JP3435729B2 - 車両の能動消音装置 - Google Patents
車両の能動消音装置Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両の走行時のタイ
ヤ,サスペンション等のような複数の加振源から伝搬す
る複数の振動により発生する閉空間、例えば、車室内騒
音でランダムノイズを能動的に消音する能動消音方法及
び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】車両の運転時に発生する騒音は、エンジ
ン音,風切音,ロードノイズなど様々であるが、このう
ち走行中の路面の凸凹によるタイヤ及びサスペンション
の振動が車室内に伝搬されて発生する騒音が一般にロー
ドノイズとよばれ、通常30〜300Hzのブロードバン
ドスペクトルを持っている。ロードノイズは、粗い路面
では時速40〜60Km程度でも発生し、人間にとって不
快な音であることから、これを低減するための様々な努
力がなされていた。 【0003】ところで、これら騒音に対する対策は車体
の構造設計上の変更や遮音材を用いた対策など、消極的
な方法を用いるのが一般的であった。一方、発生する騒
音に対し逆位相の2次音を人工的に作り出して、能動的
に音を消す能動騒音制御技術が注目されている。特に、
ロードノイズに対して2次音源を用いて能動的消音を行
うシステムに関する研究例としては、例えば、文献“ア
クティブ ノイズ アンド バイブレーション コント
ロール ウィズイン ザ オートモビル”(“Active N
oise and Vibration Control witin the Automobile”,
A M Mcdonald,et al, International Symposium on Act
ive Control of Sound andVibration, ASJ Proc.'91. T
okyo,April 9-11,1991,pp.147−156)がある。この中
で、A M Mcdonaldらは、リアサスペンションの振動をホ
イールハブに近接して取り付けた2個の加速度センサの
測定出力を参照信号として用い、2個のマイクロフォン
と2個のスピーカで構成される能動消音システムによ
り、リアシートの位置での100Hz付近での騒音レベル
をかなり低減できた例について報告している。 【0004】この、能動騒音制御の基本的なアイディア
は古く、1930年代にLuegによって行われた先駆的な
研究以降、1950年代にはOlson ,Conver等によって
研究が行われてきているが、実際に製品に適用されるよ
うになったのは比較的最近である。これはディジタルシ
グナルプロセッサなど高速制御をきめこまかく可能とす
るための高速演算素子の出現によるところが大きいが、
さらに制御アルゴリズムに関する理論面の整備が進んで
きていることも挙げられる。 【0005】能動騒音制御技術に関する最近の注目すべ
き研究例は、G.B.B.Chaplin によるもの(例えば、特表
昭56−501062 号公報)とP.A.Nelson/S.J.Elliotによる
もの(例えば、特表平1−501344 号公報)の2例を挙げ
ることができる。両者の制御方法の違いは、前者の制御
が対象とする騒音の周期性を前提とした「繰返し制御」を
用いているのに対して、後者のそれは最急降下法の一種
であるLMS(LeastMean Square:最小二乗法)アルゴ
リズムを用いた適応信号処理を行っている点にあり、対
象騒音は必ずしも周期的であることを要しない。 【0006】このLMS適応制御アルゴリズムは195
0年代にWidrowによって体系化された方法であるが、汎
用性に富むことから能動騒音制御に関する最近の研究例
は、ほとんどこの制御アルゴリズムに依っている。本発
明でも、基本的にはこの制御アルゴリズムの使用を前提
としているので、前述の特表平1−501344号公報(P.A.Ne
lson/S.J.Elliot)を例に取って従来技術の説明を行
う。 【0007】図7は、前述の公表特許に記載されてい
る、複数のラウドスピーカとマイクロフォンにより自動
車の車室内などの特定の閉空間中を消音する能動騒音制
御装置を示している。これは、閉空間内の所定位置の音
圧を測定する3個のマイクロフォンと各マイクロフォン
位置で1次音(騒音)と2次音が干渉し合って騒音低減
させるための2次音を出力する2個のラウドスピーカ,
エンジンの回転に同期した信号を発生する基準信号発生
器,基準信号を位相振幅変調させてスピーカを駆動する
信号を出力してラウドスピーカを駆動するための1次の
適応形フィルタを有する制御回路で構成されている。ま
た、基準信号発生器へはエンジン回転信号(例えば、点
火タイミング信号,クランク角センサの信号等)が入力
されており、基準信号発生器は時々刻々のエンジン回転
周期の整数倍に比例した正弦波信号を生成している。 【0008】LMS適応制御アルゴリズムは、各マイク
ロフォン位置での音圧の二乗値の和が最小になるよう適
応フィルタの係数を時々刻々更新しているが、1次音と
2次音がうまく干渉し合って騒音低減が図られるために
は、基準信号もしくはその元となる参照信号の中の1次
音に対して充分相関性が高い成分が含まれていなければ
ならない。通常、二つの信号間の相関性の度合を表す指
標としてコヒーレンス(可干渉性)と呼ばれ0〜1の間
の値を取る無次元量が定義される。厳密な理論解析の結
果から、LMS適応制御アルゴリズムに基づく能動騒音
制御システムによる騒音低減量はこのコヒーレンスの値
で決定されることがわかっている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】ロードノイズは、走行
中の路面の凸凹によるランダム加振が原因であるから、
基本的にランダム性の強い騒音であり、図2にその一例
に示すように幅広いバンドのスペクトル構造を有してい
る。さらに、路面からタイヤへの加振は上下,左右,前
後と方向もまたランダムであり、かつ4輪から入力され
ている。即ち、ロードノイズは複数の騒音源からなって
いるとともに、サスペンションを介す、あるいは空気中
を伝搬して車室内に入るなど、複雑な伝達系を伝搬して
くる。 【0010】このような条件で、LMSアルゴリズムに
より能動制御を行ったときに、問題になることの一つ
に、能動制御装置の安定性や追従性がある。すなわち、
ロードノイズはランダム音であるため、装置が安定した
後、突如道路の条件が変わり(たとえば、ある区間の道
路工事など)環境条件が悪化した場合に、追従性が悪く
なり、スピーカから2次音として所望の音と異なる音が
出力されてしまう。このようなことが起こると、車室内
の人間は不快感を覚えることになる。したがって、本発
明の目的の一つは、このような不快感を取り除くことで
ある。 【0011】また、路面の状態が変化するとロードノイ
ズの質がかわり、路面変化の前後で適応フィルタの係数
を書換えなければならない。このとき、路面の状態をい
ち早く得ることができれば、より速く適応することが可
能となる。その結果、車室内の乗車員に対して、道路の
変化による不快感を与えなくて済む。このことが、本発
明の第2の目的である。 【0012】以上本発明は、車両用アクティブノイズコ
ンロール装置に係り、路面が急激に変化したとしても、
車室内の人に対して不快感を与えないようにすることで
ある。 【0013】 【実施例】本発明の構成を図1に示す。この図はロード
ノイズの能動消音装置の全体像を示している。同図にお
いて、能動消音装置は路面情報を得るためのセンサ1
0,11(以下、プレビューセンサと呼ぶ),前後左右
のサスペンションに取り付けた加速度センサ20〜23
(ここで、加速度センサは、複数方向の加速度を検出で
きるタイプであってもよい),車室内に配置された騒音
検出用マイクロホン30〜33,消音のための制御音
(2次音)を出力するスピーカ40,41,消音制御の
ためのコントローラ50等によって主に構成されてい
る。プレビューセンサには、超音波を利用するものやレ
ーザを利用するものが考えられる。 【0014】このような構成のもとで、通常の消音は、
次のように行われる。まず、走行中に路面の凹凸により
タイヤが加振され、各サスペンションに取り付けられた
加速度センサ20,23により振動加速度を検出し、検
出信号をコントローラ50に供給する。コントローラ5
0では検出信号を加算回路105により適当な組み合わ
せで加算して参照信号105を作成する(同図では参照
信号は2個作成される場合を示している。)。そして、
その参照信号はA/D変換器61に送られてディジタル
信号に変換される。コントローラ50内のマイクロプロ
セッサ70では、入力されたディジタル信号に適応ディ
ジタルフィルタ(ADFと略す)を用いて畳み込み演算を
行いスピーカ出力制御信号を生成する。そして、出力信
号はD/A変換器80を介してパワーアンプ90により
増幅されてスピーカ40,41により2次音となって出
力される。一方、ADFはマイクロホン30〜33によ
り車室内音圧を検出しその検出信号をA/D変換器60
を通してマイクロプロセッサ70に入力する。そして、
マイクロプロセッサ70にプログラムされた適応制御ア
ルゴリズムでは、車室内音圧(マイクロホン30〜33
の出力)の二乗値の総和が最小になるように常にADF
のフィルタ係数を調節してADF出力を調節する。これ
によりスピーカの2次音出力が常に最適となるように調
節されている。 【0015】ここで、上述のADFのフィルタ係数を調
節するアルゴリズムには、MultipleError Filtered-x L
MSアルゴリズム(MEFX−LMS アルゴリズムと略す)を用
いている(MEFX−LMS アルゴリズムの詳細については例
えば文献“Signal Processingfor Active Control-Adap
tive Signal Processing -”, Hareo HAMADA, Int
ernational Symposium on Active Control of Sound an
d Vibration, ASJ Proc. '91, Tokyo, April 9-11, 199
1, pp.33-44等に詳細に解説されているのでここでは略
する。)。 【0016】プレビューセンサ10,11は、基準信号
より早く道路状態の情報を得るために、車体の前方に取
り付ける必要がある。このセンサは、直接道路を観測す
る必要があるため、天候に左右されないことが条件であ
る。このため、超音波やレーザを用いたセンサなどを用
いる。 【0017】このような制御が行われているときに、突
然、道路状態が変わったとする。このとき、ADFの係
数の最適値が大きく変化する。あるいは、加速度センサ
出力20〜22の出力が大きくなりすぎて、オーバフロ
ーするなどの問題を生じる。このような現象が起こった
場合、理想的には、ADFの係数が瞬時に最適値に変わ
ることが望ましい。しかし、実際には、車内の音は図2
のようなランダム音であるため、ADFの係数を瞬時に
収束させることはむずかしく、最悪の場合には消音シス
テムの暴走も考えられる。このため、本実施例では、プ
レビューセンサ出力10,11をA/D変換器60によ
りディジタル化し、このプレビュー信号を監視し、プレ
ビューセンサ信号が急激に変化している区間だけ消音制
御を止めている。プレビューセンサ10,11は、サス
ペンションに取り付けた加速度センサより前にあるた
め、早く道路の状態を把握することができる。したがっ
て、プレビューセンサ10,11の出力が急激に変化し
た場合には、加速度センサ出力が大きくなることを示す
ので、従来の消音装置の適応フィルタの係数の各値をゼ
ロにすれば2次音の出力がなくなり、消音装置が暴走す
ることはない。また、プレビューセンサ出力の変動量が
小さくなったときに、所定の適応フィルタ係数をロード
することにより、消音動作を再開させることができる。 【0018】プレビューセンサの出力で道路が急激に変
化したかどうかを決定する方法を述べる。二つのプレビ
ューセンサ10,11の差を求める。この差が路面の凸
凹を示す情報となるので、この差が大きくなると凸凹量
が大きいので、当然加速度信号が大きくなり、従って、
参照信号がオーバーフローすることが予想される。な
お、参照信号がオーバーフローしていると参照信号が変
化し、ADFの値も大きく変化し望ましくない。このと
きの動作の流れをまとめると図5のようになる。 【0019】本実施例では、路面の変化する区間が短い
ときに特に有効で、路面状態が変化してもコントローラ
が発散することなく、通常の路面になったときには消音
動作を実行することができるので、安定して音を下げる
ことができるなどの効果を得ることができる。なお、路
面が悪いときには音の制御を行っていないが、車体より
感じる振動の大きさも大きくなっているので、消音動作
停止に伴って音が高くなっても車室内の人には受け入れ
られるものと考えられる。 【0020】他の実施例について述べる。この実施例で
は、構成は第1の実施例と同じであり、コントローラ5
0内の消音動作のみが異なっている。そこで、ここでは
騒音動作の制御方式のみを説明する。プレビューセンサ
信号が急激に変化したときには、収束係数の値を大きく
し消音制御は続ける。このとき、収束係数は時間経過と
ともに低下させていく。以上の消音動作をまとめると図
4のようになる。 【0021】本実施例では、プレビューセンサの信号が
変化しても、収束係数の値を大きくして速く最適値に近
づくようにしているので、路面状態が変化したときに、
初めは音が上がるものの徐々に音が低下していくことに
なり、車室内の人には、音が徐々に下がっていく状態が
実感されやすいなど、全時間の平均値としては音が下げ
られる効果がある。しかし、路面が非常に荒れている場
合には有効ではない。 【0022】他の実施例について述べる。この実施例で
は、構成は第1の実施例と同じであり、コントローラ5
0内の消音動作のみが異なっている。そこで、ここでは
騒音動作の制御方式のみを説明する。 【0023】道路状態が変化した場合の適用フィルタの
最適値を保持しており、この最適値が道路状態に対応し
て交換が可能となれば大きな消音効果をあげることが可
能となる。この場合の動作を図6に示す。 【0024】各アルゴリズムの手続きを図4から図6ま
でに示したが、これらの一般的なアルゴリズムを図3に
示す。図3において、MEFX−LMS の中断には、マイクロ
プロセッサ70の動作を止めることも含んでいる。 【0025】以上、本発明によれば道路が急激に変化し
た場合でも、消音装置の暴走を防ぐことができ、また、
道路変化に追従できる消音が可能となる。 【0026】 【発明の効果】本発明によれば、参照信号が急激に変化
するような場合でも、プレビューセンサにより事前に、
その大きさをある程度予測できるため、アクティブノイ
ズコントロール装置の暴走を止めることができる。ま
た、効果的に消音動作を続行することも可能である。
ヤ,サスペンション等のような複数の加振源から伝搬す
る複数の振動により発生する閉空間、例えば、車室内騒
音でランダムノイズを能動的に消音する能動消音方法及
び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】車両の運転時に発生する騒音は、エンジ
ン音,風切音,ロードノイズなど様々であるが、このう
ち走行中の路面の凸凹によるタイヤ及びサスペンション
の振動が車室内に伝搬されて発生する騒音が一般にロー
ドノイズとよばれ、通常30〜300Hzのブロードバン
ドスペクトルを持っている。ロードノイズは、粗い路面
では時速40〜60Km程度でも発生し、人間にとって不
快な音であることから、これを低減するための様々な努
力がなされていた。 【0003】ところで、これら騒音に対する対策は車体
の構造設計上の変更や遮音材を用いた対策など、消極的
な方法を用いるのが一般的であった。一方、発生する騒
音に対し逆位相の2次音を人工的に作り出して、能動的
に音を消す能動騒音制御技術が注目されている。特に、
ロードノイズに対して2次音源を用いて能動的消音を行
うシステムに関する研究例としては、例えば、文献“ア
クティブ ノイズ アンド バイブレーション コント
ロール ウィズイン ザ オートモビル”(“Active N
oise and Vibration Control witin the Automobile”,
A M Mcdonald,et al, International Symposium on Act
ive Control of Sound andVibration, ASJ Proc.'91. T
okyo,April 9-11,1991,pp.147−156)がある。この中
で、A M Mcdonaldらは、リアサスペンションの振動をホ
イールハブに近接して取り付けた2個の加速度センサの
測定出力を参照信号として用い、2個のマイクロフォン
と2個のスピーカで構成される能動消音システムによ
り、リアシートの位置での100Hz付近での騒音レベル
をかなり低減できた例について報告している。 【0004】この、能動騒音制御の基本的なアイディア
は古く、1930年代にLuegによって行われた先駆的な
研究以降、1950年代にはOlson ,Conver等によって
研究が行われてきているが、実際に製品に適用されるよ
うになったのは比較的最近である。これはディジタルシ
グナルプロセッサなど高速制御をきめこまかく可能とす
るための高速演算素子の出現によるところが大きいが、
さらに制御アルゴリズムに関する理論面の整備が進んで
きていることも挙げられる。 【0005】能動騒音制御技術に関する最近の注目すべ
き研究例は、G.B.B.Chaplin によるもの(例えば、特表
昭56−501062 号公報)とP.A.Nelson/S.J.Elliotによる
もの(例えば、特表平1−501344 号公報)の2例を挙げ
ることができる。両者の制御方法の違いは、前者の制御
が対象とする騒音の周期性を前提とした「繰返し制御」を
用いているのに対して、後者のそれは最急降下法の一種
であるLMS(LeastMean Square:最小二乗法)アルゴ
リズムを用いた適応信号処理を行っている点にあり、対
象騒音は必ずしも周期的であることを要しない。 【0006】このLMS適応制御アルゴリズムは195
0年代にWidrowによって体系化された方法であるが、汎
用性に富むことから能動騒音制御に関する最近の研究例
は、ほとんどこの制御アルゴリズムに依っている。本発
明でも、基本的にはこの制御アルゴリズムの使用を前提
としているので、前述の特表平1−501344号公報(P.A.Ne
lson/S.J.Elliot)を例に取って従来技術の説明を行
う。 【0007】図7は、前述の公表特許に記載されてい
る、複数のラウドスピーカとマイクロフォンにより自動
車の車室内などの特定の閉空間中を消音する能動騒音制
御装置を示している。これは、閉空間内の所定位置の音
圧を測定する3個のマイクロフォンと各マイクロフォン
位置で1次音(騒音)と2次音が干渉し合って騒音低減
させるための2次音を出力する2個のラウドスピーカ,
エンジンの回転に同期した信号を発生する基準信号発生
器,基準信号を位相振幅変調させてスピーカを駆動する
信号を出力してラウドスピーカを駆動するための1次の
適応形フィルタを有する制御回路で構成されている。ま
た、基準信号発生器へはエンジン回転信号(例えば、点
火タイミング信号,クランク角センサの信号等)が入力
されており、基準信号発生器は時々刻々のエンジン回転
周期の整数倍に比例した正弦波信号を生成している。 【0008】LMS適応制御アルゴリズムは、各マイク
ロフォン位置での音圧の二乗値の和が最小になるよう適
応フィルタの係数を時々刻々更新しているが、1次音と
2次音がうまく干渉し合って騒音低減が図られるために
は、基準信号もしくはその元となる参照信号の中の1次
音に対して充分相関性が高い成分が含まれていなければ
ならない。通常、二つの信号間の相関性の度合を表す指
標としてコヒーレンス(可干渉性)と呼ばれ0〜1の間
の値を取る無次元量が定義される。厳密な理論解析の結
果から、LMS適応制御アルゴリズムに基づく能動騒音
制御システムによる騒音低減量はこのコヒーレンスの値
で決定されることがわかっている。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】ロードノイズは、走行
中の路面の凸凹によるランダム加振が原因であるから、
基本的にランダム性の強い騒音であり、図2にその一例
に示すように幅広いバンドのスペクトル構造を有してい
る。さらに、路面からタイヤへの加振は上下,左右,前
後と方向もまたランダムであり、かつ4輪から入力され
ている。即ち、ロードノイズは複数の騒音源からなって
いるとともに、サスペンションを介す、あるいは空気中
を伝搬して車室内に入るなど、複雑な伝達系を伝搬して
くる。 【0010】このような条件で、LMSアルゴリズムに
より能動制御を行ったときに、問題になることの一つ
に、能動制御装置の安定性や追従性がある。すなわち、
ロードノイズはランダム音であるため、装置が安定した
後、突如道路の条件が変わり(たとえば、ある区間の道
路工事など)環境条件が悪化した場合に、追従性が悪く
なり、スピーカから2次音として所望の音と異なる音が
出力されてしまう。このようなことが起こると、車室内
の人間は不快感を覚えることになる。したがって、本発
明の目的の一つは、このような不快感を取り除くことで
ある。 【0011】また、路面の状態が変化するとロードノイ
ズの質がかわり、路面変化の前後で適応フィルタの係数
を書換えなければならない。このとき、路面の状態をい
ち早く得ることができれば、より速く適応することが可
能となる。その結果、車室内の乗車員に対して、道路の
変化による不快感を与えなくて済む。このことが、本発
明の第2の目的である。 【0012】以上本発明は、車両用アクティブノイズコ
ンロール装置に係り、路面が急激に変化したとしても、
車室内の人に対して不快感を与えないようにすることで
ある。 【0013】 【実施例】本発明の構成を図1に示す。この図はロード
ノイズの能動消音装置の全体像を示している。同図にお
いて、能動消音装置は路面情報を得るためのセンサ1
0,11(以下、プレビューセンサと呼ぶ),前後左右
のサスペンションに取り付けた加速度センサ20〜23
(ここで、加速度センサは、複数方向の加速度を検出で
きるタイプであってもよい),車室内に配置された騒音
検出用マイクロホン30〜33,消音のための制御音
(2次音)を出力するスピーカ40,41,消音制御の
ためのコントローラ50等によって主に構成されてい
る。プレビューセンサには、超音波を利用するものやレ
ーザを利用するものが考えられる。 【0014】このような構成のもとで、通常の消音は、
次のように行われる。まず、走行中に路面の凹凸により
タイヤが加振され、各サスペンションに取り付けられた
加速度センサ20,23により振動加速度を検出し、検
出信号をコントローラ50に供給する。コントローラ5
0では検出信号を加算回路105により適当な組み合わ
せで加算して参照信号105を作成する(同図では参照
信号は2個作成される場合を示している。)。そして、
その参照信号はA/D変換器61に送られてディジタル
信号に変換される。コントローラ50内のマイクロプロ
セッサ70では、入力されたディジタル信号に適応ディ
ジタルフィルタ(ADFと略す)を用いて畳み込み演算を
行いスピーカ出力制御信号を生成する。そして、出力信
号はD/A変換器80を介してパワーアンプ90により
増幅されてスピーカ40,41により2次音となって出
力される。一方、ADFはマイクロホン30〜33によ
り車室内音圧を検出しその検出信号をA/D変換器60
を通してマイクロプロセッサ70に入力する。そして、
マイクロプロセッサ70にプログラムされた適応制御ア
ルゴリズムでは、車室内音圧(マイクロホン30〜33
の出力)の二乗値の総和が最小になるように常にADF
のフィルタ係数を調節してADF出力を調節する。これ
によりスピーカの2次音出力が常に最適となるように調
節されている。 【0015】ここで、上述のADFのフィルタ係数を調
節するアルゴリズムには、MultipleError Filtered-x L
MSアルゴリズム(MEFX−LMS アルゴリズムと略す)を用
いている(MEFX−LMS アルゴリズムの詳細については例
えば文献“Signal Processingfor Active Control-Adap
tive Signal Processing -”, Hareo HAMADA, Int
ernational Symposium on Active Control of Sound an
d Vibration, ASJ Proc. '91, Tokyo, April 9-11, 199
1, pp.33-44等に詳細に解説されているのでここでは略
する。)。 【0016】プレビューセンサ10,11は、基準信号
より早く道路状態の情報を得るために、車体の前方に取
り付ける必要がある。このセンサは、直接道路を観測す
る必要があるため、天候に左右されないことが条件であ
る。このため、超音波やレーザを用いたセンサなどを用
いる。 【0017】このような制御が行われているときに、突
然、道路状態が変わったとする。このとき、ADFの係
数の最適値が大きく変化する。あるいは、加速度センサ
出力20〜22の出力が大きくなりすぎて、オーバフロ
ーするなどの問題を生じる。このような現象が起こった
場合、理想的には、ADFの係数が瞬時に最適値に変わ
ることが望ましい。しかし、実際には、車内の音は図2
のようなランダム音であるため、ADFの係数を瞬時に
収束させることはむずかしく、最悪の場合には消音シス
テムの暴走も考えられる。このため、本実施例では、プ
レビューセンサ出力10,11をA/D変換器60によ
りディジタル化し、このプレビュー信号を監視し、プレ
ビューセンサ信号が急激に変化している区間だけ消音制
御を止めている。プレビューセンサ10,11は、サス
ペンションに取り付けた加速度センサより前にあるた
め、早く道路の状態を把握することができる。したがっ
て、プレビューセンサ10,11の出力が急激に変化し
た場合には、加速度センサ出力が大きくなることを示す
ので、従来の消音装置の適応フィルタの係数の各値をゼ
ロにすれば2次音の出力がなくなり、消音装置が暴走す
ることはない。また、プレビューセンサ出力の変動量が
小さくなったときに、所定の適応フィルタ係数をロード
することにより、消音動作を再開させることができる。 【0018】プレビューセンサの出力で道路が急激に変
化したかどうかを決定する方法を述べる。二つのプレビ
ューセンサ10,11の差を求める。この差が路面の凸
凹を示す情報となるので、この差が大きくなると凸凹量
が大きいので、当然加速度信号が大きくなり、従って、
参照信号がオーバーフローすることが予想される。な
お、参照信号がオーバーフローしていると参照信号が変
化し、ADFの値も大きく変化し望ましくない。このと
きの動作の流れをまとめると図5のようになる。 【0019】本実施例では、路面の変化する区間が短い
ときに特に有効で、路面状態が変化してもコントローラ
が発散することなく、通常の路面になったときには消音
動作を実行することができるので、安定して音を下げる
ことができるなどの効果を得ることができる。なお、路
面が悪いときには音の制御を行っていないが、車体より
感じる振動の大きさも大きくなっているので、消音動作
停止に伴って音が高くなっても車室内の人には受け入れ
られるものと考えられる。 【0020】他の実施例について述べる。この実施例で
は、構成は第1の実施例と同じであり、コントローラ5
0内の消音動作のみが異なっている。そこで、ここでは
騒音動作の制御方式のみを説明する。プレビューセンサ
信号が急激に変化したときには、収束係数の値を大きく
し消音制御は続ける。このとき、収束係数は時間経過と
ともに低下させていく。以上の消音動作をまとめると図
4のようになる。 【0021】本実施例では、プレビューセンサの信号が
変化しても、収束係数の値を大きくして速く最適値に近
づくようにしているので、路面状態が変化したときに、
初めは音が上がるものの徐々に音が低下していくことに
なり、車室内の人には、音が徐々に下がっていく状態が
実感されやすいなど、全時間の平均値としては音が下げ
られる効果がある。しかし、路面が非常に荒れている場
合には有効ではない。 【0022】他の実施例について述べる。この実施例で
は、構成は第1の実施例と同じであり、コントローラ5
0内の消音動作のみが異なっている。そこで、ここでは
騒音動作の制御方式のみを説明する。 【0023】道路状態が変化した場合の適用フィルタの
最適値を保持しており、この最適値が道路状態に対応し
て交換が可能となれば大きな消音効果をあげることが可
能となる。この場合の動作を図6に示す。 【0024】各アルゴリズムの手続きを図4から図6ま
でに示したが、これらの一般的なアルゴリズムを図3に
示す。図3において、MEFX−LMS の中断には、マイクロ
プロセッサ70の動作を止めることも含んでいる。 【0025】以上、本発明によれば道路が急激に変化し
た場合でも、消音装置の暴走を防ぐことができ、また、
道路変化に追従できる消音が可能となる。 【0026】 【発明の効果】本発明によれば、参照信号が急激に変化
するような場合でも、プレビューセンサにより事前に、
その大きさをある程度予測できるため、アクティブノイ
ズコントロール装置の暴走を止めることができる。ま
た、効果的に消音動作を続行することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】能動消音装置のブロック図。
【図2】車内騒音のスペクトル分布図。
【図3】プレビューセンサを用いた第1の方法のフロー
チャート。 【図4】プレビューセンサを用いた第2の方法のフロー
チャート。 【図5】プレビューセンサを用いた第3の方法のフロー
チャート。 【図6】プレビューセンサを用いた第4の方法のフロー
チャート。 【図7】従来の能動騒音制御装置のブロック図。 【符号の説明】 10…プレビューセンサ、20〜23…加速度センサ、
30〜33…マイクロフォン、40,41…スピーカ、
50…コントローラ、60,61…A/D変換器、70
…マイクロプロセッサ、80…D/A変換器、90…ア
ンプ、101〜104…センサ検出信号、105…参照
信号、107…出力制御信号、110…プレビューセン
サ検出信号。
チャート。 【図4】プレビューセンサを用いた第2の方法のフロー
チャート。 【図5】プレビューセンサを用いた第3の方法のフロー
チャート。 【図6】プレビューセンサを用いた第4の方法のフロー
チャート。 【図7】従来の能動騒音制御装置のブロック図。 【符号の説明】 10…プレビューセンサ、20〜23…加速度センサ、
30〜33…マイクロフォン、40,41…スピーカ、
50…コントローラ、60,61…A/D変換器、70
…マイクロプロセッサ、80…D/A変換器、90…ア
ンプ、101〜104…センサ検出信号、105…参照
信号、107…出力制御信号、110…プレビューセン
サ検出信号。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平4−11291(JP,A)
特開 平3−182833(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
G10K 11/178
B60R 16/00
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】前後左右のサスペンションに取り付けられ
た加速度センサと、車室内に取り付けられた騒音検出用
のマイクロホンと、消音のための制御音を出力するスピ
ーカと、このスピーカの出力制御を行うコントローラと
を備えた車両の能動消音装置において、前記コントロー
ラの検出信号を加算回路で組み合わせて作成された参照
信号と、この参照信号をディジタル信号に変換するA/
D変換器と、前記ディジタル信号からスピーカ出力制御
信号を生成する適応ディジタルフィルタと、前記スピー
カ出力制御信号をD/A変換器を介してパワーアンプに
より増幅させて2次音を出力させるためのスピーカと、
車室内音圧を検出するマイクロホンと、このマイクロホ
ンにて検出された検出信号を入力されるマイクロプロセ
ッサと、このマイクロプロセッサにプログラムされた適
応制御アルゴリズムとを備え、前記加速度センサより前
方の路面情報を得るプレビューセンサを設け、このプレ
ビューセンサが急激な信号変化を検知した区間だけ消音
制御を停止する手段を備えたことを特徴とする車両の能
動消音装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP11952593A JP3435729B2 (ja) | 1993-05-21 | 1993-05-21 | 車両の能動消音装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP11952593A JP3435729B2 (ja) | 1993-05-21 | 1993-05-21 | 車両の能動消音装置 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH06332469A JPH06332469A (ja) | 1994-12-02 |
| JP3435729B2 true JP3435729B2 (ja) | 2003-08-11 |
Family
ID=14763442
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP11952593A Expired - Fee Related JP3435729B2 (ja) | 1993-05-21 | 1993-05-21 | 車両の能動消音装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3435729B2 (ja) |
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| JP6462752B2 (ja) * | 2017-03-30 | 2019-01-30 | 株式会社Subaru | 車両用消音装置 |
| US10347236B1 (en) * | 2018-02-28 | 2019-07-09 | Harman International Industries, Incorporated | Method and apparatus for continuously optimized road noise cancellation |
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| DE112024001534T5 (de) | 2023-03-31 | 2026-03-12 | Sony Group Corporation | Geräuschunterdrückungsvorrichtung, geräuschunterdrückungsverfahren und programm |
| JP2025094849A (ja) * | 2023-12-13 | 2025-06-25 | 株式会社ブリヂストン | 情報処理装置及びその制御方法、並びに、プログラム |
-
1993
- 1993-05-21 JP JP11952593A patent/JP3435729B2/ja not_active Expired - Fee Related
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH06332469A (ja) | 1994-12-02 |
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