JP4256643B2 - カートリッジ注射器、カートリッジ及び該注射器を備えた眼科用注射器セット - Google Patents
カートリッジ注射器、カートリッジ及び該注射器を備えた眼科用注射器セット Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、眼科治療剤を投与するために使用されるカートリッジ注射器、カートリッジ及び該注射器を備えた眼科用注射器セットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の眼科用シリンジは図8に示すように、シリンジ本体101の中に眼科治療剤が入った薬液容器103が収納されており、シリンジ本体101の基端側にはプランジャ105が接続されている。プランジャ105の先端にはピストン107が形成されており、該ピストン107は薬液容器103の基端側において薬液容器103を密閉している。また薬液容器103の先端にはゴム栓109が設けられており、眼科用シリンジ100を使用するときにゴム栓109に針を刺すことができるようになっている。
【0003】
このように従来の眼科用シリンジは、シリンジ本体101、薬液容器103及びプランジャ105が一体となったディスポーザブルタイプであるため、使用後廃棄するに際しても一体で廃棄しなければならず、大量の廃棄物が出る原因となっていた。
【0004】
また眼科用シリンジは微生物等からの汚染を防ぐためにシリンジごとブリスターケースに入れて密封包装されており、更にブリスターケース及び/またはシリンジを保護するために外箱で包装されていた。ブリスターケースはプラスチック製で比較的小さなものでも横が約16cm、縦が約4.5cm、高さが約3cmの大きさがある。また外箱は紙製で更に大きく、比較的小さなものでも横が約16.5cm、縦が約5cm、高さが約3.5cmの大きさがある。
【0005】
従って包装された状態のシリンジは非常に大きくなってしまい、これを多数ストックしておくためには大きな保管スペースを要していた。また使用済の眼科用シリンジにブリスターケース、外箱を含めた重量は約28.5gであり、このような包装資材の存在も廃棄物の増加の原因となっていた。
【0006】
前記保管スペースの問題は一般的に熱や光で分解されやすいため、冷蔵保存されることの多い眼科治療剤において顕著である。例えば高分子量のヒアルロン酸ナトリウムを有効成分とする水溶液を眼科治療剤として使用した眼科用シリンジにあっては、保存温度が高いと粘度の低下が見られるため冷蔵保存することが好ましいが、外箱が大きいと薬剤保管用冷蔵庫の中で大きなスペースを占有することになってしまう。
【0007】
特に白内障手術に用いる粘弾性物質を充填したシリンジにあっては、白内障手術の技術向上に伴い、手術症例の多い病院では1日に15眼もの白内障手術が執刀されている。このような病院では前記のように大きく、嵩張る外箱に収納されたシリンジを15〜30箱程度常備しておかなくてはならず、薬剤保管用冷蔵庫内の保管スペースの占有の問題は深刻になっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は前記従来の技術において述べた発明の背景に鑑みなされたものであり、眼科治療剤の入ったカートリッジを取り替えるだけで、使用後はカートリッジのみを廃棄し、注射器自体は繰り返し使用可能なカートリッジ注射器、カートリッジ及び該注射器を備えた眼科用注射器セットを提供し、その提供を通じて廃棄物の減少と眼科治療剤の保管スペースの確保を図ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
即ち本願発明のカートリッジ注射器は、眼科治療剤が充填されたフランジ付きカートリッジを使用するカートリッジ式の注射器において、前記注射器はカートリッジ収納部を有する注射器本体と、該注射器本体の先端側において接続可能に設けられる針保持部材と、注射器本体の基端側において摺動可能に設けられ、先端にプッシャを有するプランジャとを備えており、前記注射器本体または注射器本体とプランジャとの連結部には、カートリッジを注射器本体に装填できるように一時的にプランジャの位置を変更できるワンタッチ装填機構が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
前記カートリッジ注射器において、前記ワンタッチ装填機構は注射器本体とプランジャとをナックルを介して折り曲げ可能に連結させることによって構成されており、プランジャを折り曲げた姿勢にすることで前記カートリッジを装填できるようにしてもよい。
【0011】
また前記カートリッジ注射器において、前記プランジャの周囲には前記注射器本体に対して摺動可能で注射器の先端方向へ付勢されたカートリッジ保持部が設けられており、前記カートリッジ収納部内に前記カートリッジが装填された状態で前記カートリッジ保持部が前記カートリッジの基端側を押して保持可能であってもよい。
また前記ナックルの先端にはカム面が形成され、前記ナックルは前記カム面が注射器本体の基端側に形成されたカムスライド面に沿ってスライドすることで回動可能であり、前記プランジャを一杯に引いた状態で前記カム面の形成された側へ折り曲げる動作をしたときに、前記カム面が前記カムスライド面に対してスライドすることでプランジャを折り曲げた姿勢にすることが可能であってもよい。
【0012】
また前記プランジャは一方向のみに折り曲げた姿勢にすることが可能とすることもできる。
また前記注射器本体の基端側にはフランジ支持部が形成されており、前記カートリッジを前記カートリッジ収納部内に装填する際に、前記カートリッジのフランジが前記フランジ支持部に当接して、カートリッジのそれ以上の挿入が規制されるようにしてもよい。
【0013】
また前記注射器本体の基端側にはその長手方向へ突出する対向する2つの係止爪が形成されており、前記カートリッジのフランジに形成されたカートリッジの向きを規制する2つの係止面が前記係止爪の内側に対向するように位置決めされたときに前記カートリッジの装填が完了し、且つ該装填完了時に前記カートリッジの係止面が前記係止爪の内側に係合することでカートリッジの長手方向軸の周囲での自由な回転が規制されるようにしてもよい。
また前記カートリッジが前記カートリッジ収納部内に装填された状態で、前記プランジャを前記注射器本体と直線的になるように回動させたとき、前記カートリッジ保持部が注射器本体側へ付勢されることにより、前記カートリッジのフランジが前記カートリッジ保持部と前記フランジ支持部との間に保持されるようにしてもよい。
【0014】
また前記カートリッジ注射器において、前記ワンタッチ装填機構は、プランジャを保持するプランジャホルダを注射器本体に対して長手軸線の周囲で僅かに回転することによって分解できる構造であってもよい。
また前記カートリッジ注射器において、前記ワンタッチ装填機構は、プランジャを保持するプランジャホルダを注射器本体に対して長手軸線と直交する方向へスライドする構造であってもよい。
【0015】
また本発明は、前記した本発明のカートリッジ注射器と組み合わせて使用するための、眼科治療剤が充填されたカートリッジにも関する。
また本発明の眼科用注射器セットは、前記いずれかに記載のカートリッジ注射器と、眼科治療剤が充填されたカートリッジとを備えることを特徴とするものである。
また前記眼科用注射器セットにおいて、カートリッジに充填される眼科治療剤は粘弾性物質であってもよい。
【0016】
また前記眼科用注射器セットにおいて、カートリッジに充填される眼科治療剤はヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする水溶液であってもよい。
また前記眼科用注射器セットにおいて、カートリッジに充填される眼科治療剤はヒアルロン酸ナトリウムを有効成分とする水溶液であってもよい。
また前記眼科用注射器セットにおいて、カートリッジの容量は1.0mL〜20.0mLであってもよい。
【0017】
また前記眼科用注射器セットにおいて、前記プランジャの先端に設けられるプッシャと、前記カートリッジの基端側に設けられるピストン栓との間には両者を一体に結合する一体結合構造が設けられていてもよい。
また前記眼科用注射器セットにおいて、前記一体結合構造はプッシャに対して設けられる押し込み部と、ピストン栓に形成された挿入穴とによって構成されていてもよい。また、前記一体結合構造はプッシャに対して設けられる雄ねじが形成される螺合凸部と、ピストン栓に形成され雌ねじが形成された螺合凹部によって構成されていてもよい。
また前記眼科用注射器セットにおいて、前記一体結合構造はプッシャに対して設けられる雄ねじが形成される螺合凸部と、ピストン栓に形成され雌ねじが形成された螺合凹部によって構成されていてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明のカートリッジ注射器及び該注射器を備えた眼科用注射器セットを示す分解斜視図、図2は同上カートリッジを装着するときの状態を示す側面図、図3(a)は同上カートリッジを装着した後の状態を示す平面図、図3(b)はカートリッジを装着するときの様子を注射器の長手方向から見た平面図である。
【0019】
カートリッジ注射器1は注射器本体3と、該注射器本体3の先端側に設けられる針保持部材5と、注射器本体3の基端側に設けられるプランジャ7とを備えることによって基本的に構成されている。なお、本明細書ではカートリッジ注射器1の針が設けられる側を先端側とし、その反対側を基端側とする。
【0020】
注射器本体3は円筒状の部材で、内側にはカートリッジ9の外径より僅かに大きな内径を有するカートリッジ収納部11が形成されている。注射器本体3の側周面には残量確認窓13が設けられており、残量確認窓13の近傍には眼科治療剤のおおよその残量を知るための目盛14が付されている。残量確認窓13はカートリッジ9内に充填された眼科治療剤の残量等を確認するために設けられるものであって、その形状、個数は種々選択可能である。因みに残量確認窓13の数は注射器本体の強度、視認性などから考えると1乃至4個程度が好ましいが、図1〜3に示す実施の形態では長円形状の残量確認窓13を対向する面に3個設けている。
【0021】
注射器本体3の基端側にはフランジ状の把持部15が設けられている。把持部15はカートリッジ注射器1を使用する場合、例えば人差し指と中指とをここに掛け、注射器本体3の保持と、後述するプランジャ7の押し込み動作を助ける目的で設けられている。従ってその形状は指を掛けやすいものであれば種々選択可能であるが、正面視三角形以上の多角形状であることが好ましい。因みに図1〜3に示す実施の形態では、机の上に置いたときの安定性を考慮し、正面視六角形状の把持部15としている。また本例ではこのような把持部15を支点として、プランジャ7側の重量を重めにすることにより、眼内に挿入される針先端部が机の表面や滅菌トレーの底等の他物と接触することを防止している。これにより針先端部に菌や異物が付着することを防止できるため、術後の炎症(感染症など)の危険性を軽減することができる。また従来のこの種の眼科用注射器(眼科用シリンジ)で使用していた、針先端部を机の表面や滅菌トレーの底等に接触させないための置き台(滅菌トレーの壁部、ピンセットなど)が不要となる。
【0022】
把持部15より更に基端側の部位は後述するプランジャ7との連結部となっている。この連結部にはカートリッジ9を簡単な操作で注射器本体3内に装填できるワンタッチ装填機構が設けられている。図1〜3に示す実施の形態にあっては、ワンタッチ装填機構として注射器本体3とプランジャ7とをナックル17によって連結する機構が採用されており、これに伴い当該連結部にはナックル17の回動軸となる固定ビス19を取り付けるためのネジ穴21が2個設けられている。
【0023】
また注射器本体3の基端側の端面には、2つの係止爪23が長手方向に突出して対向するように設けられ、該係止爪23の間には係止爪23より一段低い位置にフランジ支持部26が形成されている。係止爪23は、カートリッジ9の基端側端部に形成されたフランジ部25の直線状にカットされた2つの対向する係止面27と係合することで、カートリッジ9がその長手方向軸の周囲で回転することを防止する役割を担っている。またフランジ支持部26は、カートリッジの装填時にカートリッジのフランジ部25が当接して、カートリッジのそれ以上の挿入を規制する作用をなす。
【0024】
また係止面27が形成されたフランジ部25が2つの係止爪23の間に自然に案内されるように、図4(a)(b)に示すように係止爪23を斜めに形成した案内縁48の形態としてもよい。これにより、カートリッジ9のフランジ部25が案内縁48に当接した後、図4(b)に示すように自重によりカートリッジ9が斜めに傾斜した方向に自然に回転して、フランジ部25が2つの係止爪23の間に自然に嵌まり込むようになる。また係止爪23を斜めに形成する代わりに、カートリッジ9にテーパを付けるようにしてもよい。
【0025】
針保持部材5は眼科治療剤を直接投与する針29、及びこの針29を保持しカートリッジ9の先端側の小径部31に嵌まるソケット部33を有している。ソケット部33の基端側にはフランジ部34が形成されており、該フランジ部34は注射器本体3の先端側内周面に刻設された雌ネジに対して螺合接続する構造となっている。尚、ソケット部33を注射器本体3の先端側内側及び/またはカートリッジ9の先端側の小径部31に圧入する形態を採用しても構わない。
【0026】
プランジャ7は丸棒状の軸体の基端側端部にハンドル35、先端側端部にプッシャ37を形成することによって形成されている。ハンドル35はカートリッジ注射器1を使用する場合、例えば親指をここに掛け、前記把持部15との挟持作用によってカートリッジ注射器1を保持すると共に、プッシャ37の押し込み動作を実際に行う部分である。従ってその形状は押し込みに適したものであれば種々選択可能である。因みに図1〜3に示す実施の形態では親指で押し込むのに適するように中心を幾分窪ませた正面視円形状のハンドル35を採用した。
【0027】
プッシャ37はカートリッジ9の当初基端側に位置しているピストン栓39に当接し、ピストン栓39を先端側に直接押し込む作用をする部分である。因みに図1〜3に示す実施の形態では軸体より径を大きくした円板状の形状とした。またプッシャ37の先端側端面には押し込み部41が設けられている。この押し込み部41はピストン栓39の基端側端面に形成された挿入穴43に挿入されることでピストン栓39とプッシャ37とを一体に結合し、同時にピストン栓39が移動できるようにする役割を担っている。なお、このようにピストン栓39とプッシャ37とを一体に結合する機構を本明細書において一体結合構造と定義する。
【0028】
注射器本体3とプランジャ7との連結部には上述したようにワンタッチ装填機構が設けられている。図1〜3に示す実施の形態ではナックル17によって注射器本体3とプランジャ7とを屈曲自在に連結する機構が採用されている。ナックル17は円筒状のホルダ部45と、ホルダ部45の先端側からベロ状に延びる2個の回動翼片47とから構成されている。そして回動翼片47の外側から固定ビス19を入れ、回動翼片47の内側に対して、凸側が外側へ向くように設けられた凸型のワッシャ18を貫通後に、固定ビス19がネジ穴21に螺合することにより、ナックル17は注射器本体3に対して回動可能となっている。なお、ワッシャ18は回動翼片47の回動を滑らかにすると共に、回動翼片47の回動時に生じる摩擦熱の発生を抑制し、部材どうしの融着を防ぐ作用をなす。
【0029】
回動翼片47の先端の一方の側には円弧状のカム面24が形成されており、このカム面24は注射器本体3の基端側に形成されたカムスライド面28上でスライドすることにより、ナックル17、即ちプランジャ7が回動できるようになっている。回動翼片47の先端の他方の側にはカム面24は形成されておらず、従ってカム面24の形成されている側のみにプランジャ7が回動可能である。このようにプランジャ7が一方向のみに折り曲げ可能であることにより、両方向に折り曲げ可能な構成に比較してプランジャ7を押し込むときの安定性が優れるようになる。
【0030】
またホルダ部45の内部には、圧縮コイルスプリング49と、この圧縮コイルスプリング49によって先端側に突出傾向が付与されているカートリッジ保持部51の基端側の一部とが収容される構造となっている。
カートリッジ保持部51は中心にプランジャ7の軸体と摺動自在に嵌合する貫通穴を有し、外径が多段状に形成されたスリーブ状の部材である。基端側に位置する小径部はホルダ部45の基端側端面に形成されている嵌合穴53に対して摺動自在に内嵌めされ、先端側に位置する大径部は直接カートリッジ9におけるフランジ部25の端面に当接し、押圧作用をすると共に内部に形成したプッシャ受穴55によってプッシャ37の基端側端面と当接しプランジャ7からの脱落を防止している。また中間に位置する中径部は前記圧縮コイルスプリング49の台座としての機能を有している。
【0031】
このようにして構成されるナックル17、圧縮コイルスプリング49、カートリッジ保持部51は図1〜3に示すように注射器本体3及びプランジャ7に対して組み付けられ、固定ビス19によって回動自在ないしは摺動自在に取り付けられる。
【0032】
また針保持部材5を除くカートリッジ注射器1の前記構成部材、具体的には注射器本体3、プランジャ7及びワンタッチ装填機構を構成するナックル17、カートリッジ保持部51等の諸部材は、繰り返して使用することのできる頑強な材料によって構成されている。一例としてチタン、ステンレス、アルミニウム等の金属材料もしくはこれらを主成分とする合金が適用できる。特に耐薬品性、耐熱性、軽量化、強度等に優れるチタンが好適な材料ということができる。勿論これらと同等の性能を有する他の金属材料、合成樹脂等の非金属材料があれば当該材料を使用することも可能である。
【0033】
次に本発明のカートリッジ注射器1に装填され、本発明の眼科用注射器セットの構成要素であるカートリッジ9について説明する。カートリッジ9は、図1〜3に示すように円筒状のカートリッジ本体57における先端側の部位を幾分絞って小径部31とすると共に基端側端部に上述の係止面27付きフランジ部25を形成し、更に眼科治療剤充填後、眼科治療剤を押し出すピストンとしての作用を果たすピストン栓39によってカートリッジ本体57の基端側開放面を閉塞することによって構成されている。なお、カートリッジ本体57の材料としては視認性に優れるガラス、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系プラスチック、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートなどのプラスチック等が適用でき、内容物の安定性を考慮すればガラスを使用することが好ましい。また符号59で示すのは小径部31の中心に形成されている小孔を塞ぐゴム栓である。なお、先端部位を絞った小径部を有するカートリッジを使用していることにより、従来技術として挙げている図8のような逆針形状の針の設置が不要となり、装置が簡便になると共に、逆針をゴム栓に刺した際、薬剤内へのゴムの破片の混入を防ぐことができる。
【0034】
カートリッジ9の容量は、1.0mL〜20.0mLであり、カートリッジ9内に充填可能な眼科治療剤の容量としては0.1mL〜20.0mLである。因みに眼科治療剤として、ヒアルロン酸ナトリウムを有効成分とする水溶液が充填されている場合には、手術において使用される分量及びカートリッジ9への充填効率の点から充填される眼科治療剤の容量として0.4mL〜2.0mLの範囲内とすることが好ましい。
【0035】
本発明で使用する眼科治療剤としては、粘弾性物質、灌流液、散瞳剤、縮瞳剤、抗生剤、抗菌剤、抗炎症剤、局所麻酔剤等が挙げられる。粘弾性物質としてはヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、キチン、キトサン、コラーゲン、セルロース誘導体、または前記成分を組み合わせた混合物等を有効成分とする水溶液が挙げられる。灌流液としては等張化した水溶液(ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの1価及び/または2価イオンを含み、pHは6.4〜8.2であり、グルタチオン、ブドウ糖を含有するものであっても良い)等が挙げられる。
【0036】
散瞳剤としてはエビネフリンまたは同効薬(誘導体を含む)等が挙げられる。また縮瞳剤としてはアセチルコリンまたは同効薬(誘導体、コリンエステラーゼ阻害剤を含む)等が挙げられる。抗生剤としてはアミノ配糖体、βラクタム系等の抗生物質が挙げられる。抗菌剤としてはキノロン系合成抗菌剤等が挙げられる。更に抗炎症剤としてはステロイド及び非ステロイド系抗炎症剤等が挙げられる。更に局所麻酔剤としてはリドカインまたは同効薬(誘導体を含む)等が挙げられる。
【0037】
このような眼科治療剤は、例えば、ヒトを含む哺乳動物の眼科疾患、特に白内障等の治療及び/または予防のための薬剤として、疾患部位に局所的に投与して、あるいは眼内レンズを挿入する場合の眼科手術補助剤として使用することが可能である。
前記ヒアルロン酸の塩としては、通常、ナトリウム塩を用いるが、カリウム塩等を用いてもよい。本発明で用いることができるヒアルロン酸またはその塩としては、その分子量が50万〜800万であるものが好ましく、50万〜390万であるものが更に好ましい。
【0038】
また内皮保護効果があるものとしては分子量が50万〜120万、前房保持に使用する場合には分子量が190万〜390万の範囲内にあるものが好ましい。更に手術時の操作性の点で、分子量が150万〜390万の範囲内にあるものを好む術者もいる等、前記の目的等に応じて特長を異にする分子量の使い分けが行われている。なお、本明細書において使用する分子量は粘度平均分子量のことを意味するものとする。
【0039】
また、前記ヒアルロン酸またはその塩の濃度としては、200〜5,000μg/mLの範囲内であることが好ましい。因みにヒアルロン酸またはその塩の濃度が200μg/mL未満または5,000μg/mLを超えると角膜上皮層の伸展促進作用が低下するので好ましくない。また、眼科用液体製剤の場合、5,000μg/mLを超えると取扱い及び投与(適用)が困難となるので好ましくない。
また眼科治療剤としてヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする水溶液を使用した場合にはヒアルロン酸以外の他の添加物、例えば、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素一カリウムなどの塩類やコンドロイチン硫酸やグリチルリチンなどの抗炎症剤等を適宜添加してもよい。
【0040】
また本発明で用いるヒアルロン酸またはその塩を用いた眼科治療剤を眼科用液体製剤として臨床に適用するに際しては、リン酸塩緩衝化生理食塩液に分子量50万〜800万、好ましくは50万〜390万のヒアルロン酸ナトリウムを200〜5,000μg/mLの濃度で溶解したものを一回当たり、0.1〜2mL投与する。なお、ヒアルロン酸の安全性(毒性・非炎症性)については、既に数多くの実験がなされており、その安全性が確認されている。例えば、眼毒性については、ウサギを用いた実験により刺激性、抗原性がないことが確認されている(上野則夫他:日本眼科紀要35,584(1984)及び同35,803(1984))。
【0041】
本発明のカートリッジ注射器1及び該注射器を備えた眼科用注射器セットは以上述べたような構造を備えるものであり、以下その作用について説明する。まずハンドル35を引いてプランジャ7を最も基端側の位置まで引く。この状態でプランジャ7をカム面24の形成された側へ折り曲げる動作を行うと、カム面24がカムスライド面28上でスライドすることによりプランジャ7が回動可能となる。
【0042】
またカートリッジ注射器1とは別にカートリッジ9を用意しておき、カートリッジ9を注射器本体3の基端側開放端から挿入し、カートリッジ収納部11内に装填する。この際カートリッジ9におけるフランジ部25に形成されている係止面27を注射器本体3に形成された係止爪23の内側に係合させるように位置合わせする。
【0043】
そしてプランジャ7を逆方向に回動させ、注射器本体3に対して再び直線状になるように位置させる。プランジャ7が直線状に位置すると圧縮コイルスプリング49の付勢力によってカートリッジ保持部51が先端側に移動するようになり、カートリッジ9のフランジ部25がカートリッジ保持部51とフランジ支持部26との間に保持されるようになる。このようにして、カートリッジ9の注射器本体3に対する固定が図られる。
【0044】
次にプランジャ7を軸線方向に押し込むか、または軸線を中心に所定の方向に回転させ、プッシャ37に設けられている押し込み部41をカートリッジ9におけるピストン栓39に形成されている挿入穴43に対して挿入し、ピストン栓39とプランジャ7とが一体に移動できるように結合する。そしてカートリッジ9の先端に嵌めておいたゴム栓59を取り外し、注射器本体3の先端側から針保持部材5をカートリッジ9における小径部31に取り付けることによりカートリッジ注射器1は図3(a)に示すように使用可能状態となる。
【0045】
そして使用に際しては注射器本体3における把持部15に対して例えば人差し指と中指を掛け、一方プランジャ7におけるハンドル35に対して例えば親指を掛けて先端側に向けてプランジャ7を押し込む。プランジャ7が押し込まれるとプッシャ37に押し込み部41及び挿入穴43を介して固定されたピストン栓39も先端側に向けて移動するようになり、カートリッジ本体57内に充填されていた眼科治療剤は針29を通って外部に押し出され、眼科治療剤の投与に供される。
【0046】
なお、プランジャ7を折り曲げる際、プランジャ7を最も基端側の位置まで引くようにしたのはプランジャ7がある程度押し込まれた状態ではプッシャ37の周面が注射器本体3の内周面、あるいはカートリッジ本体57の内周面に当接するため、プランジャ7が回動できない構造になっているからである。
因みにこのような構造とすることにより使用中、術者の意思に反して不意にプランジャ7が折れ曲がり、カートリッジ9が脱落してしまうという事故が防止されている。
【0047】
次に本発明の他の実施の形態について説明する。図5は注射器本体3とプランジャ7との接続を基本的に解除しないで注射器本体3に形成されている比較的大きめの受入開口部61からカートリッジ9をカートリッジ収納部11内に装填できるようにした実施の形態である。このような構成を採用しても簡単な操作でカートリッジ9をカートリッジ収納部11内に収納できる点で同じであり、本明細書において使用するワンタッチ装填機構に含まれる。
【0048】
なお、図5に示す実施の形態では把持部15を注射器本体3と別体に構成しているが、前記図1〜3に示す実施の形態のように注射器本体3に対して固定した形態とすることも可能である。
【0049】
しかし図5に示す実施の形態の場合には構造上注射器本体3が長くなってしまう傾向があり、これを改善したのが前記図1〜3に示す実施の形態であり、以下述べる図6に示す実施の形態である。
【0050】
即ち、図6はワンタッチ装填機構の更に他の実施の形態を示すものであって、このうち図6(a)に示すものは注射器本体3とプランジャ7とを簡単な操作で取り外せるようにした分解式の実施の形態である。具体的には注射器本体3の基端部に係合爪63を設け、この係合爪63と係合する係合溝65をプランジャホルダ67に対して設けることでプランジャホルダ67を少し回すだけでプランジャ7を注射器本体3から取り外せるようにしたものである。
【0051】
また図6(b)に示すものは注射器本体3に対してプランジャ7を軸線方向と直交する方向に簡単な操作でずらすことができるスライド式の実施の形態である。具体的には注射器本体3側にガイドレール69、プランジャ7を保持するプランジャホルダ71側に前記ガイドレール69と係合するスライダ73を設けることでプランジャ7を注射器本体3の側方にずらすことができるようにしたものである。
【0052】
また一体結合構造の他の実施の形態として図7に示す実施の形態が挙げられる。このものはプッシャ37に対して雄ねじが形成された螺合凸部75を設け、一方、ピストン栓39に対して雌ねじが形成された螺合凹部77を形成したものである。因みにこのような構成とした場合にはプランジャ7のねじ込み動作により、プランジャ7とピストン栓39とがより強固に結合される。
【0053】
【発明の効果】
請求項1乃至10に記載の発明によれば、カートリッジ注射器を頻回使用できるようになるため、廃棄物がカートリッジのみとなり、従来のディスポーザブルタイプのシリンジのときよりも廃棄物を相当量減らすことができる。またワンタッチ装填機構により、カートリッジ注射器へのカートリッジの装填を簡単な操作で短時間で行うことができる。更にまた微生物等からの汚染を防ぐためのブリスターケースでの密封包装はカートリッジのみを対象とすれば良いから、ブリスターケース及び外箱の小型化が図れ、薬剤保管用冷蔵庫内の保管スペースの占有の問題も回避される。従って、廃棄物の減量ならびに保管スペースの減少には、眼科治療薬を充填したカートリッジのみの供給が不可欠となる。
因みに本発明では従前のものに比べて、ブリスターケース及び外箱の容積、並びに廃棄物の重量について減少の効果が確認された。
【0054】
また請求項3に記載の発明によれば、カートリッジがカートリッジ収納部内でしっかりと保持されるから、カートリッジ収納部からカートリッジが外れる危険性がない。
また請求項4に記載の発明によれば、プランジャの折り曲げ動作によりカートリッジの挿脱動作を容易に行うことができる。
【0055】
また請求項5に記載の発明によれば、両方向に折り曲げ可能な構成に比較してプランジャ7を押し込むときの安定性が優れるようになる。
また請求項6に記載の発明によれば、カートリッジをカートリッジ収納部内に装填する際に、カートリッジの装填深さを確実に規制することができる。
【0056】
また請求項7に記載の発明によれば、カートリッジの長手軸線の周囲での回転が防止されるため、プランジャの押し込み時にカートリッジが移動せず、薬剤を安定して注入することができる。
また請求項8に記載の発明によれば、カートリッジのフランジがカートリッジ保持部とフランジ支持部との間に保持されるため、カートリッジ収納部内でカートリッジがぐらつきことを防止することができる。
【0057】
また請求項12に記載の発明によれば、前記の優れた効果が眼科用注射器セットにも実現できる。
また請求項13〜15に記載の発明によれば、その効能、安全性から白内障等の眼科疾患の治療や予防等に広く使用することが可能となる。
【0058】
また請求項16に記載の発明によれば、手術において使用される眼科治療薬の分量に適するようにカートリッジを選択することができ、一回で適量の眼科治療薬を使用できるようになる。
また請求項17、18または19に記載の発明によれば、プランジャの動きがそのままピストン栓の動きとして現れるからプランジャの操作性及びピストン栓の追従性が向上し、微量な眼科治療薬の投与にも対応できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカートリッジ注射器及び該注射器を備えた眼科用注射器セットを示す分解斜視図である。
【図2】本発明のカートリッジ注射器にカートリッジを装填する時の状態を示す側面図である。
【図3】(a)はカートリッジを装着した後の状態を示す平面図、(b)はカートリッジを装着するときの様子を注射器の長手方向から見た平面図である。
【図4】(a)はカートリッジのフランジが案内縁に案内されて自動的に2つの係止爪の間に入る直前の様子を示す斜視図であり、(b)はカートリッジのフランジの係止面が係止爪の間に入り込んだ状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す分解斜視図である。
【図6】ワンタッチ装填機構の他の2つの実施の形態を示す平面図である。
【図7】一体結合構造の他の実施の形態を示す断面図である。
【図8】(a)は従来のディスポーザブルタイプの注射器における使用前の状態を示す側面図、(b)は従来のディスポーザブルタイプの注射器における使用後の状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 カートリッジ注射器
3 注射器本体
5 針保持部材
7 プランジャ
9 カートリッジ
11 カートリッジ収納部
13 残量確認窓
14 目盛
15 把持部
17 ナックル
18 ワッシャ
19 固定ビス
21 ネジ穴
23 係止爪
24 カム面
25 フランジ部
26 フランジ支持部
27 係止面
28 カムスライド面
29 針
31 小径部
33 ソケット部
34 フランジ部
35 ハンドル
37 プッシャ
39 ピストン栓
41 押し込み部
43 挿入穴
45 ホルダ部
47 回動翼片
48 案内縁
49 圧縮コイルスプリング
51 カートリッジ保持部
53 嵌合穴
55 プッシャ受穴
57 カートリッジ本体
59 ゴム栓
61 受入開口部
63 係合爪
65 係合溝
67 プランジャホルダ
69 ガイドレール
71 プランジャホルダ
73 スライダ
75 螺合凸部
77 螺合凹部
100 眼科用シリンジ
101 シリンジ本体
103 薬液容器
105 プランジャ
107 ピストン
109 ゴム栓
Claims (14)
- 眼科治療剤が充填されたフランジ付きカートリッジを使用するカートリッジ式の注射器において、前記注射器はカートリッジ収納部を有する注射器本体と、該注射器本体の先端側において接続可能に設けられる針保持部材と、注射器本体の基端側において摺動可能に設けられ、先端にプッシャを有するプランジャとを備えており、前記注射器本体または注射器本体とプランジャとの連結部には、カートリッジを注射器本体に装填できるように一時的にプランジャの位置を変更できるワンタッチ装填機構が設けられていることを特徴とするカートリッジ注射器において、前記ワンタッチ装填機構は注射器本体とプランジャとをナックルを介して折り曲げ可能に連結させることによって構成されており、プランジャを折り曲げた姿勢にすることで前記カートリッジを装填でき、前記ナックルの先端にはカム面が形成され、前記ナックルは前記カム面が注射器本体の基端側に形成されたカムスライド面に沿ってスライドすることで回動可能であり、前記プランジャを一杯に引いた状態で前記カム面の形成された側へ折り曲げる動作をしたときに、前記カム面が前記カムスライド面に対してスライドすることでプランジャを折り曲げた姿勢にすることが可能であることを特徴とするカートリッジ注射器。
- 請求項1において、前記プランジャは一方向のみに折り曲げた姿勢にすることが可能であることを特徴とするカートリッジ注射器。
- 請求項1または2において、前記注射器本体の基端側にはフランジ支持部が形成されており、前記カートリッジを前記カートリッジ収納部内に装填する際に、前記カートリッジのフランジが前記フランジ支持部に当接して、カートリッジのそれ以上の挿入が規制されることを特徴とするカートリッジ注射器。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、前記注射器本体の基端側にはその長手方向へ突出する対向する2つの係止爪が形成されており、前記カートリッジのフランジに形成されたカートリッジの向きを規制する2つの係止面が前記係止爪の内側に対向するように位置決めされたときに前記カートリッジの装填が完了し、且つ該装填完了時に前記カートリッジの係止面が前記係止爪の内側に係合することでカートリッジの長手方向軸の周囲での自由な回転が規制されることを特徴とするカートリッジ注射器。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記カートリッジが前記カートリッジ収納部内に装填された状態で、前記プランジャを前記注射器本体と直線的になるように回動させたとき、前記カートリッジ保持部が注射器本体側へ付勢されることにより、前記カートリッジのフランジが前記カートリッジ保持部と前記フランジ支持部との間に保持されることを特徴とするカートリッジ注射器。
- 請求項1において、前記ワンタッチ装填機構は、プランジャを保持するプランジャホルダを注射器本体に対して長手軸線と直交する方向へスライドする構造であることを特徴とするカートリッジ注射器。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のカートリッジ注射器と、眼科治療剤が充填されたカートリッジとを備えることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項7において、前記カートリッジに充填される眼科治療剤は粘弾性物質であることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項7において、前記カートリッジに充填される眼科治療剤はヒアルロン酸またはその塩を有効成分とする水溶液であることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項7において、前記カートリッジに充填される眼科治療剤はヒアルロン酸ナトリウムを有効成分とする水溶液であることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項7〜10のいずれかにおいて、前記カートリッジの容量は1.0mL〜20.0mLであることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項7〜11のいずれかにおいて、前記プランジャの先端に設けられるプッシャと、前記カートリッジの基端側に設けられるピストン栓との間には両者を一体に結合する一体結合構造が設けられていることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項12において、前記一体結合構造はプッシャに対して設けられる押し込み部と、ピストン栓に形成された挿入穴とによって構成されていることを特徴とする眼科用注射器セット。
- 請求項12において、前記一体結合構造はプッシャに対して設けられる雄ねじが形成される螺合凸部と、ピストン栓に形成され雌ねじが形成された螺合凹部によって構成されていることを特徴とする眼科用注射器セット。
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