JP4314321B2 - Tfpxジクロライドの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の分野】
本発明は化学合成の分野の発明である。より特定的には、本発明は、1,4−ビス−(クロロジフルオロメチル)ベンゼン(以下、TFPXジクロライドと言う)の製造方法に関する。
【0002】
【発明の背景】
誘電性薄膜は、エレクトロニクス産業及びコーティング産業の両方を通じて広く使用されている。それらの比較的高い誘電率及び融点のために、分子構造:
【0003】
【化1】
Figure 0004314321
【0004】
(Xは、一般的に水素原子又はフッ素原子である)
を有するパリレンポリマーから誘電性層を形成することにおける関心が増している。
パリレンポリマーは、通常、化学蒸着法により形成される。一つのそのような方法は、分子構造:
【0005】
【化2】
Figure 0004314321
【0006】
を有するパリレンダイマーを気化させ、次いでそれらダイマー結合を開裂させてパリレンモノマーを生じさせるGorham法である。それらパリレンモノマーを表面上に堆積させ、続いて重合させる。パリレンポリマーの誘電率及び融解温度は、通常、そのポリマー内のフッ素原子の数が増加するにつれて増加するので、分子構造:
【0007】
【化3】
Figure 0004314321
【0008】
を有するオクタフルオロ−[2,2]パラシクロファン(以下、AF4)をパリレンダイマーとして使用することが望ましい。
次の構造:
【0009】
【化4】
Figure 0004314321
【0010】
を有するTFPXジクロライドは、AF4の製造のためのひとつの好ましい出発材料である。これまで、TFPXジクロライドの唯一有用な製造法は、次の構造:
【0011】
【化5】
Figure 0004314321
【0012】
を有するα,α,α’,α’−テトラフルオロ−p−キシレン(以下、TFPX)の高収率の光塩素化を経ていた。しかし、残念ながら、全ての現在利用できるTFPXの製造方法は、費用がかかり及び/又は望ましくない量の有害廃棄物をもたらす。そのうえ、TFPXの既知の生産方法は、容易に工業スケールの方法に適合させることができない。
TFPXを合成するための慣用的な方法は、分子構造:
【0013】
【化6】
Figure 0004314321
【0014】
を有するテレフタルアルデヒドのフッ素化を包含する。SF4及びMoF6は、テレフタルアルデヒドのフッ素化に最も広く使用される試薬である。しかし、SF4及びMoF6は高価であり、この合成スキームの工業的有用性を減少させるものである。そのうえ、SF4及びMoF6は有毒な材料であるので、多量の有害廃棄物がこれらの試薬を用いてもたらされる。
ロシア特許第2,032,654号は、分子構造:
【0015】
【化7】
Figure 0004314321
【0016】
を有するα,α,α’,α’−テトラブロモ−p−キシレン(以下、TBPX)をSbF3と反応させてTFPXを生産するところの別のTFPX合成方法を開示している。この方法は、TBPXのベンジル位のハロゲン原子をフッ素原子で置換するための十分に確立された求電子触媒SN1反応機構を用いる。この方法に従えば、SbF3中のアンチモン原子は、TBPXからの臭素を分離させてカルボカチオンを形成する求電子としてふるまう。そのカルボカチオンは、続いてフッ素と反応してTFPXを形成する。この反応は、比較的に穏やかな反応条件下で行う場合、よい収率を提供することが報告されているが、アンチモン含有化合物はきわめて毒性であり、かつ高価である。そのうえ、SbF3は触媒量ではなく化学量論量で使用され、多量の有害廃棄物材料をもたらす。それゆえ、TFPXを合成するこの方法は工業的用途が限定されている。
【0017】
結局、TFPXは、求核性フッ素分子の非フッ素化テトラハロ−p−キシレンとの反応によってSN2型求核置換反応を経て合成されている。そのような合成においては、非フッ素化テトラハロ−p−キシレンのベンジル位のハロゲン原子は、カルボカチオン中間体を形成することなく求核性フッ素分子中のフッ素原子により置換される。そのような反応の例は、α,α,α’,α’−テトラクロロ−p−キシレンのCsF又はKFとの反応を含む。この手順は、コストが低く有害廃棄物の生成も少ないが、工業スケールで行うのが非常に難しいことが最近見出された。
【0018】
TFPXジクロライドの優れた前駆体であるTFPXを合成するための種々の方法にもかかわらず、TFPXジクロライドをつくるための簡単で環境にやさしい方法であって、安価で容易に利用できる反応物を利用し、そして工業レベルの生産に拡大できる方法についての必要性がなお存在する。
【0019】
【発明の要旨】
本発明は、TFPXからではなくヘキサクロロ−p−キシレン(安価で容易に利用できる出発材料であって、高収率で消耗的なp−キシレンの塩素化により製造される)からのTFPXジクロライドの合成に関する。この方法においては、ヘキサクロロ−p−キシレンを最小量の不活性溶媒に懸濁及び部分的に溶解させ、そして無水HFと反応させる。得られるAF4への前駆体は、容易に利用でき安価な反応物を用いる一工程の方法を経て、高収率及び高純度で提供される。従って、本方法は、その全てが前駆体としてTFPXの使用を必要とするTFPXジクロライドの他の製造方法よりも有意な経済上の利点をもたらす。
より特定的には、一つの好ましい態様において、本発明は、1,2−ジクロロエタン中のヘキサクロロ−p−キシレンを室温において無水HFと反応させて高収率のTFPXジクロライドを生産する、TFPXジクロライドの合成方法に関する。
【0020】
【発明の具体的な説明】
これまでに記述したように、本発明は、ヘキサクロロ−p−キシレン及びHFを反応させることによるTFPXジクロライドの合成に関する。本反応は、比較的少量の不活性溶媒を用いて行う。好ましい溶媒は1,2−ジクロロエタンである。本反応は、容易に利用できかつ安価な出発材料を用いる一工程の方法で高収率のTFPXジクロライドが提供されるので、特に関心が持たれる。本反応は、望ましいTFPXジクロライドを穏やかな条件下で形成することについてきわめて特異的である。本反応は、塩素及びフッ素成分間の交換を望ましいレベルまで進行させてから停止することが認められた。本反応の簡単さに加えて、本発明は、溶媒を再利用することを可能としHFの化学量論量よりわずかに多いだけの量を必要とすることから、環境的に有利である。そのうえ、反応によるあらゆる過剰フッ素化副生成物は他の操作においては反応物として価値があるので需要があり、そしてあらゆるフッ素化不足の副生成物を再利用することができる。従って、本反応は殆ど廃棄物を包含しない。
本明細書中で使用するように、“ヘキサクロロ−p−キシレン”(HCPX)の語は構造:
【0021】
【化8】
Figure 0004314321
【0022】
を有する分子を示す。
ヘキサクロロ−p−キシレンのHFとの反応は、典型的に、室温又は室温付近で起こる。その反応を密閉反応容器内で行うならば、その圧力は反応の進行の間に幾分増加し続ける。圧力の増加は、残余の気体HF並びにその反応の間に形成される気体HClに起因する。所望のTFPXジクロライドを取り出す前に、これらの気体をNaOH水溶液又は他の適する媒質中に排出して、それらを中和してもよい。
【0023】
特定の反応温度によって限定することを意図するものではないが、この反応は、その反応が妥当な速度で進行することを可能とするのに充分高い温度で行わなければならない。しかし、その反応温度があまりに高いならば、過剰フッ素化及びタール質の物質を形成する重合反応又は脱離反応を含む望ましくない副反応も起こり得る。かくして、その反応混合物は、望ましくない副反応をもたらすことなくTFPXジクロライドを形成するのに十分高い温度に理想的に維持される。
【0024】
幾つかの他の溶媒を非相互作用性有機溶媒として本方法に使用することができる。これらには、塩化メチレン;1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、トリフルオロトルエン、及びヘキサフルオロ−p−キシレンが含まれる。たいてい、これらの溶媒は選択反応を起こさせることにおいて等しく効果を生ずることが証明された。このことは、ヘキサクロロ−p−キシレン及びTFPXジクロライドを溶解するがHFと混和性でないか又は反応しないあらゆる溶媒を事実上使用してもよいことを示唆している。かくして、前述の考慮に加えて、その溶媒は、単にその溶媒の沸点(すなわち、溶媒は容易にそれら生成物から分離できるべきである)、そのコスト及び環境の観点から選ぶことができる。
【0025】
SbCl3、SbCl5、SbF3、SbF5、HgF2及びSnCl4を含むがこれらに限定するものではない求電子触媒も、フッ素化されるヘキサクロロ−p−キシレンのモル数の1〜10%の量で使用してもよい。そのような触媒の使用は、より低い温度と短い反応時間の使用とを可能とするが、より多い量の過剰フッ素化生成物の生成をもたらす。
【0026】
その反応に10〜48時間の種々の時間、及び10〜30℃の種々の温度を用いたが、それら結果を有意に変えるものではなかった。
このように、多種多様の不活性有機溶媒中におけるヘキサクロロ−p−キシレンとHFの使用は、比較的穏やかな反応条件下で高収率の所望のTFPXジクロライド生成物を提供する。
次の実施例は、単に例示することを意図するものであり、限定するものとして解釈されるべきではない。
【0027】
【実施例】
実施例1
350g(1.1モル)のヘキサクロロ−p−キシレン(HCPX)を600mlオートクレーブに入れた。100mlの1,2−ジクロロエタン(DCE)及び200g(10モル)の無水HFを加えた。その混合物を室温で約10時間攪拌すると、その間に圧力が約3気圧まで上がった。反応の完了時に、残余のHF及びHClを300mlの10%NaOH中に排出することによって取り除いた。次いで、残った有機相を100mlの5%NaOHで3回洗浄し、次いで、300mlの水で3回洗浄した。続いて、その有機相をMgSO4で乾燥させた。簡単な蒸留により3つの留分を得た。:
留分1(71〜90℃)約68%TFPXジクロライドを含んでなる27.5gの材料を生じた。残っている材料のうち、主要な部分はペンタフルオロクロロ生成物から構成された。
留分2(90〜95℃)約97%TFPXジクロライドを含んでなる174gの生成物を生じた。
留分3(95〜107℃)約69%TFPXジクロライドを含んでなる37gの生成物を生じた。残りの31%の副生産物中、主要な成分はトリフルオロトリクロロ物質であった。
TFPXジクロライドの理論収率は246.9g/モルの分子量を有する1.1モルの生成物(よって271.6g)であるところ、この反応は213gのTFPXジクロライド生成物を提供したので、上記反応からのTFPXジクロライドの全収率は約78.4%となった。
【0028】
実施例2
2kg(6.3モル)のHCPXを1ガロンオートクレーブに入れた。600mlのDCE及び540g(28.4モル)の無水HFを加えた。その混合物を自己圧力において30℃で20時間攪拌し、その後、残余のHF及びHClを2リットルの10%NaOH中に排出することによって取り除いた。次いで、残った有機相を5%NaOH及び水で各々3回洗浄し、MgSO4で乾燥させ、そして蒸留して(生成物の沸点は90〜95℃)933g(60%収率)のTFPXジクロライド生成物を得た。大部分の副生成物は、主としてフッ素化不足の生成物からなる蒸留残分中にあった。これらのフッ素化不足の生成物は再利用でき、その後のランで使用できた。
【0029】
実施例3
350g(1.1モル)のヘキサクロロ−p−キシレン(HCPX)及び100mlの塩化メチレン(CH2Cl2)を600mlオートクレーブに入れた。その混合物を約20℃で48時間攪拌し、実施例1と同じ単離処理を行った。得られた生成物は、2%のTFPXモノクロライドを伴う52%のTFPXジクロライド、10%のTFPXトリクロライド、及び28%のTFPXテトラクロライドであった。このトリクロライド及びテトラクロライド生成物は、再利用してもよくその後のランで使用してもよいという点で望ましい。
【0030】
均等の範囲
前述の本発明の特定の態様の詳細な説明から、TFPXジクロライドの形成のための独特の反応が記載されたことは明らかである。特定の態様を本明細書中に詳細に開示してきたが、これは単に例示する目的のためになされたものであり、請求項の範囲に関して限定することを意図するものではない。特に、請求項によって明確にされる本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の置換、変更、及び修飾を本発明に施してもよいことが、本発明者により意図されている。例えば、特定の不活性有機溶媒又は特定の反応温度の選択は、当業者が本明細書に記載された態様を認識して通常行うことと考えられる。

Claims (23)

  1. (a)ヘキサクロロ−p−キシレンを含んでなる第1反応物を提供する工程;
    (b)無水HFを含んでなる第2反応物を提供する工程;
    (c)塩化メチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロ−p−キシレン、1,2−ジクロロエタン及びそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒を提供する工程;及び
    (d)該第1及び第2反応物を該有機溶媒中で反応させて、TFPXジクロライドを含んでなる生成物を形成させる工程
    を含んでなる合成方法。
  2. 有機溶媒が、塩化メチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、1,2−ジクロロエタン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
  3. 有機溶媒が1,2−ジクロロエタンを含んでなる、請求項1記載の方法。
  4. 10℃〜30℃の温度で反応を行う、請求項1記載の方法。
  5. 反応を10時間〜48時間継続させる、請求項1記載の方法。
  6. 反応を10時間〜48時間継続させる、請求項5記載の方法。
  7. 生成物からTFPXジクロライドを単離する付加的な工程を含む、請求項1記載の方法。
  8. 単離が蒸留を含んでなる、請求項7記載の方法。
  9. 単離工程の前に生成物を洗浄し乾燥させる付加的な工程を含む、請求項7記載の方法。
  10. 洗浄が、生成物をNaOH水溶液ですすいでから水ですすぐこととを包含する、請求項9記載の方法。
  11. TFPXジクロライド生成物を反応させて、オクタフルオロ−[2,2]パラシクロファンを含んでなるパリレンダイマーを形成する付加的な工程を含む、請求項7記載の方法。
  12. パリレンダイマーをGorham法を用いて反応させて、重合体のパリレンを形成する付加的な方法を含む、請求項11記載の方法。
  13. 反応を触媒の存在下で行う、請求項1記載の方法。
  14. 触媒が、SbCl3、SbCl5、SbF3、SbF5、HgF2及びSnCl4からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
  15. 触媒がヘキサクロロ−p−キシレンのモル数の1〜10%の量で存在する、請求項14記載の方法。
  16. (a)ヘキサクロロ−p−キシレンを含んでなる第1反応物を提供する工程;
    (b)無水HFを含んでなる第2反応物を提供する工程;
    (c)1,2−ジクロロエタンを含んでなる有機溶媒を提供する工程;及び
    (d)該第1及び第2反応物を該有機溶媒中で反応させて、TFPXジクロライドを含んでなる生成物を形成させる工程
    を含んでなる合成方法。
  17. 反応を触媒の存在下で行う、請求項16記載の方法。
  18. 触媒が、SbCl3、SbCl5、SbF3、SbF5、HgF2及びSnCl4からなる群から選択される、請求項17記載の方法。
  19. (a)ヘキサクロロ−p−キシレンを含んでなる第1反応物を提供する工程;
    (b)無水HFを含んでなる第2反応物を提供する工程;
    (c)塩化メチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロ−p−キシレン、1,2−ジクロロエタン及びそれらの混合物からなる群から選択される有機溶媒を提供する工程;
    (d)該第1及び第2反応物を該有機溶媒中で反応させて、TFPXジクロライドを含んでなる生成物を形成させる工程;
    (e)該TFPXジクロライド生成物を反応させて、パリレンダイマーを形成する工程;及び
    (f)該パリレンダイマーをGorham法を用いて反応させて、重合体のパリレンを形成する工程
    を含んでなる合成方法。
  20. 有機溶媒が、塩化メチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、1,2−ジクロロエタン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19記載の方法。
  21. 有機溶媒が1,2−ジクロロエタンを含んでなる、請求項19記載の方法。
  22. 第1及び第2反応物間の反応を触媒の存在下で行う、請求項19記載の方法。
  23. 触媒が、SbCl3、SbCl5、SbF3、SbF5、HgF2及びSnCl4からなる群から選択される、請求項22記載の方法。
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