JP2995351B2 - アルキルフォスホン酸の製造方法 - Google Patents

アルキルフォスホン酸の製造方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルキルフォスホン酸の
製造方法に関する。さらに詳しくは、α−オレフィンと
亜リン酸とを反応し、反応混合物から簡単な工程で、純
度の高いアルキルフォスホン酸を収率良く得ることの出
来るアルキルフォスホン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アルキルフォスホン酸は防錆剤、帯電防
止剤、可塑剤等の原料として検討され、その工業化が望
まれている。
【0003】従来、アルキルフォスホン酸類の製造方法
としては、イ:亜リン酸トリアルキルとアルキルハライ
ドとからArubuzov反応によりアルキルフォスホ
ン酸ジアルキルを製造する方法[A.E.Arubuz
ov,J.Russ.Phys.Chem.Soc.,
38,687(1906)]、ロ:亜リン酸ジアルキル
にα−オレフィンをラジカル付加してアルキルフォスホ
ン酸ジアルキルを製造する方法[A.R.Stile
s,W.E.Vaughan,F.F.Rust,J.
A.C.S.,80,714(1958)]、ハ:亜リ
ン酸にα−オレフィンをラジカル付加してアルキルフォ
スホン酸を製造する方法[岡本,桜井,工化68,20
80(1965)]等が知られている。
【0004】しかしながら、イとロの方法はいずれも生
成物がジアルキルエステルの形で得られる為、これらの
方法によりアルキルフォスホン酸を得るにはさらに塩酸
による加水分解工程が必要であり、工業的に有利とは言
い難い。
【0005】一方、ハの方法のように亜リン酸にα−オ
レフィンをラジカル付加反応してアルキルフォスホン酸
を製造する方法は、原料も比較的安価であり、また反応
が1段である為に、工業的な製造方法として期待されて
いるが、この方法によって得られる反応物は、アルキル
フォスホン酸と、未反応のα−オレフィン、亜リン酸等
の混合物として得られ、高純度のアルキルフォスホン酸
を得る為には精製工程が必要である。ハの方法は反応混
合物からジエチルエーテルと水とを用いて亜リン酸を抽
出除去し、更に、一旦、水酸化カリウム水溶液にて水溶
性のアルキルフォスホン酸カリウム塩として、抽出した
後、塩酸分解によりフォスホン酸に戻してエーテル抽出
し、ついでクロロホルム等の塩素系溶媒を用いて精製す
るもので工程が複雑なものとなり工業的には有利と言い
難い。またここに用いるジエチルエーテルは引火点が極
めて高く、また保存中にパーオキサイドを生成して爆発
の危険性を有する等工業的には問題があり、さらに、ジ
イソプロピルエーテル等の、他のエーテル系溶媒もアル
キルフォスホン酸を溶解するが、同様に危険性が高いと
いう問題点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この様に、亜リン酸に
α−オレフィンをラジカル付加して得られる反応混合物
は、アルキルフォスホン酸自体が良好な乳化剤であり、
水不溶性溶媒と水とを用いる抽出方法を用いると系全体
が安定な乳化系となる為、分離し難く、精製に長時間を
要し、更に収率が低下する等の問題点があった。またこ
の様な場合、一般に塩析により分離を促進することが行
われるが、アルキルフォスホン酸は例えば硫酸ナトリウ
ム、塩化カリウム等の塩析剤により直ちに上記と同様な
水、有機溶媒等に不溶の塩となり、酸の型で単離するこ
とは出来ない。
【0007】本発明は、上記問題点に着目し、なされた
もので、亜リン酸にα−オレフィンをラジカル付加反応
してアルキルフォスホン酸を製造する方法において、ア
ルキルフォスホン酸を塩の型に変えることなく、簡単な
方法で、しかも高収率にアルキルフォスホン酸を製造す
る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決するため鋭意研究を行った結果、従来の水不溶性溶
媒と水を用いる抽出方法を改め、亜リン酸を溶解し且つ
アルキルフォスホン酸に対して適度の溶解性を有する溶
媒について検討を行った結果、特定の溶媒を組合せて用
いることにより、アルキルフォスホン酸を効率良く製造
しうることを見出し本発明を完成した。
【0009】即ち本発明は、直鎖またはおよび側鎖アル
キル基を有する総炭素数6〜30のα−オレフィンと亜
リン酸とを反応してアルキルフォスホン酸を製造する方
法において、該α−オレフィンと亜リン酸とを反応して
得られる反応生成物を、ケトン系溶媒又はケトン系溶媒
と塩素系溶媒の混合物を用いて再結晶するアルキルフォ
スホン酸の製造方法である。
【0010】本発明で得られるアルキルフォスホン酸と
しては、ヘキシルフォスホン酸、2−エチルヘキシルフ
ォスホン酸、オクチルフォスホン酸、デシルフォスホン
酸、ドデシルフォスホン酸、テトラデシルフォスホン
酸、ヘキサデシルフォスホン酸、16−メチルヘプタデ
シルフォスホン酸、オクタデシルフォスホン酸、エイコ
シルフォスホン酸、ドコシルフォスホン酸、テトラコシ
ルフォスホン酸、ヘキサコシルフォスホン酸、オクタコ
シルフォスホン酸等が挙げられる。
【0011】本発明に用いられるα−オレフィンとして
は、1−ヘキセン、2−エチル−1−ヘキセン、1−オ
クテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセ
ン、1−ヘキサデセン、16−メチル−1−ヘプタデセ
ン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセ
ン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタ
コセン等が挙げられる。
【0012】本発明に用いられるケトン系溶媒として
は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n
−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル
イソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、ジエチ
ルケトン、エチル−n−ブチルケトン等が挙げられ、ま
た塩素系溶媒としては、塩化メチレン、塩化エチレン、
クロロホルム、四塩化炭素、1.1.1.−トリクロル
エタン、1.1.2−トリクロルエタン、1.1.2.
2−テトラクロルエタン、1.2−ジクロルエチレン、
トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等が挙げら
れ、アルキルフォスホン酸は乳化能が大きいため、ここ
に挙げた溶媒を用いる方法以外の方法では満足な結果は
得ることが出来ない。
【0013】本発明の製造方法によりアルキルフォスホ
ン酸を製造するには、例えば、まずα−オレフィンと亜
リン酸を溶媒に溶解し、ラジカル発生源の存在下、50
〜120℃で1〜10時間反応し、反応後溶媒を留去し
て反応混合物を得る。得られる反応混合物中には、通
常、反応生成物であるアルキルフォスホン酸の他に、未
反応のα−オレフィン、亜リン酸あるいは副反応生成物
であるα−オレフィンの重合体等が含まれている。
【0014】上記ラジカル付加反応におけるα−オレフ
ィンと亜リン酸の反応モル比は2:1〜1:5モルが好
ましく、1:1〜1:3が更に好ましい。また、反応に
用いる溶媒としてはα−オレフィン、亜リン酸及びアル
キルフォスホン酸に対して親和性があり、かつラジカル
付加反応を阻害しないものが適し、例えば1.4ジオキ
サン等が挙げられ、その使用量はα−オレフィンと亜リ
ン酸との合計量の1〜5倍量が好ましい。ラジカル源を
発生させる方法としては、紫外線を照射する方法、メチ
ルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサ
イド、ベンゾイルパーオキサイド、ジアシルパーオキサ
イド、クメンパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサ
イド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、アゾビスイソブ
チロニトリル等の過酸化物系ラジカル触媒を添加する方
法が挙げられる。ラジカル触媒を用いる場合、使用量は
α−オレフィンに対して0.001〜0.1モルが好ま
しい。
【0015】次に、上記反応混合物を前記ケトン系溶媒
又はケトン系溶媒と塩素系溶媒との混合溶媒に溶解し、
再結晶を行う。再結晶に用いる溶媒の量はα−オレフィ
ンと亜リン酸との合計量の5〜20倍量が好ましく、反
応混合物を溶解する温度は55〜100℃が好ましい。
次に反応混合物を溶解した溶液を0〜30℃に冷却する
と、未反応の亜リン酸、α−オレフィン及びα−オレフ
ィンの重合体は母液に溶解したまま、アルキルフォスホ
ン酸が結晶として析出する。この結晶を分離し、必要に
より結晶をn−ヘキサン等で洗浄した後、乾燥して純度
の高いアルキルフォスホン酸を得ることが出来る。
【0016】上記操作により得られるアルキルフォスホ
ン酸は十分に純度の高いものであるが、必要に応じて再
結晶を繰り返すことにより、さらに高い純度のアルキル
フォスホン酸が得られる。再結晶を繰り返す場合、不純
物の含有量が少ないため、2回目以降の再結晶に用いる
溶媒は塩素系溶媒を用いることが好ましい。
【0017】本発明の製造方法により得られるアルキル
フォスホン酸は、水分を含まず、また高純度であるため
可塑剤の組成物、帯電防止剤組成物、記録材料組成物等
に用いるのに適している。
【0018】以下実施例を挙げて本発明をさらに説明す
るが、その要旨を越えない限り本発明はこれらに限定さ
れない。
【0019】
【実施例】実施例1 以下の配合にて、溶媒の還流下、8時間反応し、さらに
減圧下にて溶媒を留去して、オクタデシルフォスホン
酸、亜リン酸、1−オクタデセン、1−オクタデセンの
低重合物及び触媒等を含む反応混合物105gを得た。 得られた反応混合物に20倍量のアセトン/メチルエ
チルケトン1:1混合溶媒を加え、50℃で溶解した後
徐々に冷却し、20℃にて析出した白色結晶を濾別し
た。得られた結晶を減圧下に乾燥し、結晶中に含まれる
溶媒を留去して、オクタデシルフォスホン酸55gを得
た。
【0020】実施例2 実施例1と同様にして得られたオクタデシルフォスホン
酸を含む反応混合物に、20倍量のアセトン/クロロホ
ルム1:1混合溶媒を加え、実施例1と同様に再結晶を
行い、オクタデシルフォスホン酸54gを得た。
【0021】実施例3 以下の配合にて、実施例1と同様に反応と溶媒の除去を
行い、ドデシルフォスホン酸、亜リン酸、1−ドデセ
ン、1−ドデセンの低重合物及び触媒等を含む反応混合
物104gを得た。 得られた反応混合物に20倍量のアセトンを加え、50
℃で溶解した後放冷し、20℃にて析出した白色結晶を
濾別した。結晶に含まれる溶媒を減圧下に留去し、ドデ
シルフォスホン酸57gを得た。
【0022】実施例4 実施例3と同様にして得られたドデシルフォスホン酸を
含む反応混合物に、20倍量のアセトン/クロロホルム
1:1混合溶媒を加え、実施例3と同様に再結晶を行っ
て、ドデシルフォスホン酸55gを得た。
【0023】実施例5 実施例1と同様にして得られたオクタデシルフォスホン
酸を、10倍量のクロロホルムに60℃で溶解した後、
20℃に冷却し、析出した結晶を濾別、乾燥して再結晶
(2回目)を行い、純度の高いオクタデシルフォスホン
酸50gを得た。
【0024】実施例6 実施例3と同様にして得られたドデシルフォスホン酸
を、10倍量のクロロホルムに30℃で溶解した後、1
0℃に冷却し、析出した結晶を濾別、乾燥して再結晶
(2回目)を行い、純度の高いドデシルフォスホン酸5
2gを得た。
【0025】実施例7 以下の配合にて、実施例1と同様に反応と溶媒の除去を
行い、オクチルフォスホン酸と亜リン酸、1−オクテン
及び1−オクテンの低重合物を含む反応混合物125g
を得た。 得られた反応混合物に20倍量のアセトン/メチルエ
チルケトン1:1混合溶媒を加え、50℃で溶解した後
徐々に冷却し、20℃にて析出した白色結晶を濾別し
た。得られた結晶を減圧下に乾燥し、結晶中に含まれる
溶媒を留去して、オクチルフォスホン酸68gを得た。
【0026】比較例1 実施例1で得られたオクタデシルフォスホン酸を含む反
応混合物を20倍量のジエチルエーテルに溶解し、ジエ
チルエーテル溶液を同量のイオン交換水にて洗浄して亜
リン酸を除去し、次いで減圧下にジエチルエーテルを留
去し、残渣を10倍量のクロロホルムを用いて再結晶
(溶解60℃、析出20℃)してオクタデシルフォスホ
ン酸42gを得た。なお、ジエチルエーテル−イオン交
換水による亜リン酸の抽出は、界面が乳化状態となり分
離が不完全であったため、乳化状態にある層を除き、ジ
エチルエーテル溶液層を減圧下に濃縮して再結晶に用い
た。
【0027】比較例2 実施例3で得られたドデシルフォスホン酸を含む反応混
合物を、比較例1と同様にジエチルエーテルに溶解−イ
オン交換水洗浄−再結晶を行ってドデシルフォスホン酸
43gを得た。
【0028】比較例3 実施例1で得られたオクタデシルフォスホン酸を含む反
応混合物を20倍量のジエチルエーテルに溶解し、同量
の3%水酸化カリウム水溶液を加え震盪した後、水層を
分離してオクタデシルフォスホン酸をカリウム塩の形で
含む水溶液を得、同水溶液に塩酸を加えて酸性に調整し
た後、同量のジエチルエーテルを加え、抽出操作を行
い、オクタデシルフォスホン酸のジエチルエーテル溶液
を得た。次いでジエチルエーテルを減圧下に留去し、残
渣を10倍量のクロロホルムにより再結晶して、オクタ
デシルフォスホン酸28gを得た。
【0029】比較例4 実施例7で得られたオクチルフォスホン酸を含む反応混
合物に、20倍量の石油エーテルを加え、同量のイオン
交換水にて3回洗浄した後、減圧下に石油エーテルを留
去し、ついで残渣に10倍量のヘキサンを加え、60℃
で溶解した後徐々に冷却し、20℃にて析出した白色結
晶を濾別した。結晶中に含まれる溶媒を減圧下に留去
し、オクチルフォスホン酸26gを得た。
【0030】実施例1〜7、比較例1〜4により得られ
たアルキルフォスホン酸の融点、純度、収率を表1に示
す。なお、アルキルフォスホン酸の純度は沃素滴定法で
亜リン酸の含有量を求めた後、ガスクロマトグラフ分析
により求めた。また収率は理論収量に対する実収量の比
(%)で示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】以上説明した様に、亜リン酸にα−オレ
フィンをラジカル付加反応してアルキルフォスホン酸を
製造する方法において、特定の溶媒を用いて反応混合物
からアルキルフォスホン酸を一工程で製造するものであ
り、従来行われているアルキルフォスホン酸塩を経てア
ルキルフォスホン酸を製造する方法と比べて、工程が簡
単で効率が良く、また水不溶性溶媒と水を用いる抽出方
法に比べ、乳化による損失が無いため収率が良く、しか
も不純物との分離性が良くアルキルフォスホン酸を高純
度に得られる等の効果を発揮する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 直鎖またはおよび側鎖アルキル基を有す
    る総炭素数6〜30のα−オレフィンと亜リン酸とを反
    応してアルキルフォスホン酸を製造する方法において、
    該α−オレフィンと亜リン酸とを反応して得られる反応
    生成物を、ケトン系溶媒又はケトン系溶媒と塩素系溶媒
    の混合物を用いて再結晶することを特徴とするアルキル
    フォスホン酸の製造方法。
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