JP3323219B2 - 車両のスリップ制御装置 - Google Patents

車両のスリップ制御装置

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JP3323219B2
JP3323219B2 JP01482992A JP1482992A JP3323219B2 JP 3323219 B2 JP3323219 B2 JP 3323219B2 JP 01482992 A JP01482992 A JP 01482992A JP 1482992 A JP1482992 A JP 1482992A JP 3323219 B2 JP3323219 B2 JP 3323219B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両のスリップ制御装
置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両のスリップ制御(トラクションコン
トロール)装置は、車両の加速時に駆動輪が過大駆動ト
ルクによりスリップして加速性が低下することを防止す
るために、駆動輪のスリップ量を検出し、この駆動輪の
スリップ量が目標スリップ量となるように、エンジン出
力を低減制御するエンジン制御や、駆動輪のブレーキ力
を制御するブレーキ制御を行なうものとして、一般に知
られている。
【0003】例えば、特開昭64−106762号公報
には、駆動輪のスリップ量に対応する制御変数を車輪速
から演算する制御変数演算手段を設け、該制御変数に基
づいてブレーキ制御を行なうトラクションコントロール
システムにおいて、上記制御変数の使用にあたって、該
制御変数に走行路面の凹凸度に応じたフィルターをかけ
ることにより、悪路走行での車体振動やピッチングを防
止する、提案が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車両のスリ
ップ制御において、ブレーキ制御量やエンジン制御量を
駆動輪のスリップ量のみに基づいて求めるのでなく、当
該駆動輪の加速度をも加味して求めるようにすれば、ス
リップ量の増減の傾向に応じた制御を行なうことがで
き、スリップの早期収束の点で有利になる。
【0005】しかし、車両の高速走行時にはサスペンシ
ョンの共振の影響で車輪に周期的な負荷が作用し、駆動
輪の加速度が変動することがある。これに対して、上述
の如く駆動輪の加速度をそのまま制御量の演算に用いて
いると、上記加速度の変動によってブレーキ力が変動す
ることになり、このため駆動輪が振動して上記サスペン
ションの振動を助長する結果となって車体の振動を招く
恐れがある。
【0006】すなわち、本発明の課題は、上記サスペン
ションの振動の助長することなく、車両の加速時におけ
る駆動輪のスリップを効率良く抑え、その加速性の向上
を図ることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及びその作用】本発明は、
このような課題に対して、エンジン制御量の演算には駆
動輪の実際の加速度を加味し、ブレーキ制御量の演算に
は、駆動輪の実際の加速度にフィルタをかけてなるなま
し値を加味することができるようにするものである。
【0008】すなわち、上記課題を解決する手段は、車
両の加速時における駆動輪の路面に対するスリップ量が
目標値となるようにエンジン出力を低減制御するエンジ
ン制御手段と、上記駆動輪の路面に対するスリップ量が
目標値となるように当該駆動輪に付与するブレーキ力を
制御するブレーキ制御手段とを備え、上記エンジン制御
手段及びブレーキ制御手段が、各々の制御量を演算する
制御量演算手段を備えている車両のスリップ制御装置で
あって、上記駆動輪のスリップ量を検出するスリップ量
検出手段と、上記スリップ量とエンジン制御手段の目標
値との偏差をエンジン制御量演算変数として演算する手
段と、上記スリップ量とブレーキ制御手段の目標値との
偏差をブレーキ制御量演算変数として演算する手段と、
上記エンジン制御量演算変数の時間変化率を求める手段
と、上記ブレーキ制御量演算変数の時間変化率を求める
手段と、上記求められたブレーキ制御量演算変数の時間
変化率に前回の値を所定割合で反映させてなまし時間変
化率を得るフィルタ手段とを備え、上記エンジン制御手
段の制御量演算手段は、上記エンジン制御量演算変数
その時間変化率とに基づいて制御量を演算し、上記ブレ
ーキ制御手段の制御量演算手段は、上記ブレーキ制御量
演算変数の時間変化率の変化量が所定値以下のときには
当該ブレーキ制御量演算変数とその時 間変化率とに基づ
いて制御量を演算し、上記変化量が所定値を越えるとき
には当該ブレーキ制御量演算変数と上記フィルタ手段に
よって得られるなまし時間変化率とに基づいて制御量を
演算することを特徴とするものである。
【0009】このような課題解決手段においては、サス
ペンションの共振のために駆動輪の加速度が変動して
も、ブレーキ制御量の演算には、この変動の影響を少な
くしたなまし値(ブレーキ制御量演算変数のなまし時間
変化率)を用いることができ、ブレーキ力の余分な変動
によってサスペンションの振動を助長することを防止で
きる。
【0010】一方、エンジン制御量の演算には、なまし
値ではなく駆動輪の実際の加速度成分を含むエンジン
御量演算変数の時間変化率が用いられるため、制御の応
答遅れを防止することができる。すなわち、エンジン制
御量の演算にまでなまし値を用いると、実際に駆動輪の
加速度が上昇、つまりはスリップ量が増大する傾向にあ
るときに、上記時間変化率にフィルタがかけられている
がために、制御が遅れることになるが、上述の如くフィ
ルタをかけていない時間変化率を用いてエンジン制御量
を演算するから、制御の遅れがなくなる。また、このよ
うにエンジン制御量をフィルタがかけられていない時間
変化率に基づいて演算しても、エンジン出力の増減はサ
スペンションの振動に対しては直接の影響は与えず、こ
の振動の助長の問題はない。
【0011】ところで、アクセルペダルの踏込みにより
駆動輪の車輪速が上昇しスリップ量が増大すると、エン
ジン制御及びブレーキ制御が実行されて上記スリップ量
の増大が抑えられ上記車輪速の上昇が鈍ってくる。この
ときは駆動輪の車輪速はピークを迎える一方、駆動輪の
加速度がプラスの値からマイナスの値へと大きく変化し
ていく時点であり、このときに、サスペンションの共振
の影響が上記加速度に現れると、当該加速度の変化量は
非常に大きなものになる。そして、このような加速度の
大きな変動がそのまま上記ブレーキ制御量に反映される
と、ブレーキ力の変動が過度に大きくなる。
【0012】これに対しては、上記ブレーキ制御手段の
制御量演算にあたって、上記時間変化率の変化量が所定
値以下のときには当該時間変化率を制御量の演算に用
い、上記変化量が所定値を越えるときには上記なまし値
を用いるようにしている
【0013】このようにすると、上記駆動輪の車輪速が
ピークを迎える手前の加速度の変化が小さい領域では、
ブレーキ制御量の演算にはフィルタがかけられていない
時間変化率を用いることになるが、その時間変化率の変
化が小さいからブレーキ力の大きな変動はなく、かえっ
て加速度の変化に即したブレーキ制御により駆動輪のス
リップの早期収束を図ることができる。一方、上記車輪
速のピークを挾む前後の加速度の変化が大きい領域で
は、上記ブレーキ制御量の演算に上記なまし値が用いら
れるから、加速度変化が大きくてもブレーキ力の過度な
変動を防止することができ、サスペンションの振動助長
を防止することができる。また、このころは駆動輪のス
リップが収束傾向を示し始めているころであるから、ブ
レーキ制御が実際の加速度の変動に対し遅れることがあ
っても支障は少ない。
【0014】上記なまし値の算出にあたっては、上記時
間変化率の変化量が大きいほど今回の検出値に反映させ
る前回の値の割合を大きくすることが好適である。
【0015】このようにすると、サスペンションの振動
を助長する傾向が大きいときに、加速度のなまし度合い
が大きくなってブレーキ力の変動が小さくなり、上記サ
スペンションの振動助長を防止する上で有利になる。
【0016】
【発明の効果】従って、本発明によれば、エンジン制御
量の演算には、駆動輪の加速度成分を含むエンジン制御
量演算変数の時間変化率を加味する一方、ブレーキ制御
量の演算のために、ブレーキ制御量演算変数の時間変化
率に前回の値を所定割合で反映させてなまし値を得るフ
ィルタ手段を設け、このブレーキ制御量演算変数の時間
変化率の変化量が所定値以下のときには当該時間変化率
をブレーキ制御量の演算 に用い、上記変化量が所定値を
越えるときには上記なまし値をブレーキ制御量の演算に
用いるようにしているから、駆動輪の加速度の実際の変
動に対する制御の応答遅れをエンジン制御側で防止しな
がら、サスペンションの共振のために駆動輪の加速度が
大きく変動しても、ブレーキ制御量の余分な変動を抑え
てサスペンションの振動、ひいては車体の振動が助長さ
れることを防止でき、しかも、駆動輪のスリップ量が増
大傾向にあるときには、応答遅れのないブレーキ制御に
よって駆動輪のスリップの早期収束を図ることができ
る。
【0017】また、上記なまし値の算出にあたって、上
記加速度又は時間変化率の変化量が大きいほど今回の検
出値に反映させる前回の値の割合を大きくするものによ
れば、上記サスペンションの振動助長を効率良く防止す
ることができる。
【0018】
【実施例】図1において、1FLは左前輪、1FRは右
前輪、1RLは左後輪、1RRは右後輪である。車体前
部にはエンジン2が横置きに搭載され、該エンジン2で
の発生トルクは、クラッチ3、変速機4、差動ギア5に
伝達された後、左ドライブシャフト6Lを介して左前輪
1FLに、また右ドライブシャフト6Rを介して右前輪
1FRに伝達される。このように、車両は、前輪1F
L、1FRが駆動輪とされ、後輪1RL、1RRが従動
輪とされた前輪駆動車とされている。
【0019】各車輪に装備されたブレーキ7FL〜7R
Rは、油圧式とされたディスクブレーキとされている。
また、ブレーキ液圧発生源としてのマスタシリンダ8
は、2つの吐出口8a,8bを有するタンデム型とされ
ている。このマスタシリンダ8の一方の吐出口8aから
伸びるブレーキ配管13は、途中で2本に分岐されて、
分岐配管13Fが左前輪用ブレーキ7FL(のキャリパ
内に装備されたホイールシリンダ)に接続され、分岐配
管13Rが右後輪用ブレーキ7RRに接続されている。
マスタシリンダ8の他方の吐出口8bから伸びる分岐配
管14も2本に分岐されて、分岐配管14Fが右前輪用
ブレーキ7FRに接続され、分岐配管14Rが左後輪用
ブレーキ7RLに接続されている。
【0020】前輪用すなわち駆動輪用の分岐配管13
F、14Fには、電磁式の液圧調整弁15Lあるいは1
5Rが接続され、後輪用の分岐配管13R,14Rに
は、電磁式の開閉弁16Lあるいは16Rが接続されて
いる。液圧調整弁15L,15Rは、ブレーキ7FL、
7FRへのマスタシリンダ8からのブレーキ液圧供給
と、該ブレーキ7FL、7FRのブレーキ液圧を配管2
1L,21Rを介してリザーバタンク22L,22Rへ
解放する態様とを切換える。リザーバタンク21Lのブ
レーキ液は、ポンプ23Lによって、逆止弁24Lが接
続された配管25Lを介して配管13に戻され、同様
に、リザーバタンク22Rのブレーキ液は、ポンプ23
Rによって、逆止弁24Rが接続された配管25Rを介
して配管14に戻される。
【0021】ブレーキペダル12に対する踏込み力は、
倍力装置すなわちブレーキブースタ11を介してマスタ
シリンダ8に伝達される。このブースタ11は、基本的
には既知の真空倍力装置と同じであるが、スリップ制御
の際には後述するように、ブレーキペダルの踏込み操作
が行われていなくてもブレーキ力を得ることができるよ
うに構成されている。
【0022】ブースタ11は、車体およびマスタシリン
ダ8に固定されたケース31を有し、該ケース31内
が、ダイヤフラム32とこれに固定されたバルブボディ
33とによって、第1室34と第2室35とに画成され
ている。第1室34には常に負圧源の負圧(例えばエン
ジン2の吸気負圧)が供給されており、ブレーキペダル
が踏込み操作されていないときは第2室35が第1室3
4と連通されて、ブースタ11の作動が停止された状態
とされる。そして、ブレーキペダル12を踏込み操作す
ると、第2室35に大気圧が供給され、これによりダイ
ヤフラム32がバルブボディ33と共に前方へ変位して
倍力作用が得られる。
【0023】第2室35に対する負圧供給と大気圧供給
との切換えは、基本的には、バルブボディ33内に装備
された弁装置によってなされる。このバルブボディ33
部分を図2に基づいて説明する。
【0024】先ず、バルブボディ33は、ダイヤフラム
32に固定されるパワーピストン41を有し、このパワ
ーピストン41に形成された凹部41a内には、リアク
ションディスク42と出力軸43の基端部とが嵌合され
ている。この出力軸43は、マスタシリンダ8の入力軸
となるものである。また、ブレーキペダル12に連結さ
れた入力軸44の先端部には、バルブボディ33内にお
いて、バルブプランジャ45が取付けられている。この
バルブプランジャ45の後方には、真空弁46が配設さ
れている。
【0025】パワーピストン41には圧力導入通路50
が形成されており、該圧力導入通路50は常時、前記バ
ルブプランジャ45の周囲に形成される空間Xに連通さ
れている。この空間Xは、常に第2室35と連通されて
いる。そして、圧力導入通路50の空間X側への開口端
部に、前記真空弁46が離着座される弁座47が形成さ
れている。また、真空弁46は、バルブプランジャ45
の後端に形成された弁座45aに対しても離着座され
る。
【0026】以上のような構成において、いま、圧力導
入通路50に負圧が導入されている場合を想定する。こ
の状態で、ブレーキペダル12が踏込み操作されていな
いときは、図2の状態で、スプリング48、49の付勢
力によって真空弁46が弁座45aに着座するも、弁座
47とは離間されている。したがって、圧力導入通路5
0からの負圧は、空間Xを介して第2室35に導入さ
れ、倍力作用は行なわれない。
【0027】ブレーキペダル12を踏込み操作すると、
入力軸44したがってバルブプランジャ45が前方動
(図中左方動)される。この前方動の際、真空弁46
は、先ず弁座47に着座して空間Xと圧力導入通路50
との連通を遮断し、その後真空弁46に対して弁座45
aが離間される。この真空弁46と弁座45aとが離間
することにより、バルブボディ33の後方からの大気圧
が空間Xに導入されて、第2室35が大気圧となる。こ
れにより、ダイヤフラム32がバルブボディ33と共に
前方へ変位し、この結果出力軸43が前方動して倍力作
用が行なわれる。マスタシリンダ8からのブレーキ反力
は、リアクションディスク42を介して、バルブプラン
ジャ45したがってブレーキペダル12に伝達される。
ブレーキペダル12の踏込み操作力が解放されると、リ
ターンスプリング36(図1参照)により図2の状態へ
復帰して、次の倍力作用に備えることになる。
【0028】以上説明した部分は、既知の真空倍力装置
と同じであるが、本実施例では、スリップ制御のため
に、圧力導入通路50に対して、第1室34の負圧を導
入させる状態と大気圧を導入させる状態とに切換えるよ
うにしている。すなわち、第1室34と圧力導入通路5
0とが配管37を介して接続され、該配管37に3方電
磁切換弁(導入切換手段)38が接続されている(図1
参照)。この切換弁38は、消磁時に圧力導入通路50
を第1室34に連通させ、励磁時に圧力導入通路50に
大気圧を導入させる。この切換弁38が励磁されて圧力
導入通路50に大気圧が導入されると、前記空間Xした
がって第2室35は、ブレーキペダル12の踏込み操作
が行なわれていなくても大気圧となり、この結果倍力作
用を行なってマスタシリンダ8にブレーキ液圧を発生さ
せることになる。
【0029】次に制御系について説明する。
【0030】制御系は、マイクロコンピュータを利用し
て構成されており、図1において、51はエンジン制御
とブレーキ制御とを行なう制御手段であり、この制御手
段51には、各車輪1FL〜1RRの回転速度を検出す
るセンサS1〜S4からの信号が入力される。
【0031】上記制御手段51は、路面の摩擦係数を検
出する摩擦係数検出手段、制御目標値設定手段、スリッ
プ量検出手段52、DEN演算手段53、フィルタ手段
54、エンジン制御量演算手段55、ブレーキ制御量演
算手段56、スリップ判定手段、並びにエンジン出力及
びブレーキのコントロールための出力手段を備えてい
て、この制御手段51からは、エンジン制御のためのエ
ンジン出力調整手段9、ブレーキ制御のための液圧調整
弁15L,15R、開閉弁16L,16R、及び切換弁
38へ制御信号が出力される。エンジン出力調整手段9
は、アクセルペダル10に連動するメインスロットル弁
とは別に吸気通路に設けられたサブスロットル弁(図示
省略)を駆動することによりエンジン出力を調整するも
のである。
【0032】以下、具体的に説明する。
【0033】[路面摩擦係数の検出] 摩擦係数検出手段は、左右の駆動輪1FL,1FRの各
々が転動する路面左右部の摩擦係数を検出するものであ
り、その検出は、対応する左右の従動輪1RL,1RR
の車輪速Vrとその加速度VG とに基づいて行なわれ
る。
【0034】まず、加速度VG の演算には、タイマA
(100msecカウント)と、タイマB(500msecカウ
ント)とを用いる。すなわち、加速度VG は、スリップ
制御開始から500msec経過まで(加速度が十分に大き
くない)は、100msec毎に100msec間の車輪速Vr
(単位;km/h)の変化に基いて次の(1) 式により求
め、500msec経過後(加速度が十分に発達)は100
msec毎に500msec間の車輪速Vrの変化に基いて次の
(2) 式により求める。
【0035】 −(1) 式− VG =Gk1×{Vr(k) −Vr(k-100) } −(2) 式− VG =Gk2×{Vr(k) −Vr(k-500) } 上記Gk1及びGk2は係数である。また、Vr(k) は現時
点、Vr(k-100) は100msec前、Vr(k-500) は50
0msec前の各車輪速である。
【0036】そして、上述の如くして算出された加速度
VG と車輪速Vrとから次の表1により3次元補間によ
って路面摩擦係数μを求める。なお、スリップ制御中で
ないときには、摩擦係数μは3.0に設定される。
【0037】
【表1】
【0038】[制御目標値の設定] この制御目標値は、前輪1FL,1FRのスリップ量と
して目標とする値であり、上記車輪速Vrと摩擦係数μ
とに基いて演算されるものである。すなわち、エンジン
制御目標値SETは、左右の従動輪1RL,1RRのう
ち速い方の従動輪の車輪速Vrと摩擦係数μとに基づい
て、車輪速Vrが高くなるにつれて値が小さくなるよう
に、且つ摩擦係数μが小さくなるにつれて値が小さくな
るように設定されたマップから演算される。また、ブレ
ーキ制御目標値SBTの演算には、上記エンジン制御目
標値よりも高い値に設定されたマップが用いられる。
【0039】[スリップ量検出] スリップ量検出手段52は、左右駆動輪1FL,1FR
の車輪速VFL,VFRから左右の従動輪1RL,1RRの
うち速い方の車輪速Vrを減算してこの両輪のスリップ
量SL,SRを求める。
【0040】さらに、次式で示すように、上記スリップ
量SL,SRに基いてその平均スリップ量SAvを求
め、このSAvの上記エンジン制御目標値SETからの
偏差をエンジン制御量の演算変数ENとする。
【0041】EN=(SL+SR)/2−SET 一方、ブレーキ制御量の演算のために、次式で示すよう
に、上記SL,SRの上記ブレーキ制御目標値SBTか
らの偏差を演算変数ENとして求める。
【0042】 EN=SL−SBT EN=SR−SBT ブレーキ制御においては、左右の駆動輪1FL,1FR
に付与するブレーキ力を独立して制御するために、駆動
輪1FL,1FRの各々につきENを求めるものであ
る。
【0043】[DEN演算] DEN演算手段53は、上記エンジン制御量及びブレー
キ制御量の各々の演算変数ENの時間変化率DENを求
めるものである。このDENには駆動輪の加速度が反映
されている。すなわち、上記DENには、1FL,1F
Rの車輪速VFL,VFRの微分項が含まれる。
【0044】[フィルタ手段] フィルタ手段54は、上記DEN演算手段53によって
演算されたDENに前回の値を所定割合で反映させてな
まし値を得るものである。具体的には、今回の検出値D
EN(k) に前回の出力値DEN(k-1) を所定割合TEだ
け反映させる次式の指数平滑によってなましDENを得
る。
【0045】 なましDEN=DEN(k) ×(1−TE)+DEN(k-1) ×TE [エンジン制御量演算] エンジン制御量演算手段55は、上記スリップ量検出手
段52によって検出される駆動輪のスリップ量SL,S
Rの平均値に基くエンジン制御量用の演算変数ENと、
該ENの時間変化率DENとをパラメータとして、次の
マップ(表2)より求める。
【0046】
【表2】
【0047】この場合、上記マップに記載の記号ZO は
サブスロットル弁の開度の保持を表わし、Nは閉動、P
は開動を表わす。また、N,Pの添字S,M,B は制御量の
大きさを表わすもので、「S 」は小(開動量小、閉動量
小)、「M 」は中(開動量中、閉動量中)、「B 」は大
(開動量大、閉動量大)の意味である。
【0048】[ブレーキ制御量演算] ブレーキ制御量演算手段56は、各駆動輪につき、上記
スリップ量検出手段52によって検出される各々のスリ
ップ量SL,SRに基くブレーキ制御量用の各演算変数
ENと、該ENの時間変化率DENとをパラメータとし
て、上記表2に示すものと基本的には同様の傾向で設定
されたマップ(記載は省略する)より求める。
【0049】但し、上記時間変化率DENに関しては、
上記DEN演算手段53により得られるDENと、上記
フィルタ手段54により得られるなましDENとを使い
分けることになる。
【0050】すなわち、ブレーキ制御量演算手段56
は、上記DEN演算手段53によって得られるDENの
変化量ΔDEN{DEN(k) −DEN(k-1) の値の絶対
値}が所定値Ko 以下のときには当該DEN(k) を制御
量の演算に用い、当該変化量ΔDENが所定値Ko を越
えるときには上記なましDENを用いるものである。
【0051】さらに、上記ブレーキ制御量演算手段56
は、上記変化量ΔDENに基づいてフィルタ手段54に
おける前回の値の反映割合TEを変更設定する手段を備
えている。この場合、上記ΔDENが大きくなるほど上
記TEが大きくなるように設定される。
【0052】図3には以上のブレーキ制御量演算の流れ
が示されている。まず、各種のデータが入力され、ブレ
ーキ制御中であるときにブレーキ制御量の演算が実行さ
れる(ステップP1,P2)。すなわち、上記変化量Δ
DENがKo 以下であれば、今回の検出値DEN(k) を
用いてブレーキ制御量が演算される(ステップP3〜P
5)。一方、上記変化量ΔDENがKo を越えるとき
は、フィルタ手段54における前回値の反映割合TEが
上記変化量ΔDENに基づいて求められ、このTEを用
いてなましDENが求められ、該なましDENを用いて
ブレーキ制御量が演算される(ステップP3→P6→P
7→P5)。
【0053】[スリップ判定] 上記駆動輪のスリップ量SL,SRのうち大きい方の値
がエンジン制御目標値SET以上になったとき、エンジ
ン制御要と判定し、また、上記SL又はSRがブレーキ
制御目標値SBT以上になったときブレーキ制御要と判
定する。
【0054】[出力コントロール] エンジン制御については、上記エンジン制御量演算手段
55により求められた制御量でサブスロットル弁を駆動
することにより実行され、ブレーキ制御については、上
記ブレーキ制御量演算手段56により各駆動輪毎に求め
られた制御量に応じた制御信号を液圧調整弁15L,1
5Rに出力することにより行なわれる(デューティ制
御)。
【0055】[スリップ制御例] 図4にはスリップ制御の一例が示されている。すなわ
ち、t1時点前までは、駆動輪に大きなスリップが生じ
ていないので、エンジン制御は行われておらず、従って
サブスロットル弁は全開であって、スロットル開度Tn
(メイン及びサブの両スロットル弁の合成開度であっ
て、開度の小さな方のスロットル弁の開度に一致する)
は、アクセルペダル踏込量に対応したメインスロットル
弁の開度TH・Mである。
【0056】t1時点では、駆動輪のスリップ量が、エ
ンジン制御目標値SETとなった大きなスリップ発生時
となる。このt1時点で、スロットル開度が予め設定さ
れた下限制御値SMにまで一挙に低下される(フィード
フォワード制御)。そして、一旦SMとした後は、駆動
輪のスリップ量がエンジン制御目標値SETとなるよう
に、サブスロットル弁の開度が制御される。このとき、
スロットル開度Tnはサブスロットル弁開度TH・Sと
なる。
【0057】t2時点では、駆動輪のスリップ量がブレ
ーキ制御目標値SBT以上となったときであり、このと
きは、駆動輪に対してブレーキ液圧が供給され、エンジ
ン制御とブレーキ制御の両方によるスリップ制御の開始
される。ブレーキ液圧は、駆動輪のスリップ量がブレー
キ制御目標値SBTとなるように制御される。
【0058】t3時点では、駆動輪のスリップ量がブレ
ーキ制御目標値SBT未満となったときであり、これに
よって、ブレーキ液圧が徐々に低下され、やがてブレー
キ液圧は零となる。ただし、エンジン制御は、なおも継
続される。エンジン制御の終了条件は、実施例では、ス
リップ量がSETに収束した時点としている。
【0059】 [車両のサスペンションの共振の影響について] 図5において、実線で示す曲線は、車両のサスペンショ
ンの共振の影響がない場合の駆動輪の車輪速と加速度と
を示し、破線で示す曲線は、サスペンションの共振の影
響で駆動輪に周期的な負荷が作用し、当該駆動輪の加速
度が変動した場合をモデル化して示すものである。
【0060】すなわち、実線で示すように、アクセルペ
ダル10の踏込みにより駆動輪の車輪速が加速上昇しス
リップ量が増大すると、上述のエンジン制御及びブレー
キ制御が実行されて上記スリップ量の増大が抑えられ、
車輪速は上昇が鈍ってピークを迎え、その後は低下して
いく。これに対して、駆動輪の加速度は、車輪速の上昇
過程でピークを迎えた後、車輪速がピークを迎えた時点
でプラスの値からマイナス値に大きく変化していく。そ
して、実際の加速度は上記実線にサスペンションの共振
による変動がプラスされて破線のようになる。
【0061】同図から明らかなように、車輪速が定常的
に上昇するころまではサスペンションの共振の影響があ
っても加速度の変化量ΔGは小さいが、車輪速がピーク
を迎えるころは上記変化量ΔGが非常に大きくなる。上
記加速度はブレーキ制御量演算のためのDENに対応
し、上記ΔGは変化量ΔDENに対応する。
【0062】本実施例においては、上記所定値Ko は、
駆動輪の車輪速がピークを迎える手前の加速度の変化量
ΔGが小さいときはDENを用いてブレーキ制御量が演
算され、ピークを越える前後の加速度の変化量ΔGが大
きいときはなましDENを用いてブレーキ制御量が演算
されるように、設定されている。従って、上記ΔDEN
が所定値Ko 以下のときはDEN演算手段53によって
得られるDENを用いてブレーキ制御量が演算されるか
ら、図5で言えば車輪速がピークを迎える手前までは、
実際の加速度に応じてブレーキ制御量が演算されること
になる。このときは、加速度の変化量が少ないからブレ
ーキ力の大きな変動はなく、かえって加速度の変化に即
したブレーキ制御により駆動輪のスリップの早期収束を
図ることができる。
【0063】一方、上記車輪速がピークを越える前後の
加速度の変化が大きい領域では、上記ブレーキ制御量の
演算になましDENが用いられるから、加速度変化が大
きくてもブレーキ力の過度な変動は防止される。よっ
て、サスペンションの振動助長を防止することができる
ものであり、且つ、このころは駆動輪のスリップが収束
傾向を示し始めているころであるから、ブレーキ制御が
実際の加速度の変動に対し遅れることがあっても支障は
少ない。さらに、上述の如く、ブレーキ制御がなましD
ENに基づいて行なわれても、エンジン制御は実際の加
速度に対応するDENに基づいて応答性良く行なわれる
から、スリップの収束という面で支障は少ないものであ
る。
【0064】また、上記加速度の変化量ΔG(ΔDE
N)が大きくなると、それに応じてなましDENを得る
ための前回値の反映割合TEが大きくなるから、結果的
にブレーキ力の変動が小さくなり、上記サスペンション
の振動助長を防止する上で有利になる。
【図面の簡単な説明】図面は本発明の実施例を示す。
【図1】車両のスリップ制御装置の全体構成図
【図2】ブレーキブースタの断面図
【図3】ブレーキ制御量演算のフロー図
【図4】スリップ制御における駆動輪のスリップ量等の
経時変化の一例を示す図
【図5】駆動輪の加速度へのサスペンションの共振の影
響を示す図
【符号の説明】
1FL,1FR 駆動輪 2 エンジン 7FL〜7FR ブレーキ 9 エンジン出力調整手段 51 制御手段 52 スリップ量検出手段 53 DEN演算手段 54 フィルタ手段 55 エンジン制御量演算手段 56 ブレーキ制御量演算手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60T 8/58

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】車両の加速時における駆動輪の路面に対す
    るスリップ量が目標値となるようにエンジン出力を低減
    制御するエンジン制御手段と、上記駆動輪の路面に対す
    るスリップ量が目標値となるように当該駆動輪に付与す
    るブレーキ力を制御するブレーキ制御手段とを備え、上
    記エンジン制御手段及びブレーキ制御手段が、各々の制
    御量を演算する制御量演算手段を備えている車両のスリ
    ップ制御装置であって、 上記駆動輪のスリップ量を検出するスリップ量検出手段
    と、 上記スリップ量とエンジン制御手段の目標値との偏差を
    エンジン制御量演算変数として演算する手段と、 上記スリップ量とブレーキ制御手段の目標値との偏差を
    ブレーキ制御量演算変数として演算する手段と、 上記エンジン制御量演算変数の時間変化率を求める手段
    と、 上記ブレーキ制御量演算変数の時間変化率を求める手段
    と、 上記求められたブレーキ制御量演算変数の時間変化率に
    前回の値を所定割合で反映させてなまし時間変化率を得
    るフィルタ手段とを備え、 上記エンジン制御手段の制御量演算手段は、上記エンジ
    ン制御量演算変数とその時間変化率とに基づいて制御量
    を演算し、 上記ブレーキ制御手段の制御量演算手段は、上記ブレー
    キ制御量演算変数の時間変化率の変化量が所定値以下の
    ときには当該ブレーキ制御量演算変数とその時間変化率
    とに基づいて制御量を演算し、上記変化量が所定値を越
    えるときには当該ブレーキ制御量演算変数と上記フィル
    タ手段によって得られるなまし時間変化率とに基づいて
    制御量を演算することを特徴とする車両のスリップ制御
    装置。
  2. 【請求項2】上記ブレーキ制御手段の制御量演算手段
    は、上記ブレーキ制御量演算変数の時間変化率の変化量
    が大きいほどフィルタ手段における前回の値の反映割合
    を大きくさせる請求項1に記載の車両のスリップ制御装
    置。
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