JP3845701B2 - 長繊維強化ネット - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、長期間寸法変化が少なく、耐食性、復元性、折り曲げ耐力およびクリープ特性が優れた軽量高強度なネットに関する。
産業上の利用分野の例として、海水取り入れ口のフィルターおよび化学工場の排水処理場のフィルター等耐食性が要求されるネット、非電導体であることから電波障害ネット、電気絶縁性を利用した電気設備の安全柵、耐海水腐食性を利用し養殖生け簀ネット等に有用であり、特に地盤補強材として好適なものである。
背景技術
従来公用の産業用ネットとしては、ステンレススチールの線材で織られたネットが多く使われているが、重量が重いため運搬作業や取付作業が大変であるという欠点を有している。近年、作業者の老齢化と共に、この欠点はより深刻になってきている。そこで、軽量化の目的で開発されたのがポリエチレンテレフタレート樹脂モノフィラメントのネットである。このネットは、軽く耐食性の優れた熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート樹脂を押出機によって押し出したモノフィラメントもしくはポリエチレンテレフタレート樹脂を延伸したモノフィラメントを用いてネットにしたものである。
中でも、延伸されたモノフィラメントを用いたネットは、強度が高という利点を有しているが、連続的荷重付加に対してはクリープ現象が生じてネットが変形してしまうという欠点を有している。さらに、延伸物であるために、高温下や長期間の使用で寸法が縮み、ネットを取り付けた枠からネットが外れるという現象が起こる。この様な現象が海水取り入れ口のフィルターなどで起こると、ネットで堰き止められるはずの異物が通り抜けてしまい、本来の目的であるフィルターの役目を果さなくなる。
また、地盤補強材用ネットとして、網状の高分子材料であるジオテキスタイルがある。このネットは、土地造成、道路、鉄道などの土工事分野において、軟弱地盤の安定化処理、盛土の安定化および円弧滑りの防止等に用いられる。
網の目の形状を有するジオテキスタイルは、地盤の滑り破壊防止を目的とした地盤同士の噛み合わせや、土中に浸透した水などの速やかな排除などに有用であり、ジオテキスタイルの特性である引張り抵抗や土との摩擦抵抗等の高さを生かして、土塊全体の強化を図ることができる。この様なジオテキスタイルを用いる補強土工法は、施工が比較的容易で、工期の短縮や土構造物の重量低減が可能とされる特徴を有している。
ジオテキスタイルの中でも高い強度を有するジオグリッドは、主に高密度ポリエチレン(HDPE)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料から得られ、ポリマーグリッドとも呼ばれている。しかし、この様なポリマーグリッドであっても、高分子材料の致命的欠点である伸び変形し易いという特性を有しており、15〜20%程度に引き延ばされた時点での引張強度が最も強力に作用するのに対し、土は2〜5%に引き延ばされ歪んだときに崩壊を始めるという特性を有していることから、ジオグリッドでは、土が崩壊を始める初期段階において地盤の滑り破壊を充分に防止できないという欠点を有している。
この様な問題を解決し、高強度、高弾性率および高いクリープ特性を持たせるため、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を連続繊維で強化してグリッド状に一体成形したファイバーグリッドが開発されている。この内容は、特開平7−173824号公報等に開示されている。
しかし、ファイバーグリッドは、柔軟性と耐衝撃性に乏しいため、凹凸の激しい場所や岩石等の多い場所で施工すると曲げ応力に耐え切れなかったり、岩石等の落下による衝撃荷重に耐え切れず連続繊維が損傷してしまうという欠点を有している。これに対し、特開平5−239822号公報に、特定量の連続繊維を熱可塑性樹脂で含浸させた特定厚みからなるリブをネット状にした地盤補強材が開示されている。この方法により、補強材に柔軟性を持たせることができたが、厚みの不足から耐衝撃性に関しては何ら改善させることはできなかった。
また、我が国では、土地の確保が困難になってきているため、急勾配盛土や擁壁盛土などの法面勾配の急な盛土が多くなってきており、盛土底面積、すなわちポリマーグリッド等の補強材が充分な効果を有する程の大きさを取れなくなってきている。また、敷設面積が充分に取れない軟弱地盤地帯での補強工事では、従来のコンクリート擁壁や石積み等の方法に頼らざるを得ないのが現状であった。
発明の開示
本発明の目的は、長期間寸法変化が少なく、耐食性、復元性、折り曲げ耐力およびクリープ特性が優れた軽量高強度なネットを提供することである。
本発明の1つである長繊維強化ネットは、長手方向に引き揃えられた無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸した線状物の表面に熱可塑性樹脂を被覆した被覆線状物の複数を、縦横に格子状に配列して形成してなるネットである。
本発明の1つである長繊維強化ネットは、長手方向に引き揃えられた無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸した線状物の表面に熱可塑性樹脂を被覆した被覆線状物の複数を、編織若しくは織成してなるネットである。
【図面の簡単な説明】
図1は、織成して得た長繊維強化ネットの立面図である。
図2は、織成して得た長繊維強化ネットの平面図である。
図3は、無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸させた線状物の横断面図である。
図4は、図3の線状物の表面に熱可塑性樹脂を被覆した被覆線状物の横断面図である。
図5は、格子状に配列し成形して得た長繊維強化ネットの立面図である。
図6は、図5を構成している1本の被覆線状物(ネット単糸)の断面斜視図である。
図7は、被覆線状物の製造装置の一例を示す概略構成図である。
図8は、実施例4と比較例5とのネット単糸の引張りクリープ特性の相違を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
本発明のネットに用いる線状物、被覆線状物およびそれらの製造方法を具体的に説明する。
まず、本発明の長繊維強化ネットを図1に沿って説明する。
図1は、長手方向に引き揃えられた無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸した線状物を織成して得た長繊維強化ネットの一例を示すものである。
図1において、本発明の長繊維強化ネットは、曲折自在の線状物からなるネット単糸をクリンプ織機で織り込んで網状物にしたものである。また、図2は、図1の長繊維強化ネットを鉛直方向に切断した時の平面図である。
この様な長繊維強化ネットを構成する線状物は、無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸した線状物であるため優れた復元力を有し、大きな荷重が掛かり過ぎるとネットの形状は変形するが、荷重が減少すると元の形状に復元する。また、長手方向に引き揃えられた無機繊維により経時変化が非常に少なく、取り付けた枠からネットが外れるようなことはない。
図3は、線状物を長手方向に対して垂直に切断した時の断面図である。ここでは、一例として真円状の断面図を示したが、断面形状に制限はなく、楕円であっても、長方形であっても時には多角形であっても何ら差し支えないが、編織、織成および格子状に配列しやすい形状、例えば円形や横に長い長方形が好ましい。
線状物の直径や厚みが1mm以下の場合、細すぎてネットの持つ剛性が小さくなり過ぎたり、衝撃によって縦割け現象が発生し易くなり、ネットの強度を極端に低下させてしまう。他方、10mmを越えるとネットに加工することが難しくなる。
図4は、図3の線状物の表面に熱可塑性樹脂を被覆した被覆線状物の横断面図であり、被覆層1と線状物2で構成されている。
被覆層1は、線状物2の外周全面に形成される。被覆層1の平均厚さは、0.2〜1.0mm、好ましくは0.3〜0.8mmの範囲内に設定される。被覆層1の厚さが0.1mmより薄い場合は、折り曲げ耐力が極端に低下し、他方、1.2mmより厚い場合には、折り曲げ耐力が、材料の使用量に対応して向上しなくなると共に、被覆層1が厚くなりすぎて取り扱いが不便になる。
図5は、被覆線状物を用いた長繊維強化ネットの一例を示すものである。図5において、本発明の長繊維強化ネット50は、曲折自在の被覆線状物からなるネット単糸20を、複数縦横格子状に配列し、縦横のネット単糸20の各交点22を固着することにより多数の網目24を形成した網状物である。
図6は、前記被覆線状物の一例を示す斜視図である。図6中、3は長手方向に引き揃えられた多数の無機繊維で、連続した長さを有するものである。図6においては、矢印X方向に引き揃えられている。
前記無機繊維3には、この連続無機繊維3を相互に接着させる熱可塑性樹脂4が含浸されており、これら無機繊維3と、熱可塑性樹脂4とからテープ状、線状等の各種の形状の線状物2が形成される。
前記線状物2の外周面5には、被覆層1が被覆されており、全体として一方向に(本図において矢印X方向)長いテープ状又は糸状等の被覆線状物100を形作っている。
〔熱可塑性樹脂〕
前記線状物2の構成成分である熱可塑性樹脂4は、無機繊維3に含浸されうる熱可塑性樹脂であれば如何なる種類のものでも使用できる。
上記の熱可塑性樹脂4としては、下記のものが例示できる。
・ポリ−α−オレフィン樹脂:ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ−1−ブテン樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂、プロピレン−エチレン共重合体樹脂、及びプロピレン−1−ブテン共重合体樹脂
・ポリエステル樹脂:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンテレフタレートイソフタレート
・ポリアミド樹脂(ナイロン):ポリアミド−6、ポリアミド−7、ポリアミド−66、ポリアミド−610、ポリアミド−11及びポリアミド−12;
・ポリアセタール
・ポリウレタン
・上記樹脂の2種以上からなる組成物、及び2種以上からなるポリマーアロイ。
これらの熱可塑性樹脂のうち、汎用性及び機械的強度等の観点から、結晶性ポリオレフィン、特に結晶性ポリプロピレンが好ましい。
樹脂が、ポリオレフィン(ポリ−α−オレフィン)の様に分子末端基に無機繊維、特にガラス繊維に対する界面接着性を付与するための反応性官能基又は極性官能基を有しない場合は、樹脂を不飽和酸又はその酸無水物等の誘導体もしくはシラン系カップリング剤等で改質する方策及び/又は不飽和酸で改質された重合体を非改質樹脂に必要量配合する方策等を施すことが、界面接着性改善に有効である。
上記の改質剤として用い得る不飽和酸は、通常は脂肪族不飽和酸が好ましく、このような不飽和酸としてアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸及びメサコン酸から選ばれる1種以上が例示できる。特に好ましくはマレイン酸である。
改質剤として用い得る不飽和酸無水物等の誘導体は、通常は脂肪族不飽和酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸から選ばれる1種以上が例示できる。特に好ましくは無水マレイン酸(マレイン酸無水物)である。
また、改質剤として用い得るシラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ系シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランから選ばれる1種以上が例示できる。
本発明においては、このような改質剤を用て上記熱可塑性樹脂を改質する際、必要に応じて有機過酸化物を用いてもよい。有機過酸化物としては、2,5-ジメチル(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチル-オキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等を例示することができる。
線状物2の構成成分の上記熱可塑性樹脂4としては、上記のように非改質樹脂及び改質樹脂を単独で用いてもよいし、これらのうち少なくとも2種を組み合わせて樹脂組成物として用いてもよい。熱可塑性樹脂組成物中の改質樹脂の配合量は、無機繊維3と熱可塑性樹脂4とを強固に結合させるために十分な量とすることが好ましい。
上記改質樹脂、改質樹脂組成物は、例えば、熱可塑性樹脂と、改質剤と、有機過酸化物とを、ヘンシェルミキサー(商品名)等の混合手段で混合した後、押出機に供給して溶融混練し、次にこの溶融混練物を押し出し成形することにより製造することができる。
また、線状物2を構成する熱可塑性樹脂4は、必要に応じて各種の下記添加剤を1種以上配合することができる。
・酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、樹脂状破壊防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、可塑剤、離型剤、難燃剤(耐炎剤)、難燃助剤及び結晶化促進剤(造核剤;結晶化剤)並びに染料及び顔料等。
これらの添加剤はマトリックスとなる上記の熱可塑性樹脂に予め配合された状態で用いてもよく、マスターバッチの状態で用いてもよい。
〔無機繊維〕
本発明において、線状物2の構成成分である無機繊維3は、各種の無機繊維から製造されたものを用いることができる。無機繊維は例えば、ガラス繊維、岩綿(ロックウール)、石綿、石英繊維、金属繊維、ウィスカー(ホイスカー)及び炭素繊維等が好ましい。
これらの繊維の中で、その性状及び入手容易性等の点で通常的にはガラス繊維が好ましい。ガラス繊維としては、硬質ガラス繊維が好ましく、特に、無アルカリガラスであるEガラス繊維が好ましい。このガラス繊維としては、樹脂強化用として通常的に製造されて市販されているガラスロービングを用いることができる。このガラスロービングは、一般にはその平均繊維径4〜30μm、フィラメント集束本数400〜10000本、Tex番手300〜20000のものであるが、本発明において用いる場合には平均繊維径9〜23μmのものが好ましい。必要に応じて、これらのガラスロービングを合糸して用いることもできる。
上記無機繊維3は、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ボロン系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等の表面処理剤で表面処理することが好ましい。無機繊維3に表面処理が施されると、ポリプロピレン等の疎水性樹脂に対する親和性が高められ、無機繊維3、特にその開繊物の間にポリプロピレン等の樹脂が含浸されやすくなり、引張強度の向上が著しいものである。
上記の無機繊維3は、単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
〔線状物〕
上記熱可塑性樹脂4と無機繊維3とを用いて線状物2を製造する方法としては、略平行に配列された無機繊維3の内部に溶融状態の上記熱可塑性樹脂4を含浸させる方法を挙げることができる。無機繊維3に樹脂を含浸させる際には、無機繊維3を平面上に可能な限り均一に開繊し、その開繊物に樹脂を均一に含浸させることにより、得られる繊状物2の機械的強度を向上させることができる。
無機繊維3に熱可塑性樹脂4を含浸させる方法は、無機繊維に熱可塑性樹脂を含浸させ得る方法であれば如何なる方法であってもよい。例えば、この含浸方法として特公昭63−37694号公報、特公平4−41886号公報及び特開昭61−229534号公報等に開示されている方法を挙げることができる。
この種の線状物は、例えば、ロービング等の無機繊維を平面上に均一に開繊した後に、押出機内で溶融混練されている熱可塑性樹脂をこの無機繊維に均一に含浸させて形成させることができる。
線状物2中の無機繊維3の含有量は、10〜80重量%が好ましく、特に30〜70重量%が望ましい。上記含有量の範囲内にすることにより、無機繊維と熱可塑性樹脂とが充分接触し、無機繊維同士が熱可塑性樹脂によって相互に一体的に結合される。
無機繊維の含有量が5重量%以下の場合は、引張強度等の補強効果が充分には発現しない場合がある。一方、無機繊維の含有量が90重量%以上の場合は、却って充分な補強効果が発現されない場合がある。その原因は、熱可塑性樹脂が無機繊維に充分に含浸されないことにあると解される。
〔被覆層〕
被覆層1は、上記の線状物2の外周面に所定性状の熱可塑性樹脂で形成された層である。被覆層1を構成する熱可塑性樹脂は、上記の線状物2を構成する熱可塑性樹脂と別異種のものでもよいが、線状物2を構成する熱可塑性樹脂と同種の樹脂が好ましい。若しくは、線状物2を構成する熱可塑性樹脂に対して相溶性を有するもの好ましい。これらの熱可塑性樹脂が相互に同種類の樹脂であるか、又は相溶性を有する場合は、被覆層1と線状物2との界面において高い結合力が形成される点で好ましいものである。
被覆層1を構成する熱可塑性樹脂としては、下記のものを例示できる。
・ポリ−α−オレフィン樹脂:ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ−1−ブテン樹脂、ポリ−4−メチル−1−ペンテン樹脂、プロピレン−エチレン共重合体樹脂及びプロピレン−1−ブテン共重合体樹脂
・ポリエステル樹脂:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレートイソフタレート
・ポリアミド樹脂(ナイロン):ポリアミド−6、ポリアミド−7、ポリアミド−66、ポリアミド−610、ポリアミド−11及びポリアミド−12;
・ポリアセタール
・ポリウレタン
・上記の2種以上からなる組成物、及び2種以上からなるポリマーアロイ。
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン(ポリ−α−オレフィン)の様に分子末端基に無機繊維、特にガラス繊維に対する界面接着性を付与するための反応性官能基又は極性官能基を有しない場合には、熱可塑性樹脂を不飽和酸又はその酸無水物等の誘導体もしくはシラン系カップリング剤等で改質する方策、及び/又は不飽和酸で改質された重合体を非改質樹脂に必要量配合する方策等を施すことが有用である。
これらの中では、汎用性及び機械的強度等の観点から、結晶性ポリオレフィン、特に結晶性ポリプロピレンが好ましい。
上記の改質剤として用い得る不飽和酸は通常は脂肪族不飽和酸であって、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸から選ばれる1種以上であって、好ましくはマレイン酸である。
改質剤として用い得る不飽和酸無水物等の誘導体は通常は脂肪族不飽和酸無水物であって、例えば無水マレイン酸、及び無水イタコン酸から選ばれる1種以上であって、好ましくは無水マレイン酸(マレイン酸無水物)である。
また、改質剤として用い得るシラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系シラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ系シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のメタクリロキシ系シランから選ばれる1種以上が例示できる。
本発明においては、上記改質剤を用いる際に、必要に応じて有機過酸化物を組み合わせて用いてもよい。有機過酸化物の例としては、例えば、2,5-ジメチル(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチル-オキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。
被覆層1を形成する熱可塑性樹脂としては、上記のような非改質樹脂及び改質樹脂を単独で用いてもよいし、これらのうち少なくとも2種を組み合わせて樹脂組成物として用いてもよい。
また、被覆層1を形成する熱可塑性樹脂は、必要に応じて各種の下記添加剤を1種以上配合することができる:
・酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、樹脂状破壊防止剤、帯電防止剤、潤滑剤、可塑剤、離型剤、難燃剤(耐炎剤)、難燃助剤及び結晶化促進剤(造核剤、結晶化剤)、染料、及び顔料等。
これらの添加剤は、マトリックスとなる上記の結晶性熱可塑性樹脂に予め配合された形で用いてもよく、マスターバッチの形で用いてもよい。
被覆層1を作製するには、例えば上記樹脂を予めフィルム状に成形した後、このフィルムを線状物2の表面にラミネートする方法、溶融状態の熱可塑性樹脂を線状物2の表面にコーティングする方法等によって作製することができる。
被覆層1をラミネートして形成する場合には、例えば、まず必要に応じて改質剤等を混合した熱可塑性樹脂を押出機に供給して溶融混練し、これを成膜してフィルムを形成する。これとは別に、例えば、無機繊維3中に、溶融した熱可塑性樹脂を含浸させて線状物2を形成する。そして、この線状物2を半溶融状態で、予め巻き取っていたフィルムと貼り合わせてラミネートするものである。
なお、線状物2とフィルムを貼り合わす際に線状物2は必ずしも半溶融状態である必要はなく、線状物2を冷却固化させた後、接着剤を用いてフィルムと貼り合わせてもよい。
また、被覆層1をコーティングして形成する場合には、上記線状物2を半溶融状態にしたままで、この線状物2の表面に熱可塑性樹脂を押し出してコーティングしてもよいし、線状物2を冷却固化させた後に、この線状物2の表面にコーティングしてもよい。
以下、上記のようにして製造した被覆線状物100を用いて本発明の長繊維強化ネットを製造する方法につき、図5を参照して説明する。
まず、テープ状または線状等の形状の被覆線状物からなるネット単糸20を格子状に配列し、次いで熱プレスすることにより交点22を溶融結合させる。
以上のようにして、本発明の長繊維強化ネットを製造することができる。このものはファイバーグリッド等の地盤補強用に好適なものである。
なお、本発明の長繊維強化ネットの製造方法としては、上記方法に限定されず、例えばネット単糸20を、既製の織機や編機にかけて所望のネットに織成し、その後熱プレス成形する等、任意の方法が採用できる。
発明の効果
本発明の長繊維強化ネットは、軽量で、長期間の使用において寸法が縮むことによりネットを取り付けた枠からネットが外れることがない。
本発明の長繊維強化ネットに用いられる被覆線状物は、折り曲げ耐力が著しく高いものである。そして、この被覆線状物を用いて製造した本発明の長繊維強化ネットは、盛土工法において引張強度、剛性、クリープ特性及び折り曲げ耐力に優れ、従来の盛土工法において、より高い盛土やより急勾配の盛土が可能となる等の特徴を有する。
実施例
以下、本発明の長繊維強化ネットを実施例に基づいて、場合によっては有用な比較例を参照しながら本発明の長繊維強化ネットを具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって何らの制約を受けない。
また、実施例および比較例において用いている用語の定義および測定方法は以下に記載する通りである。
<評価方法>
経日変化(寸法)
実施例1〜実施例3および比較例1〜3で得られた各ネットの縦横5本づつのネット単糸に10cmのマークを付けた後、80℃に設定された恒温槽に7日間入れ、それぞれのネットの寸法変化率を下記式に基づいて測定した。
寸法変化率(%)=(元長さ−試験後長さ)/元長さ×100
数値の小さい方が、寸法変化(収縮率)が少ないことを示す。
また、110℃に設定した恒温槽に0.5日間入れた時の寸法変化率も同様の方法で測定した。
復元性
実施例1で得られる線状物、実施例2および実施例3で得られる被覆線状物ならびに比較例1〜比較例3を構成する線材を、それぞれ200mmの長さに切断し、2つ折りして完全に折り畳んだ後、折り曲げる力を解放し、元の状態に復元するかを下記の評価基準に基づいて測定した。
Figure 0003845701
引張強度
実施例4〜7および比較例4〜6で得られた各ネットの縦方向と横方向に対して、20cm幅のサンプルを作成し、これを用いて引張試験を行った。得られた破断荷重を1m換算し、ネットの縦方向*横方向の引張強度とした。
折り曲げ耐力
実施例4〜7および比較例4〜6で得られる各ネット単糸を、2つ折りして1箇所を完全に折り畳んだ後、元に戻し、JIS Z1527-1976に準じて引張試験を行って破断強度を測定する。次に、得られた破断強度を基に、折り畳む前の破断強度に対する折り畳んだ後の破断強度の百分率を計算し、この値を折り曲げ耐力とした。
反り変形性
実施例4〜9および比較例4で得られた各ネットを平面に静置し、ネット端部が平面上から浮き上がっている長さを測定する。この数値が小さい程、形状精度の高いネットが得られることを表す。
クリープ特性
実施例4で得られるネットおよび比較例5のジオグリッド材を構成するネット単糸に、各ネット単糸の破断強度の1/2に相当する荷重をかけ(実施例4は833N、比較例5は490N)、そのとき各ネット単糸に生じる歪みをクリープ特性とした。クリープ特性は、測定機器として東洋精機製オートグラフを用い、チャック間距離70mmで測定した。
[実施例1]
図7に示す装置を用いてネット単糸となる線状物を製造した。即ち、押出機32を用いて、無水マレイン酸改質ポリプロピレン[MFR(230℃:21.18N)100g/10min]を溶融した270℃の温度の浴34中に4000本の個々のフィラメントを集束したガラスロービング36を2本通し、浴槽の出口に設けた内径2.5mmφのノズル(不図示)を通過させたのち、溶融樹脂が含浸したガラスロービングを引き出した。
冷却ロール(ニップロール)37を通して溶融樹脂を冷却固化させ、ガラス繊維含有率60重量%の線状物38を得た。
得られた線状物をネット単糸とし、該単糸をクリンプ織機に掛け網目17mm目のネットにした。得られたネットおよび線状物の特性を前記評価方法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1で得られた2.5mmφの線状物38を押出機40の被覆用ダイス42に導き、被覆厚さが0.5mmとなるように低密度ポリエチレン樹脂(ペトロセン349M.I=13)を線状物全面に均一に被覆した後、冷却槽44を通して冷却固化して3.5mmφの被覆線状物46を得た。
得られた被覆線状物をネット単糸とし、該単糸をクリンプ織機に掛け網目17mm目のネットにした。得られたネットおよび被覆線状物の特性を前記評価方法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
[実施例3]
実施例1で得られた2.5mmφの線状物38を押出機40の被覆用ダイス42に導き、被覆厚さが0.5mmとなるように低密度ポリエチレン樹脂(チッソポリエチレンM850 M.I=5)を線状物全面に均一に被覆した後、冷却槽44を通して冷却固化して3.5mmφの被覆線状物46を得た。
得られた被覆線状物をネット単糸とし、該単糸をクリンプ織機に掛け網目17mm目のネットにした。得られたネットおよび被覆線状物の特性を前記評価方法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
[比較例1]
1.0mmφのステンレススチール線材を用いてネットおよびそれを構成する線材(ネット単糸)の特性を前記評価方法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
[比較例2]
4.0mmφのポリエチレンテレフタレート(PET)線材を用いたネット(アイワ化成社製商品”プラスチール”)およびそれを構成する線材(ネット単糸)の特性を前記評価方法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
[比較例3]
二軸延伸ポリプロピレンネット(三菱油化社製商品”テンサーSS1”)およびそれを構成する線材(ネット単糸)の特性を前記評価方法に準じて測定した。その結果を表1に示す。
Figure 0003845701
[実施例4]
図7に示す装置を用いてネット単糸となる被覆線状物を製造した。即ち、押出機32を用いて、無水マレイン酸改質ポリプロピレン[結晶融点(Tm:DSC測定)160℃、MFR(21.18N:230℃)130g/10min]を溶融した270℃の温度の浴34中に4000本の個々のフィラメントを集束したガラスロービング36を6本を通し、浴槽の出口に設けた30mm×0.5mmのダイス(不図示)から溶融樹脂が含浸したガラスロービングを引き出した。
冷却ロール(ニップロール)37を通して溶融樹脂を冷却固化させ、線状物38を得た。続いて、得られた線状物38を押出機40の被覆用ダイス42に導き、被覆厚さが0.5mmとなるように結晶性ポリプロピレン[結晶融点(Tm:DSC測定)160℃、MFR(21.18N:230℃)2.0g/10min]で線状物全面に均一に被覆した後、冷却槽44を通して冷却固化して被覆層を形成した。得られた、被覆線状物46は幅33mm、厚さ1.44mmの大きさのものであった。
得られた被覆線状物46の特性を、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
得られた被覆線状物は何れも引張強度,折り曲げ耐力,引張クリープ特性に優れたものであった。
上記被覆線状物を用いて本発明の長繊維強化ネットを製造した。即ち、被覆線状物をネット単糸として用い、図5に示すように縦200mm間隔で、また横200mm間隔で積層し、180℃の熱プレスで溶融接着した。得られたネットを、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例4の被覆厚さを0.35mmとなるように被覆層の厚みを変えた以外は実施例4と同様の方法で幅が32.7mm、厚さ1.14mmの大きさの被覆線状物46を得た。
得られた被覆線状物46の特性を、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
得られた被覆線状物は何れも引張強度,折り曲げ耐力,引張クリープ特性に優れたものであった。
上記被覆線状物を用いて本発明の長繊維強化ネットを製造した。即ち、被覆線状物をネット単糸として用い、図5に示すように縦200mm間隔で、また横200mm間隔で積層し、180℃の熱プレスで溶融接着した。得られたネットを、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
[比較例4]
実施例4の溶融樹脂が含浸した線状物38を被覆用のダイス42を通さずに冷却ロール36を通して冷却し、幅32mm、厚さ0.44mmの大きさの線状物38を得た(なおこの線状物38のガラス繊維含有率は62重量%であった。)。
得られた線状物38の特性を、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
得られた線状物は、引張強度および引張クリープ特性には優れるものの、折り曲げ耐力は劣ったものであった。
上記線状物を用いて本発明の長繊維強化ネットを製造した。即ち、線状物をネット単糸として用い、図5に示すように縦200mm間隔で、また横200mm間隔で積層し、180℃の熱プレスで溶融接着した。得られたネットを、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
[実施例6]
図7に示す装置を用いてネット単糸となる被覆線状物を製造した。即ち、押出機32を用いて、無水マレイン酸改質ポリプロピレン[結晶融点(Tm:DSC測定)160℃、MFR(21.18N:230℃)130g/10min]を溶融した270℃の温度の浴34中に4000本の個々のフィラメントを集束したガラスロービング36を3本通し、浴槽の出口に設けた30mm×0.5mmのダイス(不図示)から溶融樹脂が含浸したガラスロービングを引き出した。
冷却ロール(ニップロール)37を通して溶融樹脂を冷却固化させ、線状物38を得た(なおこの線状物のガラス繊維含有率は30重量%であった)。続いて、得られた線状物38を押出機40の被覆用ダイス42に導き、被覆厚さが0.5mmとなるように結晶性ポリプロピレン[結晶融点(Tm:DSC測定)160℃、MFR(21.18N:230℃)2.0g/10min]で線状物全面に均一に被覆した後、冷却槽44を通して冷却固化して被覆層を形成した。得られた、被覆線状物46は幅33mm、厚さ1.44mmの大きさのものであった。
得られた被覆線状物46の特性を、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
得られた被覆線状物は、引張強度、折り曲げ耐力および引張クリープ特性に優れたものであった。
上記被覆線状物を用いて本発明の長繊維強化ネットを製造した。即ち、被覆線状物をネット単糸として用い、図5に示すように縦100mm間隔で、また横100mm間隔で積層し、180℃の熱プレスで溶融接着した。得られたネットを、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
[実施例7]
実施例5で得られた被覆線状物をネット単糸として用い、図1に示すように縦200mm間隔で、また横200mm間隔となる様に、織機に掛けてネット状にした後、180℃の熱プレスで溶融接着した。得られたネットを、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
[比較例6]
比較例4で得られた線状物をネット単糸として用い、図1に示すように縦200mm間隔で、また横200mm間隔となる様に、織機に掛けてネット状にした後、180℃の熱プレスで溶融接着した。得られたネットを、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
[比較例5]
FRPネット(ネステム協会製商品”ネステムGB5”)を、前記評価方法に準じて測定した。その結果を表2に示す。
また、図8に実施例4および比較例5のそれぞれのネット単糸の引張りクリープ特性を示した。
Figure 0003845701
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものでなく、上記の説明から当業者が容易に類推しうる全ての変更実施例を包含するものである。

Claims (4)

  1. 長手方向に引き揃えられた無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸した線状物の表面に熱可塑性樹脂を被覆した被覆線状物の複数を、縦横に格子状に配列して成形してなるネット。
  2. 長手方向に引き揃えられた無機繊維を熱可塑性樹脂で含浸した線状物の表面に熱可塑性樹脂を被覆した被覆線状物の複数を、編織若しくは織成してなるネット。
  3. 被覆の平均厚みが0.2〜1.0mmである請求項1または請求項2に記載のネット。
  4. 地盤補強材に用いる請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のネット。
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