JP4136344B2 - リチウム二次電池及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池に関する。より詳しくは、負極活物質の利用効率が高く充電容量の高いリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来技術】
正極と負極と電解質とを有し、前記正極が集電体上に正極活物質を含有する正極材料層が積層されてなり、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池においては、電解質を介しポーラス構造を有する正極とポーラス構造を有する負極との間で、電気の運び手となるリチウムイオンが吸蔵・放出されることにより繰り返しの充電・放電を行っている。この場合、負極でのリチウムイオンの吸蔵・放出は以下のようにして行われる。すなわち、集電体上に形成された負極材料層はポーラス構造を有するため、負極活物質間には微少な空隙が存在する。そして、これら空隙に電解質が含浸され負極活物質と接することにより、充電・放電の際にリチウムイオンの負極活物質中への吸蔵・放出が行われるのである。
【0003】
リチウム二次電池は、起電力が4Vと高くさらにリチウムの原子量が小さいため、高エネルギー密度の二次電池を実現することが可能である。このため、リチウム二次電池は、様々な電気機器の電源として用いられ、また用いられていくことが期待されている。ここで、前記電気機器としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、携帯ラジオ、携帯用の照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器など)等を挙げることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように様々な用途に用いられるリチウム二次電池は、高エネルギー密度、高容量、高出力、高安全等様々な性能を満足することが求められている。これらいずれの性能も重要ではあるが、とりわけリチウム二次電池の高容量化への要請は強い。上記したようにリチウム二次電池の用途が拡大するにつれ電気機器をより長時間駆動することが求められ、そのような点からもリチウム二次電池の高容量化は重要である。このリチウム二次電池の高容量化は、より容量の高い正極活物質や負極活物質を選択するという材料の選択や、正極活物質、負極活物質の粒径や比表面積等を制御することによって行われてきた。しかし、更なる高容量化が求められているのが現状である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記実情の下、本発明者等は、リチウム二次電池の充電容量を向上させることによりリチウム二次電池の高容量化を目指し、充電時により多くのリチウムイオンを吸蔵できるような負極構造について検討した。より詳細には、リチウム二次電池で通常用いられる充電方法である、一定の充電電流にて所定の電圧まで充電(本明細書においては、これを定電流充電という場合がある。)を行った後、所定の電圧のまま徐々に充電電流値を落として充電を完了させる(本明細書においては、これを定電圧充電という場合がある。)という方法を利用した場合に、より充電容量が高くなるような負極構造について検討した。
その結果、本発明者等は、充電時にリチウムが吸蔵される負極において、負極材料層の平均空隙率を一定とするよりも、負極材料層を厚み方向に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体とは反対側の負極材料層をA2とした場合に、前記A2の平均空隙率を前記A1の平均空隙率よりも大きくすれば、定電流充電においては、集電体側に位置する負極材料層であるA1へのリチウムイオンの吸蔵はそれほど進まず、リチウムイオンは主にA2側へと吸蔵されていく一方、定電圧充電においては、A1側へとリチウムイオンが選択的に吸蔵されていくことを見出した。そして、本発明者等は、このような充電時の選択的なリチウムの吸蔵により、平均空隙率を負極材料層中で一定とした負極よりもリチウムの吸蔵量、換言すれば充電容量が大きくなることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0006】
即ち、本発明の第一の要旨は、正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池において、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率がA1の平均空隙率よりも大きいことを特徴とするリチウム二次電池に存する。
【0007】
また、本発明の第二の要旨は、正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池の製造方法であって、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り返す度に、含有する負極活物質の平均二次粒径を順次大きくした塗料を使用して、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法に存する。
【0008】
また、本発明の第三の要旨は、正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池の製造方法であって、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り繰り返す度に、塗料の固形分濃度を順次低くした塗料を使用して、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法に存する。
【0009】
さらに、本発明の第四の要旨は、正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池の製造方法であって、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成した後、前記負極材料層の厚さ方向に圧密する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り繰り返す度に、前記圧密する際の圧力を順次弱くして、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法に存する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池において、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層A1、集電体側とは反対側の負極材料層A2とした場合に、A2の平均空隙率がA1の平均空隙率よりも大きいことを特徴とする。ここでいう平均空隙率とは、電極の指定部分において、指定部分全体積を1とした場合の、これに対する固体部分以外の体積割合を意味する。ここで、固体部分とは活物質やその他の固体成分(詳細は後述)の存在している部分ある。
【0011】
本発明においては、上記A2の平均空隙率を上記A1の平均空隙率よりも大きくするが、A2とA1との平均空隙率の差は、通常0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上であり、一方、通常0.9以下、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下である。平均空隙率の差を大きくすれば、より負極活物質の利用効率が上がるため充電容量をより高くすることができる一方、サイクル特性の観点から活物質間の電子伝導性を維持するためには、ある程度空隙率を下げる必要があり、A2、A1の平均空隙率を下げると必然的に平均空隙率の差も小さくなる。特に、A2とA1との平均空隙率の差を0.01以上とすれば、工業的に平均空隙率の大小関係の制御がさらに容易となる利点がある。一方、A2とA1との平均空隙率の差を0.4以下とすれば、負極活物質の充填密度を十分高くすることでき、充電エネルギー密度をさらに高くすることができる利点がある。
【0012】
A2の平均空隙率は、通常0.02以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.16以上であり、一方、通常0.9以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下である。平均空隙率を大きくすれば、空隙内に含浸された電解質中のイオン伝導性が向上するため、充電時において負極活物質の表面にリチウム金属が析出する現象を回避することができる。一方、前述したように、平均空隙率を小さくすれば、活物質間の電子伝導性が向上するためサイクル特性が改善される。特に、A2の平均空隙率を0.16以上とすれば、空隙に含浸された電解質内でのイオン伝導性が良くなり放電時の出力特性をさらに高くすることができる利点がある。また、特に、A2の平均空隙率を0.6以下とすれば、負極活物質の充填密度をさらに高くすることができるため、充電エネルギー密度をさらに高くすることができる利点がある。
【0013】
A1の平均空隙率は、通常0.01以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.14以上であり、一方、通常0.89以下、好ましくは0.79以下、より好ましくは0.59以下である。A2の平均空隙率を考慮し上記範囲とすることにより、充電容量が高くなるという効果を有効に得ることができる。
上記平均空隙率の測定方法としては、例えば以下の三つの方法を挙げることができる。
【0014】
第一の方法は以下の通りである。すなわち、電極の断面をSEM(“Scanning Electron Microscope”)又はレーザー顕微鏡で撮影し、その撮影画像を画像処理して固体部分と非固体部分とを分けることにより、全断面積における非固体部分の割合を空隙率とする。そして、前記空隙率を電極の断面の数カ所について測定し、それぞれの測定値の平均を平均空隙率とする。
【0015】
第二の方法は以下の通りである。すなわち、電極の空隙部を、EPMA(“Electron Probe Micro−Analyser”)で検出可能な元素を含む樹脂等で含浸したのち、電極の断面における前記元素の分布領域、又は負極活物質成分の分布領域をEPMAで測定し、全断面積における前記元素の分布領域の面積、又は負極活物質成分の分布領域以外の領域の面積の割合を空隙率とする。そして、前記空隙率を電極の断面の数カ所について測定し、それぞれの測定値の平均を平均空隙率とする。
【0016】
第三の方法は以下の通りである。すなわち、負極を製造する前にあらかじめ負極製造に使用する固体部分の体積を測定しておけば、出来上がった負極材料層の全体積から前記固体部分の体積を差し引いた値を前記全体積で除せば空隙率を得ることができる。
これら方法のうち簡便なのは、第三の方法である。
【0017】
A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくするには、例えば、A2に含有される負極活物質の平均二次粒子径を、A1に含有される負極活物質の平均二次粒子径よりも大きくすればよい。より具体的には、例えば、負極の製造において、A2に含有される負極活物質として、A2の厚みに比して30%以上の直径の粒子を用いると、その粒子がA2の負極材料層を柱状に支持するように機能し、結果としてA2の平均空隙率を大きくすることができる。そして、A2を形成する前に、上記粒子よりも小さい平均二次粒子径有する負極活物質を用いてA1を形成しておけば、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることができる。
【0018】
A2に含有される負極活物質の平均二次粒子径を、A1に含有される負極活物質の平均二次粒子径よりも大きくする場合、前記A2に含有される負極活物質の平均二次粒子径と前記A1に含有される負極活物質の平均二次粒子径との差は、通常1μm以上、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上である。上記範囲とすれば、工業的に負極活物質の粒子を分級する場合に平均粒子径の差の精度をより高くすることができる。一方、前記平均二次粒子径の差は、通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。上記範囲とすれは、A2の空隙にA1の粒子が混入するのを有効に防止することができる。上記範囲のうち特に好ましいのは、前記平均二次粒子径の差を5μm以上、20μm以下とすることである。この範囲とすれば、負極活物質の利用効率の向上に伴う充電容量が高くなることに加え、放電時の出力特性及びサイクル特性をさらに向上させることができる。
【0019】
本発明のリチウム二次電池は、正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなる構造を有する。
負極活物質としては、例えば、炭素系活物質を挙げることができる。炭素系活物質としては、例えば、黒鉛、及び石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、あるいはこれらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、及び結晶セルロース等の炭化物等並びにこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等を用いることができる。炭素系活物質のうち好ましいものとして、例えば、鱗片状黒鉛、メソカーボンマイクロビーズを挙げることができる。また、これら炭素系活物質は、金属やその塩、酸化物との混合体、被覆体の形であっても利用できる。上記炭素系活物質の他、負極活物質としては、けい素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケルなどの酸化物、あるいは硫酸塩さらには金属リチウムやLi−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cdなどのリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、けい素、錫などの金属なども使用できる。これら負極活物質の粒径は、通常1〜60μm、好ましくは5〜40μmである。この範囲とすることによって、初期効率、レート特性、サイクル特性等のより高い二次電池を得ることができる。
【0020】
本発明においては、前記したようにA2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくするために、A2に含有される負極活物質の平均二次粒子径をA1に含有される負極活物質の平均二次粒子径よりも大きくすることが好ましい。平均二次粒子径の異なる二種類の負極活物質は、例えば、上記炭素系活物質を用いる場合は、同一種類の炭素系活物質を用いてもよいし、異なる種類の炭素系活物質を用いてもよい。
【0021】
負極材料層は、通常、前記負極活物質とバインダーとを含有する。バインダーは、電解液等に対して安定である必要があり、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等の観点から各種の材料が使用される。具体的には、シリケート、ガラスのような無機化合物や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1―ジメチルエチレンなどのアルカン系ポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの不飽和系ポリマー;ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドンなどのポリマー鎖中に環構造を有するポリマーが挙げられる。
【0022】
他の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニドなどのCN基含有ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ポリマー;ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが使用できる。
【0023】
また上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであっても使用できる。これらの樹脂の重量平均分子量は、通常10,000〜3,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000程度である。この範囲にすれば塗膜の強度をより高くしつつも粘度を低く抑えることができ、電極の形成をより容易にすることができる。好ましいバインダー樹脂としては、フッ素系樹脂、CN基含有ポリマーが挙げられ、より好ましくはポリフッ化ビニリデンである。
【0024】
バインダーの使用量は、負極活物質100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、更に好ましくは1重量部以上、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは15重量部以下である。バインダーの量を上記範囲にすれば、強固な正極を形成させつつも、エネルギー密度やサイクル特性をより高くすることができる。
【0025】
負極材料層中には、必要に応じて、導電性材料、補強材など各種の機能を発現する添加剤、粉体、充填材などを含有させてもよい。
負極に使用される集電体としては、電気化学的に溶出等の問題が生じず、電池の集電体として機能しうる各種のものを使用でき、通常は銅、ニッケル、ステンレス等の金属や合金が用いられる。好ましくは、銅を使用する。集電体の厚さは、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上であり、また通常100μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。薄すぎると機械的強度が弱くなる傾向にあり、生産上問題になる。厚すぎると電池全体としての容量が低下する。二次電池の重量を低減させる、すなわち重量エネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの基材を使用することもできる。この場合、その開口率を変更することで重量も自在に変更可能となる。また、このような穴あきタイプの基材の両面に接触層を形成した場合、この穴を通しての塗膜のリベット効果により塗膜の剥離がさらに起こりにくくなる傾向にあるが、開口率があまりに高くなった場合には、塗膜と基材との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。また、負極材料層との接着性を向上させるため、集電体の表面を予め粗面化処理することができる。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理や粗面ロールにより圧延するなどの方法、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤ−ブラシなどで集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。
【0026】
本発明においては、負極の製造方法を工夫することにより、前記A2の平均空隙率が前記A1の平均空隙率よりも大きい負極材料層を集電体上に形成することができる。そのような方法について以下に説明する。
第一の方法は、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成する工程を複数回繰り返して最終的な負極材料層を製造する方法を用い、その際、前記工程を繰り返す度に、含有する負極活物質の平均二次粒径を順次大きくした塗料を使用する方法である。前述の通り、平均二次粒径を変化させることにより、負極材料層の平均空隙率を制御することができるので、上記製造方法は、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくする負極を製造する好適な方法である。
【0027】
前記第一の方法を用い、その際、負極活物質を少なくとも含有する塗料は、通常、負極活物質を上述のバインダーとともに該バインダーを溶解しうる溶剤を用いて分散塗料化することによって得ることができる。
前記溶媒としては、例えばN−メチルピロリドンや、ジメチルホルムアミドを挙げることができ、好ましくはN−メチルピロリドンである。塗料中の溶剤濃度は、少なくとも10重量%より大きくするが、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上である。また、上限としては、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。溶剤濃度が低すぎると塗布が困難になることがあり、高すぎると塗布膜厚を上げることが困難になると共に塗料の安定性が悪化することがある。
【0028】
また、上述の分散塗料化には通常用いられる分散機が使用でき、例えば、プラネタリーミキサー、ボールミル、サンドミル、二軸混練機などを用いることができる。
塗料を塗布する塗布装置に関しては特に限定されず、スライドコーティングやエクストルージョン型のダイコーティング、リバースロール、グラビアコーター、ナイフコーター、キスコーター、マイクログラビアコーター、ロッドコーター、ブレードコーターなどが挙げられるが、ダイコーティングが好ましく、塗料粘度および塗布膜厚等を考慮するとエクストルージョン型のダイコーティングが最も好ましい。
【0029】
第一の方法の具体的な実施方法においては、平均二次粒子径を変化させた複数種の負極活物質を用意して、最も小さい平均二次粒子径を有する負極活物質をバインダーとともに溶媒に分散した塗料を、塗布装置によって集電体上に塗布した後、塗膜を乾燥させることによって、負極材料層の一部(以下、この負極材料層の一部を「第一層」と呼ぶ場合がある。)が形成される。ここで、塗膜の乾燥方法は特に制限されないが、例えば120℃程度の温度で10分間程度の時間乾燥させる方法を挙げることができる。次に、第一層で使用した負極活物質よりも大きい平均二次粒子径を有する負極活物質を前記バインダーとともに前記溶媒に分散した塗料を、前記塗布装置によって、第一層上に塗布した後、塗膜を乾燥させる。こうして、第一層中に含有される負極活物質よりも平均二次粒子径が大きい負極活物質を含有する第二層が第一層上に形成されることとなる。以下同様の方法で、含有される負極活物質の平均二次粒子径が段々と大きくなるようにして、第三層、第四層、第五層…と順次形成させ最終的な負極材料層の製造が終了する。このような製造方法を用いれば、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることができる。第一の方法においては、集電体上に形成される「層」の数は2以上であればよく、負極活物質の利用効率が向上して充電容量が高くなる限り層の数は制限されない。ただ、工業的には、負極材料層を2層構造又は3層構造とすることが好ましい。
【0030】
前記A2の平均空隙率が前記A1の平均空隙率よりも大きい負極材料層を集電体上に形成する第二の方法としては、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成する工程を複数回繰り返して最終的な負極材料層を製造する方法を用い、その際、前記工程を繰り繰り返す度に、塗料の固形分濃度を順次低くした塗料を使用する方法を挙げることができる。固形分濃度が低い塗料によって形成された負極材料層は、負極活物質の充填率が低くなる、換言すれば平均空隙率が大きくなる。一方、固形分濃度が高い塗料によって形成された負極材料層は、負極活物質の充填率が高くなる、換言すれば平均空隙率が小さくなる。従って、固形分濃度の異なる塗料を用いる上記製造方法は、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくする負極を製造する好適な方法である。
【0031】
塗料の固形分濃度は、通常10重量%より大きくするが、好ましくは20重量%以上である一方、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、特に好ましくは65重量%以下である。固形分濃度をこの範囲にすれば、塗布を容易に行うことができるだけでなく塗布膜厚も十分確保することができる。
【0032】
前記第二の方法を用いる場合には、固形分濃度の異なる塗料を複数用いることとなるが、この場合の等n層(nは自然数)と第(n+1)層との間の固形分濃度の差は、通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上とする一方、前記固形分濃度の差は、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。この範囲とすれば、塗布をより均一に行うことができるだけでなく、平均空隙率に差を設けることもより容易となる。
【0033】
第二の方法を用いる場合に使用する溶媒や、分散塗料化に使用する分散機、塗布に使用する塗布装置、塗膜の乾燥方法は第一の方法を用いることができる。また、第二の方法も、第一の方法と同様、集電体上に形成される「層」の数は2以上であればよく、複数の「層」を順次塗布・乾燥して最終的な負極材料層を形成すればよいが、第一の方法と同様、工業的には、負極材料層を2層構造又は3層構造とすることが好ましい。
【0034】
負極材料層を同一膜厚の2層構造とする場合の、第二の方法を用いた負極の製造の具体例について説明する。まず負極活物質、バインダー、溶媒を用いて固形分濃度が50重量%の塗料を製造し、塗布装置によってこの塗料を集電体上に塗布した後塗膜を乾燥させることによって、集電体上に負極材料層の第一層を形成する。次に前記負極活物質、バインダー、溶媒を用いて固形分濃度48%の塗料を製造し、この塗料を塗布装置によって前記第一層上に塗布した後、塗膜を乾燥させることによって、負極材料層の第二層を形成する。この時、乾燥後の第二層の膜厚が第一層の膜厚と同一となるように、第二層の塗布量を制御する。このようにして、集電体上に2層構造の負極材料層を形成させれば、A2とA1との平均空隙率の差を0.01〜0.02程度つけることができる。
【0035】
前記A2の平均空隙率が前記A1の平均空隙率よりも大きい負極材料層を集電体上に形成する第三の方法としては、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成した後、前記負極材料層の厚さ方向に圧密する工程を行い、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する際に、前記工程を繰り繰り返す度に、前記圧密する際の圧力を順次弱くする方法を挙げることができる。前記の圧密工程は、圧密する圧力が強いほど、負極活物質の充填率が大きくなる、換言すれば負極材料層の平均空隙率が小さくなるため、負極材料層の一部を塗布・乾燥するごとに、段々と弱い圧力で負極を圧密する上記方法は、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくする負極を製造する好適な方法である。またこの方法においては、用いる塗料の組成は単一でよいという利点もある。
【0036】
前記第三の方法を用いる場合に使用する溶媒や、分散塗料化に使用する分散機、塗布に使用する塗布装置、塗膜の乾燥方法は前記第一又は第二の方法と同様のものを用いることができる。また、第三の方法も、第一又は第二の方法と同様、集電体上に形成される「層」の数は2以上であればよく、複数の「層」を順次塗布・乾燥して最終的な負極材料層を形成すればよいが、第一又は第二の方法と同様、工業的には、負極材料層を2層構造又は3層構造とすることが好ましい。
【0037】
負極材料層を圧密する際の圧力は、所望の平均空隙率によって異なるものの、通常線圧294N/cm(30kgf/cm)以上、好ましくは490N/cm(50kgf/cm)以上、より好ましくは784N/cm(80kgf/cm)以上であり、一方、通常29400N/cm(3000kgf/cm)以下、好ましくは26460N/cm(2700kgf/cm)以下、より好ましくは19600N/cm(2000kgf/cm)以下、特に好ましくは14700N/cm(1500kgf/cm)以下、最も好ましくは9800N/cm(1000kgf/cm)以下である。この範囲にすれば平均空隙率の制御が容易となる。
【0038】
前記した通り、この方法においては、圧密する際にかける圧力を順次弱くする。圧力を弱めていく比率としては、所望する平均空隙率の差によって異なるものの、第(n+1)層(nは自然数)にかける圧力は、等n層にかける圧力の60%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは25%以下とすればよい。また、平均空隙率を大きくするために、全く圧力をかけないようにしてもよい。
【0039】
負極材料層が同一膜厚の2層構造である場合の、第三の方法による負極の製造例を具体的に説明する。まず負極活物質、バインダー、溶媒を含有する塗料を製造し、この塗料を塗布装置によって集電体上に塗布した後塗膜を乾燥させることによって、集電体上に負極材料層の第一層を形成する。次に集電体側及び前記第一層の塗布表面側から833N/cm(85kgf/cm)の圧力をかけて、前記第一層を圧密する。その後、前記塗料を用いて前記第一層と同じ要領で、前記第一層上に負極材料層の第二層を形成する。ただし第二層の塗布の際は、最後の厚密工程後の第二層の膜厚が前記第一層の膜厚と同一になるように、第二層の塗布量を調節する。最後に集電体側及び前記第ニ層の塗布表面側から539N/cm(55kgf/cm)の圧力をかけて、前記第一層を圧密して、最終的な負極材料層を集電体上に形成する。このようにすれば、第一層と第二層の平均空隙率に0.05程度差をつけることができる。
上記第一から第三の方法は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0040】
上述のようにして集電体上に負極材料層が形成され負極が製造されるが、この時の負極材料層の膜厚は、通常10μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常200μm以下、好ましくは150μm以下である。この範囲とすることで、リチウム二次電池レート特性を高く保ちつつ、A2とA1との平均空隙率の差を所望の値にすることができる。
【0041】
次に正極について説明する。正極は、通常、集電体上に正極材料層を積層した構造を有し、前期正極材料層は、通常、リチウムの吸蔵・放出を行う正極活物質及びバインダー、さらに必要に応じて各種の添加剤を含有する。
正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物等各種の無機化合物が挙げられる。ここで遷移金属としてはFe、Co、Ni、Mn等が用いられる。具体的には、MnO、V25 、V613、TiO2 等の遷移金属酸化物粉末、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物などのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、TiS2 、FeS、MoS2 などの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。これらの化合物はその特性を向上させるために部分的に元素置換したものであっても良い。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩等の有機化合物を用いることもできる。これらの無機化合物、有機化合物を混合して用いても良い。これら正極活物質のうち、好ましいのは、リチウムと遷移金属との複合酸化物であり、具体的には、LiNiO2、LiNiCoO2等のリチウムニッケル複合酸化物、LiCoO2等のリチウムコバルト複合酸化物、LiMn24等のリチウムマンガン複合酸化物が挙げられる。より好ましくはリチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物であり、特に好ましくはLiCoO2である。これら正極活物質の粒径は、通常1〜30μm、好ましくは1〜10μmとする。粒径が大きすぎても小さすぎても、レート特性、サイクル特性等の電池特性が低下する傾向にある。
【0042】
正極材料層中に含有させるバインダーは負極材料層と同様のものを用いることができる。
正極材料層には、必要に応じて導電材料、補強材など各種の機能を発現する添加剤、粉体、充填材などを含有しても良い。導電材料としては、上記正極活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限はないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末や、各種の金属ファイバー、箔などが挙げられる。補強材としては各種の無機、有機の球状、繊維状フィラーなどが使用できる。
【0043】
正極に使用される集電体の材料としては、通常、アルミニウム、ニッケル、錫、ステンレス鋼等の金属、これら金属の合金等を用いることができるが、アルミニウムが好ましい。正極の集電体の厚さは、負極の集電体と同様であり、またその形状も、負極の集電体同様、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの基材を使用することもできる。さらに負極の集電体と同様、正極材料層との接着性を向上させるため、集電体の表面を予め粗面化処理することができる。
【0044】
正極の厚さは、それぞれ通常1μm以上、好ましくは10μm以上であり、通常は500μm以下、好ましくは200μm以下である。あまりに厚くても薄くても容量やレート特性等の電池性能が低下する傾向にある。
正極の製造方法には、特に制限はなく、例えば、正極活物質、バインダー、導電材等を溶媒に分散して塗料化し、この塗料を集電体に塗布し、乾燥することにより製造することができる。この時の塗料の調整、塗布、乾燥の各方法は、負極を製造する場合と同様にすればよい。また、例えば、溶媒を用いずに、活物質及び必要に応じて用いられるバインダーや導電材等を混練後、集電体に圧着することにより製造することもできる。
【0045】
本発明のリチウム二次電池に用いられる電解質は、通常、リチウム塩と非水系溶媒を少なくとも有する電解液を含有し、正極と負極との間に電解質層として存在するのみならず、ポーラス構造を有する正極と負極の空隙中にも存在している。
電解液中の非水系溶媒としては特に限定されないが、比較的高誘電率の溶媒が好適に用いられる。具体的にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの非環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のグライム類、γ−ブチルラクトン等のラクトン類、スルフォラン等の硫黄化合物、アセトニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。中でも、リチウム二次電池の安全性を向上させることができる観点から、沸点が150℃以上、特に200℃以上の高沸点溶媒を使用するのが好ましい。このような高沸点溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等を挙げることができる。中でも高沸点溶媒としてプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトンを使用するのが好ましい。
【0046】
以上の非水系溶媒は、複数種を併用することができる。前記高沸点溶媒を使用する場合、使用する非水系溶媒に対する前記高沸点溶媒の割合は、好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上、さらに好ましくは80体積%以上、最も好ましくは90体積%以上とする。また、複数の溶媒を併用する場合の非水系溶媒全体としての沸点を200℃以上とするのが好ましい。高沸点溶媒を使用することによって、リチウム二次電池要素を後述の形状可変性ケースに収納しても、高温下等での電池の形状変化(変形)を抑制することができる。なお、「沸点X℃以上」とは、圧力1atmのもとで室温からX℃まで加熱しても蒸気圧が1atmを越えないことを意味する。即ち、圧力1atmのもとで室温から200℃まで加熱した場合、常に蒸気圧が1atm以下であることを意味する。
【0047】
なお、非水系溶媒は、粘度が1mPa・s以上であることが好ましい。
電解質に使用する支持電解質であるリチウム塩としては、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiClO4、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、LiSO3CF2等を挙げることができる。これらのうちでは特にLiPF6、LiBF4及びLiClO4が好適である。これら支持電解質の電解液における含有量は、通常0.5〜2.5mol/lである。
【0048】
電解質は、非流動性を有するものが好ましい。非流動性電解質は、電解液の液漏れ等が有効に防止できる一方で、流動性のある液系の電解質よりもイオン伝導性に劣るのが一般的である。これは、非流動性電解質を用いた場合には、電池の内部抵抗に対する電解質のイオン伝導度の影響が占める割合が大きいことを意味する。従って、負極材料層の平均空隙率をその厚み方向に分布を持たせることにより、充電時の負極材料層中における電解質の動的な内部抵抗の変化を適切に調節し、負極活物質の利用効率が向上するという本発明の効果がさらに顕著に発揮される。このような非流動性電解質としては、具体的には、完全固体型の電解質の外、ポリマーにより前記電解液を保持した、いわゆるポリマー電解質が挙げられる。ポリマー電解質は、通常上記非水電解液をポリマーによって保持することによってゲル状を呈する。ポリマーの電解液に対する濃度は、使用するポリマーの分子量にもよるが、通常0.1〜30重量%である。濃度が低すぎるとゲルを形成しにくくなり、電解液の保持性が低下して流動、液漏れの問題が生じることがある。また濃度が高すぎると粘度が高くなりすぎて工程上困難を生じるとともに、電解液の割合が低下してイオン伝導度が低下しレート特性などの電池特性が低下する傾向にある。電解質を保持するポリマーとしては、アルキレンオキシドユニットを有するアルキレンオキシド系高分子や、ポリフッ化ビニリデンやフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体のようなフッ素系高分子等、上記機能を有する各種のポリマーを挙げることができる。
【0049】
非流動性電解質を形成する方法としては、あらかじめポリマーを電解液に溶解させた電解質塗料として用いる方法、また電解液に重合性モノマーを含有させた電解質塗料を架橋反応させて非流動性電解質とする方法など必要に応じた材料・製法を採用し、電解質層を形成することができる。
本発明における非流動性電解質の形成を、電解液に重合性モノマーを含有させた塗料を架橋反応させて非流動化電解質とする方法で行う場合には、紫外線硬化や熱硬化などの重合処理を施すことによって高分子を形成するモノマーを重合性モノマーとして電解液に添加することにより塗料を調製する。
【0050】
重合性モノマーとしては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を有するものが挙げられる。具体的には、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエトキシエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、N、N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、アリルアクリレート等が挙げられる。
【0051】
他の使用可能な具体例としては、アクリロニトリル、N−ビニルピロリドン、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレート等が挙げられ、さらにトリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシレートトリアクリレートなどの3官能モノマー、ペンタエリスリトールアルコキシレートテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンアルコキシレートテトラアクリレートなどの4官能以上のモノマー等も使用できる。これらの中から反応性、極性、安全性などから好ましいものを単独、または組み合わせて用いれば良い。これらの中で特に好ましくはエチレノキシド基を複数含有するジアクリレート、トリアクリレートである。これらのモノマーを熱、紫外線、電子線等によって重合させることにより、電解質を非流動性電解質とすることができる。電解液中における重合性モノマーの含有量は特に制限されないが、好ましくは塗料中に1重量%以上含有することが好ましい。含有量が低いと高分子の形成効率が低下し、電解液を非流動化しにくくなる。他方、あまりに多すぎると未反応モノマーの残留や電解質塗料としての操作性が悪くなるので、通常30重量%以下とする。
【0052】
非流動性電解質を、あらかじめポリマーを含有した電解質塗料を用いて生成する方法においては、ポリマーとして、高温で電解液に溶解し、常温でゲル状電解質を形成する高分子を使用するのが好ましい。この様な特性を持ち、電池材料として安定なものであればどのような高分子でも使用できるが、例えば、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の環を有するポリマー;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマー等が挙げられる。これらの中、好ましくはポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリエチレノキシド、あるいはそれらの変性体である。
【0053】
また、上記のポリマー等の混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体等であっても使用できる。後述するようにリチウム電池に使用される非水系溶媒、リチウム塩が極性を有するものであるから、ポリマー(高分子)も有る程度の極性を有する方が好ましい。更に、これらのポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10,000〜5,000,000の範囲である。分子量が低いとゲルを形成しにくくなり、他方、あまり分子量が高いと粘度が高くなりすぎて取り扱いが難しくなる。
【0054】
高温で電解液に溶解し、常温でゲル状電解質を形成するポリマーを使用した非流動化電解質の形成法では、ポリマーを電解液に加温して溶解する。加温温度としては50〜200℃、好ましくは、100〜160℃である。あまりにも低温で溶解するようであると、非流動化電解質の安定性が低下する。溶解温度が高すぎると、電解液成分、ポリマー等の分解を引き起こすことがあり得る。非流動化の条件としては、ポリマー溶解電解液を室温で冷却することが好ましいが、強制冷却してもよい。
【0055】
電解質中には、必要に応じて、電池の性能向上のために各種の添加剤を添加することができる。
電解質層は、多孔質フィルムのような支持体を併用するのが好ましい。多孔質フィルムとしては、高分子樹脂からなるフィルムや、粉体とバインダーからなる薄膜が好ましく使用でき、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質膜である。
【0056】
通常、正極と負極は、前記電解質層を介して積層された状態(以下、この積層された状態を電池要素という場合がある。)でケースに収納される。長尺に形成された電池要素は巻回してケースに収納することができ、また、平板状に形成された電池要素をそのままケースに収納してもよいし、平板状に形成された電池要素を複数個積層した状態でケースに収納することもできる。
【0057】
電池要素を収納するケースとしては、例えば、金属ケースのように剛性の高いケースや、剛性は低いが軽量で携帯用電気機器に使用するのに適した、形状可変性を有するケースを挙げることができる。本発明においては、形状可変性を有するケースを用いることが好ましい。本発明のリチウム二次電池は、高容量化の要請が特に強い、携帯用電気機器用の電源としての用途に用いられることもあるからである。
【0058】
形状可変性ケースとは、柔軟性、屈曲性を有するケースを意味し、その具体例としては、ビニール袋の様な高分子フィルムからなる袋、高分子フィルムからなる真空包装用袋もしくは真空パック、金属箔と高分子フィルムとのラミネート素材からなる真空包装用袋もしくは真空パック、プラスチックで形成された缶、プラスチックの板で挟んで周囲を溶着、接着、はめ込み等で固定したケース等が挙げられる。これらの中では、気密性、形状可変性の点で高分子フィルムからなる真空包装用袋もしくは真空パック、または金属箔と樹脂(高分子フィルム)とのラミネート素材からなる真空包装用袋もしくは真空パックが好ましい。
【0059】
材質としては、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、ゴム、薄い金属板、ガスバリア層と樹脂層とを有するラミネートフィルム等が挙げられる。ケースの材質として、特に好ましいのは、金属や金属酸化物からなるガスバリア層の両面に樹脂層を設けてなるラミネートフィルムである。ラミネートフィルムを電池要素の外装ケースとして用いれば、リチウム二次電池の軽量化・小型化が達成される。
【0060】
形状可変性ケースの部材厚さは、通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、通常5mm以下、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下、最も好ましくは0.3mm以下とする。薄いほど電池がより小型・軽量化でき、また本発明の効果も大きいが、あまりに薄いと、十分な剛性の付与ができなくなったり密閉性が低下する可能性がある。
【0061】
ケース内への電池要素の収納方法は任意であるが、例えば、フィルム状のケース部材の両端を貼り合わせて筒状とし、内部に電池要素を収納した後、筒の上下をさらに貼り合わせる方法を例示することができる。また、2片のフィルム状のケース部材の間に電池要素を収納した後、周縁部を貼り合わせる方法も採用することができる。尚、電池要素は、上記ケース中に減圧状態で封入されるのが、装置の小型化及び電池要素の接触の面から好ましい。この場合、大気圧との差分が電池要素を押さえ付ける力となる。
【0062】
無論、電池の機器への装着等の利便を図るため、上記のケースに電池要素を封入した後、必要ならば複数のケースを、剛性を持つ外装ケースに収納することも可能である。
本発明のリチウム二次電池が電源として用いられる電気機器の用途は特に限定されないが、本発明のリチウム二次電池は、携帯する電気機器の電源として用いられることが好ましい。携帯用の電気機器は高容量化の要請が特に強いからである。このような電気機器の具体例としては、例えば、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、携帯液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、携帯ラジオ、携帯用の照明器具、携帯ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器など)等を挙げることができる。
【0063】
【実施例】
[実施例1]
下記のようにして、正極、負極、及び電解質形成用の塗料を製造した。
(1)負極の製造
炭素系活物質として、平均二次粒子径が20.0μmの麟片状黒鉛100重量部、及びメソカーボンマイクロビーズ(MCMB6−28、大阪ガス化学社製;平均粒径D50=6.1μm)20重量部を用いた。この炭素系活物質120重量部に、ポリフッ化ビニリデン(バインダー)10重量部、N−メチル−2−ピロリドン(溶剤)141重量部を調合し、混練機により2時間混練し、固形分48%の負極材料層形成用分散塗料を製造した。
【0064】
得られた負極材料層形成用分散塗料を、20μm厚の銅集電体上にエクストルージョン型のダイコーティングによって塗布した後、これを120℃にて10分間乾燥し、集電体上に負極材料層の一部を形成した。ついで、ロールプレス(カレンダー)を用いて、集電体側及び前記負極材料層の一部の塗布表面側から線圧25480N/cm(2600kgf/cm)の条件で圧密することによって負極材料層A1を得た。
【0065】
負極材料層A1の平均空隙率は、A1の製造に使用する炭素系活物質とバインダーとからなる固形部分の体積をあらかじめ測定しておき、A1の体積から前記固形部分の体積を差し引いた値を、A1の体積で除することによって求めた。その結果、A1の平均空隙率は0.2であった。
次に、前記負極材料層A1上に、前記負極材料層形成用分散塗料をエクストルージョン型のダイコーティングによって塗布した後、これを120℃にて10分間乾燥し、A1上にさらに負極材料層A2を形成し、集電体上に負極材料層を積層してなる負極を最終的に製造した。尚、A2を形成する際には、ロールプレス(カレンダー)を用いず、集電体側及び前記負極材料層の塗布表面側から圧力をかけることはしなかった(線圧0N/cm)。
【0066】
負極材料層A2の平均空隙率は、前記負極材料層A1と同様にして求めた。その結果、A2の平均空隙率は0.6であった。従って、A1とA2との平均空隙率の差は、0.4であった。また、負極材料層全体の平均空隙率は、0.4であった。
(2)正極の製造
コバルト酸リチウム90重量部、アセチレンブラック5重量部、ポリフッ化ビニリデ5重量部及びN−メチル−2−ピロリドン80重量部を混練機により2時間混練して得た正極用分散塗料を、20μm厚のアルミニウム集電体に、エクストルージョン型のダイコーティングによって、乾燥後の膜厚が60μmとなるよう塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された正極材料層を作成した。ついで、ロールプレス(カレンダー)をもちいて、線圧980N/cm(100kgf/cm)の条件で圧密することによって正極とした。
(3)リチウム二次電池の製造
テトラエチレングルコールジアクリレート14重量部、ポリエチレンオキシドトリアクリレート7重量部、LiPF621重量部、重合開始剤1重量部、添加剤(酸無水物)14重量部、プロピレンカーボネート120重量部及びエチレンカーボネート120重量部を混合攪拌溶解し、電解質塗料とした。
【0067】
上記の正極ならびに負極に上記電解質塗料を塗布し、別に電解質塗料に浸した電極よりやや面積の広いポリエチレン製多孔質フィルムを両極間に挟んで積層し、それを90℃にて10分加熱することにより電解質を非流動化して、正極、負極及び非流動性電解質層を有する平板状の電池要素を得た。得られた電池要素に電流を取り出すタブを接続した。アルミニウム層の両面に合成樹脂層を形成してなる、形状可変性を有する薄型ラミネートフィルムを2枚用意し、これらの間に前記電池要素を配置した状態でケース部材の周縁部を真空シールして平板状のリチウム二次電池Aを得た。
(4)充電容量の測定
上記の製造方法により得たリチウム二次電池Aを、下記二つの充電モードで充電し、得られる充電容量から、炭素系活物質の単位重量当たりの充電容量を算出した。
【0068】
モード1
1Cにて4.2Vまで定電流充電を行なった後、C/10になるまで定電圧充電を行う。
モード2
1.5Cにて4.2Vまで定電流充電を行った後、C/10になるまで低電圧充電を行う。
[比較例1]
実施例1の(1)負極の製造において、負極材料層を一層構造としたこと、すなわち、一回の塗布・乾燥で負極材料層を形成し、またロールプレスの圧力を線圧7350N/cm(750kgf/cm)で行って平均空隙率を負極材料層中で一定としたこと以外は実施例1と同様にして、リチウム二次電池Bを製造した。この時の負極材料層の平均空隙率は0.4であった。
【0069】
このようにして得たリチウム二次電池Bを実施例1と同様にして充電し、炭素系活物質の単位重量あたりの充電容量を算出した。
リチウム二次電池A、Bの炭素系活物質の単位重量あたりの充電容量を表−1に示す。
【0070】
【表1】
Figure 0004136344
【0071】
表―1のリチウム二次電池A、Bについて、充電モード1の結果を比較してわかるように、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率と同一とするよりも、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることによって、炭素系活物質の単位重量当たりの充電容量を大きくすることができることがわかる。さらに、負極材料層中で平均空隙率が一定の場合は、充電電流を1.0Cから1.5Cと大きくすると充電容量が低下する一方で、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすれば、充電電流を1.0Cから1.5Cと大きくしても、充電容量は変わらないか又は大きくなっていくことがわかる。つまり、本発明のリチウム二次電池はより高い充電電流に対する充電にも適していることもわかる。
【0072】
【発明の効果】
本発明によれば、負極活物質の利用効率を上げることにより、高性能なリチウム二次電池、とりわけ充電容量を大きくして同じ材料を用いた場合においてもより高容量化が可能となるリチウム二次電池を得ることができる。さらに本発明によれば、充電電流が大きくなっても、充電容量が変わらないか又はさらに大きくすることが可能となるリチウム二次電池を得ることができる。
さらに、本発明は、高容量、高電流充電可能なリチウム二次電池の製造方法をも提供するものである。

Claims (6)

  1. 正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池において、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り返す度に、塗料の固形分濃度を順次低くした塗料を使用して、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくしたものであることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池において、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成した後、前記負極材料層の厚さ方向に圧密する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り繰り返す度に、前記圧密する際の圧力を順次弱くして、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくしたものであることを特徴とするリチウム二次電池。
  3. 前記A2の平均空隙率と前記A1の平均空隙率との差が0.001〜0.9の範囲にある請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
  4. 正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池の製造方法であって、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り返す度に、塗料の固形分濃度を順次低くした塗料を使用して、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  5. 正極と負極と電解質とを有し、前記負極が集電体上に負極活物質を含有する負極材料層が積層されてなるリチウム二次電池の製造方法であって、負極活物質を少なくとも含有する塗料を塗布・乾燥することによって負極材料層の一部を形成した後、前記負極材料層の厚さ方向に圧密する工程を有し、前記工程を複数回繰り返して集電体上に負極材料層を形成する場合に、前記工程を繰り繰り返す度に、前記圧密する際の圧力を順次弱くして、前記負極材料層を厚み方向に半分に分割し、集電体側の負極材料層をA1、集電体側とは反対側の負極材料層をA2としたときに、A2の平均空隙率をA1の平均空隙率よりも大きくすることを特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  6. 前記A2の平均空隙率と前記A1の平均空隙率との差が0.001〜0.9の範囲にある請求項4または5に記載のリチウム二次電池の製造方法。
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