JP4112236B2 - レクチンの分離精製方法並びに動物血漿固定化担体及びアフィニティーカラム - Google Patents

レクチンの分離精製方法並びに動物血漿固定化担体及びアフィニティーカラム Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,新規な分離精製法を採用して,レクチンタンパク質を効率的に単離する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
レクチンは,糖鎖を認識するタンパク質の総称であり,血球や細胞表面等にある特定構造を有する糖鎖と特異的に結合し,その血球や細胞を凝集させる活性を有している。レクチンは,動物,植物及び微生物等生物界に広く存在している。これらのレクチンの中には,他のレクチンにはほとんどない特有の活性を有するものがある。
【0003】
例えば,米ヌカ中に含まれる米ヌカレクチンは,細胞増殖を抑制する活性を有することが知られている。また,動物の生体中に広く存在するガレクチンは,リンパ球等のアポトーシスを誘導し,また,ガンの転移を抑制する効果を有することが知られている。このようなレクチンは,医学上非常に有用なものである。そのため,現在種々の個体から様々なレクチンが単離され,その機能が盛んに調べられている。
【0004】
例えば,特開平08−119994号公報には,キクイモ由来のマンノース/グルコース親和性レクチンをマルトースをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーによって分離精製する方法が開示されている。また,特表平10−504287号公報には,ヤドリギの抽出物をラクトシルセファロース上でクロマトグラフィーを行い,MLI型イソレクチンを単離する方法が開示されている。さらに,再表95/018149号公報には,キリンザイ属に属する海藻から新規レクチンを分離精製して,大量に取得する方法が開示されている。
【0005】
このように,レクチンを単離するための材料や方法には様々なものがある。これらレクチンは,その糖鎖結合特異性,血液型特異性,抗癌作用等を利用して,細胞分画試薬,臨床検査試薬,臨床治療薬等として利用することができる。
一方,生物界にはまだ明らかにされていない種々のレクチンが多数存在すると考えられている。他方,産業界では多様な目的に合う,新たな特徴をもつレクチンの開発が求められる。未開発のレクチンの特性をさらに明らかにし,産業的需要を開発していくためには,有用なレクチンを効率的で安価に分離精製する技術が必要である。
【0006】
【解決しようとする課題】
しかしながら,従来のレクチンの分離精製方法は,多くのステップを含み煩雑であり,多大な時間を要する。また,比較的ステップ数の少ないアフィニティークロマトグラフィーを用いる方法であっても,アフィニティーカラムを作製するために高価なタンパク質を担体に固定化する必要がある。また,この高価なタンパク質を用いてカラムを作製しても,所望のレクチンを得ることができるとは限らないため,対費用効果が低いという問題があった。
【0007】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,種々の生体材料からレクチンを簡単に短時間で分離精製することができるレクチンの分離精製方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題の解決手段】
第1の発明は,アフィニティークロマトグラフィーを応用したレクチンの分離精製方法であって,
生体材料を水性媒体により抽出して抽出画分を得る抽出工程と,
担体に動物血漿を固定化してなる動物血漿固定化担体を具備するアフィニティーカラムに上記抽出画分に含まれるレクチンを吸着させる吸着工程と,
ハプテン糖を用いて上記アフィニティーカラムからレクチンを溶出させる溶出工程とからなることを特徴とするレクチンの分離精製方法にある(請求項1)。
【0009】
本発明においては,上記抽出画分に含まれるレクチンを,担体に動物血漿を固定化した動物血漿固定化担体を具備するアフィニティーカラムに吸着させている(吸着工程)。
そのため,ブタ等の安い動物血漿を上記動物血漿固定化担体に固定化し,上記生体材料から安価にレクチンを分離精製することができる。ここで,上記動物血清は糖鎖を有するタンパク質,いわゆる糖タンパク質を多量に含有している。上記動物血漿固定化担体は,その表面に上記糖蛋白質を固定化している。そのため,上記抽出画分に含まれるレクチンは,動物血漿固定化担体の表面に固定化された糖タンパクの糖鎖と選択的に結合する。それ故,上記動物血漿固定化担体は,上記抽出画分に含まれるレクチンを選択的に吸着することができる。
【0010】
また,上記分離精製工程においては,ハプテン糖を用いて上記アフィニティーカラムからレクチンを溶出させる。ここで,上記ハプテン糖は,上記吸着工程において動物血漿固定化担体とレクチンとの結合を解離する。
そのため,上記ハプテン糖を用いて,上記アフィニティーカラムからレクチンを簡単に回収することができる。
【0011】
また,上記ハプテン糖は,その種類によって種々のレクチンを溶出させることができる。そのため,生体材料,動物血漿及びハプテン糖の種類を任意に決定することにより,様々なレクチンを得ることができる。即ち,本発明によれば,種々の生体材料から様々なレクチンを網羅的に取得することができる。
【0012】
また,本発明は,上記抽出工程,吸着工程及び分離精製工程の工程からなる。そのため,上記3つの少ないステップで,簡単に生体材料からレクチンを分離精製することができる。
【0013】
また,レクチンの分離精製に使用した上記動物血漿固定化担体は,4M尿素等のタンパク質変性剤を含む食塩溶液等で洗浄することによって,容易に再生することができる。これにより,10回以上繰り返し使用することができる。そのため,レクチンの分離精製コストを低下させることができる。
【0014】
このように,本発明によれば,種々の生体材料からレクチンを簡単に短時間で分離精製することができるレクチンの分離精製方法を提供することができる。
【0015】
次に,第2の発明は,アフィニティークロマトグラフィーに用いる動物血漿固定化担体であって,上記動物血漿固定化担体は,担体に動物血漿を固定化してなることを特徴とする動物血漿固定化担体にある(請求項9)。
【0016】
本発明において,上記動物血漿固定化担体は動物血漿を担体に固定化してなる。
そのため,上記動物血漿固定化担体は,その表面に,上記動物血漿に含まれる多様な構造の糖鎖を有する糖タンパクを結合している。それ故,糖鎖を認識し該糖鎖に結合するレクチンを選択的に結合することができる。したがって,上記動物血漿固定化担体は,例えば種々の物質を含有する生体材料等から糖鎖を認識するレクチンを選択的に単離するために用いることができる。なお,上記本発明は,上記第1の発明のレクチンの分離精製方法に用いる動物血漿固定化担体と同様のものである。
【0017】
次に,第3の発明は,アフィニティークロマトグラフィーに用いるアフィニティーカラムであって,上記アフィニティーカラムは担体に動物血漿を固定化してなる動物血漿固定化担体を具備することを特徴とするアフィニティーカラムにある(請求項11)。
【0018】
本発明において,上記アフィニティーカラムは,担体に動物血漿を固定化してなる動物血漿固定化担体を具備している。
そのため,上記アフィニティーカラムを用いてアフィニティークロマトグラフィーを行うと,生体材料等から糖鎖を認識するレクチンを選択的に単離することができる。なお,上記動物血漿固定化担体は,上記第2の発明(請求項9)と同じものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
上記第1の発明(請求項1)において,上記生体材料は,レクチンを含有する動物,植物及び微生物等の細胞,組織,器官等の生体材料を示す。このような生体材料の具体的な例としては,米ヌカ,タチナタマメ,小麦胚,エノキタケ,ヤドリギ,キクイモ,ダイズ,エンドウマメ,レンズマメ,リママメ,西洋キノコ,ピーナツ,ジャガイモ,インゲンマメ,トマト,ウナギ血清等がある。
【0020】
また,上記水性媒体としては,レクチンを溶解し,かつレクチンを変性,破壊させないものを用いることができる。このような水性媒体としては例えば,リン酸緩衝液,生理食塩水,トリス塩酸緩衝液等がある。
【0021】
また,上記抽出工程において上記抽出画分を得る方法としては,例えば上記生体材料を粉砕又はホモジェナイズし,これを水性媒体中に懸濁した後,遠心分離して上清を抽出画分として得る方法等がある。
【0022】
また,上記動物血漿としては,例えば,ブタ血漿,ウシ血漿,ヒト血漿,ウサギ血漿,ヤギ血漿,ヒツジ血漿,ウマ血漿,ラット血漿,マウス血漿等を用いることができる。
また,上記担体としては,例えばセファロース4B(登録商標)等の,粒子状に加工した多糖繊維からなるゲル状又はビーズ状の樹脂等を用いることができる。上記多糖繊維の成分としては,例えばアガロース,デキストラン,でんぷん,セルロース等がある。
【0023】
また,上記担体は,動物血漿を固定化させる前に,アルカリ条件下で臭化シアンと反応させて,活性化担体としておくことが好ましい。この場合には,上記活性化担体に動物血漿を容易に固定化することができる。
【0024】
また,上記動物血漿固定化担体は,モノエタノールアミンにより,ブロッキングしておくことが好ましい。
この場合には,上記担体と動物血漿との未反応部分にモノエタノールアミンが作用し,上記動物血漿固定化担体と生体材料との非特異的吸着を防止する,いわゆるブロッキングの効果を得ることができる。
【0025】
また,上記ハプテン糖としては,N−アセチルグルコサミン溶液,メチルα−マンノシド溶液,ラクトース溶液,しょ糖溶液,グルコース溶液,メチルα−グルコシド溶液,メチルβ−グルコシド溶液,N−アセチルガラクトサミン溶液等がある。
【0026】
また,本発明においては,上記溶出工程において得られるレクチン含有溶液を,上記吸着工程における抽出画分として再びアフィニティーカラムに吸着させ,続いて上記溶出工程と同様にレクチンを溶出させることができる。
この場合には,純度の高いレクチンを得ることができる。なお,上記のようにして,溶出工程において得られる溶出液をアフィニティカラムに吸着させ,溶出する操作を複数回繰り返して行うことによって,得られるレクチンの純度をさらに高めることができる。
【0027】
次に,上記動物血漿は,ブタ血漿又はウシ血漿であることが好ましい(請求項2)。
この場合には,上記動物血漿固定化担体及びアフィニティーカラムを低コストに作製することができる。
【0028】
次に,上記吸着工程と溶出工程との間に,上記アフィニティーカラム内に洗浄液を通して不純物を溶出除去する洗浄工程を有することが好ましい(請求項3)。
この場合には,上記レクチンを高純度に精製することができる。
【0029】
次に,上記抽出工程と吸着工程との間に,硫酸アンモニウム沈殿法を用いて上記抽出画分を濃縮する濃縮工程と,該濃縮工程において濃縮した抽出画分を透析する透析工程とを有することが好ましい(請求項4)。
この場合には,上記濃縮工程において上記抽出画分を濃縮することができると共に,上記透析工程において抽出画分に含まれる塩等を除去することができる。そのため,上記動物血漿固定化担体へのレクチンの吸着率が向上し,生体材料からのレクチンの回収率が向上する。
【0030】
次に,上記生体材料は米ヌカであり,上記ハプテン糖はN−アセチルグルコサミン溶液であることであることが好ましい(請求項5)。
この場合には,米ヌカから米ヌカレクチンを得ることができる。この米ヌカレクチンは,細胞増殖を抑制する効果を有する。そのため,ガン等に対する有効な治療薬となる可能性がある。
【0031】
次に,上記生体材料はタチナタマメであり,上記ハプテン糖はメチルα−マンノシド溶液であることが好ましい(請求項6)。
この場合には,タチナタマメからタチナタマメレクチンを得ることができる。特にこの場合には,タチナタマメレクチンとして,タチナタマメのコンカナバリンAを得ることができる。
【0032】
次に,上記生体材料は小麦胚であり,上記ハプテン糖はN−アセチルグルコサミン溶液であることが好ましい(請求項7)。
この場合には,小麦胚から小麦胚レクチンを得ることができる。特にこの場合には,小麦胚レクチンとして,小麦胚アグルチニンを得ることができる。
【0033】
次に,上記生体材料はエノキタケの水性媒体抽出物であり,上記ハプテン糖はラクトース溶液であることが好ましい(請求項8)。
この場合には,上記エノキタケからエノキタケレクチンを得ることができる。
【0034】
次に,上記第2の発明(請求項9)において,上記担体及び動物血漿は,上記第1の発明と同様のものを用いることができる。
【0035】
また,上記動物血漿は,ブタ血漿又はウシ血漿であることが好ましい(請求項10)。
この場合には,安価なブタ血漿又はウシ血漿を用いて,低コストに上記動物血漿固定化担体を提供することができる。
【0036】
次に,上記第3の発明(請求項11)において,上記担体及び動物血漿は,上記第1の発明と同様のものを用いることができる。
【0037】
また,上記動物血漿は,ブタ血漿又はウシ血漿であることが好ましい(請求項12)。
この場合には,安価なブタ血漿又はウシ血漿を用いて,低コストに上記アフィニティーカラムを提供することができる。
【0038】
【実施例】
(実施例1)
本例のレクチンの分離精製方法は,アフィニティークロマトグラフィーを応用したレクチンの分離精製方法である。本例の分離精製方法は,生体材料を水性媒体により抽出して抽出画分を得る抽出工程と,担体に動物血漿を固定化してなる動物血漿固定化担体を具備するアフィニティーカラムに上記抽出画分に含まれるレクチンを吸着させる吸着工程と,ハプテン糖を用いて上記アフィニティーカラムからレクチンを溶出させる溶出工程とからなる。
【0039】
以下,本例につき詳細に説明する。
本例では,まず上記生体材料及び動物血漿として,米ヌカ及びブタ血漿をそれぞれ準備した。また,上記担体として,アマシャムファルマシア株式会社製のセファロース4Bを準備した。
【0040】
上記担体100gを水100mlに懸濁し,臭化シアン(和光純薬株式会社製)のジメチルホルムアミド溶液(1g/ml)を25ml加えた。さらに,40%苛性ソーダを滴下して,pH11に保ちながら20℃で12分間反応させた後,1.6%重炭酸ナトリウム水溶液で洗って上記活性化担体としての活性化セファロース4Bを作製した。続いて,この活性化セファロース4Bを200mlのブタ血漿中に浸し,20℃にて16時間穏やかに攪拌しながら上記活性化セファロース4Bにブタ血漿を固定化させ,動物血漿固定化担体を作製した。
【0041】
次に,この動物血漿固定化担体を塩酸でpH7.5に合わせた6%モノエタノールアミン溶液中に浸し,穏やかに攪拌させながら20℃にて,2時間ブロッキングを施した。その後,この動物血漿固定化担体を日本バイオラッドラボラトリーズ株式会社製のカラム(商品名 エコノカラム)に充填し,アフィニティーカラムとした。なお,上記アフィニティーカラム中における動物血漿固定化担体のゲルベッドの体積は,10mlであった。
【0042】
次に,米ヌカ20gを上記水性媒体としてのリン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)100ml中に加えて充分に攪拌した。その後,13,000×gにて10分間遠心分離を行い,上清を上記抽出画分として採取した(抽出工程)。
さらに,この上清に70%飽和になるように硫酸アンモニウム(和光純薬株式会社製)を加え,4℃にて1時間放置した。続いて,13,000×gにて10分間遠心分離し,沈殿を回収した(濃縮工程)。この沈殿に50mlのリン酸緩衝生理食塩水を加えて沈殿を溶解し,透析を行った。透析後のサンプルを4℃,21,000×gにて10分間遠心分離し,上清を回収してこれを最終的な抽出画分とした(透析工程)。
【0043】
次に,上記吸着工程において,上記透析工程後の抽出画分を上記アフィニティーカラム内の動物血漿固定化担体に静かに重層し,自然落下により動物血漿固定化担体に通した(吸着工程)。上記抽出画分が完全に通過したら,リン酸緩衝生理食塩水(pH7.5)100mlを通し,アフィニティーカラム内を洗浄した(洗浄工程)。
【0044】
次に,上記アフィニティーカラム内に250mMのN−アセチルグルコサミン50mlを通し,米ヌカレクチンを含む溶出液を50ml取得した(溶出工程)。この溶出液を試料E1とした。
上記試料E1に含まれる米ヌカレクチンの濃度を日本バイオラッドラボラトリーズ株式会社製のプロテインアッセイ試薬を用いる方法により測定したところ,濃度は80μg/mlであり,その収量は4mgであった。
【0045】
試料E1は,分離精製の方法からレクチンを含有すると考えられる。これを検証するために,下記のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)及び赤血球凝集活性の測定を行った。
【0046】
(SDS−PAGE)
10μlの上記試料E1をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)により,電気泳動した。電気泳動後のゲルをクマーシーブリリアントブルー(CBB)染色し,電気泳動像を写真撮影した。その結果を図1に示す。
なお,SDS−PAGEに用いるマーカータンパク質としては,シグマアルドリッチジャパン株式会社製の標準混合物(30−200kDa)を用いた。また,電気泳動像の各バンドの位置は本明細書作成の都合上,鮮明に表示できないため,各バンドの位置を点線で囲って示してある。
【0047】
図1において,レーン1はマーカータンパク質の電気泳動像を示し,レーン2は試料E1の電気泳動像を示す。図1より知られるごとく,試料E1の電気泳動像は,単一バンドではなく30kDa以下の位置にスメア状の像として示された。そのため,試料E1は30kDa以下のタンパク質の混合物であると考えられる。そこで,上記試料E1が米ヌカレクチンであることを確認するために以下の実験を行った。
【0048】
(赤血球凝集活性の測定)
まず,ウサギ赤血球を採取し,この赤血球を4枚のプレートに播いた。
次に,この4枚のプレートに最終濃度がそれぞれ100ng/ml,50ng/ml,25ng/ml,0ng/mlとなるように試料E1を添加し,これらをそれぞれ試料e1,試料e2,試料e3,試料c1とした。
この試料e1〜e3及び試料c1を25℃にて4時間静置し,血球の形態を写真撮影した。その結果を図2に示す。
【0049】
図2より知られるごとく,試料e1及び試料e2においては,赤血球は凝集しプレート底部全面に沈殿していた。一方,試料e3については,赤血球の凝集はほとんど観察されず,赤血球がプレート底部の一点に集まり,試料c1に至っては,赤血球の凝集は全く観察されなかった。このことから上記試料E1は,50ng/mlという極めて低い濃度で赤血球凝集活性を示し,上記試料E1はレクチンの1種であることが確認された。
【0050】
また,米ヌカレクチンは細胞増殖抑制効果,及び動物実験においてガン細胞を移植したマウスの延命効果を有することがすでに確認されている。上記試料E1もこれらの効果を有しているかということを確認するため,試料E1及び市販の米ヌカレクチンについての細胞増殖抑制効果の比較,及び動物実験を以下のようにして行った。
【0051】
(細胞増殖抑制効果)
まず,48ウェルマルチプレート(住友ベークライト株式会社製)の横2列(8×2列の合計16ウェル)に培養液に懸濁したヒト単球性白血球病U937細胞(U937細胞)を2×104個ずつ播いた。次に,添加物として上記試料E1及び市販の米ヌカレクチン(和光純薬株式会社製,商品名 米ヌカアグルチニン)を最終濃度0〜40μg/mlとなるように,段階希釈法により培養液中に添加した。
【0052】
このプレートを37℃,5%CO2条件下にて24時間培養した。24時間培養後,各ウェルの細胞数を測定し,添加物を添加していない細胞数に対する相対細胞数を以下の式により算出した。その結果を図3に示す。尚,図3において,○は添加物として試料E1を用いた結果を示し,△は添加物として市販の米ヌカレクチンを用いた結果を示す。
【0053】
(式1)
相対細胞数=(添加物を含む培養液で培養したときの細胞数)×100/(添加物を含まない培養液で培養したときの細胞数)
【0054】
図3より知られるごとく,実施例1で得られた試料E1は,市販米ヌカレクチンと同程度の細胞増殖抑制効果を有し,濃度依存的にU937細胞の増殖を抑制した。
また,本明細書中には示していないが,ヒト胃ガンMKN45細胞(MKN45細胞)を用いて上記と同様の実験を行ったところ,上記試料E1は,MKN45細胞についても市販米レクチンと同様に増殖抑制効果を有していた。
【0055】
(動物実験)
まず,C57 BL/6マウス10匹の腹腔内に,それぞれ1×106個のマウスルイス肺ガン3LL細胞(3LL細胞)を移植した。次に,3LL細胞を移植したマウスの内5匹のマウスには,濃度10μg/mlの試料E1を0.2ml投与し,これを実験マウス群とした。一方,残り5匹のマウスには生理食塩水を0.2ml投与し,これをコントロールマウス群とした。そして,これら実験マウス群及びコントロールマウス群のマウスが死亡するまでの日数を計測した。なお,上記実験マウス群及びコントロールマウス群へのそれぞれ試料E1,生理食塩水の投与は二日おきに行った。
その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
Figure 0004112236
【0057】
表1より知られるごとく,実験マウス群はコントロールマウス群よりも生存日数が長く,有意差が認められた。このように,上記試料E1は,従来より知られる米ヌカレクチンと同様の性質を有しており,上記試料Eは,米ヌカレクチンであることが確認された。
したがって,本例によれば,種々の生体材料からレクチンを簡単に短時間で分離精製することができるレクチンの分離精製方法を提供することができる。
【0058】
(実施例2)
本例では,タチナタマメからレクチンを取得する例を示す。
まず,20gの市販のタチナタマメ粉砕物(シグマアルドリッチジャパン株式会社製,商品名 タチナタマメミール)を準備した。このタチナタマメ粉砕物から,実施例1と同様にして,抽出画分を抽出,濃縮,透析し(抽出工程,濃縮工程,透析工程),該抽出画分を,ブタ血漿を固定化した生体材料固定化担体を具備する上記アフィニティーカラムに吸着させ(吸着工程),該アフィニティーカラムを洗浄液にて洗浄した(洗浄工程)。
【0059】
次に,上記アフィニティーカラム内に500mMのメチルα−マンノシド溶液を50ml通し,タチナタマメレクチンを含む溶出液を取得した。これを試料E2とした。
上記試料E2に含まれるタチナタマメレクチンの濃度を実施例1と同様の方法により測定したところ,濃度は160μg/mlであり,その収量は,8mgであった。
【0060】
次に,実施例1と同様に,10μlの試料E2をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)により,電気泳動した。その結果を図4に示す。
なお,SDS−PAGEに用いるマーカータンパク質としては,シグマアルドリッチジャパン株式会社製の標準混合物(30−200kDa)を用いた。また,電気泳動像の各バンドの位置は本明細書作成の都合上,鮮明に表示できないため,各バンドの位置を点線で囲って示してある。
【0061】
図4より知られるごとく,試料E2は,SDS−PAGE電気泳動像で,単一なバンドを示し,充分に精製されていた。
この試料E2に含まれるタンパク質を同定するために,以下に示す方法により,該タンパク質のアミノ酸配列を決定した。
【0062】
まず,上記SDS−PAGEにより分離したタンパク質を電気的にロシュ・ダイアグノスティック株式会社製のPVDF膜(ポリビニリデン・ジフルオライド膜,商品名 PVDF ウエスタンブロッティング メンブレン)に写し取った(ウエスタンブロッティング)。次に,このPVDF膜に写し取られたタンパク質を日本アプライドバイオシステムズ株式会社製のプロテインシーケンサー(製品名 プロサイス モデル491 プロテインシーケシング システム)によって分析した。
【0063】
その結果,Ala−Asp−Thr−Ile−Val−Ala−Val−Glu−Leu−Asp−という配列が得られ,この配列は既知のレクチンの1種であるコンカナバリンAの配列と一致した。これより,試料E2はタチナタマメのコンカナバリンAであることが確認された。
【0064】
(実施例3)
本例では,上記動物血漿としてウシ血漿を用いて,タチナタマメからレクチンを取得する例を示す。
まず,実施例1と同様にして,上記活性化担体としての活性化セファロース4Bを作製した。続いて,この活性化セファロース4Bを200mlのウシ血漿中に浸し,20℃にて16時間穏やかに攪拌した。これにより,上記担体にウシ血漿が固定化し,動物血漿固定化担体を得た。また,実施例1と同様に,上記動物血漿固定化担体を塩酸でpH7.5に合わせた6%モノエタノールアミン溶液中に浸し,穏やかに攪拌させながら20℃にて,2時間ブロッキングを施した。その後,実施例1と同様に,この動物血漿固定化担体を日本バイオラッドラボラトリーズ株式会社製のカラム(商品名 エコノカラム)に充填し,アフィニティーカラムとした。なお,上記アフィニティーカラム中における動物血漿固定化担体のゲルベッドの体積は,10mlであった。
【0065】
次に,実施例2と同様にして,タチナタマメ粉砕物20gから抽出画分を得た(抽出工程,濃縮工程,透析工程)。この抽出画分を上記アフィニティーカラム中に通した(吸着工程)。続いて,実施例1と同様にしてアフィニティーカラムを洗浄し(洗浄工程),実施例2と同様にして500mMのメチルα−マンノシド溶液で溶出した(溶出工程)。ここで得られた溶出液を試料E3とした。
その結果,試料E3は,実施例2と同様にタチナタマメのコンカナバリンAであった。
【0066】
(実施例4)
本例では,小麦胚からレクチンを取得する例を示す。
まず,市販の小麦胚(シグマアルドリッチジャパン株式会社製,商品名 小麦胚)を粉砕し,上記生体材料としての20gの小麦胚粉砕物を得た。この小麦胚粉砕物から実施例1と同様にして,抽出画分を抽出し(抽出工程,濃縮工程,透析工程),該抽出画分を,ブタ血漿を固定化した生体材料固定化担体を具備する上記アフィニティーカラムに吸着させ(吸着工程),該アフィニティーカラムを洗浄液にて洗浄した(洗浄工程)。
【0067】
次に,上記アフィニティーカラム内に250mMのN−アセチルグルコサミン溶液を50ml通し,小麦胚を含む溶出液を取得した。これを試料E4とした。
上記試料E4に含まれる小麦胚レクチンの濃度を実施例1と同様の方法により測定したところ,濃度は120μg/mlであり,その収量は,6mgであった。
【0068】
次に,実施例1と同様に,10μlの上記試料E4をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)により,電気泳動した。その結果を図5に示す。なお,マーカータンパク質としては,シグマアルドリッチジャパン株式会社製のダルトンマークVII−Lを用いた。また,電気泳動像の各バンドの位置は本明細書作成の都合上,鮮明に表示できないため,各バンドの位置を点線で囲って示してある。
【0069】
図5より知られるごとく,試料E4は,SDS−PAGE電気泳動像で,単一なバンドを示し,充分に精製されていた。
この試料E4に含まれるタンパク質を同定するために,以下に示す方法により,該タンパク質のアミノ酸配列を決定した。
【0070】
即ち,まず試料E4に含まれるタンパク質1mgを70%のギ酸200μlに溶かし,10mgの臭化シアン(和光純薬株式会社)を加えて20℃で16時間反応させ,臭化シアン分解を行った。臭化シアン分解は,タンパク質中のメチオンニン残基のところでペプチド結合を切断する方法である。上記臭化シアン分解後,4mlの水を加え,凍結乾燥により乾燥させた。次に,ポリペプチドに分解した試料E4をSDS−PAGEにより,ポリペプチド断片に分離した。このポリペプチド断片を電気的にロシュ・ダイアグノスティック株式会社製のPVDF膜(商品名 PVDF ウエスタンブロッティング メンブレン)に写し取った。このPVDF膜に写し取られたポリペプチド断片を,実施例2と同様にして,プロテインシーケンサーによって分析した。
【0071】
その結果,Gly−Gly−Asp−Tyr−Xaa−Gly−Lys−Gly−Xaa−Gln−(Xは不明)という配列が得られた。この配列は,既知のレクチンの1種である小麦胚アグルチニン中のGly−Gly−Asp−Tyr−Cys−Gly−Lys−Gly−Cys−Gln−という配列と非常に類似している。
したがって,試料E4は小麦胚アグルチニンであることが強く示唆された。
【0072】
(実施例5)
本例では,エノキタケからレクチンを取得する例を示す。
まず,上記生体材料としての市販のエノキタケ50gから,実施例1と同様にして抽出画分を抽出した(抽出工程,濃縮工程,透析工程)。続いて,該抽出画分を,ブタ血漿を固定化した生体材料固定化担体を具備する上記アフィニティーカラムに吸着させ(吸着工程),さらに該アフィニティーカラムを洗浄液にて洗浄した(洗浄工程)。
【0073】
次に,上記アフィニティーカラム内に200mMのラクトース溶液を50ml通し,エノキタケレクチンを含む溶出液を取得した。これを試料E5とした。
上記試料E5に含まれるエノキタケレクチンの濃度を実施例1と同様の方法により測定したところ,濃度は40μg/mlであり,その収量は,2mgであった。
【0074】
次に,実施例1と同様に,10μlの上記試料E5をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)により,電気泳動した。その結果を図6に示す。なお,マーカータンパク質としては,実施例4と同様のものを用いた。また,電気泳動像の各バンドの位置は本明細書作成の都合上,鮮明に表示できないため,各バンドの位置を点線で囲って示してある。
【0075】
図6より知られるごとく,試料E5は,SDS−PAGE電気泳動像で,単一なバンドを示し,充分に精製されていた。
また,実施例1と同様にして,試料E5について赤血球凝集活性を調べたところ,試料E5は200ng/mlという低い濃度で赤血球凝集活性を示した。その結果,試料E5はレクチンであることが確認された。
【0076】
以上実施例1〜実施例5に示すごとく,本例のレクチンの分離精製方法は,米ヌカ,タチナタマメ等の生体材料からレクチンを簡単に短時間で分離精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1にかかる,米ヌカレクチンのSDS−PAGE電気泳動像を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる,赤血球凝集活性測定の結果を示す説明図。
【図3】実施例1にかかる,細胞増殖抑制試験の結果を示す説明図。
【図4】実施例2にかかる,タチナタマメレクチンのSDS−PAGE電気泳動像を示す説明図。
【図5】実施例4にかかる,小麦胚レクチンのSDS−PAGE電気泳動像を示す説明図。
【図6】実施例5にかかる,エノキタケレクチンのSDS−PAGE電気泳動像を示す説明図。

Claims (12)

  1. アフィニティークロマトグラフィーを応用したレクチンの分離精製方法であって,
    生体材料を水性媒体により抽出して抽出画分を得る抽出工程と,
    担体に動物血漿を固定化してなる動物血漿固定化担体を具備するアフィニティーカラムに上記抽出画分に含まれるレクチンを吸着させる吸着工程と,
    ハプテン糖を用いて上記アフィニティーカラムからレクチンを溶出させる溶出工程とからなることを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  2. 請求項1において,上記動物血漿は,ブタ血漿又はウシ血漿であることを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  3. 請求項1又は2において,上記吸着工程と溶出工程との間に,上記アフィニティーカラム内に洗浄液を通して不純物を溶出除去する洗浄工程を有することを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において,上記抽出工程と吸着工程との間に,硫酸アンモニウム沈殿法を用いて上記抽出画分を濃縮する濃縮工程と,該濃縮工程において濃縮した抽出画分を透析する透析工程とを有することを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記生体材料は米ヌカであり,上記ハプテン糖はN−アセチルグルコサミン溶液であることを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記生体材料はタチナタマメであり,上記ハプテン糖はメチルα−マンノシド溶液であることを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記生体材料は小麦胚であり,上記ハプテン糖はN−アセチルグルコサミン溶液であることを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記生体材料はエノキタケの水性媒体抽出物であり,上記ハプテン糖はラクトース溶液であることを特徴とするレクチンの分離精製方法。
  9. アフィニティークロマトグラフィーに用いる動物血漿固定化担体であって,上記動物血漿固定化担体は,担体に動物血漿を固定化してなることを特徴とする動物血漿固定化担体。
  10. 請求項9において,上記動物血漿は,ブタ血漿又はウシ血漿であることを特徴とする動物血漿固定化担体。
  11. アフィニティークロマトグラフィーに用いるアフィニティーカラムであって,上記アフィニティーカラムは担体に動物血漿を固定化してなる動物血漿固定化担体を具備することを特徴とするアフィニティーカラム。
  12. 請求項11において,上記動物血漿は,ブタ血漿又はウシ血漿であることを特徴とするアフィニティーカラム。
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