JP2720101B2 - 注射用w/o/w型複合エマルション及びその製造法 - Google Patents

注射用w/o/w型複合エマルション及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、W/O/W型複合エマルション及びその製造法
に関するものであるが、この複合エマルションは、注射
用特に静脈注射用エマルションとして好適である。
(従来の技術及び問題点) 制癌剤、抗生物質等少量の薬剤を特定部位に集中的に
投与する必要がある場合には、薬剤を脂肪乳剤として注
射することが知られている。
具体的には、例えば制癌剤等を油滴に入れ、O/W型エ
マルションとして静脈内に注射し、癌の治療を行うこと
が知られているが、このようなO/W型エマルションの脂
肪乳剤の場合、使用される薬剤は主として油溶性のもの
となり、したがって水溶性の薬剤は使用することができ
ない。
そこで、水溶性あるいは水分散性の制癌剤その他の薬
剤を内水相に封入したW/O/W型複合エマルションを調製
し、これを注射用乳剤として使用する試みが本発明者ら
によってなされたが(特開昭62−93223号)、未だ完全
なものではない。
(問題点を解決するための手段) 本発明は、このような技術の現状に鑑みてなされたも
のであって、次のような要求をすべて満した注射用乳剤
として特に好適なW/O/W型複合エマルションを開発する
目的でなされたものである。
(1)W/O/W型複合エマルションの分散剤であるW/Oエマ
ルションは中に水滴を有するため、O/W型エマルション
の油滴に比較して、極端に破壊されやすい欠点がある。
分散質のW/Oエマルションが破壊されると、油滴が他の
油滴と集って大きな油滴となり、狭い静脈をふさいでし
まうことになりかねない。静脈がふさがれてしまうと、
その先に栄養が行かなくなり、健全な細胞がダメージを
受けることになる。
このように、注射用W/O/W型複合エマルションにあっ
ては、その分散質であるW/Oエマルションが破壊され易
いこととも相まって、保存中及び使用時に血管中で破壊
を受けることなく、充分な安定性が要求されるととも
に、その安定化のために使用する乳化剤及び油相となる
油状物質は、いずれも人体に安全なものでなければなら
ない。
(2)前項でも述べたように油滴が大きくなると静脈を
閉塞する危険性があるため、充分に小粒子としなければ
ならず、注射用W/O/W型複合エマルションは、毛細血管
をも容易に通過できるよう、その粒子径は1.0μm以下
望ましくは0.7μm以下とすること及び粒子径が均一に
そろっていることが必要である。
(3)薬剤をより効果的に投与できるよう、W/O/W複合
エマルション中に封入される薬剤含有内水相は、可能な
限り多くすることが必要である。
本発明は、これらの要件をすべて満した注射用W/O/W
型複合エマルションを創製する目的でなされたものであ
って、各方面から鋭意研究の結果完成されたものであ
る。
すなわち本発明は、乳化剤としてレシチンを使用し、
常法により調製したW/O組成物を多孔質膜で処理して、
レシチンを添加した外水相中に分散させることにより、
内水相を極めて多く且つ安定に含みしかも粒径1.0μm
以下の安定な粒子を含有するW/O/W型複合エマルション
を製造することにはじめて成功したものである。
以下本発明について更に詳しく説明する。
本発明を実施するには先ずW/O型エマルションを調製
する。その際、乳化処理等基本的な操作は常法にしたが
えばよいが、本発明における油相としては、油脂又は脂
肪酸等の油性物質で、人体に投与されて安全なものが選
ばれる。
本発明において乳化剤としてはレシチンを使用する。
レシチンとしては、卵黄、大豆、肝臓、酵母等各種起源
のものが広く使用できるが、工業的見地からは卵黄レシ
チン、大豆レシチン等が好適である。本発明において、
レシチンは水相、特に外水相に添加するのが好ましい
が、油相に添加すれば更に好適な結果が得られる。
そこで油性物質には、所望すれば対油1〜50%好適に
は3〜35%の程度のレシチンを添加し、60℃以下好適に
は55℃以下で十分撹拌し、溶解させる。油性物質の温度
は、油性物質が凝固しない温度から55℃の範囲がよく、
55℃を超えると、製品化されたW/O/W型エマルションの
安定性が悪くなるので好ましくない。
内水相は、浸透圧を外水相より低く調整し、かつ、水
溶性又は水懸濁性物質が含有させられる。場合によって
は、浸透圧を上記とは逆にしてもよい。要するに本発明
においては、安定性を更に高めるため、内水相と外水相
間で浸透圧差が存在すればよいのであって、例えば食塩
等の解離性物質を用いて浸透圧をコントロールすればよ
いのである。ただし、この場合、過度に高濃度の解離性
物質を使用することは、乳化の安定性に悪影響を及ぼす
ので好ましくない。
溶質又は分散質(水溶性又は水懸濁性物質)として
は、例えばブレオマイシンなどの制癌剤、その他の薬理
活性物質があり、これらが内水相に添加される。
油相には内水相が添加され、撹拌機で十分撹拌し、そ
の後超音波を照射するなどして、内水相がよく分散され
たW/Oエマルションを製造する。
油相:内水相=4:1〜1:4(重量比)の程度がよく、液
相の温度はいずれも55℃以下、好ましくは15〜40℃程度
がよい。
外水相は、食塩等の解離性物質を添加して浸透圧を調
整するとともにレシチンを0.0005〜10%、好ましくは0.
05〜1.0%程度添加する。
なお、レシチンを外水相に添加しないでもW/O/W型複
合エマルションは得られるが、外水相にレシチンを添加
することで、より微小で、粒子径の揃ったものが得ら
れ、安定性も向上する。
本発明において重要な特徴のひとつは、多孔質膜処理
することによりW/O組成物をW/O/W型複合エマルションと
することであって、それにより、所望する微小な粒子径
のエマルションを均一に調製することができる。
多孔質膜処理の態様のひとつとして、多孔質膜を用い
てW/O組成物を外水相中に分散せしめる方法が挙げられ
る。
ホモミキサー、高圧均質化機等の通常の均質化方法で
は、W/O組成物を段階的に小さなエマルションとしてい
くため、その過程でレシチンの水相への移行、機械的破
壊による内水相の粗大化が起こりやすく、内水相の大き
さ、封入量が不均一になり易い。また従来法では段階的
にエマルションを小さくしていくため、製造方法が頻雑
である。
これに対して多孔質膜を用いた場合、W/O組成物は一
段階で所望の大きさで外水相中に分散されるため、多段
階の微細化を要さず短時間で分散液となるため、レシチ
ンの水相への移行、機械的破壊による影響を受けにく
く、内水相の水滴の数、大きさ共に均一な、微小で均一
な脂肪球を容易につくることができる。
したがって、内水相の水滴の数、大きさが均一で、か
つW/O滴の大きさも均一なため、一つ滴の中の薬剤量が
均一にでき、定量化できる。
本発明によれば、生成するW/O/W型複合エマルション
の粒子径が一定で、内水相の封入量が均一であることか
ら、通常の均質化方法で調製した、粒子径、内水封入量
の分布の広いW/O/W型複合エマルションに較べ、エマル
ション全体が均一である。このことは、得られたW/O/W
型複合エマルションのどの部分においても薬剤が均一に
存在することを意味し、使用量を厳密に守らなければな
らない医薬品にとって好適な性能を有していると言え
る。
また、生成する複合エマルション粒子は血管内を容易
に通過できる大きさを有する必要があるが、加えて弾力
性があり、容易に変形し得る方が好ましい。血管中に部
分的に狭い部分が存在しても変形することで、滞留する
ことなく通過することができるためである。
エマルション粒子にこのような性質を持たせるには、
本発明におけるように、体温で結晶化せず流動性のある
油脂を油相として使用することが重要である。
また本発明に係る多孔質膜処理の他の態様としては、
W/O組成物に更に水相を添加し転相せしめてW/O型複合エ
マルションを製造する方法が挙げられる。この方法で得
られた複合エマルションも上記と同じすぐれた性能を有
するものである。
本発明で使用する多孔質膜としては、平均細孔径が1.
0μm以下であり全細孔の80%以上が平均細孔径の0.8〜
1.2倍の間に存在するものであれば、多孔質ガラス、そ
のアミノシラン誘導体、活性炭、酸性白土、カオリナイ
ト、ベントナイト、アルミナ、シリカゲル、ヒドロキシ
ルアパタイトその他の無機ないし有機多孔体が広く使用
されるが、例えばシラス多孔質ガラス(略称SPG:宮崎県
工業試験場)からなるSPG膜は、強度、細孔径の均一性
等の面ですぐれているので、本発明において使用するの
に好適である。
なお多孔質膜は、上記のようにW/O組成物からW/O/W型
複合エマルションを調製するのに使用できるのみでな
く、内水相を油相に分散せしめてW/Oエマルションを調
製するのにも使用することができる。また、得られたW/
O/W型複合エマルションから大きな粒子を除去するのに
も使用することができる。
上記のようにして得られたW/O/W型複合エマルション
は、遠心分離、多孔質膜等により1.0μm以上の粒子を
除去して使用する。この場合、多孔質膜(例えばSPG
膜)を使用して得たW/O/W型複合エマルションは、粒径
がよく揃うために極めて収率が良くすぐれている。
以下、本発明を試験例及び実施例により更に詳しく説
明する。
試験例1 50℃の大豆サラダ油200gに卵黄レシチン20gを混合、
溶解した油相中に硫酸ビンデシン150mgを含む1%の塩
化ナトリウム水溶液50gを加えホモミキサーで混合しつ
つ、250Wの出力で超音波を10分間照射し、W/O組成物を
得た。得られたW/O組成物を細孔径0.31μmのSPG膜を通
して、0.9%の塩化ナトリウム水溶液500g中に、卵黄レ
シチン1gを混合、分散した外水相中に分散させ、脂肪率
15%のW/O/W型複合エマルションを作った。
また比較のため、同様に調製したW/O組成物を同様に
調製した外水相に混合し、高圧ホモゲナイザー(三和機
械株式会社製)を用い300kg/cm2で2回乳化を繰り返し
てW/O/W型複合エマルションを調製した。両者の比較結
果を表1に示す。
いずれの場合も外水と内水の浸透圧差は0.9atmで外水
の方が低く、ζ電位は−10.0mVであった。
表1からわかる通りSPG膜を使用して調製したW/O/W型
複合エマルションは、粒子径がよく揃っており、また内
水相も小さく、均一に分布しており注射用として好適で
あり、従来法を凌ぐ性能を有するものである。
試験例2 試験例1と同様の配合で外水相の卵黄レシチンの添加
量を変化させた結果を表2に示す。
表2からわかる通り、外水相にレシチン無添加のもの
は、生成するW/O/W型複合エマルションの粒子径が、レ
シチン添加のものよりやや大きくなり、粒子径の分布も
広がっていることがわかる。
試験例3 試験例1と同様の配合で、内水相、外水相の塩化ナト
リウム量を変化させ、浸透圧差を変化させた結果を示
す。
いずれも、エマルションの調製は細孔径0.28μmのSP
G膜を使用して行った結果を第3表に示す。
表3より、外水の浸透圧が、内水より高い場合に、更
に平均粒子径の小さいW/O/W型複合エマルションが得ら
れることがわかる。
実施例1 50℃の大豆サラダ油100gに卵黄レシチン15gを混合、
溶解した油相中にブレオマイシン1.5gを含む1.0%の塩
化ナトリウム水溶液40gを加え、ホモミキサーで混合し
つつ、250Wの出力で超音波を10分間照射し、W/O組成物
を得た。得られたW/O組成物の30gを細孔径0.28μmのSP
G膜を通して0.3%の卵黄レシチンを混合、分散した0.9
%塩化ナトリウム水溶液170gに分散させ、W/O/W型複合
エマルションを得た。
得られたW/O/W型複合エマルションの測定結果は次の
通りであった。
平均粒子径 0.8μm 粒子径分布(%) 0〜0.5μm 0.4 0.5〜1.0 98.4 1.0〜1.5 1.2 >1.5 0 W/O/W生成率 92% 内水は、極めて小さく、よく揃っており、その分散状
態は均一であった。したがって、ブレオマイシンは、エ
マルション全体に均一に分散しており、薬剤として好適
である。
外水と内水の浸透圧差は0.7atmで外水の方が高く、ζ
電位は−8.5mVであった。得られたW/O/W型複合エマルシ
ョンは1週間保存後も粒子径の変化はなく、生成率89%
で、薬剤として好適なものを得た。
実施例2 50℃の大豆サラダ油100gに卵黄レシチン15gを混合、
溶解した油相中に硫酸ビンデジン2.0gを含む0.9%の塩
化ナトリウム水溶液40gをSPG膜を通して分散して、W/O
組成物を得た。
得られたW/O組成物を細孔径0.31μmのSPG膜を通して
0.2%の卵黄レシチンを混合した1.0%塩化ナトリウム水
溶液に分散させて脂肪率10%のW/O/W型複合エマルショ
ンを得た。
得られたW/O/W型複合エマルションは、平均粒子径1.0
μmでW/O/W生成率は、90%であった。
(発明の効果) 本発明に係る注射用W/O/W型複合エマルションは、粒
径が細かく且つ揃っており、しかも多量の薬剤含有内水
相を含む乳剤である。したがって、水溶性ないし水分散
性薬剤であっても、これを特定部位に集中的に投与する
ことができ、例えば癌の治療等に特に有効である。
また本発明は、レシチンと多孔質膜の併用によって、
新規にして有用な特に注射用に好適なW/O/W型複合エマ
ルションを工業的に製造するのにも成功したものであ
る。

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】レシチンと多孔質膜とを併用して製造して
    なり、粒子径が1.0μm以下で且つ、外水相にレシチン
    を含有することを特徴とする注射用W/O/W型複合エマル
    ション。
  2. 【請求項2】溶質または分散質を含む内水相を油相中に
    分散せしめてなるW/O組成物を、多孔質膜を用いて外水
    相中に分散せしめてなり、且つ粒子径が1.0μm以下で
    あることを特徴とする請求項1に記載の注射用W/O/W型
    複合エマルション。
  3. 【請求項3】溶質または分散質を含む内水相を油相中に
    分散せしめてなるW/O組成物に、多孔質膜を用いて更に
    水相を分散させ転相せしめてなり、且つ粒子径が1.0μ
    m以下であることを特徴とする請求項1に記載の注射用
    W/O/W型複合エマルション。
  4. 【請求項4】レシチンと多孔質膜を併用し、そのレシチ
    ンを外水相に添加することを特徴とする注射用W/O/W型
    複合エマルションの製造法。
  5. 【請求項5】溶質または分散質を含む内水相を油相中に
    分散せしめ、生成したW/O組成物を多孔質膜を用いて外
    水相に分散せしめること、を特徴とする請求項4に記載
    の注射用W/O/W型複合エマルションの製造法。
  6. 【請求項6】溶質または分散質を含む内水相を油相中に
    分散せしめ、生成したW/O組成物に多孔質膜を用いて更
    に水相を分散させ転相させること、を特徴とする請求項
    4に記載の注射用W/O/W型複合エマルションの製造法。
  7. 【請求項7】粒子径が1.0μm以下のW/O/W型複合エマル
    ションを生成せしめること、を特徴とする請求項4〜6
    のいずれか1項に記載の注射用W/O/W型複合エマルショ
    ンの製造法。
  8. 【請求項8】通常の分散機及び/又は多孔質膜を用いて
    W/O組成物を生成せしめること、を特徴とする請求項4
    〜7のいずれか1項に記載の注射用W/O/W型複合エマル
    ションの製造法。
  9. 【請求項9】多孔質膜として、平均細孔径が1.0μm以
    下であり全細孔の80%以上が平均細孔径の0.8倍〜1.2倍
    の間に存在する多孔質膜を使用すること、を特徴とする
    請求項4〜8のいずれか1項に記載の注射用W/O/W型複
    合エマルションの製造法。
  10. 【請求項10】外水相と内水相の浸透圧が相違すること
    を特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の注射
    用W/O/W型複合エマルションの製造法。
  11. 【請求項11】油相として使用する油脂が、体温で流動
    性を有する食用油脂であることを特徴とする請求項4〜
    10のいずれか1項に記載の注射用W/O/W型複合エマルシ
    ョンの製造法。
  12. 【請求項12】請求項1〜3のいずれか1項に係るW/O/
    W型複合エマルション、あるいは、請求項4〜11のいず
    れか1項によって得られたW/O/W型複合エマルションに
    ついて、多孔質膜処理することにより所望の粒子径のも
    のに分画すること、を特徴とする注射用W/O/W型複合エ
    マルションの製造法。
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