JP3665537B2 - 導電性低熱膨張セラミックス焼結体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は導電性低熱膨張セラミックスに関するものであり、特に精密機械部品用材料として使用されるセラミックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の精密加工技術における、より高い精度に対する要求が高まるにつれて、精密加工機を構成する部材の材料についても、その寸法の安定性を保証することが重要になってきている。このため、従来になく部材の材料には、より高度な低熱膨張特性が求められるようになっている。さらに、部材の軽量化、共振周波数の高周波化を図るために高い比剛性が求められ、また使用環境において高い清浄度が求められる用途では、帯電による部材の汚染を防ぐために十分な導電性を持つことが求められている。
【0003】
このような観点から従来技術を省みると、低熱膨張材料としては、インバーやスーパーインバーに代表される金属系低熱膨張材料、あるいは低熱膨張ガラス、コーディエライト、スポジューメンあるいはチタン酸アルミニウムなど種々の低熱膨張セラミックスが存在する。
【0004】
スーパーインバーは、室温での熱膨張係数が1.0×10-7/Kと比較的低く、導電性が高いことも特徴であるが、比剛性が20GPa/g/cm3未満と、一般的なセラミックス材料に比較して著しく低いことが問題であった。すなわち、金属系の低熱膨張材料は、比較的比重が高いと共にヤング率が低いことから、比剛性に関して極めて不利である。
【0005】
一般的に比剛性の点ではセラミックス材料が有利となる。このような材料として、例えば特開昭50−132017号公報やショット社のZerodur(商品名)にあるように、部分結晶化処理を行った低熱膨張ガラスが開示されている。部分結晶化処理を行ったセラミックス材料は、互いに符号の異なる熱膨張係数を持つ結晶部分とガラス部分が材料中に共存することで、材料全体として熱膨張を相殺し、低熱膨張を実現している。これらの低熱膨張ガラスは、熱膨張係数が室温でほぼ零であり、比剛性も35GPa/g/cm3程度と、スーパーインバーを大きく上回る値を示す。しかし、これらの材料は十分な導電性を持たない問題があった。
【0006】
また、コーディエライト、スポジューメンあるいはチタン酸アルミニウムなどのいわゆる低熱膨張セラミックスは、必ずしも高い比剛性を持たず、また十分な導電性を得ることはできなかった。
【0007】
一方、本発明と異なる技術分野において、例えば耐熱衝撃性を向上したヒーター材料を提供することなどを目的とした導電性低熱膨張材料に関する技術はあるが、十分な低熱膨張性を有していないという問題があった。
【0008】
例えば特公昭53−47514号公報や特公昭60−37561号公報には、負の熱膨張係数あるいは非常に小さい値の正の熱膨張係数の物質に導電性物質相を分散させた導電性低熱膨張セラミックスの記載がある。これら公報の発明は、負の熱膨張係数あるいは非常に小さい正の熱膨張係数を持つ化合物からなる母相に正の熱膨張係数を有する化合物を分散させ、材料全体として互いの熱膨張を相殺または低減させて低熱膨張を達成することを目的とするものであり、この点では上述の特開昭50−132017号公報などと同様の技術を利用したものである。但し、特公昭53−47514号公報や特公昭60−37561号公報による発明では、母相中に分散させた化合物を導電性物質とし、その少なくとも一部が連続して材料全体にネットワークを形成することにより、材料全体としての導電性を確保する技術であることを特徴としている。しかし、これらのセラミックスでは、特公昭53−47514号公報の実施例にあるように多量の導電性相を分散させる必要があるため、熱膨張係数の絶対値が最低でも0.42×10-6/Kと、スーパーインバーの熱膨張係数に比較しても著しく大きく、十分な低熱膨張性を実現できなかった。
【0009】
一般的に、導電性物質は大きな熱膨張係数を有するために、セラミックス中に大きな比率で導電性相を含むと低熱膨張特性を実現することはできない。逆に、導電性相の含有量が少ないと十分な導電性を得ることはできない。例えば、特公昭53−47514号公報に、比抵抗と熱膨張係数の導電材混合量依存性の実施例が図示されているが、この結果によれば、現在要求されている十分な導電性と低熱膨張特性を同時に満たすことはできない。
【0010】
特公昭53−47514号公報のように、絶縁物である母相中に導電性相を混合し、この導電性相が少なくとも部分的に連続した状態で分散し、材料全体に広がる導電性相のネットワークを形成することにより、材料全体の導電性を確保する技術に関しては、例えばGurlandの報告(Gurland, J., 1966, Trans. Metals Soc. AIME, Vol.236, 642)が参考になる。この報告によれば、ベークライト―銀粒子系の実験で示されているように、導電性物質の量がおよそ30体積%以上で絶縁物質中での導電性物質同士の十分な接触が得られ、材料全体の導電性が実現される。しかしながら、この体積比率付近を導電性物質の量として、十分な低熱膨張特性を実現することは前述の理由から非常に困難であり、該当する例はこれまで報告されていない。
【0011】
特公昭53−47514号公報と類似の技術を利用した特公昭60−37561号公報においても、低熱膨張係数物質中に導電性相を25体積%以上混合することが必要であり、十分な導電性を確保した上での低熱膨張の実現はできなかった。
【0012】
このほか、低熱膨張材料へのカーボンブラック添加は、例えば特開平11−343168号公報にあるように、遮光性を付与するための黒色化の手段として用いられる場合がある。カーボンブラックは導電性を有するが、該公報に記載されている量のカーボンの単独添加をコーディエライトに行っても前述のように十分な導電性を得ることはできない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点を解決し、高い清浄度を要求される環境下で軽量かつ高い寸法精度の精密機械部材を実現するため、比剛性が高いと共に十分な導電性を有する低熱膨張材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、セラミックス焼結体中にβユークリプタイト相と共にカーボンまたはカーボンを含む化合物とTiN粒子を同時に含ませ、さらに該焼結体の微細組織を最適化することで上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、βユークリプタイト相を84体積%以上99体積%以下含有し、該βユークリプタイト相以外の残部が 0.5 4 体積 % のカーボンあるいはカーボンを含む化合物 ( 以下炭素化合物と略す ) 0.5 12 体積 % TiN 粒子からなり、前記βユークリプタイト相の平均粒径が 0.5 5 μ m 、前記 TiN 粒子の平均粒径が 0.5 3 μ m である焼結体であって、該焼結体の組織構造が、その組織中に TiN 粒子を部分的にも連続することなく分散し、さらに、βユークリプタイト相及び / 又は TiN 粒子の粒界の少なくとも一部に、カーボン又はカーボンを含む化合物を粒界相としてなり、粒界と垂直方向の前記粒界相の平均厚さが、前記βユークリプタイトの平均結晶粒径の 10% 以下であり、前記焼結体の0〜50℃での熱膨張係数の絶対値が1.0×10-7/K以下であり、体積比抵抗が1.0×107Ω・cm以下、かつ比剛性が40GPa/g/cm3以上であることを特徴とする導電性低熱膨張セラミックス焼結体である
【0016】
精密加工技術を最も必要とされる半導体製造装置分野では、精密位置決めを100nm以下で実現することが必須となっているが、部材の熱膨張はこれに対する大きな障害の一つである。例えば、1×10-6/Kの熱膨張係数を持つ500mmの部材の温度が1℃変化すると、部材の端面で500nmもの偏差が発生することになる。このような影響を避けるため、部材の熱膨張係数の絶対値を1.0×10-7/K以下にすることが求められる。
【0017】
また、十分な導電性とは、帯電を避けるために必要な導電性であって、1.0×107Ω・cm以下の体積比抵抗を実現する導電性を指す。
【0018】
部材の比剛性は前述の観点から、少なくとも既存の低熱膨張ガラス以上の数値を持つことが求められ、特に40 GPa/g/cm3以上であることが求められる。
【0019】
導電性低熱膨張セラミックスの主体をβユークリプタイト相とした理由は次の通りである。すなわち、低熱膨張セラミックス焼結体を得るには、該焼結体の母相を低熱膨張化合物とする必要がある。このような化合物としては、例えばβユークリプタイトやチタン酸アルミニウム、スポジューメン、コーディエライトなどが挙げられるが、この中でもβユークリプタイトを母相とした場合にのみ、目標とする導電性、低熱膨張特性、および比剛性を達成することができる。
本発明中のセラミックスにて低熱膨張性と導電性を同時に確保するためには、TiN粒子と炭素化合物を同時に含むことが必須である。それぞれを単独で含む場合は、TiN粒子あるいは炭素化合物の含有量が所定の範囲に入っていても所望の特性を得ることはできない。本発明の好ましい実施の態様においては、TiN粒子が0.5〜12体積%、炭素化合物が0.5〜4体積%含まれている。これは本発明で規定している熱膨張係数、体積抵抗率および比剛性を実現するための好ましい添加量である。すなわち、TiN粒子が0.5体積%未満あるいは12体積%以上であると、焼結体の熱膨張係数の絶対値が1.0×10-7/Kを超えることから、この範囲を外れることは好ましくない。炭素化合物が0.5体積%より少ない場合は、熱膨張係数は影響を受けないが、4体積%より多い場合は目標とする低熱膨張率を達成することが困難となる。一方、導電性については、TiN粒子および炭素化合物とも0.5体積%より少ない場合は十分な導電性が確保されない。さらに、炭素化合物の含有量について、これが4体積%を超えるとセラミックスの焼結を阻害して、焼結体の弾性係数が下がり、比剛性が40GPa/g/cm3未満となるため、4体積%を超えることは本発明の目的に適合しないため好ましくない。
【0020】
βユークリプタイト相とTiN粒子は、平均結晶粒径がそれぞれ0.5〜5μmと0.5〜3μmの値をとる必要があるが、この範囲を外れると、十分な導電性と低熱膨張特性を同時に実現することができない。また、炭素化合物が粒界相として、βユークリプタイト相およびTiN粒子の粒界に存在し、粒界と垂直な方向の平均厚さがβユークリプタイトの平均結晶粒径の10%以下であることが必要であるが、この寸法を超えると十分な導電性を得ることができなくなる。
【0021】
図1は、本発明に係る導電性低熱膨張セラミックスの代表的な微細構造を示した図である。
TiN粒子は微細組織中で部分的にも連続することなく分散し、さらに、炭素化合物が粒界相としてβユークリプタイト相およびTiN粒子の粒界の少なくとも一部に存在することを特徴とする。ここで、微細組織中で部分的にも連続することなく分散する状態とは、TiN粒子が互いに接触して鎖状のネットワークを部分的にも構成していないことを指す。
【0022】
一方、炭素化合物がβユークリプタイト相およびTiN粒子の粒界に存在する状態とは、炭素化合物が粒界にある厚みを持って存在することをいう。粒界にある厚みを持って存在するとは、βユークリプタイト相やTiN粒子の粒界に接して炭素化合物の単独の粒子として存在する、あるいは平均的な粒径をもつ結晶粒の粒界付近にカーボンの偏析を伴うような状況を指す。炭素化合物の厚さは、βユークリプタイトの結晶粒界と垂直な方向について、βユークリプタイトの平均結晶粒径の10%以下であることが好ましい。
【0023】
材料中の各粒子あるいは化合物の体積比率を決定するには、例えば任意面で材料を切断した場合に、その面に現れる各粒子の面積比から算出する方法などが利用できる。あるいは、焼成後に体積変化が無視できると考えられる場合は、原料粉体の重量混合比とそれぞれの密度から、体積比率を求めることもできる。
【0024】
本発明の材料の新規な点は、TiN粒子と炭素化合物を複合添加し、かつその添加量と焼結体の微細構造を限定することで、炭素化合物をβユークリプタイト相及びTiN粒子の粒界に薄い層として存在させ、従来になく少ない導電性物質の添加量で導電性を確保していることに特徴がある。すなわち、本発明では、炭素化合物を導電性の粒界相として利用することにより、従来に比較して極めて少ない導電性相の存在で十分な導電性を確保することを可能にしている。さらに、粒径を規定したTiN粒子の存在も、本発明の添加量での導電性の実現に寄与している。すなわち、炭素化合物の粒界相のみで導電性を得るためには、本発明に規定した量に比較して著しく上回る体積比率が必要となるが、TiN粒子の存在によって炭素化合物の体積比率を効果的に下げることができる。
【0025】
ここで、炭素化合物はとくにその形態を特定しないが、セラミックス焼成時に導電性物質として残存する、あるいは変化しうる物質である必要があり、アモルファスカーボン、カーボンブラック、グラファイト、炭化珪素、および炭化チタンなどが適した物質としてあげられ、そのなかでも特にアモルファスカーボンおよびカーボンブラックが好ましい。
【0026】
本発明によれば、βユークリプタイト相を主体とし、さらにTiN粒子および炭素化合物で低熱膨張セラミックスを構成することにより、導電性物質の添加量が従来技術に比較して著しく少なくても導電性が確保できるため、従来にない導電性低熱膨張材料が実現できる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミックス焼結体は、βユークリプタイトを中心とした組成からなるものであって、通常の粉末焼結にて形成されるが、緻密化をより効果的に行うためには、ホットプレスや熱間静水圧焼結などの焼成方法も用いられる。ここで、TiN粒子と炭素化合物は、微細組織として前述のような存在形態をとることが必要である。
【0028】
上記のようなセラミックスを作製するには、まず例えば酸化リチウム、酸化アルミニウムと酸化珪素をユークリプタイト組成となるように秤量し、さらにTiN粉末及び炭素化合物を所定量秤量し、ボールミルなどで混合して混合粉を得る。ここでリチウム、アルミニウム、あるいは珪素の由来については特に限定されず、スポジューメン、ペタライト、炭酸リチウムなどを組み合わせて利用することもでき、リチウム、アルミニウム、珪素を含む公知の原料を適宜選定することができる。また、ここでの炭素化合物は特にその形態由来を問わず、カーボンブラックやグラファイトの添加、さらには原料粉体中のバインダーの残炭、その他プロセス中で加えることのできるカーボンまたはカーボンを含む化合物を利用することができるが、このなかでもカーボンブラックが安価で最適な原料として選ぶことができる。
【0029】
原料とするTiN粉末は、粒径0.5から3μmの平均粒径であることが好ましく、この範囲を外れると低熱膨張特性と十分な導電性を同時に実現することが困難となる。また、炭素化合物のカーボン源を添加物により確保する場合には、その原料粒子径が重要となる。その粒子径はできる限り細かいことが必要であり、特にその一次粒子径が50nm以下、特に20nm以下である場合に本発明で目的とする焼結体の材料組織が実現される。一方、炭素化合物原料の一次粒子径が0.5μm以上になると十分な導電性を安定して得ることが困難となる。原料粒子径の測定方法としては、レーザー散乱により求める方法、比表面積から求める方法など、公知一般の手法が利用できる。
【0030】
上記のようにして得られた混合粉を、一軸成形プレス、静水圧プレスなど所望の手段で成形体とした後に焼成する。あるいは、ホットプレスのように、型に粉末を充填加圧して焼成を行うこともできるが、その他公知慣用の方法も可能であり、これらに限定されるものではない。
【0031】
焼成の条件は、1000℃以上1420℃以下、好ましくは1250℃以上1400℃以下の温度とし、雰囲気は、酸素濃度1000ppm以下、より望ましくは100ppm以下の窒素雰囲気もしくはアルゴン雰囲気などの不活性雰囲気である。この温度範囲を外れると、βユークリプタイト相が安定して生成されず、また導電性と低熱膨張特性を同時に得ることができなくなる。緻密化をより効果的に行うためにホットプレスや熱間静水圧プレスによる焼結も有効であり、その際の圧力は10MPa以上であると効果的で、その際の焼成温度、焼成雰囲気は前述の通りである。
【0032】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例示により限定されるものではない。
【0033】
(実施例1〜5、比較例1〜6)
炭酸リチウム24.3質量部(平均粒子径2.2μm)、酸化アルミニウム34.2質量部(平均粒子径0.6μm)、酸化珪素41.5質量部(平均粒子径0.8μm)をボールミルで混合し、粉体を回収した後1300℃で大気中にて仮焼した。これに平均一次粒子径が3μmのTiN粒子と20nmのカーボンブラックを添加し、再びボールミルにて粉砕、混合した。このようにして得られた混合粉を窒素雰囲気中のホットプレスにて1320〜1370℃、20MPaの条件で焼成した。カーボンブラックとTiN粒子の添加量は、焼成後に表1の組成となるように調整した。表1にある体積比率は、透過型電子顕微鏡での像観察及び、EDX分析から求めた。なお比較例6については、カーボンブラックを平均粒子径が2.1μmのグラファイトに置き換えたこと以外は、上記の製造方法と同じ手法を用いた。
【0034】
以上のようにして得られた焼結体の組織は、平均結晶粒径が0.5〜5μmのβユークリプタイト相および平均粒径が1〜3μmのTiN粒子から構成されていた。また、透過型電子顕微鏡によるEDX分析によれば、比較例4および6を除いて、カーボンがこれら粒子の少なくとも一部の粒界に粒界相としてβユークリプタイト相の平均結晶粒径の10%以下の領域で濃化していることが検出された。但し、比較例6については焼結体中に粒径1μm以上のカーボン粒子が多数存在していた。得られた焼結体の特性を表1に示す。表1の実施例から明らかなように、焼結体の組成を本発明の範囲とすると、熱膨張係数、比抵抗および比剛性を満足することができる。一方、比較例1ではTiN量が多いために所望の熱膨張係数が得られない。比較例2ではTiNが添加されておらず、また炭素化合物量が過剰なので所望の特性が全く得られていない。比較例3ではTiN量が十分ではなく、また炭素化合物が多すぎるために熱膨張係数の絶対値が大きく、比剛性が低い。比較例4ではTiN量が多すぎるとともに、炭素化合物が含まれないため、比剛性以外は特性を満足しない。比較例5では炭素化合物の量が多すぎるために比剛性が著しく低く、また熱膨張係数の絶対値も目標値を満足しない。比較例6では本発明で規定する焼結体の微細組織が実現されていないため、熱膨張係数の絶対値以外は特性を満足していない。
【0035】
【表1】
Figure 0003665537
【0036】
(実施例6〜9、比較例7〜10)
酸化リチウム11.5質量部(平均粒子径2μm)、酸化アルミニウム40.0質量部(平均粒子径0.6μm)、酸化珪素48.5質量部(平均粒子径0.8μm)にTiN(平均一次粒子径1.5μm)とカーボンブラック(平均一次粒子径43nm)を添加し、ボールミルにて粉砕、混合した。得られた混合粉を窒素雰囲気中にて1350〜1400℃で焼成した。カーボンブラックとTiN粒子の添加量は焼成後に表2の組成となるように調整した。表2にある体積比率は表1と同様、透過型電子顕微鏡での像観察及び、EDX分析から求めた。以上のようにして得られた焼結体の組織は、平均結晶粒径が0.5〜5μmのβユークリプタイト相および平均粒径が0.5〜3μmのTiN粒子から構成されていた。また、透過型電子顕微鏡によるEDX分析によれば、比較例10を除いて、カーボンがこれら粒子の少なくとも一部の粒界にβユークリプタイト相の平均結晶粒径の10%以下の領域で濃化していることが検出された。得られた焼結体の特性を表2に示す。表2の実施例から明らかなように、焼結体の組成を本発明の範囲とすると、熱膨張係数、比抵抗および比剛性を満足することができる。一方、比較例7ではTiN量が多いために所望の熱膨張係数が得られない。比較例8ではTiNが添加されておらず、また炭素化合物量が過剰なので所望の特性が全く得られていない。比較例9ではTiN量が十分ではなく、また炭素化合物が多すぎるために熱膨張係数の絶対値が大きく、比剛性が低い。比較例10ではTiN量が多すぎるとともに、炭素化合物が含まれないため、比剛性以外は特性を満足しない。なお、すべての実施例、比較例ともβユークリプタイト粒子とTiN粒子の同定は電子線回折で行った。
【0037】
【表2】
Figure 0003665537
【0038】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明による導電性低熱膨張セラミックスにより、高い清浄度を求められる環境で用いられる軽量かつ高い寸法安定性を有する精密機械部品用の材料を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る導電性低熱膨張セラミックスの代表的な微細構造である。
【符号の説明】
1 … βユークリプタイト相
2 … カーボンあるいはカーボンを含む化合物
3 … TiN粒子

Claims (1)

  1. βユークリプタイト相を84体積%以上99体積%以下含有し、該βユークリプタイト相以外の残部が 0.5 4 体積 % のカーボンあるいはカーボンを含む化合物と 0.5 12 体積 % TiN 粒子からなり、前記βユークリプタイト相の平均粒径が 0.5 5 μ m 、前記 TiN 粒子の平均粒径が 0.5 3 μ m である焼結体であって、該焼結体の組織構造が、その組織中に TiN 粒子を部分的にも連続することなく分散し、さらに、βユークリプタイト相及び / 又は TiN 粒子の粒界の少なくとも一部に、カーボン又はカーボンを含む化合物を粒界相としてなり、粒界と垂直方向の前記粒界相の平均厚さが、前記βユークリプタイトの平均結晶粒径の 10% 以下であり、前記焼結体の0〜50℃での熱膨張係数の絶対値が1.0×10-7/K以下であり、体積比抵抗が1.0×107Ω・cm以下、かつ比剛性が40 GPa/g/cm3以上であることを特徴とする導電性低熱膨張セラミックス焼結体。
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