き出すことが困難だった。
【0026】
ここで、シース長は下記の式で表される。
【数2】
Figure 2004281232
【0027】
一方、グリッド電極のビーム引き出し穴には、主として加工上の要請から適切な値のアスペクト比があることと、ビーム源の運転時の熱的影響下においてグリッド電極には一定の機械的強度が必要である。このため、ビーム引き出し穴の穴径が小さい場合には、グリッド電極径は大口径化が困難である。
【0028】
本発明においては、正イオンと負イオンとから成る正負イオンプラズマを生成することで、シース長を長くできる。このため、比較的大きなビーム引き出し穴からイオンビームを有効に引き出すことができる。穴径が0.5mm以上、望ましくは1mm以上であれば、金属やカーボンに対して、ドリル穴加工や等方的なウェットエッチング、さらには押し出し成型などの比較的安価な加工方法で穴開けが可能であり、グリッド電極を例えば10mm程度と厚くできるので、グリッド電極の大口径化が実現でき、また寿命も長くなる。
【0029】
また、本発明のビーム源ではビーム引き出し穴の穴径が大きいので、前記複数のグリッド電極相互のビーム引き出し穴位置の許容されるずれ量が大きくてもよいため、正確な合わせが容易にできる利点もある。また、プラズマ電位固定電極が前記グリッド電極に対して、加速されたイオンによるスパッタリングが生じない程度の低電圧に設定される。また、前記複数のグリッド電極に設けたビーム放出孔を相互に位置合わせして、それぞれのビーム放出孔の位置が一致するようにしている。この結果、グリッド電極の消耗は激減し、この点からビーム源の運転時間を長くできる。
【0030】
また、本発明のビーム源の一態様では、プラズマ電位固定電極と、プラズマに接したグリッド電極との間に電圧を印加して正イオンもしくは負イオンの飽和イオン電流を前記複数のグリッド電極、この場合はたとえば2枚のグリッド電極に向けて加速する。このとき加速されるイオンのイオン電流密度は印加する電圧にはほとんど依存せず、最大の飽和イオン電流がグリッド電極に向けて加速されるので、印加する電圧はグリッド電極がスパッタによる寿命の短命化などの悪影響を実用上受けない低い電圧、たとえば50Vに設定することができる。そして、前記2枚のグリッド電極間に電圧を印加してイオンを再度加速すれば、イオンのエネルギを所望の運動エネルギにコントロールできる。たとえば200Vの電圧を与えて加速する。このようにすることで200eV弱の運動エネルギをもつイオンビームを高いイオン電流密度で出射していながら、グリッド電極の実用上のスパッタが無くなり長寿命を得ることができる。
【0031】
また、本発明の他の一態様は、前記グリッド電極のうち、少なくとも1枚のグリッド電極に対して、開口した前記ビーム引き出し穴のアスペクト比(穴の長さ/穴の径)が10以上であることを特徴とするものである。
アスペクト比が10以上であると、加速されたイオンは前記グリッド電極を通過するときに中性化され、中性粒子ビームを放出する。従来の中性粒子ビームでは、1枚グリッド方式を用いる場合は、グリッド電極がスパッタされていた。(例えば、特許文献3参照)。本発明の方式を用いることでスパッタを低減できる。特許文献5では3枚の電極を利用することが開示されているが、この技術は、メッシュ(2枚目の電極)からプラズマを拡散によって染み出させ、電子温度を下げながら2枚目の電極と3枚目の電極の間でダウンフロープラズマを生成している。ガスが負性ガスである場合は、正負イオンプラズマを形成しており、負イオンが生じにくいアルゴンなどの希ガスを用いた場合には、単にプラズマ密度が低下している。そのイオンを2枚目と3枚目の電極にかけた電圧により生じる電界で加速している。このため、せっかく高密度プラズマを生成したが、ビームを引き出す電極の手前ではプラズマ密度が低下しており、確かにφ1mmのビーム引き出し穴を持つグリッド電極からビームが引き出せる技術を開示しているが、必ずしも積極的に高密度ビームを引き出せているとは言えない。本発明のビーム源では、高密度プラズマから直接グリッド電極にイオンを引き込んでいるので、高密度低エネルギービーム源として、実用上大きな利点がある。
【0032】
さらに本発明の他の一態様は、真空チャンバ内にビームを照射する上記構成のビーム源と、前記ビームが被処理物の表面に照射されるように前記被処理物を保持する保持部と、を備えたことを特徴とするビーム処理装置である。これにより、低エネルギで大口径で且つ高いイオン電流密度の中性粒子等のビームを被処理物に照射することができる。従って、チャージフリー且つダメージフリーな加工を被処理物に対して施すことができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るビーム源の第1の実施形態について、図1を参照して説明する。なお、各図中、同一の作用または機能を有する部材または要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0034】
図1(a)に示すように、このビーム源は、ガスを導入するガス導入ポート1と、プラズマを生成する石英ガラス製のプラズマ生成室2と、誘導結合型のコイル3と、金属製のプラズマ電位固定電極4と、1枚のグリッド電極5などにより構成されている。
誘導結合型のコイル3は渦巻き状に形成されており、プラズマ生成室2の上面にある石英ガラス板8の上に配置されている。このコイル3は、例えば8mmφ程度の外径を有する水冷銅パイプである。このコイル3は、マッチングボックス6を介して高周波電源7に接続されており、例えば、13.56MHzの高周波電圧がコイル3に印加される。
【0035】
即ち、ガス導入ポート1からプラズマ生成室2内に、たとえばSF6ガスを導入し、プラズマ生成室2内の圧力が1Paになるよう流量を調整する。流量の調整は、図示しないマスフローコントローラにより行う。つぎにコイル3に高周波電流を流すと誘導磁場が生じ、磁界の時間変化が電界を誘導し、その電界で電子が加速され、ガスを電離してプラズマが生成される。このときに形成されるプラズマは、主として正イオンと加熱された電子とからなるプラズマである。
【0036】
ここで、例えば図1(b)に示すように、高周波電源7から供給される高周波電圧を10μ秒間コイル3に印加した後に、高周波電源7から供給される高周波電圧の印加を100μ秒間停止する。高周波電源7による高周波電圧の印加の停止後は、再び高周波電源7による10μ秒間の高周波電圧の印加によってプラズマ生成室2においてプラズマ中の電子が加熱され、上述したサイクルが繰り返される。即ち、高周波電界の印加(10μ秒間)と印加の停止(100μ秒間)を交互に繰り返す。この高周波電界の印加停止時間(100μ秒間)は、プラズマ中の電子が残留している処理ガスに付着して負イオンが生成されるのに要する時間よりも十分に長く、且つプラズマ中の電子密度が低下してプラズマが消滅するよりも十分に短い時間である。高周波電界の印加時間(10μ秒間)は、この高周波電界の印加を停止している間に低下したプラズマ中の電子のエネルギを回復させるのに十分な時間である。
【0037】
このプラズマ中の電子のエネルギーを高めた後の高周波電界の印加停止により、負イオンを効率よく、且つ継続して生成することができる。即ち、通常のプラズマは正イオンと電子とからなる場合が多いが、正イオンと共に負イオンが共存した状態のプラズマを効率的に形成することができる。なお、ここでは、高周波電界の印加停止時間を100μ秒に設定する例について述べたが、50μ秒乃至100μ秒に設定することで、プラズマ中に正イオンのみならず負イオンを多量に生成することができる。
【0038】
プラズマ生成室2の下端にはグラファイトなどの導電体で形成されたグリッド電極5が配置されており、このグリッド電極5は接地電位とされている。このグリッド電極にはφ1mmのビーム引き出し穴がピッチ1.34mmで正三角形格子状に開けてある。板厚は1mmである。高周波コイル3に800Wの電力を印加すると、高周波を連続的に印加したときには正イオンのプラズマ密度は1011個/cm3と高密度プラズマが形成される。これをパルス変調すると、正イオンの密度はほとんど減衰せず、負イオンの密度は正イオンの密度とほぼ同等の密度まで上昇して高密度の正負イオンが混在した正負イオンプラズマが形成される。
【0039】
連続放電で正イオンプラズマを形成してプラズマ電位固定電極4に正の電圧を印加すると、プラズマポテンシャルは、ほぼプラズマ電位固定電極4の電位と同じになる。なお、プラズマ電位固定電極4を斜め上から見ると図1(c)に示すようになる。たとえば、プラズマ電位固定電極4に直流バイアス電源9により+100Vを印加すると、プラズマポテンシャルも+100Vに上昇し、接地電位のグリッド電極5の直上にシースができて正イオンはここで加速される。しかし、シースは0.5mmと短くビームをφ1mmのビーム引き出し穴から放出することは難しい。ところが、コイルに印加する高周波電圧をパルス変調して正負イオンプラズマを形成すると、正負イオンプラズマでは電子密度が少ないためシースが長く伸び、最後には消失して、プラズマ電位固定電極4とグリッド電極5の間はなだらかな電位勾配ができる。このため、正負イオンプラズマ中で生成された高密度のイオンは両電極4,5間の電界で加速され、グリッド電極5に向かって直進し、ビーム引き出し穴を通って引き出される。こうして高密度プラズマからでも正負イオンプラズマを用いることで高密度低エネルギービームを引き出せる。なお、プラズマ電位固定電極4に負の電位を与えれば、負イオンを加速して負イオンビームを引き出せる。
【0040】
本実施形態では、プラズマ中で負イオンを生成するため、O2,Cl2,SF6,CHF3,C4F8などの負イオンを生成しやすいガスをプラズマ生成室に導入することが好ましい。これらのガスを用いて上述した高周波誘導結合プラズマ(ICP)などにより高密度プラズマを発生させた後に、高周波電圧の印加を停止すると、プラズマ中に多数の負イオンが発生し、正負イオンプラズマを容易に形成できる。
【0041】
なお、上述した実施形態においては、ICPコイルを用いてプラズマを生成した例を説明したが、ECR(Electron Cycrotron Resonance)、ヘリコン波プラズマ用コイル、マイクロ波等を用いてプラズマを生成するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、プラズマ生成部で生成されたプラズマの下部にプラズマ電位固定電極を配置した例を説明したが、図2の第2の実施形態に示すビーム源のように、プラズマを、プラズマ電位固定電極4aとグリッド電極5との間で生成するように配置することもできる。この場合、図2の実施形態ではガス導入ポート1から導入したガスをプラズマ電位固定電極4aに開けた穴からプラズマ生成室2内に導入するようにしたが、プラズマ電位固定電極には穴を1つも形成せずに、他のたとえばガラス管からなる容器2にガス導入ポートを付けて、そこからガスを導入するようにしてもよい。
【0043】
また、図1および図2の実施形態では、プラズマ電位固定電極をプラズマ生成室の中に配置したが、図3に示すようにプラズマ生成室2の壁2aを金属で形成して、壁2aによりプラズマ電位固定電極4を兼用するようにしてもよい。また、プラズマ固定電極とグリッド電極の間に印加する電圧は、直流電圧だけでなく600kHz程度の高周波電圧でもよい。即ち、プラズマ固定電極2aとグリッド電極5との間に交流電源9aを接続するようにしてもよい。高周波電圧の周波数がイオンプラズマ振動数より十分に低ければ、正イオンや負イオンも高周波電圧に追従でき、正イオンと負イオンとを交互に引き出すことができる。もちろん、正、負の直流電圧をパルス状に印加するようにしてもよい。
【0044】
次に本発明に係るビーム源の第2の実施形態について、図4を参照して説明する。
このビーム源はグリッド電極が2枚ある。即ち、グリッド電極5a,5bが平行に且つ近接して配置されている。このグリッド電極5a,5bの寸法は、たとえば、ビーム引き出し穴の穴径が1mmでピッチが1.34mm、グリッド電極間距離が1mm、グリッド電極間に印加する電圧が100Vである。プラズマを生成してビームを引き出すには、通常の正イオンと加熱された電子から成る正イオン密度が1011個/cm3の高密度プラズマをプラズマ生成室2の内部に生成した場合、グリッド電極5a,5b間の距離がシース長の2倍程度なので、引き出せるイオン電流密度は飽和イオン電流密度の1/4程度と小さい。ところが、正負イオンが混在した正負イオンプラズマを生成すれば、シース長は長くなり、あるいは消失してしまっているので、引き出されるイオン電流密度は2枚のグリッド電極5a,5bの間に印加した電圧にはあまり依存せず、プラズマ生成室2内をランダムに飛行しているイオンが単位面積、単位時間当たりにグリッド電極5a,5bに飛び込んでくる入射頻度Γに依存する。入射頻度Γは次式で表される。
【0045】
【数3】
Figure 2004281232
【0046】
イオン温度Tiはほぼ一定で室温なので、イオン電流密度はイオンの密度、つまりプラズマ密度だけに依存する。したがって、高密度プラズマを形成すれば、2枚のグリッド電極5a,5bに印加した電圧だけに依存した高いイオン電流密度のビームを得ることができる。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態の変形例のビーム源を示す。この実施形態では、図4に示すビーム源の2枚のグリッド電極5a,5bに加えて、さらに1枚のプラズマ電位固定電極4cを備える。ガス導入ポート1より導入されたガスは、プラズマ電位固定電極4cに開けた穴を通過してプラズマ生成室2に導入される。このプラズマ電位固定電極4cに電圧を印加すると、生成した正負イオンのプラズマポテンシャルを1枚目のプラズマに接するグリッド電極5aに対して上げたり下げたりできるので、2枚のグリッド電極5a,5b間にイオンを加速して供給することができる。したがって、図4に示すビーム源よりもより多くのイオン電流密度を得ることができる。特に、この構成では、直流電圧Vbを50V程度と実質、1枚目のグリッド電極5aがほとんどスパッタされないような低エネルギに設定して、グリッド電極5a,5b間にイオンを供給する。さらに、たとえばグリッド電極5a,5b間に直流電圧Vaを50V程度印加することで、高いイオン電流密度のイオンビームを得ることができる。このときイオンビームのエネルギは2つの電圧を合計した100eV程度の低エネルギとなる。
【0048】
図6は、図5に示すビーム源の変形例について説明する図である。このビーム源では、図6のビーム源において2枚目のグリッド電極の板厚を10mmと厚くしている。これにより、2枚目のグリッド電極5bのビーム引き出し穴を通過するイオンは、主として穴の内壁の固体表面近傍において中性化され、あるいは、穴の内部に残留しているガスとの電荷交換によって中性化され、中性粒子となる。こうして高密度低エネルギの中性粒子ビームが得られる。なお、この図では第2の実施形態のビーム源の構成を基本としてビームを引き出す最後のグリッド電極5bの穴のアスペクト比が10以上になるようにしている。しかしながら、第1及び第2のいずれの実施形態のビーム源を基本としてもよいことは勿論である。
【0049】
図7は、本発明の実施形態のビーム処理装置を示す。この装置では、真空容器内に被処理物Xを保持する保持部11が配置されており、この保持部11の上面に被処理物Xが載置されている。真空容器12にはガスを排出するためのガス排出ポート13が設けられており、このガス排出ポート13はガス配管を介して図示しない真空ポンプに接続されている。この真空ポンプによって真空容器は所定の圧力に維持される。ビーム源14から引き出された高密度低エネルギの正イオンビーム、あるいは負イオンビーム、あるいは中性粒子ビームは、真空容器12の内部を直進して保持部11に載置された被処理物Xに照射され、エッチング、クリーニング、窒化処理や参加処理などの表面改質、成膜などの処理をおこなう。
この場合において、ビーム源14内のグリッド電極が特に第5の実施形態のようにアスペクト比が10程度と高い場合は、イオンを中性化する手段としてだけではなく、プラズマから発生する放射光が被処理物に照射されるのを防止する手段としても機能する。即ち、プラズマが生成されるプラズマ生成室と被処理物Xとはグリッド電極5a,5dによって遮断されているので、プラズマから発生する放射光は被処理物Xに照射されず、被処理物Xに損傷を与えるような紫外線などの被処理物Xへの影響を低減することができる。
【0050】
なお、一部の荷電粒子もグリッド電極5b(5d)のビーム引き出し口を通過する場合があるが、このような荷電粒子が被処理物Xに照射されることを防止するために、グリッド電極の下流側にディフレクタや電子トラップを設けるようにしてもよい。ディフレクタは、真空容器の径方向に電圧を印加することによって荷電粒子の進行方向を変化させて、荷電粒子の被処理物Xへの照射を防止するものである。また、電子トラップは、径方向に磁界を形成することによって荷電粒子の進行方向を変化させて、荷電粒子の被処理物Xへの照射を防止するものである。
【0051】
しかし、本文献の中ではプラズマの正イオン密度、印加電圧、グリッド電極のビーム引き出し穴の穴径等の数値については開示が存在しない。本発明では、これらの数値の範囲を指定したが、これは、安価な加工方法でグリッド電極を製作できるところ、電極厚みが厚く機械的強度に優れるところ、電極の使用可能時間が長くなり装置の使用時間が延びるところに進歩性を見出したからである。
本発明のビーム源では、高密度プラズマから直接グリッド電極に高密度のイオンを引き込んでいるので、高密度低エネルギービーム源として、実用上の利点は更に大きい。また、特許文献5の技術だと、2枚目のメッシュ電極と3枚目のグリッド電極との穴の位置関係は相互に同じではないし電極間距離も10〜30mmと離れているため、3枚目のグリッド電極表面には全面に対して、印加された電圧で加速されたイオンが衝突するためスパッタで消耗するが、本発明ならば、2枚のグリッド電極の穴の中心位置は相互に同じなので、重ねたグリッド電極のうち下流側の電極はスパッタで消耗して使用できなくなるまでの時間が大幅に長くなり産業上、連続運転時間が長くなる利点が生じる。
【0052】
なお、本明細書に用いられる用語の定義について説明する。
「正負イオンプラズマ」は、正イオンと負イオンとの密度がほぼ同じに混在した状態として用いている。電子が若干混在していてもよい。また、常に正負イオンプラズマの状態である必要はなく、正イオンと電子とから成るプラズマの状態と正負イオンプラズマの状態とが交互に繰り返してもよい。たとえば、10μ秒は正イオンと電子とから成るプラズマを形成し、次の100μ秒の間に電子が残留ガスに付着して負イオンに変わり正負イオンプラズマを形成するといった状態も含まれる。
「プラズマ電位固定電極」は、グリッド電極に対して一定の電位を正負イオンプラズマに与えるための電極である。
「ビーム引き出し穴」の形状は円形だけでなく、多角形でもよい。円形の場合は「穴径」は円の直径を意味するが、多角形の場合は最長の頂点間距離を意味する。
【0053】
また、中性粒子ビームの粒子数密度をあらわすときにも、イオンの数に換算して、「イオン電流密度」という用語で表現している。従って、「イオン電流密度」は中性粒子ビームの粒子数密度を含めて表現したものである。
【0054】
また、上述した実施形態における高周波の周波数領域は13.56MHzに限られるものではなく、1MHz〜20GHzの領域を用いてもよい。
【0055】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0056】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、ビーム引き出し穴径0.5mm以上のグリッド電極を通して、低エネルギーで高いイオン電流密度の正イオンビーム、負イオンビーム、中性粒子ビームによって被処理物を加工することが可能となる。このため、早い処理スピードで、かつ、被処理物の回路や結晶構造にダメージを与えることなく処理することが可能となる。特に、高密度のイオンを引き出す手段として正負イオンプラズマを用いることによって、φ0.5mm以上と大きな穴径をもつグリッド電極を用いることができるので、グリッド電極の板厚を厚くでき、したがって、グリッド電極の機械的強度を高めることができる。このため、安価に大口径のビーム源を作ることが可能となる。さらに、グリッド電極を2枚の近接したグリッド電極、さらには、プラズマ電位固定電極と2枚のグリッド電極とを併用することで、イオン電流密度を下げずにグリッド電極に衝突するイオンのエネルギを下げることができる。従って、グリッド電極のスパッタ損耗速度を遅くでき、ビーム装置の連続運転時間を長くでき、装置の運用コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のビーム源の全体構成を示す図であり、(b)は高周波電流の断続的な供給を示す波形図であり、(c)はプラズマ電位固定電極の構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の変形例のビーム源の全体構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の他の変形例のビーム源の全体構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のビーム源の全体構成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の他の変形例のビーム源の全体構成を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の他の変形例のビーム源の全体構成を示す図である。
【図7】本発明の実施形態のビーム処理装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
1 ガス導入ポート
2 プラズマ生成室(容器)
3 誘導結合型のコイル
4 プラズマ電位固定電極
5,5a,5b,5d グリッド電極
6 マッチングボックス
7 高周波電源
9 直流バイアス電源
11 保持部
12 真空容器
13 真空排気ポート
14 ビーム源
X 被処理物

Claims (9)

  1. ガスを導入する手段と、前記ガスをプラズマ化して正イオンと負イオンとが同時に混在する状態を生成する正負イオンプラズマ生成手段と、前記正負イオンプラズマを生成する正負イオンプラズマ生成室と、前記正負イオンプラズマ生成室内に配置されたプラズマ電位固定電極と、複数のビーム引き出し穴を設けたグリッド電極と、前記プラズマ電位固定電極と前記グリッド電極との間に電圧を印加する電圧印加部とを備え、
    前記正負イオンプラズマの前記正イオンの密度が1010個/cm3以上で、
    前記電圧印加部に印加する電圧が500V以下で、
    前記グリッド電極に設けた前記ビーム引き出し穴の穴径が0.5mm以上であることを特徴とするビーム源。
  2. 前記正負イオンプラズマ生成手段は、前記プラズマ生成室近傍に配置したコイルに高周波電流を断続的に供給する手段であることを特徴とする請求項1に記載のビーム源。
  3. ガスを導入する手段と、
    前記ガスをプラズマ化して正イオンと負イオンとが同時に混在する状態を生成する正負イオンプラズマ生成手段と、
    前記正負イオンプラズマを生成する正負イオンプラズマ生成室と、
    複数のビーム引き出し穴を設けた複数のグリッド電極と、
    前記複数のグリッド電極間の相互に電圧を印加することで、前記正イオン又は前記負イオンを加速し、前記グリッド電極に設けた前記ビーム引き出し穴を通してイオンまたは該イオンから中性化されたビームを引き出すことを特徴とするビーム源。
  4. 前記正負イオンプラズマ生成手段は、前記プラズマ生成室近傍に配置したコイルに高周波電流を断続的に供給する手段であることを特徴とする請求項3に記載のビーム源。
  5. 前記正負イオンプラズマ生成室内に配置されたプラズマ電位固定電極と、前記プラズマ電位固定電極と前記グリッド電極との間に電圧を印加する電圧印加部とをさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載のビーム源。
  6. 前記複数のグリッド電極に設けたビーム放出孔を相互に位置合わせして、それぞれのビーム放出孔の位置が一致するようにしたことを特徴とする請求項3に記載のビーム源。
  7. 前記グリッド電極のうち、少なくとも1枚のグリッド電極に対して、開口した前記ビーム引き出し穴のアスペクト比(穴の長さ/穴の径)が10以上であることを特徴とする請求項3に記載のビーム源。
  8. 前記プラズマ電位固定電極と前記グリッド電極との間に電圧を印加する電圧印加部は、前記グリッド電極に対して加速されたイオンによるスパッタリングが実用上生じない程度の低電圧を供給するものであることを特徴とする請求項5に記載のビーム源。
  9. 真空チャンバ内にビームを照射する請求項1乃至8のいずれかに記載のビーム源と、
    前記ビームが被処理物の表面に照射されるように前記被処理物を保持する保持部と、を備えたことを特徴とするビーム処理装置。
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