本発明のリチウムポリマー電池の製法は、電極活物質、特に非晶質炭素を活物質とした負極を集電箔に塗工する前にインクの状態でプレ充電/プレ放電を行うことを特徴とするものである。これにより、初充電時に発生するガス量を低減することができる。また、電極活物質が粉の状態でプレ充電/プレ放電を行うと以下のような問題もない。(i)従来の集電体に電極を形成後に初充電/放電を行う場合、集電体と電極の間にガスがたまることで、この間で剥離するおそれがあったが、粉の状態で行うためこうした問題もない。(ii)従来の集電体に電極を形成後に初充電/放電を行う場合、体積効率が良くなかったが、粉の状態で行うため体積効率も上がる。
以下、本発明のリチウムポリマー電池の製法につき、図面を用いて説明する。
図1は、本発明のリチウムポリマー電池の製法の代表的な実施形態(第1の実施形態ともいう)の工程フローチャートを示す図面である。
図1に示すように、本発明のリチウムポリマー電池の第1の実施形態による製法では;
(1)正極の形成工程として、(i)正極プレインク作製工程101と、(ii)正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程103と、(iii)正極プレインクの洗浄・乾燥工程105と、(iv)正極インク作製工程107と、(v)正極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程109と、(vi)正極へのプレゲル塗布工程111と、を有するものである。
同様に、(2)負極の形成工程として、(i)負極プレインク作製工程121と、(ii)負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程123と、(iii)負極プレインクの洗浄・乾燥工程125と、(iv)負極インク作製工程127と、(v)負極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程129と、(vi)負極へのプレゲル溶液の塗布工程131と、を有するものである。
また、(3)ポリマー電解質層の形成工程として、(i)プレゲル溶液の作製工程141と、(ii)セパレータへのプレゲル塗布工程143と、を有するものである。
次に、(4)電池作製工程として、(i)正極、負極、ポリマー電解質層の組立工程151と、(ii)再充電工程153と、(iii)エージング・検査工程155と、を有するものである。
以下、上記した第1の実施形態による各工程につき、詳しく説明する。
(1)正極の形成工程
(i)正極プレインク作製工程
正極プレインク作製工程101では、正極を構成する成分のうち、正極活物質及び電子伝導性を高めるための導電材を所定の配合比率で配合し、これにプレ充電/プレ放電に適した必要量の電解液を加え、懸濁させて正極プレインクを作製する。この段階では、正極を構成する他の成分は加えないほうがよい。特に、NMPのような粘度調整用の溶媒を含む場合には、電位がかかっている状態で該溶媒があると反応してガス発生してしまい、電極活物質のプレ充電/プレ放電の妨げになるおそれがあるためである。
上記正極活物質としては、特に制限されるものではなく、既存のリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。好ましくは、容量、出力特性に優れた電池を構成できることから、遷移金属とリチウムとの複合酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)である。具体的には、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn2O4、LiMnO2などのLi・Mn系複合酸化物、Li2Cr2O7、Li2CrO4などのLi・Cr系複合酸化物、LiFeO2、LixFeOyなどのLi・Fe系複合酸化物、LixVyOzなどのLi・V系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの(例えば、LiNixCo1−xO2(0<x<1)等)などが挙げられるが、本発明はこれらの材料に限定されるものではない。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル耐久性に優れ、低コストな材料である。そのためこれらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成することができる点で有利である。バイポーラ電池では、上記正極活物質の中でLi−Mn系複合酸化物が望ましい。これは、Li−Mn系複合酸化物を用いることにより、プロファイルを傾けることが可能となり、異常時信頼性が向上するためである。その結果、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になる利点を有する。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V2O5、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどを用いることもできる。
上記正極活物質の粒径は、特に制限されないが、以下に説明する正極インクの塗布方法に応じて、最適な粒径のものを選択するのが望ましい。例えば、従来のコーターなどの塗布方法、あるいはスプレーコートやスクリーン印刷方式などの薄膜製造技術による塗布方法等を用いる場合には、正極活物質の粒径は、1〜100μm、好ましくは1〜10μmの範囲である。一方、本出願人が提案する新規なインクジェット方式による塗布方法(詳しくは後述する)では、正極活物質の粒径は、1μm以下、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μm、特に好ましくは0.05〜0.1μmの範囲である。正極活物質の粒径が1μmを超える場合には、正極インク中において正極活物質粒子の分散状態が保たれず沈澱してしまいため、安定したインクジェット塗布が困難となる。また電極のより一層の薄膜化を達成するのも困難となる。また、正極活物質の粒径の下限値については特に制限されるものではないが、0.05μm未満の場合には、製造が困難で好ましい放電特性を得ることができないおそれがある。
上記電子伝導性を高めるための導電材としては、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。ただし、これらに限られるわけではない。
また、導電材の粒径は、特に制限されないが、以下に説明する正極インクの塗布方法に応じて、最適な粒径のものを選択するのが望ましい。例えば、従来のコーターなどの塗布方法、あるいはスプレーコートやスクリーン印刷方式などの薄膜製造技術による塗布方法等を用いる場合には、導電材の粒径は、1〜100μm、好ましくは1〜10μmの範囲である。一方、本出願人が提案する新規なインクジェット方式による塗布方法(詳しくは後述する)では、1μm以下であればよいが、好ましくは0.005〜0.1μm、より好ましくは0.01〜0.05μmの範囲である。導電材の粒径が1μmを超える場合には、正極インク中で導電材粒子の分散状態が保たれず沈澱してしまいため、安定したインクジェット塗布が困難となる。また正極のより一層の薄膜化を達成するのも困難となる。一方、導電材の平均粒径の下限値は、正極のより一層の薄膜化の観点からは特に制限されるものではない。
なお、上記正極活物質および導電材の粒径は、いずれも平均粒径をいうものとする。
上記正極活物質および導電材の粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて観察することにより測定されうる。
上記正極活物質および導電材の粒子の形状としては、いずれも球状の形態のみに制限されず、板状、針状、柱状、角状などの形態であってもよい。これらの粒子の形状は、所望の電池特性(例えば、充放電特性やサイクル耐久性など)を考慮して適宜選択されうる。粒子の形状が球状以外の場合には粒子の形状が一様ではないため、かような場合には粒子の絶対最大長を粒子の平均粒子径とする。ここで「絶対最大長」とは、粒子の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離をいう。絶対最大長を測定する際には、電子顕微鏡写真の一定の領域中に存在する各粒子の絶対最大長の平均値を用いることが好ましい。あるいは、本発明に用いる活物質粒子および導電材粒子をそれぞれ篩分けにより選別する場合には、篩分けに用いる篩の篩い目(メッシュスルーサイズまたはメッシュパスサイズ)を絶対最大長として採用してもよい。なお、電極活物質粒子は、1次粒子が凝集してなる2次粒子であってもよい。
正極活物質及び導電材粒子としては、自ら調製したものを用いてもよいし、所望の粒径の商品が市販されている場合には、商品を購入して用いてもよい。
また、「正極活物質粒径/導電材粒径」の比が、「10/1」以上であることが好ましい。「正極活物質粒径/導電材粒径」の比を「10/1」以上とすることにより、正極インク中の導電材の割合を特に規定することなく、電池特性を同等以上にすることができる。例えば、「正極活物質粒径/導電材粒径」の比が「1/1」では、正極インク中の導電材の割合を正極活物質量の7割(質量比)まで増やしても、正極活物質粒子表面に吸着する導電材の粒子間接触によって形成される導電ネットワークがつながりにくくなる(部分的に切断される箇所ができる)。その結果、十分な電池特性を発現させることができない。一方、「正極活物質粒径/導電材粒径」の比が「10/1」以上では、正極インク中の導電材の割合が正極活物質量の数%(質量比)程度と極少量であっても、正極活物質粒子表面に吸着する導電材の粒子間接触によって形成される導電ネットワークがつながるようになる。その結果、十分な電池特性を発現させることができる。かかる関係は、特に正極活物質及び導電材粒径1μm以下のものを用いて、正極インクをインクジェット方式による塗布方法で行う場合に有用である。
また、導電材の割合は、発明の目的、更には導電材や正極活物質の粒子サイズ等に応じて適宜決定されるものである。導電材の割合(質量比)は、上記「正極活物質粒径/導電材粒径」の比を満足すれば、正極活物質全量に対して10質量%あればよいが、これらの範囲に制限されるものではない。
電解液としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。通常リチウムイオン電池で用いられるものであればよく、リチウム塩(電解質塩)と有機溶媒(可塑剤)とを含むものなどを用いることができる。具体的には、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩(電解質塩ないし支持塩)を含み、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン(GBL)等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくともから1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)を用いたものなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記電解液の含有量は、正極プレインク全量に対して50質量%以上であればよい。本件においてはプレ充電後には電解液を除去するので電解液は活物質より多ければよく、活物質及び導電材の乾燥状態の空隙率をおおよそ50%とした場合、空隙分の電解質液を注入すればすべての活物質を電解液に接触させることができる。
(ii)正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程
プレ充電・ガス抜き・プレ放電工程103では、従来の電池における初充電/初放電と同様に、上記(i)の工程で得られた正極プレインクについて、フル(満)充放電を行う。本工程では、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。これは、電池の初充電時に発生するガスを予め抜き出しても、その後に少量ではあるが該インク中に水分や大気中のガス成分が混入してしまい、電池の初充電時に発生するガスの一因となるおそれがあるためである。
図2は、本発明の電極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電に用いられる装置の一実施形態を模式的に表した概略断面図である。
装置201では、充放電用電源(図示せず)に電気的に接続されてなる、上面が開放されたSUS製のプレインク収納容器203及び、表面にLi金属(一方の電極)をつけたSUS製の容器蓋205とを備えてなるものである。なお、容器及び蓋の材質は、電気伝導性の材料であれば良いが、銅では、プレ充電/放電により溶け出すおそれがあるため、上記したSUS等を用いるのが望ましい。
本工程103の正極プレインクのプレ充電工程103aでは、図2に示すプレ充放電装置201を用いて行う。詳しくは、装置201の収納容器203内に上記(i)の工程で得られた活物質103’及び導電材105’を含む上記プレインク101’を充填し、その上からセパレータ207を被せて、セパレータに電解液を含浸させる。更に該セパレータ207上面に容器蓋205を設置し、上記した減圧雰囲気下において、プレ充電として、正極プレインクが所定電圧(例えば、正極活物質の理論充電電圧4.2V)になるまでフル充電を行う。これにより、初充電時に発生するガスを、本工程で予め発生させることができる。
プレ充電条件としては、特に制限されるものではないが、電池の初充電と同様の充電条件として、初充電時と同程度のガス発生を促すことが望ましい。かかる観点から、例えば、後述する実施例1に示すように、およそ20μA/cm2の範囲で定電流定電圧充電を行うのが望ましいが、かかる範囲に制限されるものではない。
次に、ガス抜き工程103bとしては、プレ充電に伴って発生したガスを除去する。これにより、プレ充電工程で予め発生させたガスを外部に抜き出すことができる。該ガス抜き工程としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、超音波を用いるのが望ましい。この際、超音波で加振しながら減圧するのがより望ましい。これは、プレ充電工程により活物質粒子表面や粒子間の隙間にガス(気泡)が付着しているような場合もあり、こうした場合でも確実にガス(気泡)をインク外部に除去することができるためである。従来技術では塗布後にガス抜きを行なうため、超音波を使うことが出来ないこともあり、一度発生したガスを流動性が低いポリマー電解質層を通じて外部に除去するのが困難であった。本発明では、懸濁液のプレインクを超音波で加振しながら、好ましくは更に減圧することで、活物質粒子表面や粒子間に付着しているガスを素早く確実に取り除くことができ、ガス除去効果を高めることができる。該超音波発生装置としては、上記図2に示す装置201の収納容器203に内臓してもよい。あるいは、図2に示す装置201とは別に、着脱自在な超音波発生装置を用意し、ガス抜き工程の際に収納容器203内に設置するようにしてもよいなど、特に制限されるものではない。
本ガス抜き工程103bを行うことで、実施例2に示すように、該ガス抜きを行わない実施例3に比して、電池性能が向上する。特に大電流での出力特性を大幅に向上させることができる点で優れていることがわかる。
次に、プレ放電工程103cでは、ガス抜き工程103b終了後に、正極プレインクのプレ放電を行う。
該プレ放電工程でも、上記した装置201をそのまま用い、正極側と負極側をプレ充電時とは逆転させて、プレ放電として正極プレインクが所定電圧(例えば、正極活物質の理論放電電圧2.5V)になるまでフル放電を行う。これにより、初充電時に発生するガス抜きをしておくことができる。同時に上記プレ充電/プレ放電により、活物質以外のLiイオン供給源(容器蓋205表面に付けたLi金属)を用いて、活物質の不可逆容量サイトと反応させることにより、活物質由来のLiイオンが不可逆容量サイトにトラップされて可逆容量が減少することを防ぐこともできる。ただし、かかる効果は、後述する負極側においてより顕著であるため、本工程103では、容器蓋205表面にLiイオン供給源となるLi金属等を必ずしも付けなくても良いといえるが、好ましくはLi金属等を付けておくのが望ましい。特に、正極及び負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程に同じ装置を用いる場合には、部品の共通化による部品点数の低減及び部品の取り違え等などが防止できる点でも優れている。
プレ放電条件としては、特に制限されるものではないが、電池の初放電と同様の放電条件とするのが望ましい。具体的には、活物質内に充電で蓄えた蓄電エネルギーを全て放出した状態(空の状態)にする。こうすることでインクや電極を取り扱い易い状態にすることできる。かかる観点から、例えば、後述する実施例1に示すように、およそ20μA/cm2の範囲で定電流放電を行うのが望ましいが、かかる範囲に制限されるものではない。
なお、本工程103では、上記した、プレ充電工程103a、ガス抜き工程103b、プレ放電工程103cの順のほか、例えば、プレ充電工程103a、プレ放電工程103c、ガス抜き工程103bの順で行ってもよい(実施例1参照)。更に、プレ充電工程103a、ガス抜き工程103b、プレ放電工程103c、ガス抜き工程103bの順でガス抜き工程を2回行ってもよいなど、本発明の目的に合致し、その作用効果を達成することができるものであれば、いかなる順序であってもよい。
(iii)正極プレインクの洗浄・乾燥工程
正極プレインクの洗浄・乾燥工程105では、工程103終了後、上記装置201から正極プレインクを取り出し、適当な溶媒、例えば、DEC等で洗浄して、真空乾燥させることにより揮発成分を除去して、プレ充電/プレ放電済の活物質及び導電材を得る。
詳しくは、後述する実施例のように、上記装置201から正極プレインクを取り出し、適当な溶媒、例えば、DECを満たした溶媒槽に沈め、正極プレインク中に残存する電解質(例えば、LiPF6など)を溶媒側に溶出させ、その後再び減圧乾燥を行えばよい。ただし、本発明では、これらに制限されるものではない。
本工程では、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。
本実施形態では、正極プレインクの洗浄・乾燥工程105を施すことにより、後述する4に示すように、正極プレインクの洗浄・乾燥工程105を行わない第2の実施形態(実施例2、3)に比して、電池性能が向上する事がわかる。特に大電流での出力特性が大幅に向上することができる点で優れている。
(iv)正極インク作製工程
正極インク作製工程107では、上記工程105で得られたプレ充電/プレ放電済の正極活物質及び導電材に、必要に応じて他の成分を加え、粘度調整用の溶媒を適量加えて混合し、正極活物質及び導電材粒子が十分に均一に分散された正極インクを作製する。
上記混合攪拌手段は、溶媒中に電極活物質粒子や導電材粒子を十分に均一に分散することができるものであればよく、従来公知の各種の攪拌・混合・攪拌装置を用いることができるなど、特に制限されるものではない。好ましくは、これらの混合攪拌操作を迅速且つ確実に行えるものが望ましい。こうした好適な混合攪拌手段としては、例えば、ホモジナイザー、攪拌脱泡機などの装置を用いることができる。
また、上記必要に応じて用いられる他の成分には、例えば、バインダ、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、ポリマー電解質(高分子原料や電解液など)、重合開始剤、添加剤などが含まれ得るが、これらに制限されるものではない。本実施形態では、図1に示すように、プレゲル溶液を電極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程109後に塗布することもできる。そのため、プレゲル溶液の組成成分である、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、ポリマー電解質(高分子原料や電解液など)、重合開始剤などは、正極インクとして含まなくてよい。即ち、本実施形態では、正極インクに必要に応じて用いられる他の成分には、バインダ、添加剤などが含まれ得るものとする。ただし、正極インクに必要に応じて用いられる他の成分には、これらプレゲル溶液成分も含めても良いことはいうまでもない。
なお、本工程でも、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。
上記粘度調整用の溶媒としては、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトニトリルが挙げられる。ただし、その他の溶媒が用いられても、勿論よい。
上記バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)、ポリイミドなどが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記添加剤としては、例えば、電池の性能や寿命を高めるためのトリフルオロプロピレンカーボネート、補強材として各種フィラーなどが挙げられる。これらは、必要に応じて適量含まれる。
正極インク中の、正極活物質、導電材、粘度調整用の溶媒、バインダ、添加剤等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。
(v)正極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程
正極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程109では、まず、塗布工程109aとして、集電体(または適当な基材)上に、適当な方法にて正極インクを塗布する。
ここで、集電体としては、特に制限されるものではなく、従来公知のものを利用することができる。例えば、アルミニウム箔、ステンレス(SUS)箔、ニッケルとアルミニウムのクラッド材、銅とアルミニウムのクラッド材、SUSとアルミニウムのクラッド材あるいはこれらの金属の組み合わせのめっき材などが好ましく使える。また、金属表面に、アルミニウムを被覆させた集電体であってもよい。また、場合によっては、2つ以上の金属箔を張り合わせた集電体を用いてもよい。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウム箔を集電体として用いることが好ましい。
正極と負極集電体を分けて用いる場合、正極集電体の材料としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、SUS、チタンなどの導電性金属を用いることができる。アルミニウムが特に好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、銅、ニッケル、銀、SUSなどの導電性金属を用いることができる。SUS及びニッケル等が特に好ましい。また、正極集電体と負極集電体とは、互いに直接あるいは第三の材料からなる導電性を有する中間層を介して電気的に接続していれば良い。
さらに、集電体についても、スプレーコート、更にはスクリーン印刷方式やインクジェット方式などの薄膜製造技術により、所望の形状に製膜して形成したものを利用することもできる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などの金属粉末を主成分として、これにバインダ(樹脂)、溶剤を含む集電体金属ペーストを加熱して成形してなるものである。これら金属粉末は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよいし、さらに、製法上の特徴を生かして金属粉末の種類の異なるものを多層に積層したものであってもよい。上記バインダとしては、特に制限されるべきものではなく、たとえば、エポキシ樹脂など、従来公知の樹脂バインダ材料を用いることができるほか、導電性高分子材料を用いても良い。
集電体の厚さは、通常通りでよく特に限定されないが、1〜100μm程度である。好ましくは電極の薄膜化の観点から、集電体の厚さは100μm以下、好ましくは1〜50μmであるのが望ましい。
また、集電体上ではなく、適当な離型可能な基材上に正極インクを塗布・乾燥・プレス・裁断して正極を作成してもよい。該適当な離型可能な基材としては、例えば、ガラス、ポリエチレンなどの離型フィルム等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。この場合には、正極インクを塗布・乾燥・プレス・裁断した後、集電体上に貼り付けた後、表面の基材を剥離すればよい。
次に、正極インクの塗布方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、従来のアプリケーターやコーターなどの塗布方法、あるいはスプレーコート、スクリーン印刷方式、インクジェット方式などの薄膜製造技術による塗布方法等を用いることができる。なかでも本出願人が提案する新規なインクジェット方式による塗布方法では、上記した活物質及び導電材粒径1μm以下とすることで長持間放置しても安定したインクジェット塗布が可能となる。そのため、数μm以下の膜厚の薄膜電極であっても、厚さ、密度を精密に制御した薄膜電極を提供することができる。その結果、得られた薄膜電極を用いたリチウムポリマー電池の抵抗は、コーターを用いる従来の電極塗工で得られた電極を用いた電池の抵抗より小さくすることができる。そのため超高出力型のリチウムポリマー電池として高い電流レートで充放電した場合でも、必要なエネルギーをとり出すことができるなど、電池の充放電性能の向上を図ることができる。以下、好適な塗布方法の1つである方式で印刷する塗布方法を例にとり説明する。
ここで、インクジェット方式で印刷する塗布方法(インクジェット法)とは、インクジェットプリンタのノズルからインクを液滴として集電体等の基材上に塗布する方法である。
上記インクジェット法には、ピエゾ素子方式、サーマルインクジェット方式、continuance方式の3つの方式があり、そのいずれをも採用しえるものであるが、電池材料の熱安定性の観点から、ピエゾ素子方式を用いるのが望ましい。ピエゾ素子方式は、一般にドロップオンデマンド方式として知られている、電圧を印加すると変形するセラミックス(ピエゾ素子)を用いて液体を吐出する、ピエゾ型を用いる方式をいう。ピエゾ素子方式は、正極インクに含まれるバインダや電解質材料等の熱安定性に優れ、塗布する各インク量を可変することができる。さらには、比較的高粘度の液体を他のインクジェットヘッドに比べて確実・安定に、かつ精確に吐出することができ、粘度10〜100Pa・s(10〜100cP)程度の液体の吐出に有効に用いることができる点で優れている。
上記ピエゾ型のインクジェットヘッド内部は、一般的に、インクを貯留する液室が形成され、この液室はインク導入部を介して前記液室に連なっている構造を有する。インクジェットヘッドの下方部位には、ノズルが多数配列形成されている。また、インクジェットヘッドの上方部位には、前記液室内のインクをノズルから吐出するための圧電素子と、この圧電素子を動作させるためのドライバーとが配備されている。かようなインクジェットヘッドの構造は一実施形態に過ぎず、特に限定されない。
インク導入部がプラスチックであった場合、インクに含まれ得る溶媒が、前記プラスチック部分を溶解させる恐れがある。従って、インク導入部は耐溶媒性に優れた金属製のものが好ましい。
上記正極インクをインクジェット方式で塗布する方法としては、特に限定されない。例えば、正極インク用のインクジェットヘッドを一つ設け、該ヘッドに設けた複数の微小径ノズルの液体吐出動作を、それぞれ独立に制御することにより、集電体(または基材)表面に液滴を塗布する方法が挙げられる。あるいは、正極インク用にインクジェットヘッドを複数設けると共に、各ヘッドに設けた複数の微小径ノズルの液体吐出動作を独立に制御して、集電体(または基材)表面に一度に複数の液滴を同時に塗布する方法等が挙げられる。かような塗布方法により塗布の速度を上げることができ、短時間で電極を作成することができる。また、かような塗布方法において、液体吐出動作を独立に制御するには、特に限定されない。例えば、上述のインクジェットヘッドを用いたインクジェットプリンタを、市販のコンピュータなどに連結させ、適当なソフトにより所望するパターンを作成して、かようなソフトからの電気信号により制御を行えばよい。適当なソフトとしては、Power Point(マイクロソフト社製)、AutoCAD(AutoDesk社製)などの市販のソフトを用いることができる。ただし、市販ソフトに制限されるものではなく、新たに開発したソフトを用いてもよい。
また、本発明の正極インクの粘度は、インクジェットで塗布するのに適した粘度であればよく特に制限されるものではないが、100cP以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜100cPである。正極インクの粘度が100cPを超えるとノズルを通過できない恐れがある。一方、正極インクの粘度の下限値は特に制限されるものではないが、0.1cP未満であると流量を制御することが困難となる恐れがある。なお、本発明でいう正極インクの粘度は、特に断らない場合には、25℃での粘度をいうものとする。
さらに、本発明では、本実施形態の製法(具体的には、上記プレ充電/放電工程103及び以下で説明するプレ充電/放電工程123)でプレ充電/放電処理した正極及び負極活物質を用い、不可逆容量を除いた後の可逆容量の値を用いて負極/正極の容量バランスを所定の値、望ましくは負極容量/正極容量=1.0〜1.2に設計することが望ましい。具体的には、正極インクの塗布工程109aと負極インクの塗布工程129aにより塗布される正極及び負極インク量、ひいては正極及び負極の厚さを上記負極容量/正極容量の範囲となるように調整する。これは後述する第2の実施形態においても同様である。これは、例えば、正極及び負極共に同じ容量となるように従来の製法にて電極を作製した場合、初充電時に正極側では不可逆容量が3%程度生じる(可逆容量97%程度に低下する)のに対し、負極側では不可逆容量が20%程度にもなる(可逆容量80%程度にまで低下する)。そのため、以後の電池全体の充放電では、初充電の際に生じた負極側の不可逆容量により、電池の充放電容量が制限されることになり、正極側では17%程度が未利用のままとなっていた。本発明の製法では、プレ充電/プレ放電により、活物質外のLiイオン供給源を用いて、活物質の不可逆容量サイトと反応させることにより、活物質由来のLiイオンが不可逆容量サイトにトラップされて可逆容量が減少することを防ぐこともできる。その結果、上記した負極容量/正極容量の範囲で調整することで、正極及び負極の未利用な活物質量を低減することができる。なお、負極容量/正極容量=1.0未満の場合には金属リチウムの析出の恐れがあり、負極容量/正極容量=1.2を超える場合には従来技術と同様に未使用の正極活物質が増加してしまい電池容量の向上が期待できない。
次に、正極インクの塗布後の乾燥工程109bでは、集電体(または基材)上に塗布した正極インクを適当な乾燥条件で乾燥させる。
該乾燥条件としては、通常雰囲気、好ましくは真空雰囲気下、20〜200℃、好ましくは80〜150℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間行えばよい。しかし、これに限定されず、塗布した正極インクに含まれる溶媒量などに応じて適宜決定すればよい。なお、正極インクに、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有する高分子原料(ポリマー電解質)及び重合開始剤が含まれている場合には、正極インクを塗布後に該高分子原料(ポリマー電解質)を重合硬化(化学架橋)する。かかる重合硬化条件は、重合開始剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、光重合開始剤を用いた場合には、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下、好ましくは真空雰囲気下、0〜150℃、好ましくは20〜40℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間、紫外線を照射して行う。また、熱重合開始剤では、上記乾燥条件下で、同時に熱重合硬化させればよい。
また、正極インクの塗布・乾燥後のプレス工程109cとして、上記の方法により塗布乾燥された正極にプレス操作を行うのが望ましい。このプレス操作を行うことで、得られる正極の表面をより平坦化させることが可能となる。プレス操作に用いられる装置および条件は特に制限されず、従来公知の装置および方法が適宜用いられうる。
さらに、工業的な生産過程においては、正極インクの塗布・乾燥・プレス後の裁断工程109dとして、生産性を向上させるために、最終的な電池のサイズよりも大きい正極を作製し、これを所定の大きさにカットする裁断工程を採用してもよい。
(vi)正極へのプレゲル塗布工程
本実施形態では、正極へのプレゲル塗布工程111として、正極インクを塗布・乾燥・プレス・裁断した後の正極に、プレゲル溶液を塗布・硬化するのが望ましい。本発明では、正極にもポリマー電解質が含まれていることが望ましいためである。プレゲル溶液を塗布・硬化させて作製した正極では、活物質粒子や導電材粒子間の空隙等にポリマー電解質を充填することができ、正極におけるイオン伝導がスムーズになり、電池全体としての出力向上が図れるためである。ただし、必ずしも正極にプレゲル溶液を塗布しなくてもよい。例えば、高分子ゲル電解質層側から、正極内の活物質や導電材粒子間等の空隙部にも高分子ゲル電解質層中の電解液が浸透させることができためである。あるいは、正極インク中に、これらプレゲル溶液成分を配合して正極を作製しても良い。これによりプレゲル塗布工程を省くことができる。
ここで、プレゲル溶液には、イオン伝導性を高めるためのリチウム塩、ポリマー電解質(高分子原料や電解液など)、重合開始剤などが含まれる。
上記イオン伝導性を高めるためのリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiAlCl4、Li2B10Cl10等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);LiBETIとも記載)、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)等の有機酸陰イオン塩、またはこれらの混合物などが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。
上記ポリマー電解質には、全固体電解質と全固体高分子電解質と高分子ゲル電解質とがある。全固体高分子電解質と、高分子ゲル電解質(単にゲル電解質ともいう)との違いは、以下のとおりである。
1)ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質に、通常のリチウムイオン電池で用いられる電解液を含んだものが高分子ゲル電解質である。
2)ポリフッ化ビニリデン(PVdF)など、リチウムイオン伝導性をもたない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも高分子ゲル電解質にあたる。
3)高分子ゲル電解質を構成するポリマー(ホストポリマーないしポリマーマトリックス)と電解液の比率は幅広く、ポリマー100質量%を全固体高分子電解質、電解液100質量%を液体電解質とすると、その中間体はすべて高分子ゲル電解質にあたる。
4)ポリエチレンオキシド(PEO)などの全固体高分子電解質には、更にリチウム塩(電解質塩)を含むものも含まれる。
上記全固体電解質としては、セラミック系の無機のリチウムイオン導電体、例えば、Li3N、ナシコン型(Li1+xAlxTi2−x(PO4))、ペロブスカイト型(La2/3−xLi3xTiO3)、リシコン型(Li4−xGe1−xPxS4)などが挙げられる。全固体電解質にも、更にリチウム塩(電解質塩)を含んでいてもよい。
上記全固体高分子電解質としては、特に限定されるものではなく、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体などのポリアルキレンオキシド系高分子が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子は、BETI、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、正極インク中に、架橋前の高分子原料(電解質ポリマー)及び重合開始剤を加えておき、正極インクをインクジェット塗布して作成した正極を熱や光などで架橋重合を促進させることで、架橋構造を形成し、優れた機械的強度が発現するようにするのが望ましい。
上記高分子ゲル電解質は、ポリマーマトリックス中に電解液を保持させたものをいう。具体的には、イオン導伝性を有する高分子(いわば、固体高分子電解質)に、通常リチウムイオン二次電池で用いられる電解液を含んだもの、さらにリチウムイオン導伝性を持たない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも含まれる。
上記高分子ゲル電解質の高分子原料(ポリマーマトリックス)としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)およびそれらの共重合体が望ましく、分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有するものがより好ましい。この架橋性の官能基を用いて高分子原料を架橋することによって、機械的強度が向上するためである。
このうち、イオン導伝性を有する高分子としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のようなポリアルキレンオキシド系高分子などの公知のポリマー電解質が挙げられる。PEO、PPOのようなポリアルキレンオキシド系高分子は、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2などのリチウム塩をよく溶解しうる。また、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度が発現する。
上記リチウムイオン導伝性を持たない高分子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのゲル化ポリマーを形成するモノマーが使用できる。ただし、これらに限られるわけではない。なお、PAN、PMMAなどは、どちらかと言うとイオン伝導性がほとんどない部類に入るものであるため、上記イオン伝導性を有する高分子とすることもできる。ここでは高分子ゲル電解質に用いられるリチウムイオン導伝性を持たない高分子として例示したものである。
上記高分子ゲル電解質に含まれる電解液としては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用することができる。詳しくは、上記プレインクに用いられる電解液と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
上記高分子ゲル電解質におけるホストポリマーと電解液との比率(質量比)は、使用目的などに応じて決定すればよいが、イオン伝導度などの観点から、2:98〜90:10の範囲である。
上記重合開始剤としては、イオン伝導性ポリマー等の高分子原料の架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。重合開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(熱重合用)やベンジルジメチルケタール(BDK)(光重合用)等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、上記高分子原料に含まれる架橋性官能基の数に応じて決定される。通常は高分子原料に対して0.01〜1質量%程度である。
プレゲル溶液の使用量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。例えば、プレゲル溶液を塗布・硬化後の正極内のポリマー電解質の配合量が少なすぎると、正極内でのイオン伝導抵抗やイオン拡散抵抗が大きくなり、電池性能が低下してしまう。一方、正極内におけるポリマー電解質の配合量が多すぎると、電池のエネルギー密度が低下してしまう。従って、これらの要因を考慮して、目的に合致したプレゲル溶液量を決定すればよい。
プレゲル溶液の塗布方法としては、特に限定されず、アプリケーターやコーターなどを用いれば微量の供給も可能である。
上記プレゲル溶液には、高分子原料(分子内に架橋性の官能基(炭素−炭素二重結合など)を有するポリマー電解質材料)及び重合開始剤が含まれる。そのため、プレゲル溶液を塗布後に該高分子原料を重合硬化(化学架橋)する。かかる重合硬化条件は、重合開始剤の種類に応じて適宜決定すればよい。例えば、光重合開始剤を用いた場合には、アルゴン、窒素などの不活性雰囲気下、好ましくは真空雰囲気下、0〜150℃、好ましくは20〜40℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間、紫外線を照射して行う。また、熱重合開始剤を用いた場合には、通常雰囲気、好ましくは真空雰囲気下、電解液が揮発しない程度の温度で行うのが良く、20〜200℃、好ましくは80〜150℃で、1分〜8時間、好ましくは3分〜1時間、熱重合硬化させればよい。
本工程プレゲル塗布工程111により得られる正極の厚さは、特に限定するものではなく、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。本発明では、正極をインクジェット方式で塗布形成することから薄膜電極に適しているが、厚い膜厚の電極であっても問題なく形成することができる。したがって、従来のコーター塗布方法による場合と同様の正極の厚さ10〜500μm程度であってもよい。更に、従来のコーター塗布では形成困難な数μm以下の薄膜電極とすることもできる。正極の薄膜化の観点からが、正極の厚さは、15μm以下、好ましくは1〜15μm、より好ましくは5〜15μmの範囲であることが望ましい。これにより、正極の薄膜化、ひいては電池の薄型・小型軽量化を図ることができるためである。正極の厚さが15μmを超える場合には、正極の薄膜化が困難となるおそれがある。なお、正極の厚さの下限値は特に制限されるものではない。ここでいう正極の厚さとは、集電体の片側に形成される正極層の厚さを言うものとする。
(2)負極の形成工程
(i)負極プレインク作製工程
負極プレインク作製工程121では、負極を構成する成分のうち、負極活物質、更に負極活物質が電子伝導性を有しない場合には電子伝導性を高めるための導電材を所定の配合比率で配合し、これにプレ充電/プレ放電に適した必要量の電解液を加え、懸濁させて負極プレインクを作製する。この段階では、負極を構成する他の成分は加えないほうがよい。特に、NMPのような粘度調整用の溶媒を含む場合には、電位がかかっている状態で該溶媒があると反応してガス発生してしまい、電極活物質のプレ充電/プレ放電の妨げになるおそれがあるためである。
上記負極活物質としては、特に制限されるものではなく、既存のリチウムイオン二次電池に使用可能なものを適宜利用することができる。具体的には、カーボン、金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、リチウム−金属複合酸化物、ホウ素添加炭素などを用いることができる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して用いても良い。好ましくはカーボンもしくはリチウム−遷移金属複合酸化物である。これらを用いることで、容量、出力特性(例えば、電池電圧が高くできるなど)に優れた電池を構成できるからである。なお、リチウム−遷移金属複合酸化物としては、例えば、Li4Ti5O12などLixTiyOzで表されるリチウム−チタン複合酸化物などを用いることができる。また、カーボンとしては、例えば、各種の天然黒鉛や人造黒鉛、例えば繊維状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛類、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボン、アセチレンブラック、カーボンブラックなどを用いることができる。また、金属酸化物としては、例えば、チタン酸化物のほか、SnO、SnO2、GeO、GeO2、In2O、In2O3、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Ag2O、AgO、Ag2O3、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeOなどの遷移金属酸化物などを用いることができる。上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、Li3Bi、Li3Cd、Li3Sd、Li4Si、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC6)等が挙げられる。Li金属化合物としては、Li3FeN2、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。ただし、本発明では、これらに制限されるべきものではなく従来公知のものを適宜利用することができる。上記ホウ素添加炭素中のホウ素の含有量は0.1〜10質量%の範囲が望ましいが、これに制限されるべきものではない。バイポーラ電池の場合には、負極活物質として、結晶性炭素材、非結晶性炭素材から選ばれるものが好ましい。これらを用いることで、プロファイルを傾けることが可能となり、各単電池層及びバイポーラ電池全体の電圧の検知が容易になるからである。ここでいう結晶性炭素材とは、グラファイト系炭素材料をいい、上記グラファイトカーボンなどがこれに含まれる。非結晶性炭素材とは、ハードカーボン系炭素材料をいい、上記ハードカーボンなどがこれに含まれる。
上記負極活物質の粒径は、特に制限されないが、以下に説明する負極インクの塗布方法に応じて、最適な粒径のものを選択するのが望ましい。例えば、従来のコーターなどの塗布方法、あるいはスプレーコートやスクリーン印刷方式などの薄膜製造技術による塗布方法等を用いる場合には、負極活物質の粒径は、1〜100μm、好ましくは1〜10μmの範囲である。一方、本出願人が提案する新規なインクジェット方式による塗布方法(詳しくは後述する)では、負極活物質の粒径は、1μm以下、好ましくは0.05〜1μm、より好ましくは0.05〜0.1μmの範囲である。負極活物質の粒径が1μmを超える場合には、正極インク中において正極活物質粒子の分散状態が保たれず沈澱してしまいため、安定したインクジェット塗布が困難となる。また電極のより一層の薄膜化を達成するのも困難となる。また、負極活物質の粒径の下限値については特に制限されるものではないが、0.05μm未満の場合には、製造が困難で好ましい放電特性を得ることができないおそれがある。
負極活物質粒子としては、自ら調製したものを用いてもよいし、所望の粒径の商品が市販されている場合には、商品を購入して用いてもよい。
上記負極活物質の粒子の形状については、上記正極プレインク作製工程101で説明した正極活物質の粒子の形状と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記導電材の種類、粒径、形状、割合については、上記正極プレインク作製工程101で説明した導電材の種類、粒径、形状、割合と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、「負極活物質粒径/導電材粒径」の比に関しても、上記正極プレインク作製工程101の「正極活物質粒径/導電材粒径」の比と同様であるため、ここでの説明は省略する。
上記負極活物質の粒径も、平均粒径をいうものとする。また、該負極活物質の粒径も、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて観察することにより測定されうる。
上記電解液の種類、含有量については、上記正極プレインク作製工程101で説明した電解液の種類、含有量と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(ii)負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程
プレ充電・ガス抜き・プレ放電工程123では、従来の電池における初充電/初放電と同様に、上記(i)の工程で得られた負極プレインクについて、フル(満)充放電を行う。本工程では、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。この点は、正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程で説明したと同様の理由による。
本工程203の負極プレインクのプレ充電工程123aでも、図2に示すプレ充放電装置201を用いて行うことができる。詳しくは、装置201の収納容器203内にレインク101’を充填し、その上からセパレータ207を被せて、セパレータに電解液を含浸させる。更に該セパレータ207上面に容器蓋205を設置し、上記した減圧雰囲気下において、プレ充電として、負極プレインクが所定電圧(例えば、負極活物質の理論充電電圧0V)になるまでフル充電を行う。これにより、初充電時に発生するガスを、本工程で予め発生させることができる。
プレ充電条件としては、正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程で説明したプレ充電条件と同様にして行うことができるため、ここでの説明は省略する。
次に、ガス抜き工程123bとしては、プレ充電に伴って発生したガスを除去する。該ガス抜き工程123bに関しても、正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程で説明したガス抜き工程103bと同様の作用効果を奏し、同様にして行うことができるため、ここでの説明は省略する。
次に、プレ放電工程123cでは、ガス抜き工程123b終了後に、負極プレインクのプレ放電を行う。
該プレ放電工程でも、上記した装置201をそのまま用い、正極側と負極側をプレ充電時とは逆転させて、プレ放電として正極プレインクが所定電圧(例えば、負極活物質の理論放電電圧2.5V)になるまでフル放電を行う。
該プレ放電工程123cに関しても、正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程で説明したプレ放電工程103cと同様の作用効果を奏し、同様にして行うことができるため、ここでの説明は省略する。プレ放電条件についても同様である。
なお、本工程123でも、上記したプレ充電工程123a、ガス抜き工程123b、プレ放電工程123cの順のほか、例えば、プレ充電工程123a、プレ放電工程123c、ガス抜き工程123bの順で行ってもよい(実施例1参照)。更に、プレ充電工程123a、ガス抜き工程123b、プレ放電工程123c、ガス抜き工程123bの順でガス抜き工程を2回行ってもよいなど、本発明の目的に合致し、その作用効果を達成することができるものであれば、いかなる順序であってもよい。
(iii)負極プレインクの洗浄・乾燥工程
負極プレインクの洗浄・乾燥工程125では、工程123終了後、上記装置201から負極プレインクを取り出し、適当な溶媒、例えば、DEC等で洗浄して、真空乾燥させることにより揮発成分を除去して、プレ充電/プレ放電済の活物質、更には導電材を得る。
詳しくは、後述する実施例のように、上記装置201から負極プレインクを取り出し、適当な溶媒、例えば、DECを満たした溶媒槽に沈め、負極プレインク中に残存する電解質(例えば、LiPF6など)を溶媒側に溶出させ、その後再び減圧乾燥を行えばよい。
本工程でも、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。
(iv)負極インク作製工程
負極インク作製工程127では、上記工程125で得られたプレ充電/プレ放電済の負極活物質、更には導電材に必要に応じて他の成分を加え、粘度調整用の溶媒を適量加えて混合し、負極活物質、更には導電材粒子が十分に均一に分散された負極インクを作製する。なお、負極インクでは、上記導電材は必須成分ではなく、負極活物質が電子伝導性を持たない場合等に用いればよい。
上記混合攪拌手段に関しては、正極インク作製工程107で説明した混合攪拌手段と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
また、上記粘度調整用の溶媒、必要に応じて用いられる他の成分に関しても、正極インク作製工程107で説明した粘度調整用の溶媒、必要に応じて用いられる他の成分と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
負極インク中の、負極活物質、導電材、粘度調整用の溶媒、バインダ、添加剤等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。
(v)負極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程
負極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程129では、まず、塗布工程129aとして、集電体(または適当な基材)上に、適当な方法にて負極インクを塗布する。
上記集電体の種類、厚さ、基材の説明、負極インクの塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、負極インクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離については、上記正極インクの塗布工程109aで説明した集電体の種類、厚さ、基材の説明、正極インクの塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、正極インクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離と同様であるため、ここでの説明は省略する。
次に、負極インクの塗布後の乾燥工程129bでは、集電体(または基材)上に塗布した負極インクを適当な乾燥条件で乾燥させる。
上記乾燥条件については、上記正極インクの乾燥工程109bで説明した乾燥手段と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、負極インクの塗布・乾燥後のプレス工程109cとして、上記の方法により塗布乾燥された負極にプレス操作を行うのが望ましい。このプレス操作を行うことで、得られる負極の表面をより平坦化させることが可能となる。プレス操作に用いられる装置および条件は特に制限されず、従来公知の装置および方法が適宜用いられうる。
さらに、工業的な生産過程においては、負極インクの塗布・乾燥・プレス後の裁断工程129dとして、生産性を向上させるために、最終的な電池のサイズよりも大きい負極を作製し、これを所定の大きさにカットする裁断工程を採用してもよい。
(vi)負極へのプレゲル塗布工程
本実施形態では、負極へのプレゲル塗布工程131として、負極インクを塗布・乾燥・プレス・裁断した後の正極に、プレゲル溶液を塗布・硬化するのが望ましい。
該プレゲル塗布工程131に関しても、正極へのプレゲル塗布工程111と同様の作用効果を奏し、同様のプレゲル溶液の成分(リチウム塩、ポリマー電解質(高分子原料や電解液など)、重合開始剤)、使用量、塗布方法、重合硬化条件を用いて行うことができるため、ここでの説明は省略する。
負極へのプレゲル塗布工程131により作製された負極の厚さに関しては、正極へのプレゲル塗布工程111により作製された正極の厚さと同様であるため、ここでの説明は省略する。
(3)ポリマー電解質層の形成工程
(i)プレゲル溶液の作製工程
プレゲル溶液の作製工程141では、リチウム塩、ポリマー電解質(高分子原料や電解液など)、重合開始剤からなるプレゲル溶液を作製する。
上記プレゲル溶液については、上記正極のプレゲル塗布工程111で説明したと同様のプレゲル溶液の成分を用いて作製することができるので、ここではその説明を省略する。
上記プレゲル溶液の組成成分やその配合量などについては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものである。例えば、上記プレゲル溶液中の電解液の割合としては、特に制限されるべきものではないが、イオン伝導度などの観点から、数質量%〜98質量%程度とするのが望ましい。
(ii)セパレータへのプレゲル溶液の塗布工程
セパレータへのプレゲル塗布工程143では、まず、所望のセパレータを用意する。
上記セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを用いることができるものであり、例えば、(1)電解質を吸収保持するポリマーからなる多孔質セパレータ(例えば、ポリオレフィン系微多孔質セパレータなど)や(2)電解質を保持させる為に用いる不織布セパレータなどを用いることができる。
このうち、上記(1)の多孔質セパレータでは、有機溶媒に対して化学的に安定であるという性質を持つ上記ポリオレフィン系微多孔質セパレータが、電解質(電解液)との反応性を低く抑えることができるという優れた効果を有するものである。
上記(1)の電解質を吸収保持するポリマーの材質としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PP/PE/PPの3層構造をした積層体、ポリイミドなどが挙げられる。
上記(1)のセパレータの厚みとして、使用用途により異なることから一義的に規定することはできないが、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などのモータ駆動用二次電池などの用途においては、単層あるいは多層で4〜60μmであることが望ましい。セパレータの厚さが、かかる範囲にあることでセパレータに微粒が食い込むことによって発生する短絡の防止と、高出力のために電極間を狭くすることが望ましいという理由から、厚さ方向の機械的強度と高出力性の確保という効果がある。また電池を複数接続する場合には、電極面積が増大することから、電池の信頼性を高めるために上記範囲のなかでも厚形のセパレータを用いることが望ましい。
上記(1)のセパレータの微細孔の径は、最大で1μm以下(通常、数十nm程度の孔径である)であることが望ましい。セパレータの微細孔の平均径が、上記範囲にあることで熱によってセパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きるという理由から、異常時信頼性が上がり、その結果として耐熱性が向上するという効果がある。すなわち、過充電で電池温度が上昇していったとき(異常時)に、セパレータが溶融して微細孔が閉じる「シャットダウン現象」が速やかに起きることで、電池(電極)の正極(+)から負極(−)側にLiイオンが通れなくなり、それ以上は充電できなくなる。そのため過充電できなくなり、過充電が解消する。その結果、電池の耐熱性(安全性)が向上するほか、ガスがでて電池外装材の熱融着部(シール部)が開くのを防止できる。ここでセパレータの微細孔の平均径は、セパレータを走査電子顕微鏡等で観察し、その写真をイメージアナライザ等で統計的に処理した平均径として算出される。
上記(1)のセパレータの空孔率は20〜50%であることが望ましい。セパレータの空孔率が、上記範囲にあることで電解質(電解液)の抵抗による出力低下の防止と、微粒がセパレータの空孔(微細孔)を貫くことによる短絡の防止という理由から出力と信頼性の両方を確保するという効果がある。ここでセパレータの空孔率とは、原材料レジンの密度と最終製品のセパレータの密度から体積比として求められる値である。
上記(1)のセパレータへのポリマー電解質の含浸量は、セパレータの保持能力範囲まで含浸させればよいが、当該保持能力範囲を超えて含浸させてもよい。これは、電解質にシール部を設け、電解質層からの電解液の染み出しを防止できるため、該電解質層に保持できる範囲であれば含浸可能である。
上記(2)の電解質を保持させる為に用いる不織布セパレータとしては、特に制限されるべきものではなく、繊維を絡めてシート化することにより製造することができる。また、加熱によって繊維同士を融着することにより得られるスパンボンド等も用いることができる。すなわち、繊維を適当な方法でウェブ(薄綿)状またはマット状に配列させ、適当な接着剤あるいは繊維自身の融着力により接合して作ったシート状のものであればよい。上記接着剤としては、製造及び使用時の温度下で十分な耐熱性を有し、ゲル電解質に対しても反応性や溶解性等がなく安定したものであれば、特に制限されるべきものではなく、従来公知のものを利用できる。また、使用繊維としては、特に制限されるものではなく、例えば、綿、レーヨン、アセテート、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリイミド、アラミドなど従来公知のものを用いることができ、使用目的(電解質層に要求される機械強度など)に応じて、単独または混合して用いる。また、不織布のかさ密度は、含浸させた高分子ゲル電解質により十分な電池特性を得られるものであればよく、特に制限されるべきものではない。すなわち、あまり不織布のかさ密度が大きすぎると、電解質層中の非電解質材料が占める割合が大きくなりすぎ、電解質層におけるイオン伝導度などを損なうおそれがあるためである。
上記(2)の不織布セパレータの空孔率は50〜90%であることが好ましい。空孔率が50%未満では、電解質の保持性が悪化し、90%超では強度が不足する。さらに、不織布セパレータの厚さは、電解質層と同じであればよく、好ましくは1〜200μmであり、特に好ましくは1〜50μmである。厚さが1μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。
上記セパレータに上記プレゲル溶液を塗布する方法としては、例えば、プレゲル溶液中にセパレータを含浸して塗布してもよいし、該セパレータにプレゲル溶液をスプレーコートしてもよいなど、特に制限されるものではなく従来公知の方法を用いることができる。
また、本発明では、セパレータに含まれるプレゲル溶液中の電解液の量は、セパレータ内部で略均一になるようにしてもよいし、中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていってもよい。前者は、より広範囲で反応性を得ることができるため好ましく、後者は、セパレータ外周部の電解液に対するシール性を高めることができる点で好ましい。セパレータの中心部から外周部に向けて傾斜的に少なくしていく場合には、プレゲル溶液中のホストポリマーには、リチウムイオン伝導性のあるPEO、PPOおよびそれらの共重合体を用いることが望ましい。
セパレータに上記プレゲル溶液を塗布して形成された電解質層の厚さは、特に限定するものではなく、通常、1〜200μmであり、特に好ましくは1〜50μmである。厚さが1μm未満では電解質の保持性が悪化し、200μmを超える場合には抵抗が増大することになる。しかしながら、コンパクトな積層式でバイポーラ型のリチウムイオン二次電池を得るためには、電解質としての機能が確保できる範囲で極力薄くすることが好ましい。特に従来にない数μm以下の薄膜電極を利用する場合には、これに対応する薄い電解質層を採用するのが望ましい。
次に、上記セパレータに上記プレゲル溶液を適当な塗布方法にて塗布し、不活性雰囲気下で乾燥硬化(光重合)または加熱乾燥(熱重合)させることによってポリマー電解質層を作製する。
上記乾燥硬化または加熱乾燥は、真空乾燥機(真空オーブン)や紫外線照射装置などを用いることができる。乾燥硬化または加熱乾燥の条件は上記プレゲル溶液の重合形態に応じて決定され、一義的に規定できないが、加熱乾燥(熱重合)では、通常は30〜110℃で0.5〜12時間である。光重合開始剤を用いた乾燥硬化(光重合)の場合には、光透過性のギャップに流し込み、乾燥及び光重合ができるような紫外線照射装置を用いて紫外線を照射して、セパレータに含浸させたプレゲル溶液中の高分子原料(架橋性ポリマー)を光重合させ架橋反応を進行させて製膜するとよい。ただし、この方法に限定されないことは勿論である。重合開始剤の種類に応じて、放射線重合、電子線重合、熱重合などを使いわける。
ポリマー電解質層の幅は、電極の集電体サイズよりも若干小さくすることが多い。
なお、上記(1)正極の形成、(2)負極の形成、(3)ポリマー電解質層の形成の順序は、特に制限されるものではなく、これらを積層するまでに準備すればよい。
(4)電池作製工程
(i)正極、負極、ポリマー電解質層の組立工程151では、正極及び負極を高真空下で十分加熱乾燥してから、電極の種類に応じて、正極ないしバイポーラ電極、ポリマー電解質層、負極ないしバイポーラ電極の順で複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)を形成する。
これは、本発明では上記(1)正極の形成及び(2)負極の形成の仕方によっては、バイポーラ型電池に用いるバイポーラ電極、及びバイポーラ型でない電池(一般電池という)に用いる電極(一般電極という)のいずれをも作製することができるためである。
ここで、一般電極は、正極集電体の両側の表面に正極インクを用いて作成された正極と、負極集電体の両側の表面に負極インクを用いて作成された負極の2種類がある。ただし、電池の両端に位置する一般電極では、正極ないし負極集電体の片側の表面にのみ、正極インクないし負極インクを用いて作成された正極ないし負極を用いてもよい。
一方、バイポーラ電極は、集電体の一方の面に、正極インクを用いて作成された正極と、該集電体の他方の面に、負極インクを用いて作成された負極との双方を備えたものである。ただし、電池の両端に位置するバイポーラ電極では、集電体の片側の表面にのみ、正極インクないし負極インクを用いて作成された電極を用いてもよい。
上記電極積層体の積層数は、電池に求める電池特性を考慮して決定される。また、バイポーラ型の電池では、正極側の最外層には、集電体上に正極層のみを形成した電極(電流取り出し用の正極)を配置する。負極側の最外層には、集電体上に負極層のみを形成した電極(電流取り出し用の負極)を配置する。電極とポリマー電解質層とを積層させてリチウムポリマー電池を得る段階は、電池内部に水分等が混入するのを防止する観点から、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、アルゴン雰囲気下や窒素雰囲気下でリチウムポリマー電池を作製するとよい。
本工程では、電極積層体の電極の周囲を、所定の幅でエポキシ樹脂(前駆体溶液)等に浸漬または樹脂を注入ないし含浸してもよい。いずれの場合にも、事前に電圧検知タブや電極タブや電極リード、あるいはこれらを接続する必要のある集電体部分等を離型性マスキング材等を用いてマスキング処理しておく。その後エポキシ樹脂を硬化させて、絶縁シール像を形成し、その後、マスキング材を剥がせばよい。
本工程では、例えば、バイポーラ型の電池では、最後に電極積層体の両最外層の電流取り出し用の電極の集電体上にそれぞれ、正極強電タブ、負極強電タブを設置し、該正極強電タブ、負極強電タブに、さらに正極リード、負極リードを接合(電気的に接続)して電池外部に取り出す。一般電池では、各電極集電体に正極リード、負極リードを接合(電気的に接続)し、これらをまとめて正極及び負極端子タブに接合(電気的に接続)して該正極及び負極端子タブを電池外部に取り出す。
正極及び負極強電タブ、正極及び負極リード、正極及び負極端子タブの各接合方法としては特に制限されるべきものではないが、接合温度の低い超音波溶接等が好適に利用し得るものであるが、これに限定されるべきものではなく、従来公知の接合方法を適宜利用することができる。
電極積層体全体を、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電池外装材ないし電池ケースで封止し、リチウムポリマー電池を完成させる。電池外装材(電池ケース)の材質は、内面がポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆された金属(アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅など)が好適である。
(ii)再充電工程
再充電工程153では、従来の電池の初充電と同様の条件でリチウムポリマー電池の再充電を行うのが望ましい。これにより、以降のエーシング・検査工程を行うことができる。
(iii)エージング・検査工程
エージング・検査工程155では、再充電工程153によるリチウムポリマー電池のエージング・検査を行うのが望ましい。
図3は、本発明のリチウムポリマー電池の製法の代表的な実施形態(第2の実施形態ともいう)の工程フローチャートを示す図面である。
図3に示すように、本発明のリチウムポリマー電池の第2の実施形態による製法では;
(1)正極の形成工程として、(i)正極プレインク作製工程201と、(ii)正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程203と、(iii)正極プレインクの塗布・乾燥工程205と、(iv)正極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程207と、(v)正極のプレス・裁断工程209と、(vi)正極へのプレゲル溶液の塗布工程211と、を有するものである。
同様に、(2)負極の形成工程として、(i)負極プレインク作製工程221と、(ii)負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程223と、(iii)負極プレインクの塗布・乾燥工程225と、(iv)負極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程207と、(v)負極のプレス・裁断工程209と、(vi)負極へのプレゲル溶液の塗布工程211と、を有するものである。
また、(3)ポリマー電解質層の形成工程として、(i)プレゲル溶液の作製工程241と、(ii)セパレータへのプレゲル塗布工程243と、を有するものである。
次に、(4)電池作製工程として、(i)正極、負極、ポリマー電解質層を組み立てる工程251と、(ii)再充電工程253と、(iii)エージング・検査工程255と、を有するものである。
即ち、第2の実施形態が、第1の実施形態と違う点は、洗浄・乾燥工程105を行なわず、工程103の放電後のプレインクを、集電体上に塗布・乾燥し、その後、バインダ溶液を塗布・乾燥するものである。よって、プレインク中の電解液の揮発成分は、工程205の塗布後の乾燥工程205bで蒸発するので、工程211で調製するプレゲル溶液中の揮発成分を調整しておく必要がある。また、従来、電極スラリーを作製するには、活物質とバインダを均一に分散させる必要があり、調製時間がかなりの時間かかっていた。しかしながら、第2の実施形態では、活物質とバインダを別々に塗布することが可能となるため、こうした課題を解決する事ができる。
また、第2の実施形態では、工程203でプレ充電/プレ放電処理した活物質と、工程207で調製したバインダ溶液とを別々に塗布する(工程205と工程207)。これにより、一度充電した活物質とバインダ溶液中のNMPとが長時間接触することなく、NMPの分解による電池特性の劣化を抑制できる点で優れている。
なお、第1及び第2の実施形態では、正極及び負極共にプレ充電/プレ放電処理した最も好ましい例を示したが、本発明では、これらに制限されるものではなく、いずれか一方の電極だけでも良い。いずれか一方だけの場合には負極をプレ充電/プレ放電処理するのが望ましい。
以下、上記した第2の実施形態による各工程につき、詳しく説明する。
(1)正極の形成工程
(i)正極プレインク作製工程
第2の実施形態による正極プレインク作製工程201は、第1の実施形態による正極プレインク作製工程101と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(ii)正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程
第2の実施形態による正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程203は、第1の実施形態による正極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程103と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(iii)正極プレインクの塗布・乾燥工程
第2の実施形態による正極プレインクの塗布・乾燥工程205では、第1の実施形態による(v)正極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程109で説明したと同様にして、集電体に正極プレインクを塗布・乾燥する。本工程では、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。これは、電池の初充電時に発生するガスを予め抜き出しても、その後に少量ではあるが該インク中に水分や大気中のガス成分が混入してしまい、電池の初充電時に発生するガスの一因となるおそれがあるためである。
まず、塗布工程205aとして、集電体(または適当な基材)上に、適当な方法にて正極プレインクを塗布する。
上記集電体の種類、厚さ、基材の説明、正極プレインクの塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、正極プレインクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離については、第1の実施形態の上記正極インクの塗布工程109aで説明した集電体の種類、厚さ、基材の説明、正極インクの塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、正極インクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離と同様にして行うことができるため、ここでの説明は省略する。
次に、正極プレインクの塗布後の乾燥工程205bでは、集電体(または基材)上に塗布した正極プレインクを適当な乾燥条件で乾燥させ、正極を形成する。
上記乾燥条件としては、第1の実施形態の上記正極インクの乾燥工程109bで説明した乾燥条件と同様に行うことができるため、ここでの説明は省略する。
(iv)正極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程
正極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程207では、まず、バインダ溶液を調製する。該バインダ溶液には、バインダ及び粘度調整用の溶媒、更には添加剤等が含まれ得る。
上記バインダ、粘度調整用の溶媒及び添加剤については、第1の実施形態の正極インク作製工程107で説明したバインダ、粘度調整用の溶媒及び添加剤と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
バインダ溶液中の、バインダ、粘度調整用の溶媒、添加剤等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。
次に、正極へのバインダ溶液の塗布工程207aでは、上記(iii)で作製した正極上に、適当な方法にて、調製したバインダ溶液を塗布する。
上記バインダ溶液の塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、バインダ溶液の粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離としては、第1の実施形態の正極インクの塗布工程109aで説明した正極インクの塗布方法、正極プレインクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離と同様にして行うことができるため、ここでの説明は省略する。
次に、バインダ溶液の塗布後の乾燥工程207bでは、正極上に塗布したバインダ溶液を適当な乾燥条件で乾燥させる。
上記乾燥条件としては、第1の実施形態の上記正極インクの乾燥工程109bで説明した乾燥条件と同様に行うことができるため、ここでの説明は省略する。
本工程207でも、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。
(v)正極のプレス・裁断工程
正極のプレス・裁断工程209では、まず、バインダ溶液の塗布・乾燥後にプレス工程209aとして、上記の工程207により塗布・乾燥された正極にプレス操作を行うのが望ましい。このプレス操作を行うことで、得られる正極の表面をより平坦化させることが可能となる。プレス操作に用いられる装置および条件は特に制限されず、従来公知の装置および方法が適宜用いられうる。
さらに、工業的な生産過程においては、プレス後の裁断工程209bとして、生産性を向上させるために、最終的な電池のサイズよりも大きい正極を作製し、これを所定の大きさにカットする裁断工程を採用してもよい。
(vi)正極へのプレゲル塗布工程
正極へのプレゲル塗布工程211では、正極のプレス・裁断工程209後の正極に、プレゲル溶液を塗布・硬化するのが望ましい。
第2の実施形態による正極へのプレゲル塗布工程211は、第1の実施形態による正極へのプレゲル塗布工程111と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)負極の形成工程
(i)負極プレインク作製工程
第2の実施形態による負極プレインク作製工程221は、第1の実施形態による負極プレインク作製工程121と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(ii)負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程
第2の実施形態による負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程223は、第1の実施形態による負極プレインクのプレ充電・ガス抜き・プレ放電工程123と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(iii)負極プレインクの塗布・乾燥工程
負極プレインクの塗布・乾燥工程225では、正極プレインクの塗布・乾燥工程205と同様の操作でよい。即ち、正極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程109及び負極インクの塗布・乾燥・プレス・裁断工程129で説明したと同様にして、集電体に負極プレインクを塗布・乾燥する。
本工程では、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。これは、電池の初充電時に発生するガスを予め抜き出しても、その後に少量ではあるが該インク中に水分や大気中のガス成分が混入してしまい、電池の初充電時に発生するガスの一因となるおそれがあるためである。
まず、塗布工程225aとして、集電体(または適当な基材)上に、適当な方法にて負極プレインクを塗布する。
上記集電体の種類、厚さ、基材の説明、負極プレインクの塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、負極プレインクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離については、負極プレインクの塗布・乾燥工程205で説明したのと同様である。即ち、上記正極インクの塗布工程109aで説明した集電体の種類、厚さ、基材の説明、正極インクの塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、正極インクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離と同様にして行うことができる。そのため、ここでの説明は省略する。
次に、負極プレインクの塗布後の乾燥工程225bでは、集電体(または基材)上に塗布した負極プレインクを適当な乾燥条件で乾燥させ、負極を形成する。
上記乾燥条件としては、第1の実施形態の上記正極インクの乾燥工程109b、負極インクの乾燥工程129bで説明した乾燥条件と同様に行うことができるため、ここでの説明は省略する。
(iv)負極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程
負極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程227では、まず、バインダ溶液を調製する。該バインダ溶液には、バインダ及び粘度調整用の溶媒、更には添加剤等が含まれ得る。
上記バインダ、粘度調整用の溶媒及び添加剤については、正極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程207と同様である。即ち、第1の実施形態の正極インク作製工程107で説明したバインダ、粘度調整用の溶媒及び添加剤と同様のものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
バインダ溶液中の、バインダ、粘度調整用の溶媒、添加剤等の配合量は、電池の使用目的(出力重視、エネルギー重視など)を考慮して決定すべきである。
次に、負極へのバインダ溶液の塗布工程227aでは、上記(iii)で作製した負極上に、適当な方法にて、調製したバインダ溶液を塗布する。
上記バインダ溶液の塗布方法(インクジェット方式で塗布する方法を含む)、バインダ溶液の粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離としては、正極へのバインダ溶液の塗布・乾燥工程207で説明したと同様である。即ち、正極インクの塗布工程109aで説明した正極インクの塗布方法、正極プレインクの粘度、液滴の粒径、隣接する液滴の中心間の距離と同様にして行うことができる。そのため、ここでの説明は省略する。
次に、バインダ溶液の塗布後の乾燥工程227bでは、負極上に塗布したバインダ溶液を適当な乾燥条件で乾燥させる。
上記乾燥条件としては、上記乾燥工程207で説明したと同様である。即ち、正極インクの乾燥工程109bで説明した乾燥条件と同様に行うことができる。そのため、ここでの説明は省略する。
本工程227でも、水分量が20ppm以下の雰囲気下、もしくは大気などには触れない雰囲気で行なうのが望ましい。
(v)負極のプレス・裁断工程
負極のプレス・裁断工程229では、まず、バインダ溶液の塗布・乾燥後にプレス工程229aとして、上記の工程227により塗布・乾燥された負極にプレス操作を行うのが望ましい。このプレス操作を行うことで、得られる負極の表面をより平坦化させることが可能となる。プレス操作に用いられる装置および条件は特に制限されず、従来公知の装置および方法が適宜用いられうる。
さらに、工業的な生産過程においては、プレス後の裁断工程229bとして、生産性を向上させるために、最終的な電池のサイズよりも大きい負極を作製し、これを所定の大きさにカットする裁断工程を採用してもよい。
(vi)負極へのプレゲル塗布工程
負極へのプレゲル塗布工程231では、負極のプレス・裁断工程229後の正極に、プレゲル溶液を塗布・硬化するのが望ましい。
負極へのプレゲル塗布工程231は、正極へのプレゲル塗布工程211と同様の操作を行うことができる。即ち、正極へのプレゲル塗布工程111と同様の操作であるため、ここでの説明は省略する。
以下の工程(3)及び(4)は、第1の実施形態で説明した工程(3)及び(4)と同様であるので、ここでの説明は省略する。
即ち、(3)ポリマー電解質層の形成工程のプレゲル溶液の作製工程241及びセパレータへのプレゲル溶液の塗布工程243は、プレゲル溶液の作製工程141及びセパレータへのプレゲル溶液の塗布工程143で説明したと同様である。そのため、ここでの説明は省略する。
また(4)電池作製工程の正極、負極、ポリマー電解質層の組立工程251、再充電工程253及びエージング・検査工程255は、正極、負極、ポリマー電解質層の組立工程151、再充電工程153及びエージング・検査工程155で説明したと同様である。そのため、ここでの説明は省略する。
以上が、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の代表的な実施形態についての説明であるが、本発明では、上記実施形態に何ら制限されるものではない。
例えば、上記ポリマー電解質層の形成では、好適な例として、第1及び第2の実施形態共に、セパレータにプレゲル溶液を含浸・塗布し、硬化させて高分子ゲル電解質を保持させてなるポリマー電解質層を示している。しかしながら、本発明では、セパレータを用いずに電解質層を形成させてもよい。
例えば、(i)全固体高分子電解質を形成する場合には、例えば、全固体高分子電解質の原料高分子、リチウム塩等をNMPのような溶媒に溶解させて調製した溶液を、適当な基材上に塗布し、硬化させることによって製造される。
(ii)高分子ゲル電解質層を形成する場合には、例えば、高分子ゲル電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等からなるプレゲル溶液を、適当な基材上に塗布し、不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。
(iii)セパレータに全固体高分子電解質を保持させてなる全固体高分子電解質層を用いる場合には、例えば、全固体高分子電解質の原料として、ホストポリマーと電解液、リチウム塩、重合開始剤等を粘度調整溶媒に溶解してなる溶液を準備する。次に、セパレータに、準備した上記溶液を含浸させて、不活性雰囲気下で加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって製造される。
電解質層を形成するには、上記(i)〜(iii)によっても行うことができる。
例えば、電極間に積層される電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を形成する。電解質層/膜ないしセパレータに全固体高分子電解質を保持してなる全固体高分子電解質層/膜は、上記溶液またはプレゲル溶液をPET製など適当なフィルム上に塗布し、不活性雰囲気下で乾燥硬化または加熱乾燥と同時に架橋反応を促進させることによって製造される。あるいは、上記溶液またはプレゲル溶液を、適当なセパレータに含浸塗布し、不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に架橋反応を促進させることによって製造してもよい。
あるいは、ポリマー電解質層の形成と同時に次工程の電池組立工程を行うべく、正極および/または負極上に、調製された上記溶液またはプレゲル溶液を直接塗布し、所定の厚さのポリマー電解質層またはその一部(電解質層厚さの半分程度の電解質膜)を形成する。その後、電解質層/膜が積層された基材または電極を不活性雰囲気下で硬化または加熱乾燥と同時に重合(架橋反応を促進)させることによって、電解質の機械的強度を高め、電解質層/膜を電極上に積層して製膜形成してもよい。
上記乾燥硬化または加熱乾燥は、真空乾燥機(真空オーブン)などを用いることができる。加熱乾燥の条件は、上記溶液またはプレゲル溶液に応じて決定され、一義的に規定できないが、通常は30〜110℃で0.5〜12時間である。
電解質層/膜の厚さは、スペーサなどを用いて制御できる。光重合開始剤を用いる場合には、光透過性のギャップに流し込み、乾燥及び光重合ができるような紫外線照射装置を用いて紫外線を照射して、電解質層内のポリマーを光重合させ架橋反応を進行させて製膜するとよい。ただし、この方法に限定されないことは勿論である。重合開始剤の種類に応じて、放射線重合、電子線重合、熱重合などを使いわける。
また、上記基材で用いるフィルムは、製造過程で80℃程度に加熱されることもありえるため、当該温度程度での十分な耐熱性を有し、さらに溶液またはプレゲル溶液との反応性がなく、製造過程で剥離し除去する必要上、離型性に優れたものを用いるのが望ましい。例えば、PET、PP製のフィルムなどを使用することができるが、これらに制限されるべきものではない。
上記溶液またはプレゲル溶液の組成成分やその配合量などについては、使用目的に応じて適宜決定されるべきものである。
次に、本発明に係るリチウムポリマー電池は、上記製法により得られてなることを特徴とするものである。本発明に係るリチウムポリマー電池では、電池の初充電時に発生するガス量を低減することができる。また、活物質由来のLiイオンが不可逆容量サイトにトラップされて可逆容量が減少することも防ぐことができる。そのため、初充電時に発生するガス量を格段に低減することができ、電池製造時に設定した高い充放電性能を初充電時に大きく低減させることなく、長期の充放電サイクルにわたって保持することができる。
本発明のリチウムポリマー電池の種類としては、特に制限されるものではない。
例えば、電池の構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、捲回型(円筒型)電池など特に制限されるべきものではなく、従来公知のいずれの構造にも適用し得るものである。好ましくは、積層型(扁平型)電池である。これは、捲回型の電池では、電解質層にも捲回方向に引張り応力がかかるため当該方向の強度が必要となるが、積層型では捲回型と比較して当該方向の強度が必要ないためである。
同様に電池のポリマー電解質層の種類で区別した場合にも、特に制限されるべきものではなく、電解質層にポリマー電解質を用いるポリマー電池であればよい。即ち、電解質層に、高分子ゲル電解質を用いる高分子ゲル電解質型電池および電解質層に全固体高分子電解質を用いる全固体高分子電解質型電池のいずれにも適用しえるものである。全固体高分子電解質型電池では、液漏れが生じないので、液絡の問題が無く信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れた電池を形成することができる点で優れている。また、高分子ゲル電解質型電池では、イオン伝導性が高く、且つ液漏れが生じにくく、液絡の問題も絶縁シール層を設けることで解消でき信頼性が高く、かつ簡易な構成で出力特性に優れた電池を形成することができる点で優れている。
同様に、電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、バイポーラ型ではない(内部並列接続タイプ)電池(一般電池)およびバイポーラ型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。バイポーラ型ではない一般電池を積層する場合は正極、負極それぞれからリード線をとり、そのリード線を介して隣の電池と接続される。そのため、リード線の長さに相当する電子伝導のパスが長くなり、電池の出力が低くなる。それに対して、バイポーラ型電池は、集電体を介して、電極の積層方法に電流が流れるため、バイポーラ型でない電池に比して、電流の流れる距離が短くて電流が流れる部分の断面積も大きいので、電子伝導のパスが格段に短くなり、ロスが少なくできる。その分、高出力になるためである。よって、バイポーラ型でない電池に比べて電池の電圧が高く、容量、出力特性に優れた電池を構成できる。
電池の電極材料ないし電極間を移動する金属イオンで見た場合には、リチウムイオン電池である。これは、リチウムイオン電池では、1電極単位(セルないし単電池層ともいう)の電圧が大きく、高エネルギー密度、高出力密度が達成でき、車両の駆動電源用や補助電源用として優れているためである。ただし、本発明の製法によりプレ充電/放電により、電池の初充電時のガス発生を低減できるものであれば、リチウムイオン電池に制限されるものではなく、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池など、従来公知のいずれの電極材料等にも適用し得るものである。
本発明の電池は、一次電池および二次電池のいずれにも適用し得るものであるが、燃料電池やハイブリッド自動車等のモータ駆動電源として、繰り返し充放電して用いることができる点で便利であることから、二次電池に適用するのが望ましい。
したがって、以下の説明では、積層式でバイポーラ型のリチウムイオンポリマー二次電池を例にとり説明するが、本発明のリチウムポリマー電池はこれらに何ら制限されるべきものではない。
以下、本発明に係るリチウムイオン電池の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
図4〜7に本発明のリチウムイオン電池の好適な実施形態の1つである積層式でバイポーラ型のリチウムイオンポリマー二次電池(以下、単にバイポーラ電池と略記する)の基本構成の概略を説明する。図4は、バイポーラ電池を構成するバイポーラ電極の構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図5は、バイポーラ電池を構成する電解質層を挟んでリチウムイオンを挿入脱離できる正極および負極を対向させた電池素子(以下、単に単電池層ともいう)の構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図6は、バイポーラ電池の全体構造を模式的に表わした概略断面図を示す。図7は、バイポーラ電池内に複数積層された単電池層が直列に接続されてなることを(記号化して)概念的に表わした概略図を示す。
図4に示したように、本発明のバイポーラ電池では、図4〜7に示したように、1枚の集電体11の片面に正極12を設け、もう一方の面に負極13を設けたバイポーラ電極15を、電解質層14を挟み隣合うバイポーラ電極15の正極12と負極13が対向するようになっている。すなわち、バイポーラ電池21では、集電体11の片方の面上に正極12を有し、他方の面上に負極13を有するバイポーラ電極15を、電解質層14を介して複数枚積層した構造の電極積層体(電池要素部)17からなるものである。また、電極積層体17の最上層と最下層の電極(電流取り出し用の電極)15a、15bは、集電体11に必要な片面のみの電極(正極12または負極13)を形成した構造としてもよい(図6参照のこと)。該電流取り出し用の電極15a、5bも、バイポーラ電極の1種とみることもできる。また、バイポーラ電池21では、最上層と最下層の電極の集電体11ないし強電タブにそれぞれ正極および負極リード18、19が接合されている。
バイポーラ電極の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。シート状電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できるのであれば、バイポーラ電極の積層回数を少なくしてもよい。
また、バイポーラ電池21では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、電極積層体17部分を電池外装材20に減圧封入し、電極リード18、19を電池外装材20の外部に取り出した構造とするのがよい(図6、7参照のこと)。軽量化の観点からは、該外装材20に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用い、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電極積層体7を収納し減圧封入(密封)し、電極リード18、19を外装材20の外部に取り出した構成とするのが好ましい。このバイポーラ電池21の基本構成は、図7に示すように、電解質層を挟んで正極および負極を対向させた電池素子(単電池層(単セル))16が直列に接続された構成ともいえるものである。
以下、本発明の電池の構成要素ごとに簡単に説明するが、本発明がこれらに何ら制限されるべきものでないことは言うまでもない。即ち、本発明では、図4〜7で説明した好適な態様の1つである積層式でバイポーラ型のリチウムイオンポリマー二次電池と、バイポーラ型でないリチウムイオンポリマー二次電池の構成要素とは、電池内の電気的な接続形態(電極構造)以外は同じである。そのため、以下にまとめて説明する。ただし、本発明がこれらに制限されるべきものではないことはいうまでもない。
[集電体]
集電体については、既に本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
[正極層]
正極層に関しても、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
[負極層]
負極層に関しては、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
[ポリマー電解質層]
また、本発明の電解質層としては、特に制限されるべきものではない。その使用目的に応じて、(a)高分子ゲル電解質層、(b)全固体高分子電解質層または(c)これらポリマー電解質を含浸させたセパレータ(不織布セパレータを含む)からなるポリマー電解質層のいずれにも適用し得るものである。
ここで、上記(c)のポリマー電解質層に関しては、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明した通りであるので、ここでの説明は省略する。
(a)高分子ゲル電解質層
高分子ゲル電解質層は、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明した高分子ゲル電解質からなるセパレータを用いない電解質層であればよいため、ここでの説明は省略する。
(b)全固体高分子電解質層
全固体高分子電解質層は、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明した高分子固体電解質からなるセパレータを用いない電解質層であればよいため、ここでの説明は省略する。
なお、上記(a)〜(c)のポリマー電解質層は、1つの電池の中で併用してもよい。
また、ポリマー電解質は、ポリマー電解質層、正極層、負極層に含まれ得るが、同一のポリマー電解質を使用してもよく、層によって異なるポリマー電解質を用いてもよい。
ところで、現在好ましく使用されるポリマー電解質用のホストポリマーは、PEO、PPOのようなポリエーテル系高分子である。このため、高温条件下における正極側での耐酸化性が弱い。従って、溶液系のリチウムイオン電池で一般に使用される、酸化還元電位の高い正極剤を使用する場合には、負極の容量が、ポリマー電解質層を介して対向する正極の容量より少ないことが好ましい。負極の容量が対向する正極の容量より少ないと、充電末期に正極電位が上がり過ぎることを防止できる。なお、正極および負極の容量は、正極および負極を製造する際の理論容量として、製造条件から求めることができる。完成品の容量を測定装置で直接測定してもよい。
ただし、負極の容量を対向する正極の容量と比べて少ないと、負極電位が下がりすぎて電池の耐久性が損なわれる恐れがあるので充放電電圧に注意する必要がある。例えば、一のセル(単電池層)の平均充電電圧を使用する正極活物質の酸化還元電位に対して適切な値に設定して、耐久性が低下しないように注意する。具体的には、本発明に係るリチウムポリマー電池の製法の項で説明したように、プレ充電/放電処理した電極活物質を用い、不可逆容量を除いた後の可逆容量の値を用いて負極/正極の容量バランスを所定の値、望ましくは負極容量/正極容量=1.0〜1.2に設計するのが望ましい。
[絶縁シール層]
絶縁シール層(図6の符号14b参照)は、バイポーラ電池の場合に、集電体同士が接触したり、電解液が漏れ出したり、積層電極の端部の僅かな不ぞろいなどによる短絡が起こるのを防止する目的で、各電極の周囲に形成されてなるものである。
該絶縁シール層としては、絶縁性、電解液の漏出や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、エポキシ樹脂、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが使用できるが、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点からは、エポキシ樹脂が好ましい。
[強電タブ]
強電タブは、バイポーラ電池の場合に、必要に応じて最外層の電極を構成する集電体に取り付けられる。用いる場合には、端子としての機能を有するほか、薄型化の観点からは極力薄い方がよい。しかしながら、積層されてなる正極、負極、ポリマー電解質層および集電体はいずれも機械的強度が弱いため、これらを両側から挟示し支持するだけの強度を持たせることが望ましい。さらに、強電タブでの内部抵抗を抑える観点からも、強電タブの厚さは、通常0.1〜2mm程度が望ましいといえる。
強電タブの材質は、通常のリチウムポリマー電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。
電流取り出し用の正極側の強電タブと負極用の強電タブとの材質は、同一の材質を用いてもよいし、異なる材質のものを用いてもよい。さらに、これら正極側および負極側の強電タブは、材質の異なるものを多層に積層したものであってもよい。
正極および負極側の強電タブは、集電体と同じサイズであればよいが、特に制限されるものではない。
[正極および負極リード]
図7に示すように、正極リード18および負極リード19に関しては、通常リチウムポリマー電池で用いられる公知のリードを用いることができる。該正極および負極リードの材質も、通常のリチウムポリマー電池で用いられる材質を用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金などを利用することができる。耐蝕性、作り易さ、経済性などの観点からは、アルミニウムを用いることが好ましい。電極リード全体の抵抗増加を抑える観点からは、Cuを用いることが望ましい。さらに電池外装材の高分子材料との密着性を向上させるために、電極リードに表面被覆層を形成してもよい。表面被覆層にはNiが最も好適に使用できるが、Ag、Auといった金属材料も同様に使用可能である
[電池外装材(電池ケース)]
リチウムポリマー電池は、外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、図7に示すように、電池積層体全体を電池外装材(電池ケース)20に収容するとよい。電池外装材としては、軽量化の観点から、金属を高分子絶縁体で被覆したアルミラミネートパックなどの高分子−金属を複合したラミネートフィルム(単に、高分子−金属複合ラミネートフィルムとも称する)のような従来公知の電池外装材が好ましい。
上記高分子−金属複合ラミネートフィルムとしては、特に制限されるべきものではなく、高分子フィルム間に金属フィルムを配置し全体を積層一体化してなる従来公知のものを使用することができる。具体例としては、例えば、高分子フィルムからなる外装保護層(ラミネート最外層)、金属フィルム層、高分子フィルムからなる熱融着層(ラミネート最内層)のように配置し全体を積層一体化してなるものが挙げられる。詳しくは、外装材に用いられる高分子−金属複合ラミネートフィルムは、上記金属フィルムの両面に、高分子フィルムとして、まず耐熱絶縁樹脂フィルムを形成し、少なくとも片面側の耐熱絶縁樹脂フィルム上に熱融着絶縁性フィルムが積層されたものである。かかるラミネートフィルムは、適当な方法にて熱融着させることにより、熱融着絶縁性フィルム部分が融着して接合し熱融着部が形成される。上記金属フィルムとしては、アルミニウムフィルム等が例示できる。また、上記絶縁性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテトラフタレートフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ナイロンフィルム(耐熱絶縁性フィルム)、ポリエチレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)、ポリプロピレンフィルム(熱融着絶縁性フィルム)等が例示できる。ただし、本発明の外装材は、これらに制限されるべきものではない。
こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムでは、超音波溶着等により熱融着絶縁性フィルムを利用して1対ないし1枚(袋状)のラミネートフィルムの熱融着による接合を、容易かつ確実に行うことができる。よって、本発明では、こうした高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いて、その周辺部の一部または全部を熱融着にて接合することにより、電池積層体を収納し密封した構成とするのが好ましい。なお、電池の長期信頼性を最大限高めるためには、高分子−金属複合ラミネートシートの構成要素である金属フィルム同士を直接接合してもよい。金属フィルム間にある熱融着性樹脂を除去もしくは破壊して金属フィルム同士を接合するには超音波溶着を用いることができる。
電池外装材に高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いる場合、上記正極および負極リードは、上記熱融着部に挟まれて該電池外装材の外部に露出される構造とすればよい。また、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いることが、自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を電池動作温度まですばやく加熱することができる点で好ましい。
次に、本発明では、上記のリチウムポリマー電池を複数個接続して構成した組電池とすることができる。すなわち、本発明のリチウムポリマー電池(特にバイポーラ電池)を少なくとも2個以上を用いて直列および/または並列に接続して構成した組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、比較的安価に対応することが可能になる。
具体的には、例えば、上記のバイポーラ電池をN個並列に接続し、N個並列にしたバイポーラ電池をさらにM個直列にして金属製ないし樹脂製の組電池ケースに収納し、組電池とする(N、Mは2以上の整数)。この際、バイポーラ電池の直列/並列接続数は、使用目的に応じて決定する。例えば、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車など大容量電源として、高エネルギー密度、高出力密度が求められる車両の駆動用電源に適用し得るように組み合わせればよい。また、組電池用の正極端子および負極端子と、各バイポーラ電池の電極リードとは、リード線等を用いて電気的に接続すればよい。また、バイポーラ電池同士を直列/並列に接続する際には、スペーサやバスバーのような適当な接続部材を用いて電気的に接続すればよい。これにより、種々の車両用ごとの容量・電圧の要望を基本のバイポーラ電池の組み合わせで対応が可能になる。その結果、必要エネルギー、出力の設計選択性を容易にすることが可能になる。そのため種々の車両用ごとに異なるバイポーラ電池を設計、生産する必要がなく、基本となるバイポーラ電池の大量生産が可能となり、量産化によるコスト削減が可能となる。
また、本発明の組電池は、上記に説明したものに制限されるべきものではなく、従来公知のものを適宜採用することができる。例えば、本発明の組電池では、本発明のバイポーラ電池と、該バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした一般電池と、を並列に接続したものであってもよい。
上記バイポーラ電池と正負極電極材料を同一とし該バイポーラ電池の構成単位数を直列することにより電圧を同一にした一般電池としては、好ましくはバイポーラ型でないリチウムイオンポリマー二次電池が挙げられる。すなわち、組電池を形成する電池は、本発明のバイポーラ電池とバイポーラ型ではないリチウムイオンポリマー二次電池等の一般電池とを混在させても良い。これにより、出力重視のバイポーラ電池と、エネルギー重視の一般電池の組み合わせでお互いの弱点を補う組電池ができ、組電池の重量・サイズを小さくすることができる。それぞれのバイポーラ電池とバイポーラ型でない一般電池をどの程度の割合で混在させるかは、組電池として要求される安全性能、出力性能に応じて決める。
本発明の組電池には、使用用途に応じて、各種計測機器や制御機器類を設けてもよく、例えば、電池電圧を監視するために電圧計測用コネクタなどを設けておいてもよいなど、特に制限されるものではない。
また本発明では、上記組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続した複合組電池とすることで、使用目的ごとの電池容量や出力に対する要求に、新たに組電池を作製することなく、比較的安価に対応することが可能になる。すなわち、こうした複合組電池は、組電池を少なくとも2以上直列、並列、または直列と並列の複合接続したものであり、基準の組電池を製造し、それを組み合わせて複合組電池とすることで、組電池の仕様をチューニングできる。これにより、仕様の異なる沢山の組電池種を製造しなくてよいため、複合組電池コストを減少することができる。このように、組電池を複数直並列接続されてなる複合組電池は、一部の電池、組電池が故障しても、その故障部分を交換するだけで修理が可能である。なお、上記組電池には、本発明のバイポーラ電池だけで構成したものの他、本発明のバイポーラ電池と他のバイポーラ型でない一般電池とで構成したものを含んでいてもよい。
本発明では、上記のリチウムポリマー電池および/または組電池(複合組電池を含む)を駆動用電源として搭載した車両とすることができる。本発明のリチウムポリマー電池および/または組電池は、上述のように各種特性を有し、特に、コンパクトな電池である。このため、エネルギー密度および出力密度に関して、とりわけ厳しい要求がなされる車両、例えば、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車等の駆動用電源として好適である。例えば、電気自動車ないしハイブリッド電気自動車の車体中央部の座席下に組電池を駆動用電源として搭載するのが、車内空間およびトランクルームを広く取れるため便利である。本発明では、これらに何ら制限されるべきものではなく、後部トランクルームの下部等に搭載してもよいし、あるいは電気自動車や燃料電池自動車のようにエンジンを搭載しないのであれば、車体前方のエンジンを搭載していた部分などに搭載することもできる。なお、本発明では、組電池だけではなく、使用用途によっては、バイポーラ電池を搭載するようにしてもよいし、これら組電池とバイポーラ電池を組み合わせて搭載するようにしてもよい。また、本発明のバイポーラ電池および/または組電池を駆動用電源として搭載することのできる車両としては、上記の電気自動車、ハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド燃料電池自動車が好ましいが、これらに制限されるものではない。